JP6129832B2 - 食品成分抽出液および抽出方法 - Google Patents

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Description

本発明は食品中の食物アレルゲンを抽出するための食品抽出液、及び当該抽出液を用いた食物アレルゲンの検査方法及びキットに関する。
近年、食物でアレルギーを発症する、食物アレルギーの患者が低年齢層を中心に増加してきている。食物アレルギーの症状は、皮膚の痒みや炎症、ショック症状となり死に至るアナフィラキシーショック等、多岐にわたり危険性も高い。そこで、日本では平成13年、「食品衛生法施行規則及び乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令(平成13年厚生労働省令第23号)」が定められ、症例数の多い「卵、小麦、乳」及び症状が重篤な「そば、落花生」については特定原材料として原材料表示が義務づけられ、これら5品目に次いで食物アレルギーの原因食物となる可能性が高いとされた19品目(あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン)は、特定原材料に準ずるものとして表示が推奨された。さらに、平成16年12月には、表示推奨品目にバナナが追加され、平成20年6月には、表示推奨品目であった「えび、かに」が、表示義務品目となり、表示義務品目はあわせて7品目になった。諸外国においても日本と同様に食物アレルギーの問題が重要視され、各国において独自に食物アレルギー表示対象品目が定められている場合が多く、例えばアメリカでは「グルテン含有穀類、甲殻類、卵、魚類、落花生、大豆、乳、木の実」が、EUでは、「グルテン含有穀類、甲殻類、卵、魚類、ピーナッツ、大豆、乳、ナッツ類、セロリ、マスタード、ゴマ、10mg/kgまたは10mg/Lを越える無水亜硫酸および亜硫酸塩、ルピナス、軟体動物」が表示義務品目となっている。中国ではグルテン含有穀類、甲殻類、魚類、卵、落花生、大豆、乳、ナッツ類についての表示が推奨されている。
種々の原材料を混合して製造される加工食品においては、個々の原材料についての履歴をたどることは煩雑であり、原材料として配合されていなくても、製造ラインで混入してしまうことがある。したがって、加工食品中に、表示が義務づけられた「卵、小麦、乳、そば、落花生、えび、かに」の7品目の特定原材料が含まれるかどうかは、得られた製品を直接検査する必要がある。そして、重篤なアレルギー症状を引き起こすアレルゲンは、それぞれの特定原材料由来のタンパク質であるため、加工食品中に、特定原材料由来タンパク質が含まれるかどうかを精度よく検出できる検出方法が必須であり、しかも迅速かつ簡便に測定できる測定用キットが望まれている。
しかしながら、加工食品の場合、加熱や加圧といった過酷な条件下で製造されるものが多く、そのような食品では検査対象のアレルゲンタンパク質が不溶化し、従来の抽出法では抽出されにくいという問題があった。例えば、パンや麺類などの製造工程では、加熱により、グルテンと卵タンパク質がSH基を介して結合し、不溶化するという報告がある。また、加熱によりタンパク質が変性して不溶化したと思われるものもある。これらの抽出効率の悪さに起因して正確な検査結果が得られない等の問題点があった。
水難溶性のタンパク質又は難抽出状態にあるタンパク質を、加工食品から効率的に抽出する方法として高濃度(0.5〜10%)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、還元剤の2−メルカプトエタノール(2−ME)又はジチオスレイトール(DTT)とを含有する水性溶媒を添加後、5分間加熱するという煮沸工程で可溶化して抽出する方法が知られている(特許文献1、2)が、刺激臭のある2−MEやDTTを含む水性溶媒の煮沸操作は食品製造現場では実施する事が難しい。(なお、%は特に限定のない限り、w/v%であり、vは抽出液の容量である。以下、同様。)
一方、一晩振とう操作を行う事により煮沸操作がなくても抽出ができるため、広く用いられているが、検査結果が得られるまでに時間を要する事が迅速性の観点からは問題となる。
本出願人は以前に、2−ME、DTT、又はトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などの還元剤と、SDS、尿素などの可溶化剤を組み合わせた食品抽出液により、強く加熱変性したタンパク質でも従来よりも高い効率で抽出可能とした食品成分抽出液を開発した(特許文献3)が、その際には抽出/可溶化工程では12時間以上振とうするなど長時間の抽出、可溶化作業が必要であり、迅速な測定方法とまではいえなかった。また、刺激臭のある2−MEを用いるという問題点も依然として残っていた。刺激臭がある点ではDTTも同様であり、TCEP、或いはその類縁還元剤であるトリス(3−ヒドロキシプロピル)フォスフィン(THP)などは、比較的高価な試薬でありコスト面で不利となる問題点もある。
2−MEについては、平成20年7月1日から施行された「毒物及び劇物指定令の一部改正する政令(平成20年政令第199号)」により毒物として指定されたこともあり、食品製造現場あるいは製造工場内でこのような刺激臭のある毒物を扱うことは望ましいとは言えず、さらに検査後の残余廃棄物の廃棄方法にも安全を担保しながら行わなければならないというデメリットは大きい。
一方、アレルゲンタンパク質を測定する方法としては、対象タンパク質をコードするDNA中の特異的領域を増幅して検出する方法もあるが、一般的には、迅速性および簡便性の観点から抗原抗体反応を利用した免疫学的測定方法が用いられている。免疫学的測定方法のうちで、対象アレルゲンとなるタンパク質量を正確に定量するには、ELISA法が適しているが、定性的にアレルゲンの存在非存在を確認するためだけであれば、簡便にかつ感度よく可視的に検出することができるイムノクロマト法が適している。
しかし、還元剤の2−MEは、イムノクロマト法に適用した場合に、偽陽性反応が多発することが知られている。その原因としては、2−MEが有する遊離のチオール基が、抗体を標識した金属コロイドやラテックスなどの粒子を凝集させて偽陽性反応の原因になると考えられていた(特許文献4〜6)。この偽陽性反応の影響を抑えるため、イムノクロマト検査時に抽出液中の2−ME濃度を1.54ppm以下に減少させて測定する方法(特許文献4)も報告されているが、希釈工程が増えることにより煩雑になる上に、検出感度が下がってしまう。
以上のように、2−MEは優れた還元剤ではあるものの、上述の刺激臭や毒性などに基づく食品製造分野での取り扱い難さに加え、簡便な検査に適したイムノクロマト法での偽陽性の多さから、2−MEに代わる還元剤の探索や2−MEを用いなくても効率的な抽出を可能とする抽出法の研究、開発が従来から活発に進められていた。
還元剤として2−MEに代えて、亜硫酸塩又はTHPを用い、12時間以上振とうして抽出する方法(特許文献5、6)が提案されているが、抽出に長時間を要するという問題点があった。その改良方法として、亜硫酸塩とSDSを用いた抽出を煮沸工程で行うことで、短時間で、しかも難抽出状態の加工食品中の変性タンパク質の抽出も可能となった(特許文献7)。また、還元剤としてのシステインに着目し、アルキル硫酸塩と尿素とシステイン、又はさらにDTTを一定割合で含む食品抽出液(特許文献8)が提案されている。しかしながら、これらの方法は抽出操作において、10〜60分間の煮沸が必要であり、専用の煮沸装置を設ける必要があるため、食品製造現場では使用しにくい。しかも、生麺など煮沸により塊ができる食品もあり、内部のタンパク質の抽出が不完全となることもある。
以上のことから、加工食品製造分野においては、2−MEのような刺激性及び毒性のある還元剤を含まない食品抽出液を用い、しかも煮沸工程も不要で、かつ短時間で簡便に正確な検査結果が得られるようなアレルゲンタンパク質の検査方法及び検査キットであって、難抽出状態の加工食品中の変性タンパク質の検出にも利用できる検査方法及び検査キットの開発が強く望まれていた。
特開2005−106629号公報 特開2005−106811号公報 特開2006−71509号公報 特開2008−298664号公報 特開2009−133712号公報 特開2010−2369号公報 特開2010−286480号公報 特開2010−78448号公報
本発明は、食品中の食物アレルゲンが加熱調理されて難抽出状態となった場合でも抽出可能であり、刺激性及び毒性を有する2−メルカプトエタノール(2−ME)を含まず、煮沸工程も不要な食品抽出液及び抽出方法を提供することを目的とする。さらに、当該食品抽出液を用いて抽出した食物アレルゲンの簡便で正確な検査方法及び検査キットを提供することを目的とする。
一般に、食品成分を効率的に抽出するために、食品を抽出のための溶媒とともにミルサーやミキサー、ホモジナイザー、ストマッカーなどの装置を用いて粉砕して抽出する方法がとられることが多い。しかし、これらの手段を用いても、焼き菓子や乾麺などに含まれるタンパク質をはじめとした、加工食品中の難溶性タンパク質の抽出は困難であり、十分な感度を得る事ができなかった。
そこで、本発明者らは、鋭意努力を重ねた結果、還元剤として「チオグリセロール(HOCHCH(OH)CHSH)」を用いて可溶化剤と組み合わせた食品抽出液が、極めて効率よく、種々の加工食品からの各種アレルゲンタンパク質を抽出可能であることを見出した。従来から課題であった加熱調理された食品中の難抽出状態のアレルゲンタンパク質、例えば、焼き菓子や乾麺など難溶性状態で存在する卵タンパク質も効率よく抽出できることを確認できた。そして、抽出時には、従来食品抽出液に汎用的に用いられていた毒物で刺激臭の強い2−MEを還元剤として用いた場合と比較して、より低い濃度で使用することができ、しかもその抽出効率は、2−MEを用いた場合と同等もしくはそれ以上であった。
また、従来の知見(特許文献5など)では、2−MEを含む食品抽出液を用いた場合にイムノクロマト法で偽陽性が起きる理由として2−MEが有している遊離のSH基が原因であるとされていたため、同じ遊離のSH基を有する「チオグリセロール」でもイムノクロマト法で偽陽性が起きることが懸念されたが、イムノクロマト法での結果をELISA法により検証したところ、偽陽性の発生はなく、ELISA法と相関性の高い結果が得られることが確認された。
以上の知見を得たことで、本願発明を完成できた。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕 還元剤及び可溶化剤を含む食品抽出液であって、還元剤としてチオグリセロールを用いることを特徴とする、食品中の食物アレルゲンを抽出するための食品抽出液。ここで、可溶化剤は当業者にとって、周知の可溶化剤であり、可溶化剤を併用することも可能である。
〔2〕 可溶化剤が尿素及び/又はアルキル硫酸塩である、前記〔1〕に記載の食品抽出液。ここで、好ましいアルキル硫酸塩としては、SDSがあげられる。
〔3〕 抽出液中のチオグリセロール濃度が、抽出液全量に対して0.001〜10(w/v)%、好ましくは0.005〜5%、より好ましくは0.01〜5%、最も好ましくは0.02〜1%である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の食品抽出液。
〔4〕 食物アレルゲンが、加熱調理された食品中の難抽出状態のアレルゲンタンパク質である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の食品抽出液。
〔5〕 食品から食物アレルゲンを抽出する方法において、チオグリセロール及び可溶化剤を含有する食品抽出液を用いることを特徴とする、食品中の食物アレルゲン抽出方法。当該抽出方法において用いられる可溶化剤は当業者にとって、周知の可溶化剤であり、可溶化剤を併用することも可能である。好ましい可溶化剤としては、尿素又はアルキル硫酸塩(好ましいアルキル硫酸塩としてはSDSが挙げられる。)である。抽出方法としては、従来からの粉砕、乳化、攪拌、振とう及び煮沸法を単独もしくは組み合わせて用いることができる。好ましい抽出方法は、「高速攪拌及び剪断処理方法」又は「振とう処理方法」である。
〔6〕 食品から、前記〔1〕〜〔4〕に記載のいずれかの食品抽出液を用いて抽出した食物アレルゲンを、免疫学的測定法により存在の有無を検出するか又は存在量を測定することを特徴とする、食物アレルゲン検査方法。ここで、好ましい免疫学的測定法としては、イムノクロマトグラフィー又はELISAが用いられる。ELISAとしては、サンドイッチ法が好ましい。
〔7〕 食品中における食物アレルゲンの存在の有無を検出するか又は存在量を測定するための検査用キットであって、食品抽出液中に添加するためのチオグリセロール及び可溶化剤と共に、前記食物アレルゲンを特異的に認識する抗体を含むことを特徴とする、食物アレルゲン検査用キット。ここで、食品抽出液中に添加するためのチオグリセロール及び可溶化剤は、あらかじめ緩衝液(PBSなど)などに溶解した食品抽出液として容器詰めしてもよい。当該検査用キットに用いられる可溶化剤は当業者にとって、周知の可溶化剤であり、複数の可溶化剤を併用してもよい。好ましい可溶化剤としては、尿素及び/又はアルキル硫酸塩(好ましいアルキル硫酸塩としてはSDSが挙げられる。)である。当該検査用キットに用いられる食物アレルゲンを特異的に認識する抗体としては、支持体に固定化する抗体及び標識化された抗体の2種類を用いることが好ましい。
本発明のチオグリセロール及び可溶化剤を含む食品抽出液を用いることで、刺激性及び毒性を有する2−MEを用いなくても、各種加工食品から、変性度が高く難溶性状態となっている食物アレルゲンタンパク質を含めて、感度よく効率的に抽出可能となった。例えば、煮沸工程なしで、乾麺やパンなどからの卵タンパク質の抽出も可能である。そのため、食品製造現場でも簡便でかつ正確な検査が可能となった。また、簡便なイムノクロマト法や検査精度の高いELISA法に適用しても偽陽性を示すことなく正確に検出できる。
1.食品成分抽出液
(1−1)本発明の対象とする食品と食物アレルゲンタンパク質
本発明で対象とする食品は、食物アレルゲンとなるタンパク質を含有する食品である。特に、本発明の食品抽出液により効率よく抽出可能となった食品のタンパク質は、加熱調理された食品中の難抽出状態のアレルゲンタンパク質である。具体的には、加熱加圧条件下で製造されてアレルゲンタンパク質が不溶化し、難抽出状態になった加工食品、例えば乾麺(インスタントラーメンなど)や、食パンなどに含まれる卵タンパク質などである。本発明の食品抽出液は、いずれの食物アレルゲンタンパク質であっても、効率よく抽出することができ、かつ希釈などの簡単な操作で感度よく検出できる測定溶液が調製できる。
本発明の対象とする食品の形態は、固形状、半固形状、ゼリー状、液状、乳化液状のいずれの形態のものであってもよい。
(1−2)チオグリセロール
本発明の食品抽出液は、還元剤と可溶化剤とを含有し、その還元剤として、チオグリセロール(HOCHCH(OH)CHSH)を用いることを特徴とする。抽出液中の濃度は、被検査対象の食品及び検査目的の食物アレルゲンタンパク質の種類に応じて適宜調整することができる。例えば、0.001〜10(w/v)%、好ましくは0.005〜5%、より好ましくは0.01〜5%、最も好ましくは0.02〜1%である。
チオグリセロール量が、上記範囲の下限未満であると、変性した蛋白質の抽出効率が低下する。また、上限値を超える場合も抽出効率が低下する。
(1−3)本発明で用いる可溶化剤について
本発明で用いる可溶化剤としては慣用の可溶化剤を使用することができる。例えば尿素、アルキル硫酸塩などのイオン性界面活性剤が例示でき、これらの可溶化剤を2種以上併用してもよい。尿素及び/又はアルキル硫酸塩を用いることが好ましい。アルキル硫酸塩のアルキル基としては、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルなどが例示され、塩としては水溶性塩であれば特に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが例示される。もっとも好ましいアルキル硫酸塩としては、ドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSという)が挙げられる。
その他のイオン性界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩などの陰イオン性界面活性剤、塩化ヘキサデシルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムなどの陽イオン性界面活性剤を用いることもできる。
抽出法操作にミルサーあるいは、ミキサー、ホモジナイザーなどを用いる場合は、可溶化剤としては、泡立ちがない点で尿素が最も好ましいが、SDSなどのアルキル硫酸塩でも問題はない。
前記可溶化剤の抽出液中の濃度は、被検査対象の食品及び検査目的の食物アレルゲンタンパク質の種類に応じて、また還元剤のチオグリセロールの濃度に応じて適宜調整することができる。例えば、可溶化剤として尿素を使用した場合には、通常、0.01〜10(w/v)%、好ましくは0.05〜5.0%、より好ましくは0.1〜3.0%程度に調整され、SDSなどアルキル硫酸塩、その他のイオン性界面活性剤を使用した場合には、通常0.005〜5.0(w/v)%、好ましくは0.01〜3.0%、より好ましくは0.05〜2.0%程度に調整される。
可溶化剤が、上記の範囲の下限未満であるときは蛋白質の可溶化が不足して変性した蛋白質の抽出効率が低下するおそれがある。上限を超えた場合は抽出効率に問題はないが、5.0%までで充分に効果を奏するので、それ以上の濃度は必要とされない。
(1−4)抽出液中の水性媒体
本発明の抽出液に用いる水性媒体としては、例えば、水、緩衝液(リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液)、食塩水などを例示することができる。抽出液中のpHは、抽出対象となる加工食品ごとに適宜調整することができるが、通常pH6〜8程度に調整される。
2.抽出方法
本発明の抽出方法としては、従来用いられている粉砕、乳化、攪拌、振とう、又は煮沸法など適宜の方法を単独又は組み合わせて用いることができるが、以下の「高速攪拌及び剪断処理法」を用いることで、抽出工程を短縮化することができる。
抽出時の温度は、通常室温で行われるが、抽出液を40〜100℃に加温又は加熱して抽出操作を行ってもよい。
本発明において、抽出時間短縮のために用いられる「高速攪拌及び剪断処理法」では、抽出操作にミルサー、ミキサー、又はホモジナイザーなどを用い、高速攪拌及び剪断することにより、短時間で食品の粉砕及び乳化を行う。本工程において本発明のチオグリセロール及び可溶化剤を含む抽出液を使用する事により煮沸工程がなくても、変性され難溶性状態にあるタンパク質であっても抽出可能である。
具体的抽出操作例として「ミルサー」を用いた場合は、以下の通りとなる。
例えば、対象食品2gあたり38mLの上記のチオグリセロールと共に可溶化剤を含む抽出液を添加し、ミルサーにかけて30秒×3回高速裁断する。その後、「3000×gで20分間」などの通常の遠心処理後、ろ過して、食品成分抽出液を得る。
また、本発明の抽出方法としては「振とう法」による抽出法も好ましく用いることができる。具体的には、対象食品をそのまま、もしくは粉砕した後に、チオグリセロール及び可溶化剤を含む抽出液と混合し、12時間以上、好ましくは16時間(例えば一晩)振とう機を用いて振とうさせた後、遠心処理し、ろ過して食品成分抽出液を得る。
「振とう」処理は、例えば、室温中で「90〜110rpm、1往復を1回転として、1分間に90〜110往復」の条件で行う。
本発明の抽出液で抽出した液は、そのまま、もしくはPBSなどで希釈し、必要であれば中性付近(pH6.0〜8.0)に調整して、検査溶液としてイムノクロマト、又はELISAなどの免疫学的測定方法に適用することによりタンパク質含量の検出や測定などに使用することができる。
また、本発明の抽出方法により得られた抽出液を用いて、タンパク質以外のアレルゲン(ヒスタミンなど)の検出のため、分光光度計などによる測定を行ってもよく、PCR試薬による食物アレルゲン遺伝子の検出を行うことも可能である。
3.食品検査方法
本発明の抽出方法により得られた抽出液は、分光光度計を用いる検出法や、PCR法による検出法に適用することも可能であるが、食物アレルゲンがタンパク質の場合は簡便性及び正確性からみて免疫学的測定法を適用することが好ましい。
本発明の好ましい食品検査方法としては、周知の免疫学的測定方法である、イムノクロマト法、ELISA法又はウエスタンブロッティングなどが用いられる。
(3−1)抗体
食物アレルゲンに対応したそれぞれの測定用キットは食品成分検査キットなどとして市販されているので、キットに付随した抗体を用いることができるが、実際に特定の食物アレルゲンタンパク質に対する抗体を常法に従い作製したものや、市販の抗体を使用してもよい。
(3−2)イムノクロマト法による検査方法
イムノクロマト法は、簡便かつ迅速で感度の高い免疫学的測定方法であり、測定機器がいらない簡便な食品成分検査方法として広く用いられている。その原理は、以下の通りである。
イムノクロマトグラフィーは、セルロースメンブレンなどの薄膜状支持体の特定の位置に、検査目的のアレルゲンを特異的に認識する第1の抗体がバンド状に固定され、試料滴下部付近には標識された第2の抗体が移動可能に保持されている。分析対象食品の抽出液を試料滴下部に滴下すると、「検査目的のアレルゲン」が含まれていれば、標識された第2の抗体と結合して共にメンブレン中を移動し、バンド状に固定された第1の抗体の位置まで到達したときに、第1の抗体とも結合するから、標識が第1の抗体の固定化位置でバンド状に集合し、肉眼で確認できるようになる。分析対象食品に「検査目的のアレルゲン」が含まれていないか、検出限界以下であればバンドは出現しない。抽出液を試料滴下部に滴下した後、約10〜15分間程度で結果が判定できる。簡便かつ迅速で感度の高い方法であり、食品成分検査キットとして広く用いられている。
上記標識としては、金コロイドなどの金属コロイドの他、酵素標識、着色ラテックス粒子などを用いることもできるが、抗体を標識しやすい金コロイドが好ましい。
このような食品検査用のイムノクロマトグラフィーは自分で調製することもできるが、既に市販されている各種アレルゲン用にそろったイムノクロマトグラフィーを用いれば、より簡便である。
(3−3)ELISA法
ELISA(エライザ)法も、抗原抗体反応を検出するための免疫測定法である点では、イムノクロマトグラフィー法とも共通している。簡便性という点ではイムノクロマトグラフィー法には及ばないが、感度が良く定量性に優れた方法である。
主に、直接法及びサンドイッチ法などがあるが、サンドイッチ法により検量線を作成して定量することが一般的である。
「サンドイッチ法」は、あらかじめ標的アレルゲンに特異的な抗体として、別のエピトープを認識する2種類の抗体(標的物質に同一エピトープが複数存在する場合には、1種類の抗体でも可能)を用意し、そのうちの第1抗体を固相(マイクロタイタープレートなど)上に吸着させておき、食品成分抽出液を作用させた後で、標識した第2抗体を反応させて、同様に標的アレルゲンを検出、定量できる。
前記ELISA法に用いる標識手段としては、通常、発色酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、蛍光物質(例えば、フルオレセインイソチアネート)、生物発光物質(例えば、ルシフェリン−ルシフェラーゼ)、化学発光物質(例えば、ルミノール、アクリジン誘導体、又はアダマンタン誘導体)等が用いられる。金コロイド、又は放射性物質(例えば、32P)を用いることもできる。
4.検査用キット
食品に対して、各種食物アレルゲンの存在の有無を検出するために、検査対象の食物アレルゲンごとに、それを特異的に認識する抗体と共に、チオグリセロール及び可溶化剤を含む食品抽出液を組み合わせることで、食物アレルゲン検査用キットとすることができる。その際、検査したい食物アレルゲンの種類は複数であってもよく、特定原材料の全てがそろっていることが好ましい。
それぞれの食物アレルゲンを特異的に認識する抗体は、同一の、もしくは異なるイムノクロマトグラフィー内の薄膜状の支持体に固定化されていることが好ましく、既に市販されている卵、小麦、牛乳、そば、落花生、及び大豆食物アレルゲン検出用イムノクロマトグラフィーを利用することもできる。例えば、各食物アレルゲンに対応したポリクローナル抗体が固定化された支持体(支持体中央付近の判定ライン上に固定)と金コロイド標識抗体を組み合わせた検査試薬が、希釈用緩衝溶液などとセットになって「日本ハム(株)製FASTKITスリム」シリーズなどとして既に市販されている。卵タンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 卵」、牛乳タンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 牛乳」、小麦タンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 小麦」、そばタンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム そば」、落花生タンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 落花生」、大豆タンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 大豆」などを用いることができる。
また、ELISA用にも、各種食物アレルゲンに対応して、各第1抗体を吸着させたマイクロタイタープレート及び酵素標識した第2抗体(ポリクローナル抗体)溶液等が希釈用緩衝溶液などとセットになったELISA用の測定キットが、例えば「日本ハム(株)製FASTKITエライザ Ver.II」シリーズなどとして、既に市販されている。
本発明の食物アレルゲン検査用キットは、「食品中における食物アレルゲンの存在の有無を検出するか又は存在量を測定するための検査用キットであって、食品抽出液中に添加するためのチオグリセロール及び可溶化剤と共に、前記食物アレルゲンを特異的に認識する抗体を含むことを特徴とする、食物アレルゲン検査用キット。」と表現することができるが、その際、食品抽出液中に添加するためのチオグリセロール及び可溶化剤は、あらかじめ水又は緩衝液(PBSなど)に溶解した食品抽出液として容器詰めしたものを用いてもよい。当該検査用キットに用いられる可溶化剤は当業者にとって、周知の可溶化剤であり、複数の可溶化剤を併用してもよい。好ましい可溶化剤としては、尿素及び/又はアルキル硫酸塩(好ましいアルキル硫酸塩としてはSDSが挙げられる。)である。当該検査用キットに用いられる食物アレルゲンを特異的に認識する抗体としては、支持体に固定化する抗体及び標識化された抗体の2種類を用いることが好ましい。本発明の食物アレルゲン検査用キット中には、さらに、上述の市販されているイムノクロマトグラフィー用、又はELISA用のキットと同様に、検査の際に用いる希釈用緩衝液、取扱説明書などをセットとしてもよく、ELISA用としては、さらに標準溶液、発色液及び停止液などをセットとしてもよい。その際、検査用キットの1要素となる食品抽出液のためのチオグリセロール及び可溶化剤などは、それぞれ個別包装してもよいが、合わせて緩衝液などに溶解して容器詰めしたものを用いても良い。また、検査用キットの各要素が封入された袋、容器などの包装体をパッケージ化してもよい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する種々の技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
(実施例1)食品抽出液の組成の決定
(1−1)各種還元剤の検討
この実施例では、種々の還元性物質を用いて、加工食品中のタンパク質抽出実験を行った。
被検対象加工食品としては乾麺(ラーメン)を選択し、その加熱調理工程で難溶性状態を呈している卵タンパク質に対して、ミルサーを用いた抽出法を適用し、イムノクロマト法で検出可能かどうかを検証した。なお、用いたイムノクロマトグラフィーは、日本ハム(株)製の市販キット(FASTKITスリムシリーズ)である。
具体的には、以下のように行った。
乾麺(ラーメン)2gに対し、下記に示す様々な抽出液を38mL添加し、ミルサー(岩谷産業社製、IFM720G)で30秒×3回高速裁断し、3000×gで20分間遠心した後、ろ過する。次いで、得られた各抽出液100μLずつをPBSで10倍希釈し、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 卵」に滴下し、15分後に陽性ラインの有無を目視で判定した。
結果の判定基準は下記の通りに行った。(以下の実施例でも同様。)
+ :陽性
± :弱陽性
− :陰性
NT:実施せず
Figure 0006129832
<抽出液組成>
・なし 1%尿素、PBS
・その他 1%尿素、PBSに上記表1の各還元剤を0.2%ずつ
添加
その結果、2−MEと同程度の卵タンパク質抽出効果を示した化合物は、「チオグリセロール(HOCHCH(OH)CHSH)」のみであった(表1)。「チオグリセロール」は、構造的には2−MEと類似しているが、刺激臭も低く、政令上の毒物にも指定されていないため、以下、「チオグリセロール」を還元剤として選択することとした。
(1−2)還元剤濃度の検討
次に、チオグリセロール含有抽出液(1%尿素,PBS)を用いて、上記(1−1)の実験と同様の条件下で、乾麺(ラーメン)中の卵タンパク質を抽出し、抽出液としての最適なチオグリセロール濃度を検討した。
Figure 0006129832
その結果、食品抽出液中に、チオグリセロールを0.01〜10.0%、好ましくは0.01〜5.0%、より好ましくは0.02〜1.0%を配合することで、難溶性状態のアレルゲンタンパク質の抽出が感度よく行えることが確認された。このように、チオグリセロールを還元剤として用いることで、広い濃度範囲で効率よく抽出可能であることは、従来法よりも幅広い試料を検査対象とできる可能性が大きいことを意味し、特に0.02%の低濃度の使用でも高い抽出効率が達成できた点は、毒性が2−Meと比較して極めて低いとしても、眼刺激性などが知られるチオグリセロールの使用を極力抑えることが可能であることを意味するので、取り扱う技術者の安全性の観点からは大きなメリットである。
(実施例2)各種加工食品からの卵タンパク質の検出感度
(2−1)種々の抽出液及び抽出方法との感度比較
様々な市販加工食品のうち、従来法で検出しづらい食品からの検出感度を検証した。同時に、特許文献7及び8の抽出液との比較も行った。
具体的な手順は、ミルサー(岩谷産業社製)を用いた抽出法では、実施例1と同様に、対象食品2gに対して38mLの下記の各種抽出液を添加し、ミルサーで30秒×3回高速裁断し、3000×gで20分間遠心した後、ろ過する。一方、「煮沸抽出法」の場合は、対象食品1gに19mLの下記抽出液を添加し、10分(特許文献7の方法)または60分(特許文献8の方法)煮沸処理後、3000×gで20分間遠心した後、ろ過する。
それぞれ得られた抽出液を、PBSで10倍希釈して測定溶液とした。
実施例1と同様に、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 卵」に測定溶液を100μLずつ滴下し、15分後に陽性ラインの有無を目視で判定した(判定基準も実施例1と同様。)。
Figure 0006129832
<抽出液組成>
・本抽出液 0.05%チオグリセロール、1%尿素、PBS
・対照 1%尿素、PBS
・特許文献7の抽出液 0.5%SDS、0.1M亜硫酸ナトリウム、
PBS
・特許文献8の抽出液 0.25%SDS、2%尿素、
0.2%システイン、PBS
その結果、チオグリセロールを還元剤として選択した場合で、特にミルサー抽出を行った場合に、従来難しいとされていた加工食品からの難溶性状態の卵タンパク質の抽出に成功した。
本抽出液でのチオグリセロール濃度を0.5%に増加して、本実験を追試し、同じ結果を得た。(データは示さず)
(2−2)各種加工食品からの卵タンパク質の検出
上記(2−1)と同様に調製した各種加工食品由来のチオグリセロール含有抽出液を、PBSで10倍希釈した測定溶液、及び、必要に応じてさらにPBSで段階希釈した測定溶液を用いて、(2−1)と同様に、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 卵」により判定した。
Figure 0006129832
<抽出液組成>
・本抽出液 0.05%チオグリセロール、1%尿素、PBS
・対照 1%尿素、PBS
その結果、対照と比較し、本抽出液を用いた市販加工食品中の卵タンパク質の検出感度は大幅に上昇しており、どのような加工食品からも感度よく卵タンパク質を検出できることが実証された。
(実施例3)可溶化剤の検討
本実施例では、可溶化剤としては尿素以外の一般的な可溶化剤を適用しても同様の優れた抽出結果が得られることを示すために、可溶化剤として尿素(1%)を用いた場合と同時に、尿素に代えてSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を可溶化剤として用いた場合の実験を行った。比較のために、可溶化剤を用いない場合の対照実験も行った。
<抽出液組成>
・本抽出液−1 0.05%チオグリセロール、1%尿素、PBS
・本抽出液−2 0.05%チオグリセロール、0.05%SDS、
PBS
・対照 0.05%チオグリセロール、PBS
具体的な手順は、実施例2と同様に、対象食品2gに対して38mLの下記の各種抽出液を添加し、ミルサーで30秒×3回高速裁断し、3000×gで20分間遠心後にろ過して、得られた抽出液を、PBSで10倍希釈して測定溶液とした。
測定方法は、実施例1及び2と同様に「日本ハム(株)製FASTKITスリム 卵」に測定溶液を100μLずつ滴下し、15分後に陽性ラインの有無を目視で判定した(判定基準も実施例1と同様。)。
Figure 0006129832
その結果、還元剤のチオグリセロールに対して併用する可溶化剤としては、尿素に限らずSDSを用いた場合でも、抽出率が向上し、検出しにくい市販加工食品からも感度良く卵タンパク質が検出できることを確認できた。
(実施例4)各種食物アレルゲンに対する検出実験
本実施例は、チオグリセロールを含有する本抽出液が卵タンパク質以外の様々な食物アレルゲンの検出に効果的かどうか検証するためのものである。
対象加工食品としては、様々な食物アレルゲン(卵タンパク質、牛乳タンパク質、小麦タンパク質、そばタンパク質、落花生タンパク質、甲殻類タンパク質及び大豆タンパク質)をそれぞれ10ppmずつ添加したモデル加工食品を作製した。具体的な食品名はかまぼこ、ソーセージ、スイートポテト、及び鶏肉団子である。それぞれの食品中に添加された各アレルゲンタンパク質を抽出できるかどうかを検証した。その際に、イムノクロマト法と同じ測定試料を、ELISA法でも追試し、イムノクロマト法の精度を検証した。
食品抽出液を作製する具体的な手順は上記(実施例1)と同様であり、対象食品2gに対して38mLの下記の各種抽出液を添加し、ミルサーで30秒×3回高速裁断し、3000×gで20分間遠心した後、ろ過した。次いで、PBSで10倍希釈して測定溶液とした。
イムノクロマト法による測定は、卵タンパク質については、実施例1と同じ「日本ハム(株)製FASTKITスリム 卵」を用い、牛乳タンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 牛乳」、小麦タンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 小麦」、そばタンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム そば」、落花生タンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 落花生」、甲殻類タンパク質については、「試作キット」及び大豆タンパク質については、「日本ハム(株)製FASTKITスリム 大豆」を用いて判定した。具体的手順は実施例1と同様に、各キットに測定溶液を100μLずつ滴下し、15分後に陽性ラインの有無を目視で判定した(判定基準も実施例1と同様。)。
Figure 0006129832
<抽出液組成>
・本抽出液 0.05%チオグリセロール、1%尿素、PBS
・対照 1%尿素、PBS
本抽出液を用いることで、様々な形態の加工食品中の各種食物アレルゲン(卵、牛乳、小麦、そば、落花生、甲殻類、大豆)を高い検出率で検出できた。
(実施例5)ELISA法による測定
本実施例では、チオグリセロールを還元剤とし可溶化剤と併用して抽出した場合には、毒性の高い従来の2−メルカプトエタノール(2−ME)を用いた場合と遜色のない性能を示すことを、ELISA法により確認する実験を行った。比較のために、還元剤を用いない場合の対照実験も行った。
<抽出液組成>
・本抽出液 0.05%チオグリセロール、0.5%SDS、
PBS
・2−ME含有抽出液 2.0%2−ME、0.5%SDS、PBS
・対照 0.5%SDS、PBS
具体的な手順は、粉砕した対象食品2gを上記抽出液38mlと共に遠心管内に入れて混合し、振とう機(東京理化器械社製)内で一晩(約16時間)室温(約20℃)で振とうさせた。「振とう」処理は、「90〜110rpm、1往復を1回転として、1分間に90〜110往復」の条件で行った。次いで、3000×gで20分間遠心処理し、ろ過後、PBSで10倍希釈して測定溶液とした。
測定方法は、以下のように「日本ハム(株)製FASTKITエライザ Ver.II 卵」を用いて卵タンパク質を、ELISA法により測定した。
マイクロタイタープレートの各ウェル中に、希釈した標準溶液および測定溶液を100μL加え、室温(20〜25℃)で、1時間静置した。ウェル内の溶液を捨て、洗浄液で5回洗浄した。各ウェルに調製したビオチン結合抗体溶液100μLを加え、室温で、1時間静置した。ウェルを5回洗浄し、酵素−ストレプトアビジン結合物溶液100μLを加えて、室温で30分間静置した。各ウェルを5回洗浄後、発色剤100μLを加え、室温(20〜25℃)で、20分間静置した。各ウェルに反応停止液100μLを加え、発色を停止し、プレートリーダーにて主波長450nm、副波長600〜650nmの吸光度を測定した。
Figure 0006129832
その結果、還元剤としてチオグリセロールを用い、一晩振とう法で抽出した場合でも、検出しにくい市販加工食品から、毒物のメルカプトエタノール(2−Me)用いた場合と同様に感度良く卵タンパク質が検出できることを確認できた。しかも、2−Meと比較して1/40の濃度でも充分な抽出効果が得られたことも大きなメリットである。

Claims (7)

  1. 還元剤及び可溶化剤を含む食品抽出液であって、還元剤としてチオグリセロールを用いることを特徴とする、食品中の食物アレルゲンを抽出するための食品抽出液。
  2. 可溶化剤が尿素及び/又はアルキル硫酸塩である、請求項1に記載の食品抽出液。
  3. 抽出液中のチオグリセロール濃度が、抽出液全量に対して0.001〜10w/v%である、請求項1又は2に記載の食品抽出液。
  4. 食物アレルゲンが、加熱調理された食品中の難抽出状態のアレルゲンタンパク質である、請求項1〜3のいずれかに記載の食品抽出液。
  5. 食品から食物アレルゲンを抽出する方法において、チオグリセロール及び可溶化剤を含有する食品抽出液を用いることを特徴とする、食品中の食物アレルゲン抽出方法。
  6. 食品から、請求項1〜4に記載のいずれかの食品抽出液を用いて抽出した食物アレルゲンを、免疫学的測定法により存在の有無を検出又は存在量を測定することを特徴とする、食物アレルゲン検査方法。
  7. 食品中における食物アレルゲンの存在の有無を検出又は存在量を測定するための検査用キットであって、食品抽出液中に添加するためのチオグリセロール及び可溶化剤と共に、前記食物アレルゲンを特異的に認識する抗体を含むことを特徴とする、食物アレルゲン検査用キット。
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