JP2008298664A - 食品検査方法及び食品検査キット - Google Patents

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Abstract

【課題】特異抗体による免疫複合体の形成を測定する食品検査方法において、その偽陽性反応を回避するための技術を提供する。
【解決手段】食品と、還元剤を含有する抽出液とを混合し、前記食品中の成分を抽出して食品抽出液を調製し、前記抽出液中に含まれる前記還元剤を1.54ppm以下まで減少させた被検査抽出液を調製し、該被検査抽出液を検査目的とされる特定原材料に含まれている物質を特異的に認識する特異抗体に接触させ、前記特異抗体による免疫複合体の形成を測定する。

【選択図】なし

Description

本発明は、食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する食品検査方法及びそのための食品検査キットに関する。
近年、消費者の食物アレルギーの問題への関心の高まりから、食品のパッケージなどに食物アレルギーを引き起こす原材料を含む旨の表示を付することが推奨されている。特に、アレルギーの発症数、重篤度から表示する必要性が高いとされる小麦、そば、卵、乳及び落花生の5品目については、食品衛生法によっても、それら原材料を含む旨の表示をすることが製造者に義務付けられている。
また、「特定の原材料を含む」又は「特定の原材料を含まない」などの表示をすることによって、消費者に安心感を持って自己の製品を受け入れられるようにすることができるので、このような表示は製造者にとっても利益がある。
種々の原材料を混合して製造される加工食品においては、個々の原材料についての履歴をたどることは煩雑であり、得られた製品を直接検査できることが望ましい。また、原材料としては使用していないにも関わらず、製造ラインで混入(コンタミネーション)してしまう場合もある。そこで、製品の維持管理や、突発的な事故の予防の観点からは、特定原材料が食品に含まれるかどうかを、製造の現場であっても迅速かつ簡便に利用することができ、しかも精度よく検出できる食品検査方法の提供が望まれている。
このような問題に対して、検査目的とされる特定原材料に含まれている物質を特異的に認識する特異抗体を利用する食品検査方法が、簡便で汎用性のある方法として公知である。例えば、下記特許文献1には、そば成分検査用抗体及び検査方法並びに検査用キットの発明が開示されている。また、下記特許文献2には、落花生成分検査用抗体及び検査方法並びに検査用キットの発明が開示されている。更に、下記特許文献3には、卵成分検査用抗体及び検査方法並びに検査用キットの発明が開示されている。
一方、食品中に含まれている検査目的とされる特定原材料に含まれている物質を免疫学的に測定しようとした場合、どうしてもそれら物質を可溶化させる必要性がある。すなわち、可溶化できない状態では、測定されるみかけの値以上に特定原材料が混入している場合もあり、検査が信頼できなくなるからである。特に、加工食品においては、タンパク質が熱変性を受けて極めて可溶化しにくい状態にある。このような場合においては、界面活性剤や還元剤を抽出液に添加して、熱変性を受けたタンパク質を可溶化させて感度の高い免疫学的測定が行われている(下記特許文献4参照)。
特開2003−294737号公報 特開2003−294738号公報 特開2003−294748号公報 特許3600231号公報
しかしながら、抽出液に界面活性剤や還元剤を添加して、食品中から検査目的とされる特定原材料に含まれている物質を高い効率で抽出できたとしても、免疫学的測定の段階においては、還元剤が非特異的反応を誘導する場合がある。このような場合にあっては、せっかく食品中から検査目的とされる特定原材料に含まれている物質の抽出効率を上げたとしても、偽陽性反応を生ずる場合もあり、いぜんとして検査の信頼性が損なわれることがあった。
したがって、本発明の目的は、免疫学的測定方法を利用する食品検査方法において、その偽陽性反応を回避して高感度で信頼性の高い測定方法及びその方法を利用した食品検査キットを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、免疫学的測定方法において、還元剤のチオール基が抗体に標識した金コロイドやラテックスなどの粒子を凝集させて偽陽性反応の原因となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の食品検査方法は、食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する食品検査方法であって、食品に還元剤を含有する抽出液を接触させて該食品中の成分を抽出した食品抽出液を調製した後、前記食品抽出液中に含まれている前記還元剤を1.54ppm以下まで減少させた被検査抽出液を調製し、該被検査抽出液を検査目的とされている特定原材料に含まれている物質を特異的に認識する特異抗体に接触させ、免疫学的測定方法を利用して特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査することを特徴とする。
本発明の食品検査方法においては、分子分画及び/又は希釈の手段により前記食品抽出液中に含まれている前記還元剤を1.54ppm以下まで減少させて前記被検査抽出液を調製することが好ましい。これによれば簡易に還元剤の濃度を1.54ppm以下まで低下することができる。そして、前記抽出液は、還元剤としてチオール基を有する化合物を含有することが好ましい。また、前記抽出液中には1000〜70000ppmのチオール基を有する化合物が含まれていることが好ましい。さらに、前記チオール基を有する化合物が、2−メルカプトエタノールであることが好ましい。
本発明の食品検査方法によれば、抽出の際に還元剤を使うことで抽出効率を高めることができ、かつ、免疫学的測定の段階に至るまでに
還元剤を1.54ppm以下まで減じるので、還元剤の悪影響を回避することができる。
本発明の食品検査方法においては、免疫学的測定方法がイムノクロマトグラフ法を用いる方法であることが好ましい。これによれば、特別な装置も必要がなく、非常に簡便に本発明の食品検査方法を使用できる。また、前記特異抗体は、金属コロイド又はラテックス粒子で標識されていることが好ましい。この態様によれば、金属コロイド又はラテックス粒子の標識によって、免疫学的な測定結果を可視的に判断することができる。
一方、本発明の食品検査キットは、食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査するための食品検査キットであって、(1)抽出液及び該抽出液に添加するための還元剤、又は、還元剤を含有する抽出液、(2)還元剤濃度低下手段、及び(3)検査目的とされる特定原材料に含まれる物質を特異的に認識する抗体を含むことを特徴とする。
本発明の食品検査キットにおいては、前記還元剤濃度低下手段が分子分画手段であることが好ましい。そして、前記還元剤が、チオール基を有する化合物であることが好ましい。また、前記チオール基を有する化合物が、2−メルカプトエタノールであることが好ましい。
更に、本発明の食品検査キットにおいては、前記分子分画手段は、ゲル濾過樹脂充填スピンカラムであることが好ましい。また、検査目的とされる特定原材料に含まれる物質を特異的に認識する抗体がイムノクロマトグラム装置に附合していることが好ましい。
本発明の食品検査方法によれば、還元剤を含む抽出液で食品中の成分を抽出することにより抽出効率を高めることができる。また、液状や乳化液状の形態の食品の場合には、その固形分の可溶化を促進させることができる。そして、免疫学的測定の段階では還元剤の悪影響を回避することができるので高感度でかつ高信頼性の食品検査方法を提供することができる。
また、本発明の食品検査キットによれば、上記検査方法を簡易に具現化することができる。
本発明の食品検査方法は、検査目的とされる特定原材料に含まれている物質(以下、「検査目的物質」とする。)を特異的に認識する特異抗体を用いて、食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する食品検査方法である。
ここで、検査目的物質は、タンパク質、ペプチドを初めとする抗体に結合する物質であるが、必ずしもタンパク質やペプチドに限られることはなく、核酸、糖又は例えばハプテン類などの低分子化合物も含まれる。そして、検査目的物質として、特定原材料の卵におけるオボアルブミンやオボムコイド、特定原材料の小麦におけるグリアジン、特定原材料の牛乳におけるカゼインやβ―ラクトグロブリンが例示できる。
また、本発明において検査目的物質は、特定原材料1つに対して必ずしも1つだけである必要はなく、2つ以上であっても差し支えない。
本発明の食品検査方法においては、まず、食品と、還元剤を含有する抽出液とを接触させて、食品中の成分を抽出した食品抽出液を調製する。例えば、攪拌、混合、遠心分離、濾過等の周知の手段を適宜に用いて食品抽出液を調製することができる。被検査物の食品の形態は、固形状、半固形状、ゼリー状、液状、乳化液状のいずれの形態のものであってもよい。
上記食品抽出液の調製においては、検査を行う食品を粉砕し又は、ペースト状にして抽出液との接触面積を増やして、接触混合することが望ましい。これにより、抽出効率を上げることができる。またこのとき、食品と抽出液の質量比は、食品1に対して10〜100であることが好ましく、これにより、高濃度の食品抽出液を調製することができる。このように抽出した食品抽出液には、食品中の「検査目的物質」が、他の成分と共に、抽出液中に移行する。なお、後述するように、「検査目的物質」と特異抗体との抗原抗体反応により免疫複合体を形成させる必要がある。したがって、上記食品抽出液の調製の際の塩濃度、pH、温度、時間等の諸条件は、「検査目的物質」が、特異抗体に対する抗原性を失わない範囲である必要がある。
本発明の食品検査方法において用いられる還元剤としては、タンパク質等のS-S結合を還元してSH基を遊離させるのに有効な還元剤であれば特に制限はないが、チオール基を有する化合物が好ましく用いられ、2−メルカプトエタノール(2-Mercaptoethanol)、ジチオスレイトール(Dithiothreitol)などが例示できる。また、還元剤は2種以上を併用してもよいものの、2−メルカプトエタノールを単独で使用することがコストの面から優れている。
本発明の食品検査方法において用いられる還元剤の、抽出液中の濃度は、1000〜70000ppmであることが好ましく、より好ましくは2000〜40000ppmであり、さらにより好ましくは10000〜30000ppmである。
また、上記抽出液には、食品中の成分の可溶化を補助するための可溶化補助剤を添加してもよい。可溶化補助剤としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSという)、尿素、ノニオン性界面活性剤など、通常慣用されている可溶化補助剤を使用することができる。可溶化補助剤は2種以上を併用してもよい。
上記可溶化補助剤の、抽出液中の濃度は、被検査物である食品又は「検査目的物質」の特性に応じて適宜調整することができる。例えば、可溶化補助剤としてSDSを使用した場合には、0.01〜10w/v%、好ましくは0.03〜5w/v%、より好ましくは0.1〜1w/v%程度に調整すればよい。
本発明の食品検査方法において、上記抽出液は、上記還元剤あるいは上記還元剤及び上記可溶化補助剤が水性溶媒に溶解されることにより調製される。水性媒体としては、例えば、水、又は通常慣用されているリン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液などを使用することができる。また、食品抽出液調製以後の操作を容易にすることを考慮に入れれば、上記抽出液のpHは通常pH6〜8に調整することが好ましい。
本発明の食品検査方法においては、上記の食品抽出液中に含まれる還元剤を、実質的に除き、又は減じることが必要である。すなわち、上記の食品抽出液から還元剤を、実質的に除き、又は減じることにより、還元剤の濃度が1.54ppm以下である被検査抽出液を調製する。
本発明の食品検査方法において、還元剤の濃度を低下させるための手段としては、特に制限はなく、分子分画や希釈を初めとして減圧乾固や熱処理による蒸散除去、透析、電気泳動などの手段を用いることができる。これら手段を単独又は2種以上採用することもできるし、同一手段を複数回施すこともできる。これら手段のうち、分子分画や希釈の手段が簡便で好ましい。
なお、本発明の食品検査方法において、還元剤の濃度を低下させるための手段としては、還元剤を完全に除去してしまう手段も含まれる。
ここで、上記被検査抽出液とは、還元剤の濃度を低下させる手段に供した後に、濾過、濃縮、希釈、pHの調整、遠心分離による沈殿の除去等の処理を施した調製物であって還元剤の濃度が1.54ppm以下の調製物も含む概念である。すなわち、還元剤を減じた食品抽出液の他、例えば、免疫複合体の形成や後述する免疫学的測定方法のための至適条件となるように、適宜に、希釈、濃縮、pH調製等の処理を施した調製物などを含む概念である。なお、還元剤を実質的に除き、又は減じる工程においては、「検査目的物質」を実質的に除去してしまうことがないようにする必要があることはいうまでもない。
本発明の食品検査方法においては、上記被検査抽出液中の上記還元剤が1.54ppm以下に減じられていればよく、上記還元剤が測定限界以下の濃度であっても完全に除去できた場合であってもよい。免疫学的測定の際の還元剤の濃度が、上記範囲の上限を超えると、非特異的反応が増加するという悪影響が生じるので好ましくない。
本発明の食品検査方法において用いられる分子分画のための手段としては、特に制限はないが、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー、イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィー、透析、RO膜分離等の周知の手段を用いることができる。このうち、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーを用いれば簡便であるので好ましい。この場合において、1回の除去操作で還元剤の除去が不十分である場合は、分子分画を複数回行うこともできるし、複数の手段を併用することもできる。
具体的には、例えば、「検査目的物質」の分子量が10〜100kDa程度のタンパク質であって、還元剤として2−メルカプトエタノール(分子量:78)やジチオスレイトール(分子量:154)を用いた場合には、6キロダルトン分子量排除用のゲル濾過樹脂充填スピンカラム(「Bio-Gel P-6 gel Micro Bio-Spin Chromatography Column」、商品名、日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)等を用いることができる。
すなわち、上記のようにして調製された抽出液の一部、又はこれを希釈した調製液を、ゲル濾過樹脂のカラム面にのせ、1,000×g程度で遠心してフロースルー分画を得る。比較的低分子である上記還元剤は、ゲル濾過樹脂の微細孔構造中に99.9%の回収率で分配保持され、一方、フロースルー分画には、6キロダルトン以上の物質は、0.1%の回収率で回収される、このようにすることで、簡便に分子分画を実現することができる。
本発明の食品検査方法においては、食品抽出液中に含まれる還元剤を1.54ppm以下まで減少させた被検査抽出液を調製した後、該被検査抽出液と「検査目的物質」を特異的に認識する特異抗体とを接触させる。これにより、周知の抗原−抗体反応の結合メカニズムにより、免疫複合体が形成される。かかる免疫複合体の形成を測定する免疫測定方法により、「検査目的物質」の存在を検知することができ、ひいては、食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査することができる。
特定の物質を特異的に認識する特異抗体の調製は当業者に周知である。例えば、上記特許文献1(特開2003−294737号公報)には、「そばの70〜500kDに相当するタンパク質画分を主体とする抗原により免疫化した哺乳動物の血清から得られる当該血清のIgG画分又はポリクローナル抗体」が開示されている、上記特許文献2(特開2003−294738号公報)には、「落花生の30〜100kDに相当するタンパク質画分を主体とする抗原により免疫化した哺乳動物の血清から得られる当該血清のIgG画分又はポリクローナル抗体」が開示されている、上記特許文献3(特開2003−294748号公報)には、「卵白由来のタンパク質により免疫化した哺乳動物の血清から得られた抗体」が開示されている。このような周知技術により、「検査目的物質」を特異的に認識する特異抗体の調製をすることができる。同様にSDS存在下において変性したタンパク質を認識する特異抗体の調製方法は、上記特許文献4(特許3600231号公報)に開示されている。
本発明の食品検査方法においては、特異抗体による免疫複合体の形成を、周知の免疫学的測定方法によって測定することができる。免疫学的測定方法としてはELISA法やイムノクロマトグラム(イムノクロマトグラフ法)が知られているが、このうち、イムノクロマトグラムは、測定機器を用いる必要がなく、目視で簡便に免疫学的測定の結果を判断でき、迅速で感度も高いので好ましく用いられる。イムノクロマトグラムの原理は、特開平5−5743号公報や特開2002−202307号公報にも記載されているとおり、当業者には周知である。
簡単にその原理の一例を説明すると、セルロースメンブレンなどの薄膜状支持体の特定領域(テストライン位置)には第1の特異抗体がバンド状に固定され、その別領域の試料滴下部又はその近傍下流付近には標識された第2の特異抗体が移動可能に保持されている。以下、本発明において、このように構成された抗体担持担体を「イムノクロマトグラム装置」という。
分析対象物をその溶媒と共に試料滴下部に滴下すると、分析対象物と標識された第2特異抗体が毛細管現象により薄膜状支持体中に展開される。分析対象物に「検査目的物質」が含まれていれば、分析対象物が薄膜状支持体中に展開される間に同じように展開されている第2特異抗体は、「検査目的物質」と結合する。ここで、第2特異抗体は予め標識となる着色又は発色物質が結合されているので、「検査目的物質」に標識が結合することになる。その後、「検査目的物質」がテストライン位置に固定されている第1特異抗体と結合し、「検査目的物質」を挟んで第1特異抗体と第2特異抗体がまるでサンドイッチのように結合する。そうすると、テストライン位置に標識が集合するのでテストライン位置にあたかもバンドが出現するように見える。このバンドの出現によって、分析対象物中に「検査目的物質」が存在していると判断される。一方、分析対象物に「検査目的物質」が含まれていないか、また検出限界以下しか含まれていない場合には、テストライン位置でのバンドは出現しない。このイムノクロマトグラフ法は、分析対象物を試料滴下部に滴下した後、約5〜30分間程度で迅速且つ簡便な方法である。
上記標識としては、例えば、金属コロイド、酵素標識、着色ラテックス粒子、炭素粒子などを使用することができるが、金コロイドやラテックス粒子が抗体を標識しやすいので好ましい。
一方、本発明の食品検査キットは、(1)抽出液及び該抽出液に添加するための還元剤、又は、還元剤を含有する抽出液、(2)還元剤濃度低下手段、及び(3)検査目的とされる特定原材料に含まれる物質を特異的に認識する抗体を含む食品検査キットである。本発明の食品検査キットは、食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する方法に好適に用いることができる。特に、上述した本発明の食品検査方法に好ましく用いることができる。
本発明の食品検査キットにおいて用いられる還元剤としては、タンパク質等のS-S結合を還元してSH基を遊離させるのに有効な還元剤であれば特に制限はないが、チオール基を有する化合物が好ましく用いられ、2−メルカプトエタノールを用いることがさらに好ましい。また、還元剤は2種以上を併用してもよいが、2−メルカプトエタノールを単独で使用することが好ましい。
本発明の食品検査キットにおいて用いられる還元剤濃度低下手段としては分子分画手段を好ましく用いることができ、試薬キットの構成内容物として適したサイズ、重量、また、誰にでも簡単に用いることができる等の観点から、ゲル濾過樹脂充填スピンカラムなどを好ましく例示できる。
本発明の食品検査キットにおいては、検査目的とされる特定原材料に含まれる物質を特異的に認識する抗体がイムノクロマトグラム装置に附合していることができる。ここで「附合」とは、二以上の物が結合して、毀損するかまたは過分の費用を費やさなければ分離できない状態にあることを意味する。すなわち、検査目的とされる特定原材料に含まれる物質を特異的に認識する抗体がイムノクロマトグラム装置に担持、保持、固定等されていることを意味する。そして、上記抗体がイムノクロマトグラム装置に附合される際には、イムノクロマトグラム装置を構成するセルロースメンブレンなどの薄膜状支持体に保持又は直接固定される場合のほか、薄膜状支持体に結合しているろ紙等の多孔質性の小片に保持されている場合を例示することができる。
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<試験例1>
サンプル抽出液中に存在するチオール基(SH基)が、イムノクロマトグラフ(ラテラルフロー)法による測定において、どのような影響を及ぼすかを調べた。
まず、SDSを0.5%及び2-メルカプトエタノールを2%(20000ppm)含むFASPEK抽出液(株式会社森永生科学研究所製、以下これを単に「FASPEK抽出液」とする)を調製した。次に、この抽出液から2-メルカプトエタノールの除去を試みた。具体的には、6キロダルトン分子量排除ゲル濾過樹脂充填スピンカラム、「Bio-Gel P-6 gel Micro Bio-Spin Chromatography Column」(商品名、日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)を1,000×gで1分間遠心して保存用溶液を除き、FASPEK抽出液75μlを樹脂カラム面に載せた。これを1,000×gで2分間遠心してフロースルー分画60μlを得た。そして、フロースルー画分の2−メルカプトエタノールの濃度を測定した。2−メルカプトエタノールの濃度は、SH基定量試薬である5,5'-Dithiobis(2-nitrobenzoic acid(DTNB)(株式会社同仁化学研究所製)と2-メルカプトエタノールのチオール基が反応して生成する5-Mercapto-2-nitrobenzoic acidを412nmの吸光度で測定し、その値を基に標準曲線より求めた式に当てはめて算出した。
イムノクロマトグラフ(ラテラルフロー)法による測定は、「食品アレルゲン検出キット ナノトラップ小麦(グリアジン)」(商品名、ロート製薬株式会社製、以下「イムノクロマトGD」とする)及び「食品アレルゲン検出キット ナノトラップ牛乳(カゼイン)」(商品名、ロート製薬株式会社製、以下「イムノクロマトCS」とする)を用いた。具体的には、上記スピンカラムで処理したFASPEK抽出液及び上記スピンカラムで処理していないFASPEK抽出液を上記キットに付加されていた検体希釈液で20倍に希釈した。希釈した抽出液200μlをテストプレート(イムノクロマトグラム装置)の試料滴下部に滴下し、15分間放置した後に、グリアジン又はカゼインに対する抗体が担持されたテストライン位置でのバンドの出現の有無、及びその濃淡を観察した。そして、上記試験例1の結果を下記表1に示した。なお、FASPEK抽出液から2−メルカプトエタノールを除く試験を5回行い、その内イムノクロマトGD及びイムノクロマトCS供に陰性になるものを実施例1〜3とし、擬陽性及び陽性になるものそれぞれ比較例1、比較例2とした。
Figure 2008298664
表1から、上述したようにカラムでの処理を行い20倍希釈する前フロースルー画分の2−メルカプトエタノールの濃度が30.7ppm、すなわち、イムノクロマトグラム装置に供する際の濃度が1.54ppm以下の場合においてイムノクロマトGD及びイムノクロマトSCは、陰性を示した。一方、20倍に希釈する前のフロースルー画分の2−メルカプトエタノールが44.8ppm、すなわち、イムノクロマトグラム装置に供する際の濃度が2.24ppmのときには、イムノクロマトGD及びイムノクロマトSCともに非常に淡いバンドが出現した。さらに、20倍に希釈する前のフロースルー画分の2−メルカプトエタノールが79.5ppm、すなわち、イムノクロマトグラム装置に供する際の濃度が3.98ppmのときには、いずれのイムノクロマトグラム装置も陽性を示した。他方、カラムで処理をしない場合は、412nmの吸光度が振り切れてこれに含まれている2−メルカプトエタノールの濃度が測定できなかった。しかしながら、このカラムで処理をしないFASPEK抽出液には、2%の2−メルカプトエタノールが入っているので、20倍に希釈する前の2−メルカプトエタノールの濃度を20000ppmとして表1の「フロースルー画分の2−メルカプトエタノール濃度」のカラムに記載をした。したがって、カラムで処理をしないFASPEK抽出液を20倍に希釈して、2−メルカプトエタノールの濃度を1000ppmにして、イムノクロマトグラム装置に供したことになる。そして、そのイムノクロマトグラフ法の結果、グリアジンもカゼインも多く含まれていることを意味する強い陽性であった。
<試験例2>
小麦グリアジン含有試験液を調製した。小麦グリアジン含有試験液は、FASPEK抽出液で小麦粉末を抽出し、これに含有されているグリアジンの濃度をグリアジンの蛍光抗体を用いて測定し、これをFASPEK抽出液で10000ng/mlとなるように希釈して調整した。
小麦グリアジン含有試験液においても、試験例1と同じ方法で2−メルカプトエタノールの除去を試みた。この場合も試験例1と同じようにカラム処理をしてフロースルー画分を回収して、2−メルカプトエタノールの濃度及び小麦グリアジン濃度を測定した。その後、フロースルー画分は、アレルゲン検出器キットの検体希釈液で20倍に希釈して、希釈した200μlをテストプレート(イムノクロマトグラム装置)の試料滴下部に滴下し、15分間放置した後に、グリアジン又はカゼインに対する抗体が担持されたテストライン位置でのバンドの出現の有無、及びその濃淡を観察した。その結果を表2に示した。
Figure 2008298664
表2から、上述したようにカラムでの処理を行い20倍希釈する前フロースルー画分の2−メルカプトエタノールの濃度が28.2ppm、すなわち、イムノクロマトグラム装置に供する際の濃度が1.41ppmの場合においてイムノクロマトGDは陽性を示し、イムノクロマトCSは陰性を示した。一方、カラム処理をしないグリアジン含有試験液は、試験例1でも記述したように20000ppmの2−メルカプトエタノールが入っているものと予想される。そして、これを20倍に希釈してイムノクロマトグラム装置に供した場合であっても、1000ppmの2−メルカプトエタノールが含有されているはずである。その場合には、イムノクロマトGDもイムノクロマトCSも強く陽性を示した。
<試験例3>
試験例2と同じ方法で200ng/mlの小麦グリアジン含有試験液を調製した。これを試験例2と同じようにカラム処理をしてフロースルー画分を回収して、2−メルカプトエタノールの濃度及び小麦グリアジン濃度を測定した。その後、フロースルー画分は、アレルゲン検出器キットの検体希釈液で20倍に希釈して、希釈した200μlをテストプレート(イムノクロマトグラム装置)の試料滴下部に滴下し、15分間放置した後に、グリアジン又はカゼインに対する抗体が担持されたテストライン位置でのバンドの出現の有無、及びその濃淡を観察した。その結果を表3に示した。なお、小麦グリアジン含有試験液から2−メルカプトエタノールを除く試験を2回行い、その内イムノクロマトGDが陰性になるものを実施例5とし、陽性になるものを比較例3とした。
Figure 2008298664
表3から、上述したようにカラムでの処理を行い20倍希釈する前フロースルー画分の2−メルカプトエタノールの濃度が27.4ppm、すなわち、イムノクロマトグラム装置に供する際の濃度が1.37ppmの場合においてイムノクロマトGDは陽性を示し、イムノクロマトCSは陰性を示した。さらに、20倍に希釈する前のフロースルー画分の2−メルカプトエタノールが34.4ppm、すなわち、イムノクロマトグラム装置に供する際の濃度が1.72ppmのときには、いずれのイムノクロマトグラム装置も陽性を示した。
上記3つの試験例から、2−メルカプトエタノール濃度が1.54ppmよりも高い小麦グリアジン含有試験液についてのイムノクロマトグラム装置からは、グリアジンに対する抗体が担持されたテストプレート(イムノクロマトGD)、及びテストライン出現位置に牛乳カゼインに対する抗体を担持されたテストプレート(イムノクロマトCS)の両方を用いた場合について、テストライン出現位置にバンドが観察された。このバンドは、小麦グリアジンを含有しないFASPEK抽出用溶液のみで測定した場合にも観察されたことから、偽陽性反応によるものであることが明らかとなった。
一方、上記スピンカラム処理及び希釈して2−メルカプトエタノール濃度が1.54ppmよりも低い小麦グリアジン含有試験液についてのイムノクロマトグラムからは、グリアジンに対する抗体が担持されたテストプレート(イムノクロマトGD)のみから、テストライン出現位置に陽性バンドが観察され、擬陽性及び偽陽性反応を示さなかった。
以上から、イムノクロマトグラフ法においては、サンプル抽出液中に存在する還元剤(2−メルカプトエタノール)が偽陽性反応の原因であり、これを1.54ppm以下に減じることにより、その影響を回避できることが明らかとなった。

Claims (13)

  1. 食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査する食品検査方法であって、食品に還元剤を含有する抽出液を接触させて該食品中の成分を抽出した食品抽出液を調製した後、前記食品抽出液中に含まれている前記還元剤を1.54ppm以下まで減少させた被検査抽出液を調製し、該被検査抽出液を検査目的とされている特定原材料に含まれている物質を特異的に認識する特異抗体に接触させ、免疫学的測定方法を利用して特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査することを特徴とする食品検査方法。
  2. 分子分画及び/又は希釈の手段により前記食品抽出液中に含まれている前記還元剤を1.54ppm以下まで減少させて前記被検査抽出液を調製する請求項1記載の食品検査方法。
  3. 前記還元剤は、チオール基を有する化合物である請求項1又は2に記載の食品検査方法。
  4. 前記抽出液中には1000〜70000ppmのチオール基を有する化合物が含まれる請求項1〜3の1つに記載の食品検査方法。
  5. 前記チオール基を有する化合物が、2−メルカプトエタノールである請求項3又は4に記載の食品検査方法。
  6. 前記免疫学的測定方法がイムノクロマトグラフ法を用いる方法であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の食品検査方法。
  7. 前記特異抗体は、金属コロイド又はラテックス粒子で標識されている請求項1〜6のいずれか1つに記載の食品検査方法。
  8. 食品中の特定原材料の存在の有無及び/又はその量を検査するための食品検査キットであって、(1)抽出液及び該抽出液に添加するための還元剤、又は、還元剤を含有する抽出液、(2)還元剤濃度低下手段、及び(3)検査目的とされる特定原材料に含まれる物質を特異的に認識する抗体を含むことを特徴とする食品検査キット。
  9. 前記還元剤濃度低下手段が分子分画手段である請求項8記載の食品検査キット。
  10. 前記還元剤が、チオール基を有する化合物である請求項8又は9記載の食品検査キット。
  11. 前記チオール基を有する化合物が、2−メルカプトエタノールである請求項10記載の食品検査キット。
  12. 前記分子分画手段は、ゲル濾過樹脂充填スピンカラムである請求項9〜11のいずれか1つに記載の食品検査キット。
  13. 前記抗体がイムノクロマトグラム装置に附合していることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1つに記載の食品検査キット。
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