JP2010150128A - Rth型ゼオライトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリカ原料と、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素と、酸素、ケイ素、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素以外の少なくとも1種類のへテロ元素とを含み、前記アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素のシリカに対するモル比が0.01から0.45の範囲であり、構造規定剤を含まないか、或いは、構造規定剤を構造規定剤/Siのモル比で0.018以下含有する水性混合物を水熱合成することを特徴とするRTH型ゼオライトの製造方法。所定量のアルカリ(土類)金属元素を共存させることにより、構造規定剤を使用しない条件でRTH型ゼオライトを合成することができる。
【選択図】図1
Description
しかしながら、構造規定剤はゼオライトの合成コストの大きな部分を占め、構造規定剤を使用して合成されるゼオライトは、これを使用していないものよりも高価なものとなる。また、構造規定剤を用いて水熱合成を行った場合、その後処理工程として、焼成または溶媒抽出により構造規定剤を除去する工程が必要であり、工程数が増えることによっても高コストとなっていた。
このようなことから、構造規定剤を使用して合成された従来のRTH型ゼオライトは高価なため、工業用のゼオライトとしては用途に制約を受けるものであった。
このため、構造規定剤の使用量を削減した、あるいは使用しないRTH型ゼオライトの製造方法の開発が切望されていた。
前述の如く、従来において、RUB−13の製造には構造規定剤が必須であると考えられていたが、特許文献1の合成条件から単純に構造規定剤を添加しない点のみを変更した条件では、生成物はアモルファスとなりRTH型ゼオライトは得られなかった。
また、水熱合成前駆体の水性混合物に種結晶を加えることで、更に結晶化を促進し、より結晶性の高いRTH型ゼオライトを得ることに成功し、本発明に至った。
更には、本発明では、構造規定剤を使用しないことにより、或いはその使用量が低減されることにより、構造規定剤の合成原料としてのアミン類等も不要若しくは極力低減されるため、排水負荷や作業環境の安全性も高められる。
本発明のRTH型ゼオライトの製造方法では、この特徴を除いてはゼオライトの水熱合成の常法に従って、RTH型ゼオライトを合成することができる。すなわち、シリカ原料、ヘテロ元素源、およびアルカリ(土類)金属元素源を含む結晶前駆体の水性混合物を調製し、これを加熱する方法で合成することができる。なお、ここで、「水性混合物」とは、水を主溶媒として原料化合物を溶解ないし分散させてなる混合物をいう。
以下、製造方法の一例を記載する。
本発明で用いるシリカ原料は特に限定されず、微紛シリカ、シリカゾル、シリカゲル、二酸化珪素、水ガラスなどのシリケートやテトラエトキシオルソシリケートやテトラメトキシシランなどの珪素のアルコキシド、珪素のハロゲン化物などが挙げられる。また、MFIやFAUなどのシリカ含有ゼオライトをシリカ原料として用いても構わない。
これらのシリカ原料は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
これらのシリカ原料のうち、コスト面の有利さ、取り扱いの容易さの面で、好ましくは、微粉シリカ、シリカゾル、シリカゲル、二酸化珪素、水ガラスなどのシリケートの1種または2種以上が好適に用いられ、より好ましくは反応性の面で微粉シリカ、水ガラスが用いられる。
本発明に係るゲルは、ゼオライトを形成する無機物質として、珪素、酸素、およびアルカリ(土類)金属元素以外の少なくとも1種類のヘテロ元素(以下、単に「ヘテロ元素」という。)を含む。このヘテロ元素としては特に限定されないが、好ましくは金属元素またはホウ素であり、より好ましくはアルミニウム、ガリウム、ホウ素、スズ、鉄、チタン、亜鉛、インジウム、マンガン、クロム、コバルト、ジルコニウムなどが挙げられる。これらはゲル中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
これらのヘテロ元素源のうち、反応性の面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、アルコキシドが好ましい。またコスト面、作業面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物がより好ましい。
本発明に係るゲルに含まれるアルカリ(土類)金属元素としては特に限定されず、ナトリウム、カリウム、カルシウム等が挙げられ、これらは1種が単独で含まれていても、2種以上が含まれていてもよいが、アルカリ性が高く、特に固体のシリカ原料を使用した際にゼオライトの結晶化が起こりやすい面でアルカリ金属元素のみを含むことが好ましい。
本発明では、構造規定剤を用いることなくRTH型ゼオライトを合成することができるが、必要に応じて少量の構造規定剤を使用してもよい。
本発明においては、水熱合成に供するゲルに種結晶を添加してもよい。この種結晶としては、secondary building unitとして4員環をもつゼオライトが好ましく、特にRTH型ゼオライト、とりわけホウ素を骨格に有するRTH型ゼオライトを用いることが好ましい。種結晶は1種のみを用いてもよく、構造や組成の異なるものを組み合わせて用いてもよい。ただし、種結晶を用いることによるRTH型ゼオライトの生成効率の面からは、secondary building unitとして4員環をもつゼオライト、好ましくはRTH型ゼオライトの1種のみを用いることが好ましい。
水熱合成の前躯体としての水性混合物は、上記のシリカ原料、アルカリ(土類)金属元素源、ヘテロ元素源、必要に応じて用いられる構造規定剤、および水を混合して調製される。混合の順序は制限がなく、用いる条件によって適宜選択すればよいが、通常は、まず水にアルカリ(土類)金属元素源を溶解させ、これにヘテロ元素源を混合する。さらにシリカ原料を混合して攪拌する。本発明では、構造規定剤を使用せずにRTH型ゼオライトを得ることができるが、必要に応じて少量の構造規定剤を添加してもよい。またゲル中には種結晶を添加してもよく、種結晶を添加した場合にはよりRTH型ゼオライトが得やすくなる。
構造規定剤を用いる場合、構造規定剤は、水にアルカリ(土類)金属元素源を溶解させた段階で添加混合することが好ましい。
また、種結晶を用いる場合、種結晶は、シリカ原料を添加混合した後に添加混合することが好ましい。
また水性混合物は、上記各成分が混合していればよく、スラリー状態でもゲル状でもよく、また非常に希釈されたスラリー状態であってもよい。
本発明において、水熱合成に供される水性混合物(スラリーないしゲル)の好適な組成は次の通りである。
ホウ素が存在せずに、ホウ素以外のヘテロ元素の少なくとも1種類以上がゲル中に存在する場合には、ゲル中のSi/ヘテロ元素のモル比で通常20以上、好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上であり、通常1000以下、好ましくは700以下である。ゲル中にホウ素以外のヘテロ元素のみが存在する場合、Si/ヘテロ元素モル比が小さすぎると結晶化が起こりにくくなり好ましくない。ただし、この値が過度に大きいとクオーツなどの不純物の生成が起こる場合があり、好ましくない。
・ゲル中のホウ素含有量が、ゲル中のSi/ホウ素のモル比で0.1以上1000未満の場合、他のヘテロ元素の含有量は、Si/他のヘテロ元素のモル比で、通常5以上、好ましくは15以上、さらに好ましくは30以上で、通常1500以下、好ましくは1000以下。
・ゲル中のホウ素含有量が、ゲル中のSi/ホウ素のモル比で1000以上5000以下の場合、他のヘテロ元素の含有量は、Si/他のヘテロ元素のモル比で、通常30以上、好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上で、通常1200以下、好ましくは800以下。
構造規定剤の使用量が少ない程RTH型ゼオライトの合成コストを低減することができ、好ましい。最も好ましくは、構造規定剤不使用でRTH型ゼオライトを合成する態様である。
種結晶を用いる場合、その使用量には特に制限はないが、ゲル中のシリカ原料に対して通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上で、通常40重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
種結晶の使用量が少な過ぎると種結晶の添加効果を十分に得ることができず、多過ぎると生産性の面で不利であるためである。
本発明においては、上記の水性混合物を水熱合成に供してRTH型ゼオライトを製造する。即ち、上述の水性ゲルを通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また通常260℃以下、好ましくは220℃以下に加熱して、水熱合成によってRTH型ゼオライトを生成させる。水熱合成は無攪拌および/または攪拌下で行ない、圧力は自生圧、またはそれ以上の圧力が用いられる。水熱合成に要する時間は通常1時間以上、好ましくは5時間から30日である。
構造規定剤を用いてRTH型ゼオライトを合成した場合には、次いで、構造規定剤除去のための焼成や溶媒による抽出が必要となるが、構造規定剤を用いずにRTH型ゼオライトを合成した場合には、このような構造規定剤除去処理は不要となる。
<実施例1>
8Nの水酸化ナトリウム溶液0.22gと水25.0gを混合し、これにホウ酸を0.11g加え、攪拌した後に、シリカ原料としてCab−O−Sil M5(Cabot社製)を0.42g加えて十分攪拌した。
さらに、種結晶として、ホウ素を骨格に有するRTH型ゼオライトを、Cab−O−Sil M5に対して2重量%加えて、攪拌した。このようにして得た母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:200H2O:0.2NaOHとなった。
この母ゲルをオートクレーブに仕込み、20rpmのタンブリング条件下、170℃で7日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させた。
生成物のSEM像を図2に示すが、アスペクト比の大きな棒状の結晶がみられた。この結晶は構造規定剤を使用した際と同様の形状である。
図3に29Si−MAS−NMRスペクトルを示すが、−112ppm付近に隣接する4つの原子のいずれもがSiであるSi種に起因するQ4ピーク、−107ppm付近に隣接する4つの原子のうち1つがB、3つがSiであるSi種に起因するQ4ピークが見られる。シラノールを一つもつSi種を示すQ3ピークはみられないことから欠陥のほとんどない結晶であることがわかる。
図4には11B−MAS NMRスペクトルを示すが、骨格に取り込まれたホウ素に起因するTetrahedralと骨格外のホウ素に起因するTrigonalにピークが見られる。Tetrahedralのホウ素を示すピークの強度がTrigonalを示すピークよりも小さいことから、骨格に取り込まれたホウ素は仕込み比のSiO2/B=4のよりも少ないと考えられる。
<実施例2>
8Nの水酸化ナトリウム溶液0.22gと水25.0gを混合し、これにホウ酸を0.11g、硫酸アルミニウム無水物を0.012g加え、攪拌した後に、シリカ原料としてCab−O−Sil M5を0.42g加えて十分攪拌した。さらにCab−O−Sil M5の重量に対して5重量%のホウ素を骨格に有するRTH型ゼオライトを種結晶として加えて、攪拌した。このようにして得た母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:0.005Al2(SO4)3:200H2O:0.2NaOHとなった。
この母ゲルをオートクレーブに仕込み、20rpmのタンブリング条件下、170℃で7日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させた。
シリカに対する水酸化ナトリウムのモル比を2倍にした以外は実施例2と同一の条件で合成した。母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:0.005Al2(SO4)3:200H2O:0.4NaOHであった。
シリカに対する硫酸アルミニウムのモル比を1/2倍にした以外は実施例2と同一の条件で合成した。母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:0.0025Al2(SO4)3:200H2O:0.2NaOHであった。
シリカに対する水酸化ナトリウムのモル比を2倍にした以外は実施例4と同一の条件で合成した。母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:0.0025Al2(SO4)3:200H2O:0.4NaOHであった。
これらの生成物のSEM像を図6〜9に示すが、アスペクト比の大きな棒状の結晶がみられた。この結晶は構造規定剤を使用した際と同様の形状であり、ホウ素を単独で骨格に含む実施例1のRTH型ゼオライトと同様である。
図10に実施例2で得られた生成物の29Si−MAS−NMRスペクトルを示すが、−112ppm付近に4つのSi原子に近接したSi種に起因するQ4ピーク、−107ppm付近に隣接する3つのSi原子、1つのB原子に近接したSi種に起因するQ4ピークが見られる。Q3ピークはみられないことから欠陥のほとんどない結晶であることがわかる。
図11には実施例2で得られた生成物の11B−MAS NMRスペクトルを示すが、Tetrahedralのホウ素、Trigonalのホウ素に起因する2つのピークが見られる。Tetrahedralのホウ素を示すピークの強度がTrigonalを示すピークよりも小さく、骨格に取り込まれたホウ素は仕込み比のSiO2/B=4のよりも少ないと考えられる。
図12には実施例2で得られた生成物の27Al−MAS NMRスペクトルを示すが、骨格内4配位に由来するシャープなピークが確認できることから、骨格内にアルミニウムが取り込まれていることがわかる。一方、0ppm付近にも骨格外6配位に由来するブロードなピークが確認できることから一部のAlは骨格外に存在していることがわかる。
添加する種結晶の量を4倍にし、シリカに対する硫酸アルミニウムのモル比を2倍にした以外は実施例2と同一の条件で合成を行った。母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:0.01Al2(SO4)3:200H2O:0.2NaOHとなった。
<実施例6>
8Nの水酸化ナトリウム溶液0.22gと水25.0gを混合し、これにホウ酸を0.11g、硝酸ガリウム水和物(7〜9水和物)を0.014g加え、攪拌した後に、シリカ原料としてCab−O−Sil M5を0.42g加えて十分攪拌した。さらにCab−O−Sil M5の重量に対して2重量%のホウ素を骨格に有するRTH型ゼオライトを種結晶として加えて、攪拌した。このようにして得た母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:0.005Ga(NO3)3:200H2O:0.2NaOHとなった。
この母ゲルをオートクレーブに仕込み、20rpmのタンブリング条件下、170℃で7日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させた。
この生成物のSEM像を図14に示すが、アスペクト比の大きな棒状の結晶がみられた。この結晶は構造規定剤を使用した際と同様の形状であり、実施例1〜5で得られたRTH型ゼオライトと同様のピークである。
<実施例7>
種結晶を加えずにシリカに対する水のモル比を1/2倍にした以外は実施例1と同一の条件で合成を行った。母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:100H2O:0.2NaOHとなった。
すなわち、母ゲル中にアルカリ金属元素が存在すれば、構造規定剤を用いることなくRTH型ゼオライトを合成することができるが、種結晶があった方が、より結晶性の高いゼオライトが得られることが分かる。
シリカに対する水酸化ナトリウムのモル比を0にした以外は実施例7と同一の条件で合成を試みた。母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:100H2O:0NaOHとなった。
シリカに対する水酸化ナトリウムのモル比を2.5倍にした以外は実施例7と同一の条件で合成を試みた。母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:100H2O:0.5NaOHとなった。
種結晶として、ホウ素を骨格に有するRTH型ゼオライトを、Cab−O−Sil M5の重量に対して2重量%加え、シリカに対する水酸化ナトリウムのモル比を0にした以外は実施例7と同一の条件で合成を試みた。母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:100H2O:0NaOHとなった。
種結晶として、ホウ素を骨格に有するRTH型ゼオライトを、Cab−O−Sil M5の重量に対して2重量%加え、シリカに対する水酸化ナトリウムのモル比を2.5倍にした以外は実施例7と同一の条件で合成を試みた。母ゲルの組成は1SiO2:0.25H3BO3:100H2O:0.5NaOHとなった。
Claims (9)
- シリカ原料と、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素と、酸素、ケイ素、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素以外の少なくとも1種類のへテロ元素とを含み、前記アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素のシリカに対するモル比が0.01から0.45の範囲であり、構造規定剤を含まないか、或いは、構造規定剤を構造規定剤/Siのモル比で0.018以下含有する水性混合物を水熱合成することを特徴とするRTH型ゼオライトの製造方法。
- 前記水性混合物が構造規定剤を含まないことを特徴とする請求項1に記載のRTH型ゼオライトの製造方法。
- 前記アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素としてアルカリ金属元素のみを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のRTH型ゼオライトの製造方法。
- 前記アルカリ金属元素がナトリウムであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のRTH型ゼオライトの製造方法。
- 前記水性混合物にゼオライトを種結晶として加えて水熱合成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のRTH型ゼオライトの製造方法。
- 前記種結晶がsecondary building unitとして4員環をもつゼオライトであることを特徴とする請求項5に記載のRTH型ゼオライトの製造方法。
- 前記種結晶としてのゼオライトがRTH型ゼオライトであることを特徴とする請求項6に記載のRTH型ゼオライトの製造方法。
- 前記水性混合物中の水の割合がH2O/Siモル比で40以上であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のRTH型ゼオライトの製造方法。
- 前記へテロ元素がアルミニウム、ガリウム、およびホウ素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のRTH型ゼオライトの製造方法。
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