JP2010127922A - イムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤及び食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法並びにプロゾーン現象が抑制されたイムノクロマトグラフィー測定キット - Google Patents
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Abstract
【課題】イムノクロマトグラフィーを利用した測定においてプロゾーン現象を抑制する技術を提供する。
【解決手段】イムノクロマトグラフィーに供される試験液中に含有させるイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤の有効成分としてドデシル硫酸ナトリウムを用いる。また、食品に抽出液を接触させて該食品中の成分を抽出した食品抽出液を調製した後、前記食品抽出液を検査目的とされている特定原材料に含まれている物質を特異的に認識する特異抗体に接触させ、免疫学的測定方法を利用して食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する食品検査方法において、前記免疫学的測定方法としてイムノクロマトグラフィーを用い、且つ、前記食品抽出液にドデシル硫酸ナトリウムを含有せしめることにより、食品検査測定時のプロゾーン現象を抑制する。
【選択図】なし
【解決手段】イムノクロマトグラフィーに供される試験液中に含有させるイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤の有効成分としてドデシル硫酸ナトリウムを用いる。また、食品に抽出液を接触させて該食品中の成分を抽出した食品抽出液を調製した後、前記食品抽出液を検査目的とされている特定原材料に含まれている物質を特異的に認識する特異抗体に接触させ、免疫学的測定方法を利用して食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する食品検査方法において、前記免疫学的測定方法としてイムノクロマトグラフィーを用い、且つ、前記食品抽出液にドデシル硫酸ナトリウムを含有せしめることにより、食品検査測定時のプロゾーン現象を抑制する。
【選択図】なし
Description
本発明は、イムノクロマトグラフィー測定に関し、より詳細には、イムノクロマトグラフィーを利用した、食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査するための食品検査測定に関する。
近年、消費者の食物アレルギーの問題への関心の高まりから、食品のパッケージなどに食物アレルギーを引き起こす原材料を含む旨の表示を付することが推奨されている。特に、アレルギーの発症数、重篤度から表示する必要性が高いとされる小麦、そば、卵、乳、落花生、えび、及びカニの7品目については、食品衛生法によっても、それら原材料を含む旨の表示をすることが製造者に義務付けられている。
また、「特定の原材料を含む」又は「特定の原材料を含まない」などの表示をすることによって、消費者に安心感を持って自己の製品を受け入れられるようにすることができるので、このような表示は製造者にとっても利益がある。
種々の原材料を混合して製造される加工食品においては、個々の原材料についての履歴をたどることは煩雑であり、得られた製品を直接検査できることが望ましい。また、原材料としては使用していないにも関わらず、製造ラインで混入(コンタミネーション)してしまう場合もある。そこで、製品の維持管理や、突発的な事故の予防の観点からは、特定原材料が食品に含まれるかどうかを、製造の現場であっても迅速かつ簡便に利用することができ、しかも精度よく検出できる食品検査方法の提供が望まれている。
従来、特定の原材料が含まれているかどうかを簡便に検査する方法としては、検査目的とされる対象物質を認識する特異抗体を利用した、ELISA法やイムノクロマト法などを利用することが知られていた。(下記特許文献1〜4参照。)
しかしながら、免疫学的測定方法のうちイムノクロマトグラフィーにおいては、用いる抗体の量に対して検査対象物質(抗原)が過剰に存在する場合、測定値が低下する、「プロゾーン現象」と呼ばれる現象が知られている。このプロゾーン現象のために、試料に検査目的とされる対象物質(抗原)が多量含まれている場合に、偽陰性と評価されるおそれがあり、その評価の信頼性に欠けるという問題があった。
特開2003−294737号公報
特開2003−294738号公報
特開2003−294748号公報
特開2007−278773号公報
しかしながら、免疫学的測定方法のうちイムノクロマトグラフィーにおいては、用いる抗体の量に対して検査対象物質(抗原)が過剰に存在する場合、測定値が低下する、「プロゾーン現象」と呼ばれる現象が知られている。このプロゾーン現象のために、試料に検査目的とされる対象物質(抗原)が多量含まれている場合に、偽陰性と評価されるおそれがあり、その評価の信頼性に欠けるという問題があった。
上記のような技術的背景に鑑み、本発明の目的は、イムノクロマトグラフィー測定において、そのプロゾーン現象を抑制する技術を提供することにある。また、イムノクロマトグラフィーを利用した、食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査するための食品検査測定において、プロゾーン現象を抑制する技術を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、ドデシル硫酸ナトリウムに、プロゾーン現象を抑制する作用効果のあることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤は、イムノクロマトグラフィーに供される試験液中に含有させるイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤であって、ドデシル硫酸ナトリウムを有効成分として含有することを特徴とする。
本発明のイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤によれば、イムノクロマトグラフィーに供される試験液中に検査対象物質(抗原)が比較的少量存在する、低濃度領域における検出性を維持したまま、なお且つ、イムノクロマトグラフィーに供される試験液中に検査対象物質(抗原)が比較的多量存在する、高濃度領域におけるプロゾーン現象を防ぐことができる。これにより、広範な濃度領域において信頼のおけるイムノクロマトグラフィー測定を行うことができる。
本発明のイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤においては、更に、亜硫酸塩を含有することが好ましく、その場合、亜硫酸塩が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸鉄から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。亜硫酸塩を含有することにより、ドデシル硫酸ナトリウムとの相互作用により加工食品から検査対象物質(抗原)を安定して可溶化することができる。
一方、本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法は、食品に抽出液を接触させて該食品中の成分を抽出した食品抽出液を調製した後、前記食品抽出液を検査目的とされている特定原材料に含まれている物質を特異的に認識する特異抗体に接触させ、免疫学的測定方法を利用して食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する食品検査方法において、前記免疫学的測定方法としてイムノクロマトグラフィーを用い、且つ、前記食品抽出液にドデシル硫酸ナトリウムを含有せしめることにより、食品検査測定時のプロゾーン現象を抑制することを特徴とする。
本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法によれば、イムノクロマトグラフィーを利用して食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する場合に、イムノクロマトグラフィーに供される食品抽出液にドデシル硫酸ナトリウムを含有せしめることにより、検査対象物質(抗原)が食品抽出液中に比較的少量存在する、低濃度領域における検出性を維持したまま、なお且つ、検査対象物質(抗原)が食品抽出液中に比較的多量存在する、高濃度領域におけるプロゾーン現象を防ぐことができる。これにより、広範な濃度領域において信頼のおける食品検査測定を行うことができる。
本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法においては、前記食品抽出液に、ドデシル硫酸ナトリウムと共に、更に、亜硫酸塩を含有せしめることが好ましく、その場合、亜硫酸塩が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸鉄から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。亜硫酸塩を含有することにより、ドデシル硫酸ナトリウムとの相互作用により加工食品から検査対象物質(抗原)を安定して可溶化することができる。
また、本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法においては、前記検査目的とされている特定原材料が小麦であり、前記特異抗体がグリアジンに対する特異抗体であることが好ましく、この場合、前記イムノクロマトグラフィーに供される前記食品抽出液中に含まれるグリアジンの濃度が、10ng/ml〜100μg/mlであることが好ましい。
また、本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法においては、前記検査目的とされている特定原材料が乳であり、前記特異抗体がカゼインに対する特異抗体であることが好ましく、この場合、前記イムノクロマトグラフィーに供される前記食品抽出液中に含まれるカゼインの濃度が、50ng/ml〜100μg/mlであることが好ましい。
一方、本発明のプロゾーン現象が抑制されたイムノクロマトグラフィー測定キットは、(1)ドデシル硫酸ナトリウム及び亜硫酸塩を含有し、食品に接触させる抽出液、並びに(2)免疫学的測定方法を利用して食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査するイムノクロマトグラフを含むことを特徴とする。
本発明の測定キットによれば、プロゾーン現象が抑制されるので、特定原材料の濃度が不明な食品等からのサンプルであっても、広範な濃度領域において信頼のおける測定を行うことができる。
本発明によれば、イムノクロマトグラフィーを利用した測定において、検査対象物質(抗原)が比較的少量存在する、低濃度領域における検出性を維持したまま、なお且つ、検査対象物質(抗原)が比較的多量存在する、高濃度領域におけるプロゾーン現象を防ぐことができる。これにより、広範な濃度領域において信頼のおける測定を行うことができる。
本発明のイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤は、イムノクロマトグラフィーに供される試験液中に含有させる用途に用いられる。その有効成分たるドデシル硫酸ナトリウムは、イムノクロマトグラフィーに供される試験液中の濃度として、0.01〜5w/v%程度に調整することが好ましく、0.03〜3w/v%程度に調整することがより好ましく、0.03〜1w/v%程度に調整することが最も好ましい。その範囲を下回ると、プロゾーン現象の抑制の効果に乏しく、好ましくない。また、その範囲を超えるとかえってイムノクロマトグラフィーによる検出性が損なわれるおそれがあるので、好ましくない。
本発明のイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤においては、更に、亜硫酸塩を含有することができる。亜硫酸塩は、イムノクロマトグラフィーに供される試験液中の濃度として、0.0001〜1M程度に調整することが好ましく、0.001〜0.1M程度に調整することがより好ましく、0.005〜0.03M程度に調整することが最も好ましい。その範囲を下回ると、ドデシル硫酸ナトリウムによる、プロゾーン現象抑制の作用効果を補助、促進する効果に乏しく、好ましくない。また、その範囲を超えるとかえってイムノクロマトグラフィーによる検出性が損なわれるおそれがあるので、好ましくない。
なお、食品分析に利用される本発明のイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤においては、亜硫酸塩を含有することが、以下の理由からも好ましい。すなわち、従来、抗体に金コロイド等を結合させて利用するイムノクロマトグラフィーにおいては、2−メルカプトエタノールを含むチオール基を有する還元剤(加工食品の抽出に効果がある)が抗体に標識した金コロイドやラテックスなどの粒子を凝集させて偽陽性反応の原因になることが知られていた。一方本発明においては、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)を用いることにより、加工食品から安定して被検査物質を抽出すると共にその偽陽性反応を回避でき、正確な検出ができるからである。また、食品添加物として慣用されている亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩を、食品からの成分抽出のための還元剤として用いるので、加工食品の製造現場でも安全で使用しやすいからである。また、安価な還元剤であるため安く食品検査のための抽出を行うことができるからである。
本発明のイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤において用いられる亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸鉄などを例示できる。また、食品添加物として慣用されている亜硫酸ナトリウムを好ましく例示できる。これらの亜硫酸塩は2種以上を併用してもよい。
一方、本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法は、食品に抽出液を接触させて該食品中の成分を抽出した食品抽出液を調製した後、前記食品抽出液を検査目的とされている特定原材料に含まれている物質を特異的に認識する特異抗体に接触させ、免疫学的測定方法を利用して食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する食品検査方法において、前記免疫学的測定方法としてイムノクロマトグラフィーを用い、且つ、前記食品抽出液にドデシル硫酸ナトリウムを含有せしめることにより、食品検査測定時のプロゾーン現象を抑制することを特徴とする。
本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法においては、食品と抽出液とを接触させて、食品中の成分を抽出し、食品抽出液を調製する。その食品抽出液中には、特定原材料に含まれている物質(以下、「検査目的物質」とする。)が、他の成分と共に、移行する。被検査物の食品の形態は、固形状、半固形状、ゼリー状、液状、乳化液状のいずれの形態のものであってもよい。食品と接触させる抽出液として、例えば、水、又は通常慣用されているリン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液などを使用することができる。
本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法においては、食品と接触させる前に食品と接触させる抽出液にドデシル硫酸ナトリウムを含有せしめてもよく、その食品中の成分の抽出中にドデシル硫酸ナトリウムを添加してもよく、調製された食品抽出液にドデシル硫酸ナトリウムを添加してもよい。すなわち、イムノクロマトグラフィーに供される食品抽出液にドデシル硫酸ナトリウムを含有せしめればよい。
また、ドデシル硫酸ナトリウムの量は、イムノクロマトグラフィーに供される食品抽出液中の濃度として、0.01〜5w/v%程度になるように調整することが好ましく、0.03〜3w/v%程度になるように調整することがより好ましく、0.03〜1w/v%程度になるように調整することが最も好ましい。その範囲を下回ると、プロゾーン現象の抑制の効果に乏しく、好ましくない。また、その範囲を超えると、かえってイムノクロマトグラフィーによる検出性が損なわれるおそれがあるので、好ましくない。
なお、後述するように、「検査目的物質」と特異抗体との免疫複合体を形成させる必要がある。上記食品抽出液の調製の際の塩濃度、pH、温度、時間等の諸条件は、「検査目的物質」が、特異抗体に対する抗原性を失わない範囲である必要がある。通常、上記抽出液及び/又は食品抽出液のpHはpH6〜8.5に調整することが好ましい。
抽出のためには、例えば、攪拌、混合、遠心分離、濾過等の周知の手段を適宜に用いて食品抽出液を調製することができる。その際、食品を粉砕し又は、ペースト状にして抽出液との接触面積を増やして、接触混合することが望ましい。これにより、抽出効率を上げることができる。またこのとき、食品と抽出液の質量比は、食品1に対して抽出液10〜100であることが好ましく、これにより、高濃度の食品抽出液を調製することができる。このように抽出した食品抽出液には、食品中の「検査目的物質」が、他の成分と共に、抽出液中に移行する。ここで、本発明において検査目的物質は、特定原材料1つに対して必ずしも1つだけである必要はなく、2つ以上であっても差し支えない。
本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法においては、更に亜硫酸塩を含有せしめる場合、その食品中の成分の抽出中に亜流酸塩を添加してもよいが、食品と接触させる抽出液に予め亜流酸塩を含有せしめることが好ましい。すなわち、イムノクロマトグラフィーに供される食品抽出液にドデシル硫酸ナトリウムと共に亜流酸塩を含有せしめればよい。
その場合、亜流酸塩の量は、イムノクロマトグラフィーに供される食品抽出液中の濃度として、0.0001〜1M程度になるように調整することが好ましく、0.001〜0.1M程度になるように調整することがより好ましく、0.005〜0.03M程度になるように調整することが最も好ましい。その範囲を下回ると、加工食品から安定して検査対象物質(抗原)を可溶化する効果に乏しく、好ましくない。また、その範囲を超えるとかえってイムノクロマトグラフィーによる検出性が損なわれるおそれがあるので、好ましくない。
本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法において用いられる亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸鉄などを例示できる。また、食品添加物として慣用されている亜硫酸ナトリウムを好ましく例示できる。これらの亜硫酸塩は2種以上を併用してもよい。
本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法は、例えば、検査目的とされている特定原材料が小麦であり、特異抗体としてグリアジンに対する特異抗体を用いる場合に、好ましく適用される。その場合、イムノクロマトグラフィーに供される前記食品抽出液中に含まれるグリアジンの濃度が、10ng/ml〜100μg/mlであることが好ましく、100ng/ml〜100μg/mlであることがより好ましく、10μg/ml〜100μg/mlであることが最も好ましい。その範囲を下回ると、検出が困難となり、好ましくない。また、その範囲を超えると、かえってイムノクロマトグラフィーによる検出性が損なわれるおそれがあるので、好ましくない。
本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法は、例えば、検査目的とされている特定原材料が乳であり、特異抗体としてカゼインに対する特異抗体を用いる場合に、好ましく適用される。その場合、イムノクロマトグラフィーに供される前記食品抽出液中に含まれるカゼインの濃度が、50ng/ml〜100μg/mlであることが好ましく、10μg/ml〜100μg/mlであることがより好ましい。その範囲を下回ると、検出が困難となり、好ましくない。また、その範囲を超えると、かえってイムノクロマトグラフィーによる検出性が損なわれるおそれがあるので、好ましくない。
上記のようにして得られた食品抽出液と、「検査目的物質」を特異的に認識する特異抗体とを接触させる。これにより、周知の抗原−抗体反応の結合メカニズムにより、免疫複合体が形成される。ここで、食品抽出液とは、免疫複合体の形成や後述する免疫学的測定方法のための至適条件となるように、適宜に、希釈、濃縮、pH調製等の処理を施した調製物を含む概念である。かかる免疫複合体の形成を測定する免疫測定方法により、「検査目的物質」の存在を検知することができ、ひいては、食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査することができる。
特定の物質を特異的に認識する特異抗体の調製は当業者に周知である。例えば、上記特許文献1(特開2003−294737号公報)には、「そばの70〜500kDに相当するタンパク質画分を主体とする抗原により免疫化した哺乳動物の血清から得られる当該血清のIgG画分又はポリクローナル抗体」が開示されている、上記記特許文献2(特開2003−294738号公報)には、「落花生の30〜100kDに相当するタンパク質画分を主体とする抗原により免疫化した哺乳動物の血清から得られる当該血清のIgG画分又はポリクローナル抗体」が開示されている、上記記特許文献3(特開2003−294748号公報)には、「卵白由来のタンパク質により免疫化した哺乳動物の血清から得られた抗体」が開示されている。このような周知技術により、「検査目的物質」を特異的に認識する特異抗体の調製をすることができる。
本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法においては、特異抗体による免疫複合体の形成を測定する免疫学的測定方法として、イムノクロマトグラフィーを用いる。イムノクロマトグラフィーは、測定機器を用いる必要がなく、目視で簡便に免疫学的測定の結果を判断でき、迅速で感度も高いという利点がある。イムノクロマトグラフィーの原理は、特開平5−5743号公報や特開2002−202307号公報にも記載されているとおり、当業者には周知である。
しかしながら念のために簡単にその原理の一例を説明すると、セルロースメンブレンなどの薄膜状支持体の特定領域(テストライン位置)には第1の特異抗体がバンド状に固定され、その別領域の試料滴下部又はその近傍下流付近には標識された第2の特異抗体が移動可能に保持されている。以下、本発明において、このように構成された抗体担持担体を「イムノクロマトグラフ」という。
分析対象物をその溶媒と共に試料滴下部に滴下すると、分析対象物と標識された第2特異抗体が毛細管現象により薄膜状支持体中に展開される。分析対象物に「検査目的物質」が含まれていれば、分析対象物が薄膜状支持体中に展開される間に同じように展開されている第2特異抗体は、「検査目的物質」と結合する。ここで、第2特異抗体は予め標識となる着色又は発色物質が結合されているので、「検査目的物質」に標識が結合することになる。その後、「検査目的物質」がテストライン位置に固定されている第1特異抗体と結合し、「検査目的物質」を挟んで第1特異抗体と第2特異抗体がまるでサンドイッチのように結合する。そうすると、テストライン位置に標識が集合するのでテストライン位置にあたかもバンドが出現するように見える。このバンドの出現によって、分析対象物中に「検査目的物質」が存在していると判断される。一方、分析対象物に「検査目的物質」が含まれていないか、また検出限界以下しか含まれていない場合には、テストライン位置でのバンドは出現しない。このイムノクロマトグラフィーは、分析対象物を試料滴下部に滴下した後、約5〜15分間程度で迅速且つ簡便な方法である。
上記標識としては、例えば、金属コロイド、酵素標識、着色ラテックス粒子、炭素粒子などを使用することができるが、金コロイドが抗体を標識しやすいので好ましい。
なお、イムノクロマトグラフィーにおいて、プロゾーン現象が生じるのは、対象物質(抗原)が過剰であるために、上記第1特異抗体と第2特異抗体とに過飽和に結合してしまい、テストライン位置での、「検査目的物質」を挟んだサンドイッチ構造の形成が阻まれるためであると考えられる。
一方、本発明のプロゾーン現象が抑制されたイムノクロマトグラフィー測定キットは、食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する方法に好適に用いることができる。特に、上述した本発明の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法に好ましく用いることができる。
本発明の測定キットには、キットの構成要素として、ドデシル硫酸ナトリウムが含まれる。ドデシル硫酸ナトリウムは、食品に接触させる抽出液に包含させた形態でキットに供給され得る。
本発明の測定キットには、キットの構成要素として、更に亜硫酸塩が含まれる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸鉄などを例示できる。食品添加物として慣用されている亜硫酸ナトリウムが好ましい。亜硫酸塩は2種以上を併用してもよい。亜硫酸塩は、食品に接触させる抽出液に包含させた形態でキットに供給され得る。
本発明の測定キットには、キットの構成要素として、更に免疫学的測定方法を利用して食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査するイムノクロマトグラフが含まれる。このイムノクロマトグラフには、検査目的とされる特定原材料に含まれる物質を特異的に認識する抗体が附合していることが望ましい。ここで「附合」とは、二以上の物が結合して、毀損するかまたは過分の費用を費やさなければ分離できない状態にあることを意味する。すなわち、検査目的とされる特定原材料に含まれる物質を特異的に認識する抗体がイムノクロマトグラフに担持、保持、固定等されていることを意味する。そして、上記抗体がイムノクロマトグラフに附合される際には、イムノクロマトグラフを構成するセルロースメンブレンなどの薄膜状支持体に保持又は直接固定される場合のほか、薄膜状支持体に結合しているろ紙等の多孔質性の小片に保持されている場合を例示することができる。
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<試験例1> (小麦グリアジンの検出)
小麦グリアジンをイムノクロマトグラフィーで測定する場合に、試験液中のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)や亜硫酸ナトリウムの存在が、その測定にどのような影響を与えるかを評価するため、以下の試験を行った。
小麦グリアジンをイムノクロマトグラフィーで測定する場合に、試験液中のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)や亜硫酸ナトリウムの存在が、その測定にどのような影響を与えるかを評価するため、以下の試験を行った。
まず、小麦粉1gに、下記表1に示す抽出液A又はBのいずれか19mlを加え、ボルテックスミキサーを用いてその最大速度で1分間攪拌した。これを100℃で、10分間煮沸し、常温に戻してから3000×gで20分間遠心分離した。上清を濾紙(アドバンテックNo.5A)で濾過し、小麦粉の抽出液を調製した。この小麦粉の抽出液について、モリナガFASPEK小麦測定キット(グリアジン)(株式会社森永生科学研究所製)を用いたELISA法で、別途、濃度を求めた。具体的には以下のとおりである。
すなわち、前記小麦粉の抽出液は、キットの検体希釈液Iで20倍に希釈された。なお、希釈液中の小麦総たんぱく質濃度が50ng/mlを超えるときは、更に希釈して小麦総たんぱく質濃度が1〜50ng/mlになるように調製した。その後、その被験体を1次抗体が固定されたプラスチックウェルに100μl注ぎいれられ、1時間インキュベーションされた。プラスチックウェルを調製済み洗浄液で洗浄した後、酵素標識抗体を30分間反応させた。その後、調製済み洗浄液で洗浄し、酵素基質溶液を添加して10分間反応させ、反応停止液で反応を停止させた。反応停止後、30分以内に主波長450nm、副波長620nmで吸光度を測定した。測定した吸光度は、同時に小麦総タンパク質を標準物質として用いて測定して作成した検量線に当てはめて、被検体中の小麦総たんぱく質濃度を求め、さらに、希釈倍率を乗じて、前記小麦粉の抽出液中の小麦総たんぱく質濃度を求めた。
抽出液Aを用いた小麦粉の抽出液を標準品Aとし実施例1に用い、抽出液Bを用いた小麦粉の抽出液を標準品Bとして比較例1に用いた。
上記小麦粉の抽出液の標準品を、下記表1に示すSDS及び亜硫酸を含む実施例1の標準品希釈液(抽出液の5倍希釈液)で、1ng〜100μgの範囲で段階希釈した。また、比較のため、下記表1に示すSDS及び亜硫酸を含まない比較例1の標準品希釈液でも、段階希釈液を調製した。
これらの段階希釈液について、小麦グリアジンのイムノクロマトグラフィー測定用キットである「モリナガ特定原材料イムノクロマト法キット ナノトラップシリーズ(小麦)」(商品名、株式会社モリナガ生科学研究所製)を用いて測定を行った。すなわち、上記段階希釈液のそれぞれ200μLを試験液として、スティックの試料滴下部に滴下し、約15分後に、グリアジンに対する特異抗体が担持されたテストライン位置でのバンドの出現の有無、又はその濃淡の様子を目視により観察した。また、そのバンドの強さを、光の反射を利用した測定器「イムノクロマトリーダICA−100(製品名、浜松ホトニクス株式会社製)を用いて測定し、mABS値(吸光度数)で数値化した。これらの結果をまとめて表2に示す。更に、そのバンドの強さの数値をグラフにしたものが図1である。
表2又は図1に示されるように、SDSと亜硫酸ナトリウムとを含有しない試験液を用いた系(比較例1)では、グリアジン濃度が50〜100ng/mLに達する付近からmABS値が低下し、プロゾーン現象が認められるようになり、バンドの濃淡の様子もメンブレン自体が赤くなり判定が付けづらくなった。また、グリアジン濃度が100μg/mLに達すると、バンドが認識できなくなり、偽陰性の結果が与えられた。一方、SDSと亜硫酸ナトリウムとを含有する試験液を用いた系(実施例1)では、グリアジン濃度が10ng/mLに達する付近からバンドが認識できるようになり、グリアジン濃度が1μg /mLに達する付近であってもプロゾーン現象が起こらず、バンドの濃淡の様子も100μg/mLに達するまで判定が付けづらくなることがなかった。
したがって、イムノクロマトグラフィーで小麦グリアジンを検出する際、SDS、亜硫酸系のほうが広範な濃度領域において信頼のおける測定を行うことができることが明らかとなった。
<試験例2>(乳カゼインの検出)
乳カゼインをイムノクロマトグラフィーで測定する場合に、試験液中のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)や亜硫酸ナトリウムの存在が、その測定にどのような影響を与えるかを評価するため、以下の試験を行った。
<試験例2>(乳カゼインの検出)
乳カゼインをイムノクロマトグラフィーで測定する場合に、試験液中のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)や亜硫酸ナトリウムの存在が、その測定にどのような影響を与えるかを評価するため、以下の試験を行った。
まず、牛乳1gに、下記表3に示す抽出液A又はBのいずれか19mlを加え、ボルテックスミキサーを用いてその最大速度で1分間攪拌した。これを100℃で、10分間煮沸し、常温に戻してから3000×gで20分間遠心分離した。上清を濾紙(アドバンテックNo.5A)で濾過し、牛乳の抽出液を調製した。この牛乳の抽出液について、モリナガFASPEK牛乳測定キット(カゼイン)(株式会社森永生科学研究所製)を用いたELISA法で、別途、濃度を求めた。具体的には以下のとおりである。
すなわち、前記牛乳の抽出液は、キットの検体希釈液Iで20倍に希釈された。なお、希釈液中の牛乳総タンパク質濃度が50ng/mlを超えるときは、更に希釈して牛乳総タンパク質濃度が1〜50ng/mlになるように調製した。その後、試験例1と同様にして、被検体中の牛乳総タンパク質を求め、さらに、希釈倍率を乗じて、前記牛乳の抽出液中の牛乳総タンパク質を求めた。
抽出液Aを用いた牛乳の抽出液を標準品Aとし実施例2に用い、抽出液Bを用いた牛乳の抽出液を標準品Bとして比較例2に用いた。
上記牛乳の抽出液の標準品を、下記表3に示すSDS及び亜硫酸を含む実施例2の標準品希釈液(抽出液の5倍希釈液)で、1ng〜100μgの範囲で段階希釈した。また、比較のため、下記表3に示すSDS及び亜硫酸を含まない比較例2の標準品希釈液でも、段階希釈液を調製した。
これらの段階希釈液について、乳カゼインのイムノクロマトグラフィー測定用キットである「モリナガ特定原材料イムノクロマト法キット ナノトラップシリーズ(乳)」(商品名、株式会社モリナガ生科学研究所製)を用いて測定を行った。すなわち、上記段階希釈液のそれぞれ200μLを試験液として、スティックの試料滴下部に滴下し、約15分後に、カゼインに対する特異抗体が担持されたテストライン位置でのバンドの出現の有無、又はその濃淡の様子を目視により観察した。また、そのバンドの強さを、光の反射を利用した測定器「イムノクロマトリーダICA−100」(製品名、浜松ホトニクス株式会社製)を用いて測定し、mABS値(吸光度数)で数値化した。これらの結果をまとめて表4に示す。更に、そのバンドの強さの数値をグラフにしたものが図2である。
表4又は図2に示されるように、SDSと亜硫酸ナトリウムとを含有しない試験液を用いた系(比較例2)では、カゼイン濃度が1〜10μg/mLに達する付近からmABS値が低下し、プロゾーン現象が認められるようになった。また、カゼイン濃度が100μg/mLに達すると、バンドが認識できなくなり、偽陰性の結果が与えられた。一方、SDSと亜硫酸ナトリウムとを含有する試験液を用いた系(実施例2)では、グリアジン濃度が50ng/mLに達する付近からバンドが認識できるようになり、カゼイン濃度が100μg/mLに達する付近であってもプロゾーン現象が起こらず、バンドの濃淡の様子も100μg/mLに達するまで判定が付けづらくなることがなかった。
したがって、イムノクロマトグラフィーで乳カゼインを検出する際、SDS、亜硫酸系のほうが広範な濃度領域において信頼のおける測定を行うことができることが明らかとなった。
<試験例3>(食品に含有している小麦グリアジンの検出)
下記表5に記載の食品をミキサーにかけて均質化した。
下記表5に記載の食品をミキサーにかけて均質化した。
均質化したもの1gに、下記表6に示す実施例3の抽出液19mlを加え、ボルテックスミキサーを用いてその最大速度で1分間攪拌した。これを100℃で、10分間煮沸し、常温に戻してから3000×gで20分間遠心分離した。上清を濾紙(アドバンテックNo.5A)で濾過し、食品の抽出液を調製した。また、比較のため、下記表6に示すSDS及び亜硫酸を含まない比較例3の抽出液でも、食品の抽出液を調製した。
上記食品の抽出液のそれぞれを、下記表6に示すSDS及び亜硫酸を含まない試験液希釈液で5倍に希釈し、以下のイムノクロマトグラフィーに供される試験液とした。また、これらの食品の抽出液について、モリナガFASPEK小麦測定キット(グリアジン)(株式会社森永生科学研究所製)を用いたELISA法で、試験例1と同様にして、別途、濃度を求めた。
上記のようにして調製した試験液について、小麦グリアジンのイムノクロマトグラフィー測定用キットである「モリナガ特定原材料イムノクロマト法キット ナノトラップシリーズ(小麦)」(商品名、株式会社モリナガ生科学研究所製)を用いて測定を行った。すなわち、上記試験液200μmLを試料滴下部に滴下し、約15分後に、グリアジンに対する特異抗体が担持されたテストライン位置でのバンドの出現の有無、又はその濃淡の様子を目視により観察した。ELISA法によるグリアジン濃度の測定結果及びイムノクロマトグラフィー測定の結果をまとめて表7に示す。
表7に示されるように、SDSと亜硫酸ナトリウムとを含有しない試験液を用いた系(比較例3)では、市販製品のパッケージに小麦原料成分表示がされている「薄力粉」、「カレールー(市販品)」、「ハヤシライスのルー(レトルト)(市販品)」、及び「ビスケット(市販品)」において、イムノクロマトグラフィー測定での偽陰性の結果が与えられた。一方、SDSと亜硫酸ナトリウムとを含有する試験液を用いた系(実施例3)では、「カレールー(市販品)」、「ハヤシライスのルー(レトルト)(市販品)」、「鶏肉とカシューナッツいため(レトルト)(市販品)」、「ビスケット(市販品)」、及び「固形コンソメ(市販品)」において、市販製品のパッケージに小麦原料成分表示がされているとおりに、陽性の結果が与えられた。なお、ELISA法で測定濃度が20.5mg/mLと、グリアジンを高濃度で含む「薄力粉」では、プロゾーン現象により偽陰性の結果が与えられた。また、「プリン(市販品)」では、市販製品のパッケージに小麦原料成分表示がされているものの、いずれの系でも検出されなかったので、グリアジンの含有濃度が比較的微量であることが考えられた。
以上から、イムノクロマトグラフィーで食品中の小麦原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する際、SDS・亜硫酸系での測定のほうが広範な濃度領域において信頼のおける測定を行うことができることが明らかとなった。
<試験例4>(食品に含有している乳カゼインの検出)
下記表8に記載の食品をミキサーにかけて均質化した。
下記表8に記載の食品をミキサーにかけて均質化した。
均質化したもの1gに、下記表9に示す実施例4の抽出液19mlを加え、ボルテックスミキサーを用いてその最大速度で1分間攪拌した。これを100℃で、10分間煮沸し、常温に戻してから3000×gで20分間遠心分離した。上清を濾紙(アドバンテックNo.5A)で濾過し、食品の抽出液を調製した。また、比較のため、下記表9に示すSDS及び亜硫酸を含まない比較例4の抽出液でも、食品の抽出液を調製した。
上記食品の抽出液のそれぞれを、下記表9に示すSDS及び亜硫酸を含まない試験液希釈液で5倍に希釈し、以下のイムノクロマトグラフィーに供される試験液とした。また、これらの食品の抽出液について、モリナガFASPEK牛乳測定キット(カゼイン)(株式会社森永生科学研究所製)を用いたELISA法で、試験例2と同様にして、別途、濃度を求めた。
上記のようにして調製した試験液について、乳カゼインのイムノクロマトグラフィー測定用キットである「モリナガ特定原材料イムノクロマト法キット ナノトラップシリーズ(乳)」(商品名、株式会社モリナガ生科学研究所製)を用いて測定を行った。すなわち、上記試験液200μmLを試料滴下部に滴下し、約15分後に、カゼインに対する特異抗体が担持されたテストライン位置でのバンドの出現の有無、又はその濃淡の様子を目視により観察した。ELISA法によるカゼイン濃度の測定結果及びイムノクロマトグラフィー測定の結果をまとめて表10に示す。
表10に示されるように、SDSと亜硫酸ナトリウムとを含有しない試験液を用いた系(比較例4)では、市販製品のパッケージに乳原料成分表示がされている「牛乳」及び「プリン(市販品)」において、イムノクロマトグラフィー測定での偽陰性の結果が与えられた。一方、SDSと亜硫酸ナトリウムとを含有する試験液を用いた系(実施例4)では、「牛乳」、「ハヤシライスのルー(レトルト)(市販品)」及び「プリン(市販品)」において、市販製品のパッケージに乳原料成分表示がされているとおりに、陽性の結果が与えられた。なお、「固形コンソメ(市販品)」では、市販製品のパッケージに乳原料成分表示がされているものの、ELISA法で検出限界以下(実施例4の抽出液の場合)又は36ng/mL(比較例4の抽出液の場合)と測定され、カゼインの含有濃度が比較的微量であることが考えられた。
以上から、イムノクロマトグラフィーで食品中の乳原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する際、SDS・亜硫酸系での測定のほうが広範な濃度領域において信頼のおける測定を行うことができることが明らかとなった。
<試験例5>(SDS又は亜硫酸ナトリウムによる個別的影響の評価)
SDSと亜硫酸ナトリウムのいずれがプロゾーン現象抑制の作用効果を発揮する主体であるかを調べるために、下記表11に示す標準品希釈液を用いて、前記試験例1(グリアジン)又は試験例2(カゼイン)と同様の試験を行った。なお、試験例5で用いた標準品は、グリアジン及びカゼイン共に、SDS及び亜硫酸ナトリウムを含まない抽出液で調製した上記標準品Bを用いた。
SDSと亜硫酸ナトリウムのいずれがプロゾーン現象抑制の作用効果を発揮する主体であるかを調べるために、下記表11に示す標準品希釈液を用いて、前記試験例1(グリアジン)又は試験例2(カゼイン)と同様の試験を行った。なお、試験例5で用いた標準品は、グリアジン及びカゼイン共に、SDS及び亜硫酸ナトリウムを含まない抽出液で調製した上記標準品Bを用いた。
結果をまとめて下記表12及び表13に示す。
その結果、表12及び表13に明らかなように、プロゾーン現象抑制剤としてSDSのみを含有する実施例6は、SDS及び亜流酸塩を含有する実施例5と同様に、高濃度領域でもグリアジン及びカゼインを検出できることから、イムノクロマトグラフィーに供される試験液中のSDSの存在によってプロゾーン現象が抑制されていることが認められた。したがって、上記試験例1〜4で用いられたSDSと亜硝酸ナトリウムのうち、プロゾーン現象抑制の作用効果を発揮する主体はSDSであると考えられた。
Claims (11)
- イムノクロマトグラフィーに供される試験液中に含有させるイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤であって、ドデシル硫酸ナトリウムを有効成分として含有することを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤。
- 更に、亜硫酸塩を含有する請求項1記載のイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤。
- 亜硫酸塩が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸鉄から選ばれた少なくとも1種である請求項2記載のイムノクロマトグラフィー測定用プロゾーン現象抑制剤。
- 食品に抽出液を接触させて該食品中の成分を抽出した食品抽出液を調製した後、前記食品抽出液を検査目的とされている特定原材料に含まれている物質を特異的に認識する特異抗体に接触させ、免疫学的測定方法を利用して食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する食品検査方法において、前記免疫学的測定方法としてイムノクロマトグラフィーを用い、且つ、前記食品抽出液にドデシル硫酸ナトリウムを含有せしめることにより、食品検査測定時のプロゾーン現象を抑制することを特徴とする、食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法。
- 前記食品抽出液に、ドデシル硫酸ナトリウムと共に、更に、亜硫酸塩を含有せしめる請求項4記載の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法。
- 亜硫酸塩が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸鉄から選ばれた少なくとも1種である請求項5記載の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法。
- 前記検査目的とされている特定原材料が小麦であり、前記特異抗体がグリアジンに対する特異抗体である請求項4〜6のいずれか1つに記載の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法。
- 前記イムノクロマトグラフィーに供される前記食品抽出液中に含まれるグリアジンの濃度が、10ng/ml〜100μg/mlである請求項7記載の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法。
- 前記検査目的とされている特定原材料が乳であり、前記特異抗体がカゼインに対する特異抗体である請求項4〜6のいずれか1つに記載の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法。
- 前記イムノクロマトグラフィーに供される前記食品抽出液中に含まれるカゼインの濃度が、50ng/ml〜100μg/mlである請求項9記載の食品検査測定時のプロゾーン現象抑制方法。
- (1)ドデシル硫酸ナトリウム及び亜硫酸塩を含有し、食品に接触させる抽出液、並びに(2)免疫学的測定方法を利用して食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査するイムノクロマトグラフを含むことを特徴とするプロゾーン現象が抑制されたイムノクロマトグラフィー測定キット。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Publications (1)
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Cited By (2)
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JP2017129422A (ja) * | 2016-01-19 | 2017-07-27 | プリマハム株式会社 | イムノクロマト処理によるアレルゲンの検出方法 |
-
2008
- 2008-12-16 JP JP2008319277A patent/JP2010127922A/ja active Pending
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