JP5109599B2 - 車両用差動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用差動装置に関し、特にドライブ側から回転駆動力を受けるピニオンギヤの倒れ込みを防止するためのピニオンギヤシャフトを備えた車両用差動装置に関する。
従来、この種の車両用差動装置には、例えば図10に示すようなものが知られている(特許文献1)。この車両用差動装置につき、図10を用いて説明すると、図10において、符号71で示す車両用差動装置は、エンジントルクを受けて回転するデフケース72と、このデフケース72の回転軸線に沿って互いに並列するサイドギヤ73L,73Rと、これらサイドギヤ73L,73Rに噛合するピニオンギヤ74とを備えている。
デフケース72には、サイドギヤ73L,73R及びピニオンギヤ74を収容する収容空間72Aが設けられている。また、デフケース72には、収容空間72Aに連通してピニオンギヤ74を挿入するピニオンギヤ挿入孔75、及びピニオンギヤ挿入孔75の軸線と直交する方向に開口する車軸挿入孔76L,76Rが設けられている。
サイドギヤ73L,73Rは、ボス部79L,79R及びギヤ部80L,80Rを有する無底筒状の傘歯車からなり、デフケース72の回転軸線に沿って移動可能に配置され、かつボス部79L,79Rをそれぞれ車軸挿入孔76L,76R内に臨ませてデフケース72内に回転自在に支持されている。サイドギヤ73L,73R内には、左右の車軸81L,81Rがその一部を車軸挿入孔76L,76R内に位置付けてスプライン嵌合されている。サイドギヤ73L,73Rのギヤ部80L,80R(背面)と車軸挿入孔76L,76Rの内側開口周縁との間には、ボス部79L,79Rの周囲に位置する環状の摺動部材82L,82Rが介装されている。
ピニオンギヤ74は、無底筒状の傘歯車からなり、ピニオンギヤ保持板83によって抜け止めされ、かつピニオンギヤ挿入孔75内に回転自在に支持されている。ピニオンギヤ74の軸心部には、ギヤ倒れ込み防止用のピニオンギヤシャフト84を挿通させるシャフト挿通孔74Aが設けられている。
以上の構成により、車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してデフケース72に入力されると、デフケース72が回転軸線の回りに回転される。次に、デフケース72が回転されると、この回転力がピニオンギヤシャフト84を介してピニオンギヤ74に伝達され、さらにピニオンギヤ74からサイドギヤ73L,73Rに伝達される。この場合、サイドギヤ73L,73Rにはそれぞれ車軸81L,81Rがスプライン嵌合によって連結されているため、エンジン側からのトルクが車両の運転状況に応じて分配され、ドライブピニオン,リングギヤ,デフケース72,ピニオンギヤシャフト84,ピニオンギヤ74及びサイドギヤ73L,73Rを介して左右の車軸に伝達される。
この場合、ピニオンギヤ74が回転すると、ピニオンギヤ挿入孔75及びピニオンギヤシャフト84の各支持面で摺動するため、これら各支持面との間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によってサイドギヤの差動回転が制限される。
また、ピニオンギヤ74の回転によってサイドギヤ73L,73Rとの噛み合い面でスラスト力が発生し、これらスラスト力によりサイドギヤ73L,73Rが互いに離間する方向に移動して摺動部材82L,82Rを車軸挿入孔76L,76Rの内側開口周縁に圧接するため、摺動部材82L,82Rと車軸挿入孔76L,76Rの内側開口周縁との間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によってもサイドギヤの差動回転が制限される。
実用新案登録第2520728号公報(図1)
ところで、特許文献1の車両用差動装置では、ピニオンギヤ74の図面上側における円筒状部分だけでなく、ピニオンギヤ74のトップランド(ギヤ歯先の外周面)もピニオンギヤ挿入孔75の内面と摺動する。
また、ピニオンギヤ74は、そのギヤ径をサイドギヤ73L,73Rのギヤ径よりも大きい寸法に設定して形成されている。
これは、ピニオンギヤ74の噛み合い部がその摺動部(噛み合い部のトップランドを除く摺動部)よりもデフケース72の回転軸線に近い位置に配置されている構成のみを採用すると、デフケース72の回転時にサイドギヤ73L,73Rとピニオンギヤ74との噛み合いによって発生するピニオンギヤ74に対するデフケース72(ピニオンギヤ挿入孔75の内周面)からの反力がピニオンギヤ74を傾ける方向に作用し、この状態を維持しながらピニオンギヤ74の摺動部がピニオンギヤ挿入孔75の内周面に摺動し、ピニオンギヤ74の摺動部又はピニオンギヤ挿入孔75の内周面に焼き付きや偏磨耗が発生してしまう虞があることから、これら焼き付きや偏磨耗の発生を回避しようとするための構成と考えられる。
一方、十分に大きな差動制限トルクを得るためには、ピニオンギヤ74がピニオンギヤ挿入孔75内でその軸線にギヤ軸線を平行にした状態で摩擦摺動することが重要であるため、シャフト挿通孔74Aの内周面とピニオンギヤシャフト84の外周面との間における空隙(第1空隙)の径方向寸法をピニオンギヤ74の外周面(摺動部)とピニオンギヤ挿入孔75の内周面との間における空隙(第2空隙)の径方向寸法よりも小さくすることはできないものと考えられる。
これより、特許文献1の車両用差動装置によると、第1空隙の径方向寸法が第2空隙の径方向寸法より大きい寸法に設定されるため、ピニオンギヤ74が通常の状態においてピニオンシャフト84で支持されることはない。仮に、ピニオンギヤ74がピニオンギヤシャフト84に支持されるとすれば、ピニオンギヤ74が傾いたときであるため、上記のような構成(ピニオンギヤ74とサイドギヤ73L,73Rとの噛み合い部をピニオンギヤ挿入孔75の内周面に対する摺動部よりもデフケース72の回転軸線に近い位置に配置すること、及びシャフト挿通孔74Aの内周面全体をピニオンギヤシャフト84に支持すること)によってもピニオンギヤ74の傾きを確実になくすことはできず、特にピニオンギヤ挿入孔75の内周面に対するピニオンギヤ74の摺動部におけるギヤ軸線方向端部(エッジ部)にて焼き付きや偏磨耗の発生を防止することができないばかりか、ピニオンギヤ74とサイドギヤ73L,73Rとの良好な噛合状態を得ることができないという問題がある。
さらに、特許文献1の車両用差動装置によると、ピニオンギヤ74の摺動部がギヤ外周面全体からなる第1摺動部、及びその噛み合い部のギヤ外周面一部からなる第2摺動部(トップランド)によって形成されているため、ピニオンギヤ74の回転位相によってデフケース72(ピニオンギヤ挿入孔75の内周面)からのその摺動部への反力が変動し、安定した差動制限トルクを得ることができないばかりか、ピニオンギヤ74のサイドギヤ73L,73Rに対する噛み合い部のギヤサイズを十分に大きいサイズに設定することができず、トルクバイアス比(Torque Bias Ratio:TBR)を設定する上での自由度を高めることができないという問題もある。
従って、本発明の目的は、ピニオンギヤの摺動部又はその支持面の焼き付きや偏磨耗の発生を抑制することができるとともに、ピニオンギヤとサイドギヤとの良好な噛合状態及び安定した差動制限トルクを得ることができ、かつトルクバイアス比を設定する上での自由度を高めることができる車両用差動装置を提供することにある。
(1)本発明は、上記目的を達成するために、デフケースと、前記デフケース内に回転自在に収容された1対のサイドギヤと、前記1対のサイドギヤにギヤ軸を直交させて噛合し、軸心部にシャフト挿通孔が設けられたギヤ胴部、前記ギヤ胴部の外周側に設けられたギヤ部、及び前記ギヤ部のギヤ背面側に全周にわたって設けられ、かつ前記ギヤ胴部及び前記ギヤ部と一体に前記ギヤ胴部の外側に突出して形成されたギヤ鍔部を有する少なくとも1対のピニオンギヤと、前記シャフト挿通孔を挿通して前記デフケースに支持されたピニオンギヤシャフトとを備え、前記デフケースは、前記ギヤ鍔部の外周面による摺動によって前記少なくとも1対のピニオンギヤを回転自在に支持する第1ピニオンギヤ支持部を有し、前記ピニオンギヤシャフトは、前記シャフト挿通孔の内面による摺動によって前記少なくとも1対のピニオンギヤを回転自在に支持する第2ピニオンギヤ支持部を有し、前記第2ピニオンギヤ支持部が前記第1ピニオンギヤ支持部よりも前記デフケースの回転軸線側に配置されていることを特徴とする車両用差動装置を提供する。
本発明によると、ピニオンギヤの摺動部又はその支持面の焼き付きや偏磨耗の発生を抑制することができるとともに、ピニオンギヤとサイドギヤとの良好な噛合状態及び安定した差動制限トルクを得ることができ、かつトルクバイアス比を設定する上での自由度を高めることができる。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す斜視図である。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図である。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤを説明するために示す斜視図である。図3(a)はピニオンギヤを斜め上方から見た状態を、また図3(b)はピニオンギヤを斜め下方から見た状態をそれぞれ示す。図4は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤを説明するために示す断面図である。
(車両用差動装置の全体構成)
図1及び図2において、符号1で示す車両用差動装置は、エンジントルクを受けて回転するデフケース2と、このデフケース2の回転軸線Oと直交する軸線上に位置するピニオンギヤシャフト50と、このピニオンギヤシャフト50上で互いに並列する1対のピニオンギヤ3,4と、これら1対のピニオンギヤ3,4にギヤ軸を直交させて噛合する1対のサイドギヤ5L,5Rと、これら1対のサイドギヤ5L,5Rの背面側に位置する1対のスラストワッシャ6L,6Rとから大略構成されている。
(デフケース2の構成)
デフケース2は、図1及び図2に示すように、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5R・スラストワッシャ6L,6Rを収容するための空間部2Aを内部に有し、全体が1ピースの部材によって形成されている。
デフケース2には、図1及び図2に示すように、回転軸線Oに沿って開口する車軸挿通孔9L,9R、これら車軸挿通孔9L,9Rの軸線と直交する方向に軸線をもつギヤ・シャフト支持部10,11、及びこれらギヤ・シャフト支持部10,11のうち一方のギヤ・シャフト支持部10の軸線回りに等間隔(180°)をもって並列するピン取付孔2b,2bが設けられている。また、デフケース2には、図1に示すように、回転軸線Oに関して対称な領域であって、ギヤ・シャフト支持部10,11から円周方向(回転軸線Oの回り)に等間隔をもって離間する部位に位置するサイドギヤ通過孔12L,12Rが設けられている。デフケース2の左方車軸側には、図1及び図2に示すように、回転軸線Oと直交する平面内で円周方向に沿う円環状のリングギヤ取付用フランジ13が一体に設けられている。
車軸挿通孔9L,9Rは、図2に示すように、回転軸線Oに沿う方向に開口する貫通孔によって形成されている。車軸挿通孔9Lには左側の車軸(図示せず)が、また車軸挿通孔9Rには右側の車軸(図示せず)がそれぞれ挿通されている。車軸挿通孔9L,9Rの内側開口周縁には、スラストワッシャ6L,6Rを受ける球面からなるスラストワッシャ受部9La,9Raが設けられている。
ギヤ・シャフト支持部10,11は、図2に示すように、デフケース2の内外に回転軸線Oと直交する軸線をもって開口し、かつ内側開口部の内径が外側開口部の内径よりも大きい段状の貫通孔(円形孔)によって形成されている。ギヤ・シャフト支持部10,11の内側開口サイズは、ピニオンギヤ3,4の外径と略同一の内径(サイドギヤ5L,5Rの外径より小さい内径)に設定されている。
ギヤ・シャフト支持部10,11の内側開口部の内面は、ピニオンギヤシャフト50の軸線方向においてピニオンギヤ3,4とサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い中心点(ピニオンギヤ3,4からサイドギヤ5L,5Rへのトルク伝達時に両ギヤの歯面が接触する領域における荷重中心)よりもデフケース2の回転軸線Oから遠い位置に配置され、ピニオンギヤ3,4のギヤ鍔部3B,4B(後述)の外周面による摺動面積を実質的に変化させない摺動によってピニオンギヤ3,4を回転自在に支持する第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aで形成されている。
ギヤ・シャフト支持部10,11の外側開口部の内面は、第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aよりもデフケース2の回転軸線Oから遠い位置に配置され、ピニオンギヤシャフト50の両端部を軸線回りに回転不能に、かつ軸線方向に移動不能に支持するピニオンギヤシャフト支持面10B,11Bで形成されている。
ギヤ・シャフト支持部10,11の段状面には、図2に示すように、所定の曲率をもつ球面で形成されたピニオンギヤ受部(頂部)10C,11Cが設けられている。
ピン取付孔2b,2bは、図2に示すように、第1ピニオンギヤ支持部10の内周面に回転軸線Oに沿って開口されている。ピン取付孔2b,2bには、ピニオンギヤシャフト50のピン挿通孔50Dを挿通するピン52の両端部が固定されている。これにより、ピニオンギヤシャフト50がデフケース2にピン52を介して支持されている。このため、ピニオンギヤシャフト50がその軸線回りに回り止めされ、かつ軸線方向に抜け止めされている。
サイドギヤ通過孔12L,12Rは、図1に示すように、平面非円形状の開口部を有する貫通孔によって形成されている。そして、その開口サイズは、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5Rをデフケース2内に挿入し得るようなサイズに設定されている。
(ピニオンギヤシャフト50の構成)
ピニオンギヤシャフト50は、図2に示すように、ピニオンギヤ3,4のシャフト挿通孔3D,4D(後述)の内面による摺動によってピニオンギヤ3,4を回転自在に支持する第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bを有し、ピニオンギヤ3,4(シャフト挿通孔3D,4D)を挿通してデフケース2(ギヤ・シャフト支持部10,11)のピニオンギヤシャフト支持面10B,11Bに支持されている。ピニオンギヤシャフト50とピニオンギヤシャフト支持面10B,11Bとの間には実質的には隙間がなく、ピニオンギヤシャフト50は、デフケース2に対して相対移動不能に固定されている。第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bは、それぞれが第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aとピニオンギヤシャフト50の軸線方向に沿って並列し、かつギヤ・シャフト支持部10,11から所定の間隔をもって離間する位置に配置されている。第2ピニオンギヤ支持面50A,51Bの少なくとも一部は、ピニオンギヤシャフト50の軸線方向においてピニオンギヤ3,4とサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い中心点よりもデフケース2の回転軸線Oに近い位置に配置されている。
(ピニオンギヤ3,4の構成)
ピニオンギヤ3,4は、略同一の構成であるため、例えばピニオンギヤ3のみについて説明する。なお、ピニオンギヤ4については、各部位の符号をピニオンギヤ3の各部位の符号に対応して付し(例えば、ピニオンギヤ4のギヤ胴部にはピニオンギヤ3のギヤ胴部3Aに対応して4Aを、またピニオンギヤ4のギヤ鍔部にはピニオンギヤ3のギヤ鍔部3Bに対応して4Bをそれぞれ付す。)、その説明は省略する。
ピニオンギヤ3は、図3(a),(b)及び図4に示すように、中心軸線をギヤ軸線Cとするギヤ胴部3A、このギヤ胴部3Aの外側に突出する第1被支持部としてのギヤ鍔部3B、及びこれらギヤ胴部3A,ギヤ鍔部3Bのサイドギヤ側に位置するギヤ部3C(サイドギヤ5L,5Rとの噛み合い部)を有する無底筒状の傘歯車からなり、図2に示すようにギヤ・シャフト支持面10の第1ピニオンギヤ支持面10A及びピニオンギヤシャフト50の第2ピニオンギヤ支持面50Aに回転自在に支持されている。ピニオンギヤ3としては、ギヤ部3Cの歯数が例えば7枚(通常は9又は10枚)の歯車が用いられる。
ギヤ胴部3Aは、図2に示すように、その軸心部(中心軸線を含む部位)にピニオンギヤシャフト50を挿通させるシャフト挿通孔3Dを有し、全体が略円環状の第1ギヤ胴部30a及び略截頭円錐形状の第2ギヤ胴部31aからなる円筒体によって形成されている。
シャフト挿通孔3Dは、図4に示すように、各内径が互いに異なる大中小3つの内面を有する段状孔によって形成されている。シャフト挿通孔3Dの内面のうち内径の最も小さい内面は、他の内面よりもデフケース2の回転軸線Oに近い位置に配置され、ピニオンギヤシャフト50の第2ピニオンギヤ支持面50Aを摺動する第2被支持部としての第2摺動面30Aで形成されている。シャフト挿通孔3Dの内面のうち内径の最も大きい内面は、第2摺動面30Aと比べてデフケース2の回転軸線Oから遠い位置に配置され、ピニオンギヤシャフト50の外周面を摺動しない非摺動面31Aで形成されている。シャフト挿通孔3Dの内面のうち中間径(最大径と最小径との間の径)の内面は、第2摺動面30Aと非摺動面31Aとの間に配置され、ピニオンギヤシャフト50の外周面を摺動しない非摺動面32Aで形成されている。シャフト挿通孔3Dのギヤ背面側開口部は、ギヤ軸線方向中間部からギヤ背面側に向かって漸次広がる開口部によって形成されている。
ここで、「ギヤ背面」とは、ピニオンギヤ3のギヤ軸線方向両端面のうちデフケース2の回転軸線Oから遠い位置に配置される端面のことをいう。
第1ギヤ胴部30aはギヤ胴部3Aのギヤ背面側に、また第2ギヤ胴部31aはギヤ胴部3Aのギヤ先端面側(ギヤ胴部3Aの軸線方向においてギヤ背面側とは反対の側)にそれぞれ配置されている。第1ギヤ胴部30aの外周面にはギヤ鍔部3Bが、また第2ギヤ胴部31aの外周面にはギヤ部3Cの歯元がそれぞれ配置されている。
ギヤ鍔部3Bは、図2に示すように、第1ギヤ胴部30aの外周面に全周にわたって一体に設けられ、全体がギヤ軸線方向に沿って外径を均一な寸法とする円環体によって形成されている。そして、ギヤ胴部3Aと共にピニオンギヤ3における断面略T字状のギヤ基部(ピニオンギヤ3において、ギヤ部3Cを除く部位)として機能するように構成されている。
ギヤ基端部の屈曲部Aは、図4に示すように、その厚さt1がギヤ鍔部3Bの最大厚さt2と略同一の寸法(t1≒t2)に設定されている。これにより、ギヤ基端部において剛性の均一化に貢献することができる。
ギヤ鍔部3Bの外周面は、図2及び図4に示すように、ギヤ・シャフト支持面10の第1ピニオンギヤ支持面10Aを摺動する第1被支持部としての第1摺動面30Bで形成されている。
ギヤ鍔部3Bの背面は、図2及び図4に示すように、ギヤ・シャフト支持部10のピニオンギヤ受部10Cに適合し、かつピニオンギヤ受部10Cを摺動する第3被支持部としての第3摺動面31Bで形成されている。
ギヤ部3Cは、図2及び図4に示すように、デフケース2に対する被支持部としての摺動部を含まず、ギヤ鍔部3Bよりもデフケース2の回転軸線Oに近い位置に配置されている。
ギヤ部3Cのギヤ背面側端縁は、その一部がギヤ鍔部3Bのギヤ先端側端面に一体に設けられている。すなわち、ギヤ部3Cの歯先円直径D1は、ギヤ鍔部3Bの外径D(D1>D)よりも大きい寸法に設定されている。これにより、ギヤ部3Cの歯面サイズを大きい寸法に設定してギヤ部3Cとサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い領域を広くすることができ、トルクバイアス比を設定する上での自由度を高めることができる。また、ギヤ鍔部3Bがギヤ部3Cの補強部材として機能するため、サイドギヤ5L,5Rからの荷重によってピニオンギヤ3に作用する応力を分散するとともに、ギヤ部3Cの歯数を削減してギヤ部3Cの各ギヤ歯の曲げ強さ(歯面強度)を高めることができる。これにより、ピニオンギヤ3とサイドギヤ5L,5Rとの噛合位置の変動を低減することができ、安定した差動制限トルクを得ることができる。さらに、ギヤ部3Cの歯数を削減して曲げ強さが高められることは、ピニオンギヤ全体のサイズを大きいサイズに設定する必要がなくなり、デフケース2の大型化を阻止することができる。
ここで、本実施の形態に示す車両用差動装置1におけるピニオンギヤ3の(1)応力分散効果及び(2)歯数削減効果につき、図2,図5及び図6を用いて考察する。
(1)応力分散効果についての考察
本考察は、ピニオンギヤ3,4としてギヤ鍔部3B,4Bの各外径(フランジ径)Dが互いに異なる10種の歯車をそれぞれ用いた車両用差動装置を所定の時間にわたって駆動した後、各種歯車のサイドギヤ5L,5Rに対する接触面の応力から歯面強度の測定を実施することにより試みた。
この結果、図2に示すように、ピニオンギヤ3,4におけるギヤ鍔部3B,4Bの外径(フランジ径)D(変数)を百分率、例えばギヤ部3C,4Cの歯先円直径D1(定数)と同一の寸法であるギヤ鍔部3B,4Bのフランジ径DをD=D1=100%で表わすとともに、ギヤ背面側側端縁の歯元円直径D2(定数)と同一の寸法であるギヤ鍔部3B,4Bのフランジ径DをD=D2=0%で表わすと、フランジ径D=23〜83%である歯車の歯面強度が所望の歯面強度を越え、その応力分散効果を有することが確認された。
これに対して、フランジ径Dが0≦D<23%である歯車は全体の剛性が低くなり、所望の歯面強度が得られない。また、フランジ径Dが83%<D≦100%である歯車は部分的に剛性が高くなるため、剛性の低い部位に応力集中が発生し、フランジ径Dが0≦D<23%である歯車と同様に所望の歯面強度が得られない。
このことは、図5に示す通りである。図5は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤの応力分散効果を考察した結果を示すグラフである。図5において、縦軸は歯面強度を、横軸はフランジ径をそれぞれ示す。
(2)歯数削減効果についての考察
本実施の形態では、ピニオンギヤ3,4の歯数を従来よりも少ない7枚に設定しているが、歯数を減らすことができたのは、ピニオンギヤ3,4がその第1摺動面30B,40Bでも支持されるので、ピニオンギヤシャフト50を従来の車両用差動装置のピニオンギヤシャフトよりも細くすることができたためである。本考察では、ピニオンギヤ3,4として各歯数N(N=5〜10)が互いに異なる6種の歯車をそれぞれ用いた車両用差動装置を所定の時間にわたって駆動した後、各種歯車のサイドギヤ5L,5Rに対する接触面の応力から歯面強度の測定を実施することにより試みた。
この結果、歯数NがN=6〜8である歯車の歯面強度が所望の歯面強度を越え、その歯数削減効果を有することが確認された。
これに対して、歯数NがN=5である歯車は所望の歯面強度が得られない。これは、歯元が深く抉られる形状となって歯面強度を高めることができないことによるものと考えられる。また、歯数NがN=9,10である歯車は歯面サイズが小さくなって所望の歯面強度が得られない。
このことは、図6に示す通りである。図6は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤの歯数削減効果を考察した結果を示すグラフである。図6において、縦軸は歯面強度を、横軸は歯数をそれぞれ示す。
なお、歯数NがN=2〜4であるピニオンギヤは、理論的にはその製造加工が可能であるが、現実的には良好な噛み合い率を確保することが困難である。
(サイドギヤ5L,5Rの構成)
サイドギヤ5L,5Rは、図1及び図2に示すように、各外径が互いに異なるボス部5La,5Ra及びギヤ部5Lb,5Rbを有する略環状の歯車(ピニオンギヤ3,4の外径より大きい外径を有し、単一の歯先円錐角をもつ傘歯車)からなり、デフケース2内(空間部2A)に回転自在に支持され、ピニオンギヤ3,4に噛合するように構成されている。サイドギヤ5L,5Rの歯数は、ピニオンギヤ3,4の歯数の2.1倍以上の歯数(例えばピニオンギヤ3,4の歯数7に対しサイドギヤ5L,5Rの歯数15)に設定されている。
サイドギヤ5L,5Rの背面には、スラストワッシャ受部9La,9Raにスラストワッシャ6L,6Rを介して適合する球面からなる摺動部5Lc,5Rcが設けられている。サイドギヤ5L,5R内には、それぞれ左右の車軸(図示せず)が車軸挿通孔9L,9Rに挿通してスプライン嵌合されている。
(スラストワッシャ6L,6Rの構成)
スラストワッシャ6L,6Rは、図2に示すように、サイドギヤ5L,5Rとピニオンギヤ3,4との噛み合いを調整する環状のワッシャからなり、サイドギヤ5L,5Rの背面とスラストワッシャ受部9La,9Raとの間に介装されている。そして、左右の車軸をそれぞれ挿通させてサイドギヤ5L,5Rのスラスト力を受けるように構成されている。スラストワッシャ6L,6Rには、ワッシャ内周部からワッシャ外周部に潤滑油を導入する潤滑油導入路(図示せず)が設けられている。
〔車両用差動装置1の動作〕
車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してデフケース2に入力されると、デフケース2が回転軸線Oの回りに回転する。デフケース2が回転すると、この回転力がピニオンギヤシャフト50を介してピニオンギヤ3,4に伝達され、さらにピニオンギヤ3,4からサイドギヤ5L,5Rに伝達される。この場合、左右のサイドギヤ5L,5Rにはそれぞれ車軸(図示せず)がスプライン嵌合されているため、エンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤ・デフケース2・ピニオンギヤシャフト50・ピニオンギヤ3,4・サイドギヤ5L,5Rを介して左右の車軸に伝達される。
ここで、車両が直進状態であり、左右各車輪と路面との間でスリップが発生しない場合には、エンジン側からのトルクがデフケース2に伝達されると、ピニオンギヤ3,4がサイドギヤ5L,5Rの中心軸回りを自転することなく公転し、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5Rがデフケース2及びピニオンギヤシャフト50と共に一体に回転するため、エンジン側からのトルクが左右各車軸に等分に伝達され、左右各車輪が等しい回転数で回転する。
一方、例えば右側の車輪がぬかるみに落ち込んで路面との間でスリップが発生した場合には、ピニオンギヤ3,4がサイドギヤ5L,5Rと噛合しながら自転するため、エンジン側からのトルクが左右の車軸(車輪)間で差動分配され、左側の車輪がデフケース2の回転速度より低い速度で回転し、右側の車輪がデフケース2の回転速度より高い速度で回転する。
本実施の形態においては、デフケース2にトルクが作用した状態でピニオンギヤ3,4が自転すると、第1摺動面30B,40Bが第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aで摺動し、第2摺動面30A,40Aがピニオンギヤシャフト50の第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bで摺動するため、第1摺動面30B,40Bと第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aとの間及び第2摺動面30A,40Aと第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bとの間に摩擦抵抗を発生する。これら摩擦抵抗によってサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限され、左右各車輪と路面との間で発生するスリップが抑えられる。
この際、図7に示すように、サイドギヤ5L,5R(図2に示す)とピニオンギヤ3,4(ピニオンギヤ3のみ図示)との噛合によってサイドギヤ5L,5Rからピニオンギヤ3,4に荷重Lが作用すると、デフケース2(第1ピニオンギヤ支持面10A,11A)及びピニオンギヤシャフト50(ピニオンギヤ支持面50A,50B)からの反力F1,F2(L=F1+F2)がピニオンギヤ3,4の第1摺動面30B,40B(第1摺動面30Bのみ図示)と第2摺動面30A,40A(第2摺動面30Aのみ図示)に分散して加わるため、ピニオンギヤ3,4がピニオンギヤシャフト50上で安定した(傾斜しない)状態で摺動することになる。図7は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤの安定した動作を説明するために示す断面図である。
この場合、図7において、ピニオンギヤ3,4の軸線Hから第1摺動面30B,40Bまでの距離をR1(定数)で、同じくピニオンギヤ3,4の軸線Hから第2摺動面30A,40Aまでの距離をR2(定数)でそれぞれ表わすと、第1摺動面30B,40Bと第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aとの間に発生する差動制限トルクT1は摩擦係数をμとしてT1=F1×R1×μとなり、また第2摺動面30A,40Aと第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bとの間に発生する差動制限トルクT2は同じく摩擦係数をμとしてT2=F2×R2×μとなり、合計の差動制限トルクTはT=T1+T2となる。ここで、R1>R2であるため、F1とF2が同等であればT1>T2となる。
また、ピニオンギヤ3,4とサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い中心点をPとし、デフケース2の回転軸線O(回転軸線Oと直交する中心線B)から噛み合い中心点Pまでの距離をh(変数)で表わすとともに、噛み合い中心点Pから反力F1,F2の作用点a,bまでのピニオンギヤ軸線方向距離をそれぞれa1,a2(変数)で表わすと、ピニオンギヤ3,4に入力されるトルクが等しい(L×hが一定である)場合には、距離hが大きいほどL=F1+F2が小さくなり、また、距離a1が小さくなってF1×a1=F2×a2よりF1/F2は大きくなる。ここで、距離hはデフケース2への入力トルクの増減や温度の変化等に伴う各部材の変形または変位により変動する。距離hが大きくなると、反力F1が若干大きくなり、差動制限トルクT1が大きくなるとともに、差動制限トルクT2は小さくなる。同様に、距離hが小さくなると、反力F2が若干大きくなり、差動制限トルクT2が大きくなるとともに、差動制限トルクT1は小さくなる。これにより、トルクバイアス比(差動制限トルク)の変動が低減される。また、ピニオンギヤ3,4やサイドギヤ5L,5Rの加工誤差による形状のばらつきによっても距離hが変動し得るが、この場合でもトルクバイアス比(差動制限トルク)の製品ごとのばらつきが低減されることになる。
このことは、図8に示す通りである。図8(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるトルクバイアス比のばらつき低減効果について説明するために示すグラフである。図8(a)はシャフト型の車両用差動装置(本発明)のトルクバイアス比とギヤ噛合位置との関係を、また図8(b)はシャフトレス型の車両用差動装置のトルクバイアス比とギヤ噛合位置との関係をそれぞれ示す。図8(a)及び(b)において、縦軸はトルクバイアス比を、横軸はピニオンギヤとサイドギヤとのギヤ噛合位置をそれぞれ示す。なお、ギヤ噛合位置は、デフケース2の回転軸線Oから噛み合い中心点Pまでの距離hを百分率で表わす。例えば、デフケース2の回転軸線Oから最も遠い位置で両ギヤが噛み合った場合における噛み合い中心点P1(図示せず)までの距離h1をh1=100%で、またデフケース2の回転軸線Oから最も近い位置で両ギヤが噛み合った場合における噛み合い中心点P2(図示せず)までの距離h2をh2=0%でそれぞれ表わす。
本実施の形態に示すシャフト型の車両用差動装置においては、図8(a)から明らかなように、トルクバイアス比(TBR)がTBR=1.5〜1.7(1.6±0.1)とすると、このうち1.0がトルク伝達性能、0.6が差動制限トルクであり、差動制限トルク(TBR)のばらつきが0.6±0.1である。
これに対して、シャフト型の車両用差動装置の性能(差動制限トルク)と同一の大きさ及びトルク伝達容量を有し、ピニオンギヤシャフトを備えていないシャフトレス型の車両用差動装置においては、図8(b)から明らかなように、TBRがTBR=1.5〜1.8(1.6±0.2)とすると、このうち1.0がトルク伝達性能、0.6が差動制限トルクであり、差動制限トルク(TBR)のばらつきが0.6±0.2である。
これより、本実施の形態に示すシャフト型の車両用差動装置におけるTBRのばらつきは、シャフトレス型の車両用差動装置におけるTBRのばらつきの半分(1/2)となり、TBRのばらつき低減効果が得られることが確認された。なお、ピニオンギヤ3,4の形状の最適化や第2摺動面30A,40Aと第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bとの間の摩擦係数を第1摺動面30B,40Bと第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aとの間の摩擦係数よりも大きくすることにより、さらにTBRのばらつきを低減することも可能である。
また、本実施の形態においては、ピニオンギヤ3,4の回転によってサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い面で各々のギヤの回転軸方向のスラスト力が発生する。このスラスト力によりサイドギヤ5L,5Rが互いに離間する方向に移動してスラストワッシャ6L,6Rをスラストワッシャ受部9La,9Raに圧接するため、スラストワッシャ6L,6Rとスラストワッシャ受部9La,9Raとの間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によってもサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限される。さらに、ピニオンギヤ3,4に発生するスラスト力によりピニオンギヤ3,4の第3摺動面31B,41Bがデフケース2のピニオンギヤ受部10C,11Cに圧接するため、ピニオンギヤ3,4の自転に対する摩擦抵抗が発生し、これによってもサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限される。
[第1の実施の形態の効果]
以上説明した第1の実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
(1)ピニオンギヤ3,4の第1摺動面30B,40Bがデフケース2の第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aで、その第2摺動面30A,40Aがピニオンギヤシャフト50の第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bでそれぞれ支持されているため、ピニオンギヤ3,4の傾きを確実に抑制することができるため、ピニオンギヤ3,4又はその支持面(特にピニオンギヤのエッジ部)の焼き付きや偏磨耗の発生を抑制することができるとともに、ピニオンギヤ3,4とサイドギヤ5L,5Rとの良好な噛合状態を得ることができる。
(2)デフケース2の第1ピニオンギヤ支持面30B,40Bがギヤ鍔部3B,4Bのみを支持する構造であるため、またギヤ部3C,4Cの歯先円直径D1がギヤ鍔部3B,4Bの外径D2(D1>D2)よりも大きい寸法に設定されているため、ギヤ部3C,4Cの歯面サイズを大きい寸法に設定してギヤ部3C,4Cとサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い領域を広くすることができ、トルクバイアス比を設定する上での自由度を高めることができる。
(3)ギヤ鍔部3B,4Bがギヤ部3C,4Cの補強部材として機能するため、サイドギヤ5L,5Rからの荷重によってピニオンギヤ3,4に作用する応力を分散するとともに、ギヤ部3C,4Cの歯数を削減してギヤ部3C,4Cの曲げ強さを高めることができる。これにより、ピニオンギヤ3とサイドギヤ5L,5Rとの噛合位置の変動を低減することができ、安定した差動制限トルクを得ることができる。
(4)ギヤ部3C,4Cの歯数を8枚以下の歯数に削減してその曲げ強さが高められることは、ピニオンギヤ全体のサイズを大きいサイズに設定する必要がなくなり、デフケース2の大型化を阻止することができる。
[第2の実施の形態]
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図である。図9において、図2と同一又は同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図9に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置91は、シャフト挿通孔3D,4Dの両軸線方向両端部(エッジ部)のうちギヤ背面側端部が取り除かれたピニオンギヤ300,400を備えた点に特徴がある。
このため、ピニオンギヤ300,400におけるシャフト挿通孔3D,4Dは、第2摺動面30A,40A及び非摺動面300A,400Aからなる内面を有し、ギヤ背面側開口部がギヤ中間部からギヤ背面側に向かって漸次広がるラッパ状の開口部によって形成されている。
非摺動面300A,400Aは、ピニオンギヤシャフト50の外周面を摺動せず、第2摺動面30A,40Aにそれぞれ連接するテーパ面301a,401a、及びこれらテーパ面301a,401aとギヤ鍔部3B,4Bのギヤ背面側端面とにそれぞれ連接するなだらかな曲面302a,402aで形成されている。
[第2の実施の形態の効果]
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果(1)〜(4)に加え、次に示す効果が得られる。
ピニオンギヤ300,400におけるシャフト挿通孔3D,4Dのギヤ背面側開口部がなだらかな曲面302a,402aを有するラッパ状の開口部によって形成されているため、ピニオンギヤ3,4の剛性が均一化され、第1の実施の形態に示すピニオンギヤ3,4と比べて一層高い歯面強度を得ることができる。
以上、本発明の車両用差動装置を上記の各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
(1)各実施の形態では、ギヤ鍔部3B,4Bがギヤ軸線方向に沿って外径を均一の寸法とする円環体によって形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ギヤ軸線方向に沿って外径が異なる寸法(例えば外周面を傾斜面)とする円環体によってギヤ鍔部を形成してもよい。すなわち要するに、本発明におけるピニオンギヤのギヤ鍔部がギヤ軸線方向寸法を周方向に沿って均一な寸法とする円環体によって形成されていればよい。この場合、デフケースには、ギヤ鍔部の外周面(第1摺動面)に適合する支持面(第1ピニオンギヤ支持面)が設けられている。
(2)各実施の形態では、ギヤ部3C,4Cの歯数が7個である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、6又は8個の歯数をもつギヤ部であっても本実施の形態と同様の効果を奏する。
(3)各実施の形態では、ピニオンギヤ3,4(ピニオンギヤ300,400)が2個(1対)デフケース2内に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、3個以上のピニオンギヤをデフケース内に配置してもよい。
(4)各実施の形態では、図4に示したように、ピニオンギヤ3のシャフト挿通孔3Dにおける第2摺動面30Aの径を他の部分の径よりも小さくすることにより、第2摺動面30Aのみがピニオンギヤシャフト50と摺動するように構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばシャフト挿通孔3Dにおける非摺動面32Aの径を第2摺動面30Aの径と同一にし、ピニオンギヤシャフト50の第2摺動面30Aに対向する部分の径を他の部分よりも大きくすることにより第2摺動面30Aのみがピニオンギヤシャフト50と摺動するように構成してもよい。
(5)各実施の形態では、デフケース2が1ピースの部材によって形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、複数のケースエレメントからなるデフケースであっても勿論よい。
本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す斜視図。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図。 (a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤを説明するために示す斜視図。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤを説明するために示す断面図。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤの応力分散効果を考察した結果を示すグラフ。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤの歯数削減効果を考察した結果を示すグラフ。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤの安定した動作を説明するために示す断面図。 (a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるトルクバイアス比のばらつき低減効果について説明するために示すグラフ。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図。 従来の車両用差動装置を説明するために示す断面図。
符号の説明
1…車両用差動装置
2…デフケース、2A…空間部、2b…ピン取付孔
3,4…ピニオンギヤ、3A,4A…ギヤ胴部、30a,40a…第1ギヤ胴部、31a,41a…第2ギヤ胴部、30A,40A…第2摺動面、31A,41A…非摺動面、32A,42A…非摺動面、3B,4B…ギヤ鍔部、30B,40B…第1摺動面、31B,41B…第3摺動面、3C,4C…ギヤ部、3D,4D…シャフト挿通孔
5L,5R…サイドギヤ、5La,5Ra…ボス部、5Lb,5Rb…ギヤ部、5Lc,5Rc…摺動部
6L,6R…スラストワッシャ
9L,9R…車軸挿通孔、9La,9Ra…スラストワッシャ受部
50…ピニオンギヤシャフト、50A,50B…第2ピニオンギヤ支持面、50D…ピン挿通孔
10,11…ギヤ・シャフト支持部、10A,11A…第1ピニオンギヤ支持面、10B,11B…ピニオンギヤシャフト支持面、10C,11C…ピニオンギヤ受部
12L,12R…サイドギヤ通過孔
13…リングギヤ取付用フランジ
91…車両用差動装置
300,400…ピニオンギヤ、300A,400A…非摺動面、301a,401a…テーパ面、302a,402a…曲面
A…屈曲部
C…ギヤ軸線
O…回転軸線
D…ギヤ鍔部の外径(フランジ径)
D1…歯先円直径
D2…歯元円直径
t1…屈曲部の厚さ
t2…ギヤ鍔部の最大厚さ
L…荷重
F1,F2…反力
H…軸線
R1,R2,h,a1,a2…距離
P…噛み合い中心点
71…車両用差動装置
72…デフケース、72A…収容空間
73L,73R…サイドギヤ
74…ピニオンギヤ
75…ピニオンギヤ挿入孔
76L,76R…車軸挿入孔
79L,79R…ボス部
80L,80R…ギヤ部
81L,81R…車軸
82L,82R…摺動部材
83…ピニオンギヤ保持板
84…ピニオンギヤシャフト

Claims (7)

  1. デフケースと、
    前記デフケース内に回転自在に収容された1対のサイドギヤと、
    前記1対のサイドギヤにギヤ軸を直交させて噛合し、軸心部にシャフト挿通孔が設けられたギヤ胴部、前記ギヤ胴部の外周側に設けられたギヤ部、及び前記ギヤ部のギヤ背面側に全周にわたって設けられ、かつ前記ギヤ胴部及び前記ギヤ部と一体に前記ギヤ胴部の外側に突出して形成されたギヤ鍔部を有する少なくとも1対のピニオンギヤと、
    前記シャフト挿通孔を挿通して前記デフケースに支持されたピニオンギヤシャフトとを備え、
    前記デフケースは、前記ギヤ鍔部の外周面による摺動によって前記少なくとも1対のピニオンギヤを回転自在に支持する第1ピニオンギヤ支持部を有し、
    前記ピニオンギヤシャフトは、前記シャフト挿通孔の内面による摺動によって前記少なくとも1対のピニオンギヤを回転自在に支持する第2ピニオンギヤ支持部を有し、
    前記第2ピニオンギヤ支持部が前記第1ピニオンギヤ支持部よりも前記デフケースの回転軸線側に配置されている
    ことを特徴とする車両用差動装置。
  2. 前記第1ピニオンギヤ支持部は、前記ピニオンギヤシャフトの軸線方向において前記少なくとも1対のピニオンギヤと前記1対のサイドギヤとの噛み合い中心点よりも前記デフケースの回転軸線から遠い位置に配置され、
    前記第2ピニオンギヤ支持部の少なくとも一部は、前記ピニオンギヤシャフトの軸線方向において前記少なくとも1対のピニオンギヤと前記1対のサイドギヤとの噛み合い中心点よりも前記デフケースの回転軸線に近い位置に配置されている請求項1に記載の車両用差動装置。
  3. 前記第1ピニオンギヤ支持部と前記第2ピニオンギヤ支持部とは、前記ピニオンギヤシャフトの軸線方向において所定の間隔をもって配置されている請求項1に記載の車両用差動装置。
  4. 前記少なくとも1対のピニオンギヤの前記シャフト挿通孔は、各内径が互いに異なる大小2つの内面を有する段状孔によって形成され、前記大小2つの内面のうち内径の小さい内面が前記第2ピニオンギヤ支持部を摺動する請求項1に記載の車両用差動装置。
  5. 前記ピニオンギヤシャフトは、前記第2ピニオンギヤ支持部が前記ピニオンギヤの前記シャフト挿通孔内における他の部位よりも大径に形成されていることにより、前記第2ピニオンギヤ支持部のみが前記ピニオンギヤのシャフト挿通孔の内面に摺動する請求項1に記載の車両用差動装置。
  6. 前記ピニオンギヤシャフトは、その軸線回りに回転不能に前記デフケースに支持されている請求項1に記載の車両用差動装置。
  7. 前記ピニオンギヤの前記ギヤ鍔部と前記デフケースの前記第1ピニオンギヤ支持部との摺動面積は前記ピニオンギヤの回転に伴って実質的に変化しない請求項1に記載の車両用差動装置。
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