JP2005194929A - 筒内噴射式内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 燃焼室内に直接燃料を噴射するように燃料噴射弁26を配置する。燃料噴射弁26は、複数の噴孔34を備える。噴孔34から噴射された燃料の噴霧境界外側の巻き上がり領域に点火するように点火プラグ28を配置する。噴孔34は、点火プラグ28の方向に燃料を噴射するための、径方向に並んで形成された噴孔34a、34b、34cを有する。点火プラグ28に向かう燃料の速度成分が外側の噴孔ほど低下するように、これらの噴孔34a、34b、34cを構成する。
【選択図】 図6
Description
前記燃料噴射弁の前記複数の噴孔から噴射された燃料の噴霧境界外側の巻き上がり領域に点火するように配置された点火プラグとを備え、
前記複数の噴孔は、前記点火プラグの方向に燃料を噴射するための、径方向に並んで形成された2以上の噴孔を含み、
前記2以上の噴孔は、前記点火プラグに向かう燃料の速度成分が、内側の噴孔より外側の噴孔の方が低下するように構成されていることを特徴とする。
前記2以上の噴孔は、前記点火プラグに向けて同一の軸線方向に燃料が噴射され、噴孔から噴射される燃料の初速が外側ほど小さくなるように構成されていることを特徴とする。
前記2以上の噴孔は、前記点火プラグに向かう方向に対して、外側の噴孔ほど噴射角度が大きく傾斜されていることを特徴とする。
前記燃料噴射弁の前記複数の噴孔の一部から噴射された燃料に点火するように配置された点火プラグとを備え、
前記複数の噴孔は、前記点火プラグに向けて燃料を直接噴射する1以上の噴孔を含み、
前記1以上の噴孔から噴射される燃料の貫徹力が、前記複数の噴孔のうちの他の噴孔から噴射される燃料の貫徹力より弱められていることを特徴とする。
第1の発明によれば、燃料噴射弁が有する2以上の噴孔から点火プラグに向けて噴射される燃料の速度成分を外側の噴孔ほど低下させることで、安定した巻き上がりを形成でき、かつ、その巻き上がり領域を大きくすることができる。このため、本発明によれば、点火プラグ周辺に着火性に優れた混合気層を形成し、安定した燃焼を実現することができる。
図1は、本発明の実施の形態1の燃料噴射弁を搭載した内燃機関10を示す図である。
内燃機関10は、シリンダヘッド12を備えている。シリンダヘッド12には、吸気ポート14と排気ポート16が連通している。吸気ポート14および排気ポート16には、それぞれ吸気弁18および排気弁20が配置されている。また、内燃機関10の筒内には、その内部を往復移動するピストン22が設けられている。内燃機関10の筒内には、シリンダヘッド12とピストン22の頂部との間に燃焼室24が形成されている。
図2に示すように、燃料噴射弁26は、ニードル弁30を備えている。また、燃料噴射弁26には、燃焼室24に突出した先端部にプレート32が設けられている。プレート32には、燃焼室24内に燃料を噴射する際の指向性を決定する複数の噴孔34が形成されている。これらの噴孔34は、円筒状に形成された孔であり、プレート32の軸線を中心とする同心円上となる位置に設けられている。また、それぞれの噴孔34の中心線は、噴霧角がプレート32の軸線に対して傾斜して構成されている。このような形状を有する噴孔34によれば、燃料を分散して、かつ、噴霧角が広角となるように噴射することができる。尚、燃料噴射弁26では、ニードル弁30によりプレート32の上流側の流路が開放または遮断されることで、燃料噴射の実行または停止が制御されている。
図3に示すように、噴孔34の内周面には、プレート32の外側の噴孔ほど段階的に大きなテーパが施されている。この噴孔34のテーパは、噴射出口側に向かって広がるように形成されている。より具体的には、図3に示す噴孔34a、34b、34cは、その中心線がともに同一方向となるように形成されており、噴孔34b、34cには、テーパが施されている。噴孔34cには、噴孔34bよりも大きなテーパが施されている。このような構成によれば、外側の噴孔から噴射される燃料の初速を内側の噴孔から噴射される燃料の初速より段階的に小さくすることができる。
図4は、本実施形態の燃料噴射弁26が燃料を噴射した際に形成される噴霧を示す図である。
筒内噴射式内燃機関では、例えば低負荷時などにおいて、燃料消費量を抑えるべく、空燃比を下げた状態で安定した運転を実現するために成層運転が行われる。この成層運転は、点火時に、点火プラグ28周辺に着火性に優れた混合気層が形成されるように燃料を噴射する運転である。図4に示すように、本実施形態の燃料噴射弁26では、上記成層運転を行う際に、複数の噴孔から細かく分散された燃料を、燃料噴射弁26の軸線方向に対して広角となる噴霧角で噴射している。ここでは、この噴射角の境界、すなわち、最外周の噴孔(例えば、図3中の噴孔34c)の中心線の延長線上を「噴霧境界」と称する。それぞれの噴孔から所定の初速で噴射された燃料は、噴孔の中心線方向に直進性を有して進むが、噴霧境界の外側にあるほぼ流速ゼロの空気との間に相対速度が生ずる。その結果、噴霧境界周辺には、渦が形成される。そして、噴射された燃料は、その渦によって、巻き上げられながら空気と混ざることで、噴霧境界周辺に混合気層を形成する。上述した点火プラグ28は、その巻き上げられた混合気層に点火できる位置に設けられている。つまり、本実施形態の筒内噴射式内燃機関10は、燃料噴射弁26が有する複数の噴孔から燃料が噴射された後に形成される混合気の巻き上がり部分に点火することにより、燃焼を行うことができる。
ここでは、本実施形態の燃料噴射弁26との対比のため、複数の噴孔は同様に構成されており、同じ初速で燃料を噴射するものとする。その結果、最も外側の噴霧と周囲の空気との間には、大きな速度差が生じることにより、噴霧境界上には、複数の小さな渦が形成される。つまり、複数の噴孔から同じ初速の燃料が噴射された場合には、渦は、最外周の噴孔から噴射された燃料と周囲の空気の間にのみ生じ、内周側の噴孔から噴射された燃料は、渦の形成に寄与しない。また、このような構成により形成された小さな渦では、噴射された燃料を大きく巻き上がらせることができない。このため、燃料噴射量にばらつきがあると、点火プラグ28の周辺に着火性に優れた混合気層を安定して形成することが困難となり、安定した燃焼を実現することができない。安定した燃焼を実現するには、噴霧境界の外側に大きなスケールの渦を生じさせ、巻き上がり領域を大きくするのが望ましい。本実施形態の燃料噴射弁26は、この要求を満たすべく、上述した噴孔形状を有している。
既述した通り、本実施形態の燃料噴射弁26は、プレート32の外側の噴孔ほど段階的に大きなテーパが施されている。このため、本実施形態の燃料噴射弁26によれば、外側の噴孔から噴射される燃料の初速を内側の噴孔から噴射される燃料の初速より段階的に小さくすることができる。つまり、複数の噴孔から噴射された燃料と周囲空気との速度差を、段階的に変化させることができる。このため、最外周の噴孔のみでなくその内周側の噴孔から噴射される燃料をも渦の形成に寄与させることができ、大きなスケールの渦を形成することが可能となる。すなわち、燃料の巻き上がり領域を大きくすることが可能となる。そして、巻き上げられながら十分に霧化された混合気層に点火することにより、安定した着火が可能となる。このため、本実施形態の筒内噴射式内燃機関10によれば、サイクル間の燃焼変動の低減、主にHCなどの未燃成分の低減による排気ガスの清浄化、および燃費の向上を実現することができる。
図7に示す噴孔36a、36b、36cは、その中心線がともに同一方向となるように形成されている。更に、噴孔36bおよび36cには、その内周面に流路面積を制限するための絞りが設けられている。この絞りは、外側の噴孔ほど大きく噴孔の流路面積を小さくするように形成されている。このため、外側の噴孔ほど段階的に燃料の初速を低下させることができる。
図8に示す例では、プレート32の上流側に設けられた燃料噴射弁26の弁座38の形状に特徴を有している。すなわち、弁座38がプレート32の上方を覆うように設けられており、プレート32の上面と弁座38との隙間が外側の噴孔ほど徐々に小さくなるように形成されている。このような構成によれば、外側の噴孔から噴射される燃料ほど弁座38によって大きく絞られた後に噴射されることとなる。このため、各々の噴孔から噴射される燃料の燃圧は、外側の噴孔ほど段階的に小さくなる。つまり、外側の噴孔ほど段階的に噴射される燃料の初速を低下させることができる。
図9に示す例は、プレート32の弁座40が上記図8に示す例と同様に、プレート32の上方を覆うように設けられており、弁座40によりプレート32の上方の流路を外側の噴孔ほど絞るように構成されたものである。このような構成によれば、上記図8に示す例と同様の理由で、各々の噴孔から噴射される燃料の燃圧を、外側の噴孔ほど段階的に小さくすることができる。つまり、外側の噴孔ほど段階的に噴射される燃料の初速を低下させることができる。
図10に示す例では、噴孔42bと噴孔42cはともに、同一方向となる中心線を有する2つの円筒部からなり、その2つの円筒部の中心線間距離を所定距離だけ離間させた段付き形状で形成されている。更に、最も外側の噴孔42cの中心線間距離の方が内側の噴孔42bの中心線間距離よりも大きくなるように形成されている。このような構成によれば、外側の噴孔ほど絞りを大きくすることができる。つまり、外側の噴孔ほど段階的に噴射される燃料の初速を低下させることができる。
図11に示す例は、上記図10と同様に、噴孔44bと噴孔44cはともに、同一方向となる中心線を有する2つの円筒部からなり、その2つの円筒部の中心線間距離を所定距離だけ離間させた段付き形状で形成されている。上記図10に示す例に対し、図11に示す例では、噴孔44bと噴孔44cのそれぞれに設けられた2つの円筒部の中心線間距離は一定とされている。図11に示す例では、噴孔44bに対し噴孔44cの方が段差部が小さくなるように形成されている。このような構成によれば、外側の噴孔ほど絞りを大きくすることができる。つまり、外側の噴孔ほど段階的に流速を減少させることができる。
図12に示す例では、図12(A)に示す方向から見た場合には、各噴孔46a、46b、46cは、いずれも中心線が同一方向となるように形成されているが、図12(B)に示す方向から見た場合には、外側の噴孔の中心線ほど大きく傾斜するように形成されている。つまり、図12に示す例は、各噴孔から噴射される燃料の初速に差はないが、図12(B)に示す方向において、外側の噴孔ほど噴射角度が大きく傾斜するように構成されている。その結果、図12(B)に示す方向において、外側の噴孔ほど噴射される燃料の初速の下方向成分(図12(B)中の破線を用いた矢印参照)が減少することとなる。従って、図12(A)に示す方向において、各噴孔から噴射される燃料の初速を、外側の噴孔ほど段階的に低下させることができる。
上述した実施の形態1においては、プレート32に設けられる噴孔34の形状は、円形断面を有し、円筒状に形成された孔であり、プレート32の軸線を中心とする同心円上となる位置に設けられたものであるとしたが、噴射された燃料の巻き上がりを大きくすべく、プレート32に設けられる噴孔の形状はこれに限定されるものではない。すなわち、図13に示す例のように、噴孔は、プレート32の軸線を中心とする同心円上に所定間隔毎に形成された複数のスリット48からなるものであってもよい。そして、このように形成された噴孔に、図6乃至図11に示す手法を適用することにより、外側の噴孔ほど段階的に噴射される燃料の初速を低下させることができる。
次に、図14を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施形態の内燃機関10は、燃料噴射弁26の構成を除き、実施の形態1の内燃機関10と同様の構成を有している。
本実施形態の燃料噴射弁26のプレート50には、複数の噴孔52が設けられている。この噴孔52は、図2(A)に示す噴孔34と同様に円筒状に形成されている。これらの噴孔52は、点火プラグ28に向けて燃料を噴射するための噴孔52cを備えている。噴孔52cからは、他の噴孔に比して貫徹力の弱い燃料が点火プラグ28に向けて直接噴射されている。より具体的には、燃料が液滴状態で点火プラグ28に直接到達しない程度の貫徹力で、噴孔52cから点火プラグ28に向けて燃料が噴射されている。このような強さで噴射された燃料は、点火プラグ28に向かう飛行の途中で霧化が進み易い。このため、このような構成によれば、点火プラグ28の周辺に十分に霧化され、着火性に優れた混合気を形成することができ、安定した着火が可能となる。具体的には、このような貫徹力の弱い燃料噴射は、上述した実施の形態1で説明した図3の手法により噴孔52cにテーパ形状を施すことで、或いは図7乃至図12に示す手法により噴孔52cを構成することで実現されるものである。
24 燃焼室
26 燃料噴射弁
28 点火プラグ
32、50 プレート
34、36、42、44、46、52 噴孔
38、40 弁座
Claims (4)
- 複数の噴孔を備え、燃焼室内に直接燃料を噴射するように配置された燃料噴射弁と、
前記燃料噴射弁の前記複数の噴孔から噴射された燃料の噴霧境界外側の巻き上がり領域に点火するように配置された点火プラグとを備え、
前記複数の噴孔は、前記点火プラグの方向に燃料を噴射するための、径方向に並んで形成された2以上の噴孔を含み、
前記2以上の噴孔は、前記点火プラグに向かう燃料の速度成分が、内側の噴孔より外側の噴孔の方が低下するように構成されていることを特徴とする筒内噴射式内燃機関。 - 前記2以上の噴孔は、前記点火プラグに向けて同一の軸線方向に燃料が噴射され、噴孔から噴射される燃料の初速が外側ほど小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の筒内噴射式内燃機関。
- 前記2以上の噴孔は、前記点火プラグに向かう方向に対して、外側の噴孔ほど噴射角度が大きく傾斜されていることを特徴とする請求項1記載の筒内噴射式内燃機関。
- 複数の噴孔を備え、燃焼室内に直接燃料を噴射するように配置された燃料噴射弁と、
前記燃料噴射弁の前記複数の噴孔の一部から噴射された燃料に点火するように配置された点火プラグとを備え、
前記複数の噴孔は、前記点火プラグに向けて燃料を直接噴射する1以上の噴孔を含み、
前記1以上の噴孔から噴射される燃料の貫徹力が、前記複数の噴孔のうちの他の噴孔から噴射される燃料の貫徹力より弱められていることを特徴とする筒内噴射式内燃機関。
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