JP2010138012A - 単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法 - Google Patents

単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】直径及び厚さの大きな単結晶窒化アルミニウムを製造する方法を提供。
【解決手段】[A]希土類及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素とアルミニウムとを含む複合酸化物又は複合酸窒化物、並びに窒化アルミニウムを含んでなる原料、或いは該複合酸化物又は該複合酸窒化物の原料物質(但し、窒化アルミニウムを除く)、並びに窒化アルミニウムを含む原料の近傍に無機単結晶基板を配置する工程;[B]0.9×105Pa以上の非酸化性ガス雰囲気中で、前記原料温度を1600〜2000℃とすると共に前記無機単結晶基板の温度を1580℃以上で当該原料より低い温度とする工程;[C]0.9×105Pa以上の非酸化性ガス雰囲気中で、前記原料温度を1600〜2000℃に維持すると共に、前記無機単結晶基板の温度を1580℃以上で該原料より低温度に維持し、前記無機単結晶基板上に単結晶窒化アルミニウムを形成する方法。
【選択図】図4

Description

本発明は、単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、特定の原料を特定の雰囲気中で昇華させる単結晶窒化アルミニウムの製造方法に関する。
単結晶窒化アルミニウムは、半導体デバイスの基板などへの応用が期待されている。この単結晶窒化アルミニウムの製造方法として、非特許文献1には、窒化アルミニウムセラミックスプレートと炭化珪素基板とを用いたPVT法(Physical Vapor Transport Method、物理蒸気輸送法)が開示されている。この方法では、まず、加熱により炭化珪素基板上にエッチピットが生成し、該ピットで窒化アルミニウムの成長が始まる。次いで、上記ピットが窒化アルミニウムで埋まり、その上に窒化アルミニウムの六角錐が生成する。さらに、上記六角錐上に窒化アルミニウムのマイクロロッドが生成し、その後、マイクロロッドのラテラル成長によりマイクロロッドが結合して、窒化アルミニウムの板状体となる。このように、最終的には、炭化珪素基板上に、窒化アルミニウムの六角錐を介して窒化アルミニウムの板状体が形成される。ここで、マイクロロッドの形成は、1700℃又は1750℃、400〜850mbの窒素雰囲気中で行われ、板状体の形成は、1800℃、300mbの窒素雰囲気中で行われている。また、得られた板状体の直径は10mmであり、厚さは120μmである。
G.R. Yazdi, et al., Journal of Crystal Growth, "Fabrication of free-standing AlN crystals by controlled microrod growth", doi:10.1016/j.jcrysgro.2007.11.124
しかしながら、上記の製造方法では、製造できる窒化アルミニウムの板状体の径及び厚さが小さいという問題を有している。従って、本発明の目的は、面積及び厚さの大きな単結晶窒化アルミニウム板状体が形成できる製造方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究した結果、特定の原料を特定の雰囲気中で昇華させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係る単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法は、[A](1)希土類元
素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素とアルミニウムとを含む複合酸化物又は複合酸窒化物と、窒化アルミニウムと、を含んでなる原料又は(2)該複合
酸化物或いは該複合酸窒化物の原料物質(但し、窒化アルミニウムを除く)と、窒化アルミニウムと、を含んでなる原料を準備し、該原料の近傍に無機単結晶基板を配置する準備工程;[B]0.9×105Pa以上の非酸化性ガス雰囲気中で、上記原料及び上記無機
単結晶基板を加熱して、上記原料の温度を1600〜2000℃とすると共に上記無機単結晶基板の温度を1580℃以上であって当該原料より低い温度とする昇温工程;並びに[C]0.9×105Pa以上の非酸化性ガス雰囲気中で、上記原料の温度を1600〜
2000℃に維持すると共に、上記無機単結晶基板の温度を1580℃以上であって当該原料より低い温度に維持して、上記無機単結晶基板上に単結晶窒化アルミニウム板状体を形成する単結晶窒化アルミニウム形成工程を含んでなることを特徴とする。
上記原料は、希土類元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物からなる焼結助剤を用いて、酸化アルミニウムを含む窒化アルミニウム原料
粉末を焼結した焼結体であることが好ましい。
上記非酸化性ガスは、窒素ガス又は窒素ガス及び炭素ガスを含む混合ガスであることが好ましい。
上記昇温工程及び上記単結晶窒化アルミニウム形成工程において、前記無機単結晶基板の表面に該無機単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が形成され、次いで、該突起上に単結晶窒化アルミニウムの板状体が形成されることが好ましい。
上記無機単結晶基板は、炭化珪素単結晶基板であることが好ましい。
本発明に係る積層体は、炭化珪素単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が表面に形成された炭化珪素単結晶基板と、当該突起上に形成された単結晶窒化アルミニウムからなる板状体とからなることを特徴とする。
単結晶窒化アルミニウム自立基板の製造方法は、上記積層体を準備する工程、及び該積層体から前記板状体を分離する工程を含んでなることを特徴とする。
本発明に係る単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法によれば、面積及び厚さの大きな単結晶窒化アルミニウム板状体が形成できる。
[単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法]
<実施形態1>
本発明に係る単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法(実施形態1)では、特定の圧力、雰囲気及び温度条件で、特定の原料及び無機単結晶基板(単にベース基板ともいう。)を加熱して単結晶窒化アルミニウム板状体を製造する。図1に、上記単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法に用いる装置の一例を示す。装置10における炉本体12の中央には、原料及びベース基板を配置するための坩堝(るつぼ)14が設けられており、炉本体12の外側には、坩堝14を加熱するための高周波コイル16が設けられている。また、加熱の際に炉本体12内の圧力及び雰囲気を調整するため、ガスを排気するガス排気口18及びガスを導入するガス吸気口20が炉本体12に設けられている。なお、図示していないが坩堝14は外部と均圧をとれる構造となっている。
以下、本発明に用いる装置の一例を示す図を参照しながら、本発明について具体的に説明する。なお、無機単結晶基板(ベース基板)としては、六方晶単結晶基板が好適に使用される。中でも単結晶AlNとの格子定数のミスマッチが小さいばかりでなく、耐熱性が高く、しかも後述するように昇温工程において多角錐状又は多角錐台状の突起が形成され易いため、その上に形成されたAlN単結晶板状体の分離が容易となるという理由から、単結晶炭化珪素(SiC)基板を使用することが好ましい。そこで、以下に説明する例では、ベース基板として単結晶SiC基板を用いている。
(準備工程[A])
準備工程[A]では、(1)希土類元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素とアルミニウム(Al)とを含む複合酸化物又は複合酸窒化物と、窒化アルミニウム(AlN)と、を含んでなる原料(本明細書において原料(a1)ともいう)の近傍に炭化珪素(SiC)単結晶基板を配置する。
ここで原料近傍とは、炭化珪素(SiC)単結晶基板が原料と直接接触せず、尚且つ工程[C]において原料から発生した蒸気が炭化珪素(SiC)単結晶基板に十分に到達する距離を意味する。このときの炭化珪素(SiC)単結晶基板と原料との距離は使用する原
料の種類や加熱温度等によって若干変わるが、通常は0.5〜50mm、好ましくは1〜30mmである。この距離は、例えば図1に示すようにカーボン製などのスペーサー23によって調整する。
原料(a1)は、複合酸化物又は複合酸窒化物及びAlNを含んでなる。この複合酸化物又は複合酸窒化物に用いられる希土類元素としては、Y、Ce、Ho、Yb、Gd、Nd、Sm、Dyが挙げられ、アルカリ土類金属元素としては、Be、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。希土類元素及びアルカリ土類金属元素は、単独で用いても2種以上を用いてもよい。しかしながら、これらの中でも、AlN成長速度の観点から希土類元素、特にYを含むことが好ましい。この希土類元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素とAlとを含む複合酸化物及び複合酸窒化物として好適なものを例示すれば、2Y23・Al23、Y23・Al23、3Y23・5Al23、YAlONなどを挙げることができる。これら複合酸化物及び複合酸窒化物は、単独で存在していてもよいが、焼結時における高温の反応は複雑であるため、一般的には種類の異なる複数のものが混合して存在する。原料にAlNと共に上記複合酸化物又は複合酸窒化物が含まれていると、これら複合酸化物又は複合酸窒化物はそれ自体が昇華してAlN単結晶の原料となるばかりでなく、原料(a1)に含まれるAlNの昇華を促進する働きもあると考えられ、後述するように比較的低温での加熱でも、大きく厚い単結晶AlNの板状体を得ることが可能となる。
原料(a1)中、希土類元素及びアルカリ土類金属元素の合計量が、0.076〜38.2質量%(酸化物換算で0.1〜50質量%)であることが好ましく、0.76〜22.9質量%(酸化物換算で1〜30質量%)であることがより好ましい。ここで、希土類元素及びアルカリ土類金属元素は、原料(a1)中で複合酸化物又は複合酸窒化物として存在している。また、希土類元素及びアルカリ土類金属元素の量は、後述する蛍光X線分析法によって求められ、複合酸化物又は複合酸窒化物の存在は、X線回折測定によって確認することができる。
一般に、AlN粉末を焼結する場合には希土類元素の酸化物やアルカリ土類金属元素の酸化物からなる焼結助剤が使用され、粒界においてAlNとこれら焼結助剤との高温反応により、Alの複合酸化物または複合酸窒化物が形成されることが知られている。また、このとき、僅かなAl23などのアルミニウム酸化物の存在により上記反応が起こりやすくなることも知られている。したがって、言い換えれば、原料(a1)のより具体的な態様としては、希土類元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物からなる焼結助剤を用いて、酸化アルミニウム(Al23)を含む窒化アルミニウム(AlN)原料粉末を焼結した焼結体が挙げられる。そして、このようにして得られた焼結体には、粒子状のAlNと粒界に存在する複合酸化物及び複合酸窒化物とが含まれている。
上記焼結体の形成に使用される焼結助剤において、希土類元素及びアルカリ土類金属元素としては、上述の元素が挙げられる。これら元素を含む化合物からなる焼結助剤としては、Y23、CeO2、Ho23、Yb23、Gd23、Nd23、Sm23、Dy23
、CaOが用いられるが、結晶成長速度の観点から希土類元素の酸化物、特に酸化イットリウムが好適に用いられる。上記焼結助剤は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
また、焼結助剤の比表面積(BET比表面積)は、焼結性の観点から1〜50m2/g
であることが好ましい。
AlNと前記焼結助剤を高温で反応させて複合酸化物又は複合酸窒化物を形成する場合、焼結助剤に含まれる酸素原子がAlNの酸化にも使用されるため、Al23などのアル
ミニウム酸化物は必ずしも必要ではないが、前記したように反応の促進効果があるため存在することが好ましい。AlN粉末は、通常空気中で酸化され、粒子の表面から約100nmの範囲がAl23となり、AlN粉末に対して0.1〜1質量%の酸素を含むため、通常入手可能なAlN粉末は、特にAl23を添加しなくても該酸化物を含んでいる。従って、上記AlN粉末を、Al23を含むAlN原料粉末として好適に使用できる。
この場合、該粉末に含まれる表面酸化によって形成される酸化アルミニウム含量が粉末質量の0.1質量%未満である場合には、焼結性をより向上させ、更に前記複合酸化物又は複合酸窒化物の形成を容易にすることを目的として、Al23を添加して焼結することが好ましい。Al23の添加量はAlN粉末とAl23粉末との混合粉末の質量を基準として酸素含量が0.1〜1質量%となる量であればよいが、炭素を含む窒素雰囲気中で工程〔C〕を行う場合には、この範囲を越えて添加してもよい。このような雰囲気中で焼成を行う場合には、Al23は還元窒化されてAlN単結晶の原料ともなるからである。
原料(a1)のより具体的な態様となる前記焼結体は、例えば以下のようにして製造される。まず、焼結助剤とAlN原料粉末とを、AlN原料粉末100質量部に対して通常0.1〜30質量部の量で混合する。焼結助剤とAlN原料粉末との混合は、公知の方法によって行うことができる。例えば、ボールミル等の混合機によって、乾式又は湿式により混合する方法が好適に用いられる。また、湿式混合では、アルコール類、炭化水素類等の分散媒を使用するが、分散性の点でアルコール類、炭化水素類を用いることが好ましい。なお、この混合にあたっては、焼結助剤の水分吸着又は凝集を生じないように、ドライエア中で保存され、必要により真空乾燥された焼結助剤を、AlN原料粉末と直ちに混合することが好ましい。
次に、得られた混合粉末を、所望の原料(a1)が得られるような形状に成形する。上記成形は公知の方法で行うことができるが、強度の高い成形体とし、歩留まりを高めるためには、有機バインダーを用いて成形を行うことが好ましい。
例えば、上記混合粉末を有機バインダー及び必要により分散剤、可塑剤、溶媒などと混合して成形用スラリー又はペーストを調製し、押出成形法、射出成形法、鋳込み成形法などによってこの成形用スラリー又はペーストから成形体を作製する。また、成形用スラリーから顆粒を得てから圧縮成形法により成形体を作製してもよい。
有機バインダーとしては、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂、ポリメタクリルブチル等のアクリル樹脂等が挙げられる。このような有機バインダーは、AlN原料粉末100質量部当り、通常0.1〜30質量部、好ましくは1〜15質量部の量で使用される。また、分散剤としては、グリセリン化合物類などが挙げられ、可塑剤としては、フタル酸エステル類などが挙げられる。溶媒には、イソプロピルアルコールや炭化水素類などが使用される。
最後に、成形体を脱脂(脱バインダー)した後焼成する。脱脂は、空気中、窒素中、水素中等の雰囲気で加熱して行うことができる。また、脱脂温度は、有機バインダーの種類によって異なるが、通常300〜900℃、好ましくは300〜700℃である。
焼成は、複合酸化物又は複合酸窒化物を形成させるために、N2ガスなどの不活性ガス
雰囲気中、1650〜1950℃で、1〜10時間実施することが好ましい。
なお、成形体の作製において、有機バインダーを用いずに圧縮成形法により混合粉末を成形してもよい。例えば、上記混合粉末を一軸成形機にて仮成形してグリーン体を製造し、これをCIP(冷間等方圧)成形機にて1〜4t/cm2で加圧成形することにより、
上記成形体を作製してもよい。この場合、成形体は脱脂を行わずに焼成される。
上記工程を経て、原料(a1)として用いられる焼結体が得られる。
実施形態1に用いるSiC単結晶基板としては、6H−SiC単結晶基板、4H−SiC単結晶基板が挙げられる。単結晶AlNとの格子定数のミスマッチがより小さく、単結晶AlNの板状体の歪みが抑えられることから6H−SiC単結晶基板がより好適に用いられる。SiC単結晶基板の大きさは、通常25mm2〜10000mm2、好ましくは100mm2〜2500mm2であり、厚さは、通常100〜1000μm、好ましくは200〜800μmである。
準備工程[A]では、上記原料の近傍に上記SiC単結晶基板を配置する。具体的には、るつぼ14内において、原料(a1)の近傍にSiC単結晶基板22を配置する(図1参照)。原料(a1)の表面とSiC単結晶基板22の表面との距離を0.5〜50mmとすることが好ましい。上記範囲にあると厚みの変動分布が小さい単結晶窒化アルミニウム板状体が得られる。
(昇温工程[B])
昇温工程[B]では、0.9×105Pa以上の非酸化性ガス雰囲気中で、上記原料及
び上記SiC単結晶基板を加熱して、上記原料の温度を1600〜2000℃とすると共に上記SiC単結晶基板の温度を1580℃以上であって当該原料より低い温度とする。これにより、SiC単結晶基板22の表面にSiC単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起24が形成される(図2参照)。なお、所定の温度に達してからも、条件によってはAlN単結晶の形成が直ぐに始まらず前記突起24の形成が継続する場合がある。このような場合、所定の温度に達してから時間が経過しても、AlN単結晶の形成が始まるまでの期間は該昇温工程〔B〕に含まれるものとする。
非酸化性ガス雰囲気の圧力が0.9×105Pa未満の場合には、炭化珪素単結晶基板
の表面に炭化珪素単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が形成され難く、単結晶AlN板状体を形成した場合、該板状体とベース基板との分離が困難となる場合がある。また、ベース基板の温度範囲が上記範囲から外れる場合には、上記突起が形成されにくくなるばかりでなく、引き続き行われる工程[C]における単結晶AlNの成長速度が低下する場合がある。また、ベース基板温度が低いと、突起の形成と単結晶AlNの成長が競争的に起こるようになることが原因であると思われるが、大きな突起が形成され難くなる傾向がある。良好な上記突起が形成され、単結晶AlN板状体とベース基板との分離が容易となるという観点からは、非酸化性ガス雰囲気の圧力を0.9×105〜2×1
5Pa、特に1×105〜1.5×105Paとし、原料の温度を1800〜1990℃
とし、ベース基板温度を1790〜1980℃であって当該原料より10〜100℃、特に20〜70℃低い温度とすることが好ましい。
昇温工程[B]に用いる非酸化性ガスとしては、不活性ガスが使用できるが、AlN単結晶成長速度の観点から、「窒素ガス」又は「窒素ガス及び炭素ガスを含む混合ガス」を使用することが好ましい。「窒素ガス」又は「窒素ガス及び炭素ガスを含む混合ガス」中で加熱することにより、前記複合酸化物や複合酸窒化物が窒化アルミニウムに転化し易くなり、効率よく単結晶窒化アルミニウムを形成することが可能となる。また、上記転化がより起こり易く、比較的低温での加熱でも大きく厚い単結晶AlNの板状体が得られると言う理由から、「窒素ガス及び炭素ガスを含む混合ガス」を使用することがより好ましい。窒素ガスは、純度99.9999%以上であることが好ましい。炭素ガスとしては、カーボンの発生源を共存させ、これを加熱することで発生する炭素ガスが好適に用いられる。カーボンの発生源としては、カーボン製のるつぼ、カーボン製の原料容器、カーボン製の炉本体が挙げられる。また、発生源として、るつぼ中に無定形炭素や黒鉛等のカーボンを共存させてもよい。
昇温工程[B]は、0.9×105Pa以上、好ましくは0.9×105〜2×105
a、特に1×105〜1.5×105Paの非酸化性ガス雰囲気中で行われる。雰囲気及び圧力の制御は、例えば系内の雰囲気ガスをガス排気口18から排気した後に、ガス吸気口20から窒素ガスを上記圧力になるように導入すればよい(図1)。上記圧力は、例えば炉本体に取り付けられた圧力計により測定される。なお、系内の圧力を大気圧とするときはガス排気口を大気開放すればよく、それ以外の圧力に調整する場合には調圧弁或いは所定の圧力に達したときに自動的に開くダンパー等を介して大気開放すればよい。昇温工程[B]の間、圧力は上記範囲にあれば一定であっても、変化させてもよく、圧力は上記調圧弁或いはダンパーで調整することができる。なお、非酸化性ガスとして窒素ガス及び炭素ガスを含む混合ガスを使用する場合には、窒素を使用するとともに、系内に加熱により炭素ガスを発生するカーボン源を存在させておけばよい。
昇温工程[B]において、ベース基板表面の状態が変化し、ベース基板表面にベース基板と同種材料の単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が形成される。このような突起の形成はベース基板の昇華(或いはエッチング)・再析出によるものと考えられる。前記した非特許文献1では、ベース基板のエッチングのみが起こりピットが形成されるとされているが、本発明では雰囲気の圧力が高いため、一旦昇華したものが再析出して突起が形成されると考えられる。後述する工程[C]でこの突起の上に単結晶AlNが成長し柱状体を経て最終的に板状体が形成されることになるが、得られる板状体と突起との接合部の面積は小さく、しかも両者は別の材料からなるため、板状体形成後に板状体を突起から分離するときに分離しやすくなる。例えば非特許文献1ではAlNの六角錐上にAlN板状態が形成されるが、両者は同じ材料であるため分離は難しく、衝撃など外部から力を加えて分離した場合には板状態の一部が抉れてしまうことがある。これに対して、本願発明では突起(例えばSiC)と板状体(AlN)は異質材料なので、このような「抉れ」を起こすことなく容易に両者を分離することができる。
昇温工程[B]における加熱は次のようにして行われる。即ち、高周波コイル16を作動させ、るつぼ14中に配置された上記原料及び上記SiC単結晶基板を上記温度まで加熱する(図1)。上記原料及び上記SiC単結晶基板の温度は、それ自体を直接計測することは極めて困難なため、両者が収められているカーボン製のるつぼを赤外放射温度計により間接的に計測する。
上記圧力及び雰囲気中、上記温度まで加熱すると、最終的に大きく厚い単結晶AlN板状体が得られる。
上記原料及び上記SiC単結晶基板の温度差は、上記原料及び上記SiC単結晶基板の距離を変えることにより調整できる。また、制御系統が独立した2以上のヒーターを用いて調整してもよいし、ヒーターと坩堝との位置関係を調整することにより制御することもできる。
昇温速度は、1〜30℃/minであることが好ましい。このような速度で昇温することにより、結晶性の良い単結晶窒化アルミニウムが効率よく得られる。なお、良質なAlN単結晶を得るためには雰囲気を非酸化性ガス雰囲気としてから加熱(昇温)を開始することが好ましい。
なお、工程[B]でベース基板上に形成される多角錐状又は多角錐台状の突起は、通常底面積が25μm2〜2500μm2であり、高さが5μm〜50μmである。底面積及び高さがこの範囲にあると、単結晶AlN板状体をSiC単結晶基板から切り離しやすい。
また、SiC単結晶基板上に形成される突起の密度は、16〜10000個/mm2
あることが好ましい。密度がこの範囲にあると、板状体をSiC単結晶基板から分離しやすい。なお、突起の数は、走査型電子顕微鏡(SEM)像から突起物の数を直接数えることにより確認できる。
(単結晶窒化アルミニウム形成工程[C])
単結晶窒化アルミニウム形成工程[C]では、0.9×105Pa以上の非酸化性ガス
雰囲気中で、上記原料の温度を1600〜2000℃に維持すると共に、上記SiC単結晶基板の温度を1580℃以上であって当該原料より低い温度に維持して、上記SiC単結晶基板上に単結晶窒化アルミニウム(AlN)を形成する。より具体的には、上記突起24上に単結晶AlNの多角柱26が形成され、最終的に、多角柱がラテラル成長して結合して、単結晶AlNの板状体28が形成される(図3、4参照)。
該工程[C]は、前記工程[B]に引き続き、条件を変えずにそのまま維持してもよいし、前記工程[B]とは異なる条件を採用してもよい。また、工程[C]を行った後に一旦冷却し、再度加熱して工程[C]を行うこともできる。該工程[C]において、ベース基板上(より具体的にはベース基板の前記突起上)への単結晶窒化AlNのデポジットはベース基板温度が低いほど起こりやすい傾向がある。一方、単結晶窒化AlN前駆体供給の観点からは原料温度は高い方が好ましい。したがって、結晶成長速度の観点からは、原料とベース基板の温度差を大きくすることが好ましい。このような理由から、該工程[C]における原料温度を1800〜1990℃とし、ベース基板温度を1750〜1940℃であって当該原料より50〜200℃、特に75〜150℃低い温度とすることが好ましい。
なお、単結晶窒化アルミニウム形成工程[C]において、非酸化性ガス及び圧力については、昇温工程[B]と同様である。
上記温度に維持する時間は、原料及びベース基板の温度、並びに得ようとする板状体の厚さに応じて適宜決定すればよいが、好ましくは30分〜10時間である。
基板の突起上への単結晶AlNのデポジットとしては、加熱により昇華した複合酸化物及び複合酸窒化物の還元窒化により形成された前駆体によるAlNのデポジットが優勢であると考えられる。また、アルミニウム複合酸化物及び複合酸窒化物の昇華によりAlNの昇華が促進され、昇華したAlNのデポジットも同時に起こっていると考えられる。
また、上記突起上に成長する各単結晶AlNの多角柱は、ラテラル成長することにより一体化してベース基板と同等の面積を有する板状体を形成するものであるが、一体化する前の各柱状体を維持した状態で、その断面積は通常10〜2×105μm2であり、厚さ(長さ)は、通常5μm〜3mmである。前記した非特許文献1の図5には六角錐状AlN単結晶の上に成長する柱状AlN単結晶の径および長さと成長時間との関係が示されているが、それによると径は時間と共に太くなるものの長さは約100μm程度で飽和してしまっている。これに対し、本発明では、柱状体の厚さ(長さ)は少なくとも3mm程度までは飽和することがない。従って、本発明によれば、厚く強度の高い単結晶AlN板状体を得ることが可能である。
なお、上記単結晶AlNの多角柱について、X線回折における(002)面のロッキングカーブ半値全幅は通常50〜1000arcsecである。また、上記単結晶AlNの板状体について、上記ロッキングカーブ半値全幅は通常50〜3000arcsecである。ロッキングカーブの半値全幅とは、試料がブラックの回折条件を満たす角度にX線発生装置と検出器とのなす角度を固定して、X線入射角ωを変化させて得られる回折チャートにおいて、最大検出カウント数の50%以上の値をとるωの範囲であり、この値が小さいほど単結晶の品質が高いことを意味する。本発明では、先にSiC単結晶からなる突起
を育成し、その表面に単結晶AlNの板状体を形成しているため、下地結晶との不整合による影響を受け難い。言い換えると、貫通転位や格子歪みの無い高品質の単結晶AlNの板状体が得られる。
以上により、単結晶窒化アルミニウム形成工程[C]が終了したときには、SiC単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が表面に形成されたSiC単結晶基板と、当該突起上に形成された単結晶AlNからなる板状体とからなる積層体が得られる。
なお、上記では、昇温工程[B]において、SiC単結晶基板の表面にSiC単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が形成され、単結晶窒化アルミニウム形成工程[C]において、上記突起上に単結晶AlNの多角柱が形成され、最終的に、多角柱がラテラル成長して結合して、単結晶AlNの板状体が形成される場合について説明した。上記の説明では、昇温工程[B]は、単結晶AlNの成長が開始されるまでの準備段階として位置付けられるものであるが、該工程[B]と後段の工程[C]とを連続して行うときは、両工程で起こっている現象を厳密に区別することが困難な場合もある。上記説明では、便宜上、昇温を開始してから原料及びベース基板の温度が所望の温度に達し、単結晶AlNの成長が開始されるまでの期間を工程[B]とし、単結晶AlNの成長の開始後を工程[C]としているにすぎない。圧力、雰囲気や温度によって異なるが、突起形成の終了時と単結晶AlN成長の開始時を明確に区別することは困難な場合もあり得る。例えばある期間において突起の形成と単結晶AlNの成長が同時に起こっている場合もあり得る。
実際には、圧力、雰囲気や温度によって異なるが、SiC単結晶基板上への突起の形成は、工程[B]の昇温中(恐らく後期)に開始し、所定の温度に達してから約1時間程度の間に終了する場合が多い。そして、その後さらに各温度や雰囲気、圧力を維持し続けると単結晶AlNの成長が始まり、突起上に単結晶AlNの多角柱が形成され、その後多角柱の結合が起こり、単結晶AlNの板状体が形成される。
従って、本発明では、昇温工程[B]及び単結晶窒化アルミニウム形成工程[C]において、まず、SiC単結晶基板の表面にSiC単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が形成され、次いで、該突起上に単結晶AlNの板状体が形成される。言い換えると、工程[B]および[C]において、まず、SiC単結晶基板22の表面にSiC単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起24が形成される(図2参照)。図2では、例として突起は多角錐状のもののみ表している。次に、上記突起24上に単結晶AlNの多角柱26が形成され、最終的に、多角柱がラテラル成長して結合して、単結晶AlNの板状体28が形成される(図3、4参照)。なお、図1と図2、3、4とでは、基板の上下は逆である。即ち、図1ではるつぼに接する面は上であるが、図2、3、4では、るつぼに接する面は下である。
<実施形態2>
実施形態1において用いた原料(a1)の変わりに、(2)上記複合酸化物又は上記複合酸窒化物の原料物質(但し、窒化アルミニウム(AlN)を除く)と、窒化アルミニウムとを含んでなる原料(本明細書において原料(a2)ともいう)を用いてもよい。ここで、上記原料物質とは、例えば、上記焼結体において粒界に存在する複合酸化物又は複合酸窒化物の原料物質、即ち、焼結助剤、Al23及びAlNを意味する。酸素の供給源がある場合には昇温中にAlNはAl23に容易に転化するので、Al23に代えて他の酸化物あるいは水酸化アルミニウムを使用することもできる。
なお、原料(a2)において、AlNは、昇温時に形成される複合酸化物又は複合酸窒化物の原料として必要とされる量以上含まれていることが好ましいことから、原料(a2
)は、「原料物質(但し、窒化アルミニウム(AlN)を除く)と、窒化アルミニウムとを含んでなる原料」としている。「AlNを過剰量含んでいてもよい原料物質」と表現することもできる。上記原料物質(この場合AlNを含む)は昇温工程において反応し、昇華し易い複合酸化物又は複合酸窒化物が形成される。この複合酸化物又は複合酸窒化物はそれ自体が昇華してAlN単結晶の原料となるばかりでなく、原料(a2)に過剰量含まれるAlNの昇華を促進する働きもあると考えられる。したがって、原料(a1)を用いたときと同様に低温での加熱でも、大きく厚い単結晶AlNの板状体が得られる。
言い換えれば、原料(a2)のより具体的な態様としては、希土類元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物と、Al23を含むAlN原料粉末との混合物が挙げられる。
上記化合物は、原料(a1)で焼結助剤に用いられる化合物と同様であり、Al23を含むAlN原料粉末も、原料(a1)で用いられるAlN原料粉末と同様である。
原料(a2)中、焼結助剤に用いられる化合物は合計で0.1〜50質量%、特に1〜30質量%の量で含まれ、Al23を含むAlN原料粉末は50〜99.9質量%、特に70〜99質量%の量で含まれることが好ましい(ここで、焼結助剤に用いられる化合物およびAlN原料粉末の合計は100質量%である。)。これにより、結晶性の良い単結晶窒化アルミニウムが速い速度で効率よく安定して得られる。
準備工程[A]において、混合粉末である原料(a2)を用いるときは、原料(a2)をカーボン製容器30などに入れて配置してもよい(図5参照)。
実施形態2においても、実施形態1と同様に、工程[B]および[C]において、SiC単結晶基板22の表面にSiC単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起24が形成される(図2参照)。次いで、上記突起24上に単結晶AlNの多角柱26が形成され、最終的に、多角柱がラテラル成長して結合して、単結晶AlNの板状体28が形成される(図3、4参照)。即ち、最終的には、SiC単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が表面に形成されたSiC単結晶基板と、当該突起上に形成された単結晶AlNからなる板状体とからなる積層体が得られる。しかしながら、原料(a1)及び原料(a2)を比較すると、原料(a1)を用いた方が、単結晶AlNの板状体がより高い再現性で製造できる。これは、AlN単結晶の比較的低温での成長には「希土類元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素とアルミニウムとを含む複合酸化物又は複合酸窒化物」が重要な役割を果たしていると考えられるところ、原料(a1)ではこれら複合酸化物又は複合酸窒化物が確実に形成されているのに対し、混合粉末である原料(a2)を用いたときには昇温工程[B]において、条件によっては上記複合酸化物又は複合酸窒化物が形成され難いことが原因と思われる。
なお、実施形態2においても、基板上への単結晶AlNのデポジットとしては、加熱により昇華した複合酸化物及び複合酸窒化物の還元窒化により形成された前駆体によるAlNのデポジットが優勢であると考えられる。また、アルミニウム複合酸化物及び複合酸窒化物の昇華によりAl23やAlNの昇華が促進され、Al23の還元窒化により形成された前駆体や昇華したAlNのデポジットも同時に起こっていると考えられる。
[単結晶窒化アルミニウム自立基板の製造方法]
本発明に係る単結晶窒化アルミニウム自立基板では、まず、実施形態1又は2のような方法により「炭化珪素単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が表面に形成された炭化珪素単結晶基板と、当該突起上に形成された単結晶窒化アルミニウムからなる板状体とからなることを特徴とする積層体」を準備する。次に、該積層体から単結晶窒化アルミニウム(AlN)からなる板状体を分離する。このとき、無機単結晶(例えばSiC単結晶)からなる多角錐状又は多角錐台状の突起の頂点部分で分離するため、接合面積
が小さいことにより、及び両者が異質材料であることにより、単結晶AlNの板状体は容易に分離され、大きく厚い高品質の自立基板が得られる。
上記自立基板は、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy、ハイドライド気相エピタキシャル)法により単結晶AlNの厚膜を作製する際の基板としても好適に用いられる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
<原料(a1)及び原料(a2)に用いた原料粉末中のAl23の量>
原料粉末について波長分散型蛍光X線分析装置によりAl23の量を求めた。
<原料(a1)における複合酸化物中の希土類元素の量>
原料を乳鉢により粉砕した後、波長分散型蛍光X線分析装置により希土類元素の量を求めた。具体的には、原料を粉砕後、硝酸及びリン酸を加え加熱分解し溶液を作製し、島津製作所製「ICPS−7510」を使用してICP発光分析を行った。なお、希土類元素の濃度は、予め準備した検量線を元に定量した。
<形状及び大きさ>
走査型電子(SEM)顕微鏡により、大きさが分かるように任意の倍率に拡大して評価した。
<単結晶AlNの結晶性>
板状体、多角柱の結晶性は、X線回折装置を使用して、評価対象の面方位のピークの半値幅から評価した。
<突起材質の同定>
エネルギー分散型X線分析装置を用いて、突起物にビームを絞り評価した。
[実施例1]
実施例1には、図5に示す装置10を使用した。
(実施例1−1)
工程〔A〕: まず、AlN原料粉末(酸素含有量:0.8mass%、Al以外の不純物含有量:35ppm)100質量部に対して、Y23粉末10質量部を自動乳鉢にて約30分混合して、混合粉末である原料(a2)を得た。次いで、原料(a2)をカーボン製容器30の中に、原料表面が坩堝の底面と同じ高さになるように(すり切りいっぱいに)入れた。6H−SiC単結晶基板22(10mm×10mm×0.3mmt)とカーボン製容器30との距離(原料からの距離でもある)が約3mmとなるように、るつぼ14中に配置した。
工程〔B〕: 次に、炉本体10内を1.1×105Paの窒素ガス雰囲気とした。具
体的にはガス排気口18から排気を行った後、ガス吸気口20から上記圧力となるように窒素ガス(純度99.9999%)を導入した。炉本体10内が上記雰囲気になった後、炉本体10の外側に設けられた高周波加熱コイル16を作動して、るつぼ14、即ちカーボン製容器30及び6H−SiC単結晶基板22の加熱を開始した。カーボン容器の温度(この温度を原料(a2)の温度とみなせる。)が1900℃、6H−SiC単結晶基板の温度が1850℃に達するまで加熱した。
それぞれの温度が所望の値に収まったことを確認してから60分間温度を維持し、その後自然冷却した。炉の温度上昇とともに、炉内圧力は上昇するが、炉内圧力が設定値(1.3×105Pa)を超えると排気ダンパーが開く機構を炉に設けることで炉内圧力を一
定に保った。
上記工程を経た基板を電子顕微鏡で観察した結果、複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が表面に形成されていた(図6)。上記突起は、底面積が100〜900μm2であり
、高さが5〜40μmであった。また、上記突起はSiCからなることが分かった。
(実施例1−2)
上記分析用試料の作成とは別に、上記した方法と同様にして工程[A]および[B]を行った後に次のようにして工程〔C〕を行った。
工程〔C〕: 即ち、実施例1−1の工程[A]および[B]終了後、温度が所望の値(カーボン容器の温度:1900℃、6H−SiC単結晶基板の温度:1850℃)に収まったことを確認してから60分間温度を維持した。
次いで、雰囲気及び圧力を変えずにヒーターの加熱条件のみを若干変更することにより、カーボン容器の温度(この温度を原料(a2)の温度とみなせる。)が1900℃、6H−SiC単結晶基板の温度が1800℃に達するまで加熱し、90分間維持した後に冷却し、ベース基板を取り出した。炉内圧力が設定値(1.3×105Pa)を超えると排
気ダンパーが開く機構を炉に設けることで炉内圧力を一定に保った。
その結果、ベース基板の突起上に単結晶AlNからなる厚さ約180〜220μmの板状体が形成されていた。該板状態は、外力を加えることにより容易にベース基板から分離でき、分離した基板の結晶性を評価したところ、X線回折による002面のピークの半値幅は、約500arcsecであった。
[実施例2]
(実施例2−1)
図5に示す装置10の変わりに図1に示す装置10を用いたこと、及び原料(a2)の代わりに原料(a1)を用いた以外は実施例1−1と同様に工程[A]〜[B]を行った。このとき、原料とベース基板(6H−SiC単結晶基板22)との距離も実施例1−1と同じ3mmに設定した。
なお、原料(a1)は以下のようにして作製した。まず、AlN原料粉末(酸素含有量:0.8mass%、Al以外の不純物含有量:35ppm)100質量部に対して、Y23粉末10質量部を自動乳鉢にて約30分混合して混合粉末を得た。そして、有機バインダー、可塑剤、および滑剤を添加して、混合し、顆粒を作製した後、一軸プレス成形法により、板状の成形体を作製した。得られた成形体を空気雰囲気中で保持温度550℃、保持時間4時間で脱脂した。次いで、この脱脂体を、窒素雰囲気中、保持温度1800℃、保持時間5時間で焼成した。これにより、φ30mm、厚み5mmの焼結体(A)が得られた。焼結体(A)の希土類元素の量は3.8質量%であった。
上記工程を経た基板を電子顕微鏡で観察した結果、実施例1と同様に、複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が表面に形成されていた。上記突起は、底面積が50〜2000μm2であり、高さが5〜50μmであった。また、上記突起はSiCからなることが分か
った。
(実施例2−2)
実施例2−1とは別に、実施例2−1と同様にして工程[A]および[B]を行い、更に引き続き実施例1−2と同様にして工程[C]を行った結果、実施例1−2と同様にベース基板の突起上に単結晶AlNからなる厚さ約200μmの板状体が形成されていた。
[実施例3]
ヒーター加熱条件を若干変更し、カーボン製容器の温度を1900℃、6H−SiC単結晶基板の温度を1800℃とした以外は実施例1−1と同様に昇温を行い、所定の温度に達してから60分保持した後に冷却し、ベース基板を取り出した。
上記工程を経た基板を電子顕微鏡で観察した結果、図7に示すように、炭化珪素基板上に炭化珪素単結晶からなる多角錐又は多角錐台状の複数の突起が形成され、さらにその突起上に多角柱が形成されていた。多角柱の底面積は100〜900μm2であり、高さは
5〜40μmであった。多角柱は、単結晶AlNからなり、X線回折による002面のピークの半値幅は、300arcsecであった。
該実施例3においては、昇温時(実施例1−1における工程〔B〕に相当する)におけるSiC基板温度が1800℃と実施例1−1における温度より50℃低いため、60分間保持の前半においてはSiC単結晶からなる多角錐又は多角錐台状の複数の突起が形成されるが、当該保持の後半において単結晶AlNの成長が開始し、当該突起の上に単結晶AlNからなる多角柱が形成されている。
[実施例4]
昇温完了後の保持時間を90分とした以外は実施例3と同様に行った。
上記工程を得た基板を電子顕微鏡で観察した結果、図8に示すように、SiC単結晶からなる多角錐又は多角錐台状の複数の突起が表面に形成されたSiC単結晶基板と、当該突起上に形成された結晶AlNの板状体とからなる積層体が得られた。該板状体は、SiC単結晶基板とほぼ同じ形状を有しており、その厚さは150〜200μmであった。また、該板状体を構成する単結晶AlNのX線回折による002面のピークの半値幅は、500arcsecであった。
当該実施例4においては、実施例3よりも保持時間を30分間長くしているため、単結晶AlNからなる多角柱がラテラル成長し、板状体が形成されたものと考えられる。
[実施例5]
実施例2−1において、カーボン製容器の温度を1900℃、6H−SiC単結晶基板の温度を1800℃に変更する以外は同様にして昇温し、60分間所定の温度で保持した後に冷却してベース基板を取り出した。その結果、実施例3と同様に、炭化珪素単結晶からなる多角錐又は多角錐台状の突起を有するSiC基板の当該突起上に単結晶AlN柱状体が形成されていた。
該実施例5においては、昇温時(実施例2−1における工程〔B〕に相当する)におけるSiC基板温度が1800℃と実施例2−1における温度より50℃低いため、60分間保持の前半においてはSiC単結晶からなる多角錐又は多角錐台状の複数の突起が形成されるが、当該保持の後半において単結晶AlNの成長が開始し、当該突起の上に単結晶AlNからなる多角柱が形成されている。
[実施例6]
昇温完了後の保持時間を90分とした以外は実施例5と同様に行った。
冷却後に得られたベース基板を電子顕微鏡で観察した結果、SiC単結晶からなる多角錐又は多角錐台状の複数の突起が表面に形成されたSiC単結晶基板と、当該突起上に形成された単結晶AlNの板状体とからなる積層体が得られた。該板状体は、SiC単結晶
基板とほぼ同じ形状を有しており、その厚さは170〜200μmであった。また、該板状体を構成する単結晶AlNのX線回折による002面のピークの半値幅は、450arcsecであった。
当該実施例6においては、実施例5よりも保持時間を30分間長くしているため、単結晶AlNからなる多角柱がラテラル成長し、板状体が形成されたものと考えられる。
図1は、本発明に係る単結晶窒化アルミニウムの製造方法(実施形態1)を説明するための図である。 図2は、本発明に係る単結晶窒化アルミニウムの製造方法(実施形態1)を説明するための図である。 図3は、本発明に係る単結晶窒化アルミニウムの製造方法(実施形態1)を説明するための図である。 図4は、本発明に係る単結晶窒化アルミニウムの製造方法(実施形態1)を説明するための図である。 図5は、本発明に係る単結晶窒化アルミニウムの製造方法(実施形態2)を説明するための図である。 図6は、本発明に係る単結晶窒化アルミニウムの製造方法(実施形態2)を説明するための図である。 図7は、本発明に係る単結晶窒化アルミニウムの製造方法(実施形態2)を説明するための図である。 図8は、本発明に係る単結晶窒化アルミニウムの製造方法(実施形態2)を説明するための図である。
符号の説明
10: 装置
12: 炉本体
14: 坩堝(るつぼ)
16: 高周波コイル
18: ガス排気口
20: ガス吸気口
22: 炭化珪素単結晶基板
23: スペーサー
24: 突起
26: 単結晶窒化アルミニウムの多角柱
28: 単結晶窒化アルミニウムの板状体
30: カーボン製容器

Claims (7)

  1. 単結晶窒化アルミニウム板状体を製造する方法であって、
    [A](1)希土類元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素と
    アルミニウムとを含む複合酸化物又は複合酸窒化物と、窒化アルミニウムと、を含んでなる原料又は
    (2)該複合酸化物或いは該複合酸窒化物の原料物質(但し、窒化アルミニウムを除
    く)と、窒化アルミニウムと、を含んでなる原料を準備し、該原料の近傍に無機単結晶基板を配置する準備工程;
    [B]0.9×105Pa以上の非酸化性ガス雰囲気中で、前記原料及び前記無機単結
    晶基板を加熱して、前記原料の温度を1600〜2000℃とすると共に前記無機単結晶基板の温度を1580℃以上であって当該原料より低い温度とする昇温工程;並びに
    [C]0.9×105Pa以上の非酸化性ガス雰囲気中で、前記原料の温度を1600
    〜2000℃に維持すると共に、前記無機単結晶基板の温度を1580℃以上であって当該原料より低い温度に維持して、前記無機単結晶基板上に単結晶窒化アルミニウム板状体を形成する単結晶窒化アルミニウム形成工程
    を含んでなることを特徴とする単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法。
  2. 前記原料が、希土類元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物からなる焼結助剤を用いて、酸化アルミニウムを含む窒化アルミニウム原料粉末を焼結した焼結体であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法。
  3. 前記非酸化性ガスが、窒素ガス、又は窒素ガス及び炭素ガスを含む混合ガスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法。
  4. 前記昇温工程及び前記単結晶窒化アルミニウム形成工程において、前記無機単結晶基板の表面に該無機単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が形成され、次いで、該突起上に単結晶窒化アルミニウムの板状体が形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法。
  5. 前記無機単結晶基板が、炭化珪素単結晶基板であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の単結晶窒化アルミニウム板状体の製造方法。
  6. 炭化珪素単結晶からなる複数の多角錐状又は多角錐台状の突起が表面に形成された炭化珪素単結晶基板と、当該突起上に形成された単結晶窒化アルミニウムからなる板状体とからなることを特徴とする積層体。
  7. 請求項6に記載の積層体を準備する工程、及び該積層体から前記板状体を分離する工程を含んでなることを特徴とする単結晶窒化アルミニウム自立基板の製造方法。
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