JP2010132470A - Fz法シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents

Fz法シリコン単結晶の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】FZ法によるシリコン単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】FZ法によるシリコン単結晶の製造方法であって、CZ法により形成されたP型のシリコン結晶を原料棒とし、N型の不純物をガスドープして、N型のシリコン単結晶を形成する。その際、前記不純物のガスドープ量を、前記N型のシリコン単結晶の抵抗率が前記原料棒の抵抗率より低くなるように調整している。
【選択図】図1

Description

本発明は、FZ法(フローティングゾーン法、または浮遊帯域溶融法)によりシリコン単結晶を成長させる方法に関し、特にFZ法によるシリコン単結晶の抵抗率の調整を行う技術に関する。
従来、高耐圧パワーデバイスやサイリスタ等のパワーデバイス作製用にはFZ法により製造されたシリコンウェハが使用されてきた。また近年、半導体デバイスの性能向上とコスト削減のため、大口径シリコンウェハが求められ、これに伴って大口径シリコンウェハ単結晶の育成が要求されている。
FZ法によりシリコン単結晶を製造する場合は、シリコン多結晶からなる原料棒の一端部を誘導加熱コイルからなる加熱装置により溶融して、目的結晶方位を有する種結晶に融着した後、種絞りをしつつ無転位化しながら種結晶と一体化し、原料棒を加熱装置に対して相対的に回転させながら軸線方向に相対移動させると同時に、溶融部を融着部から原料棒の他端部に向けて徐々に移動させることにより単結晶化して、棒状のシリコン単結晶を得ている。
一方、FZ法によって製造されるシリコン単結晶の抵抗率を所定の抵抗率に調整する方法としては、FZ法で単結晶化を行っている際にN型単結晶にする場合はホスフィン(PH)、P型単結晶にする場合にはジボラン(B)を其々含むアルゴンガスを、所定の抵抗率に応じて、ノズルを用いて溶融部に吹き付けるガスドープ法(特許文献1参照)がある。そして、特に高抵抗率の多結晶素材にガスドープ法を用いれば、原理的に長手方向に均一な抵抗率分布を持つシリコン単結晶を製造することができる。
特開2007−314374号公報 特開2005−306653号公報 特開平5−43382号公報 特開2003−55089号公報
通常、FZ法によるシリコン単結晶の原料としては、棒状の多結晶シリコンを使用する。しかしFZ法において原料棒として用いる多結晶シリコンは、高純度でクラックやワレが生じにくく、均一な組織であり、FZ用として適切な直径値で、扁平やクランクが少なく、表面状態の良い円柱状であることが必要とされる。このようなFZ用の原料棒の製造は、CZ法で使用されるナゲット状の多結晶シリコンの製造に比較して、歩留まりや、生産性が低く、コストがかかるという問題があり、また特許文献4にもあるようにシリコン多結晶中の粒界組織の問題で単結晶化率が悪い等の問題もある。
よって特許文献1、特許文献2、特許文献3に示すように、CZ法(Czochralski法)により製造したシリコン結晶を、FZ法のシリコン単結晶の原料棒として用いることが提案されている。しかし、CZ法で用いられる石英坩堝から溶出するボロンやアルミのため、CZ法で不純物を添加せずにシリコン結晶を引き上げると通常、P型の導電性を有し比較的高抵抗率なものが形成される。さらに、CZ法により形成されたシリコン単結晶は軸方向(長手方向)に不純物の濃度が偏析して分布するため、これにより抵抗率が軸方向で変動することになる。
FZ法においてN型のシリコン単結晶を製造するため、特許文献1において、CZ法でシリコン結晶を製造する際に、N型となる不純物を予め添加して導電型をN型とした原料棒を形成し、原料棒の長手方向の抵抗率の分布に合わせてドープガスの流量を調整して、FZ法によるシリコン単結晶の抵抗率を均一化する方法が開示されている。しかし、CZ法による引き上げ直後のシリコン結晶にはドナー化した酸素が混入しているため、熱処理することなく抵抗率を測定することができない。つまり、FZ法において原料棒として使用する前に結晶全体の正確な定量値を得ることは不可能である。よって別のバッチで製造した結晶の抵抗率を参考にドープ量を決めるか、結晶の頭部、尾部からサンプルを取得し、これらについて抵抗率測定を行い、その間の値を類推することになるため、バッチごとに対応したドープ量を求めることは困難である。
さらにCZ法によってN型のシリコン結晶を形成する場合、砒素(As)、赤燐(P)等の揮発性の高い不純物を添加することになるので、単純な一方向凝固の偏析式に従わない抵抗率分布になることがあり、バッチ間のばらつきは上記の場合よりもさらに大きなものとなる。また別バッチの結果から原料棒の抵抗率分布を類推してガスドープ量を変化させる場合においても、原料棒の抵抗率がある程度低い場合は、原料棒の不純物変化量に対してドープガスの流量の変化が追従できず、所望の抵抗率から外れる虞がある。
よって、上記問題点に着目し、本発明は、FZ法によるシリコン単結晶の製造において、CZ法により形成されたシリコン結晶を原料棒として用いた場合でも、従来のFZ法により形成されたシリコン単結晶と同等の抵抗率分布をもつシリコン単結晶を製造する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るFZ法によるシリコン単結晶の製造方法は、第1には、FZ法によるシリコン単結晶の製造方法であって、CZ法により形成されたP型のシリコン結晶を原料棒とし、N型の不純物をガスドープして、N型のシリコン単結晶を形成することを特徴としている。
第2には、前記不純物のガスドープ量を、前記N型のシリコン単結晶の抵抗率が前記原料棒の抵抗率より低くなるように調整したことを特徴としている。
第3には、前記原料棒となるシリコン単結晶の形成時に、極微量のN型の不純物をドープしたことを特徴としている。
第4には、前記原料棒となるシリコン単結晶を、合成石英坩堝を用いて形成したことを特徴としている。
本発明に係るFZ法によるシリコン単結晶の製造方法によれば、ガスドープは原料棒を一部溶解させた溶融帯に対して行われる。この方法で単結晶を製造する場合、素材からの不純物の影響が無視できれば、原理的に長手方向に均一な抵抗率をもつ結晶を製造することができる。
また、原料棒中のP型の不純物は、FZ法による製造工程においてN型の不純物によりキャリア補償されることとなるが、原料棒の抵抗率よりN型のシリコン単結晶の抵抗率が低いオーダを有する場合、すなわち、CZ法によるシリコン結晶の製造中に溶出したP型の不純物の濃度より、N型の不純物の濃度の方が十分に高くなるようにガスドープ量を調整することにより、N型の不純物に対するP型の不純物の影響は無視できるので、従来のように多結晶シリコンを原料棒として用いたFZ法によるシリコン単結晶と同等の抵抗率分布をもつシリコン単結晶を製造することができる。
またCZ法において、P型の不純物のキャリア補償を目的とする極微量のN型の不純物をドープすれば、キャリア補償を目的としたN型の不純物のドープする工程と、抵抗率を決定するためのN型の不純物をドープする工程とが分離したことになる。よってさらに高抵抗率なシリコン単結晶をCZ法において製造し、これを原料棒として用いるので、FZ法において、高い抵抗率を有し、かつ抵抗率のばらつきを抑制したシリコン単結晶を製造することができる。
さらに、原料棒を形成するCZ法において合成坩堝を用いることにより、原料棒の抵抗率を高め、FZ法において高い抵抗率を有し、かつ抵抗率のばらつきを抑制したシリコン単結晶を製造することができる。
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
本実施形態に係るFZ法によるシリコン単結晶の製造方法は、CZ法により形成されたシリコン単結晶を原料棒とし、N型の不純物をガスドープして、N型のシリコン単結晶を形成するものである。図1にFZ法によるシリコン単結晶の製造を行う模式図を示す。
図1に示すようにFZ法単結晶製造装置10は、チャンバ12、上軸14、誘導加熱コイル16、ノズル18、下軸(不図示)から構成され、原料棒22と種結晶34が用いられる。チャンバ12内はアルゴン(Ar)ガスにより、常時パージされている。上軸14、誘導加熱コイル16、下軸(不図示)は、上軸14の回転軸、誘導加熱コイル16の中心、下軸(不図示)の回転軸は鉛直方向に一直線上に並んだ状態でチャンバ12内に配置されている。上軸14の下端には原料棒22の上端が固定され、下軸(不図示)の上端には直径の小さいシリコンからなる種結晶34の下端が固定されている。
FZ法の原料棒となるCZ法により製造されるシリコン結晶は、石英坩堝(不図示)にナゲット状のシリコン多結晶(不図示)を充填し、ヒータ(不図示)によりシリコン多結晶(不図示)を加熱溶融した原料融液に種結晶(不図示)を浸し、種結晶(不図示)を回転させながら所定の成長速度で所定の直径を有するシリコン結晶を成長させることによって得られる。なお、シリコン多結晶を加熱溶融したときに石英坩堝からボロン(B)やアルミ(Al)などが原料融液に溶出するため高抵抗率でP型の導電性を有するものとなる。なお、このように形成されたシリコン単結晶内には酸素がドナーとして混入しているが、後述の溶融帯24から蒸発するため、後段のFZ法において形成されるシリコン単結晶に酸素は殆ど残存しない。
CZ法において形成されるシリコン結晶は、石英坩堝に含まれる不純物を融液を介して取り込むためP型となり、その抵抗率が1000〜100000Ωcmであることが知られているが、CZ法で用いる坩堝内に極微量の砒素(As)、赤燐(P)等のN型の不純物をドープすることによりキャリア補償を行うことができる。なお、上述の極微量のN型の不純物とは、上述の抵抗率を有するシリコン結晶のキャリア補償を目的とするN型の不純物の量であり、その濃度範囲は3.4×1010〜3.9×1012atoms/cmが好適である。
FZ法によるシリコン単結晶の製造は、図2、図3に示すように、まず先細り状にした原料棒22の先端部(下端部)を誘導加熱コイル16により加熱溶融して溶融帯24を形成し(図2(a))、種結晶34の上端と癒着させる(図2(b))。次に種絞りをするための絞り代24aを原料棒22に形成し(図2(c))、その後に直径約3mmの無転位化を行うための絞り部32を形成する(図2(d))。続いて原料棒22を徐々に下方に移動させながら、直径を徐々に拡大して単結晶化したコーン部30の形成を開始する(図3(e))。そしてコーン部30の直径をさらに拡大し(図3(f))、その最大部分が目的直径に達したら、その直径を維持しながら、晶出界面26において溶融帯24を結晶化させることにより、さらに単結晶の直胴部28の成長を続け、目的長さを有する単結晶棒を形成する(図3(g))。
図1に示すように、抵抗率を調整するための不純物のガスドープは、チャンバ内をArガスで充填した状態で、ノズル18から例えば不純物であるホスフィン(PH)をキャリアガス(Ar等)に極微量だけ添加したドープガスを所定の流量で噴射して溶融帯24に前記ドープガスを照射することにより行う。
ガスドープで抵抗率を調整しつつシリコン単結晶を製造する場合、原料棒となるシリコン結晶はできるだけ高抵抗率であることが望ましい。高抵抗率であるほど原料棒に含有される不純物量を無視することができるからである。また、ガスドープは原料棒を一部溶解させた溶融帯に対して行われる。そして、ドープガスを一定流量にすることにより、晶出界面26においてN型の不純物の濃度を一定に維持し、晶出後のシリコン単結晶の直胴部28の長手方向のN型の不純物濃度を一定に保ち、これに起因してシリコン単結晶の抵抗率のばらつきを抑制できるものと考えられる。
図4に、P型である原料棒を用いてFZ法によりシリコン単結晶を製造する場合の、シリコン単結晶の抵抗率(図4のグラフの縦軸)と、ドープガス中のN型の不純物(例えばPH)のドープ量の依存性を示す。簡単のためドープ量を抵抗率に置き換えている。すなわちドープ量とドープ量から見積もられる目標抵抗率(図4のグラフの横軸)は反比例の関係にあり、目標抵抗率が下がるほどドープ量は増えることを意味している。同様に原料棒においても測定抵抗率が低いものほどP型の不純物の濃度が高いことを意味している。
図4において、P型の原料棒の抵抗率を100Ωcm、500Ωcm、1000Ωcm、5000Ωcm、10000Ωcm、50000Ωcm、100000Ωcmに設定した。原料棒が100Ωcmの場合、N型の不純物のドープ量が100Ωcmのところで抵抗率を示す曲線がピーク(最大値)となるのは、P型の不純物及びN型の不純物が互いにキャリア補償したためである。同様にドープ量が、原料棒の抵抗率(図4では500Ωcm、1000Ωcm)と同一の抵抗率に相当する量となったところで抵抗率を示す曲線がピークとなっている。図4には示されていないが、それ以上の抵抗率を有する原料棒においても、同一の抵抗率に相当する不純物をドープすることによりキャリア補償が起こり、その領域で抵抗率を示す曲線はピークを有する。図4に示される曲線において、ピークより右はFZ法によるシリコン単結晶がN型であることを示し、左はP型であることを示している。
例えば、50000Ωcm、100000Ωcmの原料棒を用いる場合、図4に図示した範囲においては、抵抗率を示す曲線の傾きがほぼ1で直線状態であり、不純物のドープ量から見積もられる目標抵抗率と製造されたシリコン単結晶の測定抵抗率がほぼ一致するため、抵抗率のばらつきの少ないシリコン単結晶を得ることができる。一方、500Ωcmの原料棒から100Ωcm程度のシリコン単結晶を製造しようとすると、目標抵抗率はシリコン単結晶の抵抗率とは一致せず、原料棒に含まれるP型の不純物の影響が無視できず、この場合は数十%高い抵抗率を有するものが得られることになる。
図5にガスドープを伴うFZ法によるシリコン単結晶を製造する場合の、シリコン単結晶の目標抵抗率と、製造されたシリコン単結晶の抵抗率との関係を示す。図5のグラフの縦軸はシリコン単結晶の抵抗率の目標抵抗率からのズレの割合を示し、横軸は原料棒の抵抗率を目標抵抗率で割ったものである。実用的に考えて、目標抵抗率からのズレを5%以内に収めるために、原料棒の抵抗率は、図5からわかるように目標抵抗率の19倍以上のものを用いる必要がある。さらに2%以内とするためには、45倍以上のものを用いる必要がある。
以下に本実施形態に係る実施例と、参考のための比較例を示す。ここで、図6は、CZ法により製造されたシリコン結晶の長手方向の抵抗率分布を示すグラフであり、図7は、CZ法により製造されたシリコン結晶を原料棒として用いたFZ法によるシリコン単結晶の長手方向の抵抗率分布を示すグラフである。なお、キャリア補償とは、実際にP型とN型のキャリアが互いに補償すること以外に、実用的には、抵抗率が高くなり、P型及びN型の判定が不能(導電型不定)となった場合も含まれるものとする。
[実施例1]
天然石英坩堝を用いて、ノンドープでCZ法によるシリコン結晶を製造した。このとき、結晶の直径は131mm、直胴の長さは1500mmであった。別のバッチで引き上げた結晶の抵抗率は、図6に示すように頭部側(種結晶に接続する側)が3500〜5200Ωcm、尾部側が1250〜1290ΩcmのP型のシリコン単結晶となっていた。また酸素濃度は14〜21ppmaの範囲で変化していた。この結晶を外周研削し、先端にテーパ形状を形成することで、FZ法の原料棒として加工した。このときテーパは尾部側に形成されており、この原料棒を2.5mm/minで、誘導加熱コイル側に下降させ、溶融帯を形成させて誘導加熱コイルの下方でシリコン単結晶を晶出(以下、ゾーニングと称す)することで、直径155mm、直胴長さ830mmのシリコン単結晶を製造した。
FZ法によるシリコン単結晶製造工程において目標抵抗率を30Ωcmとして3.0ppmのホスフィンを一定流量(92cc/min)に調整してキャリアガス(Ar)とともに溶融帯に吹き付けた。これにより得られたN型のシリコン単結晶において、直胴部分の長手方向の抵抗率分布は図7(a)に示すように全域で30〜30.6Ωcmで、非常に均一性が良好なものとなった。また、同時に酸素濃度を測定したところ0.2〜0.12ppmaであり、大部分が溶融帯から蒸発し、シリコン単結晶には酸素が殆ど取り込まれていないことを確認した。
[実施例2]
合成石英坩堝を用いて、ノンドープでCZ法によるシリコン結晶を製造した。このときの結晶の直径は131mm、直胴の長さは1500mmであった。別のバッチで引き上げた結晶の抵抗率は、図6に示すように頭部側が8300〜91000Ωcm、尾部側が3180〜3520ΩcmのP型のシリコン単結晶となっていた。また酸素濃度は16〜21ppmaの範囲で変化していた。この結晶を外周研削し、先端にテーパ形状を形成して、FZ法の原料棒として加工した。このとき、テーパは尾部側に形成されており、この原料棒を成長速度2.5mm/minでゾーニングすることで直径155mm、直胴の長さ830mmのシリコン単結晶を製造した。
このとき、上述同様に目標抵抗率を100Ωcmとして3.0ppmのホスフィンを一定流量(41cc/min)に調整してキャリアガス(Ar)とともに溶融帯に吹き付けた。これにより得られたシリコン単結晶の直胴部分の長手方向の抵抗率分布は図7(b)に示すように、全域で100.5〜102.2Ωcmとなり、非常に均一性の良好なものとなった。また同時に酸素濃度を計測したところ、0.2〜0.15ppmaであり、上述同様にシリコン単結晶には殆ど取り込まれていないことを確認した。
[実施例3]
天然石英坩堝を用いて、極微量のP(リン)をドープしたCZ法によるシリコン結晶を製造した。このとき、結晶の直径は131mm、直胴の長さは1500mmであった。この結晶の頭部及び尾部からサンプルを切り出し、650℃の温度下で30分の熱処理を加えることで酸素ドナー消去を行った後に、4端子法で抵抗率を測定した。その結果、頭部側が12800ΩcmでP型、尾部側が152000Ωcmで導電型不定であった。これは尾部側で偏析により濃度が増大した不純物と坩堝から溶出してくるボロンなどが同時に取り込まれてキャリア補償したことによるものと考えられる。この結晶を外周研削し、先端にテーパ形状を作ることで、FZ法の原料棒として加工した。このときテーパは尾部側に形成されており、この原料棒を成長速度2.5mm/minでゾーニングすることで、直径155mm、直胴の長さ800mmのシリコン単結晶を製造した。
このとき、上述同様に目標抵抗率を100Ωcmとして3.0ppmのホスフィンを一定流量(41cc/min)に調整してキャリアガス(Ar)とともに溶融帯に吹き付けた。これにより得られたシリコン単結晶の直胴部分の長手方向の抵抗率分布は、全域で99.0〜101.2Ωcmとなり、非常に均一性の良好なものとなった。また、同時に酸素濃度を計測したところ、0.23〜0.18ppmaであり、上述同様にシリコン単結晶には酸素は殆ど取り込まれていないことを確認した。
[比較例1]
直径130mm、長さ1600mmの多結晶シリコンをFZ法の原料棒とし、ゾーニングすることで、直径155mm、直胴の長さ850mmのシリコン単結晶を製造した。このとき、上述同様に目標抵抗率を100Ωcmとして3.0ppmのホスフィンを一定流量(41cc/min)に調整してキャリアガス(Ar)とともに溶融帯に吹き付けた。これにより得られたシリコン単結晶の、直胴部分の長手方向の抵抗率分布は、全域で99.5〜101.8Ωcmとなり、非常に均一性の良好なものであった。また、同時に酸素濃度を計測したところ0.1ppma以下であった。すなわち、上記3つの実施例は、比較例1より若干酸素濃度が高くなること以外は、比較例1と同等の結果となった。
[比較例2]
天然石英坩堝を用いて、結晶頭部で500ΩcmとなるようにP(リン)をドープしたCZ法によるシリコン結晶を2本製造した。結晶の直径は131mm、直胴の長さは1500mmであった。この結晶の頭部及び尾部からサンプルを切り出し、650℃の温度下で30分の熱処理を加えることで酸素ドナー消去を行った後に、4端子法で抵抗率を測定した。その結果、頭部側がそれぞれ524.1Ωcm、601.9ΩcmでN型、尾部側がそれぞれ、189.9Ωcmと419.6ΩcmでN型であった。頭部、尾部ともにばらつきが大きいが、これは製造中に揮発性のあるP(リン)が蒸発したため、あるいは石英坩堝から溶出したボロン等の不純物とのキャリア補償が原因と考えられる。この結晶を外周研削し、先端にテーパ形状を形成することで、FZ法の原料棒として加工した。このときテーパは尾部側に形成されており、この原料棒を2.5mm/minでゾーニングすることにより、直径155mm、直胴の長さ800mmのシリコン単結晶を2本製造した。
このとき、原料棒の長手方向の抵抗率は頭部側および尾部側で得られた抵抗率から推定し、上述同様に目標抵抗値を30Ωcmとして、3.0ppmのホスフィンを27.6〜31.0cc/minの流量の範囲で前記推定に対応させつつ調整しながら、キャリアガス(Ar)とともに溶融帯に吹き付けた。これにより得られたシリコン半導体の直胴部分の長手方向の抵抗率分布は、図7(c)に示すように全域で25〜35Ωcmの間でばらついており、実用に耐えうるものではなかった。CZ法によって製造されたシリコン単結晶の抵抗率が一様ではなく、その変化が大きかったため、従来技術で説明したようにガスドープ量を変化させてもこれに追従できなかったためと考えられる。また、同時に酸素濃度を計測したところ、0.25〜0.15ppmaであり、上述同様に結晶には酸素が殆ど取り込まれてはいないことを確認した。
実施例1においては、原料棒の抵抗率/目標抵抗率の最小値は41.7で、FZ法により形成されたシリコン単結晶の抵抗率と目標抵抗率のズレ(誤差)は最大で2%である。実施例2においては、原料棒の抵抗率/目標抵抗率の最小値は31.8で、FZ法により形成されたシリコン単結晶の抵抗率と目標抵抗率のズレ(誤差)は最大で2.2%である。実施例3においては、原料棒の抵抗率/目標抵抗率の最小値は128で、FZ法により形成されたシリコン単結晶の抵抗率と目標抵抗率のズレ(誤差)は最大で1.2%である。よっていずれの実施例においても図5の曲線上もしくはそれに近い位置にプロットすることができる。
一方、比較例2においては、原料棒の抵抗率/目標抵抗率の最小値は6.3で、FZ法により形成されたシリコン単結晶の抵抗率と目標抵抗率のズレ(誤差)は最大で16.7%であり、図5の曲線上にプロット可能であるが、実施例1乃至実施例3とは縦軸方向で大きく離れた位置にプロットされることになる。
上記のことから、実施例1、実施例2のように石英坩堝から引き上げたP型のシリコン結晶を原料棒とし、FZ法の製造工程においてN型の導電型の不純物を含むドープガスを添加してN型のシリコン単結晶を製造すると、比較例1のように従来の方法で製造したN型のシリコン単結晶と遜色のない結晶が得られることがわかり、実用的にはこれらの方法が最も好ましいと考えられる。またCZ法においてN型の導電型の不純物を添加する場合は、実施例3のように、P型の不純物のキャリア補償を行う程度の添加量とすれば、実施例1、実施例2、比較例1と遜色のないN型のシリコン単結晶が得られることがわかる。特に実施例2、実施例3の場合は、実施例1よりも高抵抗率のN型のシリコン単結晶を安定的に製造できることがわかる。一方、比較例2に示すように、FZ法の原料棒としてN型のシリコン結晶をCZ法により製造すると抵抗率が不安定となり、この影響がそのままFZ法によるシリコン単結晶に表れるので、この方法は好ましくないことがわかる。
以上説明したように、本実施形態に係るFZ法によるシリコン単結晶の製造方法によれば、ガスドープは原料棒を一部溶解させた溶融帯に対して行われる。そして、FZ法の原理的特性どおりに、結晶全体で抵抗率のばらつきが抑制されたN型のシリコン単結晶を製造することができる。
また、原料棒中のP型の不純物は、FZ法による製造工程においてN型の不純物によりキャリア補償されることとなるが、原料棒の抵抗率よりN型のシリコン単結晶の抵抗率が低いオーダを有する場合、すなわち、CZ法によるシリコン結晶の製造中に溶出したP型の不純物の濃度より、N型の不純物の濃度の方が十分に高くなるようにガスドープ量を調整することにより、N型の不純物に対するP型の不純物の影響は無視できるので、従来のように多結晶シリコンを原料棒として用いたFZ法によるシリコン単結晶と同等の抵抗率分布をもつシリコン単結晶を製造することができる。
またCZ法において、P型の不純物のキャリア補償を目的とする微量のN型の不純物をドープするため、キャリア補償を目的としたN型の不純物のドープする工程と、抵抗率を決定するためのN型の不純物のドープする工程とが分離したことになる。よってさらに高抵抗率なシリコン単結晶をCZ法において製造し、これを原料棒として用いるので、FZ法において、高い抵抗率を有し、かつ抵抗率のばらつきを抑制したシリコン単結晶を製造することができる。
さらに、原料棒を形成するCZ法において合成坩堝を用いることにより、原料棒の抵抗率を高め、FZ法において高い抵抗率を有し、かつ抵抗率のばらつきを抑制したシリコン単結晶を製造することができる。なお、目的とする抵抗率に応じて天然石英坩堝と合成石英坩堝を使い分けても良く、例えば、上述の実施例3の場合に合成石英坩堝を用いてもよい。
CZ法で製造された原料棒を用い、コストを抑制しつつ抵抗率のばらつきを抑制したN型のシリコン単結晶の製造方法として利用できる。
本実施形態に係るFZ法単結晶製造装置の模式図である。 本実施形態に係るFZ法のシリコン単結晶の製造工程を示す模式図である。 本実施形態に係るFZ法のシリコン単結晶の製造工程を示す模式図である。 本実施形態に係るFZ法のシリコン単結晶のN型の不純物のドープ量と抵抗率の関係を示したグラフである。 本実施形態に係るFZ法のシリコン単結晶における目標抵抗率と測定抵抗率の関係を示すグラフである。 CZ法により製造されたシリコン単結晶の長手方向の抵抗率分布を示すグラフである。 CZ法により製造されたシリコン単結晶を原料棒として用いたFZ法によるシリコン単結晶の長手方向の抵抗率分布を示すグラフである。
符号の説明
10………FZ法単結晶製造装置、12………チャンバ、14………上軸、16………誘導加熱コイル、18………ノズル、22………原料棒、24………溶融帯、26………晶出界面、28………直胴部、30………コーン部、32………絞り部、34………種結晶。

Claims (4)

  1. FZ法によるシリコン単結晶の製造方法であって、CZ法により形成されたP型のシリコン結晶を原料棒とし、N型の不純物をガスドープして、N型のシリコン単結晶を形成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  2. 前記不純物のガスドープ量を、前記N型のシリコン単結晶の抵抗率が前記原料棒の抵抗率より低くなるように調整したことを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
  3. 前記原料棒となるシリコン結晶の形成時に、極微量のN型の不純物をドープしたことを特徴とする請求項1または2に記載のシリコン単結晶の製造方法。
  4. 前記原料棒となるシリコン単結晶を、合成石英坩堝を用いて形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
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