JP2010151018A - 燃料噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 噴射される燃料の貫徹力の低下と微粒化との両立が可能な噴霧形態を実現する燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】 n個の噴射孔40を備えた噴射ノズル26を有する燃料噴射装置6であって、噴射孔40は、同一円周上に所定の角度間隔をもって配置され、上流側から下流側へと進むにつれて通路径が増加するテーパ部41と、一端がテーパ部41の下流端に連通する第1の等径部42とを有し、(1)θ(テーパ部のテーパ角)≧45°、(2)d2(テーパ部下流端の直径)≧1.5d1(テーパ部上流端の直径)、(3)s1(テーパ部の長さ)≧0.2t(噴射孔の長さ)、(4)s2(第1の等径部の長さ)≧0.5t、(5)n≧2、(6)β≦40°(β:隣り合う噴射孔の軸線のなす角度)を満たすことを特徴とする。
【選択図】 図5

Description

本発明は燃料噴射装置に係り、特に内燃機関の気筒内噴射に供する燃料噴射装置に関する。
自動車用エンジンの燃焼室に燃料を供給する燃料噴射装置として、吸気通路(吸気マニホールド等)に燃料を噴射する吸気管噴射型と、気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射型とが存在する。筒内噴射型の燃料噴射装置は、例えば直噴ガソリンエンジンやHCCI(予混合圧縮着火)エンジン、直噴ディーゼルエンジンに使用され、燃焼効率の向上や有害排出ガス成分の減少等に寄与している。
筒内噴射に供される燃料噴射装置では、燃料の噴霧形態は、ノズルや、ノズルの先端に形成される噴射孔の形状によって変化し、燃焼効率や排出ガス成分に大きく影響する。例えば、噴射される燃料の微粒化を目的として、所定の大きさの第1孔と、この下流側に連通するとともに第1孔よりも径が大きい第2孔とを組み合わせた噴射孔がある(例えば、特許文献1)。また、通過する燃料の速度に応じて噴霧角および噴射形態を変化させることを目的として、入口側が等径で、出口側が拡径する噴射孔がある(例えば、特許文献2)。
特開2004−150398号公報 特開2008−64038号公報
従来の燃料噴射装置においては、噴射孔より噴射される燃料の貫徹力が大きい場合には、ピストンやスリーブに燃料が付着して燃焼効率が低下する問題がある。また、貫徹力を低下させるべく燃料の供給圧力を低減させた場合には、燃料の微粒化が阻害され、燃料の蒸発が遅くなるとともに燃料の一部がピストン等に付着してさらに燃焼効率が低下する問題がある。
本発明は以上の問題を鑑みてなされたものであって、噴射される燃料の貫徹力の低下と微粒化との両立が可能な噴霧形態を実現する燃料噴射装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明は、複数の噴射孔(40)を備えた噴射ノズル(噴射ノズル部26)を有する燃料噴射装置(6)であって、前記噴射孔は、同一円周上に所定の角度間隔をもって配置され、上流側から下流側へと進むにつれて通路径が増加するテーパ部(41)と、一端が前記テーパ部の下流端に連通する第1の等径部(42)とを有し、以下の条件式(1)〜(4)を満たすことを特徴とする。
θ≧45°・・・・・(1)
d2≧1.5d1・・・・・(2)
s1≧0.2t・・・・・(3)
s2≧0.5t・・・・・(4)
ただし、θ:テーパ部のテーパ角[deg]、d1:テーパ部の上流端の直径[mm]、d2:テーパ部の下流端の直径[mm]、t:噴射孔の長さ[mm]、s1:テーパ部の長さ[mm]、s2:第1の等径部の長さ[mm]である。
この構成によれば、各噴射孔より噴射される燃料の軸線は噴射孔の軸線と概ね一致し、噴霧角は約40°となる。噴射孔の形状によって、各噴射孔より燃料は円錐状に噴射され、条件式(1)、(2)、(3)を満たすことによって、各噴射孔から噴射される燃料の噴霧角は約40°となり、条件式(4)を満たすことによって、各噴射孔から噴射される燃料の進行方向は各噴射孔の軸線と概ね一致するようになる。
本発明の第2の発明は第1の発明において、以下の条件式(5)および(6)を満たすことを特徴とする。
n≧2・・・・・(5)
β≦40°・・・・・(6)
ただし、n:噴射孔の数、β:隣り合う噴射孔の軸線のなす角度[deg]である。
この構成によれば、各噴射孔から噴射された燃料は、互いに衝突し合って混合することで噴射方向が乱され、噴射ノズル側に巻き上がったような形態(以下、巻き上げ噴霧という)となる(図16(a)参照)。条件式(1)〜(6)を満たすことで、各噴射孔より噴射される燃料の噴霧角が、隣り合う噴射孔の軸線のなす角度より大きくなるため、隣り合う噴射孔から噴射される燃料同士が一部において重なり合い、衝突する。各噴射孔より噴射される燃料同士が衝突し合うことによって、噴射流が混合されるとともに反射し、巻き上げ噴霧が形成される。
本発明の第3の発明は第1の発明において、以下の条件式(7)および(9)を満たすことを特徴とする。
n≧3・・・・・(7)
β≦40°・・・・・(8)
ただし、n:噴射孔の数、α:噴射ノズルより噴射される燃料の噴霧角[deg]、β:隣り合う噴射孔の軸線のなす角度[deg]である。
この構成によれば、各噴射孔から噴射された燃料は、巻き上げ噴霧を形成する。条件式(1)〜(4)および条件式(7)〜(9)を満たすことで、各噴射孔より噴射される燃料の噴霧角が、隣り合う噴射孔の軸線のなす角度より大きくなるため、隣り合う噴射孔から噴射される燃料同士が一部において重なり合い、衝突し、巻き上げ噴霧を形成される。
本発明の第4の発明は第1〜第3の発明のいずれかにおいて、前記噴射孔は、下流端が前記テーパ部の上流端に連続する第2の等径部(43)を有し、以下の条件式(10)を満たすことを特徴とする。
s3<0.3t・・・・・(10)
ただし、s3:第2の等径部の長さ(mm)である。
この構成によれば、噴射孔の加工が容易になる。特に、テーパ部の上流端の形成が容易になる。
以上の構成により、燃料噴射装置から噴射される燃料は巻き上げ噴霧を形成し、噴射される燃料の貫徹力の低下と微粒化とが図れる。
以下、図面を参照して、本発明をエンジンの燃料噴射装置に適用した実施形態を詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る燃料噴射装置6が取り付けられたエンジン1の要部を示す断面図である。以下の説明においては、図1における上方側、すなわちエンジン1のシリンダヘッド側を上方とする。
図1に示すように、エンジン1は、ピストン2が摺動自在に内嵌するシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上部に締結されたシリンダヘッド4とを有している。シリンダヘッド4には、その下面に燃焼室5が画成されるとともに、燃料噴射装置6が嵌挿される噴射装置装着孔7と、点火プラグ8が取り付けられるプラグ装着孔9とが燃焼室5に開口するかたちで穿設されている。燃料噴射装置6は、いわゆるトップフィード型であり、シリンダヘッド4の上部に設置されたコモンレール10から燃料の供給を受ける。また、点火プラグ8は、いわゆるロングリーチ型であり、コイル一体型のプラグキャップ11から電力の供給を受ける。なお、シリンダヘッド4には吸排気バルブやその駆動機構等も設置されているが、煩雑になることを避けるため、それらについての説明は省略する。
図2は、第1実施形態に係る燃料噴射装置6を示す縦断面図である。燃料噴射装置6は、インジェクタボディ21と、インジェクタボディ21の下端に固定された(加締められた)ノズルボディ22と、インジェクタボディ21の上部に外嵌したソケット23とを外殻としている。インジェクタボディ21には上下方向に貫通する第1通路24が形成されており、ノズルボディ22は、内部に第1通路24の下端側に連続する第2通路25が形成された円筒部22aと、円筒部22aの一端を閉塞するプレート状の噴射ノズル部26とを備えている。第2通路25は、噴射ノズル部26に形成された複数の噴射孔40(図3参照)を介して外部と連通している。第2通路25には、ニードルバルブ27が摺動自在に内嵌されており、その上端は第1通路24内へと延出している。噴射ノズル部26の第2通路25側の部分には、ニードルバルブ27の下端に設けられたニードル部27aが着座するバルブシート28(図3参照)が形成されている。
第1通路24の中間部にはカラー29が圧入されて固定されており、カラー29とニードルバルブ27との間には圧縮コイルばねであるバルブスプリング30が介装されている。これにより、ニードルバルブ27はバルブスプリング30に付勢され、バルブシート28に着座している。また、第1通路24の上端側には、フィルタ31が取り付けられている。
インジェクタボディ21には、コイル32およびコア33が内装されている。コイル32は、ソケット23を通過して配設されたリード線34を介して、図示しないインジェクタドライバから電力を受けて磁界を発生する。コイル32に磁界が発生すると、コア33に磁界が励磁され、ニードルバルブ27がバルブスプリング30の付勢力に抗して上方側に引っ張られ、バルブが開弁される。
インジェクタボディ21の上端側には、Oリング35およびバックアップリング36が外嵌されており、コモンレール10との接合部のシール性が確保されている。ノズルボディ22の先端部には筒状シール37が外嵌されており、ノズルボディ22と噴射装置装着孔7との隙間がシールされている。
図3は、第1実施形態に係る燃料噴射装置6の噴射ノズル部26を拡大して示す縦断面図である。図4は、図3の矢印IVの方向から見た図であって、噴射ノズル部26の底面図である。図3に示すように、噴射ノズル部26は板形状を呈し、ノズルボディ22の軸線Aと直交する円板状の中央部26aと、中央部26aの周縁から径方向外方かつノズルボディ22の基端側に伸びる環状の傾斜部26bと、傾斜部26bの周縁から径方向外方に延び、円筒部22aに結合した環状の周縁部26cとを備えている。
バルブシート28は、周縁部26cの第2通路25側の面に形成されている。図2に示すように、ニードルバルブ27のニードル部27aがバルブシート28に着座した状態において、ニードルバルブ27、傾斜部26bおよび中央部26aによってチャンバ26dが画成される。
傾斜部26bには、複数個(n個)の噴射孔40が穿設されている。図4に示すように、噴射孔40は、ノズルボディ22の軸線と一致する噴射ノズル部26の中心軸線Aを中心とする同一円上に隣り合う噴射孔40とそれぞれ角度δの間隔をもって等間隔に配置されている。図3に示すように、各噴射孔40の軸線(以下、噴射孔軸線という)Bは、中心軸線Aに対して、所定の角度を有して傾斜している。
図5は、図3に示す噴射孔40を拡大して示す縦断面図である。噴射孔40は、上流端がチャンバ26dに開口したテーパ部41と、上流端がテーパ部41に連通するとともに下流端が噴射ノズル部26の外部に開口した第1の等径部42とにより形成されている。テーパ部41はテーパ角θ[deg]を有し、その径が上流側から下流側へと進むにつれて第1の直径(テーパ部41上流端の直径)d1[mm]から第2の直径(テーパ部41下流端の直径)d2[mm]に増加するように形成されている。第1の等径部42は、テーパ部41と同軸に設けられ、第2の直径d2を有している。噴射孔40の長さt[mm]は、傾斜部26bの厚みに等しく、テーパ部41の長さs1[mm]と第1の等径部42の長さs2[mm]との合計に等しい。
図6および図7は、燃料噴射装置6の噴射孔軸線Bの配置を示す図である。図6および図7に示すように、噴射孔40の噴射孔軸線Bによって形成される円錐の頂角を噴射ノズル部26の噴霧角α、隣り合う2つの噴射孔40の噴射孔軸線Bがなす角度をβとする。ここで、角度βは投影面上における角度、すなわち図4に示す隣接した噴射孔40間の相対角度δとは異なり、実際に2本の噴射孔軸線Bがなす角度である。
以上に説明したテーパ角θ、第1の直径d1、第2の直径d2、噴射孔の長さt、テーパ部41の長さs1、第1の等径部42の長さs2、噴射孔40の数n、噴射ノズルより噴射される燃料の噴霧角α、隣り合う噴射孔の軸線Bのなす角度βが、以下の条件式(1)〜(4)を満たすように燃料噴射装置6が構成されている。
θ≧45°・・・・・(1)
d2≧1.5d1・・・・・(2)
s1≧0.2t・・・・・(3)
s2≧0.5t・・・・・(4)
以上のように構成した各噴射孔40は、図3に示すように、噴霧角εをもって円錐状に燃料を噴射する。このときの、噴射孔40から噴射される燃料の軸線(燃料噴射軸線)Cと噴射孔軸線Bとのなす角度を噴霧偏向角γとする。
図8は、テーパ部41のテーパ角θと噴射孔40あたりの噴霧角ε[deg]との関係を示す図である。図8に示す関係は、燃料噴射圧を10MPa、噴射場圧力(燃料が噴射される気筒内の圧力)を約0.1MPa、第1の直径に対する第2の直径の比(d2/d1)を1.5、噴射孔の長さに対するテーパ部の長さの比と(s1/t)を0.2として得られた。図8に示すように、噴射孔40あたりの噴霧角εは、テーパ角θが45°以下の範囲ではテーパ角θの増加に伴って伴って増加し、テーパ角θが45°以上の範囲では概ね40°で一定となることが分かる。第1実施形態に係る燃料噴射装置6では、噴射孔40あたりの噴霧角εを40°に設定するため、テーパ角を45°以上に設定する。すなわち、上記した条件式(1)を満たすようにテーパ角θを設定する。
図9は、第1の直径d1に対する第2の直径d2の比(d2/d1)と、噴射孔40あたりの噴霧角εとの関係を示す図である。図9に示す関係は、燃料噴射圧を10MPa、噴射場圧力を約0.1MPa、テーパ部41のテーパ角θを45°、噴射孔の長さに対するテーパ部の長さの比と(s1/t)を0.2として得られた。図9に示すように、噴射孔40あたりの噴霧角εは、第1の直径に対する第2の直径の比(d2/d1)が1.5以下の範囲ではd2/d1の増加に伴って伴って増加する一方、d2/d1が1.5以上の範囲では概ね40°で一定となることが分かる。第1実施形態に係る燃料噴射装置6では、噴射孔40あたりの噴霧角εを40°に設定するため、d2/d1を1.5以上に設定する。すなわち、上記した条件式(2)を満たすように第1の直径d1および第2の直径d2を設定する。
図10は、噴射孔40の長さに対するテーパ部41の長さの比(s1/t)と、噴射孔40あたりの噴霧角εとの関係を示す図である。図10に示す関係は、燃料噴射圧を10MPa、噴射場圧力を約0.1MPa、テーパ部41のテーパ角θを45°、第1の直径に対する第2の直径の比(d2/d1)を1.5として得られた。図10に示すように、噴射孔40あたりの噴霧角εは噴射孔の長さに対するテーパ部の長さの比(s1/t)が0.2以下の範囲ではs1/tの増加に伴って伴って増加し、一方、s1/tが0.2以上の範囲では概ね40°で一定となることが分かる。第1実施形態に係る燃料噴射装置6では、噴射孔40あたりの噴霧角εを40°に設定するため、s1/tを0.2以上に設定する。すなわち、上記した条件式(3)を満たすようにテーパ部41の長さs1および噴射孔40の長さtを設定する。
図8から図10に示したように、条件式(1)〜(3)を満たすように、テーパ角θ、第1の直径d1、第2の直径d2、テーパ部の長さs1、噴射孔の長さtを設定することによって、噴射孔あたりの噴霧角は40°となる。
図11は、噴射孔の長さに対する第1の等径部の長さの比(s2/t)と、噴射孔40あたりの噴霧偏向角γとの関係を示す図である。図11に示す関係は、燃料噴射圧を10MPa、噴射場圧力を約0.1MPa、テーパ部41のテーパ角θを45°、第1の直径に対する第2の直径の比(d2/d1)を1.5、噴射孔の長さに対するテーパ部の長さの比と(s1/t)を0.2として得られた。図11に示すように、噴射孔40あたりの噴霧偏向角γは、噴射孔の長さに対するテーパ部の長さの比(s2/t)が0.2以下の範囲では5°以上と大きく、s2/tが小さくなるにつれて噴霧偏向角γは急激に増加する。一方、s2/tが0.5以上の範囲では、噴霧偏向角γは5°以下と小さく、s2/tを0.5以上に増加させても噴霧偏向角γはほとんど変化しない。第1実施形態に係る燃料噴射装置6では、噴射孔40あたりの噴霧偏向角γを小さくするため、s2/tを0.5以上に設定する。すなわち、上記した条件式(4)を満たすように噴射孔40の長さtおよび第1の等径部42の長さs2を設定する。
図12は、巻き上げ噴霧が形成されるときの条件を示す図である。図12に示すように、第1実施形態に係る燃料噴射装置6においては、隣り合う噴射孔軸線Bのなす角度βが、噴射孔40あたりの噴霧角ε以下の場合に巻き上げ噴霧が形成される。巻き上げ噴霧は、隣り合う噴射孔40からそれぞれ噴射される燃料が少なくとも一部において重なり合うときに形成される。
上述したように条件式(1)〜(4)を満たす場合には、燃料噴射軸線Cと噴射孔軸線Bとは概ね一致し、噴射孔40あたりの噴霧角εは約40°となる。図12に示すように、噴射孔40あたりの噴霧角εが40°のときには、隣り合う噴射孔軸線Bのなす角度βが40°以下で巻き上げ噴霧が形成される。そのため、以下の条件式(5)および(6)を満たす場合には図12の巻き上げ噴霧領域に入り、隣り合う噴射孔40からそれぞれ噴射される燃料が少なくとも一部において重なり合い、巻き上げ噴霧が形成される。
n≧2・・・・・(5)
β≦40°・・・・・(6)
また、条件式(1)〜(4)を満たす場合に、以下の条件式(7)〜(9)を満たすと、図12の巻き上げ噴霧領域に入り、巻き上げ噴霧が形成される。
n≧3・・・・・(7)
β≦40°・・・・・(8)
以上のように構成した第1実施形態に係る燃料噴射装置6は、噴射される燃料の形態を巻き上げ噴霧とするため(図12(a)参照)、混合気の均質化を促進することができるとともに、噴射される燃料の貫徹力を低下させて、ピストン2やピストンを収容するスリーブへの燃料付着を低減することができる。これにより、燃焼効率および出力を向上させることができる。また、第1実施形態に係る燃料噴射装置6は、噴射場圧力によって噴霧角が変化しないため、圧縮行程噴射における着火性を向上させることができる。
次に第2実施形態に係る燃料噴射装置50について説明する。第2実施形態に係る燃料噴射装置50は噴射孔51の形状のみが第1実施形態に係る燃料噴射装置6と異なる。第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図13は、第2実施形態に係る燃料噴射装置50の噴射孔51を示す縦断面図である。図13に示すように、噴射孔51は、上流端がチャンバ26dに開口した第2の等径部43と、第2の等径部43の下流端に連通したテーパ部41と、上流端がテーパ部41に連通するとともに下流端が噴射ノズル部26の外部に開口した第1の等径部42とにより形成されている。テーパ部41および第1の等径部42の構成は第1実施形態と同様である。第2の等径部43は、直径が第1の直径d1[mm]と等しい。第2の等径部43の長さs3[mm]は、噴射孔51の長さt[mm]からテーパ部41の長さs1[mm]と第1の等径部42の長さs2[mm]とを引いた値となる。
図14は、噴射孔51の長さに対する第2の等径部の長さの比と(s3/t)と、噴射孔51あたりの噴霧角εとの関係を示す図である。図14に示す関係は、燃料噴射圧を10MPa、噴射場圧力を約0.1MPa、テーパ部41のテーパ角θを45°、第1の直径に対する第2の直径の比(d2/d1)を1.5、噴射孔の長さに対するテーパ部の長さの比(s1/t)を0.2として得られた。図14に示すように、噴射孔51あたりの噴霧角εは第2の等径部の長さに対するテーパ部の長さの比(s3/t)が0.3以上の範囲ではs3/tの増加に伴って減少する一方、s3/tが0.3以下の範囲では概ね40°で一定となることが分かる。第2実施形態に係る燃料噴射装置50では、噴射孔51あたりの噴霧角εを40°に設定するため、s3/tを0.3以下に設定する。すなわち、次の条件式(10)を満たすように第2の等径部の長さs3および噴射孔の長さtを設定する。
s3<0.3t・・・・・(10)
なお、第2実施形態に係る燃料噴射装置50は、第1実施形態に係る燃料噴射装置6と同様に、条件式(1)〜(6)または条件式(1)〜(4)かつ(7)〜(9)を満たすように設定されている。
第2実施形態に係る燃料噴射装置50は、第1実施形態に係る燃料噴射装置6と同様に、巻き上げ噴霧を形成することができる。さらに、第2の等径部43を設けたことによって、噴射孔51の加工が容易となる。噴射孔40を形成する場合には、最初に第1の直径d1に対応するドリルで貫通孔を穿孔し、続いて第2の直径d2に対応する直径を有するとともにテーパ角θに対応した先端部を備えたドリルで貫通孔と同軸に所定の深さを穿孔することによってテーパ部41、第1の等径部42、第2の等径部43を形成することができる。
次に、第1実施形態に係る燃料噴射装置6の作用効果について実施例を示して説明する。ここでは、第1実施形態に係る燃料噴射装置6の効果を、第1および第2の比較対象と比較することによって明確にする。図15は、比較対象としての燃料噴射装置の噴射孔を示す縦断面図であって、(a)は第1の比較対象の噴射孔を示し、(b)は第2の比較対象の噴射孔を示している。図15に示すように、第1実施形態に係る燃料噴射装置6と比較して、第1の比較対象は第1の等径部42を備えていない点、第2の比較対象はテーパ部41を備えていない点で噴射孔40の形状が異なる。
第1実施形態に係る燃料噴射装置6は、テーパ角θが90°、第1の直径d1が0.19mm、第2の直径d2が0.40mm、噴射孔40の長さtが0.35mm、テーパ部41の長さs1が0.11mm、第1の等径部42の長さs2が0.24mm、噴射孔の数nが8個、中心軸線Aと噴射孔軸線Bとのなす角度が45°、噴射ノズルより噴射される燃料の噴霧角αが90°、隣り合う噴射孔軸線Bがなす角βが40°である。
第1の比較対象は、テーパ角θが45°、第1の直径d1が0.19mm、第2の直径d2が0.47mm、噴射孔40の長さt(テーパ部41の長さs1)が0.35mm、噴射孔の数nが8個、中心軸線Aと噴射孔軸線Bとのなす角度が45°、噴射ノズルより噴射される燃料の噴霧角αが90°、隣り合う噴射孔軸線Bがなす角βが40°である。
第2の比較対象は、直径d2が0.15mm、噴射孔40の長さt(第1の等径部42の長さs2)が0.35mm、噴射孔の数nが8個、中心軸線Aと噴射孔軸線Bとのなす角度が45°、噴射ノズルより噴射される燃料の噴霧角αが90°、隣り合う噴射孔軸線Bがなす角βが40°である。
図16は、燃料噴射装置による燃料噴射の噴霧形態を示す図であって、(a)は第1実施形態に係る燃料噴射装置6から噴射された燃料の噴霧形状を示し、(b)は第1の比較対象より噴射された燃料の噴霧形状を示し、(c)は第2の比較対象より噴射された燃料の噴霧形状を示す。測定は、燃料噴射圧を10MPa、噴射場圧力を約0.1MPaとして行った。
第1実施形態に係る燃料噴射装置6は、上述した条件式(1)〜(5)を満たすため、巻き上げ噴霧を形成する。これに対し、第1の比較対象は、条件式(1)〜(3)および(5)を満たすが、第1の等径部42を有していないため条件式(4)を満たすことができない。そのため、第1の比較対象より噴射された燃料は、巻き上げ噴霧を形成しない。同様に、第2の比較対象は、条件式(1)、(4)、(5)を満たすが、テーパ部41を有していないため条件式(2)、(3)を満たすことができず、巻き上げ噴霧を形成しない。
図16に示すように、燃料噴射装置6より噴射された燃料の形状は、第1の比較対象に比べて、噴霧の先端部が幅方向に膨出するとともに燃料噴射装置6側へと巻き上がった形状を呈する。これは、条件式(1)〜(5)を満たすことにより各噴射孔40より噴射される燃料が互いに衝突し合い、燃料の流れが乱されることに起因すると考えられる。
図17は、噴射場圧力と噴霧角の関係を示す図であって、第1実施形態に係る燃料噴射装置6と第1の比較対象とを比較したものである。測定は、燃料噴射圧を10MPaとし、噴射場圧力を0.1〜2MPaの範囲で変化させて行った。第1実施形態に係る燃料噴射装置6の噴霧角を実線(101)で示し、第1の比較対象の噴霧角を破線(102)で示す。第1実施形態に係る燃料噴射装置6では、噴射場圧力すなわち気筒内の圧力の変化に対して噴霧角を一定に維持するのに対して、第1の比較対象では噴射場圧力が増加するほど噴霧角が小さくなることがわかる。
図18は、燃料噴射装置の特性を示す図であって、第1実施形態に係る燃料噴射装置6、第1の比較対象、第2の比較対象より噴射される燃料の貫徹力(ペネトレーション)および粒径を示す。各測定は、燃料噴射圧を10MPaとし、噴射場圧力を約0.1MPaとして行った。図中の点103は第1実施形態に係る燃料噴射装置6を示し、点104は第1の比較対象を示し、点105は第2の比較対象を示す。図18に示すように、第1実施形態に係る燃料噴射装置6は、第1の比較対象および第2の比較対象に比べて、噴射される燃料の貫徹力が小さく、噴射される燃料の粒径が小さいことがわかる。
第1実施形態に係る燃料噴射装置が取り付けられたエンジンの要部を示す断面図である。 第1実施形態に係る燃料噴射装置を示す縦断面図である。 第1実施形態に係る燃料噴射装置の噴射ノズル部を拡大して示す縦断面図である。 図3の矢印IVの方向から見た図である。 図3に示す噴射孔を拡大して示す縦断面図である。 燃料噴射装置の燃料噴射軸の配置を示す図である。 燃料噴射装置の燃料噴射軸の配置を示す図である。 テーパ部のテーパ角と噴射孔あたりの噴霧角との関係を示す図である。 第1の直径に対する第2の直径の比と、噴射孔あたりの噴霧角との関係を示す図である。 噴射孔の長さに対するテーパ部の長さの比と、噴射孔あたりの噴霧角との関係を示す図である。 噴射孔の長さに対する第1の等径部の長さの比と、噴射孔あたりの噴霧偏向角との関係を示す図である。 巻き上げ噴霧が形成されるときの条件を示す図である。 第2実施形態に係る燃料噴射装置の噴射孔を示す縦断面図である。 噴射孔の長さに対する第2の等径部の長さの比と、噴射孔あたりの噴霧角との関係を示す図である。 比較対象としての燃料噴射装置の噴射孔を示す縦断面図である。 燃料噴射装置による燃料噴射の噴霧形態を示す図である。 噴射場圧力と噴霧角の関係を示す図である。 燃料噴射装置の特性を示す図である。
符号の説明
6,50:燃料噴射装置、22:ノズルボディ、26:噴射ノズル部、26a:中央部、26b:傾斜部、26c:周縁部、26d:チャンバ、40,51:噴射孔、41:テーパ部、42:第1の等径部、43:第2の等径部、50:燃料噴射装置、A:中心軸線、B:噴射孔軸線、C:燃料噴射軸線

Claims (4)

  1. 複数の噴射孔を備えた噴射ノズルを有する燃料噴射装置であって、
    前記噴射孔は、同一円周上に所定の角度間隔をもって配置され、上流側から下流側へと進むにつれて通路径が増加するテーパ部と、一端が前記テーパ部の下流端に連続する第1の等径部とを有し、以下の条件式(1)〜(4)を満たすことを特徴とする燃料噴射装置。
    θ≧45°・・・・・(1)
    d2≧1.5d1・・・・・(2)
    s1≧0.2t・・・・・(3)
    s2≧0.5t・・・・・(4)
    ただし、
    θ:テーパ部のテーパ角[deg]、
    d1:テーパ部の上流端の直径[mm]、
    d2:テーパ部の下流端の直径[mm]、
    t:噴射孔の長さ[mm]、
    s1:テーパ部の長さ[mm]、
    s2:第1の等径部の長さ[mm]、
    である。
  2. 以下の条件式(5)および(6)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の燃料噴射装置。
    n≧2・・・・・(5)
    β≦40°・・・・・(6)
    ただし、
    n:噴射孔の数、
    β:隣り合う噴射孔の軸線のなす角度[deg]、
    である。
  3. 以下の条件式(7)〜(9)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の燃料噴射装置。
    n≧3・・・・・(7)
    β≦40°・・・・・(8)
    ただし、
    n:噴射孔の数、
    α:噴射ノズルより噴射される燃料の噴霧角[deg]、
    β:隣り合う噴射孔の軸線のなす角度[deg]、
    である。
  4. 前記噴射孔は、下流端が前記テーパ部の上流端に連続する第2の等径部を有し、以下の条件式(10)を満たすことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の燃料噴射装置。
    s3<0.3t・・・・・(10)
    ただし、
    s3:第2の等径部の長さ[mm]
    である。
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