JP2010138010A - 角の取れたフレーク状ガラスおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】滑り性に優れるフレーク状ガラスを提供する。
【解決手段】フレーク状ガラスを、ガラスを腐食可能な液体で処理することを含む、エッジ部の角の取れたフレーク状ガラスの製造方法によってフレーク状ガラスを製造することにより、上記課題は解決される。また、厚み方向に沿った断面を見た場合に、エッジ部の曲率半径が0.08μm以上であるフレーク状ガラスとすることによって、上記の課題は解決される。さらに、フレーク状ガラスに、当該フレーク状ガラスの平均厚みの少なくとも1/6以上の厚みの金属酸化物又は金属の被覆層を設けることにより、エッジ部を丸くしたフレーク状ガラスによっても、上記課題は解決される。
【選択図】図3
【解決手段】フレーク状ガラスを、ガラスを腐食可能な液体で処理することを含む、エッジ部の角の取れたフレーク状ガラスの製造方法によってフレーク状ガラスを製造することにより、上記課題は解決される。また、厚み方向に沿った断面を見た場合に、エッジ部の曲率半径が0.08μm以上であるフレーク状ガラスとすることによって、上記の課題は解決される。さらに、フレーク状ガラスに、当該フレーク状ガラスの平均厚みの少なくとも1/6以上の厚みの金属酸化物又は金属の被覆層を設けることにより、エッジ部を丸くしたフレーク状ガラスによっても、上記課題は解決される。
【選択図】図3
Description
本発明は、エッジ部の角の取れたフレーク状ガラスに関する。本発明はまた、当該フレーク状ガラスの製造方法に関する。
フレーク状ガラスは、化粧品の基材、塗料や成形材料のフィラーとして用いられており、さらに、表面を金属酸化物や金属で被覆すると優れた光輝性が得られることから、化粧品、インク、塗料、成形材料等に配合する光輝材の母材として用いられている。
フレーク状ガラスは、通常、溶融法により溶解されたガラス材料をバルーン法などの成型技術によりフレーク状に加工した後、必要に応じて粉砕し、所望の粒径とすることによって製造されている。粉砕過程では、物理的な力により破砕されるため、その破砕部分のエッジ部は、90度の角を有することとなる(図1および図2参照)。
化粧品分野においてフレーク状ガラスを用いる場合には、フレーク状ガラスには、滑り性が要求される。滑り性が悪いと、フレーク状ガラスを用いた化粧品の肌触りが悪化することになる。上記のような90度の角は、滑り性を損なうものと考えられており、フレーク状ガラスの滑り性を改善するために、フレーク状ガラスの表面をシリコーン等の処理剤で被覆する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−315378号公報
しかし、滑り性に優れるフレーク状ガラス自体があれば、有用である。そこで、本発明は、滑り性に優れるフレーク状ガラスを提供することを目的とする。
上記目的を達成した第一の発明は、フレーク状ガラスを、ガラスを腐食可能な液体で処理することを含む、エッジ部の角の取れたフレーク状ガラスの製造方法である。前記ガラスを腐食可能な液体は、アルカリ化合物を含むpHが11以上の溶液であることが好ましい。前記アルカリ化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および水酸化バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。好ましい一実施態様では、前記ガラスを腐食可能な液体が、キレート剤をさらに含む。また、前記の処理は、前記ガラスを腐食可能な液体を攪拌しながら60℃以上で行うことが好ましい。
第二の発明は、厚み方向に沿った断面を見た場合に、エッジ部の曲率半径が0.08μm以上であるフレーク状ガラスである。
第三の発明は、フレーク状ガラスに、当該フレーク状ガラスの平均厚みの少なくとも1/6以上の厚みの金属酸化物又は金属の被覆層を設けることにより、エッジ部を丸くしたフレーク状ガラスである。
本発明によれば、滑り性に優れるフレーク状ガラスを得ることができる。また、このフレーク状ガラスは、ざらつき感にも優れる。当該フレーク状ガラスを化粧品の基材に用いた場合には、肌触りに優れるものとなる。また、ざらつき感にも優れるため、塗料に混ぜて使用すれば、塗布ムラが改善されると考えられる。当該フレーク状ガラスは、表面を屈折率の異なる金属酸化物等で被覆することにより、光輝材としても用いることができ、有用である。
本発明者が鋭意検討した結果、ガラスがアルカリ溶液等の液体によって腐食されるという性質を利用して、フレーク状ガラスを、ガラスを腐食可能な液体で処理した際には、ガラスの角部で多く腐食が起こり、エッジ部で角の取れた(エッジ部が丸みを帯びた)フレーク状ガラスが得られることを見出した。
第一の発明は、フレーク状ガラスを、ガラスを腐食可能な液体で処理することを含む、エッジ部の角の取れたフレーク状ガラスの製造方法である。
本発明において原料となるフレーク状ガラスのガラスの種類としては、特定の液体に対して腐食を受けるものであれば特に制限はなく、二酸化珪素を主成分として、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ナトリウムなどの金属酸化物から構成されるガラスであればよい。このようなガラスの例としては、ソーダライムガラス、Eガラス、Cガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、耐アルカリガラス、高強度ガラス、シリカガラス、ボロンフリーアルカリガラス、Aガラスなどが挙げられる。代表的なガラス組成を表1に示す。また、出願人は、重量%で表して、59≦SiO2≦65、8≦Al2O3≦15、47≦(SiO2−Al2O3)≦57、1≦MgO≦5、20≦CaO≦30、0<(Li2O+Na2O+K2O)<2、0≦TiO2≦5の成分を含有し、B2O3、F2、ZnO、BaO、SrO、ZrO2を実質的に含有しないガラス組成を出願している(WO2006/068255)。
原料となるフレーク状ガラスの平均粒径としては、3〜500μmが好ましく、3〜200μmが好ましい。なお、本明細書において、平均粒径の定義は以下である。薄片状粒子の粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が50%に相当する粒径をD50と呼び、この値のことを平均粒径という。薄片状粒子の粒径とは、薄片状粒子をレーザ回折・散乱法により測定した場合の光散乱相当径のことである。光散乱相当径とは、例えば「最新粉体物性図説(第三版)」(2004年6月30日発行、発行者:倉田豊、発行所:有限会社エヌジーティー)によれば、測定によって得られた粒子の光散乱パターンに最も近い散乱パターンを示し、かつ、当該粒子と同じ屈折率を有する球の直径と定義される。測定方法の具体例としては、レーザ回折粒度分布測定装置(例、「製品名マイクロトラックHRA」(日機装製))を用いて粒度分布を測定し、その測定結果から平均粒径D50を読み取ればよい。
原料となるフレーク状ガラスの厚みとしては、0.1〜50μmが好ましく、0.1〜10μmが好ましい。
ガラスを腐食可能な液体としては、フッ化水素酸等の酸性溶液、およびアルカリ化合物を含む溶液が挙げられるが、使いやすさの観点から、アルカリ化合物を含む溶液が好ましい。
アルカリ化合物を含む溶液(以下、アルカリ溶液ともいう)が、本発明の目的を達成するのに十分な程度にガラスを腐食するには、溶液のpHが11以上である必要がある。pHが11未満であると、ガラスの溶解速度が不足して生産性が問題となる。ガラスの溶解速度の観点から、pHは12以上であることが好ましい。
アルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア、水酸化銅(II)、水酸化マグネシウム、水酸化鉄(III)などが挙げられるが、ガラスの溶解速度の観点からは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および水酸化バリウムから選ばれる少なくとも1種のアルカリ化合物を用いることが好ましく、さらにコストの観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることが好ましい。
アルカリ溶液にキレート剤を添加してもよく、キレート剤の添加によりガラスの溶解速度が早くなる場合がある。
ガラスを腐食可能な液体での処理は、ガラスの溶解速度の観点から、60℃以上で攪拌しながら行うことが好ましい。なお、液体の沸点が、処理温度の上限となる。
処理時間は、ガラスを腐食可能な液体の種類、ガラスの種類、処理温度、および攪拌速度等に応じて適宜設定すればよいが、通常0.5〜48時間程度である。
当該ガラスを腐食可能な液体での処理の後は、洗浄工程を行う。洗浄工程は、公知方法により行うことができる。アルカリ溶液を用いた場合には、アルカリ溶液に不溶な成分がフレーク状ガラス表面に付着して、表面の平滑性が失われることがある。これは、アルカリ溶液に対して処理を行う原料のフレーク状ガラスの量が多い場合に生じやすい。この不溶成分を溶解させるためには、純水で何度も洗浄する方法がある。また、酸水溶液で洗浄することで付着物を取り去ることもできる。
洗浄工程の後には、乾燥工程を行う。乾燥工程は、公知方法により行うことができる。
このようにして得られるフレーク状ガラスは、サイズが、特に、厚みが0.1μm〜10μmであって、平均粒径が3μm〜200μmであることにより、良好な特性が得られる。
従来の製造方法で得られるフレーク状ガラスは、図1および図2(図1の断面図)に示されるように、破砕部分のエッジ部が、90度の角を有している。しかし、上述の本発明の製造方法によって得られるフレーク状ガラスのエッジ部は、図3および図4に示すように、角が取れて丸みを帯びている。このように、エッジ部が丸みを帯びているために、本発明の製造方法で得られるフレーク状ガラスは、滑り性に優れるものとなる。また、本発明の製造方法で得られるフレーク状ガラスは、ざらつき感にも優れるものとなる。
特に第一の発明の製造方法においては、厚み方向に沿った断面を見た場合に、エッジ部の曲率半径が0.08μm以上であるフレーク状ガラスを得ることができる。従って、別の側面から、第二の発明は、厚み方向に沿った断面を見た場合に、エッジ部の曲率半径が0.08μm以上であるフレーク状ガラスである。当該曲率半径は、好ましくは、0.1〜1μmである。
曲率半径の求め方の一例としては、フレーク状ガラスのエッジ部に対して、中心角90度の扇状の曲線の半径を変化させながらフィッティングを行い、少なくとも、当該曲線の端部2点と中心部1点が一致した場合の半径を曲率半径とする。この曲率半径の測定は、少なくとも20個のフレーク状ガラスについて行い、その平均値を求める。
また、本発明者は、フレーク状ガラスの表面を金属酸化物または金属で、従来よりも厚く被覆することにより、エッジ部を丸くすることができることを見出した。
すなわち、第三の発明は、フレーク状ガラスに、当該フレーク状ガラスの平均厚みの少なくとも1/6以上の厚みの金属酸化物又は金属の被覆層を設けることにより、エッジ部を丸くしたフレーク状ガラスである。
被覆する金属酸化物の種類には、特に制限がなく、例として、SiO2、TiO2、ZrO2などが挙げられる。フレーク状ガラスの色彩を変化させないためには、母材となるフレーク状ガラスとの屈折率の差が0.1以下である金属酸化物が好ましく、特に好ましくは、SiO2を主体とする金属酸化物である。被覆する金属の種類には、特に制限がなく、例として、金、銀、銅、ニッケルなどが挙げられる。色彩を変化させず滑り性のみを改善したい場合においては、金属酸化物により被覆することが好ましい。
原料となるフレーク状ガラスを構成するガラスの種類としては、上記と同様である。
被覆の方法としては、水溶媒中で水ガラスと反応させる液相コーティング法、ゾルゲル法を用いる方法などの公知方法を使用することができる。また、流動乾燥装置を用いたスプレー法で被覆してもよい。さらにスパッタ法、真空蒸着法、イオンスプレー法、CVD法などであってもよいが、コストやガラス表面に対する均一被覆を考慮すると、液相コーティング法が好ましい。
上記の方法により、従来よりも厚く被覆層を形成する。被覆層の厚みとしては、フレーク状ガラスの平均厚みの1/6以上の厚みである。このような大きな厚みの被覆層を設ける場合には、被覆速度の違いから、フレーク状ガラスのエッジ部が丸みを帯びることになる。被覆量が少ないとフレーク状ガラスは丸みを帯びず、滑り性向上効果が得られない。被覆量の上限としては、表面の平滑性が大きく失われない程度であり、これは被覆方法および被覆条件により左右される。
本発明の製造方法により得られるフレーク状ガラスおよび本発明のフレーク状ガラスは、さらに滑り性を向上させるために、従来のシリコーンなどによる表面処理を行ってもよい。
本発明の製造方法により得られるフレーク状ガラスおよび本発明のフレーク状ガラスは使用する用途に応じ、従来の厚みで、金属酸化物、金属、ポリマー等で被覆されていてもよい。例えば、屈折率の異なる金属酸化物で当該フレーク状ガラスの表面を被覆することによって、干渉を利用した光輝材として使用することも可能である。例えば、前記フレーク状ガラスに、チタニア(TiO2)、ジルコニアまたは酸化鉄などの金属酸化物からなる被膜を設けることができる。この被膜の成形には、公知の技術を利用すればよく、例えば、特公昭43−25644号公報、特開昭47−34529号公報等に記載の方法を採用することができる。具体的には、硫酸チタニル溶液または四塩化チタン溶液に前記フレーク状ガラスを懸濁させ、かかる溶液を昇温することによりチタニアを析出させて前記フレーク状ガラス上に被膜を設ける方法などが知られている。ただし、これらの方法に限定されるものではなく、前記フレーク状ガラス上に薄く被膜を設けることができる方法であれば、どのような方法でも光輝材を得ることが可能である。この他、金や銀などの金属を前記フレーク状ガラスの表面に被覆して、光輝材として使用することもできる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、平均粒径は、レーザ回折粒度分布測定装置(製品名マイクロトラックHRA、日機装製)を用いて粒度分布を測定して得られるD50である。
実施例1
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)をメノウ製のすり鉢により、平均粒径10μmに粉砕した。このフレーク粉体5gを、75℃に加熱した1N−水酸化ナトリウム水溶液(pH=14)100g中で、メカニカルスターラーを用いて1時間攪拌した。この溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、イオン交換水で3回洗浄した。得られた粉体を乾燥した後、電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、角の取れたフレークが得られていることがわかった(図4)。得られた粉体の摩擦係数測定を、KES−SE−STP(カトーテック製)を用いて行った。具体的には、スライドガラス上に両面テープ(ニチバン、強力タイプ)を貼り、その上に粉体を乗せて、化粧用スポンジで軽くこすって余分な粉体を取り除いた後、測定を行った。測定は5回行い、その平均値を算出した。この測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表3に示す。また、電子顕微鏡写真を用い、フレークのエッジ部に対して、中心角90度の扇状の曲線の半径を変化させながらフィッティングを行い、少なくとも、当該曲線の端部2点と中心部1点が一致した場合の半径を求めた。この半径を20個のフレークについて測定し、その平均値を曲率半径とした。その値を表3に示す。
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)をメノウ製のすり鉢により、平均粒径10μmに粉砕した。このフレーク粉体5gを、75℃に加熱した1N−水酸化ナトリウム水溶液(pH=14)100g中で、メカニカルスターラーを用いて1時間攪拌した。この溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、イオン交換水で3回洗浄した。得られた粉体を乾燥した後、電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、角の取れたフレークが得られていることがわかった(図4)。得られた粉体の摩擦係数測定を、KES−SE−STP(カトーテック製)を用いて行った。具体的には、スライドガラス上に両面テープ(ニチバン、強力タイプ)を貼り、その上に粉体を乗せて、化粧用スポンジで軽くこすって余分な粉体を取り除いた後、測定を行った。測定は5回行い、その平均値を算出した。この測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表3に示す。また、電子顕微鏡写真を用い、フレークのエッジ部に対して、中心角90度の扇状の曲線の半径を変化させながらフィッティングを行い、少なくとも、当該曲線の端部2点と中心部1点が一致した場合の半径を求めた。この半径を20個のフレークについて測定し、その平均値を曲率半径とした。その値を表3に示す。
実施例2
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)をイオン交換水に浸漬させ、超音波により平均粒径28μmに粉砕したフレーク粉体10gを、75℃に加熱した1N−水酸化ナトリウム水溶液100g中で、メカニカルスターラーを用いて1時間攪拌した。この溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、1N−硝酸水溶液で1回洗浄した後、イオン交換水で3回洗浄した。得られた粉体を乾燥した後、電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークが得られていることがわかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値、および曲率半径を表3に示す。
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)をイオン交換水に浸漬させ、超音波により平均粒径28μmに粉砕したフレーク粉体10gを、75℃に加熱した1N−水酸化ナトリウム水溶液100g中で、メカニカルスターラーを用いて1時間攪拌した。この溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、1N−硝酸水溶液で1回洗浄した後、イオン交換水で3回洗浄した。得られた粉体を乾燥した後、電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークが得られていることがわかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値、および曲率半径を表3に示す。
実施例3
Cガラス組成のフレーク状ガラスをメノウ製のすり鉢により、平均粒径3μmに粉砕したフレーク粉体10gを、75℃に加熱した1N−水酸化ナトリウム水溶液100g中で、メカニカルスターラーを用いて0.5時間攪拌した。この溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、1N−硝酸水溶液で1回洗浄した後、イオン交換水で3回洗浄した。得られた粉体を乾燥した後、電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークが得られていることがわかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値、および曲率半径を表3に示す。
Cガラス組成のフレーク状ガラスをメノウ製のすり鉢により、平均粒径3μmに粉砕したフレーク粉体10gを、75℃に加熱した1N−水酸化ナトリウム水溶液100g中で、メカニカルスターラーを用いて0.5時間攪拌した。この溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、1N−硝酸水溶液で1回洗浄した後、イオン交換水で3回洗浄した。得られた粉体を乾燥した後、電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークが得られていることがわかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値、および曲率半径を表3に示す。
実施例4
Eガラス組成のフレーク状ガラスをメノウ製のすり鉢により、平均粒径25μmに粉砕したフレーク粉体10gを、75℃に加熱した1N−水酸化ナトリウム水溶液100g中で、メカニカルスターラーを用いて1時間攪拌した。この溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、1N−硝酸水溶液で1回洗浄した後、イオン交換水で3回洗浄した。得られた粉体を乾燥した後、電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークが得られていることがわかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値、および曲率半径を表3に示す。
Eガラス組成のフレーク状ガラスをメノウ製のすり鉢により、平均粒径25μmに粉砕したフレーク粉体10gを、75℃に加熱した1N−水酸化ナトリウム水溶液100g中で、メカニカルスターラーを用いて1時間攪拌した。この溶液を室温まで冷却した後、ろ過し、1N−硝酸水溶液で1回洗浄した後、イオン交換水で3回洗浄した。得られた粉体を乾燥した後、電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークが得られていることがわかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値、および曲率半径を表3に示す。
比較例1
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)をメノウ製のすり鉢により、平均粒径10μmに粉砕したフレーク粉体5gを、イオン交換水100g中で1時間攪拌した後、ろ過し、乾燥を行った。この粉体を電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークはほとんど見られず、エッジ部は処理前の粉体と同様であった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表3に示す。
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)をメノウ製のすり鉢により、平均粒径10μmに粉砕したフレーク粉体5gを、イオン交換水100g中で1時間攪拌した後、ろ過し、乾燥を行った。この粉体を電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークはほとんど見られず、エッジ部は処理前の粉体と同様であった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表3に示す。
比較例2
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)をイオン交換水に浸漬させ、超音波により平均粒径28μmに粉砕したフレーク粉体10gを、比較例1と同様に処理した。この粉体を電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークは観察されなかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表3に示す。
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)をイオン交換水に浸漬させ、超音波により平均粒径28μmに粉砕したフレーク粉体10gを、比較例1と同様に処理した。この粉体を電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークは観察されなかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表3に示す。
比較例3
Cガラス組成のフレーク状ガラスをメノウ製のすり鉢により、平均粒径3μmに粉砕したフレーク粉体10gを、比較例1と同様に処理した。この粉体を電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークは観察されなかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表3に示す。
Cガラス組成のフレーク状ガラスをメノウ製のすり鉢により、平均粒径3μmに粉砕したフレーク粉体10gを、比較例1と同様に処理した。この粉体を電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークは観察されなかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表3に示す。
比較例4
Eガラス組成のフレーク状ガラスをメノウ製のすり鉢により、平均粒径25μmに粉砕したフレーク粉体10gを、比較例1と同様に処理した。この粉体を電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークは観察されなかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表3に示す。
Eガラス組成のフレーク状ガラスをメノウ製のすり鉢により、平均粒径25μmに粉砕したフレーク粉体10gを、比較例1と同様に処理した。この粉体を電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークは観察されなかった。実施例1と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表3に示す。
平均摩擦係数は、表面をこするときの滑りやすさを示し、値が大きくなるほど滑り性が悪くなる。一方、平均摩擦係数の変動値は、滑らかさ、ざらつき感を示す指標であり、値が大きくなるほどざらつき感が悪くなる。
表3より、実施例の角の取れたフレークは、比較例のフレークよりも平均摩擦係数が小さく、滑り性に優れることがわかる。また、平均摩擦係数の変動値も小さく、ざらつき感にも優れることがわかる。さらに、エッジ部の曲率半径が、0.09μm以上となっており、エッジ部が丸みを帯びていることがわかる(図4もまた参照)。
実施例11
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)を、ラボジェット(AFS−10CA、日本ニューマチック工業製)により、平均粒径28μmに粉砕した。このフレーク粉体20gをイオン交換水380mlに入れ、75℃に温度を上げた後、水ガラス3号32gをイオン交換水129gと混ぜた溶液をゆっくり加えた。加える際に1mol/Lの塩酸を同時に加え、水溶液のpHを8.5に保った。添加終了後30分間攪拌した。次いで、ろ過、イオン交換水で洗浄を行い、乾燥することで粉体を得た。得られた粉体に上記と同じ処理を2回行った。得られたフレーク状ガラスの断面をSEMにより、10点観察して、その厚みを測定したところ、80〜120nmの被膜がコーティングされていた。得られた粉体の摩擦係数測定を、KES−SE−STP(カトーテック製)を用いて行った。具体的には、スライドガラス上に両面テープ(ニチバン製、強力タイプ)を貼り、その上に粉体を乗せて、化粧用スポンジで軽くこすって余分な粉体を取り除いた後、測定を行った。測定は5回行い、その平均値を算出した。この測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表4に示す。また、実施例1と同様にして求めた曲率半径を表4に示す。
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)を、ラボジェット(AFS−10CA、日本ニューマチック工業製)により、平均粒径28μmに粉砕した。このフレーク粉体20gをイオン交換水380mlに入れ、75℃に温度を上げた後、水ガラス3号32gをイオン交換水129gと混ぜた溶液をゆっくり加えた。加える際に1mol/Lの塩酸を同時に加え、水溶液のpHを8.5に保った。添加終了後30分間攪拌した。次いで、ろ過、イオン交換水で洗浄を行い、乾燥することで粉体を得た。得られた粉体に上記と同じ処理を2回行った。得られたフレーク状ガラスの断面をSEMにより、10点観察して、その厚みを測定したところ、80〜120nmの被膜がコーティングされていた。得られた粉体の摩擦係数測定を、KES−SE−STP(カトーテック製)を用いて行った。具体的には、スライドガラス上に両面テープ(ニチバン製、強力タイプ)を貼り、その上に粉体を乗せて、化粧用スポンジで軽くこすって余分な粉体を取り除いた後、測定を行った。測定は5回行い、その平均値を算出した。この測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表4に示す。また、実施例1と同様にして求めた曲率半径を表4に示す。
実施例12
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)を、ラボジェット(AFS−10CA、日本ニューマチック工業製)により、平均粒径28μmに粉砕した。このフレーク粉体20gをイオン交換水380mlに入れ、75℃に温度を上げた後、水ガラス3号32gをイオン交換水129gと混ぜた溶液をゆっくり加えた。加える際に1mol/Lの塩酸を同時に加え、水溶液のpHを8.5に保った。添加終了後2時間攪拌した。次いで、ろ過、イオン交換水で洗浄を行い、乾燥することで粉体を得た。得られた粉体は、実施例11と同様にして被膜の厚みを測定したところ、80〜100nmの被膜がコーティングされていた。得られた粉体は、実施例11と同様にして測定を行い、平均摩擦係数とその変動値を得た。結果を表4に示す。また、実施例1と同様にして求めた曲率半径を表4に示す。
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)を、ラボジェット(AFS−10CA、日本ニューマチック工業製)により、平均粒径28μmに粉砕した。このフレーク粉体20gをイオン交換水380mlに入れ、75℃に温度を上げた後、水ガラス3号32gをイオン交換水129gと混ぜた溶液をゆっくり加えた。加える際に1mol/Lの塩酸を同時に加え、水溶液のpHを8.5に保った。添加終了後2時間攪拌した。次いで、ろ過、イオン交換水で洗浄を行い、乾燥することで粉体を得た。得られた粉体は、実施例11と同様にして被膜の厚みを測定したところ、80〜100nmの被膜がコーティングされていた。得られた粉体は、実施例11と同様にして測定を行い、平均摩擦係数とその変動値を得た。結果を表4に示す。また、実施例1と同様にして求めた曲率半径を表4に示す。
実施例13
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)を、ラボジェット(AFS−10CA、日本ニューマチック工業製)により、平均粒径28μmに粉砕した。このフレーク状ガラス10gを、イソプロパノール130ml、イオン交換水14mlおよびアンモニア水(28%)3.3gと混合した。この混合溶液をメカニカルスターラーにより攪拌して、そこに22.8gのテトラエトキシシランを加えた。室温で12時間攪拌した後、ろ過し、乾燥して粉体を得た。得られた粉体は、実施例11と同様にして被膜の厚みを測定したところ、200〜400nmの被膜がコーティングされていた。また、実施例11と同様にして測定を行い平均摩擦係数とその変動値を得た。結果を表4に示す。また、実施例1と同様にして求めた曲率半径を表4に示す。
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)を、ラボジェット(AFS−10CA、日本ニューマチック工業製)により、平均粒径28μmに粉砕した。このフレーク状ガラス10gを、イソプロパノール130ml、イオン交換水14mlおよびアンモニア水(28%)3.3gと混合した。この混合溶液をメカニカルスターラーにより攪拌して、そこに22.8gのテトラエトキシシランを加えた。室温で12時間攪拌した後、ろ過し、乾燥して粉体を得た。得られた粉体は、実施例11と同様にして被膜の厚みを測定したところ、200〜400nmの被膜がコーティングされていた。また、実施例11と同様にして測定を行い平均摩擦係数とその変動値を得た。結果を表4に示す。また、実施例1と同様にして求めた曲率半径を表4に示す。
比較例11
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)を、ラボジェット(AFS−10CA、日本ニューマチック工業製)により、平均粒径28μmに粉砕した。このフレーク粉体5gをイオン交換水100g中で1時間攪拌した後、ろ過し、乾燥を行った。この粉体を電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークはほとんど見られず、エッジ部は処理前の粉体と同様であった。実施例11と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表4に示す。
平均粒径が200μmで厚みが0.4μmのフレーク状ガラス(表2の例1のガラス組成)を、ラボジェット(AFS−10CA、日本ニューマチック工業製)により、平均粒径28μmに粉砕した。このフレーク粉体5gをイオン交換水100g中で1時間攪拌した後、ろ過し、乾燥を行った。この粉体を電子顕微鏡で観察したところ、角の取れたフレークはほとんど見られず、エッジ部は処理前の粉体と同様であった。実施例11と同様の測定により得られた平均摩擦係数とその変動値を表4に示す。
表4より、実施例の角の取れたフレークは、比較例のフレークよりも平均摩擦係数が小さく、滑り性に優れることがわかる。また、平均摩擦係数の変動値も小さく、ざらつき感にも優れることがわかる。
光輝材への応用
参考例1
実施例2で得られたフレークを、塩化白金酸を添加した四塩化チタン溶液中に懸濁させ、この懸濁液を加熱して1時間沸騰させ、フレーク状ガラスの表面にチタニア被膜を設けた。このフレーク状ガラスを濾過、水洗後乾燥させ、その後600℃で30分間熱処理した。得られたチタニアの被膜の厚みは、40〜60nmであった。得られた光輝材は、パール色を示し、良好な光輝材が得られることを確認した。
参考例1
実施例2で得られたフレークを、塩化白金酸を添加した四塩化チタン溶液中に懸濁させ、この懸濁液を加熱して1時間沸騰させ、フレーク状ガラスの表面にチタニア被膜を設けた。このフレーク状ガラスを濾過、水洗後乾燥させ、その後600℃で30分間熱処理した。得られたチタニアの被膜の厚みは、40〜60nmであった。得られた光輝材は、パール色を示し、良好な光輝材が得られることを確認した。
参考例2
実施例11および13で得られたフレークをそれぞれ、塩化白金酸を添加した四塩化チタン溶液中に懸濁させ、この懸濁液を加熱して1時間沸騰させ、フレーク状ガラスの表面にチタニア被膜を設けた。このフレーク状ガラスを濾過、水洗後乾燥させ、その後600℃で30分間熱処理した。得られたチタニアの被膜の厚みは、40〜60nmであった。得られた光輝材は、両者ともパール色を示し、良好な光輝材が得られることを確認した。
実施例11および13で得られたフレークをそれぞれ、塩化白金酸を添加した四塩化チタン溶液中に懸濁させ、この懸濁液を加熱して1時間沸騰させ、フレーク状ガラスの表面にチタニア被膜を設けた。このフレーク状ガラスを濾過、水洗後乾燥させ、その後600℃で30分間熱処理した。得られたチタニアの被膜の厚みは、40〜60nmであった。得られた光輝材は、両者ともパール色を示し、良好な光輝材が得られることを確認した。
本発明の製造方法により得られるフレーク状ガラスおよび本発明のフレーク状ガラスは、化粧品の基材、塗料や成形材料のフィラー等、従来公知の用途に用いることができる。さらに、これらのフレーク状ガラスは、表面に屈折率の異なる金属酸化物等を被覆することにより、化粧品、インク、塗料、成形材料等に配合される光輝材とすることができ、特に滑り性に優れることから、化粧品用途に最適である。
Claims (7)
- フレーク状ガラスを、ガラスを腐食可能な液体で処理することを含む、エッジ部の角の取れたフレーク状ガラスの製造方法。
- 前記ガラスを腐食可能な液体が、アルカリ化合物を含むpHが11以上の溶液である請求項1に記載のエッジ部の角の取れたフレーク状ガラスの製造方法。
- 前記アルカリ化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および水酸化バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載のエッジ部の角の取れたフレーク状ガラスの製造方法。
- 前記ガラスを腐食可能な液体が、キレート剤をさらに含む請求項2または3に記載のエッジ部の角の取れたフレーク状ガラスの製造方法。
- 前記処理を、前記ガラスを腐食可能な液体を攪拌しながら60℃以上で行う請求項1〜4のいずれかに記載のエッジ部の角の取れたフレーク状ガラスの製造方法。
- 厚み方向に沿った断面を見た場合に、エッジ部の曲率半径が0.08μm以上であるフレーク状ガラス。
- フレーク状ガラスに、当該フレーク状ガラスの平均厚みの少なくとも1/6以上の厚みの金属酸化物又は金属の被覆層を設けることにより、エッジ部を丸くしたフレーク状ガラス。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008314330A JP2010138010A (ja) | 2008-12-10 | 2008-12-10 | 角の取れたフレーク状ガラスおよびその製造方法 |
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Publications (1)
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016185904A (ja) * | 2011-01-14 | 2016-10-27 | 日本板硝子株式会社 | フレーク状ガラス及びそれを配合した化粧料 |
-
2008
- 2008-12-10 JP JP2008314330A patent/JP2010138010A/ja active Pending
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