JP2010146671A - 光記録再生方法及び光記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 記録層が低吸収であるにもかかわらずギガW/cm以上もの巨大な光エネルギーを使用せずに、半導体レーザーにて十分な記録ができる記録感度と、十分な記録変調度が得られると同時に、入射光寄りの隣接記録層が記録されることを避けることができる多層光記録媒体の光記録再生方法および光記録媒体を提供する。
【解決手段】 (1)記録媒体に形成された記録層に設けられた隣接する2つの案内溝の間、あるいは溝の無い平面部を記録部として、開口数0.85以上の対物レンズで記録用のレーザー光を集光することによって行う記録媒体の光記録方法であって、上記記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、上記案内溝に上記記録部と同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となる記録媒体を用いて記録を行うことを特徴とする、記録層が有機系材料を含む記録媒体の光記録方法。
(2) 記録層中に、記録用のレーザー光の照射により、記録波長での吸収が過渡的に、より大きい状態に変化する化合物を含む記録媒体を用いて、該過渡的な吸収増加を継続させることにより、再生可能な光学変化を生じさせることを特徴とする、記録層が有機系材料を含む記録媒体の光記録方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、多層光記録媒体、体積(3D)メモリー、三次元光造形への応用が可能な、光学記録再生方法とそれに好適な光記録媒体に関する。
レーザー光を用いた光学記録は、高密度の情報記録の保存及び再生が可能であるため、近年、その開発が盛んに進められている。このような光記録媒体の一例としては、光ディスクを挙げることができる。一般に、光ディスクは、円形の基体に設けられた薄い記録層に、集束したレーザー光を照射し、高密度の情報記録を行うものである。その記録は、照射されたレーザー光エネルギーの吸収により、その箇所の記録層に、分解、蒸発、溶解等の熱的な変形あるいは変化が生じることにより行われている(ヒートモード記録)。又、情報の再生は、レーザー光により、変形が起きている部分と起きていない部分の反射率の差を読み取ることにより行われている。したがって、記録層は、十分な熱源を確保するために、一定以上の吸収を有する必要がある。
最近では、記録の高密度化要求に答えるべく、記録光の短波長化、記録容量の倍化を測った2層記録媒体の作製などが検討され、二層DVD−Rが普及している。現在、更にブルーレイディスク(BD−R)の2層〜6層程度の多層化が開発検討されつつある。しかし、この方法においては、記録密度に限界があると考えられている。
DVD−RやBD−R等の従来の方法で記録層を積層する場合、隣接記録層との間隔数十μmが必要であり、積層数には自ずと限界があるからである。さらに、従来のヒートモード記録で高密度記録を多層記録で行う場合、記録層の有する吸収により、記録層の層数を経る毎に、各層の吸収によりかなりの光エネルギーが消失され、記録感度及び反射光量が著しく損なわれる恐れがあるからである
そこで、かかる熱的な変形や変化(ヒートモード記録)の方式ではなく、フォトンモードの反応による光学変化の方式を記録方法に取り入れることが検討されている。
即ち、集光したレーザー光を照射し、結合の光開裂や光異性化等のフォトンモードの反応をおこさせる。そしてその結果生じる、反応部分(記録部分)における発光強度変化や吸収スペクトルの変化(以下、光学変化、あるいは、光学的に検出可能な変化という。)を、レーザー光などの光により情報として読み出すのである。
しかし、かかるフォトンモードの反応には、線形吸収の波長を使用する場合には、照射光強度に対して線形的に光学記録が行われ、記録照射する光の強度に対する閾値性がないことが知られている。閾値性があるとは、照射光強度が一定の値に達するまでは光学記録が行われないか、記録速度が極めて緩やかであることを言い、光学記録には非常に望まれる要件である。何故ならば、記録部分が、上記閾値性のないフォトンモードで形成される場合には、情報を光で読み出すために光を照射すると、読み出し時に記録と同じ光学変化が残留蓄積することになり、情報を繰り返して読み出すにつれて、記録部分と未記録部分の光学変化のコントラストが低下し、最終的には、情報が読み出せなくなる恐れがあるからである。
この問題を回避するために、フェムト秒レーザーを用いたギガW/cm以上の巨大なパワーのパルスレーザーにより、非共鳴の多(二)光子励起記録が可能となることが提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
しかし、かかる非共鳴の多(二)光子吸収が有効に記録に利用できる波長域は主として赤外である。したがって、現行の青色レーザーでの記録密度に対して、高密度記録のメリットが望めない。また、かかる巨大なパワーを有するレーザーの開発は、高圧電源や特殊
なノイズ低減装備が必要であり、いまだに研究用途や医薬開発用途にとどまっているのが現状である。
WO2007034616公報 Applied.Optics,45,33,(2006),p8424
ブルーレイディスクの次の世代の超高密度光記録媒体の場合には、少なくとも、より短小な記録が、3次元的により局在化して記録することが要求される。なぜならば、対物レンズで記録光を集光するならば、その対物レンズのワーキングディスタンスの制限により、集光できる距離が決まっており、多層記録層の総数の膜厚の上限があるからである。ブルーレイディスクでは、開口数が0.85の対物レンズを使用し、所定の光路差を有するカバー層を透して集光するため、およそ数百μm〜400μmが,記録媒体の厚さの上限とされている。
従って、(a)記録層1層あたりの膜厚をできる限り薄くすることが、複数の記録層通過に伴う記録エネルギー消失を最低限に防いで記録感度をできるだけ稼ぐという目的においても、多層化して記録総数を稼ぐという目的においても好ましい。
さらに、(b)記録層と記録層の間隔も、できる限り狭くすることにより、一層、記録層の総数を稼ぐことが可能となり、同じ記録層数でも総膜厚を減らすことになるため、より大きな開口数の対物レンズに変えて、さらなる高記録密度を達成することが可能となる。
しかし、上記(a)と(b)とを実現するためには、従来の記録のような、記録層の吸収を利用する高温での分解や相転移などの熱的記録方式は、多層記録層を透過できる記録光や再生光が各記録層を経る毎に減衰することになり、良好な記録ができなくなる恐れがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、隣接する記録層の間隔(ディスクの深さ方向の間隔)を従来のように数十μmもとるのではなく、十数μm〜数μm以下とし、従来よりも多くの記録層を積層することが可能で、かつ、ギガW/cm以上もの巨大な光エネルギーを使用せずに実現できる好ましい光記録方法と、その記録方法に好適な超高密度記録が可能な光記録媒体とを提供することを目的とする。
従って、従来よりも多くの記録層を有する超多層光記録媒体を記録するためには、記録層1層毎に必要な光吸収量が小さく、途中の記録層での光消費が少ないために、一番奥の層にも十分な強度の光が届き、良好な記録ができる記録方法が必要である。
そこで本発明者らは、鋭意検討を行なった結果、次の事項を見出した。
まず、〔1〕記録光は途中の記録層により過度の吸収がされずに所望の位置の記録層に到達し、集光され、吸収が少ないのに、十分な記録感度が確保できる記録方法として、集光時に初めて吸収が変化する方法、その中でも、集光時に初めて吸収が増大するような方法がとりわけ好ましいと考えるに至った。尚、本発明においては、記録光は単一波長を前提とする。ただし、吸収が増大することから得られる屈折率変化は、本発明においては、記録マークとして読み取るのではなく、ビーム集光・エネルギー集積部として、最も安定な記録マークを形成することに利用することが特徴である。
尚、前記“最も安定な記録マーク”とは、活性化エネルギーが高く、通常の環境下、通常の記録再生条件下では消滅しない状態の形成、または、記録膜と接する別の層との反応場や例えば形状変化や微細な孔等、永年保存が可能な記録マークを意味する。
また、一番奥の層でも良好な記録ができる記録再生方法として、〔2〕記録に使用する光エネルギーを、
(i)低パワーの領域では、反応がごく緩やかであるか、記録に結びつかない反応に使用し、
(ii)高パワーの領域では記録に結びつく反応として使用するような記録方法
により、所望の記録層よりも入射側にある記録層への重ね書きが起こらないようにすることが可能であり、また、そのような記録方法を実現できると考えた。
かかる記録方法を用いて記録された光記録媒体は、上記低パワーの領域を再生光のパワー領域とすることにより、非破壊読み出しが可能である。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 記録媒体に形成された記録層に設けられた隣接する2つの案内溝の間、あるいは溝の無い平面部を記録部として、開口数0.85以上の対物レンズで記録用のレーザー光を集光することによって行う記録媒体の光記録方法であって、上記記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、上記案内溝に上記記録部と同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となる記録媒体を用いて記録を行うことを特徴とする、記録層が有機系材料を含む記録媒体の光記録方法。[2] 上記記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、上記案内溝に上記記録部と同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となる記録媒体が、
記録層中に有機色素と添加剤成分とを含有し、記録用のレーザー光の照射により、前記有機色素と前記添加剤成分とが反応した結果、記録波長での吸収が変化することを特徴とする、[1]に記載の記録媒体の光記録方法。
[3] 上記記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、上記案内溝に上記記録部と同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となる記録媒体が、
記録層中に有機色素と添加剤成分とを含有し、記録用のレーザー光の照射により、前記有機色素と前記添加成分とが反応した結果、吸収スペクトルの吸収波長域がシフトし、記録波長での吸収が、より小さい状態に変化することを特徴とする、[2]に記載の記録媒体の光記録方法。
[4] 記録層中に有機色素と添加剤成分とを含有し、記録用のレーザー光の照射により、前記有機色素と前記添加成分とが反応した結果、記録波長での吸収がより大きい状態に変化する記録媒体を用いて記録を行い、記録時に少なくとも集光部を、記録用のレーザー光により加熱する工程を有することを特徴とする、[2]に記載の記録媒体の光記録方法。
[5] 記録層中に、記録用のレーザー光の照射により、記録波長での吸収が過渡的に、より大きい状態に変化する化合物を含む記録媒体を用いて、該過渡的な吸収増加を継続させることにより、再生可能な光学変化を生じさせることを特徴とする、記録層が有機系材料を含む記録媒体の光記録方法。
[6] 前記過渡的吸収増加の量が、照射前OD値の2分の1以上となるようにすることを特徴とする、[5]に記載の記録層が有機系材料を含む記録媒体の光記録方法。
[7] 記録用のレーザー光が単一波長レーザー光であって、
記録層中に、該単一波長レーザー光の照射光強度に応じて不可逆的にも可逆的にも反応しうる化合物を含む記録媒体を用いて記録を行うことを特徴とする、
[1]ないし[6]のいずれかに記載の記録媒体の光記録方法。
[8] 記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、記録用のレーザー光強度に対して、指数近似される関係で増加することを特徴とする、[1]ないし[7]のいずれかに記載の記録媒体の光記録方法。
[9] 記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、記録用のレーザー光強度に対して、3次多項式で近似される関係で増加することを特徴とする、[1]ないし[7]のいずれかに記載の記録媒体の光記録方法。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の記録媒体の光記録方法に用いられる記録媒体であって、反射層、波長選択層および半透明膜からなる群から選ばれるいずれかの層と、1以上の樹脂層に接している1以上の記録層とを有することを特徴とする光記録媒体。[11] 記録媒体の反射層、波長選択層および半透明膜を除く、記録層とその他の層の合計の膜厚が100μm以上、400μm以下であり、記録媒体の反射層、波長選択層および半透明膜を除く、記録層とその他の層の合計膜厚の記録波長および/または再生波長でのOD値の和が0.7以下であることを特徴とする、[10]に記載の多層光記録媒体。
[12] 記録層各層の記録再生光波長でのOD値が0.01以上であり、消衰係数kとその膜厚の積が、5×10−3μm未満であることを特徴とする、[11]に記載の多層光記録媒体。
[13] [1]〜「9」に記載された記録方法により記録されたことを特徴とする多層光記録媒体。
[14] 深さ約80nm、溝幅約0.16μm、トラックピッチ0.32μmの記録光および再生光の案内溝を有する厚さ1.1mmのポリカーボネート基板に対して、405nmでの記録層のOD値が0.7以下となるように積層し、隣接する2つの案内溝の間、あるいは溝の無い平面部に、開口数0.85の対物レンズで記録用のレーザー光を集光することによって、記録マーク長2T〜8Tを形成した際に、そのいずれかにおける記録変調度が、上記案内溝に同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となることを特徴とする、光記録媒体の記録層形成用有機組成物。
本発明の記録媒体の光記録再生方法を用いれば、隣接する記録層の間隔(ディスクの深さ方向の間隔)を従来のように数十μmもとるのではなく、例えば十数μm〜数μm以下の間隔に狭くし、従来よりも多くの記録層を積層することが可能で、かつ、超高密度光記録媒体に対して、ギガW/cm以上もの巨大な光エネルギーを使用せずに実現できる。
また、本発明の多層光記録媒体は、記録光入射側から1、2、3、・・・n−1、n、・・・と記録層が積層されている場合、n番目とn−1番目の層とを十分近くに設けたとしても、信号が検出され始める記録パワーと記録信号が飽和に達するまでの記録パワーとの間隔を広く設けることにより、n番目に記録レーザー光を集光して記録する際に、それよりも入射側に近いn−1番目の記録層が記録されることを防ぐことが可能となる。つまり、本発明によれば、半導体レーザーで記録光パワーに対する閾値性を設けることができ、より多くの記録層を積層した超高密度光記録媒体が可能となる。
本発明においてOD値とは、一般に光学濃度と呼ばれるものであり、以下の数式により定義される。
OD(optical density)=−log10(I/I
=−αd/log(10)
=−(4πkd/λ)/loge(10);λ=光の波長
上式においてdは膜厚、Iは透過光量、Iは入射光量、kは消衰係数(複素屈折率の虚部)、αは吸収係数を表す。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
I.本発明の光記録方法
本発明の記録媒体の光記録再生方法は、記録媒体中の隣接する2つの案内溝の間、あるいは溝の無い平面部を記録部として、開口数0.85以上の対物レンズで記録用のレーザー光を集光することによって行う記録媒体の光記録再生方法であって、上記記録部のブルーレイディスク(BD−R)の規格に準拠した記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおけ
る記録変調度が、上記案内溝に記録部と同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となる記録媒体を用いて記録再生を行なうことを特徴とする。
ここで記録媒体中の隣接する2つの案内溝の間、あるいは溝の無い平面部とは、記録層膜厚がブルーレイディスク(BD−R)など従来型光記録媒体の溝上記録部の0.1〜0.3倍、即ちおよそ10nm〜30nm程度である部位を表す。本発明の光記録方法によれば、記録層膜厚が例えば10nm〜30nmであっても、記録変調度が通常の溝上記録の半分以上確保できる。
以下に、本発明の光記録媒体、中でも超多層光記録媒体の光記録再生方法として好ましい、前述〔1〕〔2〕の光記録方法について詳しく述べる。
以下I−1,I−2においては、主として本発明の効果を発現する上で必須の記録層成分について説明する。これらの成分を含む有機系材料を用いて、II−2に後述する条件に基づいて記録層を形成し、例えばII−1において後述する層構成を有する光記録媒体とすることで、本発明の効果が発現される。
I−1.記録光を記録層に集光した時点で初めて吸収を変化させる方法
記録光が途中の記録層により過度の吸収がされずに所望の位置の記録層に到達し、集光され、吸収が少ないのに、十分な記録感度が確保できる光記録方法としては、次の3通りが挙げられる。
(1)記録層中に有機色素と添加成分とを含有し、記録用のレーザー光の照射により、前記有機色素と前記添加成分とが反応した結果、吸収スペクトルの吸収波長域がシフトし、記録波長での吸収が、より小さい状態に変化することを利用して行う記録媒体の光記録方法。
(2)記録層中に有機色素と添加成分とを含有し、記録用のレーザー光の照射により、前記有機色素と前記添加成分とが反応した結果、記録波長での吸収がより大きい状態に変化する記録媒体を用いて記録を行い、記録時に少なくとも集光部を、記録用のレーザー光により加熱する工程を有する記録媒体の光記録方法。
(3)記録層中に、記録用のレーザー光の照射により、記録波長での吸収が過渡的に、より大きい状態に変化する化合物を含む記録媒体を用いて、
該過渡的な吸収増加を継続させることにより、再生可能な光学変化を生じさせることによって行う、記録層が有機系材料を含む記録媒体の光記録方法。
以下、上記(1)〜(3)の光記録方法について、詳細に説明する。
(1)の方法を用いる場合、記録層中に、記録用のレーザー光の照射により、記録波長での吸収が、褪色などの光劣化以外の機構によって、記録前より少ない状態に変化する化合物を含む記録媒体を用いて記録を行う。ここで言う記録波長での吸収減少は、集光部分における異性化反応、あるいは複数の成分による光反応の結果、吸収スペクトルの吸収波長領域がシフトし、吸収が小さくなる現象を指している。いわゆる褪色などの光劣化に伴う吸収減少とは明確に区別される。褪色現象は、光の照射によって、集光の有無を問わず確認される現象であり、記録層の吸収スペクトルの吸収帯の波長が実質的にシフトせずに、吸光度(吸収)が減少する。褪色現象においては、通常閾値性や非線形性は考えにくく、記録の保存に向かないため、一般の色素系光ディスクにおいては、添加剤などにより褪色現象を抑制する。
(1)の方法においては、吸収スペクトルの吸収波長領域がシフトし、記録波長による吸収がより小さい状態に変化することにより、ヒートモード記録によって得られる記録変調度が不十分である吸収の少ない多層構造においても、該吸収変化が加算され、より記録変調度の大きく、安定な記録状態(lo to high記録: 記録部分の方が、未記
録部分よりも、もどり光量が大きい記録)が形成される。
なお、本発明において「吸収スペクトルの吸収波長領域のシフトを実質的に生じさせることなく」の「吸収波長領域のシフトを実質的に生じさせることなく」とは、
吸収スペクトルの吸収帯の形が変化せず、等吸収点を有しないでその吸光度を減ずる状況を意味する。なお、吸収成分の濃度(分子数)が減少する場合には、吸収スペクトルにおいて、その減少の前後で当該波長域のいずれの領域においても同じ吸光度をとらない。一方、吸収変化の前後でなんらかの化学的あるいは物理的変化が吸収成分に生じる場合には、吸収スペクトルの形が変化するため、吸収スペクトルの変化の前後で、同じ吸光度をとる場合がある(等吸収点)。
一方、(2)の方法を用いる場合、記録層中に含まれる有機色素と添加成分とが、記録用のレーザー光の照射により、記録波長での吸収がより大きい状態に変化する記録媒体を用いて記録を行い、集光部において、かかる吸収がより大きい状態になることにより、集光部分のみで記録レーザーが効率よく吸収されると同時に、記録層の光学定数に寄与する成分を分解するなどの安定な記録状態(ヒートモード記録)が形成される。また、かかる“吸収がより大きい状態”が集光部により多く形成されることにより、記録する層よりも奥への記録光の放射(透過)も少なくなるため、記録光の記録時のロスが小さくなり、超多層記録には好ましい記録が可能となる。
例えば、かかる記録方法には、光重合開始剤と、その反応を起こす色素化合物(有機色素)とを記録層とする、あるいは、記録層に含む、光記録媒体に対して行う記録方法が該当する。特に、現在ブルーレイディスクに使用されている波長405nmの記録光のように、フォトン1個の持つエネルギーが大きい光を記録に用いる場合には、例えば、前述の光開始剤の反応が増幅反応であるために、極めて吸収が少なくても、多くのラジカルを発生することが可能である。従って、405nm以下の短波長の光を記録光とすることは、上記(1)(2)の記録方法において、一層好ましい効果が得られる可能性がある。
尚、かかる光重合開始剤としては、一般に知られている、直接開裂光的開始剤、水素引き抜き型開始剤、光増感一電子移動型開始剤などのラジカル発生型の光開始剤が使用できる。記録光として405nm以下の短波長の光を用いる上では、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)に例示されるような、吸収極大が400nmよりも短波長側にあるものが特に好ましい。また、吸収極大が400nmよりも長波長側にあるラジカル発生型光開始剤も、光反応の非線形性を促す可能性がある場合には、好ましい。
上記記録方法に上述の光重合開始剤と組み合わせて用いられる色素化合物(有機色素)としては、上述の光開始剤と反応しやすい化合物であれば特に限定されないが、具体的には以下のものが挙げられる。
例えば、ラジカル発生型の光開始剤と反応が起こりやすい化合物として、本発明者らの検討により、芳香環や複素環に塩素原子を結合するシアニン系色素やオキサジン系色素、スクワリリウム系色素、バルビツール系色素、イミド系色素、ピロメテン系色素、ボラジアザインダセン(boradiazaindacene)系色素などが挙げられる。
また、含金属化合物からの金属イオンの脱離などの可能性のある、金属ポルフィリンやその誘導体、含金アゾ色素、含金スクワリリウムなども好ましい。その中では、金属ポルフィリンが、安定性などに優れており、好ましい。本発明の目的においては、求める波長での吸収が増大する場合が好ましいが、かかる金属イオンに関する反応の場合には、(1)の方法に該当するところの吸収の減少、吸収ピークのシフトなども可能性としては起こりうる。中心金属イオンの価数もかかる反応には関連が強いと考えられる。
吸収の増大に関しては、上記、光重合開始剤などの助けを借りて、励起状態における電荷移動錯体の形成、イオン錯体の形成などが起因する場合も、本発明においては好適である。
また、ラジカル発生型の光重合開始剤に代えて、光カチオン開始剤の中でも、光酸発生剤なども用いることは可能である。ただし、酸発生の場合には、上記ラジカル発生よりも反応速度が遅い傾向がある。
上記記録方法に用いられる光酸発生剤としては、一般に知られているアリールジアゾニウム塩や、鉄アレーン錯体などのLewis酸を生成するタイプのもの等が好ましく使用できる。上記記録方法に上述の光酸発生剤と組み合わせて用いられる色素化合物としては、上述の光酸発生剤と反応しやすい化合物であれば特に限定されない。具体的には例えば、光酸発生剤と反応し、400nm近傍以下の短波長で、吸収が増大する、本発明の用途に好ましい化合物としては、例えば、イミド系色素や、ジイミド系色素、2-[Bis(pentafluorophenyl)boryl]azobenzeneで例示されるアゾ化合物などが挙げられる。
尚、(2)の記録方法においては、吸収が増大する光反応速度は、極めて高速であることが好ましい。ただし、光反応速度は、長くても記録光照射時間程度であることが好ましい。また、1分子あたりの反応時間が、記録光の照射時間(ナノ秒〜ミリ秒)よりもはるかに短い場合には、吸収成分の無輻射遷移による熱を、有効に記録に利用することができない場合が生じるため、好ましくない。かかる場合には、記録時間内に多くの分子が反応する、反応増幅や連鎖反応を誘発するように、記録層の組成を設計し、再生に十分な光学変化が確保できるようにすることが可能である。で完結することが好ましい。
また、(3)の方法は、以下の1−2で説明する記録方法に関連する方法である。この(3)の方法を用いる場合には、例えば、ジアリールエテンの中でも、閉環体(着色体)が不安定であることから、従来、光記録媒体には敬遠されてきた、“戻り反応(閉環体から開環体への異性化反応)が非常に早い化合物”を、その異性化速度や異性化をきわだたせることができるマトリックス材料(バインダー)と組み合わせたり、量子収率を増幅したり、光感応性を向上させる添加剤と組み合わせることにより、本発明において、好適なものとして使用することができる。このような化合物は、記録用のレーザー光照射時に、異性化による着色反応によって記録部分の光吸収増大に寄与した後、戻り反応により非常に早く無色状態(未記録状態)に戻る。
そのような記録方法が実現可能な光記録媒体として、例えば、1,2−ビス(2,4−ジメチルー3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロー1−シクロペンタンなどの、閉環部位の立体障害性の小さい構造を有する特定のジアリールエテンを記録層に含む記録媒体を用いた光記録再生方法が挙げられる。
この(3)の方法においては、その光反応が光強度・パワー密度によって大きく非線形的に変化するものが好ましい。たとえば、光が強いほど、励起状態分子の会合などの相互作用により、その過渡的な吸収の吸光度が増大したり、その寿命が長くなることが好ましい。このような性質を有するものの例としては、特定の構造のスピロピランがあることがわかった。このような場合には、光強度が大きいほど、より大きな吸収が出現し、さらに光強度を大きくすると、記録光波長をまたがる、新たな、かつ、長寿命の吸収が出現する。そして、かかる、光強度と照射時間の調整をすれば、その過渡的な吸収が好ましい時間存続することにより、マトリックスの熱変形や記録層の分解などヒートモード記録も可能となるからである。
この際、集光部における過渡吸収増加量は、少なくとも、照射前のOD値の半分以上、好ましくは照射前のOD値の1倍以上、より好ましくは、照射前のOD値の2倍以上、よ
りいっそう好ましくは、照射前のOD値の5倍以上である。
上記集光部における過渡吸収増加量を達成することに効果的な記録方法としては、例えば、以下のような記録パルス条件を設定することが好ましい。
即ち、1つの記録マークの形成に際して、照射パワーの前半のパワーに対して、後半のパワーは2倍以上とする、
あるいは、弱いパワーの光を照射しながら、そのパワーの2倍以上の記録パルスを照射する、等の方法で記録することが好ましい。
また、同軸上に2つの光をあわせる光学系を使用して、その面積の大きい領域の光を前記の”弱いパワーの光”とし、面積の小さい領域の光を、前記の”その弱い光の2倍以上の強いパワーの光”とする記録方法なども、上記の記録条件を達成できる方法として挙げることができる。
なお、「過渡的」とは、光照射により記録光波長近傍に新たな吸収が発生し、その吸収が有限の時間内に減衰してゆくことを意味する。一般的に過渡吸収測定法で検出することが可能であるが、その他にもさまざまな方法でも検出できる。特に、本発明の記録方法に対して好ましい過渡的な吸収は、一般に観察される過渡吸収よりも寿命が長い、反応中間体やその会合体の吸収に対応する過渡吸収であることが好ましい。
I−2.記録に使用する光エネルギーを、低パワーの領域では、反応がごく緩やかであるか、記録に結びつかない反応に使用し、高パワーの領域では記録に結びつく反応として使用する記録方法
このような記録方法としては、次の方法が挙げられる。
(4)記録用のレーザー光が単一波長レーザー光であって、記録層中に、該単一波長レーザー光の照射光強度に応じて不可逆的にも可逆的にも反応しうる化合物を含む記録媒体を用いて記録を行なう方法。
(5)記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、記録用のレーザー光強度に対して、指数近似される関係で増加する記録媒体を用いて記録を行う方法。
(6)記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、記録用のレーザー光強度に対して、3次多項式で近似される関係で増加する記録媒体を用いて記録を行う方法。
以下、上記(4)〜(6)の光記録方法について、詳細に説明する。
I−2−1.(4)の記録方法について
記録用のレーザー光が単一波長レーザー光であって、記録層中に、該単一波長レーザー光の照射密度に応じて不可逆的にも可逆的にも反応しうる化合物を含む記録媒体を用い、
記録部においては不可逆的、周辺部においては可逆的に反応が進む条件にて記録用のレーザー光を照射することにより記録を行う。
記録層中に、該単一波長レーザー光の照射密度に応じて不可逆的にも可逆的にも反応しうる化合物を含み、
上記化合物の反応が可逆的に進行するレーザーパワー領域と、不可逆的に進行するレーザーパワー領域が、記録に使用される半導体レーザー等のレーザーの出射可能パワー範囲内に存在するような記録材料、あるいは、そのようなパワー密度を実現できる記録光を使用する、記録媒体の光記録方法である。
例えば、異性化反応における、着色と無色の切り替えが、少なくとも分子内のユニットの空間的な配置に起因するところが大きい、特定のスピロピラン、特定のフルギドなどが、好ましく使用できると考えられる。特に、スピロピランのクロメン(chromene)環に、パラ位配向性の電子吸引基であるニトロ基を有するものは、着色体の消色反応(
戻り反応)の速度が極めて速く、好ましい。即ち、着色体の消色反応(戻り反応)の一因である熱消色が、立体的な動きを伴う中で、その動きの速度よりも短く大きなエネルギー密度である集光光を記録光とする記録方法を用いることにより、消去の可能性が維持されない、記録部の形成が可能となる。かかる記録媒体の光記録方法を用いれば、照射された光エネルギーが低い記録部周辺の未記録部分や再生光照射部位においては、記録色素がわずかに着色したとしても直に消色され、最終的に未記録状態が保たれるため、記録情報の劣化が起こりにくくなる。即ち、非破壊読出し(non−destructive reading)が可能となる。
I−1.(3)において挙げた、従来の光記録用有機色素にジアリールエテンを併用する系において、記録部におけるヒートモード記録を選択的に促進させ、光記録反応に非線形性を付与する方法も、かかる記録方法に該当する。さらに、上述の特定のスピロピランや特定のフルギド等の記録光パワーに対する非線形性を有する色素に、ジアリールエテンなどの記録部(集光部)におけるレーザー吸収を補う成分を組み合わせることにより、より明確な非線形性を付与することも可能である。
I−2−2.(5)および(6)の光記録方法について
記録に使用する光エネルギーを、低パワーの領域では、反応がごく緩やかであるか、記録に結びつかない反応に使用し、高パワーの領域では記録に結びつく反応として使用する光記録方法としては、前述の(4)の方法の一部のものが該当するほか、二段階反応や高励起状態反応系が実現される化合物を記録層とする、あるいは記録層に含む光記録媒体を用いた光記録方法も好適である。かかる光記録方法においては、特に、405nmのような1フォトンの持つエネルギーが非常に大きい光を記録光とすることがより好ましい。1光子励起で得られる励起状態の寿命が短く、その励起状態のさらなる励起状態からしか、光学変化が起こらないような記録媒体に対して、短寿命の励起状態からの失活を、再生領域あるいは、所望の記録層よりも入射側の記録層の受ける記録パワー領域に設定する事、そして、照射パワーを増大させ、単位時間、単位面積に到達するフォトン数を増やすこと等により、短寿命の励起状態の失活する前にさらなるフォトンがあたり、光学検出が可能な反応を起こす、さらなる励起状態を生成し記録状態とする事が、本発明の記録方法である。ここで、上記の“短寿命の励起状態”を、量子収率が著しく低い反応状態に置き換え、上記の、光学変化が起こる“さらなる励起状態”を、量子収率が著しく大きい高励起状態に置き換えることも可能である。なお、I−1.(3)において述べた「過渡的な吸収」は、ここでいう「1光子励起で得られる励起状態」の吸収に対応する。
この1光子励起状態あるいは過渡的な吸収の吸光度が光強度により増加する、あるいは、その励起状態の寿命が光強度により増加するという場合は、記録パワーと記録時間とが良好な組み合わせとなり、結果的に記録層に読み出し可能な光学変化をもたらすことが可能となるため、極めて多層光記録媒体に好ましい。なぜならば、かかる場合には、再生時や記録前には吸収がほとんどない記録層であるにもかかわらず、記録時に吸収が出現し、その吸収をめがけて記録することにより、吸収がもともと十分ある記録層と同等の良好な記録感度が得られる可能性があるからである。
このような記録方法は、記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、記録用のレーザー光強度に対して、下に凸の弓なり、あるいは、指数関数的な、あるいは、3次多項式的な非線形性を示し、これが光記録の閾値性をもたらす。
記録変調度と記録用のレーザー光強度との間に上記の関数で表されるような非線形性がある場合には、超多層記録での記録時の安定性および記録部分の安定な読み出し(非破壊読み出し)が可能となる。すなわち、分子が確実に光学変化を蓄積していく通常のフォトンモード記録とは異なり、記録パワーの低い条件=再生パワー等、記録を残したくない場合の光照射条件では、多くの分子が未記録状態の分子であり続けることができる、あるい
は、記録状態になった分子が時間の経過により未記録分子にもどることができる。一方、記録したい部分には着実に高い記録パワーを照射することにより、大きな信号強度(記録変調度)の安定な記録信号を得ることができる。つまり、低記録パワーでは。記録の光エネルギーが、光学変化に結びつかない反応に消費される、あるいは、低い記録パワー励起した分子が、光学変化に直結する反応に移行しないで(以降する前に)失活してしまう等のフォトンモードを誘発する。そのような低い記録パワーの領域を設けることが、入射光の手前側にある上層の記録部分を破壊せずに多層記録していく事、再生していく事を可能にする上で極めて有効である。そして、このようにすることで、望む大きさの記録マークを形成することが可能となる。
かかる、記録変調度の記録パワー依存性は、従来一般に知られている光ディスクの記録状態には見られない傾向であることは、後述の比較例4と5に例示するごとくである。
I−3.記録用レーザー光
上述した記録媒体の光記録は、II.において説明する光記録媒体に対して、通常、記録層に開口数0.85以上の対物レンズで0.4〜0.6μm程度に集束したレーザー光を照射することにより行う。 高密度記録のためには、記録時に使用するレーザー光の波長は短いほど好ましく、波長350nm〜530nmのレーザー光が好ましい。
かかるレーザー光の代表例としては、例えば、中心波長405nm、410nmなどの青色レーザー光、中心波長515nmの青緑色の高出力半導体レーザー光が挙げられる。これら以外にも(a)基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な半導体レーザー光、または(b)半導体レーザー光によって励起されかつ基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な固体レーザー光のいずれかを、第二高調波発生素子(SHG)により波長変換することによって得られる光なども挙げられる。
上記のSHGとしては、反射対称性を欠くピエゾ素子であればいかなるものでもよいが、KDP(KHPO)、ADP(NHPO)、BNN(BaNaNb15)、KN(KNbO)、LBO(LiB)、化合物半導体などが好ましい。第二高調波の具体例としては、基本発振波長が860nmの半導体レーザーの場合は、その倍波の波長430nm、また半導体レーザー励起の固体レーザーの場合は、CrドープしたLiSrAlF6結晶(基本発振波長860nm)からの倍波の波長430nmなどが挙げられる。
これらのうち、本発明においては、より高密度の記録が好ましいため、410nm未満、より好ましくは、405nm以下の半導体レーザー、即ち、中心波長405nm近傍の青色レーザー光を使用することが特に好ましい。
一方、記録層に記録された情報の再生を行なう際には、同じく記録層に対して(通常は、記録時と同じ方向から)、よりエネルギーの低いレーザー光を照射する。記録層において、光学的特性の変化が起きた部分(すなわち、情報が記録された部分)の反射率と、変化が起きていない部分の反射率との差を読み取ることにより、情報の再生が行なわれる。
II.本発明の光記録媒体
II−1.層構成
本発明の光記録媒体は、ブルーレイディスク構成と合わせるなら、基板、あるいはダミー基板(案内溝を有する方が、安定なフォーカスおよび安定な記録光照射位置制御のためには好ましい。)の上に反射層、半透明膜、および波長選択層から選ばれる1または2以上の層が積層され、その上に直接乃至は介在層を介して記録層、さらにその上に保護層及び/または接着層が設けられる。さらに積層面の最外層として、通常その上に表面保護層としてカバー層またはカバーシートが施される。
本発明の光記録媒体が多層構造を有する場合、「介在層(省略可)/記録層/(保護層及び/または接着層)」からなるユニットを繰返し積層することによって多層構造が形成される。
本発明は、1層ずつを保護層及び/あるいは接着層で分かつ多層構成において極めて有
効である。
中でも多層構成に有利とされるオングルーブ型の光記録媒体に有効に適用されるものである。
また、本発明は、基板、その上に反射層あるいは半透明膜、あるいは波長選択層、その上に厚さ数百μm以上の記録層、カバー層あるいはカバーシートなどの構成を有する、体積型光記録媒体にも応用することが可能である。
II−2.各層
II−2−1.基板
ダミー基板を用いる場合には、案内溝やピットなど、フォーカスやトラッキングの位置制御用の層がその上に積層されたものが必要とされる。尚、ダミー基板の材質は従来公知の材料を適宜使用することができるが、情報記録媒体がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えることが望ましい。即ち、機械的安定性が高く、剛性が大きいことが好ましい。
このような材料としては、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や、ガラス、金属等を用いることができる。これらの材料は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、成形性などの高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性などの点からは、基板の材料としてはポリカーボネート樹脂が好ましい。
基板の厚さとしては、通常0.1mm以上、通常1.2mm以下の範囲が好ましい。
基板には、トラッキング用の案内溝(以下で、溝、あるいはグルーブとも呼ぶ。)あるいはアドレス信号等の情報を表す凹凸が形成されているなど、DVD−Rやブルーレイディスクとの互換性を取れる構成であることが好ましい。
グルーブのトラックピッチは本発明の高い記録密度を確保するためには、100nm〜500nm、より好ましくは、100nm〜400nmである。
グルーブの深さは20nm〜110nmが好ましい。
溝幅は50nm〜250nmが好ましく、トラックピッチの0.3〜0.8倍、中でも0.4〜0.6倍とすることも好ましい。ただし、溝幅が狭くなるほど、成型の困難さが増す傾向にある。
II−2−2.記録層
記録層は、本発明の記録層形成用有機組成物から形成される。本発明の記録層形成用有機組成物は、I−1.およびI−2.に挙げた性質を満たす記録材料を含むものであり、これらの材料はいずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。また、色素成分の結晶化の抑制等の成膜性向上その他の目的で、バインダー等の色素以外の成分を含んでいても良い。ただし、本発明の、より吸収が少なくても良好な記録が可能であるという目的を達成するためには、バインダーは、必要以上は含まない方が良い。バインダー等、の成分を含む場合には、これらの成分の合計が、I−1.およびI−2に挙げる性質に関わる、マトリックス以外の記録層構成成分に対する比で200重量%以下、中でも、0重量%〜80重量%とすることが望ましい。
バインダーとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
より具体的には、ハードセグメントとしては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、フッ素樹脂等、ソフトセグメントとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、エチレン/プロピレン共重合ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエーテル、ポリエステル、フッ素ゴム、天然ゴム、アモルファスポリエチレン等の樹脂熱膨張性などを有する熱可塑性エラストマーなど、一般的なものを使用することができる。これらバインダーを、記録に関係する色素などと共に適切な有機溶媒に溶解し、以下の方法で塗布する。 記録層は、前記の層構成の順に、スピンコート法やロールコート法、ブレードコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法にて塗布しても良い。また、色素を薄いシート内に分散させたものや、別のシート上に上記方法にて塗布し、前記接着層と共に作製することも好ましい。
記録層の膜厚は記録信号振幅や、層間クロストークが再生に支障がないように十分に抑制できるのであれば、なるべく薄い方が好ましい。好ましい範囲は通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは90nm以下である。ただし、この膜厚範囲は、記録層の層数、記録再生用のレーザーの出射可能なパワー範囲、ノイズ低減処理能力に応じて、記録層1層に接している介在層や保護層、接着層の屈折率や、記録層の光学定数の組み合わせにより、適正な範囲に決定される。
光記録媒体は、記録容量として好ましい能力を確保するためには、後述する反射層、波長選択層および半透明膜を除く、記録層とその他の層の合計の膜厚が100μm以上が好ましい。さらに、レーザーヘッド(記録再生用レーザーピックアップ)の有する焦点深度を超えないように、400μm以下であることが好ましい。また、合計膜厚の、記録波長および/または再生波長でのOD値の和が、0.7以下であることが好ましい。光記録媒体の反射層、波長選択層および半透明膜を除く、記録層とその他の層の合計の膜厚が100μmを超えたり、合計膜厚の記録波長および/または再生波長でのOD値の和が、この範囲を超える場合には、再生するために十分な程度のもどり光量が確保できない恐れがある。
さらに、上記条件を満たした上で、記録層各層のOD値が、0.01以上であることが好ましい。上記条件を満たした上で、記録層各層のOD値がこの範囲を下回る場合には、十分な記録信号を確保することが困難となる恐れがある。
また、記録層各層の記録再生光波長での消衰係数kと記録層各層の膜厚との積が5×10−3μm未満(である場合には、各記録層の吸収が10数%以下となるので好ましい。より好ましくは、3×10−3μm以下、さらに好ましくは、2×10−3μm以下である。これらの範囲を超える場合には、記録再生光が記録層を経る毎に吸収されてしまう分が多くなり、入射側から奥の記録層の記録再生が良好に行えない恐れがある。特に、記録層各層の記録再生光波長での消衰係数kと記録層各層の膜厚との積が2×10−3μm以下の場合には、各記録層の吸収は5%以下となり、10層以上の多層記録層でも、全ての層で光量が適量確保しやすくなる。
II−2−3.反射層、半透明膜、波長選択層
反射層、半透明膜、波長選択層のうちのいずれかを、基板の上に設けることは、現行のBDとの互換性を確保する観点から、好ましい。この層が反射層の場合には、溝やアドレス用のピットなどサーボ用の情報が設けられている。
波長選択層は、反射層の、基板とは反対の面に積層されることが多い。
以下に、反射層、半透明膜および波長選択層について具体的に説明する。
(反射層):
一般に使用されているスパッタ層。反射層は、記録再生に使用されるレーザー光に対する一定以上の反射率を有することが必要とされ、従来公知の材料を適宜使用することがで
きる。反射層の材料としては、反射率が大きく熱伝導率が高いAgあるいはAlを主成分とする合金を用いるのが好ましい。
本発明に適した反射層の材料をより具体的に述べると、純Ag、又はAgにTi、V、Ta、Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo、Cu、Nd、Bi及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含むAg合金を挙げることができる。経時安定性をより重視する場合には、添加成分としてTi、Mg、Au、Cu、Nd、Bi又はPdを1種類以上用いることが好ましい。
また、反射層の材料の他の好ましい例としては、AlにTa、Ti、Co、Cr、Si、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含むAl合金を挙げることができる。これらは、耐久性、反射率、体積抵抗率、成膜速度等を考慮して用いることができる。膜厚は、所望の反射率、入射する光の波長、積層数などとの組み合わせで、1nm〜100nmまでの中から、好ましい範囲を特定することが好ましい。
(半透明膜、波長選択層):
半透明膜および波長選択層は、本発明の目的には必ずしも必要ではない。しかし、半透明膜および波長選択層は、多層を構成する各層を記録・再生する場合に、より安定に各層を識別するため、あるいは、サーボ光をより効率よく反射させる場合などには有効な層として、反射層の代わりに、あるいは、再生用のサーボ光のみを選択するために設けることが可能である。
半透明膜は、上記反射層及び下記保護層に上げられる組成物などを用いることができる。半透明膜の最適組成は、所望の反射率、透過率が確保できるように、混合する元素の種類や、その混合比が決定される。
波長選択層は、誘電体の多層の膜や、記録光の波長の反射率が極めて高い色素の膜などが用いられる。
なお、以上に述べた反射層、半透明膜、波長選択層と記録層との間には、以下II−2−5.で述べる、記録層と記録層との間、あるいは記録層とカバー層などとの間に設けられる保護層と同様の、誘電体薄膜などの保護層を設けても良い。尚、この保護層は、一般に、バリア層として知られているものも含む。
膜厚は、所望の反射率、入射する光の波長、記録層や、積層数などとの組み合わせで、1nm〜100nmまでの中から、好ましい範囲を特定することが好ましい。
II−2−4.介在層
介在層は、本発明の目的には必ずしも必要ではないが、入射側から見て記録層とその奥側の記録層との間・には介在層を設けることが有効である。介在層は接着層の機能を有していてもよい。記録再生に使用されるレーザー光に対して光透過性を有する必要があるほか、凹凸により溝やピットが形成可能であても良い。
介在の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂(遅延硬化型を含む)等の樹脂材料を挙げることができる。これらの材料は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。 また、上記の樹脂材料に色素を混ぜ込んだ層などでも良い。
この介在層は、主として各記録層の反射光量(もどり光量)を確保する機能もに設けることができる。従って、この層の屈折率はなるべく高い方が好ましいが、記録層の屈折率との屈折率差が0.4を超えないことが好ましい。介在層と記録層の屈折率差が0.4を超えると、記録層と介在層からのもどり光が干渉し、良好な記録信号強度(振幅)が検出しにくくなる傾向があるため好ましくない。
介在中間の膜厚は、5μm〜10μm以上が好ましく、また、通常100μm以下、好
ましくは70μm以下が好ましい。特に、接着層として機能させる場合には、本発明の目的においては、薄い方が好ましいため、数十μm以下が好ましい。
II−2−5.保護層、バリア層
保護層またはバリア層とは、記録層とカバー層との界面、記録層と記録層との界面等に設けられ、相互の層の拡散防止や光学特性の調整等の機能を有する。
保護層またはバリア層の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは3nm以上、また、通常50nm以下、好ましくは15nm以下である。
例えば、Sc、Y、Ce、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Cr、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びTe等の酸化物;Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びPb等の窒化物;Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga、In、及びSi等の炭化物;を挙げることができる。さらに、これら酸化物、窒化物及び炭化物の混合物を挙げることができる。また、誘電体材料としては、Zn、Y、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBi等の硫化物、セレン化物もしくはテルル化物、Mg、Ca等のフッ化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。この層の組成は、記録光及び再生光の吸収が100%に近い組成であることが好ましい。
また、記録層及びそれに積層する層の成分の化学的特性により、この層の最適な組成を選択することができる。
なお、この保護層あるいはバリア層を記録層と記録層との界面に設ける場合、すなわち、、この保護層あるいはバリア層を、入射側から見て記録層と接着層との間に設ける場合には、各記録層の反射光量(もどり光量)を確保する効果が期待できる。その場合には、この保護層あるいはバリア層と、記録層の屈折率差が0.4を超えると、この層と記録層からのもどり光が干渉し、良好な記録信号強度(振幅)が検出しにくくなる傾向があるため好ましくない。
II−2−6.表面保護層(カバー層、カバーシート)、接着層
表面保護層は、汚染や傷、衝撃、水分などからディスクを守る目的と、記録光及び再生光の集光を調整する層としての目的から設けられる。従って、記録光及び再生光での吸収が少ないほど好ましい。また、吸湿率、透湿度が適度に低い材質が好ましい。これらの材料は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
厚さは0.01mm〜0.2mm、0.05mm〜0.1mmが好ましい。
表面保護層は、紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂などをスピンコートして形成されるカバー層として、あるいは、接着層を付したカバーシートとして、記録層を含むディスク面に密着させて貼ることにより設けることが可能である。シート材として用いられるプラスチックは、ポリカーボネート、ポリオレフィン、アクリル、三酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等である。接着には、光、放射線硬化、熱硬化樹脂や、感圧性の接着剤が用いられる。
感圧性接着剤としては、また、アクリル系、メタクリレート系、ゴム系、シリコン系、ウレタン系の各ポリマーからなる粘着剤を使用できる。
例えば、接着層を構成する光硬化性樹脂を適当な溶剤に溶解して塗布液を調整した後、この塗布液を記録層または界面層上に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜上にポリカーボネートシートを重ね合わせる。
その後、必要に応じて重ね合わせた状態で、媒体を回転させるなどして塗布液をさらに延伸展開した後、UVランプで紫外線を照射して硬化させる。あるいは、感圧性接着剤を
あらかじめシートに塗布しておき、シートを記録層あるいは界面層上に重ね合わせた後、適度な圧力で押さえつけて圧着する。
前記粘着剤としては、透明性、耐久性の観点から、アクリル系、メタクリレート系のポリマー粘着剤が好ましい。
より具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−オクチルアクリレートなどを主成分モノマーとし、これらの主成分モノマーを、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、マレイン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の極性モノマーを共重合させる。アクリル系ポリマーの溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等が用いられる。上記粘着剤は、さらに、ポリイソシアネート系架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着剤は、前述のような材料を用いるが、カバー層シート材の記録層側に接する表面に所定量を均一に塗布し、溶剤を乾燥させた後、記録層側表面(界面層を有する場合はその表面)に貼り合わせローラー等により圧力をかけて硬化させる。該粘着剤を塗布されたカバー層シート材を記録層を形成した光記録媒体表面に接着する際には、空気を巻き込んで泡を形成しないように、真空中で貼り合せるのが好ましい。
また、離型フィルム上に上記粘着剤を塗布して溶剤を乾燥した後、カバー層シートを貼り合わせ、さらに離型フィルムを剥離してカバー層シートと粘着剤層を一体化した後、光記録媒体と貼りあわせても良い。
尚、接着層の膜厚は、本発明の目的においては、多層の層数を得るためには薄い方が好ましいため、数十μm以下が好ましい。接着層の膜厚の下限としては通常数μm以上である。ただし、この接着層が薄すぎる場合には、記録層間のクロストークが大きくなって再生信号の品質を低下させる場合がある。
II−3.本発明の光記録媒体の性能
本発明の光記録媒体の記録層形成用組成物は、一般的なダミー基板、例えば深さ約80nm、溝幅約0.16μm、トラックピッチ0.32μmの記録光および再生光の案内溝を有する厚さ1.1mmのポリカーボネート基板に対して、記録層1層の記録波長でのOD値が0.01以上であり、記録波長での記録層全体(反射層、波長選択層および半透明膜を除く、記録層とその他の層の合計膜厚)のOD値が0.7以下となるように積層し、隣接する2つの案内溝の間、あるいは溝の無い平面部に、開口数0.85の対物レンズで記録用のレーザー光を集光することによって、ブルーレイディスク(BD−R)の規格に準拠した記録マーク長2T〜8Tを形成した際に、そのいずれかにおける記録変調度が、上記案内溝に同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となる。
ここで光記録媒体中の隣接する2つの案内溝の間、あるいは溝の無い平面部とは、記録層膜厚がBDなど従来型光記録媒体の溝上記録部に対して、0.1〜0.3倍、即ちおよそ10nm〜30nm程度である部位を示しており、このような膜厚であっても、記録変調度が通常の溝上記録の半分以上確保できることを意味する。
また、本発明の記録媒体の光記録方法の好ましいものは、記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、記録用6のレーザー光強度に対して、指数近似、あるいは、3次多項式近似される関係にある。
なお、記録変調度が、記録用のレーザー光強度に対して、指数近似される関係は、以下の図6や図7で例示されるパターン、すなわち、下に凸の弓なりの形、あるいは、下に凸で記録パワーに対して記録変調度が単調に増加する傾向を意味する。
また、記録変調度が、記録用のレーザー光強度に対して、3次多項式近時される関係と
は、図11で例示されるパターン、すなわち、記録パワー(記録用のレーザ光強度)の低い領域では下に凸で、途中、上に凸となり、単調に増加する傾向、さらに言い換えれば、記録パワーに対して記録変調度があまり変化しないフラットな領域を経て、さらに記録パワーをあげると、記録パワーに対して記録変調度が下に凸の弓なりの形で増加する傾向、を意味する。
以下に、実施例に基づいて本発明について更に説明する。
[実施例1]
<色素溶液の作製>
特開平11−334207号公報の実施例1構造式No.[19]の記載に従って合成した、鉄の3価のポルフィリン化合物の塩化物(ここでは化合物1と称す。)(クロロホルム吸収での吸収ピークは393.5nm)と、光重合開始剤(チバスペシャリティ化学製 Irgacure 819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)(化合物2):分光光度計により測定した、この化合物の溶液の吸収スペクトルには、紫外〜可視光波長領域における最も長波長側の吸収帯が、366nmをピークとする弱い吸収帯であり、394nmに弱い吸収の肩が観測された。)とをそれぞれ0.5重量%含む、テトラフルオロプロパノール溶液(色素溶液)を作製した。
Figure 2010146671
(化合物1)
<記録膜単層ディスクの作製>
上記色素溶液を、厚さ1.1mmであり、深さ約80nm、溝幅約0.16μm、トラックピッチ0.32μmの記録光および再生光の案内溝を有するポリカーボネート基板に、6000rpmを振り切りの回転数としてスピンコートし、さらに、記録膜からの溶媒除去のためにオーブンでアニールし記録膜単層ディスク1を作製した。
この記録膜単層ディスク1について、405nmでの吸収スペクトルを測定したところ、405nmでのOD値は0.169であった。
尚、吸収スペクトルは、上記記録膜単層ディスク1を短冊状に切り出し、分光光度計(日本分光:v560)を用いて測定し、透明基板を光路の参照側に挿入しベースラインを除去した値を、求めるOD値とした。
<光記録媒体の作製>
記録膜単層ディスクに用いたのと同じポリカーボネート基板に、銀合金のスパッタ層を約100nmスパッタした。その上に、上記色素液を記録膜単層ディスク1と同様の条件でスピンコートし、さらに、記録層からの溶媒除去のためにオーブンでアニールし記録層を作製した。その記録層の上に誘電体から成る保護層ならびに約0.1mmの厚さのカバーシートを加重して密着貼り付けし、ディスク1を作製した。
<記録変調度の評価>
前記ディスク1に、405nmの半導体レーザーを搭載した、開口数0.85の評価機(パルステック製:ODU)を使用して、線速度4.92m/sでディスクを回転させなが
ら、BD−R(ブルーレイディスク)の規格に準拠した、チャンネルクロック66MHzからなる2T〜11Tまでの17PP変調及び2T〜8Tまでの単一マーク長記録を行った。(尚、本実施例を含むすべてのBD−R規格準拠の記録において、パルスのボトムパワーは、0.1mWに設定した。)上記の記録を溝上(以下、案内溝上での記録を意味して、溝上記録、あるいは、IG(In groove) 記録と記載する場合がある。)と、溝間
(隣接する2つの案内溝の間に記録することであり、溝間記録、あるいは、OG(On groove) 記録と記載する場合がある。)とで行ったところ、図1に示すように、17PP変
調の記録変調度は溝上記録で60%強のところが、溝間記録でも50%強と、良好な記録変調度が得られた(溝間記録/溝上記録=5/6)。17PP変調は8T以上の長いマークはいずれも波形に歪みがなく、良好であった。3T、5Tマークも溝間記録で記録変調度がそれぞれ30%前後、40%前後と良い結果であった。尚、ディスク1の溝間部からのもどり光量は、溝上部からのもどり光量のおよそ1.1倍であり、未記録でのトラッキング信号振幅は半径40mmで1.50Vであり、記録は溝上記録、溝間記録のいずれも、いわゆるlo to highであった。
[比較例1]
実施例1で作製した色素溶液の代わりに、上記の化合物2を除いた成分、即ち、化合物1を0.5重量%含むテトラフルオロプロパノール溶液を用いた以外は、前記記録膜単層ディスク1と同様にして作製した記録膜単層ディスク2について、実施例1と同様の手順にて記録膜の平均膜厚および405nmでのOD値を評価した。その結果、記録膜の平均膜厚は40〜150nm、の405nmでのODは0.17と、実施例1と全く同じスピンコート条件で、記録膜単層ディスク1とほぼ同じにできた。
次いで、実施例1で作製した色素溶液の代わりに、上記の化合物2を除いた成分、即ち、化合物1を0.5重量%含むテトラフルオロプロパノール溶液を用いた以外は、ディスク1と同様にして、ディスク2を作製した。このディスク2について、ディスク1と同様に記録を行ったところ、図2に示すように、溝上記録は17PP変調記録で約50%と大きな変調度が得られたにもかかわらず、溝間での記録では、17PP変調でも5Tマーク記録でも、変調度が殆んどなく、良好な記録ができなかった。
尚、ディスク2の溝間部からのもどり光量は、溝上部からのもどり光量のおよそ1.3倍であり、未記録のトラッキングエラー信号振幅は半径40mmで1.32Vであった。
[実験例1]
実施例1の化合物1と化合物2をそれぞれ0.5重量%ずつ含む、テトラフルオロプロパノール溶液を石英セルに入れ、365nmの光(アズワン株式会社製Handy UV
lamp SLUV−6)を照射すると、図3に示すように、照射することにより425nm近傍を等吸収点とする吸収ピークの形状変化が起こり、405nmでの吸収が減少した。かかる光変化は、等吸収点が存在することから、一般的な有機色素の褪色とは異なる、複数の状態間にエネルギー移動がある吸収変化であると考えられる。
尚、上記光開始剤(化合物2)のクロロホルム溶液の紫外・可視吸収のモル吸光係数は、最も強い吸収ピークが300nm近傍でε=57500、366nmのピークがε=6960であり、その吸収の肩が394nmにあり、405nmが吸収の端にあたるものであった。従って、実施例1においてディスク1に照射した記録光波長である405nmでの励起においても、366nmでの励起と同様の反応(上記実験例1に相当)を誘起すると考えられる。
即ち、実施例1のディスク1の溝間部において良好なlo to high記録が達成されたのは
、化合物2の光反応が405nmでの吸収減に寄与し、この吸収減がいわゆるヒートモード記録により生じる吸収減に加算されたことによると考えられる。
以上、実施例1、実験例1、比較例1の結果より、光開始剤成分である化合物2の、化合物1への添加を一例とする、記録時に吸収が変化する記録再生方法が、従来、溝上に比して膜が薄くなり(溝間の色素膜厚は、溝上の色素膜厚のおよそ0.1〜0.3倍と小さいことが検討によりわかった。)、そのために信号振幅が確保できない等の理由がある溝間の光学的な変化を、記録時に補い、結果的に溝上記録に匹敵する記録変調度と記録感度をもたらすことに有効であることがわかった。
かかる溝間記録を、記録膜を厚くせずに実現できる記録再生方法は、多層記録に好適な方法である。
なお、そもそも光開始剤である化合物2は、350nm〜405nmにかけて吸収端を有し、その吸収帯を励起することによりフォトポリマーの重合を促す光開始剤として一般に知られている。
従って、例えば上記実施例1の化合物1のように、活性なFe−Clを有する色素化合物と化合物2とが共存する系において、光開始剤(化合物2)の配合量が多い場合には、記録光である405nmの光を照射することにより励起された化合物2が励起され、中心金属の脱離やイオン性付与による、電子供与性のフタロ環同士の分子間相互作用の増大などを引き起こし、吸収スペクトルの変化に伴う、吸収の増減がおこるのではないかと本発明者らは考える。
[実験例2]
尚、化合物1を、化合物3(日本感光色素製NK−3989:5-Chloro-2-[[5-chloro-3-(3-sulfopropyl)-2(3H)-benzothiazolylidene]methyl]-3-(3-sulfopropyl)benzothiazolium hydroxide, inner salt,sodium salt)に変えた以外は実験例1と全く同様にして光照射実験を行ったところ、塩素原子を芳香環に結合する化合物3と、化合物2の組み合わせでは、吸収増大の現象が見られた(図4)。この吸収増大は好ましい。何故ならば、記録光照射前には吸収はないが、照射により局所的に吸収が発生し、集光部分だけで効率よく記録光が吸収され、より空間的に制限された極小部分での温度上昇や反応場の生成が可能となる。かかる記録再生方法は、従来の光記録に対して、超多層記録により有利と考えられる。即ち、通常の光記録は、多くがヒートモード記録であるために、吸収が必要であり、かつ、平坦な面では、壁に囲まれた溝上記録と異なり、熱の拡散が大きくなるために記録マークが広がってしまうという問題をかかえており、薄膜、平面、狭い層間隔での記録が要求される超多層記録には展開が難しいと考えられる。それに対して、吸収が増大する化合物を記録層とする、あるいは、吸収が増大する化合物を有する記録再生方法によれば、記録しない部分及び記録前の状態では吸収が少ないにもかかわらず、集光部分では吸収が補われ、局所的にフォトンが集積され、温度も上がるために、感度良く記録マークが形成できる、フォトンモードとヒートモードの両方をあわせた記録が可能となる。光重合開始剤が高励起状態で活性となるのであれば、記録パワーはより多く必要にはなるが、非破壊読み出し性、ならびに、記録層間の重ね書きもなく、極めて良好な超多層記録が実現され、好ましい。
[比較実験例1]
一方、化合物1を、化合物4(日本感光色素製NK−863:3-Ethyl-2-[(3-ethyl-2(3H)-benzoxazolylidene)methyl]benzoxazolium iodid)に変えた以外は実験例1と全く同様にして光照射実験を行ったところ、塩素原子を結合に持たない化合物4と化合物2の組み合わせでは、等吸収点が無く、吸収スペクトルの形状の変化がないまま吸光度が減少する、いわゆる“褪色”が観測された(図5)。
実験例1、2、比較実験例1の結果から、超多層光記録媒体に好適な、反応場の形成の引き金となる、吸収の変化を用いた記録再生方法の実現には、特定の化合物の組み合わせが必要であることが言える。
[実験例3]
PMMAの24.5重量%溶液に、化合物5(東京化成:1-(2-Hydroxyethyl)-3,3-dimethylindolino-6’-nitrobenzopyrylospiran)を1.6重量%(対PMMA樹種)溶解した溶液をスライドガラス上に滴下し、1週間程風乾させたサンプルを135℃でアニールし250μmのスペーサーをはさみ、スライドガラスで上から押し付け、250μm厚の膜を記録層として作製した。この膜に、405nmの半導体レーザーの平行光約10ミリW/cmを数十秒照射したところ、着色が見られた。その着色部は10分ほどで明らかに褪色し、半日後には目視では全く確認できなくなった。尚この膜の405nmでのOD値は未照射部で0.43であった。
このサンプルに、405nmの半導体レーザーを顕微鏡用の対物レンズで集光し、55ミリW(およそ数万W/cmで0.2mm/sでサンプルを動かしながら線状の記録を行ったところ、目視で赤いラインとして確認できた。このスキャン記録部は、75℃で1時間アニールしても消滅せず、暗所で数ヶ月経過しても残っている。
以上のことから、本記録層は、弱い光での記録部分(開環体から閉環体への異性化)は放置により自然に消滅し、強い光では消滅せずに記録部として保存できる性質を有することが判る。
10mW/cmで数十秒照射時に誘起される化合物5の反応としては開環体から閉環体への異性化などの可逆反応、1万W/cmで0.2mm/sでスキャンしながらの照射時に誘起される反応としては、従来知られてきたJ会合体のような状態(熱可逆)よりは、イオン化合物が再結合し、新たな化合物となることや、分解などの不可逆反応が推測される。なお、化合物5には、405nmの記録光波長を吸収端とする吸収帯を高いパワーで励起することにより、記録光波長である405nmを中心近傍とする、大きな吸光度で長寿命の過渡吸収が観測された。
[実施例2]
バインダーとしてのPMMAの2重量%溶液に、化合物5を200重量%(対 PMMA重量)溶解させた溶液を色素溶液とし、約3000rpmで回転させながらスピンコートした以外は実施例1と同様にして、ディスク3を作製した。ただし、実施例2においては、記録層の、オーブンによるアニールは行わなかった。
<記録膜単層ディスクの作製>
上記PMMA樹脂の溶媒は、トルエンと2−ブタノンの混合溶媒であるため、実施例1のように、ポリカーボネート基板に直接、色素溶液をスピンコートすることはできない。そこで、基板をガラス基板に代えてスピンコートし、記録膜単層ディスク3を作製した。記録膜単層ディスク3について、実施例1と同様の手順にて記録膜の405nmでのOD値を評価したところ、OD値は0.0375と多層ディスクに好ましい、吸収の少ない膜であった。
次いで、ディスク3について、BDの評価機でディスク1と同様に記録再生を行ったところ、図6に示すように、5Tの単一マークの溝上記録でも、溝間記録でも約40%と、吸収が非常に小さいにもかかわらず、良好な記録変調度が得られた。尚、未記録部の戻り光量は、溝間部が溝上部の約2倍あった。
このディスク3は、溝上での記録でも2ミリW〜6mWのパワー領域では数秒で、記録前の状態にもどり消滅した。記録しても自然にもどるため、みかけ上は、記録パワーや再生パワーに対しての閾値性が得られることになる。
このディスク3の、記録変調度の記録パワー対する依存性は、図6に示すように、下に凸の弓なりの形となり、通常のヒートモード記録とは異なる形態が実現されることがわか
る。
尚、通常のヒートモード記録の形態とは、記録可能なレーザーパワー範囲において、記録変調度が急峻に立ち上がり飽和に向かう、上に凸の形となることが知られている(以下の、比較例4、比較例5の図10がその例である。)。図6に回帰曲線で示されるように、本実施例の傾向は、記録変調度が、記録(照射)パワー(x)に対して、0.2〜0.3次の指数関数に近似される傾向を示した。なお、化合物5は、400nm近傍の光で異性化すること、ならびに、400nm近傍において光学的に読み取れる(すなわち、再生できる)光学変化が確保できるかどうかについては知られていなかったが、今回の良い結果が得られたことには、記録用のレーザーのパルス幅と照射時間及び、0.85という極めて高い集光光を記録に使用したことと、マトリックス内の化合物5の構造変化や分子間の位置関係、分子数、過渡吸収の吸光度変化や励起状態の寿命の変化との組み合わせに起因するものと考えている。
なお、以下すべての例でもそうであるが、記録変調度の図において、ベースライン(未記録)状態で0.1程度の、基板上の案内溝のwobble由来のもれ信号が含まれていたため、記録変調度の図の縦軸(記録変調度)を0.1以上の範囲で示した。
以上のように、“自己消滅記録”が実現される記録パワーの領域と、“消去されない記録”が実現される記録パワー領域が、同一波長の半導体レーザーで形成される本記録再生方式によれば、記録光入射側から1、2、3、・・・n−1、n、・・・と記録層が積層されている超多層光記録媒体においても、n層目とn+1層目、あるいは、n−1層目とn層目の、重ね書きが起こりにくくなり、超多層光記録媒体において好適な、記録再生が可能となる。
[実施例3]
実施例2において、色素溶液中に含まれる化合物5を、Bull.Chem.Soc.Jpn.69,1023-1027に従って合成したCompound1 (化合物6)に変えて、PMMAに対する化合物6の濃度を75重量%とし、該色素溶液を回転数約700rpmでスピンコートした以外は実施例2と同様にして、記録膜単層ディスク4およびディスク4を作製した。
Figure 2010146671
(化合物6)
記録膜単層ディスク4について、実施例1と同様の手順にてOD値を評価した。その結果、記録膜の405nmでのOD値は、0.4〜0.2であった。
次いで、ディスク4について、BDの評価機でディスク1と同様に短く、高エネルギー密度の記録光を照射して記録再生を行ったところ、図7に示すように、溝間部でも溝上でも、40%程度の記録変調度が得られた。このディスクも下に凸の弓なりの形で、記録パワーをあげると記録変調度が上昇する記録が実現しており、変調度が高まるパワー領域より狭いパワー領域で大きく記録変調度が増加して飽和に達する従来のヒートモード記録の記録変調度の記録パワー依存性とは異なる特徴を有していた。かかる傾向は、図9に点線で示すように、記録(照射)パワーに対して、0.2〜0.4次の指数関数で良好な帰属が
得られた。本実施例においては、本化合物を、マトリックスであるPMMAに対して75重量%と、極めて高濃度で、かつ、0.1μm前後の、この種の化合物の膜としてはきわめて薄い膜とすることにより、異性化物質のマトリックスとの相互作用をより引き出すことが可能になり、薄膜で、より効率よく記録信号が得られやすくなると考えられるため、超多層光記録媒体には好ましいと考えられる。
なお、本化合物6には、記録光波長近傍の励起により、記録光波長を吸収領域とし、寿命が十数ミリ秒以上の過渡吸収が観測された。
[比較例2]
比較例1において、色素溶液中に含まれる化合物1を、WO2006−009107に従って合成した色素A14であるところの、化合物7に変え、PMMAに対する色素濃度を1.2重量%とした以外は、比較例1と同様にして、記録膜単層ディスク5およびディスク5を作製した。
Figure 2010146671
(化合物7)
記録膜単層ディスク5について、実施例1と同様の手順にて記録膜の405nmでのOD値を評価した。その結果、記録膜の405nmでのOD値は、0.19であった。
次いで、ディスク5について、BDの評価機でディスク1と同様に記録再生を行ったところ、図8に示すように、17PP変調の溝間記録の信号変調度が、溝上記録の半分強あるものの、長マークの波形歪みが極めて大きく、溝間では良好な記録を行うことができなかった。
[比較例3]
色素溶液を回転数3000〜5000rpmでスピンコートした以外は、比較例1と同様にして、記録膜単層ディスク6およびディスク6を作製した。
記録膜単層ディスク6について、実施例1と同様の手順にて記録膜405nmでのOD値を評価した。その結果、記録膜の405nmでのOD値は、0.34であった。
次いで、ディスク6について、BDの評価機でディスク1と同様に記録再生を行ったところ、図9に示すように、溝間においては波形歪みがなく、記録変調度も50%の値が得られた。17PP変調の溝間記録の信号変調度は、記録パワーに対して記録変調度は上に凸の、記録パワーに対して急峻に増加し、飽和に達する、対数的に増加して飽和に達する、従来のディスクの傾向に近い傾向(図10の比較例4)を示した。一方、溝上記録についてはトラッキングが不安定であり、記録不可であった。膜が厚く反射率が低いことと、溝が埋まったことによる影響が考えられる。
[比較例4および5]
従来のディスクの記録変調度の記録パワー依存性の評価例として、Jpn.J.Appl.Phys(2001),part1,pp1613-1618 Fig.9(比較例4:1.25μmの記録変調度)とJpn.J.Appl.P
hys(2003),42,part1,pp852-857 Fig.11(比較例5)とをまとめて図10に示した。
比較例4の記録層はアゾベンゼンを側鎖に有する光応答性樹脂膜0.1μmに、銀反射層0.1μmを積層した構成・からなり、532nmのパルスレーザーを偏光にして集光し、マーク長1.25μmの記録をし、635nmなどで偏光を再生したものである。、また、比較例5の記録層は無機系のGeInSbTe記録層、エンハンス層、反射層からなる、BDの2層媒体である。比較例4、5いずれも、記録変調度は記録パワーに対して、上に凸の形状を示しながら急峻に増加し(対数的な増加)、飽和に達していることが判る。
[実施例4]
実施例2において、化合物5を150重量%(対 PMMA樹脂)溶解させた溶液を色素溶液とし、回転数約700rpmでスピンコートし、75℃で3分間アニールした以外は実施例2と同様にして、記録膜単層ディスク7およびディスク7を作製した。
記録膜単層ディスク7について、実施例1と同様の手順にて記録膜の405nmでのOD値を評価したところ、OD値は0.0505と、多層ディスクに好ましい、吸収の少ない膜であった。
次いで、ディスク7について、BDの評価機でディスク2と同様に記録再生を行ったところ、図11に示すように、10Tの単一マークの溝間記録で、吸収が非常に小さいにもかかわらず、良好な記録変調度が得られた。このディスク7は、図11に示すように、記録パワーが低い条件下では、記録変調度が非常に低く保持されるフラットな領域を有し、さらに記録パワーを増加させると、下に凸の弓なりの形で記録変調度が増加する、3次多項式の回帰曲線で示される、変調度の記録パワー対する依存性を示した。
なお、上記10Tの記録においては、記録パルスのボトムパワーは、0.5mWに設定した。また、9.5mWで記録した部分は、3mWのDC光を10回照射しても全く変化がなく、5mWのDC光を照射しても安定であることから、9.5mWを0.85の開口数の対物レンズで集光した高エネルギー密度の10T相当の時間での照射が、記録に結びつく格段に大きな反応を引き起こしたものと考えられる。かかる安定な記録部の形成は、超多層記録での閾値性付与を示すものであり、かかる極めて大きい記録変調度の記録が、405nmの10mW以下のレーザーパワーで、OD値0.05(記録層の吸収約10%という、従来(記録層の吸収は通常は30%〜40%)よりも非常に吸収が小さい記録層で実現できたことにより、今後、高パワーレーザーの開発がなされれば、超多層記録に理想的な低吸収記録層においても同様な記録が可能であると考えられる。
本発明は、本願明細書中に開示された実施例/実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光記録媒体の光記録再生方法および光記録媒体もまた、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明の記録媒体の光記録再生方法および光記録媒体は、高密度光記録媒体、体積(3D)メモリー、三次元光造形への応用が可能であり、中でも、有機色素を記録層に有する塗布型のブルーレイディスクでは従来難しかったオングルーブ型ブルーレイディスクや、より多くの記録層を積層した、超高密度光記録媒体に対して、好適に用いることが出来る。
実施例1におけるディスク1の記録変調度と記録パワーの関係を示す相間図である。 比較例1におけるディスク2の記録変調度と記録パワーの関係を示す相間図である。 実験例1の色素溶液について、365nm光照射前後の吸収スペクトル変化を示す図である。 実験例2の色素溶液について、365nm光照射前後の吸収スペクトル変化を示す図である。 比較実験例1の色素溶液について、365nm光照射前後の吸収スペクトル変化を示す図である。 実施例2におけるディスク3の記録変調度と記録パワーの関係を示す相間図である。 実施例3におけるディスク4の記録変調度と記録パワーの関係を示す相間図である。 比較例2におけるディスク5の記録変調度と記録パワーの関係を示す相間図である。 比較例3におけるディスク6の記録変調度と記録パワーの関係を示す相間図である。 従来のディスクの記録変調度の記録パワー依存性の例(比較例4,5)を示す図である。 実施例4におけるディスク7の記録変調度と記録パワーの関係を示す相間図である。

Claims (14)

  1. 記録媒体に形成された記録層に設けられた隣接する2つの案内溝の間、あるいは溝の無い平面部を記録部として、開口数0.85以上の対物レンズで記録用のレーザー光を集光することによって行う記録媒体の光記録方法であって、上記記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、上記案内溝に上記記録部と同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となる記録媒体を用いて記録を行うことを特徴とする、記録層が有機系材料を含む記録媒体の光記録方法。
  2. 上記記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、上記案内溝に上記記録部と同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となる記録媒体が、
    記録層中に有機色素と添加剤成分とを含有し、記録用のレーザー光の照射により、前記有機色素と前記添加剤成分とが反応した結果、記録波長での吸収が変化することを特徴とする、請求項1に記載の記録媒体の光記録方法。
  3. 上記記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、上記案内溝に上記記録部と同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となる記録媒体が、
    記録層中に有機色素と添加剤成分とを含有し、記録用のレーザー光の照射により、前記有機色素と前記添加成分とが反応した結果、吸収スペクトルの吸収波長域がシフトし、記録波長での吸収が、より小さい状態に変化することを特徴とする、請求項2に記載の記録媒体の光記録方法。
  4. 記録層中に有機色素と添加剤成分とを含有し、記録用のレーザー光の照射により、前記有機色素と前記添加成分とが反応した結果、記録波長での吸収がより大きい状態に変化する記録媒体を用いて記録を行い、記録時に少なくとも集光部を、記録用のレーザー光により加熱する工程を有することを特徴とする、請求項2に記載の記録媒体の光記録方法。
  5. 記録層中に、記録用のレーザー光の照射により、記録波長での吸収が過渡的に、より大きい状態に変化する化合物を含む記録媒体を用いて、該過渡的な吸収増加を継続させることにより、再生可能な光学変化を生じさせることを特徴とする、記録層が有機系材料を含む記録媒体の光記録方法。
  6. 前記過渡的吸収増加の量が、照射前OD値の2分の1以上となるようにすることを特徴とする、請求項5に記載の記録層が有機系材料を含む記録媒体の光記録方法。
  7. 記録用のレーザー光が単一波長レーザー光であって、
    記録層中に、該単一波長レーザー光の照射光強度に応じて不可逆的にも可逆的にも反応しうる化合物を含む記録媒体を用いて記録を行うことを特徴とする、
    請求項1ないし6のいずれか1項に記載の記録媒体の光記録方法。
  8. 記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、記録用のレーザー光強度に対して、指数近似される関係で増加することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の記録媒体の光記録方法。
  9. 記録部の記録マーク長2T〜8Tのいずれかにおける記録変調度が、記録用のレーザー光強度に対して、3次多項式で近似される関係で増加することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の記録媒体の光記録方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の記録媒体の光記録方法に用いられる記録媒体であって、反射層、波長選択層および半透明膜からなる群から選ばれるいずれかの層と、1以上の樹脂層に接している1以上の記録層とを有することを特徴とする光記録媒体。
  11. 記録媒体の反射層、波長選択層および半透明膜を除く、記録層とその他の層の合計の膜厚が100μm以上、400μm以下であり、記録媒体の反射層、波長選択層および半透明膜を除く、記録層とその他の層の合計膜厚の記録波長および/または再生波長でのOD値の和が0.7以下であることを特徴とする、請求項10に記載の多層光記録媒体。
  12. 記録層各層の記録再生光波長でのOD値が0.01以上であり、消衰係数kとその膜厚の積が、5×10−3μm未満であることを特徴とする、請求項11に記載の多層光記録媒体。
  13. 請求項1〜9に記載された記録方法により記録されたことを特徴とする多層光記録媒体。
  14. 深さ約80nm、溝幅約0.16μm、トラックピッチ0.32μmの記録光および再生光の案内溝を有する厚さ1.1mmのポリカーボネート基板に対して、405nmでの記録層のOD値が0.7以下となるように積層し、隣接する2つの案内溝の間、あるいは溝の無い平面部に、開口数0.85の対物レンズで記録用のレーザー光を集光することによって、記録マーク長2T〜8Tを形成した際に、そのいずれかにおける記録変調度が、上記案内溝に同条件で記録用のレーザー光を集光した場合に得られる記録変調度の2分の1以上の値となることを特徴とする、記録媒体の記録層形成用有機組成物。
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