JP2010140682A - 燃料電池と燃料電池セル、およびその構成部材ユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】ガスケットを射出成形する際に注入された樹脂の樹脂圧に対して電解質膜の端部が持ち上げられてガスケットの端面に臨み、これがガスのクロスリーク路を形成してクロスリーク耐久を低下させるという課題を簡易な製造方法にて解決することのできる、燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】膜電極接合体3と、その両側に配されたガス透過層4,6およびガス透過層4’、6’と、が積層され、これらの周縁にガスケット8が成形され、電解質膜1はガス透過層よりも側方へ張り出してガスケット内に埋め込まれている、燃料電池セル20の構成部材ユニット10であり、ガスケット8のうち、構成部材ユニット10の両側に配される(不図示の)セパレータに対向する端面であって、電解質膜1の側方へ張り出している箇所1aの少なくとも端部を収容自在な位置に、セパレータ側へ突出する突起8bが設けられている。
【選択図】図3
【解決手段】膜電極接合体3と、その両側に配されたガス透過層4,6およびガス透過層4’、6’と、が積層され、これらの周縁にガスケット8が成形され、電解質膜1はガス透過層よりも側方へ張り出してガスケット内に埋め込まれている、燃料電池セル20の構成部材ユニット10であり、ガスケット8のうち、構成部材ユニット10の両側に配される(不図示の)セパレータに対向する端面であって、電解質膜1の側方へ張り出している箇所1aの少なくとも端部を収容自在な位置に、セパレータ側へ突出する突起8bが設けられている。
【選択図】図3
Description
本発明は、燃料電池セルを構成する部材ユニット、これにセパレータを加えた燃料電池セル、この燃料電池セルが積層されてなる燃料電池に関するものである。
固体高分子型燃料電池の燃料電池セルは、イオン透過性の電解質膜と、該電解質膜を挟持するアノード側およびカソード側の触媒層とから膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)が形成され、たとえば、この膜電極接合体とこれを挟持するアノード側およびカソード側のガス拡散層(GDL)とから電極体(MEGA:Membrane Electrode & Gas Diffusion Layer Assembly)が形成され、電極体に燃料ガスもしくは酸化剤ガスを提供するとともに電気化学反応によって生じた電気を集電するための多孔体からなるガス流路層とセパレータが電極体の両側に配されて構成されている。実際の燃料電池スタックは、所要電力に応じた基数の燃料電池セルが積層され、スタッキングされることによって形成されている。
上記構成の燃料電池セルにおいては、膜電極接合体に供給される燃料ガスや酸化剤ガス、さらにはセルの昇温を抑止するための冷却水などの流体をシールするためのガスケットが電極体や金属多孔体の周縁に形成されている。このガスケットは燃料電池セルごとに形成されており、電極体および多孔体の周縁にガスケットを有した燃料電池セルを所定の基数だけ積層した後にスタッキングがおこなわれている。このガスケットの成形は一般に射出成形や圧縮成形にておこなわれている。たとえば射出成形の場合の一例を取り上げると、成形型のキャビティ内にセパレータを収容し、次いでガス流路となるアノード側もしくはカソード側の一方の金属多孔体を収容し、次いで電極体を収容し、次いでアノード側もしくはカソード側の他方の金属多孔体を収容した姿勢で、電極体および多孔体の周縁のガスケット成形用キャビティに樹脂を注入するものである。
上記するセパレータは、たとえばチタンやステンレスからなる2枚のプレートの間に流路が形成されたプレートが介層された3層構造のものや、中間層を樹脂製の枠材とし、2枚のプレートの一方から多数のディンプルや流路を画成するリブを突出させて冷却水流路を形成するものなどがある。この3層構造のセパレータは、当該セル自体のアノード側もしくはカソード側のいずれか一方のセパレータであると同時に、積層姿勢において隣接するセルのアノード側もしくはカソード側の他方のセパレータとなるものである。すなわち、この3層構造セパレータを有する燃料電池セルのセル構成部材は、一つの3層構造セパレータと、アノード側およびカソード側のガス透過層(エキスパンドメタルや金属発泡焼結体などの金属多孔体からなるガス流路層)と、電極体(膜電極接合体およびガス拡散層)と、からなり、複数の燃料電池セルが積層された姿勢において、任意の燃料電池セルは、その両端にアノード側およびカソード側のセパレータを有することとなる。
ところで、ガス拡散層や触媒層に対して電解質膜の端部は側方に張り出しており、ガスケットが成形された際の姿勢においては、電解質膜の側方へ張り出している箇所がガスケットの内部に埋め込まれた構造を呈するのが一般的である。このような構造を適用する理由として、その一つは、両極のガス拡散層や金属多孔体(ガス流路層)が接触して短絡するのを防止することである。また、他の理由は、一方の極(たとえばカソード極)から他方の極(たとえばアノード極)へ電解質膜の側端をガスが回り込んでクロスリークするのを防止するために、ある程度の張り出し長さを確保し、この張り出している箇所をガスケット内に埋設させた構造を適用しているというものである。
たとえば、成形型内に一つの3層構造セパレータと、金属多孔体とガス拡散層と膜電極接合体を収容して型閉めし、膜電極接合体の側方に画成されたガスケット用のキャビティ内に樹脂を注入してガスケットを成形する場合において、成形型内で膜電極接合体側に流れてきた樹脂の圧力により、電解質膜の側方に張り出している箇所が上方に持ち上げられ、これがガスのクロスリーク路を形成してクロスリーク耐久を低下させるという課題が生じていた。
これを図5とその一部を拡大した図6に基づいて説明する。図5は、固定型S1と可動型S2のキャビティ内に電極体eとガス流路層となる金属多孔体f1、f2、および一つの3層構造セパレータgが収容され、ガスケット用の樹脂が注入されている状況を説明したものである。まず、電解質膜aとこれを挟持するカソード側およびアノード側の触媒層b1、b2とから膜電極接合体cが形成され、この膜電極接合体cをカソード側およびアノード側のガス拡散層d1、d2が挟持して電極体eが形成されたものを用意する。なお、各部材を成形型内へ収容するに際して、膜電極接合体とガス拡散層が予め一体に形成されていてもよいし、双方が分離されていて、それぞれを順に成形型内に収容するものであってもよい。ここで、電解質膜aの端部a1は電極体eの側方に張り出している。また、セパレータgは、2枚のステンレス製もしくはチタン製のプレートg1、g2と、このプレート間に介在してガスや冷却水などの流体用の流路を画成する中間層g3と、から構成されており、成形型内に、セパレータg、金属多孔体f2、電極体e、金属多孔体f1が積層姿勢を成した状態で型閉めされる。なお、この収容された構成部材のユニットで一つの燃料電池セルが形成されるものである。なお、この3層構造のセパレータgは、それが組み込まれる燃料電池セルのアノード側の多孔体f2に燃料ガス(流れ方向Z1)を提供するためのガス流通孔g3aと、セルが積層された姿勢において隣接するセルのカソード側の多孔体に酸化剤ガス(流れ方向Z2)を提供するためのガス流通孔g3bを備えている。
型閉めの後に、注入孔Hを介してガスケット成形用のキャビティC内に樹脂が注入される(Y方向)。樹脂が注入されると、キャビティC内で水平方向に張り出した電解質膜aの側方に張り出している箇所a1には、図6で示すようにその樹脂圧が作用し、該張り出している箇所a1は上方に持ち上げられてその端部がキャビティCの上面に当接する。
この姿勢でガスケットが成形されて燃料電池セルが製造されると、電解質膜aはその側方に張り出している箇所a1の端部がガスケットの上面に臨んだ状態となってしまう(端部が外部に臨む)。このような燃料電池セルを所定の基数だけ接着させることなく積み重ね、スタッキングすることにより、従来の燃料電池は形成されている。燃料電池セル同士を密着させないことにより、たとえば発電不良となった燃料電池セルを抜き出して他の燃料電池セルと入れ替えるといったメンテナンスが可能となる。したがって、一つの燃料電池セルに着目した際に、その構成部材であるアノード側およびカソード側の金属多孔体の一方には3層構造のセパレータがガスケットの射出成形の際に接着しており、他方の金属多孔体には、積層姿勢において隣接する燃料電池セルのセパレータが接着されることなく当接した状態となっている。
燃料電池セル同士が接着されることなく積み重ねられているのみの構造であるため、上記するようにそのメンテナンスは可能となる一方で、当該燃料電池セルと隣接セルのセパレータとの間に外部に連通する隙間が生じることは避けられない。それに加えて、上記のごとく電解質膜の側方に張り出している箇所(の端部)が外部に臨んだ状態となっていることから、電解質膜が外部に通じる状態が形成されることとなり、このことは、ガスのクロスリーク路が形成されることを意味するものであり、燃料電池のクロスリーク耐久低下の一因となるものである。
なお、本出願人によってなされた従来の公開技術として特許文献1を挙げることができ、当該文献には、射出成形に際して、成形型内で電解質膜の端部を押圧部材でセパレータ側に押圧した姿勢で射出成形する技術が開示されている。
上記する公開技術によれば、図5,6で示すガスのクロスリーク路の形成が効果的に抑制される。しかしその一方で、キャビティ内に押圧部材が介在することで注入された樹脂の樹脂流れが阻害されること、押圧部材に作用する樹脂の注入圧に対して該押圧部材の所期の姿勢を保持しながら膜端部をセパレータ側に十分に押さえ付けることが困難であることなどに鑑み、本発明者等は更なる改良を試みてこれらの課題を改善できる技術思想に到達した。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、燃料電池セルを構成する膜電極接合体とガス透過層の周縁にガスケットを射出成形されてなる燃料電池セルの構成部材ユニットに関し、注入された樹脂の樹脂圧に対して電解質膜の端部が持ち上げられてガスケットの端面に臨み、これがガスのクロスリーク路を形成して燃料電池のクロスリーク耐久を低下させるという課題が生じ得ない、燃料電池セルの構成部材ユニットと、該ユニットからなる燃料電池セル、該燃料電池セルが積層されてなる燃料電池を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による燃料電池セルの構成部材ユニットは、電解質膜とその両側の触媒層とからなる膜電極接合体と、該膜電極接合体の両側に配された第1のガス透過層および第2のガス透過層と、が積層され、これらの周縁にガスや冷却流体が流通するマニホールドを具備するガスケットが成形されており、電解質膜は第1のガス透過層および/または第2のガス透過層よりも側方へ張り出してガスケット内に埋め込まれている、燃料電池セルの構成部材ユニットにおいて、前記ガスケットのうち、前記構成部材ユニットの両側に配されるセパレータに対向する端面の少なくとも一方であって、前記電解質膜の側方へ張り出している箇所の少なくとも端部を収容自在な位置に、セパレータ側へ突出する突起が設けられているものである。
本発明の構成部材ユニットは、膜電極接合体(MEA)のアノード側とカソード側の双方に拡散層基材と集電層からなるガス拡散層を具備する形態、アノード側とカソード側のいずれか一方は集電層のみを具備する(拡散層基材が廃された)形態の双方を含んでいる。また、本明細書では、これらのいずれの形態も電極体(MEGA)と称呼している。また、この構成部材ユニットからなる燃料電池セルにおいては、いわゆるフラットタイプのセパレータと電極体の間に、ガス流路層(エキスパンドメタル等の金属多孔体)が配された構造の他にも、電極体の両側にガス流路溝が形成されたセパレータが直接配された従来一般のセル構造を含むものである。さらに、「(第1、第2の)ガス透過層」とは、ガス拡散層とガス流路層の双方を含む意味である。したがって、ガス流路層を具備しないセル形態において、「ガス透過層」は「ガス拡散層」を意味するものであり、ガス拡散層とガス流路層の双方を具備するセル形態において、「ガス透過層」は「ガス拡散層」と「ガス流路層」の双方もしくはいずれか一方を意味するものである。
上記構成部材ユニットを構成するガスケットにおいて、セパレータと対向する端面であって、電解質膜の側方へ張り出している箇所の少なくとも端部を収容自在な位置にセパレータ側へ突出する突起が設けられていることにより、該張り出している箇所の端部をこの突起に収容させることができ、該端部が外部に臨んでクロスリーク路を形成する問題を解消できるものである。
ここで、「電解質膜の側方へ張り出している箇所の少なくとも端部を収容自在な位置」とは、たとえばガスケット用樹脂の樹脂圧にて該張り出している箇所の端部が上方もしくは下方へ変形された際に、ガスケットのセパレータに対向する端面において、該張り出している箇所の端部が該端面に臨む可能性のある範囲全てを包含する領域を意味するものである。また、「収容自在」であることより、成形されたガスケットの突起内に必ずしも上記する張り出している箇所の端部が収容されている必要はなく、ガスケットの一般領域内に該端部が収容されているものも本発明に含まれるものである。
ガスケットのセパレータに対向する端面の上記領域において、セパレータ側に突出する突起(ガスケットと同素材)を設けておくことにより、仮に上記する張り出している箇所の端部がガスケットのセパレータに対向する端面側に変形された場合でも、該端部を該突起内に収容することができ、ガスのクロスリーク路の形成を抑止することができる。
ここで、ガスケットの前記端面であって、前記マニホールドの周縁には一般に無端状のリブが備えられおり、セパレータと該無端状のリブが当接することによって流体シール構造が形成されるようになっている。この形態において、上記する突起は、このリブよりもガス透過層側に設けられていてもよいし、このリブを上記する突起とし、該リブが、流体シール性能と上記する張り出している箇所の端部を収容させる性能の双方を有するものであってもよい。
また、本発明による燃料電池セルは、前記構成部材ユニットにおける、前記第1のガス透過層、もしくは前記第2のガス透過層のいずれか一方側に、積層されたセルを画成するとともに双方のセルに燃料ガスと酸化剤ガスのいずれか一方を提供するセパレータが配され、該セパレータも前記ガスケットと一体となっており、セパレータを具備しない側のガスケットの前記端面に前記突起が形成されている形態であってもよい。
さらには、本発明による燃料電池セルは、前記構成部材ユニットにおける、前記第1のガス透過層、および前記第2のガス透過層の双方にセパレータが配され、双方のセパレータに対向するガスケットの前記端面に前記突起が形成されている形態であってもよい。
上記する本発明の構成部材ユニットからなる燃料電池セルが積層され、スタッキングされてなる燃料電池は、家庭用の定置型燃料電池や車載用燃料電池など、その適用分野は他方面に亘るが、特に、近時その生産が拡大しており、車載機器に一層の高性能、高耐久を要求する電気自動車やハイブリッド車に好適である。
以上の説明から理解できるように、本発明の燃料電池セルの構成部材ユニットによれば、たとえばガスケットを射出成形する際に、電解質膜の側方に張り出している箇所が樹脂圧によって持ち上げられてガスケットの外面に臨み、これがクロスリーク路を形成して燃料電池のクロスリーク耐久を低下させるという課題を効果的に解消することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示例は、ガスケットの射出成形に際して成形型内に3層構造のセパレータを収容し、次いで金属多孔体や電極体を収容する方法を示したものであるが、成形型内にセパレータを収容せずにガスケットが成形され、その後工程で構成部材ユニットの両側にセパレータが接着等される形態であってもよいことは勿論のことである。また、図示例では、3層構造のセパレータと金属多孔体、および電極体からなる燃料電池セルを示しているが、電極体等とセパレータが一体に成形されずに、後工程で2つのセパレータが電極体等と接着等される形態においては、この電極体等(電極体のみ、もしくは、電極体と金属多孔体の積層ユニット)とガスケットとから、本発明の構成部材ユニットが形成されるものである。
図1は、ガスケットを射出成形している状態を示している。より具体的には、膜電極接合体3とカソード側およびアノード側のガス拡散層4,4’(ガス透過層)と、からなる電極体5と、アノード側およびカソード側のガス流路層となる金属多孔体6,6’(ガス透過層)と、カソード側およびアノード側の金属多孔体6,6’(ガス流路層、ガス拡散層)と、3層構造のセパレータ7を用意し、固定型S1と可動型S2とからなる成形型のキャビティ内に下方から順に、セパレータ7、アノード側の金属多孔体6’、電極体5、カソード側の金属多孔体6を移載して型閉めし、この姿勢で、固定型S1に開設された注入孔Hを介して、樹脂をガスケット成形用キャビティC内に注入する(Y方向)。なお、注入される樹脂としては、ブチル系ゴムやウレタン系ゴム、シリコーンRTVゴム、耐メタノール性を有するエポキシ系樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、炭化水素樹脂などを挙げることができる。
まず、電極体5の構成を概説すると、この電極体5は、電解質膜1と、カソード側およびアノード側の触媒層2,2’と、から膜電極接合体3が形成され、これをカソード側およびアノード側のガス拡散層4,4’が挟持して形成されている。
なお、触媒層2,2’は電解質膜1に比してそれらの面積が狭小であり、したがって、電解質膜1の両側の触媒層2,2’の周縁には該触媒層2,2’が存在しない露出領域が形成され、この露出領域には、カソード側およびアノード側の不図示の保護フィルムが配されて、ガス拡散層4,4’から突出する毛羽が電解質膜1の露出領域に突き刺さるのを防護している。
ここで、膜電極接合体3を構成する電解質膜1は、たとえば、スルホン酸基やカルボニル基を持つフッ素系イオン交換膜、置換フェニレンオキサイドやスルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン、スルホン化フェニレンスルファイドなどの非フッ素系のポリマーなどから形成される。
また、触媒層2,2’は、触媒が担持された導電性担体(粒子状のカーボン担体など)と、電解質と、分散溶媒(有機溶媒)と、を混合して触媒溶液(触媒インク)を生成し、これを電解質膜1やガス拡散層4,4’等の基材に塗工ブレードにて層状に引き伸ばして塗膜を形成し、温風乾燥炉等で乾燥することで触媒層が形成される。ここで、触媒溶液を形成する電解質は、プロトン伝導性ポリマーである、有機系の含フッ素高分子を骨格とするイオン交換樹脂、例えばパーフルオロカーボンスルフォン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等のスルホン化プラスチック系電解質、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルケトン、スルホアルキル化ポリエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホアルキル化ポリスルフィド、スルホアルキル化ポリフェニレンなどのスルホアルキル化プラスチック系電解質などを挙げることができる。なお、市販素材としては、ナフィオン(Nafion)(登録商標、デュポン社製)やフレミオン(Flemion)(登録商標、旭硝子株式会社製)などを挙げることができる。また、分散溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、芳香族系あるいはハロゲン系の種々の溶媒を挙げることができ、さらには、これらを単独で、もしくは混合液として使用することができる。さらに、触媒が担持された導電性担体に関し、この導電性担体としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの炭素材料のほか、炭化ケイ素などに代表される炭素化合物などを挙げることができ、この触媒(金属触媒)としては、たとえば、白金や白金合金、パラジウム、ロジウム、金、銀、オスミウム、イリジウムなどのうちのいずれか一種を使用することができ、好ましくは白金または白金合金を使用するのがよい。さらに、この白金合金としては、たとえば、白金と、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、バナジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、チタンおよび鉛のうちの少なくとも一種との合金を挙げることができる。
また、ガス拡散層4,4’は、拡散層基材と集電層(MPL)からなるものであり、拡散層基材としては、電気抵抗が低く、集電を行えるものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、導電性無機物質を主とするものを挙げることができ、この導電性無機物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛等の炭素材やこれらのナノカーボン材料、ステンレススチール、モリブデン、チタン等を挙げることができる。また、拡散層基材の導電性無機物質の形態は特に限定されるものではなく、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、ガス透過性の点から無機導電性繊維であって、特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた拡散層基材としては、織布あるいは不織布いずれの構造のものも使用することができ、カーボンペーパーやカーボンクロスなどを挙げることができる。織布としては、平織、綴織など、特に限定されるものではなく、不織布としては、抄紙法、ウォータージェットパンチ法によるものなどが挙げられる。さらに、この炭素繊維としては、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などを挙げることができる。さらに、集電層はアノード側、カソード側の触媒層2,2’から電子を集める電極の役割を果たすものであり、導電性材料である、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金、銀、銅及びこれらの化合物または合金、導電性炭素材料などから形成できる。
また、3層構造のセパレータ7は、ステンレスやチタンからなる金属プレート71,72と、その間に、金属素材で冷却水流路やガス流路が形成された中間層73が介層されたものである。なお、樹脂素材の枠材を中間層とし、2枚の金属プレートの一方のプレートから多数のディンプル、もしくは流路画成用のリブが突出された形態であってもよい。なお、図示するセパレータ7では、自身が構成要素となる燃料電池セルのアノード側の多孔体6'に燃料ガスを供給するためのガス流路73aと、セルの積層姿勢において隣接するセルのカソード側の多孔体6に酸化剤ガスを供給するためのガス流路73bが形成されており、さらには、不図示の冷却水流路が中間層73に形成されている。
さらに、不図示の保護フィルムは、ポリテトラフルオロエチレン、PVDF(二フッ化ポリビニル)、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、シリコーン、シリコンゴム、シリコンベースのエラストマなどから形成されるものである。
図1に戻り、固定型S1には、ガスケット用のキャビティCのほかに、無端状リブ用のキャビティC’が設けられており、さらに、該無端状リブ用キャビティC’よりも電極体5側に突起用キャビティC1が設けられている。
この突起用キャビティC1の寸法や形状、およびその配設位置は、キャビティC内に注入された樹脂が電極体5側に流れ、該樹脂の樹脂圧にて電解質膜1の側方に張り出している箇所1aが上方に持ち上げられた場合でも、該張り出している箇所1aの少なくとも端部が突起用キャビティC1内に留まることができ、しかも該キャビティC1の内面まで到達しないように設定されている。
また、図2は、他の実施の形態の成形型を使用してガスケットを成形している状態を説明した図である。この成形型では、無端状リブ用キャビティが突起用キャビティC2となっているものであり、具体的には、無端状リブ用キャビティのうち、電極体5側の領域はその幅が相対的に大きくなっており、この幅が大きくなった領域に電解質膜1の張り出している箇所1aが収容自在となっている。
図1,2のいずれの製造方法(製造形態)によっても、図5で示す従来の製造方法と異なり、電解質膜1の張り出している箇所1aの端部が突起用キャビティC1,C2内に収容自在となっているため、電極体1の側方から流れてきた樹脂の樹脂圧によって該張り出している箇所1aが上方に持ち上げられたとしても、この端部がキャビティC1,C2の内面にまで到達することがない。
一方、この射出成形により、セパレータ7の表面上にガスケットが直接成形されることから、セパレータとガスケットの密着領域は十分に接着され、したがって、これらの界面が外部に流体連通することもない。このことから、図5で示すように、ガスケットのうち、セパレータと接着しない側の表面に電解質膜の張り出している箇所が臨んでこれが外部と流体連通し、ガスのクロスリーク路を形成するという問題は生じ得ない。
図3は、図1の方法で製造された、電極体5および金属多孔体6,6’およびガスケット8からなる燃料電池セルの構成部材ユニット10と、アノード側の金属多孔体6’側に配された3層構造のセパレータ7と、からなる、2つの燃料電池セル20,20を示しており、より具体的には、これらが積層される前の状態を示している。
同図より、成形されたガスケット8の表面(図では上面)には、マニホールドMを囲繞する無端状リブ8aとともに、電極体5側に突起8bが成形されており、この突起8b内に電解質膜1の張り出している箇所1aの端部が収容されている。なお、たとえば電極体5が平面視矩形で、電解質膜1が同形状で相対的に大きな寸法を有していて、該電極体5の四方から張り出している場合には、この突起8bも電極体5の金属多孔体6を囲繞するように形成されるものであってよい。
たとえば300基の燃料電池セル20,…を積層して燃料電池スタックを形成する場合には、図1の方法でそれぞれの燃料電池セルを製造し、各燃料電池セル20のセパレータを具備しない側に積層姿勢で隣接する燃料電池セル20のセパレータ7を上載するようにして300基の燃料電池セル20,…を積層し、スタッキングが実行される。
図4は、複数の燃料電池セル20,…が積層され、スタッキングされた後の2つの燃料電池セル20,20を取り出して図示したものである。なお、射出成形されてできたガスケット8にマニホールドMが形成され、無端のシールリブ8aがマニホールドMを囲繞するようにガスケット8の上面(セパレータ7の存在しない面)に形成される。
図4から明らかなように、積層姿勢の各燃料電池セル20,…がスタッキングされた際に、任意の燃料電池セル20は、自身の構成部材であるセパレータ7と隣接する燃料電池セル20のセパレータ7がその両側に配される構造となる。スタッキングされることによってマニホールドM周りのシールリブ8aが隣接する燃料電池セル20のセパレータ7にて潰され、シール構造が形成される。
図示するマニホールドMは燃料ガスが流入するマニホールドであり、供給された燃料ガスは3層構造セパレータ7の中間層73からプレート71に亘って形成された供給ガス流路73aを介してアノード側の多孔体6’に供給される(Z1方向)。一方、ガスケット8の他の断面には酸化剤ガスが流入する別途のマニホールドが形成されており、この別途のマニホールドを介して酸化剤ガスが流入し、セパレータ7の中間層73からプレート72に亘って形成された供給ガス流路73bを介して隣接セルのカソード側の多孔体6に供給される(Z2方向)。
上記する本発明の燃料電池セルによれば、射出成形時の樹脂圧によってたとえば上方に持ち上げられている電解質膜の張り出している箇所の端部は、少なくともガスケットの突起内に収容されて該ガスケットの表面に臨むことがないため、該端部がセパレータと接着していない側のガスケットの端面に臨んで外部と流体連通し、ガスのクロスリーク路となることが効果的に抑止される。
なお、実際に電気自動車等に車載される燃料電池システムは、燃料電池(燃料電池スタック)と、水素ガスや空気を収容する各種タンク、これらのガスを燃料電池に提供するためのブロア、燃料電池を冷却するためのラジエータ、燃料電池で生成された電力を蓄電するバッテリ、この電力で駆動する駆動モータ等から大略構成されるものである。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…電解質膜、1a…側方に張り出している箇所、2…カソード側の触媒層、2’…アノード側の触媒層、3…膜電極接合体、4…カソード側のガス拡散層(ガス透過層)、4’…アノード側のガス拡散層(ガス透過層)、5…電極体、6…カソード側の金属多孔体(ガス透過層)、6’…アノード側の金属多孔体(ガス透過層)、7…セパレータ、71、72…プレート、73…中間層、8…ガスケット、8a…無端状リブ、8b…突起、10…燃料電池セルの構成部材ユニット、20…燃料電池セル、M…マニホールド、S1…固定型、S2…可動型、H…注入孔、C…キャビティ、C’…無端状リブ用キャビティ、C1、C2…突起用キャビティ
Claims (7)
- 電解質膜とその両側の触媒層とからなる膜電極接合体と、該膜電極接合体の両側に配された第1のガス透過層および第2のガス透過層と、が積層され、これらの周縁にガスや冷却流体が流通するマニホールドを具備するガスケットが成形されており、電解質膜は第1のガス透過層および/または第2のガス透過層よりも側方へ張り出してガスケット内に埋め込まれている、燃料電池セルの構成部材ユニットにおいて、
前記ガスケットのうち、前記構成部材ユニットの両側に配されるセパレータに対向する端面の少なくとも一方であって、前記電解質膜の側方へ張り出している箇所の少なくとも端部を収容自在な位置に、セパレータ側へ突出する突起が設けられている、燃料電池セルの構成部材ユニット。 - 前記ガスケットの前記端面において、前記マニホールドの周縁には無端状のリブが備えられ、セパレータと該無端状のリブが当接することによって流体シール構造が形成されるようになっており、
前記突起が前記リブよりもガス透過層側に設けられている、請求項1に記載の燃料電池セルの構成部材ユニット。 - 前記ガスケットの前記端面において、前記マニホールドの周縁には無端状のリブが備えられ、セパレータと該無端状のリブが当接することによって流体シール構造が形成されるようになっており、
前記突起が該無端状のリブからなる、請求項1に記載の燃料電池セルの構成部材ユニット。 - 前記ガス透過層が、ガス拡散層、もしくは、金属多孔体からなるガス流路層、もしくは、ガス拡散層と金属多孔体からなるガス流路層の積層体、のいずれか一方からなる、請求項1〜3に記載の燃料電池セルの構成部材ユニット。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の構成部材ユニットにおける、前記第1のガス透過層、もしくは前記第2のガス透過層のいずれか一方側に、積層されたセルを画成するとともに双方のセルに燃料ガスと酸化剤ガスのいずれか一方を提供するセパレータが配され、該セパレータも前記ガスケットと一体となっており、
セパレータを具備しない側のガスケットの前記端面に前記突起が形成されている、燃料電池セル。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の構成部材ユニットにおける、前記第1のガス透過層、および前記第2のガス透過層の双方にセパレータが配され、双方のセパレータに対向するガスケットの前記端面に前記突起が形成されている、燃料電池セル。
- 請求項5または6に記載の燃料電池セルが積層され、スタッキングされてなる、燃料電池。
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