光ディスクには、記録密度や保護層の厚みが異なる複数の規格が存在する。例えば、CD(コンパクトディスク)よりもDVD(デジタルバーサタイルディスク)の記録密度は高く、保護層が薄い。そこで、情報の記録または再生に際し、規格が異なる光ディスクを使い分ける場合には、保護層の厚みによって変化してしまう球面収差を補正しつつ、情報の記録または再生に使用する光の開口数(NA)を変化させて記録密度の違いに対応したビームスポットが得られるようにする必要がある。
例えば、保護層厚が比較的薄く記録密度が高い光ディスクの記録/再生には、保護層厚が比較的厚く記録密度が低い光ディスク専用の光学系より高NAにしてビームスポットを絞る必要がある。スポット径は波長が短いほど小さくなるため、DVDを利用する光学系では、CD専用の光学系で用いられていた780〜830nmより短い635〜665nmの発振波長のレーザ光源を用いる。そのため近年、光情報記録再生装置には、波長の異なるレーザ光を発振可能な光源部が使用されている。
また、保護層の厚みが異なる複数種類の光ディスクに対して、それぞれ良好な状態で各光ディスクの記録面位置にレーザ光を収束させる手段の一つとして、従来、例えば下記の特許文献1に開示される対物レンズが知られている。
特許文献1には、一方の面に輪帯状の微細な段差を有する回折構造を設けた対物レンズに波長の異なる二種類の平行光束を入射させる構成が開示されている。
ところで、規格の異なる光ディスクに対して情報の記録または再生を実現するための対物レンズは、各光ディスクに対応したレーザ光束を各光ディスクの記録面上に収束させる際に、球面収差が補正されているだけでなく、対物レンズに光束が光軸に対して斜めに入射した際に発生するコマ収差も良好に補正されていることが要求される。しかし、上記特許文献1に例示されるような構成の対物レンズは、各光ディスク使用時に発生するコマ収差をそれぞれ良好に抑えることはできてはいない。特許文献1からわかるように、従来は、光情報記録再生装置の用途に対応して、各光ディスク使用時に発生するコマ収差のバランスを調整するように対物レンズを構成しているにすぎなかった。
上記の事情に鑑み、下記の特許文献2に開示される対物レンズが提案されている。
特許文献2に開示される対物レンズは、該レンズの第一面と第二面の双方において、第一の光ディスクよりも保護層の厚い第二の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要なNAを確保するための内側領域と、第一の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要なNAを確保するための外側領域とを有している。そして各面において、内側領域と外側領域の面形状を異なるように構成している。
特許文献2には、このような構成の対物レンズを使用することにより、各光ディスク使用時に光束が光軸に対して斜めに入射することにより発生するコマ収差が低減されたと記載されている。しかし、各面における内側領域と外側領域を、互いの領域との関係においてどのような面形状にすればコマ収差を効果的に低減できるか、という点については、何ら開示されていない。そのため、上記特許文献2に基づいて、各光ディスク使用時に発生するコマ収差をバランスよく低減することができる対物レンズを実現するためには、試行錯誤で設計する必要があった。
従って、依然として、どの光ディスクを使用しても高精度な情報の記録または再生が可能となるように、対物レンズのさらなる改良が強く望まれていた。また、この改良にあたっては、単に性能の向上を実現するだけでなく、コート膜の剥離や成形時における転写不良で生じる段差(特に内側領域と外側領域の境界位置に生じる段差)のダレといった実際の製造時や使用時に想定される不具合も有効に防ぐことができるようなレンズ設計をする必要がある。
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、規格の異なるどの光ディスクに対して情報の記録または再生を行った場合であっても、対物レンズに光束が光軸に対して斜めに入射した際のコマ収差の発生を抑えてディスク記録面上に良好なスポットを形成することができ、かつ成形時における転写不良で生じる段差のダレ等の不具合を有効に防ぐ設計がなされた対物レンズを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る対物レンズは、第一の光ディスクと、該第一の光ディスクよりも相対的に保護層厚が厚い第二の光ディスクと、の保護層厚が互いに異なる少なくとも2種類の光ディスクに対して記録または再生が可能な光ディスク用対物レンズであって、該対物レンズは、光源側に配設される第一面および光ディスク側に配設される第二面を有し、第一面および第二面はどちらも、第二の光ディスクに対する情報の記録または再生時に必要なNAを確保するための内側領域と、該内側領域の外側にあり、第一の光ディスクに対する情報の記録または再生時に必要なNAを確保するための外側領域と、を有し、各面における内側領域は、少なくとも、第二の光ディスクに対する情報の記録または再生時に、内側領域と外側領域の境界位置において外側領域に光源からの光束が光軸に対して斜めに入射した際に発生するコマ収差よりもコマ収差の量を低減するような面形状を有する。そして具体的には、第二面での境界位置において、該内側領域の面形状で規定される面から、該内側領域の光軸での接平面までの距離をXA[mm]、該外側領域の面形状で規定される面から、該接平面までの距離をXA[mm]とすると、以下の条件式(1)、
-1.0×10-3<XB-XA<1.0×10-3 ・・・(1)
を満たし、
第二面の境界位置における、内側領域での面の傾きをθ2A[degree]、外側領域での面の傾きをθ2B[degree]とすると、以下の条件式(2)、
-2.50<θ2B-θ2A<-0.05 ・・・(2)
を満たすことを特徴とする。
本発明に係る対物レンズは、対物レンズが持つ二つの面のどちらにも、内側領域と外側領域が設けられている。そして各面における、内側領域と外側領域の面形状を上記のように設計する。すなわち、対物レンズの両面を面形状の異なる複数の領域に分けることにより、設計の自由度を増やし、各光ディスク使用時に発生するコマ収差を個別に補正する。なお本文において、境界位置において発生するコマ収差とは、内側領域あるいは外側領域における境界位置近傍で発生するコマ収差のことをいう。
本発明に係る対物レンズによれば、第一の光ディスクと第二の光ディスクのいずれを使用した場合にも対物レンズに光束が光軸に対して斜めに入射した際に発生するコマ収差を良好に補正することができる。対物レンズに光束が光軸に対して斜めに入射する場合とは、例えば2波長レーザを光源として使用する場合が考えられる。
図1は、本願発明に係る対物レンズを拡大して示す、光軸AXを含む面での断面模式図である。面の傾きθは、図1に示すように光軸に平行な線に対する面法線の角度で表し、時計方向を正として測ることとする。また、図2は、本願発明に係る対物レンズの光ディスク側に配設される第二面の拡大図である。図1、図2において、各符号はそれぞれ以下のものを示す。
P…内側領域と外側領域の境界位置
LA…内側領域(の断面形状)を表す線
LA’…内側領域の面形状で規定される面を表す線
LB…外側領域(の断面形状)を表す線
LB’…外側領域の面形状で規定される面を表す線
LC…境界位置P近傍で平滑化した場合の断面形状
PL…境界位置Pにおける面法線
θ…光軸AXに対して面法線PLがなす角(degree)
XA…境界位置Pにおける、内側領域の面形状で規定される面LA’から第二面の光軸上における接平面までの距離(mm)
XB…境界位置Pにおける、外側領域の面形状で規定される面LB’から第二面の光軸上における接平面までの距離(mm)
但し、各符号に下付けされた数字は、第一面、第二面の別を意味する。
本願発明に係る対物レンズは、上記の通り、いずれの光ディスクを使用した場合に発生するコマ収差もより効果的に補正するために、第二面にも面形状の異なる二つの領域を設定している。そのため、該二つの領域の境界位置では段差が発生するおそれがある。該段差は、コーティングされた膜を剥離しやすくする、レンズクリーナーによる研磨時に破壊されてゴミを発生させるといった不具合の要因や、成形時における転写不良で生じる段差のダレによる光量の損失を招くといったレンズ品質低下の要因になりかねない。
そこで、本発明によれば、第二面に関して、距離XAとXBの差が条件式(1)を満たすように設計して、上記の段差をより小さくしている。距離XAとXBの差が条件式(1)の上限もしくは下限を越えるほど大きく設計をしてしまうと、上述した膜の剥離等のレンズ品質の低下を招いてしまうため好ましくない。条件式(1)を満たす面形状を、本明細書では、略連続面とする。なお、「内側領域の面形状で規定される面」「外側領域の面形状で規定される面」とは、具体的にはそれぞれ内側領域及び外側領域の面形状を表す式で規定される面であり、上記XA、XBの値はこの面形状を表す式に光軸からの高さyとして境界位置Pに相当する値を代入して得られる面にもとづき求められる。
上記の条件式(2)は、コマ収差補正の実効性を与えるための条件式である。条件式(2)において、境界位置Pでの内側領域の傾きθ2Aとは、該領域を表す線LAおよび該領域LAの延長線LA’によって規定される面形状の境界位置Pでの面法線PLが光軸AXに対してなす角をいう。同様に、境界位置Pでの外側領域の傾きθ2Bとは、該領域を表す線LBおよび該領域LBの延長線LB’によって規定される面形状の境界位置Pでの面法線PLが光軸AXに対してなす角をいう。二つの傾きθ2Aとθ2Bの差が条件式(2)を満足することにより、外側領域では比較的保護層厚の薄い光ディスクを使用したときに対物レンズに光束が光軸に対して斜めに入射した際に発生するコマ収差を補正しつつ、内側領域では比較的保護層厚の厚い光ディスクを使用したときに対物レンズに光束が光軸に対して斜めに入射した際に発生するコマ収差を低減することができる。なお、条件式(2)について、上限を超えると、いずれの光ディスクを使用したときにも発生するコマ収差を低減する効果が小さくなる。下限を超えると、特に第一の光ディスク使用時に発生するコマ収差が補正過剰になる。
さらに、第一面での、内側領域と外側領域の境界位置において、内側領域での面の傾きをθ1A[degree]、外側領域での面の傾きをθ1B[degree]とすると、以下の条件式(3)、
-1.2<θ1B-θ1A<0.0 ・・・(3)
を満足することが好ましい。上記条件式(3)について、上限を超えると、いずれの光ディスクを使用したときにも発生するコマ収差を低減する効果が小さくなる。下限を超えると、特に第一の光ディスク使用時に発生するコマ収差が補正過剰になる。
さらに、本発明によれば、第一面および第二面のうち、少なくとも一方の面に回折構造を設けることにより、各光ディスク使用時に光源から照射される光束(例えば、第一のレーザ光束と第二のレーザ光束)の波長が異なる場合に、その波長差による回折作用の差を用いて、ディスク保護層厚によって変化する球面収差を良好に補正することができる。
なお、回折構造を設けた面の形状は、回折効率を高めるために微細な段差をもつフレネルレンズ状にすることが一般的である。フレネルレンズ状に回折構造を設けた面の傾きは、ベース形状の傾きとする。
上記構成の対物レンズを使用した場合、第一の光ディスクと第二の光ディスクは、共に略同一の結像倍率で使用することができる。そのため、単一の光源を用いる場合、あるいは2波長レーザーなどと呼ばれる複数の波長の光束を発振可能な光源を用いた場合でも、複数の光ディスクに対して互換性のある光情報記録再生装置が実現できる。また、対物レンズに非平行光を入射させる有限共役系(有限系)を利用した場合、トラッキング動作時に発生する軸外コマ収差による性能劣化が問題となるが、本発明によれば複数の保護層厚の光ディスクのどれを使用した場合であってもコマ収差の量を低減することができるため、良好な性能が得られる。
本発明に係る対物レンズによれば、第二面における外側領域は、第一面における外側領域を透過した光が第二面に当たる領域であることが望ましい。また、本発明に係る対物レンズによれば、内側領域は、第一の光ディスクの保護層厚と第二の光ディスクの保護層厚との中間厚においてコマ収差が良好に補正されるように設計することができる。
本発明に係る対物レンズによれば、境界位置で発生した段差によって生じる、上記の不具合やレンズ品質低下などの要因となる現象を有効に回避すべく、研磨等の製造過程において境界位置を予め平滑化(連続面化)することが好ましい。具体的には、図2中、対物レンズの第二面を光軸側から周辺部に向かってLA−LC−LBで示すように、境界位置をなだらかな面形状に構成する。
但し、図2中LCで示される領域を透過する光束は、各光ディスク面上で良好に収束しない。そのため、情報の記録または再生時に使用可能な光量の無用な損失を回避するために、本発明に係る対物レンズによれば、第二面において、内側領域と外側領域の境界位置において連続となるように構成された領域の面積は、各領域の面積の総和の2%以下であることが好ましい。
また、成形用金型をRバイトで加工することにより、図2中LCで示される領域のように境界位置を平滑化することが容易となる。Rバイトによって加工された成形用金型を用いて成形された対物レンズは、境界位置を連続面として形成することができるため、膜の剥離等の不具合やレンズの質の低下を有効に防止することができる。
以上のように、本発明に係る対物レンズは、両面に内側領域と外側領域を設け、各領域を互いに異なる面形状とすることにより、従来、規格(保護層厚)の異なる複数の光ディスクを使用したときに発生するコマ収差を、どの光ディスクを使用した場合であっても良好に補正することができる。加えて本発明に係る対物レンズは、面形状が異なる二つの領域の境界位置で発生する段差を略なくすことにより、上記コマ収差の補正効果を発揮しつつも、研磨によるゴミの発生や成形時における転写不良で生じる段差のダレを防止して品質の維持を図ることができる。
以下、この発明に係る対物レンズの実施形態を説明する。図3(A)、図3(B)は、実施形態に係る対物レンズ10を含む光ピックアップ系100と第一の光ディスク20A、第二の光ディスク20Bを、各光ディスク20A、20B使用時における光路ごとに分けて図示したものである。光ピックアップ系100は、対物レンズの他に、光源30、光分岐素子40、カップリングレンズ50を有する。ここで、カップリングレンズとは、光源からの光束の発散角を変換する役割を持つ。光ピックアップ系100は、保護層厚や記録密度といった規格が異なる複数種類の光ディスクに対して互換性を有する、光情報記録再生装置に搭載される。なお本文において、光情報記録再生装置には、記録専用装置、再生専用装置、および記録、再生兼用装置の全てが含まれる。
各光ディスク20A、20Bは、図示しないターンテーブル上に載置され回転駆動される。なお本明細書では、保護層が薄く記録密度が高い光ディスク(例えばDVD)を第一の光ディスク20Aと記す。また、保護層が厚く記録密度が低い光ディスク(例えばCDやCD−R等)を第二の光ディスク20Bと記す。
光源30は、各光ディスク20A、20Bに対する情報の記録または再生に適した波長のレーザ光束を発振する二つの発光部を備える2波長レーザである。具体的には、第一の光ディスク20Aに対して情報の記録または再生を行う際には、記録面上において小径のビームスポットを形成するために、光源30の一方の発光部から短波長(例えば、657nm)のレーザ光(以下、第一のレーザー光という)が照射される。また、記録密度の低い第二の光ディスク20Bに対して記録または再生を行う際には、記録面上において比較的大きな径のスポットを形成するために、光源30の他方の発光部から第一のレーザ光よりも長波長のレーザ光(以下、第二のレーザー光という)が照射される。なお、本実施形態の光源30では、第一のレーザ光の発光部は、対物レンズの光軸上に配設されている。すなわち第二のレーザ光の発光部は、該光軸から外れて位置している。従って、第二のレーザ光は、対物レンズの光軸に対して斜めに入射する。
上記光源から照射されたレーザ光は、光分岐素子40を介してカップリングレンズ50に入射する。カップリングレンズ50によって平行光もしくは弱い発散光に変換されたレーザ光は、対物レンズ10により光ディスク20A、もしくは光ディスク20Bの記録面近傍に収束される。ここで、平行光束もしくは弱い発散光を対物レンズ10に入射させることにより、対物レンズ10がトラッキングシフトした場合であっても、コマ収差や非点収差を非常に小さくしている。
各光ディスク20A、20Bの記録面で反射した光束(戻り光)は、対物レンズ10、カップリングレンズ50の順に光路を戻り、光分岐素子40に入射する。光分岐素子40は、例えば、光源30側の面40aに回折格子を設けた回折素子などが知られている。該戻り光は、面40aによって回折作用を受けつつ光分岐素子40から射出される。光分岐素子40の面40aによって回折した戻り光は、光源30から照射された光束の光路から外れて、光源30近傍に設けられた図示しない受光素子に受光される。
対物レンズ10は、光源30側から順に第一面10aと第二面10bを有する。対物レンズ10は、両面10a、10bとも非球面である両凸のプラスチック製単レンズである。上述した通り、第一の光ディスク20Aと第二の光ディスク20Bでは、保護層の厚さが異なる。このため、使用されるディスクによってコマ収差や球面収差が変化する。そこで、本実施形態の対物レンズ10は、以下のように構成することにより、各収差を良好に抑えている。
図4(A)は対物レンズ10の拡大図、図4(B)は対物レンズ10の第一面10aの一部拡大図、図4(C)は対物レンズ10の第二面10bの一部拡大図である。図4(B)、(C)に示すように、対物レンズ10の第一面10aは、光軸の周囲に位置する内側領域11aと、内側領域11aの周囲に位置し、レンズ外周部までの外側領域12aを有する。内側領域11aと外側領域12aは互いの面形状が異なる。また、第二面10bも内側領域11bと外側領域12bを有する。内側領域11bと外側領域12bも互いの面形状が異なる。より詳しくは、外側領域12bの方が内側領域11bよりも面の傾きが小さくなるように設計されている。なお、第一面10aを基準として考えた場合、外側領域12aを透過した光が第二面10bに当たる(入射する)領域が第二面10bにおける外側領域12bとする。
内側領域11a、11bは、第二のレーザ光が、第二の光ディスク20Bの記録面において情報の記録または再生に必要なスポット径を得るためのNAを確保するための領域である。
記録密度の高い第一の光ディスク20Aに対する情報の記録または再生時は、記録密度が相対的に低い第二の光ディスクに対する情報の記録または再生時よりも、小径なスポット形成が要求される。つまり第一の光ディスク20A使用時には、より高いNAが要求される。そのため、内側領域11a、11bを透過した第一のレーザ光のみでは、情報の記録または再生を実現するために十分小径化されたスポットを得ることができない。そこで外側領域12a、12bは、第一のレーザ光が第一の光ディスク20Aの記録面において情報の記録または再生に必要なスポット径を得るためのNAを確保するための領域として用いられる。外側領域12a、12bは、第二のレーザ光の収束には寄与しない。つまり、外側領域に入射した第二のレーザ光は、対物レンズ10から射出されると拡散してしまう。
このように、対物レンズ10の両面10a、10bをそれぞれ、互いに面形状が異なる二つの領域に分けることにより、対物レンズ10の設計の自由度を増加させることができる。これにより、光ディスク20A、20Bのいずれを使用した場合にも、対物レンズに光束が光軸に対して斜めに入射した際に発生するコマ収差を良好に補正することができる。本実施形態では、以下のように各領域を形成することにより、各ディスク使用時に対物レンズに光束が光軸に対して斜めに入射した際に発生するコマ収差を補正している。
詳しくは、本実施形態では、各面の内側領域11a、11bは、第二の光ディスク20B使用時に対物レンズ10に光束が光軸に対して斜めに入射した際に発生するコマ収差を第一の光ディスク20A使用時に発生するコマ収差よりも優先的に補正するような面形状に形成される。そのため、第一面10aは、第二の光ディスク20B使用時に境界位置Paにおいて光束が光軸に対して斜めに入射した場合、外側領域12aで発生するコマ収差よりも内側領域11aで発生するコマ収差のほうが小さくなるような面形状になっている。第二面10bも同様である。
そして、各面の外側領域12a、12bは、第一の光ディスク20Aを使用したときに発生するコマ収差を補正するような面形状に形成される。このように本実施形態の対物レンズ10は、内側領域11a、11bと外側領域12a、12bを上記のように異なる面形状にすることにより、第二の光ディスク20B使用時に発生するコマ収差を低減するとともに、第一の光ディスク20A使用時に発生するコマ収差も情報の記録または再生に必要な径のスポット形成に影響を及ぼさない程度に十分補正している。
上述したコマ収差補正を実現するために、各面は、具体的には以下のような形状を有する。まず第一面10aは、図4(B)に示す各領域の境界位置Paにおいて、上記の条件式(3)を満たすように形成されるのが好ましい。
また第二面10bは、図4(C)に示すように、各領域の境界位置Pbにおいて、外側領域12bの面の傾きが内側領域11bの面の傾きよりも小さく、第二面10bの各領域11b、12bの各形状は、境界位置Pbにおいて連続するような(平滑化された)面形状に形成される。上記の条件式(1)および(2)は、第二面10bのこのような面形状を規定する式である。このような面形状に加工することにより、境界位置Pbは連続した面となるため、膜の剥離等の不具合を有効に防止することができる。また、第二面10bにおける上記連続する面形状を持つ領域(図2中LCで示す)は、該領域を透過した光束の各光ディスク面上での収束には寄与しない。そこで、第二面10bにおける該領域の割合を可能な限り小さくすることにより、無用な光量損失を回避している。本実施形態では、該領域は、内側領域11bと外側領域12bの面積の総和の2%以下に抑えている。
なお、第二面10bに上記の連続する面形状を持つ領域を有する対物レンズは、Rバイトにより加工された成形用金型を用いて成形される。
また、本実施形態では、図4(B)実線で示すように、第一面10aに回折構造を設けている。該回折構造は、内側領域11aと外側領域12aとで異なる構造になっている。
第一面10aの内側領域11aは、第一および第二のレーザ光がそれぞれ対応する光ディスク20A、20Bの記録面において良好に収束するような回折構造を備える。
第一面10aの外側領域12aに形成される回折構造は、第一のレーザ光が入射した場合、第一の光ディスク20Aの記録面において良好に収束し、かつ第二のレーザ光が入射した場合は拡散してしまい、第二の光ディスク20Bの記録面におけるスポットの形成に寄与しないように設計される。具体的には、外側領域12aの回折構造は、該領域12aを透過した第一のレーザ光の波面が、内側領域11aを透過した第一のレーザ光の波面と略連続するように構成される。
上記構成の対物レンズ10を透過した第二のレーザ光は、内側領域11を透過した成分のみが第二の光ディスク20Bの記録面に良好に収束する。これにより該記録面には、第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生に好適な、比較的大径のスポットが形成される。また対物レンズ10を透過する第一のレーザ光は、第一の光ディスク20Aの記録面上に小径のスポットを形成する。
上記の通り、本実施形態の対物レンズ10は、各面において、内側領域と外側領域で面形状が異なるように構成される。そのため、各面における二つの領域の境界位置で段差が発生するおそれがある。特に、第二面10bに発生する段差は、レンズクリーナーによる研磨時に破壊されてゴミを発生させる等の不具合の要因や、成形時における転写不良で生じる段差のダレを発生させて光量の損失を招くといったレンズ品質低下の要因になりかねない。
そこで本実施形態では、上記の条件式(1)を満たすように構成することにより、第二面10bで発生する段差を小さくして、上記の不具合やレンズ品質の低下を有効に防いでいる。なお、図4では、条件式(1)に用いられる距離XBを規定するための外側領域の形状を光軸に向かう方向に延長させた延長面(図1、図2中LB’)を一点鎖線で示している。
次に上述した実施形態に基づく具体的な実施例を3例提示する。いずれの実施例も、保護層の厚みが0.6mmの第一の光ディスク20Aと、保護層の厚みが1.2mmの第二の光ディスク20Bとの互換性を有する対物レンズ10に関するものである。
実施例1の対物レンズ10を含む光ピックアップ系100と各光ディスク20A、20Bを表す概略図は、図3に示される。実施例1の対物レンズ10の各光ディスク20A、20B使用時における具体的な仕様は表1に示されている。また、実施例1の対物レンズ10を用いて各光ディスク20A、20Bに対して情報の記録または再生を行う場合における光ピックアップ系100の具体的数値構成を表2、表3に示す。
表1中、設計波長λは各光ディスクに対する情報の記録または再生に最も適した波長(単位:nm)、開口数NAは各光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数である。後述する表7においても同様である。
また表2中、rはレンズ各面の曲率半径(単位:mm)、dはレンズ厚またはレンズ間隔(単位:mm)、n(Xnm)は波長Xnmでの屈折率、備考は各面番号が示す光学部材を表す。表3および後述の各実施例で示す表も同様である。なお、表2と表3に示すdが異なるのは、各光ディスク使用時に用いられるレーザ光の波長と各光ディスクの保護層厚が異なるからである。表2、表3に示すように、実施例1の対物レンズ10の第一面10aは、光軸AXからの高さhが1.57mmである境界位置Paを境にして、内側領域11aと外側領域12aに分けられている。同様に、第二面10bも、光軸AXからの高さhが1.12mmである境界位置Pbを境にして、内側領域11bと外側領域12bに分けられている。
実施例1の対物レンズ10の第一面10aおよび第二面10bは、非球面である。その形状は光軸からの高さがhとなる非球面上の座標点の非球面の光軸上での接平面からの距離(サグ量)をX(h)、非球面の光軸上での曲率(1/r)をC、円錐係数をK、4次、6次、8次、10次、12次の非球面係数をA
4,A
6,A
8,A
10,A
12として、以下の式で表される。
各非球面を規定する円錐係数と非球面係数は、表4に示される。表2〜表4に示すように、第一面10aは各領域11a、12aによって、第二面10bは各領域11b、12bによって、それぞれ面形状(曲率半径rや非球面係数など)が異なる。なお、表4における表記Eは、10を基数とし、Eの右の数字を指数とする累乗を表している。以下に示す各表においても同様である。
さらに、実施例1の対物レンズ10の第一面10aには、回折構造が形成される。該回折構造は、以下の光路差関数φ(h)を用いて規定される。
光路差関数φ(h)は、波長λの光束に対して回折レンズが与える回折作用を、光軸からの高さhの位置における光路長付加量の形で表現したものである。P2、P4、P6、…はそれぞれ光路差関数に関する2次、4次、6次、…の係数である。対物レンズ10の回折構造を規定するために用いられる光路差関数係数P2、…は、表5に示される。なお、mは情報の記録または再生に利用する回折光の次数を表し、本実施例ではm=1としている。
実施例1の対物レンズ10の各条件式(1)、(2)に関する値を表6に示す。表6に示すように、実施例1の対物レンズ10は、条件式(1)および条件式(2)を満たす。
条件式(1)および条件式(2)を満たす実施例1の対物レンズ10を使用して第一の光ディスク20A、第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生を行った場合の波面収差図を、順に、図5と図6に示す。また、比較例1の対物レンズを使用して第一の光ディスク20A、第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生を行った場合の波面収差図を、順に、図7と図8に示す。各図において、(A)が軸上での波面収差を、(B)が軸外(像高0.06mm)での波面収差を表す。後述の各実施例で示す波面収差図についても同様である。なお、比較例1の対物レンズとは、実施例1の対物レンズ10と同一の構成を取りつつも、二つの領域に分割されていない第二面を有するものをいう。
図9は実施例1の対物レンズ10を用いて第一の光ディスク20Aに対する情報の記録または再生を行ったときに発生する波面収差と像高との関係を表すグラフである。図10は実施例1の対物レンズ10を用いて第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生を行ったときに発生する波面収差と像高との関係を表すグラフである。図11は、比較例1の対物レンズを使用して第一の光ディスク20Aに対する情報の記録または再生を行ったときに発生する波面収差と像高との関係を表すグラフである。図12は、比較例1の対物レンズを使用して第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生を行ったときに発生する波面収差と像高との関係を表すグラフである。各グラフ中、coma3は3次のコマ収差を、as3は3次の非点収差を、coma5は5次のコマ収差を、それぞれ表す。後述の各実施例において示すグラフにおいても同様である。
図9と図11を比較しつつ第一の光ディスク20A使用時に該ディスクの記録面上で発生する波面収差の量を検証する。実施例1の対物レンズ10を使用した場合、3次のコマ収差は、比較例1の対物レンズ使用時とほぼ同程度に抑えられている。また、図10と図12を比較しつつ第二の光ディスク20B使用時に該ディスクの記録面上で発生する波面収差の量を検証する。実施例1の対物レンズ10を使用した場合、比較例1の対物レンズを使用した場合に比べて、3次のコマ収差が良好に抑えられている、つまり波面収差全体の発生量が低減している。結果として、実施例1の対物レンズ10を使用すると、第一の光ディスク20Aと第二の光ディスク20Bのどちらを使用した場合であっても、3次のコマ収差が良好に補正されることにより、各光ディスクの記録面上において、情報の記録または再生に好適なスポットを形成できる程度まで十分にコマ収差を抑えることが可能となる。
なお、実施例1の対物レンズ10の第二面10bにおける実際の形状は、境界位置Pb近傍において、表2〜表4で示される数値を元に平滑化された形状になっている。但し、対物レンズ10が条件式(1)、(2)を満足するため、平滑化された領域の範囲は非常に狭い。よって、平滑化された実施例1の対物レンズ10は、性能上、図5、6、9または図10に示すものとほとんど違いはない。
実施例2の対物レンズ10を含む光ピックアップ系100’と各光ディスク20A、20Bを表す概略図は、図13に示される。光ピックアップ系100’は、上記光ピックアップ系100とは異なり、カップリングレンズ50を用いない構成にすることによりコストダウンを図っている。従って、光源30から照射されたレーザ光束は、発散光束のまま実施例2の対物レンズ10に入射する。実施例2の対物レンズ10の具体的な仕様は表7に示されている。また、実施例2の対物レンズ10を用いて各光ディスク20A、20Bに対して情報の記録または再生を行う場合における光ピックアップ系100’の具体的数値構成を表8、表9に示す。
表8、表9に示すように、実施例2の対物レンズ10の第一面10aは、光軸AXからの高さhが1.61mmである境界位置Paを境にして、内側領域11aと外側領域12aに分けられている。第二面10bも、光軸AXからの高さhが1.05mmである境界位置Pbを境にして、内側領域11bと外側領域12bに分けられている。
実施例2の対物レンズ10の第一面10aおよび第二面10bは非球面である。従って、各非球面の形状は上記の数1によって表される。数1に用いられる円錐係数と非球面係数は、表10に示される。表8〜表10に示すように、実施例2の対物レンズ10における各面10a、10bはそれぞれ内側領域と外側領域によって、面形状(曲率半径rや非球面係数など)が異なる。
また、実施例2の対物レンズ10の第一面10aには、回折構造が形成される。該回折構造を規定するための光路差関数係数は、表11に示される。
実施例2の対物レンズ10の各条件式(1)、(2)に関する値を表12に示す。表12に示すように、実施例2の対物レンズ10は、実施例1の対物レンズ10と同様に条件式(1)および条件式(2)を満たす。
条件式(1)および条件式(2)を満たす実施例2の対物レンズ10を使用して第一の光ディスク20A、第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生を行った場合の波面収差図を、順に、図14と図15に示す。また、比較例2の対物レンズを使用して第一の光ディスク20A、第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生を行った場合の波面収差図を、順に、図16と図17に示す。なお、比較例2の対物レンズとは、実施例2の対物レンズ10と同一の構成を取りつつも、二つの領域に分割されていない第二面を有するものをいう。
図18は実施例2の対物レンズ10を用いて第一の光ディスク20Aに対する情報の記録または再生を行ったときに発生する波面収差と像高との関係を表すグラフである。図19は実施例2の対物レンズ10を用いて第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生を行ったときに発生する波面収差と像高との関係を表すグラフである。図20は、比較例2の対物レンズを使用して第一の光ディスク20Aに対する情報の記録または再生を行ったときに発生する波面収差と像高との関係を表すグラフである。図21は、比較例2の対物レンズを使用して第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生を行ったときに発生する波面収差と像高との関係を表すグラフである。
図18と図20を比較しつつ第一の光ディスク20A使用時に該ディスクの記録面上で発生する波面収差の量を検証する。実施例2の対物レンズ10を使用した場合、3次のコマ収差は、比較例2の対物レンズ使用時よりは若干収差量が増えているものの、実使用上は何ら問題がない程度に十分抑えられている。また、図19と図21を比較しつつ第二の光ディスク20B使用時に該ディスクの記録面上で発生する波面収差の量を検証する。実施例2の対物レンズ10を使用した場合、比較例2の対物レンズを使用した場合に比べて、3次のコマ収差が良好に抑えられている。結果として、実施例2の対物レンズ10を使用すると、第一の光ディスク20Aと第二の光ディスク20Bのどちらを使用した場合であっても、3次のコマ収差を良好に補正することが可能となる。
なお、実施例2の対物レンズ10の第二面10bにおける実際の形状は、境界位置Pb近傍において、表8〜表10で示される数値を元に平滑化された形状になっている。但し、対物レンズ10が条件式(1)、(2)を満足するため、平滑化された領域の範囲は非常に狭い。よって、平滑化された実施例2の対物レンズ10は、性能上、図14、15、18または図19に示すものとほとんど違いはない。
実施例3の対物レンズ10は、実施例1の対物レンズが搭載される光ピックアップ系100と略同一の光ピックアップ系に搭載される。従って、実施例3の対物レンズを含む光ピックアップ系100と各光ディスク20A、20Bを表す概略図は、図3を参照する。実施例3の対物レンズ10の各光ディスク20A、20B使用時における具体的な仕様は実施例1の仕様と同一であるため、表1を参照しここでの説明は省略する。実施例3の対物レンズ10を用いて各光ディスク20A、20Bに対して情報の記録または再生を行う場合における光ピックアップ系100の具体的数値構成を表13、表14に示す。
表13、表14に示すように、実施例3の対物レンズ10の第一面10aは、光軸AXからの高さhが1.57mmである境界位置Paを境にして、内側領域11aと外側領域12aに分けられている。第二面10bも、光軸AXからの高さhが1.12mmである境界位置Pbを境にして、内側領域11bと外側領域12bに分けられている。
実施例3の対物レンズ10の第一面10aおよび第二面10bは非球面である。従って、各非球面の形状は上記の数1によって表される。数1に用いられる円錐係数と非球面係数は、表15に示される。表13〜表15に示すように、実施例3の対物レンズ10における各面10a、10bはそれぞれ内側領域と外側領域によって、面形状(曲率半径rや非球面係数など)が異なる。
また、実施例3の対物レンズ10の第一面10aには、回折構造が形成される。該回折構造を規定するための光路差関数係数は、表16に示される。
実施例3の対物レンズ10の各条件式(1)〜(3)に関する値を表17に示す。表17に示すように、実施例3の対物レンズ10は、どの条件式(1)〜(3)も満たす。
各条件式(1)〜(3)を満たす実施例3の対物レンズ10を使用して第一の光ディスク20A、第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生を行った場合の波面収差図を、順に、図22と図23に示す。また、図24は実施例3の対物レンズ10を用いて第一の光ディスク20Aに対する情報の記録または再生を行ったときに発生する波面収差と像高との関係を表すグラフである。図25は実施例3の対物レンズ10を用いて第二の光ディスク20Bに対する情報の記録または再生を行ったときに発生する波面収差と像高との関係を表すグラフである。
実施例3の対物レンズ10の性能を評価するにあたり、比較対象として、比較例1の対物レンズを用いる。図24と図11を比較しつつ第一の光ディスク20A使用時に該ディスクの記録面上で発生する波面収差の量を検証する。実施例3の対物レンズ10を使用した場合、3次のコマ収差は、比較例1の対物レンズ使用時と略同程度にまで十分抑えられている。また、図25と図12を比較しつつ第二の光ディスク20B使用時に該ディスクの記録面上で発生する波面収差の量を検証する。実施例2の対物レンズ10を使用した場合、比較例1の対物レンズを使用した場合に比べて、3次のコマ収差が良好に抑えられている。結果として、実施例3の対物レンズ10を使用すると、第一の光ディスク20Aと第二の光ディスク20Bのどちらを使用した場合であっても、3次のコマ収差を良好に補正することが可能となる。
なお、実施例3の対物レンズ10の第二面10bにおける実際の形状は、境界位置Pb近傍において、表13〜表15で示される数値を元に平滑化された形状になっている。但し、対物レンズ10が条件式(1)、(2)を満足するため、平滑化された領域の範囲は非常に狭い。よって、平滑化された実施例3の対物レンズ10は、性能上、図22〜図25に示すものとほとんど違いはない。
以上が本発明の実施形態である。なお、上記実施形態はあくまでも本発明に係る対物レンズの一例である。つまり本発明に係る対物レンズは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
例えば、本実施形態では、各面の内側領域11a、11bは、第二の光ディスクを使用したときに発生するコマ収差を優先的に補正するような面形状に形成されると説明した。ここで、各面の内側領域11a、11bは、少なくとも第二の光ディスクを使用したときに発生するコマ収差を低減するような面形状であれば、上記実施形態と略同様の効果を得ることができる。例えば、各面の内側領域11a、11bを、第一の光ディスク20Aの保護層厚と第二の光ディスク20Bの保護層厚との中間厚の位置においてコマ収差が良好に補正されるような面形状に形成することも可能である。