JP2010138968A - 車両用差動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ピニオンギヤからデフケースへのトルク負荷を分散させてピニオンギヤ及びデフケースの耐久性を高めることができる車両用差動装置を提供する。
【解決手段】1対の出力軸にそれぞれ連結される1対のサイドギヤと、サイドギヤにギヤ軸を直交させて噛合する1対のピニオンギヤ3と、1対のピニオンギヤ3及び1対のサイドギヤを内部に収容するデフケース2とを備え、デフケース2は、1対のピニオンギヤ3の外周面を回転自在にそれぞれ支持する1対のピニオンギヤ支持孔10Aを有し、1対のピニオンギヤ支持孔10Aの内面が1対のピニオンギヤ3の外周面に周方向一部にわたってそれぞれ適合する曲面で形成されている。
【選択図】図4
【解決手段】1対の出力軸にそれぞれ連結される1対のサイドギヤと、サイドギヤにギヤ軸を直交させて噛合する1対のピニオンギヤ3と、1対のピニオンギヤ3及び1対のサイドギヤを内部に収容するデフケース2とを備え、デフケース2は、1対のピニオンギヤ3の外周面を回転自在にそれぞれ支持する1対のピニオンギヤ支持孔10Aを有し、1対のピニオンギヤ支持孔10Aの内面が1対のピニオンギヤ3の外周面に周方向一部にわたってそれぞれ適合する曲面で形成されている。
【選択図】図4
Description
本発明は、車両用差動装置に関し、特にドライブ側から回転駆動力を受けるピニオンギヤ、及びピニオンギヤにギヤ軸を直交させて噛合するサイドギヤを備えた車両用差動装置に関する。
従来の車両用差動装置として、エンジントルクを受けて回転するデフケースと、このデフケースの回転軸線に沿って互いに並列する1対のサイドギヤと、これら1対のサイドギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを備えたものがある(例えば特許文献1)。
デフケースには、1対のサイドギヤ及び複数のピニオンギヤを収容する収容空間が設けられている。また、デフケースには、収容空間に連通して1対のサイドギヤの軸線に平行な方向に開口する1対の車軸挿通孔、及び複数のピニオンギヤを回転自在に支持する複数のピニオンギヤ挿入孔が設けられている。デフケース内には潤滑油(デフオイルが供給される。
1対のサイドギヤは、ボス部及びギヤ部を有する無底筒状の傘歯車からなり、デフケースの回転軸線に沿って移動可能に配置され、かつ各ボス部をそれぞれの車軸挿通孔内に臨ませてデフケース内に回転自在に支持されている。1対のサイドギヤ内には、左右の車軸がそれぞれの車軸挿通孔を挿通してスプライン嵌合されている。
複数のピニオンギヤは、その外周部にギヤ摺動面を有する無底筒状の傘歯車からなり、複数のピニオンギヤ挿入孔内にそれぞれ回転自在に支持されている。
以上の構成により、車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してデフケースに入力されると、デフケースがその回転軸線の回りに回転される。次に、デフケースが回転されると、この回転力が複数のピニオンギヤに伝達され、さらに複数のピニオンギヤから1対のサイドギヤに伝達される。1対のサイドギヤにはそれぞれ車軸がスプライン嵌合によって連結されているため、エンジン側からのトルクが車両の運転状況に応じて分配され、ドライブピニオン,リングギヤ,デフケース,複数のピニオンギヤ及び1対のサイドギヤを介して左右の車軸に伝達される。
この場合、デフケースにトルクが作用すると、1対のサイドギヤとの噛み合い面でスラスト力が発生し、これらスラスト力により1対のサイドギヤが互いに離間する方向に移動して各車軸挿通孔の内側開口周縁に圧接するため、1対のサイドギヤと1対の車軸挿通孔の内側開口周縁との間に摩擦抵抗が発生し、これら摩擦抵抗によって1対のサイドギヤの差動回転が制限される。
また、デフケースにトルクが作用した状態で複数のピニオンギヤが自転すると、複数のピニオンギヤのギヤ摺動面がピニオンギヤ挿入孔の内周面(ギヤ支持面)で摺動するため、複数のピニオンギヤのギヤ摺動面とデフケースの各ギヤ支持面との間に摩擦抵抗が発生し、これら摩擦抵抗によっても1対のサイドギヤの差動回転が制限される。
ところで、この種の車両用差動装置においては、ピニオンギヤ挿入孔が、ピニオンギヤが1対のサイドギヤの中央に位置した場合におけるギヤ摺動面と同心のギヤ支持面を有する丸孔によって形成されている。この丸孔の直径は、ピニオンギヤのギヤ摺動面とピニオンギヤ挿入孔の内周面との間に潤滑油が入り込み、焼き付きを防止できるよう、ピニオンギヤのギヤ摺動面の直径よりも大きく形成されている。
これにより、デフケースの回転時にピニオンギヤとサイドギヤとの噛み合いによって発生するピニオンギヤ挿入孔のギヤ支持面に対するピニオンギヤからのトルク負荷がデフケースの回転軸線と直交する方向に沿って作用し、この状態を維持しながらピニオンギヤの自転時にそのギヤ摺動面がピニオンギヤ挿入孔のギヤ支持面を摩擦摺動する。
特開2006−46642号公報
しかしながら、ピニオンギヤ挿入孔がピニオンギヤのギヤ摺動面と同心のギヤ支持面を有する丸孔によって形成された従来の車両用差動装置においては、デフケースにトルクが作用した状態でピニオンギヤが自転すると、ピニオンギヤがそのギヤ摺動面をピニオンギヤ挿入孔のギヤ支持面に押し付けながら点接触又は線接触した状態で摩擦摺動していた。この結果、ピニオンギヤ挿入孔のギヤ支持面に対してピニオンギヤのギヤ摺動面から作用するトルク負荷が集中し、ピニオンギヤ又はデフケースの焼き付き等によってその耐久性が低下するという問題があった。また、焼き付きを確実に防止するためにはピニオンギヤの直径を大きくする必要があり、このため装置が大型化してしまうという問題もあった。
従って、本発明の目的は、ピニオンギヤからデフケースへのトルク負荷を分散させることができ、もってピニオンギヤ及びデフケースの耐久性を高めることができる車両用差動装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、1対の出力軸にそれぞれ連結される1対のサイドギヤと、前記1対のサイドギヤにギヤ軸を直交させて噛合する複数のピニオンギヤと、前記複数のピニオンギヤ及び前記1対のサイドギヤを内部に収容するデフケースとを備え、前記デフケースは、前記複数のピニオンギヤの外周面を回転自在にそれぞれ支持する複数のピニオンギヤ支持孔を有し、前記複数のピニオンギヤ支持孔の内面が前記複数のピニオンギヤの外周面に周方向一部にわたってそれぞれ適合する曲面で形成されている車両用差動装置を提供する。
本発明によると、ピニオンギヤからデフケースへのトルク負荷を分散させることができ、ピニオンギヤ及びデフケースの耐久性を高めることができる。
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す分解斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤの組付状態を示す断面図である。図4は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤ支持部に対するピニオンギヤの支持状態を示す底面図である。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す分解斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤの組付状態を示す断面図である。図4は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤ支持部に対するピニオンギヤの支持状態を示す底面図である。
〔車両差動装置の全体構成〕
図1及び図2において、符号1で示す車両用差動装置は、エンジントルクを受けて回転するデフケース2と、このデフケース2の回転軸線Oと直角な軸線方向に沿って互いに並列する上下1対のピニオンギヤ3,4と、これら上下1対のピニオンギヤ3,4に噛合する左右1対のサイドギヤ5L,5Rと、これら左右1対のサイドギヤ5L,5Rの背面側に位置するスラストワッシャ6L,6Rとから大略構成されている。
図1及び図2において、符号1で示す車両用差動装置は、エンジントルクを受けて回転するデフケース2と、このデフケース2の回転軸線Oと直角な軸線方向に沿って互いに並列する上下1対のピニオンギヤ3,4と、これら上下1対のピニオンギヤ3,4に噛合する左右1対のサイドギヤ5L,5Rと、これら左右1対のサイドギヤ5L,5Rの背面側に位置するスラストワッシャ6L,6Rとから大略構成されている。
(デフケース2の構成)
デフケース2は、図3に示すように、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5R(図2に示す)・スラストワッシャ6L,6R(図2に示す)を収容するための空間部2Aと、ピニオンギヤ3,4の摺動面(後述する第1被支持部3a,4a及び第2被支持部3b,4b)とピニオンギヤ支持部10,11のピニオンギヤ支持面(後述するピニオンギヤ背面孔10A,11Aのピニオンギヤ支持面10a,11a及び延出部10B,11Bのピニオンギヤ支持面10b,11b)との間に潤滑油を導入する潤滑油導入部7,8とを内部に有し、全体が1ピースの部材によって形成されている。
デフケース2は、図3に示すように、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5R(図2に示す)・スラストワッシャ6L,6R(図2に示す)を収容するための空間部2Aと、ピニオンギヤ3,4の摺動面(後述する第1被支持部3a,4a及び第2被支持部3b,4b)とピニオンギヤ支持部10,11のピニオンギヤ支持面(後述するピニオンギヤ背面孔10A,11Aのピニオンギヤ支持面10a,11a及び延出部10B,11Bのピニオンギヤ支持面10b,11b)との間に潤滑油を導入する潤滑油導入部7,8とを内部に有し、全体が1ピースの部材によって形成されている。
潤滑油導入部7,8は、デフケース2の回転によって潤滑油(デフオイル)を掻き揚げる突起7a,8aとピニオンギヤ3,4とによって構成されている。突起7a,8aは、延出部10B,11B(後述)にピニオンギヤ支持面10b,11bからデフケース2の回転軸線側に延出して一体に形成され、ピニオンギヤ3,4(先端部)におけるデフケース2の回転方向2位置にそれぞれ配置されている。突起7a,8aとピニオンギヤ3,4とで形成される空間7b,8bは、デフケース2の回転軸線側及びピニオンギヤ支持部10,11の軸線回りに開口し、潤滑油を導入するように構成されている。
デフケース2には、図2に示すように、回転軸線Oに沿って開口する左右2つの車軸挿入孔9L,9Rと、これら車軸挿入孔9L,9Rの軸線と直角な方向に軸線をもつ上下1対のピニオンギヤ支持部10,11(図3に示す)とが設けられている。また、デフケース2には、回転軸線Oに関して対称な領域であって、ピニオンギヤ支持部10,11から回転軸線Oの回りに等間隔をもって離間する部位に位置するサイドギヤ通過孔12L,12Rが設けられている。デフケース2の左方車軸側には、回転軸線Oと直角な平面内で円周方向に沿う円環状のリングギヤ取付用フランジ13が一体に設けられている。
車軸挿入孔9L,9Rは、出力軸としての左右の車軸(図示せず)をそれぞれ挿通させるシャフト挿通孔によって形成されている。車軸挿入孔9L,9Rの内側開口周縁には、スラストワッシャ6L,6Rを受ける球面からなるスラストワッシャ受部9La,9Raが設けられている。
ピニオンギヤ支持部10,11は、図3に示すように、ピニオンギヤ背面孔10A,11A及び延出部10B,11Bによって形成されている。
ピニオンギヤ背面孔10A,11Aは、各口径が互いに異なる大小2つの開口部を有する段状の貫通孔からなり、ピニオンギヤ支持孔及びピニオンギヤ加工用孔として機能するように構成されている。
ピニオンギヤ背面孔10A,11Aの回転軸線側の開口部(内側開口部)は、図4に示すように、デフケース2の回転軸線Oに平行な孔径の最大長aよりも、デフケース2の回転軸線Oに直交する孔径の最大長bが大きい(a<b)開口サイズをもつ非真円の長円孔としての楕円孔によって形成されている。これにより、トルク負荷時にピニオンギヤ3の第1被支持部3aが例えばピニオンギヤ支持面10aのトルク負荷受面100aを摩擦摺動する場合には、ピニオンギヤ3の第1被支持部3aとピニオンギヤ支持面10aのトルク負荷受面110aとの間に形成される空隙が広くなり、この空隙に対して潤滑油を導入し易くなるとともに、ピニオンギヤ3のピニオンギヤ背面孔10A(デフケース2)内への良好な放熱性が得られる。
ピニオンギヤ背面孔10A,11Aの内側開口部の内面は、ピニオンギヤ3,4の第1被支持部(サイドギヤ噛み合い部を除く部位)3a,4aの少なくとも一部を摺動・回転自在にそれぞれ支持するとともに、ピニオンギヤ3,4の第1被支持部3a,4aに周方向一部にわたって適合し、かつ周方向に連続する曲面からなるピニオンギヤ支持面10a,11aで形成されている。
ピニオンギヤ支持面10a,11aは、ピニオンギヤ3,4の第1被支持部3a,4aに周方向一部にわたって適合する部位にトルク負荷を受ける1対のトルク負荷面100a,110aを有し、これら1対のトルク負荷面100a,110aがデフケース2の回転軸線Oと直交する軸線上に互いに並列して配置されている。
1対のトルク負荷面100a,110aの曲率は、ピニオンギヤ3,4の第1被支持部3a,4aの曲率と同一の曲率に設定されている。また、ピニオンギヤ支持面10a,11aのうち、デフケース2の回転軸線Oに平行な方向における両端部の曲率は、ピニオンギヤ3,4の第1被支持部3a,4aの曲率よりも大きな曲率に設定されている。
ピニオンギヤ背面孔10A,11Aの第1段状面には、図2に示すように、遠心力が作用するピニオンギヤ3,4を受け止め、かつ所定の曲率をもつ球面で形成されたピニオンギヤ受部(頂部)m,nが設けられている。ピニオンギヤ背面孔10A,11Aの第2段状面には、栓体としてのワッシャ21,22を受けるワッシャ受部10c,11cが設けられている。
ワッシャ21,22は、図3に示すようにピニオンギヤ3,4の背面とワッシャ受部10c,11cとの間に介装されている。そして、ワッシャ21,22は、ピニオンギヤ背面孔10A,11Aを閉塞し、デフケース2の回転によって遠心力を受けた潤滑油を堰き止めるように構成されている。これにより、デフケース2内の潤滑油がピニオンギヤ背面孔10A,11Aを経てデフケース2外に流出することが回避される。
ピニオンギヤ背面孔10A,11Aの内側開口周縁には、その軸線回りに等間隔をもって並列し、かつデフケース2の回転軸線側(ケース内部)に延出する延出部10B,11Bが一体に設けられている。延出部10B,11Bには、ピニオンギヤ支持面10a,11aに連接し、かつピニオンギヤ3,4の第1被支持部3a,4aの一部及びピニオンギヤ3,4の第2被支持部(サイドギヤ噛み合い部の一部)3b,4bを支持するピニオンギヤ支持面10b,11bが設けられている。
サイドギヤ通過孔12L,12Rは、平面非円形状の開口部を有する貫通孔によって形成されている。そして、その開口サイズは、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5Rをデフケース2内に挿入し得るようなサイズに設定されている。
(ピニオンギヤ3,4の構成)
ピニオンギヤ3,4は、略同一の構成であるため、例えばピニオンギヤ3のみについて説明する。なお、ピニオンギヤ4については、各部位の符号をピニオンギヤ3の各部位の符号に対応して付し(例えば、ピニオンギヤ4の第1被支持部にはピニオンギヤ3の第1被支持部3aに対応して4aを、またピニオンギヤ4の貫通孔にはピニオンギヤ3の貫通孔3Aに対応して4Aをそれぞれ付す。)、その説明は省略する。
ピニオンギヤ3,4は、略同一の構成であるため、例えばピニオンギヤ3のみについて説明する。なお、ピニオンギヤ4については、各部位の符号をピニオンギヤ3の各部位の符号に対応して付し(例えば、ピニオンギヤ4の第1被支持部にはピニオンギヤ3の第1被支持部3aに対応して4aを、またピニオンギヤ4の貫通孔にはピニオンギヤ3の貫通孔3Aに対応して4Aをそれぞれ付す。)、その説明は省略する。
ピニオンギヤ3は、図3に示すように、第1被支持部3a及び第2被支持部3bを有する略円柱状のシャフトレス型の歯車からなり、ピニオンギヤ背面孔10Aのピニオンギヤ支持面10a及び延出部10B,11Bのピニオンギヤ支持面10b,11bに摺動・回転自在に支持されている。
また、ピニオンギヤ3は、図4に示すように、初期状態(トルク負荷前)において、第1被支持部3aとピニオンギヤ支持面10a(トルク負荷受面100a,110a)との間の空隙寸法のうち回転軸線Oと平行な方向の最小空隙寸法L1がL1≒0.05mmの寸法に、回転軸線Oと直交する方向の最大空隙寸法L2がL2≒0.1mmの寸法にそれぞれ設定されている。
ピニオンギヤ3には、延出部10Bのピニオンギヤ支持面10bの一部及びピニオンギヤ背面孔10Aのピニオンギヤ支持面10aに対する摺動面としての第1被支持部3aに開口する潤滑油流入部としての複数の凹溝(図示せず)が設けられている。
また、ピニオンギヤ3には、ギヤ軸線方向に開口する貫通孔3Aが設けられている。これにより、ピニオンギヤ3の外面のみならず貫通孔3Aの内面にも熱処理を施すことができ、ピニオンギヤ3の機械的強度を一層高めることができる。貫通孔3Aは、ピニオンギヤ形成時の芯出し用孔及び差動装置使用時の潤滑油供給孔・ピニオンギヤ保管時のギヤ支持棒挿入孔として機能し得るように構成されている。
ピニオンギヤ3の背面には、ピニオンギヤ背面孔10Aのピニオンギヤ受部mに適合する球面で形成された摺動部3Bが設けられている。
(サイドギヤ5L,5Rの構成)
サイドギヤ5L,5Rは、図2に示すように、各外径が互いに異なるボス部5La,5Ra及びギヤ部5Lb,5Rbを有する略環状の歯車(ピニオンギヤ3,4の外径より大きい外径を有し、単一の歯先円錐角をもつ傘歯車)からなり、デフケース2内に回転自在に支持され、ピニオンギヤ3,4に噛合するように構成されている。サイドギヤ5L,5Rの歯数は、ピニオンギヤ3,4の歯数の2.1倍以上の歯数(例えばピニオンギヤ3,4の歯数8に対しサイドギヤ5L,5Rの歯数17)に設定されている。サイドギヤ5L,5Rの外径は、ピニオンギヤ3,4の外径及び延出部10B,11B間の寸法よりも大きい寸法に設定されている。
サイドギヤ5L,5Rは、図2に示すように、各外径が互いに異なるボス部5La,5Ra及びギヤ部5Lb,5Rbを有する略環状の歯車(ピニオンギヤ3,4の外径より大きい外径を有し、単一の歯先円錐角をもつ傘歯車)からなり、デフケース2内に回転自在に支持され、ピニオンギヤ3,4に噛合するように構成されている。サイドギヤ5L,5Rの歯数は、ピニオンギヤ3,4の歯数の2.1倍以上の歯数(例えばピニオンギヤ3,4の歯数8に対しサイドギヤ5L,5Rの歯数17)に設定されている。サイドギヤ5L,5Rの外径は、ピニオンギヤ3,4の外径及び延出部10B,11B間の寸法よりも大きい寸法に設定されている。
サイドギヤ5L,5Rの背面には、スラストワッシャ受部9La,9Raにスラストワッシャ6L,6Rを介して適合する球面からなる摺動部5Lc,5Rcが設けられている。サイドギヤ5L,5R内には、左右の車軸がそれぞれ車軸挿入孔9L,9Rに挿通してスプライン嵌合されている。サイドギヤ5L,5R間には、図2に示すように、車軸移動規制部材としてのアクスルスペーサ23が介装されている。
アクスルスペーサ23は、両端部に左右の車軸の先端部が嵌合する凹部23a,23bを有し、デフケース2の回転軸線O上に配置され、全体が略円柱状体によって形成されている。これにより、サイドギヤ5L,5Rと左右車軸との連結(スプライン嵌合)が円滑かつ確実に行われる。アクスルスペーサ23の凹部23a,23bの底面は、車軸の先端面が係合する係合面23A,23Bで形成されている。
(スラストワッシャ6L,6Rの構成)
スラストワッシャ6L,6Rは、図2に示すように、サイドギヤ5L,5Rのスラスト力を受けるワッシャ本体6La,6Raを有する環状のワッシャからなり、サイドギヤ5L,5Rの背面とスラストワッシャ受部9La,9Raとの間に介装されている。そして、スラストワッシャ6L,6Rは、サイドギヤ5L,5Rとピニオンギヤ3,4との噛み合いを調整するように構成されている。スラストワッシャ6L,6Rの外周縁には、円周方向に等間隔をもって並列する塑性変形可能な略杓文字状の係止片26,27が一体に設けられている。
スラストワッシャ6L,6Rは、図2に示すように、サイドギヤ5L,5Rのスラスト力を受けるワッシャ本体6La,6Raを有する環状のワッシャからなり、サイドギヤ5L,5Rの背面とスラストワッシャ受部9La,9Raとの間に介装されている。そして、スラストワッシャ6L,6Rは、サイドギヤ5L,5Rとピニオンギヤ3,4との噛み合いを調整するように構成されている。スラストワッシャ6L,6Rの外周縁には、円周方向に等間隔をもって並列する塑性変形可能な略杓文字状の係止片26,27が一体に設けられている。
係止片26,27は、塑性変形してサイドギヤ5L,5Rの外周面に係止され、かつサイドギヤ5L,5Rの回転を許容する位置に配置されている。そして、係止片26,27は、サイドギヤ5L,5Rに対するスラストワッシャ6L,6Rの径方向の位置ずれを防止するように構成されている。
〔車両用差動装置1の動作〕
先ず、車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してデフケース2に入力されると、デフケース2が回転軸線Oの回りに回転される。次に、デフケース2が回転されると、この回転力がピニオンギヤ3,4に伝達され、さらにピニオンギヤ3,4からサイドギヤ5L,5Rに伝達される。この場合、左右のサイドギヤ5L,5Rにはそれぞれ車軸がスプライン嵌合されているため、エンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤ・デフケース2・ピニオンギヤ3,4・サイドギヤ5L,5Rを介して左右の車軸に伝達される。
先ず、車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してデフケース2に入力されると、デフケース2が回転軸線Oの回りに回転される。次に、デフケース2が回転されると、この回転力がピニオンギヤ3,4に伝達され、さらにピニオンギヤ3,4からサイドギヤ5L,5Rに伝達される。この場合、左右のサイドギヤ5L,5Rにはそれぞれ車軸がスプライン嵌合されているため、エンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤ・デフケース2・ピニオンギヤ3,4・サイドギヤ5L,5Rを介して左右の車軸に伝達される。
ここで、左右の車軸上における各車輪に加わる負荷が等しい場合には、エンジン側からのトルクがデフケース2に伝達されると、ピニオンギヤ3,4がサイドギヤ5L,5R上を公転し、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5Rがデフケース2と共に一体に回転されるため、エンジン側からのトルクが左右両車軸に等分に伝達され、左右各車輪が等しい回転数で回転される。
一方、走行中に車両が例えば左方に旋回したり、あるいは右側の車輪がぬかるみに落ち込んだりした場合には、ピニオンギヤ3,4がサイドギヤ5L,5Rと噛み合いながら自転し、エンジン側からのトルクが左右の車軸(車輪)間で差動分配される。すなわち、左側の車輪がデフケース2の回転速度より低い速度で回転され、右側の車輪がデフケース2の回転速度より高い速度で回転される。
この場合、ピニオンギヤ3,4が自転すると、サイドギヤ5L,5Rとの噛み合い面で各々のギヤの回転軸方向のスラスト力が発生する。サイドギヤ5L,5Rに発生するスラスト力によりサイドギヤ5L,5Rが互いに離間する方向に移動してスラストワッシャ6L,6Rをスラストワッシャ受部9La,9Raに圧接するため、スラストワッシャ6L,6Rとスラストワッシャ受部9La,9Raとの間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によってサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限される。
また、ピニオンギヤ3,4に発生するスラスト力によりピニオンギヤ3,4の摺動部3B,4Bがデフケース2のピニオンギヤ受部m,nに圧接するため、ピニオンギヤ3,4の自転に対する摩擦抵抗が発生し、これによってもサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限される。
さらに、デフケース2にトルクが作用した状態でピニオンギヤ3,4が自転すると、第1ピニオンギヤ支持面10a,11a及び第2ピニオンギヤ支持面10b,11bで摺動するため、これら第1ピニオンギヤ支持面10a,11a及び第2ピニオンギヤ支持面10b,11bとの間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によってもサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限される。
本実施の形態においては、デフケース2の回転時にピニオンギヤ3,4が自転すると、図5(a)に示すように、ピニオンギヤ3,4が第1被支持部3a,4aをピニオンギヤ背面孔10A,11Aのピニオンギヤ支持面10a,11aに押し付けながら面接触した状態で摩擦摺動するため、ピニオンギヤ背面孔10A,11Aのピニオンギヤ支持面10a,11a(トルク負荷受面)に対して第1被支持部3a,4aから作用するトルク負荷(面圧分布P1)が分散される。この場合、ピニオンギヤ3,4の第1被支持部3a,4aとピニオンギヤ背面孔10A,11Aのピニオンギヤ支持面10a,11aとの間に発生する全体としての摩擦力が従来の車両用差動装置と同等であるため、車両用差動装置1のもつLSD(Limitted Slip Differential)機能への影響は少ない。図5(a)は、本発明の実施の形態に示す車両用差動装置を用いた場合の効果を説明するために示す底面図であり、トルク負荷受面100aの各部位における面圧分布P1をピニオンギヤ背面孔10Aの縁部から図の上方への突出量として模式的に表現している。
また、本実施の形態においては、トルク負荷の分散によってピニオンギヤ3,4の軸心の位置ずれを抑制することができ、ピニオンギヤ3,4とサイドギヤ5L,5Rとの良好な噛み合いを確保することができる。
これに対して、従来の車両用差動装置においては、図5(b)に示すように、ピニオンギヤ300がそのギヤ摺動面300aをピニオンギヤ挿入孔301のギヤ支持面301aに押し付けながら点接触したまま摩擦摺動するため、ピニオンギヤ挿入孔301のギヤ支持面301aに対してピニオンギヤ300のギヤ摺動面300aから作用するトルク負荷(面圧分布P2)が集中する。図5(b)は、従来の車両用差動装置を用いた場合の不具合を説明するために示す底面図である。
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
ピニオンギヤ3,4からデフケース2へのトルク負荷を分散させることができ、ピニオンギヤ3,4及びデフケース2の耐久性を高めることができる。
以上、本発明の車両用差動装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
(1)本実施の形態では、ピニオンギヤ背面孔10A,11Aの内側開口部(ピニオンギヤ支持孔)が楕円孔である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図6に示すようにピニオンギヤ背面孔の内側開口部(ピニオンギヤ支持孔200)が楕円孔でない他の長円孔であってもよい。
(2)本実施の形態では、ピニオンギヤ3,4を支持するピニオンギヤシャフトを有しない差動装置に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ピニオンギヤシャフトを有する差動装置にも本実施の形態と同様に適用可能である。
(3)本実施の形態では、サイドギヤ5L,5Rに噛合するピニオンギア3,4が2個(1対)デフケース2内に配置する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ギヤ径を小さい寸法に設定することにより3個以上のピニオンギヤをデフケース内に配置することができる。
1…車両用差動装置、2…デフケース、2A…空間部、3,4…ピニオンギヤ、3A,4A…貫通孔、3B,4B…摺動部、3a,4a…第1被支持部、3b,4b…第2被支持部、5L,5R…サイドギヤ、5La,5Ra…ボス部、5Lb,5Rb…ギヤ部、5Lc,5Rc…摺動部、6L,6R…スラストワッシャ、7,8…潤滑油導入部、7a,8a…突起、7b,8b…空間、9L,9R…車軸挿入孔、9La,9Ra…スラストワッシャ受部、10,11…ピニオンギヤ支持部、10A,11A…ピニオンギヤ背面孔、10a,11a…ピニオンギヤ支持面、100a,110a…トルク負荷受面、10B,11B…延出部、10b,11b…ピニオンギヤ支持面、10c,11c…ワッシャ受部、12L,12R…サイドギヤ通過孔、13…取付用フランジ、21,22…ワッシャ、23…アクスルスペーサ、23A,23B…係合部、23a,23b…凹部、26,27…係止片、300…ピニオンギヤ、300a…ギヤ摺動面、301…ピニオンギヤ挿入孔、301a…ギヤ支持面、m,n…ピニオンギヤ受部、O…回転軸線
Claims (6)
- 1対の出力軸にそれぞれ連結される1対のサイドギヤと、
前記1対のサイドギヤにギヤ軸を直交させて噛合する複数のピニオンギヤと、
前記複数のピニオンギヤ及び前記1対のサイドギヤを内部に収容するデフケースとを備え、
前記デフケースは、前記複数のピニオンギヤの外周面を摺動自在にそれぞれ支持する複数のピニオンギヤ支持孔を有し、前記複数のピニオンギヤ支持孔の内面は非真円形をなすと共に前記複数のピニオンギヤの外周面に周方向一部にわたってトルク負荷を受けるトルク負荷受面が前記複数のピニオンギヤの外周面に適合する曲面で形成されている
車両用差動装置。 - 前記複数のピニオンギヤ支持孔には、前記デフケースの回転軸線及び前記ピニオンギヤのギヤ軸と直交する直線方向の両端部に1対のトルク負荷受面が配置されている請求項1に記載の車両用差動装置。
- 前記複数のピニオンギヤ支持孔は、前記1対のトルク負荷面の曲率が前記複数のピニオンギヤの外周面の曲率と同一の曲率に設定され、前記複数のピニオンギヤ支持孔の前記デフケースの回転軸線方向の両端部は前記複数のピニオンギヤの外周面の曲率よりも大きな曲率に設定されている請求項2に記載の車両用差動装置。
- 前記複数のピニオンギヤ支持孔は、前記デフケースの回転軸線に平行な孔径の最大長よりも、前記デフケースの回転軸線に直交する孔径の最大長が大きい開口サイズをもつ長円孔によって形成されている請求項1に記載の車両用差動装置。
- 前記長円孔は楕円孔である請求項4に記載の車両用差動装置。
- 前記複数のピニオンギヤ支持孔は、前記曲面が周方向に連続する曲面である請求項1に記載の車両用差動装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008314630A JP2010138968A (ja) | 2008-12-10 | 2008-12-10 | 車両用差動装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2008314630A Pending JP2010138968A (ja) | 2008-12-10 | 2008-12-10 | 車両用差動装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2010138968A (ja) |
-
2008
- 2008-12-10 JP JP2008314630A patent/JP2010138968A/ja active Pending
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