JP2010130731A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】起動時からセンサレスベクトル制御を基本としたフィードバック制御を適用することにより、制御の切換を不要にするとともに外乱に対するロバスト性を向上させ、さらには安価に構成できるモータ制御装置2を提供する。
【解決手段】電流測定手段3で測定されたモータ1の電機子電流から少なくともロータの回転速度を推定算出し、推定算出されたロータの推定回転速度と予め設定された目標回転速度との偏差を小さくするようにモータ1に供給する電機子電流を設定することによって、モータ1に対するフィードバックによるセンサレスベクトル制御を実施する。このとき、前回のフィードバックループで算出したロータの推定回転速度を低減補正し、低減補正したロータ推定回転速度からd軸誘起電圧を推定算出し、該推定算出されたd軸誘起電圧に基づいてロータの回転速度を推定算出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、センサレスベクトル制御を用いて電動モータを制御するモータ制御装置に関するものである。
特許文献1に示すように、位置センサや速度センサを用いることなく、モータに流れる電流と磁束方向からモータの回転位置や回転速度を推定演算し、その演算結果と設定値との比較結果からモータを制御(センサレスベクトル制御)するモータ制御装置が知られている。
ところでセンサレスベクトル制御では、通常、ゼロ速での位置推定ができないため、上手く起動ができないとされている。そこで従来、例えば、高周波電圧印加法を利用してロータを位置検出した後、センサレスベクトル制御に切り換える方法が採用されている。高周波電圧印加法とは、高周波電圧を印加し、その結果、発生する高周波電流を検出して演算処理をおこない、ロータの位置検出を行う方法である。初期位置検出後は高周波による位置推定を行いながら、適当な起動トルクを与えてセンサレス制御を実行する。
しかしながら、高周波電圧印加法では、高周波電圧により発生する高周波電流を検出してロータの位置検出演算を行うため、演算処理能力の高いマイクロコンピュータが必要となる。したがって低コスト化が難しいという問題点がある。
一方、高性能マイクロコンピュータを必要としない方式としては、同期運転起動法が提案されている。同期運転起動法では、フィードフォワードの同期による強制回転の後、センサレスベクトル制御に切り換える。
特開2008−278594
ところが、一般的に使われるフィードフォワードによる強制同期運転による起動の場合、モータ負荷が未知のため、起動トルクを最適値に設定することが困難である。そのため起動トルクは通常、最大トルクに設定され、かつそのときの起動速度も実験的に設定される場合がほとんどである。そのため、最大電流で駆動させることから、効率劣化を招きやすいという問題点がある。
また、一定のトルクや起動速度は、そのときの負荷の大きさやイナーシャなどにより、十分な値が得られない場合があるうえ、フィードフォワード制御は外乱に対して制御不能であり、特に切り換え時は制御が不安定となりやすい。
本発明は、かかる不具合を鑑みてなされたものであって、起動時にはセンサレスベクトル制御を適用できないという従来の発想を覆し、起動時からセンサレスベクトル制御を基本としたフィードバック制御を適用することにより、制御の切換を不要にするとともに外乱に対するロバスト性を向上させ、さらには安価に構成できるモータ制御装置を提供すべく図ったものである。
すなわち、本発明に係るモータ制御装置は、モータの電機子電流を測定する電流測定手段と、前記電流測定手段で測定されたモータの電機子電流から少なくともロータの回転速度を推定算出し、この推定算出されたロータの推定回転速度と予め設定された目標回転速度との偏差を小さくするようにモータに供給する電機子電流を設定することによって、モータに対してのフィードバックによるセンサレスベクトル制御を実施するものであって、前回のフィードバックループで算出したロータの推定回転速度を低減補正し、低減補正したロータ推定回転速度からd軸誘起電圧を算出し、算出されたd軸誘起電圧に基づいてロータの回転速度を推定算出することを特徴とする。
ここで、基本となる理論的なd軸誘起電圧算出式を(1)式に示す。
daxis_BEMF = −Vd+R・id−ω・Lq・iq ・・・(1)
daxis_BEMF:d軸誘起電圧
Vd :d軸電圧
R :モータ巻き線抵抗(1相あたり)
id :d軸電流
ω :ロータ回転速度
Lq :q軸インダクタンス
iq :q軸電流
しかして、起動時、トルク電流を印加する推定軸δが、実際のq軸に対して誤差を有する場合には、この式を単純に用いると、実際のトルク電流iqは、想定よりも急激に大きくなる。したがって、定常時に電流制御ゲインをあわせた通常のセンサレスベクトル制御では、電流制御ゲインが最適値より大きくなるため、軸誤差や負荷、イナーシャの大きさによっては起動ができなくなる。一方、起動時にあわせて電流制御ゲインを設定すると最適値より小さく設定することになり、軸誤差がほとんどない定常時ではミスマッチとなる。
これに対し、本発明によれば、前回のループで算出したロータの推定回転速度を低減補正し、低減補正したロータ推定回転速度からd軸誘起電圧を推定算出している。つまり、d軸誘起電圧の推定算出にあたって、式(1)の右辺第3項の影響を小さくするように補正する、すなわち起動時において誤差が大きいと考えられる回転速度の影響を小さくするので、低速・大電流での起動を実現でき、軸誤差が大きい起動時であってもフィードバックによるセンサレスベクトル制御を用いて確実な起動を図ることができる。
そのほかにもd軸誘起電圧で速度を推定算出していることから、d軸電圧Vdに値が大きくなるような補正を付加してもよいし、モータ誘起電圧のリップル電圧を利用したり、故意に3相電流にわずかなDCオフセットを重畳したりしてもよい。
このように構成した本発明によれば、起動時からフィードバックによるセンサレスベクトル制御を実施できるので、不安定となる制御切り替えの期間を不要にでき、かつ常にフィードバックループで制御しているので負荷変動等に対するロバスト性を大幅に向上させることができる。
また、そもそもd軸誘起電圧の推定算出には、除算がないことやその結果に基づいて直接ロータ回転速度を推定できるなど、比較的演算負荷が軽いところ、本発明では、d軸誘起電圧の前記算出式に若干の補正を施すのみであるため、ロースペックなマイクロコンピュータを用いることができ、安価な実現が可能となる。
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態にかかるモータ制御装置2は、例えば、3相駆動される洗濯機のブラシレスDCモータを制御するものである。図1は、本モータ制御装置2を用いたモータ駆動システム100を示している。この図1中、符号1は前記ブラシレスDCモータ、符号2は、本実施形態に係るモータ制御装置2、符号3は、電機子電流を測定する電流計3(電流測定手段)、符号4は、モータ制御装置2からの指令信号を受け付けて前記モータ1を駆動するドライブ回路である。
前記モータ制御装置2は、CPU、メモリ、I/Oチャネル、A/Dコンバータ等を備えたマイクロコンピュータであり、前記メモリに記憶させたプログラムにしたがってCPU及びその周辺機器が協働することにより、モータに対してフィードバックによるセンサレスベクトル制御を実施する。すなわち、前記電流計3で測定されたモータ1の電機子電流iu、iwからロータの回転速度及び位置を推定算出し、その推定算出されたロータの推定回転速度と予め設定された目標回転速度との偏差を小さくするようにモータ1に供給する電機子電流(または電機子電圧Vu、Vv、Vw)を設定する。
しかしてこの実施形態では、図1に示すモータ制御装置2の制御ブロック図からわかるように、前回のフィードバックループで算出したロータの推定回転速度を低減補正し、低減補正したロータ推定回転速度からd軸誘起電圧を推定算出し、推定算出されたd軸誘起電圧に基づいてロータ位置の変位(推定軸誤差角)を推定し、そこからPLLにより、ロータの回転速度を推定算出するようにしている。
このときのd軸誘起電圧の算出式は以下の式(2)で表される。
daxis_BEMF* = −Vγ+R・iγ−ω~・Lq・iδ・K ・・・(2)
daxis_BEMF*:推定算出されたd軸誘起電圧
K :速度低減補正係数
ω~ :ロータの推定回転速度
Vγ :γ軸(推定d軸)上の電圧
R :モータ巻き線抵抗(1相あたり)
iγ :γ軸上の電流
Lq :q軸インダクタンス
iδ :δ軸(推定q軸)上の電流
このような構成によって、軸誤差が大きい起動時からのフィードバックによるセンサレスベクトル制御を実現できるのであるが、その理由を以下に説明する。
従来の誘起電圧によるロータ回転速度算出方式では、通常、ゼロ速での位置推定ができないため、上手く起動ができないとされる。しかし、逆に速度がゼロでなければ、極低速でも誤差を含みはするが、位置推定演算は可能という特性を持つ。誤差を含むのは、低速により十分な誘起電圧が検出できないためである。そこで、位置推定結果が多くの軸誤差を含むことを前提とした場合、起動時に与えるトルク電流iδと発生トルクとの関係を考える。
図2のように、軸誤差を含む推定軸γ−δ系において、起動電流iδを与えた時に発生するd−q軸上の電圧変化を表したものを示す。なお、ここではid=0での制御を想定している。
図2より、磁石による磁束がφaであるときに、誤差を持つγ軸上での該磁石による磁束φ0’はd軸上での磁束φ0に比較して小さく、相対的に、ω~・Lq・iδ(推定式2の第3項)によるVへの影響が大きいことがわかる。この意味するところは、起動時のようにトルク電流を印加する推定軸γ、δに誤差がある場合には、電圧Va(δ軸上での電圧Vδ)の状態において、回転数誤差を低減させるべく、δ軸上でのトルク電流iδを増大させ、電圧VδをVδ’まで上昇させると、図2からも明らかなように、Vaに対応するq軸上での電圧VqがVq’まで大幅に増大し、実際のトルク電流iqも想定した値、つまり推定軸であるδ軸上でのトルク電流iδの増大分よりも、より急激に大きくなるということである。
これは、軸誤差のない状態を示した図3と比較すれば明らかである。
したがって、起動時にあわせて電流制御ゲインを設定すると最適値より小さく設定することになり、軸誤差がほとんどない定常時ではミスマッチとなり、定常時でゲインをあわせると最適値より大きくなるため、軸誤差や負荷、イナーシャの大きさによっては起動ができなくなる。
これに対し、d軸誘起電圧による位置推定式に、前述した式(2)のように、推定速度を小さくする補正係数K(0<K<1)を乗算しておけば、軸誤差が含まれる起動時に、前記ω~・Lq・iδの影響を小さくすることができ、軸誤差をキャンセルして確実に起動させることが可能になる。
なお、Kは適当な定数でもよく、トルク電流iδに比例した値でもよい。ただし、起動時、もしくは推定誤差が生じる極低速時のみ有効とするほうが良い。要は、式(2)の右辺第3項が、起動時のトルク電流によって大きな値にならないようにすることが、重要なポイントである。
次に、速度低減補正係数Kを付加した推定方式で起動させる場合の動作を説明する。
起動時のロータ位置が既知として、トルク軸であるq軸に電流iqを与える。モータは電流iqによって生じるトルクで指示方向に回転動作するが、その速度は負荷トルクにより不定である。しかし、起動初期からd軸誘起電圧推定式(式2)が演算しているため、前記第3項がiqにより値を持ち、その結果daxis_BEMF*がなんらかの速度偏差を出力する。これをPLL制御することにより得られる推定速度ω~はゼロではないある値を持つ。このとき、速度ω~が負の値を持つと、ロータが逆回転し続ける場合があるため、起動時の推定速度ω~には回転方向が一定となる制限、つまり正又は負のいずれかとなるような制限を加えても良い。
このようにしてロータが回転すると、軸誤差がゼロになるほどの精度はないものの必ず誘起電圧が発生する。この少しの誘起電圧の発生により、一度得られたロータの回転は原理的にはゼロになることがないのは、速度ループフィードバック制御を行っていることから明白である。さらに、iqが大きな値をとっても、前記第3項が小さい値となるように速度低減補正係数Kを決めていることから、モータ1を低速で大電流印加の状態にすることができる。これはモータ負荷が未知の状態においては重要なことである。つまり負荷が大きいときは負荷角Δθ(1)とトルクが大きくなり、負荷が小さければ負荷角Δθ(2)とトルクは小さくなる。すなわち、未知の負荷を、それぞれ十分に駆動することのできるトルクで起動させることが可能となる。このときの最大電流値はモータ1の最大負荷駆動能力に応じて最適に設定しておけばよく、そのため最大負荷での起動が実現できる。(図4参照)
一方、誘起電圧による推定式が真値に収束できない起動時の極低速ではPLLの制御定数を適当に設定することで、徐々に加速させることが可能である。例えば、PLLの積分ゲインを大きく設定すればよい。
そのほかにもd軸誘起電圧で速度を推定していることから、d軸電圧Vdに値が大きくなるような補正を付加してもよい。またモータ誘起電圧のリップル電圧を利用したり、故意に3相電流にわすかなDCオフセットを重畳したりしてもよい。
ところで、推定式が真値に収束できない状況で回転速度が一度増加すると、それにあわせて誘起電圧が上昇し、推定式が収束しやすい状況になることから、推定軸の軸誤差が減少し、トルクが増加することになる。
そうすると、目標速度に到達しない状況でトルク電流iqは上昇または維持し続けるため、さらに速度を増すことになる。速度が増すことでさらに誘起電圧による推定軸の誤差が真値に近づき、トルクが増加する。この動作上の相互影響が推定式を収束するように機能するため、ロータ回転速度は上昇し、d軸誘起電圧による位置推定式は収束、推定軸が真値となり、以降、センサレス制御が実現する。
以上のようなループで制御することから、本実施形態によれば、起動から定常にいたるまでの間、位置推定式は一貫して1つであり、制御切り換え期間は必要がない。また、常にフィードバックループで制御しているので、起動直後から負荷変動に強い。さらに、d軸誘起電圧の前記推定算出式(数2)が自ずと収束するような制御となるため、同期運転起動と比較して効率劣化が比較的小さくなる。加えて、d軸誘起電圧の前記推定算出式(数2)は演算負荷が小さいため、安価で低性能のマイクロコンピュータを用いたセンサレス制御が実現可能である。
理解の容易のため、図5に電流iqと位置(軸)誤差θ_err、回転速度ωの簡易説明図を記載する。
起動時に初期位置は既知でも未知でもよく、未知の場合、起動初期は引き込み動作になる。既知であれば、引き込み動作の時間や、逆転遊動などがなく、起動がスムースになる。推定軸誤差は負荷が軽ければ位置誤差θ_errが大きく、負荷角は小さい。逆に負荷が大きければ、位置誤差θ_errが小さく負荷角が大きくなり、トルクが発生するよう推移する。速度低減補正係数Kにより、トルク電流iqは急激に上昇するが、回転速度は起動から徐々に上昇し、推定式が真値に収束するに従い速度は上昇し、速度制御ループの設定に応じてトルク電流は減少する。この間、d軸誘起電圧位置推定式(数2)のみでの起動・センサレス制御が実現している。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
本発明の一実施形態における電動モータの内部構造を示す部分斜視図。 同実施形態の電動モータにおいて、回転軸方向から永久磁石とその着磁領域を視た模式図。 同実施形態の電動モータにおいて、回転軸方向から永久磁石とフレームを視た模式図。 同実施形態における解析モデルを示す部分斜視図。 前記解析モデルの解析結果を示すグラフ。す模式的斜視図。
符号の説明
1 ・・・モータ
2 ・・・モータ制御装置
3 ・・・電流測定手段(電流計)
ω~ ・・・ロータの推定回転速度
ω_ref ・・・目標回転速度
K ・・・低減補正係数
daxis_BEMF* ・・・推定d軸誘起電圧

Claims (2)

  1. 電流測定手段で測定されたモータの電機子電流から少なくともロータの回転速度を推定算出し、推定算出されたロータの推定回転速度と予め設定された目標回転速度との偏差を小さくするようにモータに供給する電機子電流を設定することによって、モータに対するフィードバックによるセンサレスベクトル制御を実施するモータ制御装置であって、
    前回のフィードバックループで算出したロータの推定回転速度を低減補正し、低減補正したロータ推定回転速度からd軸誘起電圧を推定算出し、該推定算出されたd軸誘起電圧に基づいてロータの回転速度を推定算出するものであることを特徴とするモータ制御装置。
  2. 起動時からモータに対してのフィードバックによるセンサレスベクトル制御を実施するものである請求項1記載のモータ制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2014128887A1 (ja) * 2013-02-21 2014-08-28 三菱電機株式会社 モータ制御装置
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