JP2010148691A - 積層コラーゲンゲルの製造方法、配向方法およびそれらの方法により製造された積層コラーゲンゲル - Google Patents
積層コラーゲンゲルの製造方法、配向方法およびそれらの方法により製造された積層コラーゲンゲル Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 コラーゲン分子の配向や積層構造を制御して、実際の器官の高次構造に近いコラーゲンゲルを作製できる方法、該方法に製造された積層コラーゲンゲルおよび該方法に使用する配向方法を提供すること。
【解決手段】 支持体上に厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層をスピンコートにより形成する工程、
以後、前行程で形成されたコラーゲンゲル層上に、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層をスピンコートにより形成する工程を1回以上行うことを特徴とする、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層が2層以上積層されている積層コラーゲンゲルの製造方法、該製造方法により製造された積層コラーゲンゲル、およびコラーゲン分子の配向方法。
【選択図】図2A
【解決手段】 支持体上に厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層をスピンコートにより形成する工程、
以後、前行程で形成されたコラーゲンゲル層上に、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層をスピンコートにより形成する工程を1回以上行うことを特徴とする、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層が2層以上積層されている積層コラーゲンゲルの製造方法、該製造方法により製造された積層コラーゲンゲル、およびコラーゲン分子の配向方法。
【選択図】図2A
Description
本発明は、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層が2層以上積層されている積層コラーゲンゲル、その製造方法およびコラーゲン分子の配向方法に関する。
コラーゲンは我々の体を構成するタンパク質の中で最も多く(30%以上)、皮膚、骨、腱、血管壁、角膜など様々な臓器の構造タンパク質である。単なる構造支持的機能にとどまらず、細胞外マトリックスとして細胞の足場となり、細胞の増殖や分化を促進する。このため、細胞工学の分野では動物細胞の培養ゲルとして、再生医療の分野では人工皮膚や血管、角膜、骨材料など、人工臓器を構築するマトリックスとしてコラーゲンが応用されている。
コラーゲンは3残基ごとに必ずグリシン(Gly)が現れる(Gly-X-Y)の繰り返し配列からなり、X位やY位にはそれぞれプロリン(Pro)やヒドロキシプロリン(Hyp)が多く現れるという特殊なアミノ酸配列を持ち、3残基で1回転する左巻きのペプチド鎖(α鎖)3本が右巻きに3重により合わさったトリプルへリックスという特徴的な構造をとる(以下、特に断らない限り、このトリプルへリックス構造を有する分子を「コラーゲン」または「コラーゲン分子」という)。3本鎖を構成するアミノ酸配列の違いから発見順にType I, II, III…と分類されており、現在では約30種類も見つかっている。組織ごとに存在するTypeや分布が異なる。生体内に最も多く存在するType Iコラーゲンは1本の鎖が約1000残基、3本鎖全体では3000残基からなり、分子量が約300kDa、直径が約1.5nm、長さが300nmである。生体内ではトリプルへリックスが67nmずつ規則正しくずれて会合しコラーゲン細線維を形成し、さらにα鎖間(分子間)で架橋が行われてそれらコラーゲン細線維が会合して束になりコラーゲン線維を形成して階層構造を高め各器官毎に独特の高次構造を形成している。分子構造や細線維の会合メカニズムの詳細は未だに明らかにされていない。
コラーゲンの細胞マトリックスとして医療分野に用いる場合には高品質と高い安全性が要求される。そのため、医療分野に用いる場合、原料となる皮膚や骨などのコラーゲンから抗原性の高い部位(テロペプチド)を酵素処理などにより除去して可溶化した可溶化コラーゲン(例えばアテロコラーゲン)を架橋剤で架橋してゲル化させたものが用いられている。しかし、コラーゲンの細胞マトリックスとしての機能を高めるためには、実際の器官の高次構造に近いコラーゲンゲルを作製する必要があり、コラーゲン分子、細繊維、線維の配向や積層構造を制御できる技術が望まれている。
例えば、コラーゲンを主成分とする角膜実質の場合、角膜実質はコラーゲン線維が規則正しく配向して密に会合した層が多数積層されて形成されており、上下の層ではその配向が90度異なった構造をしている(ラメラ構造)ために、透明度と物理的強度を維持していると言われている。
これに対し、透明度の高い高濃度(10〜20wt%)のコラーゲンゲル調製法が提案されている(非特許文献1)。この方法は、三方活栓によりつないだ2本のシリンジを用いてコラーゲン溶液を撹拌するため、気泡の混入を防いで高濃度かつ透明なゲルを調製できる。このゲルを用いて角膜実質への応用研究が行われている。
また、コラーゲンの配向については、一軸方向に延伸配向する方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、コラーゲンを含むハイドロゲルに、そのゲル化過程でゲル把持用物質をゲル両端に挿入し、ゲル化後、ゲル把持用物質の両端を延伸することでハイドロゲルを一軸方向に延伸している。
また、磁場を利用してコラーゲンを配向させる方法が提案されている(非特許文献2)。この方法では、磁場中でコラーゲンゲル層を作製後、そのゲル層を回転させそのゲル層の上にさらに磁場中でコラーゲンゲル層を積層している。
国際公開第2007/066715号パンフレット
Griffth, M., et al., IOVS 47, 1869, 2006; Biomacromolecules 7, 1819, 2006
Torbet, J., et al. Biomaterials, 29, 4268, 2007
しかしながら、非特許文献1の方法ではゲルの物理的強度は低く、移植の際の縫合に適した物性は達成できていない。また、特許文献1や非特許文献2では、十分な透明度が得られていないのが現状である。
そこで、本発明は、コラーゲン分子の配向や積層構造を制御して、実際の器官の高次構造に近いコラーゲンゲルを作製できる方法、該方法に製造された積層コラーゲンゲルおよび該方法に使用する配向方法を提供することを目的とする。
本発明は、まず支持体上に厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層をスピンコートにより形成する工程、
以後、前行程で形成されたコラーゲンゲル層上に、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層をスピンコートにより形成する工程を1回以上行うことを特徴とする積層コラーゲンゲルの製造方法を提供するものである。
以後、前行程で形成されたコラーゲンゲル層上に、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層をスピンコートにより形成する工程を1回以上行うことを特徴とする積層コラーゲンゲルの製造方法を提供するものである。
上記製造法により、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層を所望の層数積層できる。例えば、生体角膜のコラーゲン層は、厚さ約1μmの配向コラーゲン層が約500層積層した構造を有しているが、本発明の製造方法はそのような構造の積層コラーゲンゲルを製造可能である。
本発明の製造方法に置いてはまず、スピンコートに適用するコラーゲン溶液を用意する。該コラーゲン溶液は、少なくとも、可溶化コラーゲンと水、所望により架橋剤とを含む水溶液である。
可溶化コラーゲンは、水に可溶なコラーゲンであって医療用に用いられるものであれば特に限定されない。具体的には酸処理コラーゲン、酵素処理コラーゲン(アテロコラーゲン)、アルカリ処理コラーゲン及びそれらの化学修飾コラーゲンである。さらに、好ましくはアテロコラーゲン及びその化学修飾コラーゲンである。ここで、化学修飾コラーゲンとは、コラーゲン分子の官能基を活性化するものであって、スクニシル化コラーゲン、アシル化コラーゲン又はエステル化コラーゲン等を挙げることができる。
ここで、可溶化コラーゲンは、コラーゲン線維が、コラーゲン分子あるいは数分子以下まで微細化して水和したものであり、水あるいは塩水溶液に溶解して透明溶液を形成するものをいう。
ここで、可溶化コラーゲンは、コラーゲン線維が、コラーゲン分子あるいは数分子以下まで微細化して水和したものであり、水あるいは塩水溶液に溶解して透明溶液を形成するものをいう。
コラーゲン溶液の濃度は、0.1から20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。0.1重量%より小さいとゲル強度が不足し、20重量%より大きいとコラーゲン溶液の粘度が高すぎでゲルを作製させるのが困難になるからである。
また、コラーゲン溶液のpHは可溶化コラーゲンが透明となるpHであれば特に限定されない。アテロコラーゲンを用いる場合、pHは2.0〜4.0が好ましい。pHが4.0より高い場合、コラーゲン分子が十分に溶解せず、pHが2.0より低いとコラーゲン分子が加水分解を受け、トリプルヘリックス構造が崩壊するためにゲルの強度が不十分となるからである。pHの調整は、塩酸や酢酸、蟻酸などの酸性溶液を用いることにより行え、上記コラーゲン溶液調製の際の透明化に加え、ゲル化の際のコラーゲン分子の架橋を均一に行う働きを有している。
所望により使用する架橋剤は、コラーゲン分子間、細繊維、線維間の架橋を行うものであり、蛋白質の架橋に用いられ水溶性であれば特に限定されない。例えば、アルデヒド系、カルボジイミド系、エポキシ系及びイミダゾール系の水溶性架橋剤を用いることができる。好ましくはカルボジイミド系であり、具体的には、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジミド等を挙げることができる。また、紫外線やγ線による光架橋等を挙げることができるが、水中での反応に適したEDCが好ましい。
なお、カルボジイミド系の架橋剤を用いる場合、カルボキシル基活性剤としてN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いることが好ましい。カルボキシル基を活性エステル化して架橋効率を高めることができる。架橋剤にEDCを用い、カルボキシル基活性剤としてNHSを用いる場合、その濃度比EDC/NHSが0.5〜10、好ましくは2.0〜10である。
また、架橋剤を使用する場合、架橋剤濃度は1〜10重量%、より好ましくは4〜8重量%である。1重量%より小さいとゲル強度が不足し、10重量%より大きいともろいゲルができるからである。
なお、本発明では、溶液のpH調整の後に架橋剤を加えることが好ましい。pH調整時の架橋剤の失活を軽減することができる。
次に、上記コラーゲン溶液を支持体に滴下し、支持体上に該溶液をスピンコートする。スピンコータとしては従来のものを使用すればよい。
支持体としては、コラーゲンが特異的に吸着するものでなければ特に限定されない。例えば、ガラス、プラスチック、シリコンシートなどを用いることができる。親水性表面を持つガラス基板が好ましい。滴下する量は、溶液の濃度、支持体の回転速度、時間、環境温度等と同様に、目的とするコラーゲンゲル1層の厚さ等により適宜設定すべき要因のひとつである。
一回のスピンコートにより得られるコラーゲンゲル層の厚さは、コラーゲン溶液の濃度、滴下量、スピンコート時のスピン速度、時間、環境温度等を適宜調整することにより10μmより薄く、さらに薄くは0.1μm以下、よりさらに薄くは0.05μm以下の薄いコラーゲンゲル層を形成することができる。薄い層であれば、50nm程度の厚さのものまで製造可能である。厚い層は、せいぜい10μmであり、本方法では10μm以上の厚いコラーゲンゲル層を製造することはかえって困難である。本発明に置いては、これまで成し得なかったコラーゲンフィルムのナノレベル50〜500nm厚での積層化が可能である。そして、スピンコートを繰り返すことで、各層のコラーゲン分子の配向が制御された緻密な積層コラーゲンゲルフィルムを製造することができる。
本発明において、膜厚は走査型電子顕微鏡による断面観察により測定した値を用いている。
本発明において重要な点は、溶液の滴下位置を、支持体の回転中心側位置に滴下することである。そうすることにより、支持体上の液滴に回転による遠心力を付与し、液滴が回転中心側から外側へ延展されるようにするためである。その結果、コラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層が形成される。
「コラーゲン分子が配向している」とは、コラーゲン分子鎖が規則性をもってある方向を向いているということであり、コラーゲン分子の配向の制御は、支持体をスピンコート時の回転中心位置に置くか、あるいは、回転中心位置から離して置くことにより行うことができる。
支持体をスピンコート時の回転中心位置において、コラーゲン溶液を回転中心位置に滴下した場合、溶液は該中心位置から四方八方に延展し、放射状にコラーゲン分子が配向したコラーゲンゲル層が得られる。
支持体を、回転中心位置から離して置き、コラーゲン溶液を支持体の回転中心側位置に滴下すると、コラーゲン分子が同一方向に配向したコラーゲンゲル層を得ることができる。「同一方向に配向」というのは、回転中心と液滴の両端を結んだ線で描かれる扇形の有する中心角度の範囲内で、コラーゲン分子が回転中心から回転外側の方向へ向いていることを意味している。従って液滴が小さいほど、また液滴滴下位置を回転中心から距離をとればとるほど、コラーゲン分子の配向の方向がより揃うことになる。また、本発明に置いては、「配向方向」は、回転中心と液滴の中心を結んだ線方向をいうものとする。
本発明において、配向は走査型電子顕微鏡観察やX線回折測定により確認でき、放射状の配向は走査型電子顕微鏡観察で放射状の分子配向を観察することにより確認でき、同一方向の配向は走査型電子顕微鏡観察で同一方向の分子配向を観察することにより確認できる。
本発明に置いては、上記のようにコラーゲン分子が配向したコラーゲンゲル層上に、さらにコラーゲン層を積層するに際して、下層の配向方向と上層の配向方向に異方性を持たせてコラーゲンゲル層を積層することができる。
すなわち、下層の配向方向と上層の配向方向を0度より大きく180度より小さい角度で異方性を持たせることができる。そのような異方性を持たせるには、下層の配向方向と上層の配向方向が所望の角度を有するようになるように支持体を回転させた上で上層のコラーゲンゲル層を形成するようにすればよい。例えば、上層と下層の配向性に90度の異方性を付与するには、まず上記したようにコラーゲン分子が同一方向に配向したコラーゲンゲル層を得、次にその支持体を90度回転させ、下層と同様にコラーゲン分子が同一方向に配向したコラーゲンゲル層を積層すればよい。本発明よれば、一層一層の配向方向を制御して(異方性を制御して)各コラーゲン層を積層することができる。
厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層を所望の層数積層できる
ナノレベルの厚さ、例えば50〜500nm厚のコラーゲン層を短時間で積層できる。
各コラーゲンゲル層間の剥離がない。すなわち、層間の接着力が強い。
製造プロセスの自動化が容易。
ナノレベルの厚さ、例えば50〜500nm厚のコラーゲン層を短時間で積層できる。
各コラーゲンゲル層間の剥離がない。すなわち、層間の接着力が強い。
製造プロセスの自動化が容易。
実施例1
積層と膜厚
基板(支持体)としてQCM基板(水晶振動発信子)を用いた。
コラーゲン溶液として、1.0wt%のブタ皮膚由来I型コラーゲン/50mM酢酸緩衝液(pH=3.8)を使用した。
上記基板をスピンコータ回転板の中央に載置し、該コラーゲン溶液30μLを基板中心上に滴下後、加速条件:Slope 10秒、回転数:5000rpm、回転時間:60秒の条件下でスピンコートした。
形成されたコラーゲン層上に、コラーゲン溶液を滴下する以外、上記と同様にスピンコート工程をさらに19回繰り返し、積層コラーゲンゲルを得た。
得られた積層コラーゲンゲルは透明であった。
膜厚は、QCMの振動数変化より計算して求め、積層コラーゲンゲルの膜厚は12.6μmであった。得られた積層膜のスピンコート繰り返し回数と膜厚の関係を図1に示した。
得られた積層膜は、走査型電子顕微鏡観察により確認したところ、コラーゲン線維の配向、すなわちコラーゲン分子の配向が放射状に配向していることが確認できた。
積層と膜厚
基板(支持体)としてQCM基板(水晶振動発信子)を用いた。
コラーゲン溶液として、1.0wt%のブタ皮膚由来I型コラーゲン/50mM酢酸緩衝液(pH=3.8)を使用した。
上記基板をスピンコータ回転板の中央に載置し、該コラーゲン溶液30μLを基板中心上に滴下後、加速条件:Slope 10秒、回転数:5000rpm、回転時間:60秒の条件下でスピンコートした。
形成されたコラーゲン層上に、コラーゲン溶液を滴下する以外、上記と同様にスピンコート工程をさらに19回繰り返し、積層コラーゲンゲルを得た。
得られた積層コラーゲンゲルは透明であった。
膜厚は、QCMの振動数変化より計算して求め、積層コラーゲンゲルの膜厚は12.6μmであった。得られた積層膜のスピンコート繰り返し回数と膜厚の関係を図1に示した。
得られた積層膜は、走査型電子顕微鏡観察により確認したところ、コラーゲン線維の配向、すなわちコラーゲン分子の配向が放射状に配向していることが確認できた。
実施例2
基板(支持体)としてセルディスク(直径:1.5cm)を用いた。
コラーゲン溶液として、1.0wt%のブタ皮膚由来I型コラーゲン/50mM酢酸緩衝液(pH=3.8)を使用した。
上記基板をスピンコータ回転板の中央に載置し、該コラーゲン溶液70μLを基板中心上に滴下後、加速条件:Slope 10秒、回転数:5000rpm、回転時間:60秒の条件下でスピンコートした。
形成されたコラーゲン層上に、コラーゲン溶液を滴下する以外、上記と同様にスピンコート工程をさらに49回繰り返し、積層コラーゲンゲルを得た。
得られた積層コラーゲンゲルは透明であった。
走査型電子顕微鏡(SEM)で断面を観察したところ、積層コラーゲンゲルの膜厚は27μmであった。
得られた積層膜は、走査型電子顕微鏡観察で表面構造を観察したところ、コラーゲン線維の配向、すなわちコラーゲン分子の配向が放射状に配向していることが確認できた。
図2Aに得られた積層コラーゲンゲル断面のSEM写真を示す。また図2Bに断面拡大写真を示す。
図4にヒト角膜実質層断面のSEM写真を示す。
図2Aと図4を比較するとわかるように、実施例2で得られた積層コラーゲンゲルは、ヒト角膜実質層に酷似した構造をしていることがわかる。このことは角膜移植に代わる新しい眼科領域の再生医療技術として有効であることを示すものである。
基板(支持体)としてセルディスク(直径:1.5cm)を用いた。
コラーゲン溶液として、1.0wt%のブタ皮膚由来I型コラーゲン/50mM酢酸緩衝液(pH=3.8)を使用した。
上記基板をスピンコータ回転板の中央に載置し、該コラーゲン溶液70μLを基板中心上に滴下後、加速条件:Slope 10秒、回転数:5000rpm、回転時間:60秒の条件下でスピンコートした。
形成されたコラーゲン層上に、コラーゲン溶液を滴下する以外、上記と同様にスピンコート工程をさらに49回繰り返し、積層コラーゲンゲルを得た。
得られた積層コラーゲンゲルは透明であった。
走査型電子顕微鏡(SEM)で断面を観察したところ、積層コラーゲンゲルの膜厚は27μmであった。
得られた積層膜は、走査型電子顕微鏡観察で表面構造を観察したところ、コラーゲン線維の配向、すなわちコラーゲン分子の配向が放射状に配向していることが確認できた。
図2Aに得られた積層コラーゲンゲル断面のSEM写真を示す。また図2Bに断面拡大写真を示す。
図4にヒト角膜実質層断面のSEM写真を示す。
図2Aと図4を比較するとわかるように、実施例2で得られた積層コラーゲンゲルは、ヒト角膜実質層に酷似した構造をしていることがわかる。このことは角膜移植に代わる新しい眼科領域の再生医療技術として有効であることを示すものである。
実施例3
基板(支持体)としてセルディスク(直径:1.5cm)を用いた。
コラーゲン溶液として、1.5wt%のブタ皮膚由来I型コラーゲン/50mM酢酸緩衝液(pH=3.8)に5wt%のWSC/NHS (2:1、架橋剤)を添加したものを使用した。
上記基板をスピンコータ回転板の中央に載置し、該コラーゲン溶液100μLを基板中心上に滴下後、加速条件:Slope 10秒、回転数:5000rpm、回転時間:60秒の条件下でスピンコートした。
形成されたコラーゲン層上に、コラーゲン溶液を滴下する以外、上記と同様にスピンコート工程をさらに44回繰り返して積層コラーゲンゲルを得た。
得られた積層コラーゲンゲルは透明であった。
走査型電子顕微鏡(SEM)で断面を観察したところ、積層コラーゲンゲルの膜厚は26μmであった。
得られた積層膜は、走査型電子顕微鏡観察で表面構造を観察したところ、コラーゲン線維の配向、すなわちコラーゲン分子の配向が放射状に配向していることが確認できた。
図3Aに得られた積層コラーゲンゲル表面のSEM写真を示す。また図3Bに断面写真を示す。図3Aは中央から少し外れた場所の表面であり、一定方向(縦方向)にコラーゲン線維の配向、すなわちコラーゲン分子の配向が配向している様子がわかる。図3Bの断面観察より、コラーゲン線維の配向、すなわちコラーゲン分子の配向が積層した構造であることがわかる。
基板(支持体)としてセルディスク(直径:1.5cm)を用いた。
コラーゲン溶液として、1.5wt%のブタ皮膚由来I型コラーゲン/50mM酢酸緩衝液(pH=3.8)に5wt%のWSC/NHS (2:1、架橋剤)を添加したものを使用した。
上記基板をスピンコータ回転板の中央に載置し、該コラーゲン溶液100μLを基板中心上に滴下後、加速条件:Slope 10秒、回転数:5000rpm、回転時間:60秒の条件下でスピンコートした。
形成されたコラーゲン層上に、コラーゲン溶液を滴下する以外、上記と同様にスピンコート工程をさらに44回繰り返して積層コラーゲンゲルを得た。
得られた積層コラーゲンゲルは透明であった。
走査型電子顕微鏡(SEM)で断面を観察したところ、積層コラーゲンゲルの膜厚は26μmであった。
得られた積層膜は、走査型電子顕微鏡観察で表面構造を観察したところ、コラーゲン線維の配向、すなわちコラーゲン分子の配向が放射状に配向していることが確認できた。
図3Aに得られた積層コラーゲンゲル表面のSEM写真を示す。また図3Bに断面写真を示す。図3Aは中央から少し外れた場所の表面であり、一定方向(縦方向)にコラーゲン線維の配向、すなわちコラーゲン分子の配向が配向している様子がわかる。図3Bの断面観察より、コラーゲン線維の配向、すなわちコラーゲン分子の配向が積層した構造であることがわかる。
実施例4
実施例3において、1回の滴下量を500μLとし、繰り返し回数を109回とした以外、実施例3と同様にして、積層コラーゲンゲルを得た。
得られた積層コラーゲンゲルは、厚さが50μmであり、透明であった。
また、得られた積層コラーゲンゲルは、燐酸緩衝生理食塩水(PBS)中でも透明な状態で安定に存在した。このことはコラーゲン分子が安定に架橋されていることを意味している。
実施例3において、1回の滴下量を500μLとし、繰り返し回数を109回とした以外、実施例3と同様にして、積層コラーゲンゲルを得た。
得られた積層コラーゲンゲルは、厚さが50μmであり、透明であった。
また、得られた積層コラーゲンゲルは、燐酸緩衝生理食塩水(PBS)中でも透明な状態で安定に存在した。このことはコラーゲン分子が安定に架橋されていることを意味している。
本発明は、眼科領域の新しい再生医療技術として有効であるだけでなく、眼科以外の再生医療分野にも応用が可能である。
Claims (7)
- 支持体上にコラーゲン溶液を滴下しスピンコートすることにより、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層を形成する工程、
以後、前行程で形成されたコラーゲンゲル層上に、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層をスピンコートにより形成する工程を1回以上行うことを特徴とする、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層が2層以上積層されている積層コラーゲンゲルの製造方法。 - 回転中心に置いた支持体上の回転中心にコラーゲン溶液を滴下してスピンコートする、請求項1記載の製造方法。
- 回転中心から離れて置かれた支持体上にコラーゲン溶液を滴下してスピンコートする、請求項1記載の製造方法。
- 請求項2または3に記載の製造方法により製造された、厚さが10μmより薄くかつコラーゲン分子が配向しているコラーゲンゲル層が2層以上積層されている、積層コラーゲンゲル。
- コラーゲン溶液をスピンコートすることによりコラーゲン分子を配向することを特徴とする、コラーゲン分子の配向方法。
- コラーゲン溶液を回転中心に置いた支持体上に滴下しスピンコートする、請求項5記載の配向方法。
- コラーゲン溶液を回転中心から離れた位置に置いた支持体上に滴下しスピンコートする、請求項5記載の配向方法。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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