JP2010138451A - エッチング液、及びエッチング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をエッチングする際に、第一膜と第二膜との両方に対してエッチング能力があり、かつ、第一膜と第二膜に対するエッチングレートの差異が少ないエッチング液と、前記積層膜を一つのエッチング液で効率良くエッチングすることが可能なエッチング方法を提供する。
【解決手段】第1のエッチング液は、塩酸と、硝酸とを含む水溶液とする。この水溶液は、燐酸をさらに含むと好ましい。また、第2のエッチング液は、塩酸と、塩鉄(III)とを含む水溶液とする。この水溶液も、燐酸をさらに含むと好ましい。これら第1のエッチング液又は第2のエッチング液を用いて、基板11上にニッケル合金からなる第一膜12と、銅又はその合金からなる第二膜13とを順に重ねてなる積層金属膜14をエッチングする。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子部品向けの金属薄膜をエッチングするためのエッチング液、及びエッチング方法に係り、詳しくは、基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をウェットエッチングするためのエッチング液と、このエッチング液を用いたエッチング方法に関する。
従来、電子部品の金属配線膜にはアルミニウム(Al)等の低抵抗材料が使用されてきたが、TFT液晶ディスプレイの大型化が進むにつれ、より低抵抗の材料である銅(Cu)の使用が有望視されている。ところが銅を金属配線として用いる場合、ガラスやシリコン(Si)等の基板との密着性が不十分となる問題や、基板をシリコンとしたときに生じる基板への銅の拡散という問題がある。そのため、たとえば、図2に示すように、まず基板11上に下地となるニッケル(Ni)合金等の第一膜12を作製し、その上に銅や銅合金等の第二膜13を積層させることで積層金属膜14を作製する手法が用いられている。このような手法で作製された積層金属膜14上に所定のマスク(不図示)を設けて、エッチング処理することにより、所望のパターニングされた配線等が得られる。
しかしながら、一般的に、銅をエッチングするために用いるエッチング液では、銅が他の金属と積層された場合、他の金属を殆どエッチングせず、銅のみをエッチングする。ゆえに、基板11上に設けた積層金属膜14に対してエッチング処理を施す際、上層部(第二膜13)を構成する銅向けのエッチング液と、下層部(第一膜12)を構成するニッケル向けのエッチング液とが必要となる。ところが、上層部(第二膜13)をエッチングするエッチング液と、下層部(第一膜12)をエッチングするエッチング液とが異なると、処理プロセスの増加や生産コストの増加といった問題がある。また、銅(第二膜13)とニッケル(第一膜12)の両方を同時にエッチングできるエッチング液であっても、個々のエッチングレート(エッチング速度)が異なると、たとえば上層部に比べて下層部が多くエッチングされてしまう現象(アンダーカット)等が起こり、積層膜の割れや剥離の原因となる。
したがって、これらの問題を解決するために、銅とニッケルの両方を同時にエッチング可能で、かつ、エッチングレートの差異が少ないエッチング液の開発が期待されていた。
特開2000−104183号公報 特開2005−154899号公報
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をエッチングする際に、第一膜と第二膜との両方に対してエッチング能力があり、かつ、第一膜と第二膜に対するエッチングレートの差異が少ないエッチング液を提供することを目的とする。
また、本発明は、基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜を一つのエッチング液で効率良くウェットエッチングすることが可能なエッチング方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に係るエッチング液は、基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をウェットエッチングするために用いるエッチング液であって、塩酸と、硝酸とを含む水溶液からなることを特徴とする。
本発明の請求項2に係るエッチング液は、請求項1に記載のエッチング液において、前記水溶液が、塩酸溶液を70〜90質量%とし、残部を硝酸溶液としてなる液組成であることを特徴とする。
本発明の請求項3に係るエッチング液は、請求項1に記載のエッチング液において、前記水溶液が、燐酸をさらに含むことを特徴とする。
本発明の請求項4に係るエッチング液は、請求項3に記載のエッチング液において、前記水溶液が、塩酸溶液を45〜68質量%、硝酸溶液を20〜30質量%、及び、残部を燐酸溶液としてなる液組成であることを特徴とする。
本発明の請求項5に係るエッチング液は、基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をウェットエッチングするために用いるエッチング液であって、塩酸と、塩鉄とを含む水溶液からなることを特徴とする。
本発明の請求項6に係るエッチング液は、請求項5に記載のエッチング液において、前記水溶液が、塩酸溶液を90〜95質量%とし、残部を塩鉄溶液としてなる液組成であることを特徴とする。
本発明の請求項7に係るエッチング液は、請求項5に記載のエッチング液において、前記水溶液が、燐酸をさらに含むことを特徴とする。
本発明の請求項8に係るエッチング液は、請求項7に記載のエッチング液において、前記水溶液が、塩酸溶液を17〜50質量%、塩鉄溶液を20〜28質量%、及び、残部を燐酸溶液としてなる液組成であることを特徴とする。
本発明の請求項9に係るエッチング方法は、基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をウェットエッチングする方法であって、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のエッチング液を用い、前記第一膜として、ニッケルを50原子%以上含み、残部が、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、チタン、ジルコニウム、クロム、ケイ素、タングステン、タンタル、インジウム、錫、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、鉄より選択された少なくとも1以上の元素からなるニッケル合金を用いることを特徴とする。
本発明の請求項10に係るエッチング方法は、請求項9に記載のエッチング方法において、前記第一膜として、ニッケルとバナジウムから構成され、該バナジウムの含有量を7〜50原子%としたニッケル合金を用いることを特徴とする。
本発明の請求項1に係るエッチング液は、塩酸と、硝酸とを含む水溶液からなる。この水溶液としたエッチング液は、基板上に積層されたニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜の両方に対して、同レベルのエッチング能力を有する。ゆえに、本発明に係るエッチング液を用いることにより、一つのエッチング液で異なる材質からなる積層膜を一括してエッチングすることができる。また、この水溶液としたエッチング液は、第一膜と第二膜の両方に対して、同レベルのエッチング能力を有するので、第一膜が第二膜より過度にエッチングされることにより生じるアンダーカット等の不具合な現象の発生を著しく抑制することができる。ゆえに、本発明に係るエッチング液は、積層膜の割れや剥離のない信頼性の高い金属配線を作製することに寄与する。
また、本発明の請求項3に係るエッチング液は、燐酸をさらに含むことにより、第一膜と第二膜の両方に対して、同レベルのエッチング能力を維持しつつ、エッチング速度を2桁(数十〜数百(Å/sec)変更できる。ゆえに、エッチング対象物の厚さや形状に応じて、好適なエッチング速度の選択が可能となり、ひいてはプロセス条件の自由度が広がる。ゆえに、本発明によれば、汎用性に優れたエッチング液の提供が可能となる。
本発明の請求項5に係るエッチング液は、塩酸と、塩鉄とを含む水溶液からなる。この水溶液としたエッチング液は、基板上に積層されたニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜の両方に対して、同レベルのエッチング能力を有する。ゆえに、本発明に係るエッチング液を用いることにより、一つのエッチング液で異なる材質からなる積層膜を一括してエッチングすることができる。また、この水溶液としたエッチング液は、第一膜と第二膜の両方に対して、同レベルのエッチング能力を有するので、第一膜が第二膜より過度にエッチングされることにより生じるアンダーカット等の不具合な現象の発生を著しく抑制することができる。ゆえに、本発明に係るエッチング液は、積層膜の割れや剥離のない信頼性の高い金属配線を作製することに寄与する。
また、本発明の請求項7に係るエッチング液は、燐酸をさらに含むことにより、第一膜と第二膜の両方に対して、同レベルのエッチング能力を維持しつつ、エッチング速度を2桁(数十〜数百(Å/sec)変更できる。ゆえに、エッチング対象物の厚さや形状に応じて、好適なエッチング速度の選択が可能となり、ひいてはプロセス条件の自由度が広がる。ゆえに、本発明によれば、汎用性に優れたエッチング液の提供が可能となる。
本発明の請求項9に係るエッチング方法は、上述した本発明のエッチング液を用い、基板上に、ニッケルを50原子%以上含み、残部が、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、チタン、ジルコニウム、クロム、ケイ素、タングステン、タンタル、インジウム、錫、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、鉄より選択された少なくとも1以上の元素からなるニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をウェットエッチングする。ゆえに、本発明に係るエッチング液を用いることにより、特定の元素を含むニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をエッチングする際に、第一膜と第二膜との両方をエッチングすることが出来る。
以下、本発明を実施したエッチング液の一例について説明する。
まず、本実施の形態においてウェットエッチングする積層膜は、図2に示すように、基板11上に第一膜12と、第二膜13とを順に重ねたものであり、パターニングして電子部品向けの金属配線を作製するための金属薄膜(以下、「積層金属膜」という。)14である。
基板11は、積層金属膜14が作製されるのに必要とされる強度などの性質を備えたものであれば特に制限はなく、たとえば、ガラスやシリコン等からなるものを用いることができる
第一膜12は、基板11上に作製された下地となる膜であり、ニッケル(Ni)に所望の元素が含まれたニッケル合金よりなる。この第一膜12を構成するニッケル合金としては、たとえば、ニッケルを50原子%以上含み、残部が、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、コバルト(Co)、鉄(Fe)より選択された少なくとも1以上の元素からなるニッケル合金とすることができる。具体的には、第一膜12は、ニッケルとバナジウムから構成され、このバナジウムの含有量を7〜50原子%としたニッケル合金とすることができる。
第二膜13は、第一膜12を被覆するように積層された上層の膜であり、銅(Cu)又はその合金からなる。
したがって、本発明では、基板11上に、ニッケル合金からなる第一膜12と、銅又はその合金からなる第二膜13とを順に重ねてなる積層金属膜14が作製された試料10をウェットエッチングするエッチング液と、このエッチング液を用いたエッチング方法について説明する。
なお、積層金属膜14を構成する第一膜12や第二膜13の膜厚は特に制限はなく、使用目的に応じて適宜決定すれば良い。たとえば、第一膜12は300Å〜1000Å程度の厚さとすることができる。また、第二膜13は1000Å〜5000Å程度の厚さとすることができる。ここで、10Åは1nmである。
また、本発明において、塩酸は「HCl」を、硝酸は「HNO」を、塩鉄は「FeCl」を、燐酸は「HPO」を、それぞれ意味する。
<第一の実施の形態>
上述したような構成の試料10において積層金属膜14をウェットエッチングする第一のエッチング液1Aは、塩酸(HCl)と硝酸(HNO)とを含む水溶液からなる。この水溶液としたエッチング液は、第一膜12であるニッケル合金と、第二膜13である銅との両方に対して、同レベルのエッチング能力あり、このエッチング液を用いることにより、一つのエッチング液で第一膜12と第二膜13の両方を一括してエッチングすることができる。また、第一のエッチング液1Aは、塩酸溶液を70〜90質量%とし、残部を硝酸溶液としてなる液組成であることが好ましい。このような液組成とすることにより、第一膜12であるニッケル合金と、第二膜13である銅の両方に対して、同レベルのエッチング能力を有するものとなり、第一膜12であるニッケル合金が第二膜13である銅より過度にエッチングされることにより生じるアンダーカット等の不具合な現象の発生を著しく抑制することができる。これにより、積層金属膜14の割れや剥離のない信頼性の高い金属配線を作製することができる。
また、本発明に係る第一のエッチング液1Aは、さらに燐酸(HPO)を含むことが好ましい。このときの水溶液は、第一膜12であるニッケル合金と、第二膜13である銅の両方に対して、同レベルのエッチング能力を維持しつつ、エッチング速度を調整することができる。また、燐酸を含む第一のエッチング液1Aは、塩酸溶液を45〜68質量%、硝酸溶液を20〜30質量%、及び、残部を燐酸溶液としてなる液組成であることが好ましい。このような液組成とすることにより、第一膜12であるニッケル合金と、第二膜13である銅のエッチング速度を2桁(数十〜数百(Å/sec)変更できる。これにより、エッチング対象物の厚さや形状に応じて、好適なエッチング速度の選択が可能となり、ひいてはプロセス条件の自由度が広がり、適宜所望のパターン作製を行なうことが可能となる。
<第二の実施の形態>
また、上述したような構成の試料10において積層金属膜14をウェットエッチングする第二のエッチング液1Bは、塩酸(HCl)と塩化鉄(FeCl)とを含む水溶液からなる。この水溶液としたエッチング液は、第一膜12であるニッケル合金と、第二膜13である銅との両方に対して、同レベルのエッチング能力あり、このエッチング液を用いることにより、一つのエッチング液で第一膜12と第二膜13の両方を一括してエッチングすることができる。また、第二のエッチング液1Bは、塩酸溶液を90〜95質量%とし、残部を塩鉄溶液としてなる液組成であることが好ましい。このような液組成とすることにより、第一膜12であるニッケル合金と、第二膜13である銅の両方に対して、同レベルのエッチング能力を有するものとなり、第一膜12であるニッケル合金が第二膜13である銅より過度にエッチングされることにより生じるアンダーカット等の不具合な現象の発生を著しく抑制することができる。これにより、積層金属膜14の割れや剥離のない信頼性の高い金属配線を作製することができる。
また、本発明に係る第二のエッチング液1Bは、さらに燐酸(HPO)を含むことが好ましい。このときの水溶液は、第一膜12であるニッケル合金と、第二膜13である銅の両方に対して、同レベルのエッチング能力を維持しつつ、エッチング速度を調整することができる。また、燐酸を含む第二のエッチング液1Bは、塩酸溶液を17〜50質量%、塩鉄溶液を20〜28質量%、及び、残部を燐酸溶液としてなる液組成であることが好ましい。このような液組成とすることにより、第一膜12であるニッケル合金と、第二膜13である銅のエッチング速度を2桁(数十〜数百(Å/sec)変更できる。これにより、エッチング対象物の厚さや形状に応じて、好適なエッチング速度の選択が可能となり、ひいてはプロセス条件の自由度が広がり、適宜所望のパターン作製を行なうことが可能となる。
以上のようなエッチング液を利用してエッチングを行うことにより、基板上に、ニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層金属膜のウェットエッチングにおいて、第一膜と第二膜との両方を一つの液でエッチングすることが可能である。また、第一膜と第二膜とのエッチングレートの差異が少ないものとすることができるので、積層膜の割れや剥離のない金属配線を作製するパターニングを行うことができる。また、これにより微細パターンを精度良く形成でき、寸法安定性にも優れたエッチング処理物を得ることができる。したがって、信頼性の高い金属配線のパターニングが可能となる。
次に、上述した第一のエッチング液1A又は第二のエッチング液1Bを用いて、積層金属膜14をウェットエッチングする方法について、図面に基づき説明する。
まず、基板11上に、ニッケル合金からなる第一膜12と、銅又はその合金からなる第二膜13とを順に重ねることにより積層金属膜14が作製された試料10を準備する。
次いで、図1(a)に示すように、パターニングを形成するために、試料10において金属配線として残す部分の第二膜13上にレジスト層15を形成してマスクをし、試料20とする。
次に、エッチング液1(1A,1B)を調整し、エッチング液1の液温を任意の温度に暖める(調整する)。エッチング液1の液温は特に限定されるものではないが、たとえばウォームバスにて25〜50℃の温度にエッチング液を温めると良い。これにより、目的とするエッチング速度やエッチング性能が得られる。
そして、図1(b)に示すように、積層金属膜14上にレジスト層15を形成した試料20を、エッチング液1(1A,1B)に浸す。これにより、レジスト層15が無い部分の積層金属膜14はエッチング液1(1A,1B)に溶解し、除去される。
なお、試料20をエッチング液1(1A,1B)に浸す代わりに、図3に示すように、試料20に対して、レジスト層15を形成した側よりエッチング液1(1A,1B)を噴霧するようにしても良い。
その後、試料20は、レジスト層15がある部分の積層金属膜14が溶解せずに残り、レジスト層15を除去することで、図1(c)に示すように、金属配線2が作製されることになる。
次に、多数の実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実験例に限定されるものではない。
<第一の実験>
まず、本発明に係るエッチング液を用いることにより、第一膜を構成するニッケル合金と、第二膜を構成する銅との両方に対してエッチング能力があることを確認するための実験を以下のとおり行った。
初めに、20mm×20mmの大きさをしたガラス基板の一面に、スパッタ装置を用いてニッケル合金からなる第一膜を1000Å厚みで全面に成膜し、実験用の試料(以下、「ニッケル合金膜試料」という。)を準備した。この第一膜は、ニッケルとバナジウムから構成され、バナジウムの含有量を7原子%とし、残部をニッケルとしたニッケル合金からなる。
また、20mm×20mmの大きさをした別のガラス基板の一面に、スパッタ装置を用いて銅からなる第二膜を3000Å厚みで全面に成膜し、実験用の別の試料(以下、「銅膜試料」という。)を準備した。
次に、使用薬液を任意の組成で混合し、実験用のエッチング液を準備した。エッチング液として用いる使用薬液は、35〜37%塩酸溶液、60%硝酸溶液、85%燐酸溶液、および、34〜36%塩鉄(III)溶液である。
実験例として用いた各エッチング液の液組成は、以下の表1に示す通りである。
実験例1が、塩酸溶液を99質量%、硝酸溶液を1質量%としてなる液組成、実験例2が、塩酸溶液を98質量%、硝酸溶液を2質量%としてなる液組成、実験例3が、塩酸溶液を95質量%、硝酸溶液を5質量%としてなる液組成、実験例4が、塩酸溶液を90質量%、硝酸溶液を10質量%としてなる液組成、実験例5が、塩酸溶液を80質量%、硝酸溶液を20質量%としてなる液組成、実験例6が、塩酸溶液を75質量%、硝酸溶液を25質量%としてなる液組成、実験例7が、塩酸溶液を70質量%、硝酸溶液を30質量%としてなる液組成、実験例8が、塩酸溶液を60質量%、硝酸溶液を40質量%としてなる液組成である。すなわち、実験例1乃至8は、上述した第一のエッチング液の効果を確認するものである。
また、実験例9が、塩酸溶液を68質量%、硝酸溶液を28質量%、燐酸溶液を4質量%としてなる液組成、実験例10が、塩酸溶液を60質量%、硝酸溶液を30質量%、燐酸溶液を10質量%としてなる液組成、実験例11が、塩酸溶液を55質量%、硝酸溶液を28質量%、燐酸溶液を17質量%としてなる液組成、実験例12が、塩酸溶液を50質量%、硝酸溶液を25質量%、燐酸溶液を25質量%としてなる液組成、実験例13が、塩酸溶液を45質量%、硝酸溶液を20質量%、燐酸溶液を35質量%としてなる液組成である。すなわち、これら実験例9乃至13は、上述した第一のエッチング液に燐酸を含む構成とした際の効果を確認するものである。
また、実験例14が、塩酸溶液を95質量%、塩鉄溶液を5質量%としてなる液組成、実験例15が、塩酸溶液を90質量%、塩鉄溶液を10質量%としてなる液組成、実験例16が、塩酸溶液を84質量%、塩鉄溶液を16質量%としてなる液組成、実験例17が、塩酸溶液を77質量%、塩鉄溶液を23質量%としてなる液組成、実験例18が、塩酸溶液を72質量%、塩鉄溶液を28質量%としてなる液組成、実験例19が、塩酸溶液を67質量%、塩鉄溶液を33質量%としてなる液組成である。すなわち、実験例14乃至19は、上述した第二のエッチング液の効果を確認するものである。
さらに、実験例20が、塩酸溶液を50質量%、塩鉄溶液を25質量%、燐酸溶液を25質量%としてなる液組成、実験例21が、塩酸溶液を20質量%、塩鉄溶液を20質量%、燐酸溶液を60質量%としてなる液組成、実験例22が、塩酸溶液を17質量%、塩鉄溶液を28質量%、燐酸溶液を55質量%としてなる液組成である。すなわち、実験例20乃至22は、上述した第二のエッチング液に燐酸を含む構成とした際の効果を確認するものである。
次いで、実験例1乃至22に示す液組成のエッチング液を各々、ウォームバスにて25℃の液温に設定し、各エッチング液の中に、予め準備した実験用のニッケル合金膜試料[(Si基板/Ni合金膜(1000Å)]及び銅膜試料[(Si基板/Cu膜(3000Å)]をそれぞれ浸漬させた。そして、目視にて膜が無くなるまでの時間をそれぞれ計測し、1秒当たりにエッチングされる膜厚を求め、エッチング速度としてその結果を表1に示した。また、求めたそれぞれのエッチング速度から、第一膜(ニッケル合金膜)と第二膜(銅膜)との速度差を求め、併せて表1に示した。
さらに、第一膜を構成するニッケル合金と、第二膜を構成する銅との両方にエッチング能力があることを確認するエッチング特性評価として、上記で求めた速度差が50Å/sec以内のときを○印、同速度差が100Å/sec以内のときを△印、同速度差が100Å/secを超えるときを×印として表し、併せて表1に示した。
なお、上述した各実験例と比較するため、各溶液を単独で用いた場合、すなわち、比較例1(塩酸溶液100質量%としてなる液組成)、比較例2(硝酸溶液100質量%としてなる液組成)、比較例3(塩鉄溶液100質量%としてなる液組成)を検証した。また、比較のために、上記4つの溶液(塩酸溶液、硝酸溶液、燐酸溶液、塩鉄溶液)を含有しない、市販されているCu膜用のエッチング液(従来品と呼ぶ)についても検証した。この従来品としては、硫酸、硝酸、酢酸、水を液組成とする、関東化学社製の混酸Cu−01)を用いた。
そして、これらのエッチング液を用いて、上記同様に測定した第一膜(Ni合金膜)と第二膜(Cu膜)のそれぞれのエッチング速度、その速度差、及びエッチング特性評価の結果を、併せて表1に示した。速度差の欄において、括弧内に数字を記載した場合は、第二膜より第一膜の方がエッチング速度が大きいことを示す。
Figure 2010138451
表1から、以下の点が明らかになった。
(A1)第一のエッチング液(エッチング液が塩酸と硝酸とを含む水溶液)を用いてウェットエッチングを行った実験例1乃至8においては、塩酸溶液が70〜95質量%、硝酸溶液が5〜30質量%からなる実験例3乃至7における液組成とした場合は、第一膜を構成するニッケル合金と、第二膜を構成する銅との両方に対して、同レベルのエッチング能力があることが分かった。また、実験例3乃至7における液組成において、第一膜と第二膜に対するエッチングレートの差異も、比較例より少なくなることが分かった。しかも、実験例3乃至7における液組成では、第一膜であるニッケル合金のエッチング速度と、第二膜である銅のエッチング速度との速度差が100Å以下となり好ましく、特に、塩酸溶液が75〜90質量%、硝酸溶液が10〜25質量%からなる実験例4乃至6における液組成では、同速度差が50Å以下となり、より好ましいことが分かった。
(A2)第一のエッチング液に燐酸をさらに含む水溶液を用いてウェットエッチングを行った実験例9乃至13においては、燐酸をさらに含むことで、エッチング速度を高めに調整できることが分かった。しかも、塩酸溶液が45〜68質量%、硝酸溶液が20〜30質量%、及び燐酸溶液が4〜35質量%からなる実験例9乃至13における液組成とした場合は、第一膜であるニッケル合金のエッチング速度と、第二膜である銅のエッチング速度との速度差が100Å以下となり好ましく、特に、塩酸溶液が50〜68質量%、硝酸溶液が25〜30質量%、及び燐酸溶液が4〜25質量%からなる実験例9乃至12における液組成では、同速度差が50Å以下となり、より好ましいことが分かった。
(A3)第二のエッチング液(エッチング液が塩酸と塩鉄(III)とを含む水溶液)を用いてウェットエッチングを行った実験例14乃至19においては、塩酸溶液が90〜95質量%、塩鉄溶液が5〜10質量%からなる実験例14及び15における液組成とした場合は、第一膜を構成するニッケル合金と、第二膜を構成する銅との両方に対して、同レベルのエッチング能力があることが分かった。また、実験例14及び15における液組成において、第一膜と第二膜に対するエッチングレートの差異も、比較例より少なくなることが分かった。しかも、実験例14及び15における液組成では、第一膜であるニッケル合金のエッチング速度と、第二膜である銅のエッチング速度との速度差が100Å以下となり、好ましいことが分かった。
(A4)第二のエッチング液に燐酸をさらに含む水溶液を用いてウェットエッチングを行った実験例20乃至22においては、燐酸をさらに含むことで、エッチング速度を低めに調整できることが分かった。しかも、塩酸溶液が17〜50質量%、塩鉄溶液が20〜28質量%、及び燐酸溶液が20〜60質量%からなる実験例21、22における液組成とした場合は、エッチング速度が数十Å/secであり、かつ、第一膜であるニッケル合金のエッチング速度と、第二膜である銅のエッチング速度との速度差が数Å程度となることから、より好ましいことが分かった。
<第二の実験>
次に、本発明に係るエッチング液を用いることで、ニッケル(Ni)とバナジウム(V)から構成されたニッケル合金よりなる第一膜を下地として作製し、その上に銅よりなる第二膜を積層する積層金属膜をエッチングする際に、第一膜と第二膜との両方を一つのエッチング液で効率良くエッチングすることができることを確認するための実験を以下のとおり行った。
初めに、20mm×20mmの大きさをしたガラス基板の一面に、スパッタ装置を用いてニッケルからなる第一膜を下地となる膜として1000Å厚みで全面に成膜した。この第一膜は、ニッケルとバナジウムから構成され、バナジウムの含有量をそれぞれ7原子%、10原子%、30原子%、50原子%とし、何れも残部をニッケルとしたニッケル合金からなる。なお、これらのニッケル合金特性が、何れも非磁性であることは予め確認した。
引き続き、これら第一膜を覆うように、スパッタ装置を用いて銅からなる第二膜を3000Å厚みで全面にそれぞれ成膜し、実験用の試料を準備した。
そして、同じエッチング液の中にこれら実験用の試料をそれぞれ浸漬し、第一の実験のときと同様に、目視にて膜が無くなるまでの時間を計測してエッチング速度を求め、さらに、速度差を求め、求めた速度差が50Å/sec以内のときを○印、同速度差が100Å/sec以内のときを△印、同速度差が100Å/secを超えるときを×印として表し、表2に示した。なお、本実験に用いたエッチング液は、表1の実験例21に示す液組成のものである。
Figure 2010138451
表2から、以下の点が明らかになった。
(B1)バナジウムの含有量を7〜50原子%としたニッケル合金を用いた第一膜とすることで何れも、基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅からなる第二膜とを順に重ねてなる積層金属膜を一つのエッチング液で効率良くエッチングできることが分かった。
(B2)第一膜であるニッケル合金のエッチング速度と、第二膜である銅のエッチング速度との速度差が50Å以下であり、第一膜と第二膜に対するエッチングレートの差異が少なく、より好ましいことが確認された。
また、バナジウムの含有量を7〜50原子%としたニッケル合金は何れも、合金特性が非磁性であることから、積層金属膜を構成する第一膜をマグネトロンスパッタで成膜することもできる利点を備えている。
なお、バナジウムを7〜50原子%含むニッケル合金は、合金特性が非磁性であるので、積層金属膜を構成する第一膜をマグネトロンスパッタで成膜することもできる。
<第三の実験>
次に、本発明に係るエッチング液を用いることで、ニッケルと、バナジウム以外の添加元素から構成されたニッケル合金よりなる第一膜を下地として作製し、その上に銅よりなる第二膜を積層する積層金属膜をエッチングする際に、第一膜と第二膜との両方を一つのエッチング液で効率良くエッチングすることができることを確認するための実験を以下のとおり行った。
初めに、20mm×20mmの大きさをしたガラス基板の一面に、スパッタ装置を用いてニッケルからなる第一膜を下地となる膜として1000Å(100nm)厚みで全面に成膜した。
第一膜としては、以下の表3に示すとおり、添加元素をバナジウム(V:含有量7原子%)としたニッケル合金(実験例30)の他に、Vに代えて1種類の添加元素を含むニッケル合金の例(実験例40−51)について検討した。すなわち、添加元素をアルミニウム(Al)とし、含有量が10原子%としたニッケル合金、添加元素をモリブデン(Mo)とし、含有量が7原子%としたニッケル合金、添加元素をチタン(Ti)とし、含有量が10原子%としたニッケル合金、添加元素をジルコニウム(Zr)とし、含有量が10原子%としたニッケル合金、添加元素をクロム(Cr)とし、含有量が9原子%としたニッケル合金、添加元素をケイ素(Si)とし、含有量が10原子%としたニッケル合金、添加元素をタングステン(W)とし、含有量が7原子%としたニッケル合金、添加元素をタンタル(Ta)とし、含有量が9原子%としたニッケル合金、添加元素をインジウム(In)とし、含有量が10原子%としたニッケル合金、添加元素を錫(Sn)とし、含有量が8原子%としたニッケル合金、添加元素を亜鉛(Zn)とし、含有量が19原子%としたニッケル合金、添加元素をマンガン(Mn)とし、含有量が25原子%としたニッケル合金からなる。
この他に、第一膜として、2種類の添加元素を含有させた例(実験例52−54)についても検討した。すなわち、添加元素をバナジウム(V)及び銅(Cu)とし、含有量がバナジウム7原子%、銅20原子%としたニッケル合金、添加元素をバナジウム及びコバルトとし、含有量がバナジウム7原子%、コバルト10原子%としたニッケル合金、添加元素をバナジウム及び鉄とし、含有量がバナジウム7原子%、鉄10原子%としたニッケル合金からなる。
なお、上述したニッケル合金組成は何れも、非磁性であることを予め確認した。引き続き、これら第一膜を覆うように、スパッタ装置を用いて銅からなる第二膜を3000Å(300nm)厚みで全面にそれぞれ成膜し、実験用の試料を準備した。
そして、同じエッチング液の中にこれら実験用の試料をそれぞれ浸漬し、第一の実験のときと同様に、目視にて膜が無くなるまでの時間を計測してエッチング速度を求め、さらに、速度差を求め、求めた速度差が50Å/sec以内のときを○印、同速度差が100Å/sec以内のときを△印、同速度差が100Å/secを超えるときを×印として表し、表3に示した。なお、本実験に用いたエッチング液は、表1の実験例21に示す液組成のものである。
Figure 2010138451
表3から、以下の点が明らかになった。
(C1)バナジウム、アルミニウム、モリブデン、チタン、ジルコニウム、クロム、ケイ素、タングステン、タンタル、インジウム、錫、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、鉄より選択された少なくとも1以上の元素からなるニッケル合金を用いた第一膜とすることで、基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅からなる第二膜とを順に重ねてなる積層金属膜を一つのエッチング液で効率良くエッチングできることが分かった。
(C2)第一膜であるニッケル合金のエッチング速度と、第二膜である銅のエッチング速度との速度差が50Å以下であり、第一膜と第二膜に対するエッチングレートの差異が少なくより好ましいことが分かる。
また、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、チタン、ジルコニウム、クロム、ケイ素、タングステン、タンタル、インジウム、錫、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、鉄より選択された少なくとも1以上の元素を所定量含むニッケル合金は、合金特性が非磁性であることから、積層金属膜を構成する第一膜をマグネトロンスパッタで成膜することもできる利点を備えている。
本発明に係るエッチング液は、薄膜トランジスタのゲート電極、ソース・ドレイン電極、その他電子部品の製造時のウェットエッチング処理に好適に利用できる。
本発明に係るエッチング液を用い、積層膜をウェットエッチングする方法を順に示す断面図。 本発明に係るエッチング液が処理対象とする積層膜の構造を示す断面図。 図1とは異なる方法を示す断面図。
符号の説明
1(1A,1B) エッチング液、2 金属配線、10 試料、11 基板、12 第一膜(下地膜)、13 第二膜(上層膜)、14 積層金属膜、15 レジスト膜、20 試料。

Claims (10)

  1. 基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をウェットエッチングするために用いるエッチング液であって、
    塩酸と、硝酸とを含む水溶液からなることを特徴とするエッチング液。
  2. 前記水溶液は、塩酸溶液を70〜90質量%とし、残部を硝酸溶液としてなる液組成であることを特徴とする請求項1に記載のエッチング液。
  3. 前記水溶液は、燐酸をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のエッチング液。
  4. 前記水溶液は、塩酸溶液を45〜68質量%、硝酸溶液を20〜30質量%、及び、残部を燐酸溶液としてなる液組成であることを特徴とする請求項3に記載のエッチング液。
  5. 基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をウェットエッチングするために用いるエッチング液であって、
    塩酸と、塩鉄とを含む水溶液からなることを特徴とするエッチング液。
  6. 前記水溶液は、塩酸溶液を90〜95質量%とし、残部を塩鉄溶液としてなる液組成であることを特徴とする請求項5に記載のエッチング液。
  7. 前記水溶液は、燐酸をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のエッチング液。
  8. 前記水溶液は、塩酸溶液を17〜50質量%、塩鉄溶液を20〜28質量%、及び、残部を燐酸溶液としてなる液組成であることを特徴とする請求項7に記載のエッチング液。
  9. 基板上にニッケル合金からなる第一膜と、銅又はその合金からなる第二膜とを順に重ねてなる積層膜をウェットエッチングする方法であって、
    請求項1乃至8のいずれか1項に記載のエッチング液を用い、
    前記第一膜として、ニッケルを50原子%以上含み、残部が、バナジウム、アルミニウム、モリブデン、チタン、ジルコニウム、クロム、ケイ素、タングステン、タンタル、インジウム、錫、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、鉄より選択された少なくとも1以上の元素からなるニッケル合金を用いることを特徴とするエッチング方法。
  10. 前記第一膜として、ニッケルとバナジウムから構成され、該バナジウムの含有量を7〜50原子%としたニッケル合金を用いることを特徴とする請求項9に記載のエッチング方法。
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