JP2010139024A - 発電型ダンパー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】振動系に生じる振動により加振されることにより起電力を生じるとともに抵抗力を生じる発電機構2と、前記起電力による電流を制御する電気回路3とにより構成され、電気回路に流れる電流値に応じて発電機構が生じる反力を制動力として振動系に対する制振効果を得る。発電機構2は、発電機として機能して起電力を生じる第1の直流モーター2Aと、加振機として機能して反力を発生する第2の直流モーター2Bとが同期回転可能に組み合わされ、電気回路は第1の直流モーターの出力電流を増幅して第2の直流モーターに入力することにより該第2の直流モーターを駆動する電流増幅器8を有する。
【選択図】図1
Description
非特許文献1に示される発電式振動抑制装置は、特に宇宙空間での機器の微小振動の抑制を目的として、発電機の両端子間における負荷抵抗を変えることにより可変減衰力を発生させるものであるが、これをそのまま建物等の大規模構造物に適用しても十分な効果は得られないし、様々な振動系に対して広く適用できるものでもない。
そのため、この種の発電型ダンパーはその有用性が認められつつも未だ実用化されるに至っていないのが実状である。
特に、発電機構を発電機として機能する第1の直流モーターと加振機として機能する第2の直流モーターとを組み合わせた構成とし、発電機(第1の直流モーター)の出力電流を電流増幅器を用いて増幅して加振機(第2の直流モーター)を駆動するようにしたので、発電機のトルク定数が小さい場合や内部抵抗が大きい場合でも、増幅した大きな電流を加振機に流せるため、加振機のトルク定数が小さくても大きな加振力を得ることができる。
そのため、本発明の発電型ダンパーは小容量の2台の直流モーターを主体としても構成できるものであり、建物等の大規模構造物を対象とする制震要素としても適用可能な小形軽量かつ安価な発電型ダンパーを実現することができる。
図4(a)において符号A、Bは互いに離接する方向に相対振動する構造体であり、符号1はそれら構造体A,Bからなる振動系に対して設置された発電型ダンパーである。この発電型ダンパー1は構造体Aに対して固定された発電機構2としての直流モーター(以下、直流モーター2と記す)と、直流モーター2に付設された電気回路3と、直流モーター2に対して振動系の振動(構造体A,B間に生じる相対振動)を伝達して回転軸を回転させるための伝達機構としてのボールねじ機構4とからなる。
この場合、直流モーター2に生じる起電力は回転軸の回転速度に比例するものであり、したがってその起電力はボールねじ機構4を介して直流モーター2に伝達される振動系の加振速度x・に比例するものとなる。(なお、加振速度は本来は図中に示すようにxの上部に・が付く記号で表すべきものであるが、本文中では便宜的に上記のようにx・として表すこととする。)
したがってこのボールねじ機構4は、構造体A,B間に互いに離接する方向の相対振動が生じた際には、ボールナット6がボールねじ軸5に対して軸方向に変位し、それによりボールねじ軸5が強制的に回転せしめられてそれに連結されている直流モーター2の回転軸が回転せしめられるようになっている。つまり、ボールねじ機構4は振動系の振動を回転運動に変換して直流モーター2に伝達するものであり、それにより直流モーター2の回転軸を強制回転させて発電機として機能せしめて起電力を生じさせるものである。
なお、ボールねじ軸5と直流モーター2との間にたとえば遊星歯車を用いた増速ギア等による適宜の増速機構を設置することにより、振動系の振動を増速して直流モーター2に伝達するようにしても良い。
換言すれば、電気回路3を構成しているコイルのインダクタンスL、コンデンサーのキャパシタンスC、抵抗器の抵抗値Rを、直流モーター2(発電機構)の特性値として定まる係数αを用いてそれぞれ図中の関係により決定することにより、この発電型ダンパーはバネ剛性kのバネ要素、慣性質量ψの慣性質量要素、減衰係数cの減衰要素を備えたダンパーとして機能するものとなる。
このことは、慣性質量のないコンデンサーが質量効果を生み、粘性減衰をもたない抵抗器が減衰効果を生み、バネ剛性をもたないコイルが剛性を生むことを意味し、それらの電気的な要素を組み合わせただけの電気回路3を直流モーター2に接続するだけで優れた制振効果が得られるダンパー機構を構成できることになる。
つまり、上記の発電型ダンパー1における直流モーター2に要求される性能としてのトルク定数と内部抵抗とは相反関係にあって、一般に市販されている汎用の直流モーターを用いることでは制震要素として要求されるトルク定数と内部抵抗の双方を同時に満足することは困難である。また、それを可能とするためには太いコイルを多数巻いた大型なモーターを用いる必要があるが、そのようなモーターは非現実的な程度に過大なサイズとなってしまう。
上記の発電型ダンパー1は以上の点で改良の余地を残しているものであり、そのため、本発明では発電機構を単一の直流モーター2により構成することに代えて2台の直流モーター2A,2Bを組み合わせる構成とし、それにより上記の問題を解決したものである。
双方のモーターを同期回転させるとは、回転数が同じであるばかりでなく双方のモーターの回転数が比例関係にあれば良い。また双方のモータをクラッチや変速機を介して連結しても良い。
すなわち図2(a)に示すように電気回路3を発電機2Aに直列に設けて電流増幅器8の入力側に接続し、加振機2Bを電流増幅器8の出力側に接続し、入力側と出力側のモーター極性を合わせることとする。
なお、hFEはトランジスタ9における電流増幅率であり、100倍以上の製品が多数市販されている。
また、図示例のように対のトランジスタ9をペアで使用しているのは、モーター回転方向によって入力側の正負極性が反転することに対応したものである。
図示例では電気回路3をLCR直列回路としているが、任意の回路でよく、図2にはその電気回路3のインピーダンスをZとして示している。
そのため、発電機2Aには定格電力が小さくて内部抵抗の小さいモーターを使用し、加振機2Bには定格電力が大きくトルク定数の高いものを使用することができる。つまり、発電機2A側では内部抵抗は小さく振動の時定数を設定できれば良いだけになり、大きな電流が求められないので大型のモーターは要しない。一方、加振機2B側では電源供給されているのでモーターの内部抵抗が大きくても問題にならず、発電機2A側からの入力信号(電流)を電流増幅器8で拡大して電源10からの出力信号(電流)として加振機2Bに供給すれば良いだけである。
対象建物の水平固有振動数は、1次:2.2Hz、2次:6.3Hz、3次:9.0Hzであり、1次に対する構造減衰はh=0.02とする。ここでは、3次モードの影響は小さいので1次モードと2次モードのみを対象として制御する(以下の諸元において添字1は1次モードに対応するもの、添字2は2次モードに対応するものである)。
発電機構として350W-24Vの直流モーターを1台のみを使用し、減速ギア比1:5とする。この場合、ギア込みのモーター重量は約10kgである。トルク定数0.076N・m/A、電機子抵抗(内部抵抗)0.13Ω、ボールねじのリードは5とする。
発電機構による係数α=K1K2’=2.3kNΩ/kineとして、次のように諸元を設定する。
ψ1=10tonとし、したがってC1=ψ1/α=44mFとする。k1’=25kN/cmとし、したがってL1=α/k1’=92mHとする。R=0.5Ωとする。
ψ2=10tonとし、したがってC2=ψ2/α=44mFとする。k2’=390kN/cmとし、したがってL2=α/k2’=5.9mHとする。
なお、1次モードだけを対象とする場合にはL2とC2を省略すれば良く、その場合の応答倍率を破線で示してある。
発電機2A(第1の直流モーター)として40W-12Vを使用し、減速ギアは使用しない。このモーター重量は約1.1kgである。トルク定数0.037N・m/A、電機子抵抗(内部抵抗)0.4Ω、電流増幅器の増幅率が205倍とする。
加振機2B(第2の直流モーター)として80W-24Vを使用し、減速ギアは使用しない。このモーター重量は約1.6kgである。トルク定数0.076N・m/A、電機子抵抗(内部抵抗)0.85Ω、ボールねじのリードは10とする。
しかし、電流増幅器8を用いることにより、(B)の反力(ダンパー反力)は(A)と同じになる。すなわち、同じLCR負荷回路に対して発電機構による係数α=K1K2β=2.3kNΩ/kineで(A)と同じになり、大容量の1台の直流モーターとギアを用いた(A)と、小容量の2台の直流モータを用いてギアを用いない(B)の振動モデルが同じ(等価)となり、当然ながら応答結果も同じになる。
また、発電機2A側に接続したLCR回路の電流は(A)の場合の1/20と小さいので、容量の小さな電気素子を用いることができ、安価に構成することができる。
(1)2台の小容量の直流モーターに抵抗とコイルとコンデンサーと電流増幅器からなる電気回路を接続するだけで、機械振動で用いる減衰係数、ばね剛性、慣性質量を設置したのと同じ効果を発揮するダンパーとなる。
両者の関係は、発電機としての第1の直流モーター、増速ギア比、ボールねじのリード、加振機としての第2の直流モーター、電流増幅器から定まる係数αを用いて1対1に対応する。すなわち、抵抗Rと減衰係数cとはc=α/R、コイルのインダクタンスLとバネ剛性kとはk=α/L、コンデンサーのキャパシタンスCと慣性質量ψとはψ=αCの関係でそれぞれ対応しており、振動モデルはc、k、ψを電気回路のR、L、Cに置換したものと同形になる。
なお、ギア比1:nの減速ギアは電流増幅率β=n2と等価なので、ギアを併用することで増幅率を小さくすることもできる。
(3)発電機としての第1の直流モーターの逆起電力定数(トルク定数)が小さくても、電流増幅器を用いることで加振機としての第2の直流モーターにより大きな加振力を得ることができる。
特に、上記実施形態のように電流増幅回路を1段のトランジスタで増幅することのみでも100倍もの増幅倍率が得られるし、多段に増幅すれば数千倍といった大きな増幅倍率を得ることもできる。
(4)単一の直流モーターでは内部抵抗(電機子抵抗)はトルク定数の2乗に反比例するため、抵抗を小さくトルクを大きくするという両者を同時に満足させることはできず、大容量モーターを採用せざるを得なかったが、本発明によれば2台の小形軽量のモーターで良く、安価に実現できる。
(6)本発明で使用する部品は全て市販されている既存技術の組合せで実現でき、安価な電子部品を使用することで従来よりも安価にコンパクトなダンパーを製造できる。
(7)電子部品を用いることでその特性を可変とすることも比較的容易にできる。たとえば抵抗値を可変にするボリューム(可変抵抗器)やキャパシタンスを可変にするバリコン(可変容量器)は広く知られている。これらを使用すれば本発明の発電型ダンパーの振動特性を容易にコントロールできる。これらの調整をダンパー設置後またはメンテナンス時に行うことも容易である。特に本発明ではモーター1台だけの場合に比較して発電機側に接続されるLCR回路の電流が小さいので上記の可変素子も小さな容量で良く、比較的安価で容易に対応できる。
(8)コンピュータ制御するアクティブ型ではなくパッシブ型なので、演算によるタイムラグ(遅延)や誤動作を生じない。加振機の駆動制御はLCR回路の電流によるが、回路定数は変化しない。
2 発電機構
2A 第1の直流モーター(発電機)
2B 第2の直流モーター(加振機)
3 電気回路
4 ボールねじ機構(伝達機構)
5 ボールねじ軸
6 ボールナット
7 軸受け
8 電流増幅器
9 トランジスタ
10 電源(バッテリー)
Claims (1)
- 振動系に生じる振動により加振されることにより起電力を生じるとともに抵抗力を生じる発電機構と、前記起電力による電流を制御する電気回路とにより構成され、前記電気回路に流れる電流値に応じて前記発電機構が生じる反力を制動力として前記振動系に対する制振効果を得る構成の発電型ダンパーであって、
前記発電機構は、発電機として機能して起電力を生じる第1の直流モーターと、加振機として機能して反力を発生する第2の直流モーターとが同期回転可能に組み合わされた構成とされ、
前記電気回路は、前記第1の直流モーターの出力電流を増幅して前記第2の直流モーターに入力することにより該第2の直流モーターを駆動する電流増幅器を有してなることを特徴とする発電型ダンパー。
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