ところで上記従来のものは、フュエルインジェクタの6本の燃料噴射軸のうちの2本がペントルーフ型のピストンの頂面の頂部(稜線)に沿う方向を指向しているが、ピストンの頂部に沿う方向はスキッシュ流が際立って小さくなる方向であるため、上記燃料噴射角の変更だけでは補償しきれず、ピストンの頂部に沿う方向を指向する燃料噴射軸に沿って噴射された燃料がキャビティ内で上方に巻き上がりにくなり、前記燃料噴射軸の上方に未利用空気が発生する可能性があった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、燃料直噴エンジンにおいて、逆スキッシュ流の大きさが円周方向に不均一であっても、キャビティ内の燃料および空気の混合状態をより一層均一化することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、頂面の高さが円周方向に変化するピストンと、前記ピストンの頂面の中央部に凹設されたキャビティと、前記キャビティ内の円周方向に離間する複数方向を指向する複数の燃料噴射軸に沿って燃料を噴射するフュエルインジェクタとを備え、相互に隣接する二つの燃料噴射軸が成す噴射軸間角が、各噴射軸間角間で略均一になるように前記複数の燃料噴射軸の方向が設定された燃料直噴エンジンにおいて、前記ピストンが上死点から下降するときに発生する逆スキッシュ流の大きさが円周方向に変化し、前記複数の燃料噴射軸の方向を、逆スキッシュ流が最小になる方向を外して設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、逆スキッシュ流が最小になる方向に対して前記複数の燃料噴射軸が成す角度を離間角としたとき、最小の離間角が最大化するように前記複数の燃料噴射軸の方向を設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記複数の燃料噴射軸の方向を、逆スキッシュ流が最大になる方向を外して設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、逆スキッシュ流が最小になる方向に対して前記複数の燃料噴射軸が成す角度を第1離間角とし、逆スキッシュ流が最大になる方向に対して前記複数の燃料噴射軸が成す角度を第2離間角としたとき、前記第1、第2離間角のうちの最小の離間角が最大化するように前記複数の燃料噴射軸の方向を設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、スキッシュエリアが円周方向に変化し、前記スキッシュエリアが最小になる方向と逆スキッシュ流が最小になる方向とが一致し、前記スキッシュエリアが小さい方向を指向する前記燃料噴射軸が前記キャビティの開口端の方向に対して成す燃料噴射角よりも、前記スキッシュエリアが大きい方向を指向する前記燃料噴射軸が前記キャビティの開口端の方向に対して成す燃料噴射角が大きくなるように設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項6に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、スキッシュエリアの幅が円周方向に変化し、前記スキッシュエリアの幅が最小になる方向と逆スキッシュ流が最小になる方向とが一致し、前記幅が小さい方向を指向する前記燃料噴射軸が前記キャビティの開口端の方向に対して成す燃料噴射角よりも、前記幅が大きい方向を指向する前記燃料噴射軸が前記キャビティの開口端の方向に対して成す燃料噴射角が大きくなるように設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項7に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、スキッシュエリアの稜線長さが円周方向に変化し、前記スキッシュエリアの稜線長さが最小になる方向と逆スキッシュ流が最小になる方向とが一致し、前記稜線長さが小さい方向を指向する前記燃料噴射軸が前記キャビティの開口端の方向に対して成す燃料噴射角よりも、前記稜線長さが大きい方向を指向する前記燃料噴射軸が前記キャビティの開口端の方向に対して成す燃料噴射角が大きくなるように設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項8に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、スキッシュクリアランスが円周方向に変化し、前記スキッシュクリアランスが最小になる方向と逆スキッシュ流が最小になる方向とが一致し、前記スキッシュクリアランスが大きい方向を指向する前記燃料噴射軸が前記キャビティの開口端の方向に対して成す燃料噴射角よりも、前記スキッシュクリアランスが小さい方向を指向する前記燃料噴射軸が前記キャビティの開口端の方向に対して成す燃料噴射角が大きくなるように設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項9に記載された発明によれば、ピストンピン軸線と平行に延びる頂部を挟んで傾斜する二つの傾斜面を含むペントルーフ型の頂面を有するピストンと、前記ピストンの頂面の中央部に凹設されたキャビティと、前記キャビティ内の円周方向に離間する複数方向を指向する複数の燃料噴射軸に沿って燃料を噴射するフュエルインジェクタとを備え、相互に隣接する二つの燃料噴射軸が成す噴射軸間角が、各噴射軸間角間で略均一になるように前記複数の燃料噴射軸の方向が設定された燃料直噴エンジンにおいて、前記複数の燃料噴射軸の方向を、前記ピストンの頂部の方向を外して設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項10に記載された発明によれば、請求項9の構成に加えて、前記ピストンの頂部の方向に対して前記複数の燃料噴射軸が成す角度を離間角としたとき、最小の離間角が最大化するように前記複数の燃料噴射軸の方向を設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項11に記載された発明によれば、請求項9または請求項10の構成に加えて、前記複数の燃料噴射軸の方向を、前記ピストンの頂部の方向に直交する方向を外して設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項12に記載された発明によれば、請求項11の構成に加えて、前記ピストンの頂部の方向に対して前記複数の燃料噴射軸が成す角度を第1離間角とし、前記ピストンの頂部の方向に直交する方向に対して前記複数の燃料噴射軸が成す角度を第2離間角としたとき、前記第1、第2離間角のうちの最小の離間角が最大化するように前記複数の燃料噴射軸の方向を設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項13に記載された発明によれば、請求項12の構成に加えて、前記複数の燃料噴射軸の数nが4の倍数であるとき、前記最小の離間角が360°÷2nとなるように、前記複数の燃料噴射軸の方向を設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項14に記載された発明によれば、請求項12の構成に加えて、前記複数の燃料噴射軸の数nが4の倍数でない偶数であるとき、前記最小の離間角が360°÷4nとなるように、前記複数の燃料噴射軸の方向を設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
また請求項15に記載された発明によれば、請求項12の構成に加えて、前記複数の燃料噴射軸の数nが3以上の奇数であるとき、前記最小の離間角が360°÷8nとなるように、前記複数の燃料噴射軸の方向を設定したことを特徴とする燃料直噴エンジンが提案される。
請求項1の構成によれば、キャビティからピストンの外周部に向かって流れる逆スキッシュ流の大きさが円周方向に変化するエンジンにおいて、フュエルインジェクタからキャビティ内に均等な噴射軸間角で燃料を噴射する複数の燃料噴射軸の方向を、逆スキッシュ流が最小になる方向から外れるように設定したので、逆スキッシュ流が最小になる方向を指向する燃料噴射軸から噴射された燃料がキャビティの外部に巻き上がり難くなって該燃料噴射軸の上方に未利用空気が発生するのを防止し、キャビティにおける燃料および空気の混合状態が部分的に不均一になるのを防止することができる。
また請求項2の構成によれば、逆スキッシュ流が最小になる方向に対して複数の燃料噴射軸が成す角度を離間角としたとき、最小の離間角が最大化するように複数の燃料噴射軸の方向を設定したので、燃料噴射軸の方向を逆スキッシュ流が最小になる方向からできるだけ遠ざけ、キャビティにおける燃料および空気の混合状態の均一化を図ることができる。
また請求項3の構成によれば、複数の燃料噴射軸の方向を、逆スキッシュ流が最大になる方向を外して設定したので、逆スキッシュ流が最大になる方向を指向する燃料噴射軸から噴射された燃料がキャビティの外部に強く巻き上げられ、キャビティにおける燃料および空気の混合状態が部分的に不均一になるのを防止することができる。
また請求項4の構成によれば、逆スキッシュ流が最小になる方向に対して複数の燃料噴射軸が成す角度を第1離間角とし、逆スキッシュ流が最大になる方向に対して複数の燃料噴射軸が成す角度を第2離間角としたとき、第1、第2離間角のうちの最小の離間角が最大化するように複数の燃料噴射軸の方向を設定したので、燃料噴射軸の方向を逆スキッシュ流が最小になる方向および最大になる方向の何れからもできるだけ遠ざけ、キャビティにおける燃料および空気の混合状態の均一化を図ることができる。
また請求項5の構成によれば、逆スキッシュ流が小さい方向(即ちスキッシュエリアが小さい方向)で燃料噴射角が小さくなって燃料がキャビティの浅い位置に噴射され、逆スキッシュ流が大きい方向(即ちスキッシュエリアが大きい方向)で燃料噴射角が大きくなって燃料がキャビティの深い位置に噴射されるため、逆スキッシュ流の大小に関わらずにキャビティの全域に亘って燃料および空気の混合状態を均一化することができる。
また請求項6の構成によれば、スキッシュエリアの幅が円周方向に変化するために逆スキッシュ流の大きさが円周方向に変化しても、逆スキッシュ流が小さい方向(即ちスキッシュエリアの幅が小さい方向)で燃料噴射角が小さくなって燃料がキャビティの浅い位置に噴射され、逆スキッシュ流が大きい方向(即ちスキッシュエリアの幅が大きい方向)で燃料噴射角が大きくなって燃料がキャビティの深い位置に噴射されるため、逆スキッシュ流の大小に関わらずにキャビティの全域に亘って燃料および空気の混合状態を均一化することができる。
また請求項7の構成によれば、スキッシュエリアの稜線長さが円周方向に変化するために逆スキッシュ流の大きさが円周方向に変化しても、逆スキッシュ流が小さい方向(即ちスキッシュエリアの稜線長さが小さい方向)で燃料噴射角が小さくなって燃料がキャビティの浅い位置に噴射され、逆スキッシュ流が大きい方向(即ちスキッシュエリアの稜線長さが大きい方向)で燃料噴射角が大きくなって燃料がキャビティの深い位置に噴射されるため、逆スキッシュ流の大小に関わらずにキャビティの全域に亘って燃料および空気の混合状態を均一化することができる。
また請求項8の構成によれば、スキッシュクリアランスが円周方向に変化するために逆スキッシュ流の大きさが円周方向に変化しても、逆スキッシュ流が小さい方向(即ちスキッシュクリアランスが大きい方向)で燃料噴射角が小さくなって燃料がキャビティの浅い位置に噴射され、逆スキッシュ流が大きい方向(即ちスキッシュクリアランスが小さい方向)で燃料噴射角が大きくなって燃料がキャビティの深い位置に噴射されるため、逆スキッシュ流の大小に関わらずにキャビティの全域に亘って燃料および空気の混合状態を均一化することができる。
また請求項9の構成によれば、ピストンピン軸線と平行に延びる頂部を挟んで傾斜する二つの傾斜面を含むペントルーフ型の頂面を有するピストンを備え、キャビティからピストンの外周部に向かって流れる逆スキッシュ流の大きさが円周方向に変化するエンジンにおいて、フュエルインジェクタからキャビティ内に均等な噴射軸間角で燃料を噴射する複数の燃料噴射軸の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンの頂部の方向を外して設定したので、逆スキッシュ流が最小になるピストンの頂部の方向を指向する燃料噴射軸から噴射された燃料がキャビティの外部に巻き上がり難くなって該燃料噴射軸の上方に未利用空気が発生するのを防止し、キャビティにおける燃料および空気の混合状態が部分的に不均一になるのを防止することができる。
また請求項10の構成によれば、逆スキッシュ流が最小になるピストンの頂部の方向に対して複数の燃料噴射軸が成す角度を離間角としたとき、最小の離間角が最大化するように複数の燃料噴射軸の方向を設定したので、燃料噴射軸の方向を逆スキッシュ流が最小になる方向からできるだけ遠ざけ、キャビティにおける燃料および空気の混合状態の均一化を図ることができる。
また請求項11の構成によれば、複数の燃料噴射軸の方向を、逆スキッシュ流が最大になるピストンの頂部の方向に直交する方向を外して設定したので、逆スキッシュ流が最大になる方向を指向する燃料噴射軸から噴射された燃料がキャビティの外部に強く巻き上げられ、キャビティにおける燃料および空気の混合状態が部分的に不均一になるのを防止することができる。
また請求項12の構成によれば、逆スキッシュ流が最小になるピストンの頂部の方向に対して複数の燃料噴射軸が成す角度を第1離間角とし、逆スキッシュ流が最大になるピストンの頂部の方向に直交する方向に対して複数の燃料噴射軸が成す角度を第2離間角としたとき、第1、第2離間角のうちの最小の離間角が最大化するように複数の燃料噴射軸の方向を設定したので、燃料噴射軸の方向を逆スキッシュ流が最小になる方向および最大になる方向の何れからもできるだけ遠ざけ、キャビティにおける燃料および空気の混合状態の均一化を図ることができる。
また請求項13の構成によれば、複数の燃料噴射軸の数nが4の倍数であるとき、最小の離間角が360°÷2nとなるように複数の燃料噴射軸の方向を設定したので、最小の離間角を簡単に算出することができる。
また請求項14の構成によれば、複数の燃料噴射軸の数nが4の倍数でない偶数であるとき、最小の離間角が360°÷4nとなるように複数の燃料噴射軸の方向を設定したので、最小の離間角を簡単に算出することができる。
また請求項15の構成によれば、複数の燃料噴射軸の数nが3以上の奇数であるとき、最小の離間角が360°÷8nとなるように複数の燃料噴射軸の方向を設定したので、最小の離間角を簡単に算出することができる。
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1〜図9は本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1はディーゼルエンジンの要部縦断面図、図2は図1の2−2線矢視図、図3は図1の3−3線矢視図、図4はピストンの上部斜視図、図5は図3の5−5線断面図、図6は図3の6−6線断面図、図7は図3の7−7線断面図、図8はキャビティの第1〜第3燃料噴射断面を示す図、図9は燃料噴射軸の方向を円周方向に変化させたときの、燃料噴射軸の左右各30°の範囲のキャビティ容積の変化率を示すグラフである。
図1〜図3に示すように、燃料直噴型のディーゼルエンジンは、シリンダブロック11に形成されたシリンダ12に摺動自在に嵌合するピストン13を備えており、ピストン13はピストンピン14およびコネクティングロッド15を介して図示せぬクランクシャフトに接続される。シリンダブロック11の上面に結合されるシリンダヘッド16の下面に、ピストン13の頂面に対向する2個の吸気バルブ孔17,17と、2個の排気バルブ孔18,18とが開口しており、吸気バルブ孔17,17に吸気ポ−ト19が連通し、排気バルブ孔18,18に排気ポート20が連通する。吸気バルブ孔17,17は吸気バルブ21,21で開閉され、排気バルブ孔18,18は排気バルブ22,22で開閉される。ピストン中心軸Lp上に位置するようにフュエルインジェクタ23が設けられるとともに、フュエルインジェクタ23に隣接するようにグロープラグ24が設けられる。
図1および図4から明らかなように、ピストン13の頂面と、そこに対向するシリンダヘッド16の下面とは平坦ではなく断面三角形のペントルーフ状に傾斜しており、この形状により、吸気ポ−ト19および排気ポート20の湾曲度を小さくするとともに吸気バルブ孔17,17および排気バルブ孔18,18の直径を確保し、吸気効率および排気効率を高めることができる。
ピストン13の頂面には、ピストン中心軸Lpを中心とするキャビティ25が凹設される。キャビティ25の径方向外側には、ピストンピン14と平行に直線状に延びる頂部13a,13aから吸気側および排気側に向かって下向きに傾斜する一対の傾斜面13b,13bと、傾斜面13b,13bの下端近傍に形成されてピストン中心軸Lpに直交する一対の平坦面13c,13cと、頂部13a,13aの両端を平坦に切り欠いた一対の切欠き部13d,13dとが形成される。
図3および図4から明らかなように、ピストン中心軸Lpに沿って配置されたフュエルインジェクタ23は、ピストン中心軸Lp上の仮想的な点である燃料噴射点Oinjを中心として円周方向に60°の燃料噴射軸間隔β(図3参照)で配置された6つの方向に燃料を噴射する。第1〜第6燃料噴射軸Li1〜Li6の方向は、ピストンピン14の方向(ピストン14の頂部13a,13aの方向)にも、ピストンピン14の方向に直交する方向にも一致していない。またピストン中心軸Lpに直交する方向に見て、第1〜第6燃料噴射軸Li1〜Li6は斜め下向きに傾斜しており、その下向きの度合いはピストンピン14の方向に近い燃料噴射軸ほど小さく、ピストンピン14の方向に直交する方向に近い燃料噴射軸ほど大きくなっている。
尚、フュエルインジェクタ23が実際に燃料を噴射する噴射点はピストン中心軸Lpから径方向外側に僅かにずれているが、前記燃料噴射点Oinjは前記第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2がピストン中心軸Lpと交差する点として定義される。
次に、図5〜図7を参照してキャビティ25の断面形状を詳述する。図5はピストンピン14に対して直交する方向の断面であり、図6はピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面であり、図7はピストンピン14に沿う方向の断面である。
ここで重要なことは、図5〜図7の断面は、何れも燃料噴射点Oinjを通ってピストン13の頂面(つまり傾斜面13b,13b)に直交する方向の断面であるということである。図5のピストンピン14直角方向の断面と、図7のピストンピン14方向の断面とは、その切断面がピストン13の頂面と直交し、かつピストン中心軸Lpを含んでいる。それに対し、図6のピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面は、ピストン13の頂面に直交しており、ピストン中心軸Lpを含まない断面となっている。即ち、図3において、5−5線に沿う切断面と7−7線に沿う切断面とは紙面に直交しているが、6−6線に沿う切断面は紙面に直交しておらず、ピストン13の傾斜面13b,13bに直交している。
本実施の形態の一つの特徴は、燃料噴射点Oinjを通ってピストン13の頂面に直交する任意の断面において、キャビティ25の形状が略一致していることである。キャビティ25の断面形状は燃料噴射点Oinjを挟んで左右二つの部分に分かれており、その二つの部分は図7のピストンピン14方向の断面では概ね直線状に繋がっているが、図5のピストンピン14直角方向の断面と、図6のピストンピン14に対して60°で交差する方向の断面とでは、ピストン13のペントルーフ形状に応じて山型に繋がっている。しかしながら、キャビティ25の断面形状の主要部、つまり図5〜図7に網かけをして示す部分の形状は完全に一致している。
図5〜図7から明らかなように、ピストン中心軸Lpを中心として形成されたキャビティ25は、ピストン13の頂面から下向きに直線状に延びる周壁部25aと、周壁部25aの下端からピストン中心軸Lpに向かってコンケーブ状に湾曲する曲壁部25bと、曲壁部25bの径方向内端からピストン中心軸Lpに向かって斜め上方に直線状に延びる底壁部25cと、ピストン中心軸Lp上で底壁部25cの径方向内端に連なる頂部25dとで構成される。
キャビティ25に対向するシリンダヘッド16の下面を示す線L−R1,L−R2から下方に距離Haだけ離れて平行に延びるラインをピストン頂面基本線L−a1,L−a2とする。同様にシリンダヘッド16の下面を示す線L−R1,L−R2から下方に距離Hbcだけ離れて平行に延びる線をキャビティ底面基本線L−bc1,L−bc2とし、シリンダヘッド16の下面を示す線L−R1,L−R2から下方に距離Hdだけ離れて平行に延びる線をキャビティ頂部基本線L−d1,L−d2とする。
燃料噴射点Oinjを中心とする半径Raの円弧と前記ピストン頂面基本線L−a1,L−a2との交点をa1,a2とする。同様に燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rbの円弧と前記キャビティ底面基本線L−bc1,L−bc2との交点をb1,b2とし、燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rcの円弧と前記キャビティ底面基本線L−bc1,L−bc2との交点をc1,c2とし、燃料噴射点Oinjを中心とする半径Rdの円弧と前記キャビティ頂部基本線L−d1,L−d2との交点をd1,d2とする。交点e1,e2は、前記交点d1,d2からピストン頂面基本線L−a1,L−a2に下ろした垂線が該ピストン頂面基本線L−a1,L−a2に交差する点である。
キャビティ25の周壁部25aは直線a1b1,a2b2の上にあり、キャビティ25の底壁部25cは直線c1d1,c2d2に一致し、キャビティ25の曲壁部25bは直線a1b1,a2b2および直線c1d1,c2d2を滑らかに接続する。
しかして、交点a1,c1,d1,e1あるいは交点a2,c2,d2,e2によって決まる網かけした断面形状が,燃料噴射点Oinjを通ってピストン13の頂面に直交する任意の断面において等しくなるように、キャビティ25の形状が設定される。
前記交点a1,a2は本発明の第1特定点Anに対応し、前記交点e1,e2は本発明の第2特定点Bnに対応し、前記交点d1,d2は本発明の第3特定点Cnに対応するものである。
図8(A)は、ピストンピン14の方向に最も近い第1、第4燃料噴射軸Li1,Li4を含むキャビティ25の断面(第1燃料噴射断面S1)を示し、図8(B)は、ピストンピン14の方向に2番目に近い第3、第6燃料噴射軸Li3,Li6を含むキャビティ25の断面(第2燃料噴射断面S2)を示し、図8(C)は、ピストンピン14の方向から最も遠い(ピストンピン14の方向に直交する方向に最も近い)第2、第5燃料噴射軸Li2,Li5を含むキャビティ25の断面(第3燃料噴射断面S3)を模式的に示している。
図8(A)の第1燃料噴射断面S1において、第1、第4燃料噴射軸Li1,Li4がキャビティ25の壁面と交差する点を燃料衝突点P1とし、図8(B)の第2燃料噴射断面S2において、第3、第6燃料噴射軸Li3,Li6がキャビティ25の壁面と交差する点を燃料衝突点P2とし、図8(C)の第3燃料噴射断面S3において、第2、第5燃料噴射軸Li2,Li5がキャビティ25の壁面と交差する点を燃料衝突点P3とする。三つの燃料衝突点P1,P2,P3は、網かけした同一形状の第1〜第3燃料噴射断面S1〜S3上の異なる位置に存在している。
即ち、第2燃料噴射断面S2において、第1燃料噴射断面S1の燃料衝突点P1に対応する位置はP2′であるが、実際の燃料衝突点P2はP2′よりも低い位置(キャビティ25の深い位置)に存在する。従って、燃料噴射点Oinjとキャビティ25の開口端を規定する第1特定点Anとを結ぶ直線に対して、第1、第4燃料噴射軸Li1,Li4が成す第1燃料噴射角α1に比べて、第3、第6燃料噴射軸Li3,Li6が成す第2燃料噴射角α2は大きくなる。
また第3燃料噴射断面S3において、第2燃料噴射断面S2の燃料衝突点P2に対応する位置はP3′であるが、実際の燃料衝突点P3はP3′よりも低い位置(キャビティ25の深い位置)に存在する。従って、燃料噴射点Oinjとキャビティ25の開口端を規定する第1特定点Anとを結ぶ直線に対して、第3、第6燃料噴射軸Li3,Li6が成す第2燃料噴射角α2に比べて、第2、第5燃料噴射軸Li2,Li5が成す第3燃料噴射角α3は大きくなる。
換言すると、図8(A)の第1燃料噴射面S1では第1、第4燃料噴射軸Li1,Li4はキャビティ25の浅い位置(開口端に近い位置)を指向し、図8(C)の第3燃料噴射面S3では第2、第5燃料噴射軸Li2,Li5はキャビティ25の深い位置(底壁に近い位置)を指向し、図8(B)の第2燃料噴射面S2では第3、第6燃料噴射軸Li3,Li6はキャビティ25の中程度に深い位置を指向することになる。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
本実施の形態によれば、燃料噴射点Oinjを通ってピストン13の頂面に直交する任意の断面において、燃料噴射点Oinjの近傍のごく一部(交点e1,d1,d2,e2で囲まれた領域)を除いて、キャビティ25の断面形状が同一に形成されていることにより、キャビティ25の各部における空気および燃料の混合状態を円周方向に均一化し、混合気の燃焼状態を改善してエンジン出力の増加および排気有害物質の低減を図ることができる。
また図5および図6に示すピストン13の頂面が傾斜する断面においても、キャビティ25の開口のエッジ(交点a2の部分)が成す角度が、図7に示すピストン13の頂面が平坦な場合に比べて鋭角化することがないため、その部分の熱負荷を軽減して耐熱性を高めることができる。
また燃料噴射点Oinjを通るキャビティ25の断面のうち、燃料および空気の混合に大きな影響を与える断面は、ピストン中心軸Lpを含む断面ではなく、ピストン13の頂面に直交する断面である。なぜならば、キャビティ25内における燃料微粒子の円周方向の拡散はピストン13の頂面に沿う方向に発生し、その拡散方向に直交する断面がピストン13の頂面に直交する断面だからである。本実施の形態では、燃料噴射点Oinjを通ってピストン13の頂面に直交する任意の断面において、キャビティ25の形状を略一致させたことで、キャビティ25の各部における燃料および空気の混合状態をより一層均一化することができる。
また交点d1,d2はキャビティ25の底壁部25cと頂部25dとの境界に位置するので、交点d1,d2および交点e1,e2をできるだけピストン中心軸Lpに接近させ、網かけした断面形状が各燃料噴射断面Snにおいて占める比率を高くし、キャビティ25の円周方向の各断面における燃料および空気の混合状態のばらつきを最小限に抑えることができる。
図9は、燃料噴射軸の方向をピストンピン14の方向を基準(0°)としてピストン中心軸Lpまわりに左右に各60°の範囲で移動させたとき、前記燃料噴射軸の左右各30°の範囲におけるキャビティ25の容積の変化率を示すものである。実線は燃料噴射点Oinjを通ってピストン13の頂面に直交する任意の断面におけるキャビティ25の断面形状を一致させた本実施の形態に対応し、破線はその構成を備えていない比較例に対応する。同図から明らかなように、従来例では容積の変化率が20%を越えているのに対し、本実施の形態では容積の変化率が10%未満に抑えられていることが分かる。
尚、本願発明では燃料噴射点Oinjを通ってピストン13の頂面に直交する任意の断面においてキャビティ25の形状を略一致させているが、キャビティ25の形状が略一致するとは、上述した容積の変化率が10%未満となるような僅かな形状の変化、例えば燃料噴射断面Snがピストン中心軸Lpを通る場合や、燃料噴射断面Snがピストン13の頂面と直交した状態から僅かに傾く場合を許容するものとして定義される。
ところで、圧縮行程でピストン13が上死点に接近すると、ピストン13のキャビティ25を囲む頂面とシリンダヘッド16の下面との間に形成される環状のスキッシュエリアSA(図5〜図7参照)の容積が減少することで、スキッシュエリアSAからキャビティ25に向かって径方向内向きに流れるスキッシュ流が発生する。またピストン13が上死点から下降を開始するとスキッシュエリアSAの容積が増加することで、キャビティ25からスキッシュエリアSAに向かって径方向外向きに流れる逆スキッシュ流が発生する。ピストン13の円周方向の各位置において、スキッシュ流と逆スキッシュ流とは方向が逆で略同じ大きさになるが、本実施の形態では、ピストン13がペントルーフ状の頂面を備えていることで、スキッシュ流および逆スキッシュ流の大きさは円周方向に不均一になる。
逆スキッシュ流の大きさはスキッシュエリアSAの形状に左右され、本実施の形態ではピストンピン14に沿う方向の断面(図7参照)で逆スキッシュ流が最も小さくなり、ピストンピン14に直交する方向の断面(図5参照)で逆スキッシュ流が最も大きくなる。よってピストンピン14の方向に近い第1、第4燃料噴射軸Li1,Li4を含む第1燃料噴射断面S1(図8(A)参照)での逆スキッシュ流は小さく、ピストンピン14の方向に直交する方向に近い第2、第5燃料噴射軸Li2,Li5を含む第3燃料噴射断面S3(図8(C)参照)での逆スキッシュ流は大きく、第3、第6燃料噴射軸Li3,Li6を含む第2燃料噴射断面S2(図8(B)参照)での逆スキッシュ流はその中間の大きさになる。
その理由は、図3から明らかなように、ピストン中心線Lp方向に見たキャビティ25の形状がピストンピン14の方向に長軸を一致させた楕円形状となるため、ピストンピン14に沿う方向の断面ではスキッシュエリアSAの幅WがW1と小さくなり、ピストンピン14に対して直交する方向の断面ではスキッシュエリアSAの幅WがW2と大きくなるからである。
このように、逆スキッシュ流の大きさは基本的にスキッシュエリアSAの径方向の幅Wに依存するが、スキッシュエリアSAの径方向の稜線長さに依存するとも言える。スキッシュエリアSAの径方向の稜線長さとは、断面となって示されるスキッシュエリアSAに沿う屈曲した折れ線の長さであり、その稜線長さが小さいほど逆スキッシュ流が小さくなり、その稜線長さが大きいほど逆スキッシュ流が大きくなる。
更に、逆スキッシュ流の大きさは、ピストン13の上死点におけるスキッシュエリアSAの厚さであるスキッシュクリアランスCにも依存し、スキッシュクリアランスCが小さいと逆スキッシュ流が大きくなり、スキッシュクリアランスCが大きいと逆スキッシュ流が小さくなる。本実施の形態ではピストンピン14に沿う方向の断面(図7参照)ではスキッシュクリアランスCがC1と大きくなって逆スキッシュ流が小さくなり、ピストンピン14に対して直交する方向の断面(図5参照)ではスキッシュクリアランスCがC2と小さくなって逆スキッシュ流が大きくなる。
以上説明したように、スキッシュエリアSAの形状に応じて逆スキッシュ流の大きさが円周方向に不均一になると、フュエルインジェクタ23がキャビティ25の内部に均一に燃料を噴射しても、逆スキッシュ流が大きい部分では燃料がキャビティ25の開口端から吸い出されてしまい、逆に逆スキッシュ流が小さい部分では燃料がキャビティ25の底部に滞留してしまい、せっかく燃料噴射点Oinjを通ってピストン13の頂面に直交する任意の断面においてキャビティ25の断面形状を同一に形成しても、その利点を充分に活かしきれず、混合気の燃焼状態が悪化したり、排気有害物質が増加したり、煤が発生したりする可能性がある。
しかしながら、本実施の形態によれば、逆スキッシュ流が小さい側の第1、第4燃料噴射軸Li1,Li4を含む第1燃料噴射断面S1を、逆スキッシュ流が最も小さくなるピストンピン14の方向からずらすとともに、その第1燃料噴射断面S1における第1燃料噴射角α1を小さくして燃料をキャビティ25の浅い位置に噴射することで、逆スキッシュ流が小さくても燃料がキャビティ25の底部に滞留するのを抑制し、燃料をキャビティ25の内部で一層均一に拡散させることができる。
また逆スキッシュ流が大きい側の第2、第5燃料噴射軸Li2,Li5を含む第3燃料噴射断面S3を、逆スキッシュ流が最も大きくなるピストンピン14の方向に直交する方向からずらすとともに、その第3燃料噴射断面S3における第3燃料噴射角α3を大きくして燃料をキャビティ25の深い位置に噴射することで、逆スキッシュ流が大きくても燃料がキャビティ25から流出するのを抑制し、燃料をキャビティ25の内部で均一に拡散させることができる。
以上のように、第1、第6燃料噴射軸Li1〜Li6を時計回りに回転角15°だけ回転させ、かつ第1〜第3燃料噴射角α1〜α3を異ならせることで、噴射された燃料がキャビティ25の底部に滞留する傾向と、逆スキッシュ流が燃料をキャビティ25から吸い出す傾向とを相殺させ、キャビティ25内の全域で燃料を均一に拡散させて外部への流出を防止し、混合気の燃焼状態を改善して排気有害物質や煤の発生を抑制することができる。
ところで、本実施の形態では、第1〜第6燃料噴射軸Li1〜Li6の方向は、ピストンピン14の方向(逆スキッシュ流が最小になる方向)と、ピストンピン14の方向の直交する方向(逆スキッシュ流が最大になる方向)とに一致せず、かつ最大限に離間する方向に設定される。即ち、図10(B)において、燃料噴射軸の数nがn=6の場合、基準となるピストンピン14の方向の一方に対して第1燃料噴射軸Li1の方向は時計回りに15°ずれるように、6本の第1燃料噴射軸Li1〜Li6が15°回転している。
その結果、ピストンピン14の方向に対して第1、第4燃料噴射軸Li1,Li4の方向が成す第1離間角γ1はγ1=15°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第2、第5燃料噴射軸Li2,Li5の方向が成す第2離間角γ2はγ2=15°となり、第1〜第6燃料噴射軸Li1〜Li6の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向の直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
このように、n=6の場合には基準となるピストンピン14の方向の一方に対して第1燃料噴射軸Li1の方向を時計回りに回転角=15°回転させることで、第1〜第6燃料噴射軸Li1〜Li6の方向を、逆スキッシュ流が最小になる方向と、逆スキッシュ流が最大になる方向から最大限に離間させることができるので、逆スキッシュ流が過小であるために燃料がキャビティ25内に保持されて該キャビティ25の上方の未利用空気が増加するのを防止するとともに、逆スキッシュ流が過大であるためにキャビティ25内の方に燃料が上方に巻き上がって外部に流出するのを防止し、キャビティ25内の全域で燃料をより一層均一に拡散させることができる。
一つの燃料噴射軸の第1離間角γ1を増加させると他の燃料噴射軸の第1離間角γ1が減少し、一つの燃料噴射軸の第2離間角γ2を増加させると他の燃料噴射軸の第2離間角γ2が減少し、一つの燃料噴射軸の第1離間角γ1を増加させると他の燃料噴射軸の第2離間角γ2が減少し、一つの燃料噴射軸の第2離間角γ2を増加させると他の燃料噴射軸の第1離間角γ1が減少することがある。よって、全ての燃料噴射軸の第1、第2離間角γ1,γ2のうちの最小の離間角を最大にするには、つまり、第1〜第6燃料噴射軸Li1〜Li6が逆スキッシュ流が最小になる方向および最大になる方向からできるだけ離れるようにするには、燃料噴射軸の数n=6の場合には第1燃料噴射軸Li1の方向をピストンピン14の方向から時計回りに15°回転させれば良い。
次に、燃料噴射軸の数nと燃料噴射軸の回転角との関係を考察する。
図10に示すように、燃料噴射軸の数nが4の倍数でない偶数の場合、つまりn=2、n=6、n=10…の場合、回転角は360°/4nで算出される。
図10(A)はn=2の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/8=45°となる。よって、ピストンピン14の方向に対して第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2の方向が成す第1離間角γ1は45°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2の方向が成す第2離間角γ2は45°となり、第1、第2燃料噴射軸Li1,Li2の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
図10(B)はn=6の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/24=15°となり、ピストンピン14の方向に対して第1、第4燃料噴射軸Li1,Li4の方向が成す第1離間角γ1は15°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第2、第5燃料噴射軸Li2,Li5の方向が成す第2離間角γ2は15°となり、第1〜第6燃料噴射軸Li1〜Li6の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
図10(C)はn=10の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/40=9°となり、ピストンピン14の方向に対して第1、第6燃料噴射軸Li1,Li6の方向が成す第1離間角γ1は9°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第3、第8燃料噴射軸Li3,Li8の方向が成す第2離間角γ2は9°となり、第1〜第10燃料噴射軸Li1〜Li10の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
図11に示すように、燃料噴射軸の数nが4の倍数の場合、つまりn=4、n=8、n=12…の場合、回転角は360°/2nで算出される。
図11(A)はn=4の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/8=45°となる。よって、ピストンピン14の方向に対して第1〜第4燃料噴射軸Li1〜Li4の方向が成す第1離間角γ1は45°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第1〜第4燃料噴射軸Li1〜Li4の方向が成す第2離間角γ2は45°となり、第1〜第4燃料噴射軸Li1〜Li6の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
図11(B)はn=8の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/16=22.5°となり、ピストンピン14の方向に対して第1、第4、第5、第8燃料噴射軸Li1,Li4,Li5,Li8の方向が成す第1離間角γ1は22.5°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第2、第3、第6、第7燃料噴射軸Li2,Li3,Li6,Li7の方向が成す第2離間角γ2は22.5°となり、第1〜第8燃料噴射軸Li1〜Li8の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
図11(C)はn=12の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/24=15°となり、ピストンピン14の方向に対して第1、第6、第7、第12燃料噴射軸Li1,Li6,Li7,Li12の方向が成す第1離間角γ1は15°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第3、第4、第9、第10燃料噴射軸Li3,Li4,Li9,Li10の方向が成す第2離間角γ2は15°となり、第1〜第12燃料噴射軸Li1〜Li12の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
図12に示すように、燃料噴射軸の数nが3以上の奇数の場合、つまりn=3、n=5、n=7、n=9、n=11…の場合、回転角は360°/8nで算出される。尚、n=1の場合(燃料噴射軸が1本の場合)には、キャビティ25内の燃料の拡散が極端に不均一になるために除外される。
図12(A)はn=3の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/24=15°となる。よって、ピストンピン14の方向に対して第1燃料噴射軸Li1の方向が成す第1離間角γ1は15°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第3燃料噴射軸Li3の方向が成す第2離間角γ2は15°となり、第1〜第3燃料噴射軸Li1〜Li3の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
図12(B)はn=5の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/40=9°となり、ピストンピン14の方向に対して第1燃料噴射軸Li1の方向が成す第1離間角γ1は9°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第2燃料噴射軸Li2の方向が成す第2離間角γ2は9°となり、第1〜第5燃料噴射軸Li1〜Li5の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
図12(C)はn=7の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/56=6.43°となり、ピストンピン14の方向に対して第1燃料噴射軸Li1の方向が成す第1離間角γ1は6.43°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第6燃料噴射軸Li6の方向が成す第2離間角γ2は6.43°となり、第1〜第7燃料噴射軸Li1〜Li7の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
図12(D)はn=9の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/72=5°となり、ピストンピン14の方向に対して第1燃料噴射軸Li1の方向が成す第1離間角γ1は5°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第3燃料噴射軸Li3の方向が成す第2離間角γ2は5°となり、第1〜第9燃料噴射軸Li1〜Li9の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
図12(E)はn=11の場合を示すもので、この場合の回転角=360°/88=4.09°となり、ピストンピン14の方向に対して第1燃料噴射軸Li1の方向が成す第1離間角γ1は4.09°となり、かつピストンピン14の方向に直交する方向に対して第9燃料噴射軸Li9の方向が成す第2離間角γ2は4.09°となり、第1〜第11燃料噴射軸Li1〜Li11の方向を、逆スキッシュ流が最小になるピストンピン14の方向と、逆スキッシュ流が最大になるピストンピン14の方向に直交する方向とに対し、最大限に離間させることができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態のキャビティ25は燃料噴射点Oinjを通ってピストン13の頂面に直交する任意の断面において断面形状が同一に形成されているが、本発明は前記断面形状が同一に形成されていないものに対しても適用することができる。
また実施の形態では燃料直噴ディーゼルエンジンについて説明したが、本発明はディーゼルエンジン以外の燃料直噴エンジンに対して適用することができる。
また実施の形態では傘状に配置された複数の燃料噴射軸のうちの隣接する2本の燃料噴射軸の間隔である燃料噴射軸間隔βを、ピストン中心線Lp方向に見たときの角度として定義したが、前記燃料噴射軸間隔βを隣接する2本の燃料噴射軸が実際に成す角度として定義しても良い。