以下、本発明のいくつかの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、通常記録材対応モードと高剛性記録材対応モードとを切り替え可能である限りにおいて、各実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
従って、中間転写ベルトに沿って複数の感光体を配置したタンデム型のみならず、中間転写ベルトを用いた単色画像形成装置、現像色を切り替え可能な1ドラム型のフルカラー画像形成装置でも実施できる。
本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置、中間転写ベルトに関する一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
<画像形成装置>
図1は第1実施形態の画像形成装置の構成の説明図、図2は画像形成部の構成の説明図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト9に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの複数の画像形成部PY、PM、PC、PKを配列したタンデム型フルカラープリンタである。
画像形成部PYでは、感光ドラム1Yにイエロートナー像が形成されて、一次転写部TYを通過する中間転写ベルト9に一次転写される。画像形成部PMでは、感光ドラム1Mにマゼンタトナー像が形成されて、一次転写部TMを通過する中間転写ベルト9上のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部PC、PKでは、それぞれ感光ドラム1C、1Kにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて、一次転写部TC、TKを通過する中間転写ベルト9に順次重ねて一次転写される。
四色のトナー像は、中間転写ベルト9の回転に伴って二次転写部T2へ搬送され、二次転写部T2でトナー像に重ねて挟持搬送される記録材Pへ一括二次転写される。
四色のトナー像が転写された記録材Pは、定着装置25に送り込まれて、加熱加圧を受けることにより、トナー像を定着される。
記録材カセット20からピックアップローラ21によって引き出された記録材Pは、分離装置22で1枚ずつに分離されてレジストローラ23へ送り出される。レジストローラ23は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、中間転写ベルト9に担持されたトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ送り出す。
ベルトクリーニング装置19は、中間転写ベルト9にクリーニングブレードを摺擦させて、二次転写部T2を通過した中間転写ベルト9に付着した転写残トナーを除去する。
画像形成部PY、PM、PC、PKは、付設された現像装置4Y、4M、4C、4Kで用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外はほぼ同一に構成される。以下では、図2を参照して画像形成部PYについて説明し、他の画像形成部PM、PC、PKについては、説明中の符号末尾のYを、M、C、Kに読み替えて説明されるものとする。
図2に示すように、画像形成部PYは、感光ドラム1Yの周囲に、帯電装置2Y、露光装置3Y、現像装置4Y、一次転写転写ローラ5Y、及びクリーニング装置6Yを配置する。
感光ドラム1Yは、外径80mmのアルミニウム製シリンダの外周面に、帯電特性が負極性の有機光導電体(OPC)を塗布して構成され、中心支軸を中心に300mm/secのプロセススピードで矢印R1方向に回転する。
帯電装置2Yは、電源D3からワイヤ電極2aに高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、コロナ放電に伴う荷電粒子を感光ドラム1Yに照射する。これにより、感光ドラム1Yの表面は、一様な負極性の暗部電位VDに帯電される。
露光装置3Yは、イエロー分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム1Yの表面に画像の静電像を書き込む。感光ドラム1Yの露光された部分は、暗部電位VDが放電されて明部電位VLに低下する。
現像装置4Yは、露光装置3Yが感光ドラム1Yに書き込んだ静電像をイエロートナーで現像して、感光ドラム1Yにイエロートナー像を形成する。現像容器4a内で二成分現像剤が攪拌されて非磁性トナーが負極性、磁性キャリアが正極性にそれぞれ帯電される。帯電した二成分現像剤は、固定磁極4jの周りで回転する現像スリーブ4sに薄層状態で担持され、磁気穂を形成して感光ドラム1Yを摺擦する。電源D4から現像スリーブ4sへ、直流電圧Vdcに交流電圧を重畳した振動電圧を印加して、現像スリーブ4sから感光ドラム1Yへトナーを移転させて明部電位VLの部分が反転現像される。
一次転写ローラ5Yは、感光ドラム1Yに向かって付勢されて中間転写ベルト9に圧接し、中間転写ベルト9と感光ドラム1Yとの間に一次転写部の一例である一次転写部TYを形成する。電源D1は、一次転写ローラ5Yに正極性の直流電圧V1(例えば2kV)を印加して、負極性に帯電して感光ドラム1Yに担持されたトナー像を中間転写ベルト9に一次転写する。
クリーニング装置6Yは、感光ドラム1Yにクリーニングブレードを当接させて、一次転写部TYを通過した感光ドラム1Yの表面に残留した転写残トナーを除去する。
<二次転写部>
図3は二次転写部の機械的な構成の説明図、図4は画像不良の説明図である。
図1に示すように、二次転写ローラ11と中間転写ベルト9との間に二次転写部T2が形成される。二次転写ローラ11は、両方の軸端に配置された不図示の加圧ばねによって付勢されて、対向ローラ10との間に中間転写ベルト9を狭み込む。二次転写ローラ11は、転写電源D2から記録材の厚みに応じた正極性の直流電圧(例えば2kV)を印加されることによって、接地電位に接続された対向ローラ10との間にトナー像の転写電界を形成する。二次転写ローラ11へ正極性の直流電圧が印加されると、負極性に帯電して中間転写ベルト9に担持されたトナー像が、中間転写ベルト9に重ねて二次転写部T2を挟持搬送される記録材へ転写される。
図3に示すように、二次転写ローラ11の上流部には搬送ガイド24が設けられ、記録材Pは、レジストローラ23によって、中間転写ベルト9へ突き当たるように搬送される。このため、記録材Pが中間転写ベルト9へ突き当たった瞬間に、中間転写ベルト9に張力変動が発生し、中間転写ベルト9の正常な駆動に外乱を及ぼして衝撃的な速度変動が発生する。
図4の(c)に示すように、厚紙が突き当たって中間転写ベルト9に発生した衝撃的な速度変動は、中間転写ベルト9の上流側と下流側とに伝播して一次転写部TY、TM、TC、TKに達する。そして、図4の(b)に示すように、衝撃的な速度変動に伴って像担持体と中間転写ベルトとが相対移動して、トナー像の転写に悪影響を及ぼす。しかし、普通紙の場合には、図4の(a)に示すように、衝撃的な速度変動のレベルは、一次転写部TY、TM、TC、TKでトナー像の転写に悪影響を及ぼすまでには至らない。
近年の画像品質向上の要求や対応記録材の多様化要求に伴い、様々な技術提案がなされている。
二次転写部での劣化画像の一つにトナーの飛び散り画像が挙げられるが、この飛び散り画像は、二次転写部に発生する電界領域に記録材が進入したときに、中間転写ベルトと記録材の間の空隙が大きい程悪化する。
図3に示すように、これを防止するためには、二次転写部T2の手前で中間転写ベルト9と記録材Pとを密着させてから電界領域に進入させる必要がある。記録材Pを二次転写部T2の電界領域より上流で中間転写ベルト9に接触させ、重ね合わせた状態で二次転写ニップに搬送してトナー像を転写する。
このため、記録材Pの搬送方向を対向ローラ10と二次転写ローラ11とで形成される二次転写ニップに向けるのではなく、二次転写部T2の上流の中間転写ベルト9が対向ローラ10で支持されていない位置へ記録材Pが衝突してしまう。普通紙では、記録材Pの先端が撓んで衝突の衝撃は小さいが、厚紙のような剛性の高い記録材が衝突すると桁違いの縦波振動と張力変動が中間転写ベルト9に発生する。
また、近年、画像形成装置の生産性を高めるべく、中間転写ベルトの回転速度とともに記録材の給送速度が高められており、二次転写部へ給送された記録材が中間転写ベルトに突き当たって発生する衝撃的な振動が大きくなっている。
あまりに大きな衝撃が加わると、既存の中間転写ベルト支持機構では、完全に振動エネルギを吸収することができず、駆動ローラ12のねじれ等を引き起こしてしまう。駆動ローラ12にねじれが生じたり、ギアのバックラッシによるがたつき生じたりしたタイミングで一次転写部でトナー像が転写されていると、図4の(b)に示すように、トナー像に主走査方向のスジが発生してしまう。
従って、本実施例の目的は、坪量の大きい記録材Pが中間転写ベルト9に当たって発生する衝撃的な振動が一次転写部TM、TC、TKに影響を与えないようにすることである。坪量の大きい記録材Pを用いた場合でもスジ画像の無い高品位の画像を形成することである。
<中間転写ベルト>
図5は中間転写ベルトの駆動系の説明図、図6は一次転写ローラの配置の説明図、図7は一次転写部の構成の説明図である。
図5に示すように、中間転写ベルト9は、テンションローラ13、駆動ローラ12、及び対向ローラ10に掛け渡して支持され、駆動ローラ12に接続された不図示の駆動モータに駆動されて矢印R2方向に回転する。駆動ローラ12の表面にはゴムライニングを施して中間転写ベルト9のスリップを抑制している。テンションローラ13は、中間転写ベルト9の内側面を弾性的に支持して振動や張力変動を吸収する。
画像形成部PY、PM、PC、PKを備えた画像形成装置100において、色ずれ等の画像問題を避けて高品質の画像を形成するには、中間転写ベルト9を安定した速度で走行させることが重要である。中間転写ベルト9の速度変動には、支持回転体の偏心精度や歯車列の噛み合い誤差に起因する周期的な速度変動と、二次転写部T2に記録材Pが突入した際に発生する突発的な速度変動とがある。
突発的な速度変動が大きくなる要因として、記録材Pの多様化要求に伴う記録材の坪量の増加が挙げられる。画像形成装置100は、本来は坪量200g/m2までの普通紙を上限として設計されていたが、近年では300〜350g/m2の厚紙の搬送が要求されている。
記録材Pの坪量が増加すると、記録材Pの剛性が上がっていくため、二次転写部T2の上流で中間転写ベルト9と記録材Pとが接触した際に発生する突発的な振動が大きくなる。二次転写部T2で飛び散り等の画像劣化を発生させることなく坪量の大きい記録材Pに対応するためには、非常に大きい突発的な振動を効果的に吸収することが重要となる。
中間転写ベルト9は、厚さ100μmのポリイミドフィルムで周長800mmの無端状に形成されている。ポリイミドフィルムは、ゴムベルトに比べると、伸縮しないことに加えてヤング率が3〜5Gpaと大きいため、通常の状態であれば、二次転写部T2で発生した張力振動をほとんど減衰することなく、一次転写部TY、TM、TC、TKへ伝播する。記録材Pが中間転写ベルト9に衝突して発生する衝撃は、ほとんど吸収されず、全長を保ったまま中間転写ベルト9の全長に渡って位置ずれを引き起す。
図6に示すように、一次転写ローラ5Yは、感光ドラム1Yの中心から中間転写ベルト9に引いた垂線から、中間転写ベルト9の回転方向の下流側へ距離dだけシフトさせて配置される。二次転写部について上述したように、飛び散り画像を抑制して画像不良を防止するために、一次転写部T1の手前で感光ドラム1Yに中間転写ベルト9を重ね合わせた状態で電界領域に進入させている。
図5に示すように、中間転写ベルト9を伝播する突発的な振動を押さえるためには、中間転写ベルト9の張力を上げて記録材Pが衝突したときの変位量を小さくする方法が考えられる。
しかし、中間転写ベルト9の張力を大きくすると、中間転写ベルト9によって一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kが押し下げられる。これにより、一次転写部TY、TM、TC、TKにおける像担持体と中間転写ベルトの接触が不安定になって十分な一次転写ニップを形成できなくなり、中間転写ベルト9へトナー像を効率良く転写することが困難になる。
一次転写ローラ5Yが中間転写ベルト9を押し上げて感光ドラム1Yに巻き付けているため、中間転写ベルト9の張力を大きくし過ぎると、一次転写部TYで一次転写ニップを形成し難くなる。中間転写ベルト9に押し下げられて、感光ドラム1Yから一次転写ローラ5Yが逃げ易くなる。
また、中間転写ベルト9の張力を大きくし過ぎると、中間転写ベルト9を張架する駆動ローラ12等の支持回転体が撓んで、ベルト回転面が湾曲して中間転写ベルト9に皺が発生したり、ベルト走行が不安定になったりする。中間転写ベルト9と支持回転体との間にゴミなどの異物を噛み込んで、中間転写ベルト9がでこぼこに変形して画像劣化の原因になる。
また、中間転写ベルト9の張力を大きくし過ぎると、中間転写ベルト9を駆動する駆動モータ14の負荷トルクが大きくなり、モータの大型化や消費電力の増大が問題となる。
そこで、画像形成装置100では、一次転写部TYの一次転写ローラ5Yにニップ圧力調整機構50を設け、テンションローラ13に中間転写ベルトの張力調整機構60を設けている。高剛性記録材対応モードが選択されると、テンションローラ13の付勢力を低下させると同時に一次転写ローラ5Yのニップ圧を高める。これにより、中間転写ベルト9の張力を高めることなく、テンションローラ13と一次転写ローラ5Yとで二次転写部T2からの二次転写部T2からの突発的な速度変動を遮蔽する。テンションローラ13と一次転写ローラ5Yの間の中間転写ベルト9に深刻な張力振動を伝播させないようにして、一次転写部TM、TC、TKでのトナー像の乱れを抑制する。
<ニップ圧力調整機構>
図8は一次転写ローラのニップ圧調整機構の説明図である。
図5に示すように、中間転写ベルト9の回転方向における最も上流側に位置する一次転写部TYは、一次転写ローラ5Yのニップ圧調整機構50を付設されている。ニップ圧調整機構50は、感光ドラム1Yとの間での中間転写ベルト9の挟持力を変更可能である。
図7に示すように、一次転写ローラ5Yは、アスカーC硬度35°程度のスポンジゴムローラで、バネ部材51により感光ドラム1Yに加圧されている。
感光ドラム1Yには駆動が入力されて、中間転写ベルト9の回転速度よりも若干速く矢印R1方向に回転している。中間転写ベルト9は、感光ドラム1Yに巻き付けられながら一次転写ローラ5Yとの間に狭持されて転写ニップを形成し、その後、曲率を持って下流側へ回転する。このため、中間転写ベルト9は、感光ドラム1Yから加速方向に力を受けている。
図8に示すように、ニップ圧力調整機構50は、一次転写ローラ5Yと感光ドラム1Yとの間に挟み込む中間転写ベルト9に対する加圧力を可変に設定する。
一次転写ローラ5Yの両端は、バネ部材51によって感光ドラム1Yに向かって加圧されている。バネ部材51の下部は、中間転写ベルト9を支持するフレームに対して昇降可能に配置されたカムフォロア54に固定されている。
カムフォロア54は、駆動モータ53を作動させて偏心カム52を回転することで昇降して、バネ部材51を介した一次転写ローラ15の加圧力を変化させる。
制御部110は、高剛性記録材対応モードが選択されると、光学センサ55がカムフォロア54を検出するまで駆動モータ53を作動させて、一次転写ローラ5Yに対する付勢力を高めて一次転写ニップ圧を上昇させる。
なお、図8は一次転写ニップ圧を変更する機構の例であって、一次転写ニップ圧の変更方法は、特にこの構成に限定されるものではない。
<中間転写ベルトの張力調整機構>
図9は中間転写ベルトの張力調整機構の説明図である。
図5に示すように、二次転写部T2における記録材Pの衝突によるエネルギは、中間転写ベルト9を駆動する駆動ローラ12の表面に滑りが生じない範囲で、中間転写ベルト9に張力を与えるバネ部材が吸収する。バネ部材としては、テンションローラ13に連結されたバネ部材と一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kに連結されたバネ部材とがある。
そして、テンションローラ13のバネ圧を大きくしたとき、一次転写部TY、TM、TC、TKで必要な一次転写ニップ圧を確保するには、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kのバネ圧を大きくする必要がある。
しかし、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kのバネ圧を大きくすると、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kが撓んで軸方向のニップ圧分布を安定させることが難しくなる。
そのため、安定した一次転写を実現するには、テンションローラ13の中間転写ベルト9に対する押圧力(バネ圧)を上げることは適切ではない。むしろテンションローラ13のバネ圧は、振動吸収を優先して下げる方向が適切であり、中間転写ベルト9の掛け回し形状や一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kの硬度や位置等の条件の組み合わせによって最適値が決定される。
しかし、テンションローラ13のバネ圧を極端に小さくすると、中間転写ベルト9と駆動ローラ12との間で滑りが生じて、色ずれ等の画像劣化を引き起こすため、テンションローラ13のバネ圧を極端に下げることも適切ではない。
テンションローラ13のバネ圧と一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kのバネ圧のバランスを最適化したとき、記録材Pの衝突によるエネルギは、もはや駆動ローラ12の表面に滑りを発生しない。駆動ローラ12の速度変動が小さい条件においては、テンションローラ13に連結されたバネ部材、一次転写ローラに連結されたバネ部材、および中間転写ベルト9が巻き付けられたときに持っている弛みによって記録材Pの衝突による振動が吸収される。
図9に示すように、テンションローラ13は、バネ部材27に連結されて80N(8kgf)の張力が付与されている。テンションローラ13は、中間転写ベルト9を張架する支持回転体を保持するフレームに対してスライド移動が可能に保持され、カムフォロア62に対して加圧力可変に構成されている。
また、バネ部材27の固定部には、カムフォロア62が固定され、カムフォロア62は、カムフォロア62を移動させるように偏心カム61が配置されている。
制御部110は、高剛性記録材対応モードが選択されると、光学センサ64がカムフォロア62を検出するまで駆動モータ63を作動させて、中間転写ベルト9を押圧するテンションローラ圧を低下させる。
なお、図5はテンションローラ圧を変更する機構の例であって、テンションローラ圧の変更方法は、特にこの構成に限定されるものではない。
<実験結果>
図10は通常記録材対応モードで普通紙を用いた際の速度変動の説明図、図11は通常記録材対応モードで厚紙を用いた際の速度変動の説明図、図12は高剛性記録材対応モードで厚紙を用いた際の速度変動の説明図である。各図中、(a)は駆動ローラ位置での中間転写ベルトの速度変動、(b)はテンションローラ位置での中間転写ベルトの速度変動である。グラフ中、横軸には時間を示し、縦軸には中間転写ベルト表面速度を示している。
図10の(a)に示すように、剛性の低い普通紙(80g/m2)が中間転写ベルトに衝突した時(矢印)、駆動ローラ位置の中間転写ベルトには速度変動がほとんど発生しない。
図11の(a)に示すように、剛性の高いコート紙(300g/m2)が中間転写ベルトに衝突した時(矢印)、駆動ローラ位置の中間転写ベルトには大きな速度変動が発生する。記録材が中間転写ベルトに衝突すると、駆動ローラ位置では、中間転写ベルトが一度減速方向に振れ、その反動で増速方向に振れている。
このときの出力画像には、記録材が中間転写ベルトに衝突した瞬間に一次転写された位置に、主走査方向に伸びるスジ画像が観察された。最初の減速で画像倍率は一度縮小し、その後の増速で拡大方向に振れるため、濃いスジの後に薄いスジが発生していた。
図1に示すように、通常記録材対応モードでは、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kの付勢力は、それぞれ8N(800gf)に設定されている。通常記録材対応モードでは、剛性の高い記録材Pが中間転写ベルト9に衝突したときに生じる振動の影響が、一次転写部TY、TM、TC、TKに及ぶ。
図10の(b)に示すように、剛性の低い普通紙(80g/m2)が中間転写ベルトに衝突した時(矢印)、テンションローラ位置の中間転写ベルトには速度変動がほとんど発生しない。
図11の(b)に示すように、剛性の高いコート紙(300g/m2)が中間転写ベルトに衝突した時(矢印)も、テンションローラ位置の中間転写ベルトには速度変動がほとんど発生しない。
つまり、テンションローラ13によって中間転写ベルト9を伝播する振動が吸収されるため、記録材Pが中間転写ベルト9に衝突したときに生じる振動は、中間転写ベルト9の下流側へ向かって図中の時計回りに伝播する。従って、時計回りに伝搬している振動を、反時計回りに伝播させて、テンションローラ13に吸収される割合を高めることが必要になる。
そこで、記録材Pが中間転写ベルト9に衝突したときに生じる振動が時計回りに伝播し難くするために、高剛性記録材対応モードでは、一次転写ローラ5Yによる中間転写ベルト5Yのニップ圧を高める。一次転写ローラ5Yの付勢力を8N(800gf)から16N(1600gf)に変更し、テンションローラ13のバネ圧80N(8kgf)から70N(7kgf)に変更する。
図8に示すように、制御部110は、高剛性記録材対応モードが選択されると、駆動モータ53により偏心カム52を回転させて、カムフォロア54を上昇させて一次転写ローラ5Yの付勢力を高める。
図9に示すように、制御部110は、高剛性記録材対応モードが選択されると、駆動モータ63により偏心カム61を回転させて、カムフォロア62を破線位置へ移動させてテンションローラ13の付勢力を低くする。
図12の(a)に示すように、高剛性記録材対応モードでは、剛性の高いコート紙(300g/m2)が中間転写ベルトに衝突した時(矢印)、通常記録材対応モードよりも駆動ローラ位置の速度変動が緩和される。駆動ローラ位置での速度変化が小さくなり、インパルス的な速度変動波形が緩やかになった。
図11の(b)に示すように、高剛性記録材対応モードでは、剛性の高いコート紙(300g/m2)が中間転写ベルトに衝突した時(矢印)、テンションローラ位置へ通常記録材対応モードよりも大きな速度変動が伝播して吸収される。高剛性記録材対応モードでは、テンションローラ位置での速度変化が見えるようになり、中間転写ベルトに沿って反時計回りに振動が伝搬している。
このときの出力画像には、スジが確認されず、画像の良化が確認された。
ところで、図1に示すように、高剛性記録材対応モードでは、一次転写ローラ5Yの付勢力を高くする弊害として、中抜け等の転写不良が増えて出力画像が悪化することが予想される。
そこで、画像形成装置100では、4つの画像形成部PY、PM、PC、PKのうちで最も転写ムラが目立たず、最も転写効率の高い画像形成部PYを、最も駆動ローラ12に近い側に配置した。二番目に転写効率の高い画像形成部PKを最もテンションローラ13側に配置した。これにより、画像形成部PYで中抜けが多少増えても転写不良が目立たなくなった。
また、一次転写ローラ5Yの付勢力を高くすると、一次転写ローラ5Yの潰れ量が増加して中間転写ベルト9の表面速度が変化し、中間転写ベルト9上へ感光ドラム1Yから転写されるトナー像の位置がずれてしまう。画像形成部PYと画像形成部PM、PC、PKとの間で色レジがずれてしまう。
そこで、画像形成装置100では、通常記録材対応モードと高剛性記録材対応モードとが切り替わるごとに、レジマーク測定モードを実行して、最も上流側に位置する像担持体に担持させるトナー像の位置を調整する。
感光ドラム1Y、1M、1C、1Kから中間転写ベルト9へ各色の十文字型のレジマークトナー像を転写し、最も下流側に位置する像担持体の下流側に配置された光学式センサ18で各色のレジマークトナー像の検出タイミングを測定する。制御部110は、測定結果に応じて感光ドラム1Yに対する露光装置3Yを用いた静電像の書き込みタイミングを調整する。これにより各色色ずれの少ない出力画像を得ることが可能となる。
以上述べてきたように、画像形成装置100では、予め搬送される記録材Pの剛性情報を検知し、剛性が高い記録材の場合には、一次転写ローラ圧を上げ、テンションローラ圧を小さくする。これにより、中間転写ベルト9の速度変動を小さく抑制して、記録Pが中間転写ベルト9に衝突した際に発生する突発的な振動が一次転写部TM、TC、TKに伝搬することを防止する。
<実施例1>
図13は実施例1のモード切替制御のフローチャートである。
図5を参照して図13に示すように、実施例1では、通常記録材対応モードと高剛性記録材対応モードとの判別は、操作パネル108を通じた操作者の画像形成ジョブの設定入力値により行われる。操作パネル108を通じて入力された情報は制御部110に伝送される。
操作者が操作パネル108を通じて記録材Pを選択して画像形成ジョブの開始ボタンを押すと、ジョブスタート前の前回転動作中に、制御部110が駆動モータ53を作動させて一次転写ローラ圧を変更する。
制御部110は、高剛性紙か否かを判別して(S11)、高剛性紙の場合には(S11の高剛性紙)高剛性記録材対応モードを選択する。一次転写ローラ5Yの付勢力を高めてテンションローラ13の付勢力を低下させる(S14)。
図8に示すように、制御部110からモータドライバ56に信号が送られ、紙剛性情報に基づいた適切な一次転写ローラ圧になるように、予め設定されたカムフォロア54位置に来るように駆動モータ53により偏心カム52を回転させる。
図9に示すように、制御部110からモータドライバ66に信号が送られ、紙剛性情報に基づいた適切なテンションローラ圧になるように、予め設定されたカムフォロア62位置に来るように駆動モータ63により偏心カム61を回転させる。
その後、レジマーク測定モードを実行して色ずれ補正を行った(S15)後に画像形成を開始して(S12)、画像を出力する(S13)。
これにより、一次転写ローラ5Yとテンションローラ13とによって一次転写部TM、TC、TKに衝撃的な力が伝搬することを阻止して、縞模様のない高画質な画像を提供する。
また、高剛性記録材対応モードでは、厚紙が中間転写ベルト9に接触するまでに感光ドラム1Yから中間転写ベルト9への前の画像のイエロートナー像の転写を完了させる。すなわち、最も上流側に位置する像担持体(1Y)から中間転写ベルト(9)へトナー像を転写し終えた後に二次転写部(T2)へ記録材を給送させる。
また、厚紙が中間転写ベルト9に接触した後に、感光ドラム1Yから中間転写ベルト9へ次の画像のイエロートナー像が転写開始されるように、露光装置3Yの書き込み開始タイミングが制御される。すなわち、記録材の先頭が二次転写部(T2)を通過した後に、最も上流側に位置する像担持体(1Y)から中間転写ベルト(9)へトナー像を転写し始める。
これにより、イエロートナー像についても、厚紙が中間転写ベルト9に接触した際の影響が無い状態で、感光ドラム1Yから中間転写ベルト9へトナー像を連続的に転写できる。
一方、高剛性紙に該当しない場合には(S11の低剛性紙)通常記録材対応モードを選択する。一次転写ローラ5Yの付勢力を通常の所定値とし、テンションローラ13の付勢力を通常の所定値とした状態で、画像形成を開始して(S12)、画像を出力する(S13)。
実施例1の制御によれば、記録材Pが中間転写ベルト9に衝突して衝撃的な張力振動が中間転写ベルト9に発生しても、一次転写を行っている画像形成部PM、PC、PKの両外側で張力振動の伝播が抑制される。一次転写ローラ5Yの加圧力を上げ、テンションローラ13のテンションを下げることにより、確実に中間転写ベルト9の張力変動を吸収して、一次転写部TM、TC、TKに衝撃的な力が伝播しにくい。このため、縞模様のない高画質な画像を提供できる。
<実施例2>
図5に示すように、実施例2では、記録材の搬送路に設けられた紙厚検知センサ109によって画像形成ジョブで供給された記録材Pの厚みを測定する。紙厚検知センサ109によって得られた検出結果の情報は制御部110に伝送される。制御部110からモータドライバ56、66に信号が送られ、紙剛性情報に基づいた適切な一次転写ローラ圧及びテンションローラ圧になるように、駆動モータ53、63を作動させて偏心カム52、61を回転させる。
なお、紙厚検知センサ109に構成に関する先行技術の例は、特許文献3に示されており、LEDから発光して検知領域からの反射光を位置検出素子に集光した光の重心変化から読み取るものである。
これにより、普通紙と厚紙とが混合して画像形成される場合でも、普通紙では通常記録材対応モードを適用し、厚紙では高剛性記録材対応モードを適用して、記録材の衝突ショックに起因する画像不良を発生させない。
高剛性記録材対応モードでは、厚紙が一中間転写ベルト9に接触するまでに感光ドラム1Yから中間転写ベルト9へのイエロートナー像の転写を完了させた後に、一次転写ローラ圧を上昇させる。一次転写ローラ圧の上昇速度は、中間転写ベルト9の走行にショックや影響を及ぼさない範囲に設定してある。
そして、厚紙が中間転写ベルト9に接触するタイミングでは、感光ドラム1Yから中間転写ベルト9へイエロートナー像が転写されないように、露光装置3Yの書き込み開始タイミングが制御される。これにより、厚紙が一中間転写ベルト9に接触した際の影響が無い状態で、感光ドラム1Yから中間転写ベルト9へトナー像を連続的に転写できる。
ここで、紙厚検知センサ109を使用する場合、紙厚検知センサ109の検出後に画像を書き出し始めるために、記録材Pの搬送経路上で画像書き出しが開始される前の位置に紙厚検知センサ109が配置される必要がある。これは、ジョブ中に記録材Pの種類が変更された場合に対応するためで、異なった記録材Pに対して同じジョブで搬送される場合、紙厚検知センサ109による検知後に一次転写ローラ圧が変更される。
記録材Pは、紙厚検知センサ109で厚さを測定された後にレジストローラ23位置で停止し、一次転写ローラ圧の変更後にレジストローラ23によって二次転写部T2への給送が再開される。
なお、記録材Pの搬送経路上で画像書き出しが開始される前の位置に紙厚検知センサ109を配置できない場合、書き出し中の画像をキャンセルして一次転写ローラ圧を変更した後にジョブを再開してもよい。この場合、キャンセルされた中間転写ベルト9上のトナー像は、二次転写ローラ11に印加する電圧を反転して転写電界を逆転させた二次転写部T2を素通りさせて、ベルトクリーニング装置19で回収する。
その間、記録材Pは、レジストローラ23で停止して待機し、一次転写ローラ圧の変更後にレジストローラ23によって搬送を再開される。
実施例2によれば、搬送される記録材Pの剛性が同一ジョブ内で変化する場合でも、記録材Pが二次転写部T2に突入するときに発生する画像不良の無い印刷物を出力することが可能となる。
実施例2によれば、記録材Pが中間転写ベルト9に衝突して衝撃的な張力振動が中間転写ベルト9に発生しても、一次転写を行っている画像形成部PM、PC、PKの両外側で張力振動の伝播を抑制する。一次転写ローラ5Yの加圧力を上げ、テンションローラ13のテンションを下げることにより、確実に張力変動を吸収して、一次転写部TM、TC、TKに衝撃的な力が伝播しにくい。このため、縞模様のない高画質な画像を提供できる。
<実施例3>
図14は実施例3の画像形成装置の構成の説明図である。
図5に示すように、実施例1、2では、中間転写ベルトの回転方向で最も上流側に位置する像担持体(1Y)の転写ローラ(5Y)にニップ圧力調整機構(50)が配置されている。
図14に示すように、これに対して実施例3では、最も上流側に位置する転写ローラ(5Y)のさらに上流側に、挟持手段(57、12)及びニップ圧力調整機構(50)が配置されている。ニップ圧力調整機構50は実施例1と同じものである。スポンジローラ57は、転写の役割を担わないが、挟み込みのショックが少ないため、実施例1の一次転写ローラ5Yと同じものを用いた。
<実施例4>
図15は実施例4の画像形成装置の構成の説明図である。
図15に示すように、実施例4では、駆動ローラ12のさらに上流側に挟持手段(57、58)とニップ圧力調整機構(50)とが配置されている。圧力調整機構50は実施例1と同じもの、スポンジローラ57は実施例1の一次転写ローラ5Yと同じもの、対向ローラ58は、実施例1の駆動ローラ12と同じものを用いた。