JP2010127892A - 赤外線センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便な構成を用いて、検出精度を充分に確保でき、部品点数を削減でき、製造工程を簡便にすることができる赤外線センサを提供する。
【解決手段】赤外線を透過する材料からなる第1基板1と、信号処理回路を有し前記第1基板1に対向配置される第2基板2と、を備え、前記第1基板1は、前記第2基板2側を向く表面に形成された凹部11と、前記凹部11の底面から離間して配設された感熱膜12と、前記感熱膜12の外周に複数形成されるとともに該感熱膜12の面方向に沿って延び、前記感熱膜12と前記凹部11の開口縁とを連結する梁部13と、を備え、前記第2基板2は、前記第1基板1側を向く表面に形成されるとともに前記感熱膜12に対向配置される反射膜21を備え、前記第1基板1と前記第2基板2との間には、前記感熱膜12と前記反射膜21との間の距離Dを検出対象の波長λに対してλ/4に設定するスペーサ3が配置されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、赤外線センサに関する。
従来、赤外線センサは、人体等から放射される赤外線を検出するとともに、自動照明や警備に用いられたり、人体の居場所や体温を検出し空調を制御することに用いられたりしている。このような赤外線センサのうち、熱型赤外線センサとしては、焦電材料を用いた焦電型、サーモパイル型、半導体や金属からなるボロメータ材料を用いたボロメータ型等が知られている。近年では、MEMS技術の発展によって、熱型赤外線センサの検出技術が大幅に向上されてきている。
熱型赤外線センサのうち、ボロメータ型の赤外線センサは、検出用画素がサーモパイル型に比べ小さく形成できることから、検出データを精細な画像に表現しやすく、温度プロファイルをエリア観察する場合等に有用である。このような理由から、高精度の赤外線カメラ用としては、ボロメータ型の赤外線センサが用いられることがある。また、近年のMEMS技術の発展により、熱的な絶縁構造が形成でき、従来ペルチェなどで冷却しなければならないところが不要になり、低価格化が実現できることにより用途が拡大してきた。
このボロメータ型の赤外線センサとしては、例えば、特許文献1〜4及び非特許文献1等に記載されたものが知られている。非特許文献1には、赤外線センサチップをアウター(蓋部材)で真空封止してなるカンパッケージ型の赤外線センサが記載されている(非特許文献1、p.743、図4参照)。このように、赤外線センサチップを真空封止することで、赤外線センサチップが空気に触れ熱対流や熱伝導により検出精度を低減させるようなことが防止されている。また、赤外線センサチップを搭載するベース(検出基板)の前記アウターとは反対側には、赤外線センサチップからの検出信号を増幅して処理する信号処理回路を有する回路基板が配設される。
また、一般に、ボロメータ型の赤外線センサの検出基板としては、例えば、Siからなる基板と、ボロメータ材料からなるとともに基板から離間して配設される感熱膜(温度検知部)とを有するものが知られている。また、基板の表面において、感熱膜に対向する部分には、AlやAl−Si等からなる反射膜が形成され、感熱膜は、梁部(脚部)を有するとともにこの反射膜から離間して配設されている。尚、感熱膜が反射膜から離間される距離は、一般に、検出対象の赤外線の波長λに対してλ/4に設定されている。
このように感熱膜が基板から離間して配設されることで、感熱膜と基板との間の熱交換(すなわち熱の流出又は流入)が抑制されており、熱コンダクタンスの低い熱分離構造が形成されている。また、熱コンダクタンスをより低減させる理由から、感熱膜の梁部は、通常2本のみ設けられ、感熱膜と基板との間において熱交換が極力なされないように、感熱膜及び基板に対し傾斜して延びているとともに細く長く形成されて、感熱膜と基板とを連結している。
ところで、感熱膜を基板から離間して配設する手法としては、例えば、まずSiの基板上に犠牲層としてSiOを形成し、犠牲層の表面に感熱膜を形成して、感熱膜の外周に梁部を夫々形成した後、犠牲層をエッチングにより除去するものが知られている。
このように構成される赤外線センサに、検出対象から赤外線が放射されると、赤外線の多くは感熱膜に吸収されるが、その一部(例えば3割程度)が感熱膜を透過する。透過した赤外線は、反射膜で反射されて、再び感熱膜へ戻るのだが、ここで、反射膜と感熱膜との距離がλ/4に規定されているので、戻りの赤外線が検出対象から放射される赤外線の波長に共振して、感熱膜の吸収効率が向上するようにされている。尚、赤外線センサを用いて人体の検出を行う場合には、人体から放射される8μm〜13μmの波長帯の赤外線が想定されることから、例えばλ=10μmとして、感熱膜と反射膜との距離がλ/4=2.5μmに設定される(特許文献4参照)。
米国特許第5286976号明細書 特開2007−315916号公報 特開平7−318416号公報 特開2008−2912号公報 「金属」、株式会社アグネ技術センター、2007年、Vol.77(2007)No.7、p.741−744
しかしながら、前述したボロメータ型の赤外線センサにおける検出基板の製造では、まず、基板の表面に反射膜を形成し、この反射膜を犠牲層で覆った後、犠牲層の表面に感熱膜を形成し、さらに犠牲層を除去することが行われているが、犠牲層を厚膜に形成すること及び厚膜に形成された犠牲層を除去することが難しく、製造工程が複雑であった。また、このように犠牲層を用いて感熱膜と反射膜との間の距離を設定することから、感熱膜と反射膜との間に除去しきれなかった犠牲層の一部が残留したり、感熱膜と反射膜との間の距離を精度よく設定できなかったりして、検出精度を確保することが難しかった。
また、赤外線センサに感熱膜と反射膜との対を複数形成する場合、これらの対毎に、梁部を介して前記距離λ/4が設定されることとなるが、梁部は、感熱膜及び基板に対し傾斜して延びて感熱膜と基板とを連結するとともに感熱膜を支持していることから、これらの対毎に前記距離がばらつきやすいという課題を有していた。
また、このような赤外線センサにおいては、従来より部品点数を削減することが望まれていた。
本発明は、前述の課題を鑑みてなされたものであって、簡便な構成を用いて、検出精度を充分に確保でき、部品点数を削減でき、製造工程を簡便にすることができる赤外線センサを提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明の赤外線センサは、赤外線を透過する材料からなる第1基板と、信号処理回路を有し前記第1基板に対向配置される第2基板と、を備え、前記第1基板は、前記第2基板側を向く表面に形成された凹部と、前記凹部の底面から離間して配設された感熱膜と、前記感熱膜の外周に複数形成されるとともに該感熱膜の面方向に沿って延び、前記感熱膜と前記凹部の開口縁とを連結する梁部と、を備え、前記第2基板は、前記第1基板側を向く表面に形成されるとともに前記感熱膜に対向配置される反射膜を備え、前記第1基板と前記第2基板との間には、前記感熱膜と前記反射膜との間の距離を検出対象の波長λに対してλ/4に設定するスペーサが配置されていることを特徴とする。
本発明に係る赤外線センサによれば、第1基板に感熱膜が形成され、第2基板に反射膜が形成されていて、感熱膜と反射膜とが互いに別体に形成されているので、製造工程が簡便となる。すなわち、従来のように、感熱膜と反射膜とを同一の基板に形成する場合には、基板の表面に、まず反射膜を形成し、反射膜を犠牲層で覆った後、犠牲層の表面に感熱膜を形成し、さらに犠牲層を除去することが行われていた。一方、本発明では、感熱膜と反射膜との間に犠牲層を形成する必要がないことから、製造が容易となる。尚、反射膜が形成される第2基板は、従来より回路基板として用いられていることから、部品点数を増加させることがない。
また、このような構成により、従来のように感熱膜と反射膜とを同一の基板(検出基板)に形成する場合に対比して、検出精度が充分に確保される。すなわち、従来では、犠牲層を用いて感熱膜と反射膜との間の距離を設定していたが、犠牲層を除去した際、感熱膜と反射膜との間に除去しきれなかった犠牲層の一部が残留したり、感熱膜と反射膜との間の距離を精度よく設定できなかったりして、検出精度を確保することが難しかった。一方、本発明の赤外線センサにおいては、感熱膜と反射膜との間に犠牲層を形成する必要がなく、また、感熱膜と反射膜との間の距離がスペーサにより精度よく設定されることから、検出精度が充分に確保される。
また、前記距離がスペーサにより設定されることから、精度よくλ/4に決まる。このように構成される赤外線センサにおいて、第1基板の第2基板側とは反対側の表面に向けて、外部から検出対象の赤外線が放射されると、赤外線の多くは感熱膜に吸収され、その一部が感熱膜を透過するが、透過した赤外線は、反射膜で反射されて再び感熱膜へ戻る際に、反射膜と感熱膜との距離がλ/4に精度よく設定されていることから、検出対象から放射される赤外線の波長に共振して、感熱膜に吸収されやすくされている。従って、感熱膜の赤外線吸収効率が高められ、赤外線センサの検出精度が充分に確保される。
さらに、赤外線センサに感熱膜と反射膜との対を複数形成する場合、従来のように、前記対毎に前記距離λ/4を設定するような必要がないことから、感熱膜と反射膜との間の距離λ/4が精度よく設定される。すなわち、スペーサが、複数の前記対の前記距離を同一寸法に設定するので、検出精度が充分に確保される。
また、梁部が、感熱膜の外周から感熱膜の面方向に沿って延び、感熱膜と凹部の開口縁とを連結して感熱膜を支持しているので、従来のように、梁部が感熱膜及び基板に対し傾斜して延びて、感熱膜と基板とを連結するとともに感熱膜を支持しているような構成に対比して、感熱膜の振動が確実に抑制されて、感熱膜と反射膜との間の距離λ/4がより精度よく設定される。
また、このように凹部の開口縁に梁部を介して感熱膜を形成する手法として、例えば、まず凹部に犠牲層を形成し、感熱膜及び梁部を形成した後、犠牲層を除去することが考えられるが、本発明の構成によれば、凹部の深さを前記λ/4に関係なく設定できることから比較的浅く形成することが可能であり、この場合、犠牲層の膜厚を低減でき、製造がより簡便となる。
また、本発明に係る赤外線センサにおいて、前記スペーサは、前記第1基板の前記第2基板側を向く表面の外周縁部と、前記第2基板の前記第1基板側を向く表面の外周縁部とに夫々密接されているとともに、前記第1基板と前記第2基板との間を減圧雰囲気に封止していることとしてもよい。
本発明に係る赤外線センサによれば、スペーサが、第1基板と第2基板との間を減圧雰囲気に封止しているので、この赤外線センサを構成する部品点数が削減される。すなわち、従来では、感熱膜が、第1基板において第2基板側とは反対側を向く表面に形成され、さらに第1基板の前記表面に対向するように別の基板等からなる蓋部材を配設して、感熱膜を減圧雰囲気に封止するとともに感熱膜の検出精度を確保していたが、本発明に係る赤外線センサにおいては、第1、第2基板の間がスペーサにより減圧雰囲気に封止されているとともに感熱膜が減圧雰囲気中に配設されることから、前記蓋部材を用いる必要が生じない。従って、赤外線センサの製造コストが大幅に削減される。
また、本発明に係る赤外線センサにおいて、前記第1基板には、前記感熱膜に赤外線を集光させる集光部が形成されていることとしてもよい。
本発明に係る赤外線センサによれば、第1基板には、検出対象から放射される赤外線を感熱膜に集光させる集光部が形成されているので、赤外線センサの検出感度が高められている。また、集光部を第1基板に直接形成していることから、集光部と感熱膜との間の距離を精度よく決められるとともに赤外線を感熱膜に精度よく集光させることができる。また、赤外線センサを構成する部品点数が削減される。すなわち、従来では、検出基板の回路基板とは反対側の表面に感熱膜が配設されていたので、検出基板に集光部を形成することができなかった。一方、本発明の赤外線センサによれば、感熱膜が第1基板の第2基板側を向く表面に配設されることから、第1基板の第2基板側とは反対側を向く表面に集光部を形成することができ、部品点数が削減する。
また、本発明に係る赤外線センサにおいて、前記感熱膜として、ボロメータ材料を用いていることとしてもよい。
本発明に係る赤外線センサによれば、感熱膜としてボロメータ材料を用いているので、熱抵抗を大きくでき、検出精度が充分に確保される。また、赤外線センサの製造コストをより削減できる。
また、本発明に係る赤外線センサにおいて、前記スペーサが、半田、ガラスフリット又はガラスペーストにより形成されていることとしてもよい。
本発明に係る赤外線センサによれば、スペーサが半田、ガラスフリット又はガラスペーストにより形成されているので、スペーサの形成を他の金属接合とともに行え、製造がより簡便となる。また、スペーサを用いて第1基板と第2基板との間を減圧雰囲気に気密に封止するような構成が可能であり、赤外線センサの精度が確保される。
本発明に係る赤外線センサによれば、簡便な構成を用いて、検出精度を充分に確保でき、製造工程を簡便にすることができる。
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る赤外線センサを示す概略側断面図、図2は本発明の一実施形態に係る赤外線センサの感熱膜を拡大して示す概略部分平面図、図3は本発明の一実施形態に係る赤外線センサの第1基板の変形例を示す概略側断面図である。
本実施形態に係る赤外線センサ10は、熱型赤外線センサであり、ボロメータ型の赤外線センサに相当するものである。また、この赤外線センサ10は、例えば、車室や居室における人体の位置や温度情報を取得する手段として、空調の制御に用いられる。
図1に示すように、本実施形態の赤外線センサ10は、板状をなし、互いに離間して対向配置される第1基板1及び第2基板2を有している。
第1基板1は、赤外線を透過する性質の材料からなり、例えば、Siで形成されている。第1基板1において、第2基板2側を向く表面には、略直方体穴状の凹部11が複数形成されている。また、これらの凹部11は、アレイ状に配列している。これらの凹部11は、公知のナノインプリント技術やエッチング等により形成される。
また、第1基板1は、凹部11の底面から離間して配設される感熱膜12と、感熱膜12の外周に複数形成されるとともに該感熱膜12の面方向に沿って延び、感熱膜12と凹部11の開口縁とを連結する梁部13と、を備えている。
感熱膜12は、例えば、Si、Ge、ポリエステル、酸化バナジウム(VO)又はTi等のボロメータ材料からなり、内部に熱吸収体及び配線を有している。本実施形態では、感熱膜12のボロメータ材料として、酸化バナジウムが用いられている。
また、梁部13は、例えば、Poly−Si、Al−Si、Al又はSi等を用いて形成される。尚、本実施形態では、梁部13として、Poly−Siが用いられている。
図2に示すように、本実施形態では、梁部13が2本設けられており、これらの梁部13が略Z字状に夫々形成されているとともに、その両端部分が、感熱膜12の外周における隅部と凹部11の開口縁とに夫々連結されている。また、これらの梁部13は、図2の平面視において、感熱膜12を中心に互いに回転対称に配置されている。
このように凹部11に感熱膜12及び梁部13を形成する手法としては、まず、凹部11内に、例えば、SiOからなる犠牲層を形成する。次いで、前記犠牲層において凹部11の底面側とは反対側を向く表面に感熱膜12を形成し、感熱膜12の外周に梁部13を夫々形成した後、犠牲層をエッチングにより除去する。このような工程により、凹部11の開口縁に梁部13を介して連結する感熱膜12が形成される。
また、図示しないが、第1基板1の第2基板2側を向く表面において、凹部11以外の部分には、複数の導体パターンが形成されている。これらの導体パターンは、梁部13を介して、感熱膜12の配線と電気的に接続されている。
また、第1基板1の第2基板2側とは反対側には、赤外線を透過する性質の、例えばSiからなる集光基板4が配設されている。集光基板4には、第1基板1の各感熱膜12に対応して、これらの感熱膜12に検出対象から放射される赤外線を集光させる凸レンズ状の集光部14が複数形成されている。このように集光部14を有する構成により、赤外線センサ10の検出感度が高められている。
また、第2基板2は、例えばSiからなり、CMOSIC(信号処理回路)を有している。また、前記CMOSICは、図示しないフレキシブル基板等の外部配線を介して、第1基板1の前記導体パターンと電気的に接続されている。
また、第2基板2の第1基板1側を向く表面には、赤外線を反射する性質を有し、例えばAlからなる反射膜21が複数形成されている。これらの反射膜21は、第1基板1の感熱膜12に夫々対向配置されている。
また、第1基板1と第2基板2との間には、感熱膜12と反射膜21との間の距離Dを検出対象の波長λに対してλ/4に設定するスペーサ3が配置されている。詳しくは、スペーサ3は、例えばSiOからなり、枠状に形成されている。また、スペーサ3は、第1基板1の第2基板2側を向く表面の外周縁部と、第2基板2の第1基板1側を向く表面の外周縁部とに夫々密接されているとともに、第1基板1と第2基板2との間を略真空の減圧雰囲気に封止している。
スペーサ3は、公知の印刷法やディスペンサによる塗布等を用いて形成される。詳しくは、例えば、スペーサ3として溶融状態のSiOを用意し、第1基板1又は/及び第2基板2に塗布し冷却する。次いで、略真空の減圧雰囲気中において、第1基板1と第2基板2とを対向して近接させるとともにスペーサ3を介し陽極接合させることで、図1に示すような赤外線センサ10が製造される。尚、スペーサ3は、半田、ガラスフリット又はガラスペーストにより形成されていてもよい。
また、スペーサ3において、第1、第2基板1,2の各表面に垂直な方向の厚さは、感熱膜12と反射膜21との間の距離Dを、検出対象の波長λに対してλ/4に決めるように設定されている。また、複数の感熱膜12及び反射膜21の対における夫々の距離Dが、スペーサ3の前記厚みにより設定されている。尚、本実施形態の赤外線センサ10においては、検出対象として人体を想定していることから、人体から放射される赤外線の波長λ(約10μm)より、距離D(=λ/4)=2.5μmに設定している。
以上説明したように、本実施形態の赤外線センサ10によれば、第1基板1に感熱膜12が形成され、第2基板2に反射膜21が形成されていて、感熱膜12と反射膜21とが互いに別体に形成されているので、製造工程が簡便となる。すなわち、従来のように、感熱膜12と反射膜21とを同一の基板に形成する場合には、基板の表面に、まず反射膜21を形成し、反射膜21を犠牲層で覆った後、犠牲層の表面に感熱膜12を形成し、さらに犠牲層を除去することが行われていたが、本実施形態の赤外線センサ10では、感熱膜12と反射膜21との間に犠牲層を形成する必要がないことから、製造が容易となる。尚、反射膜21が形成される第2基板2は、従来より回路基板として用いられていることから、部品点数を増加させることがない。
また、このような構成により、従来のように感熱膜12と反射膜21とを同一の基板に形成する場合に対比して、検出精度が充分に確保される。すなわち、従来では、犠牲層を用いて感熱膜12と反射膜21との間の距離Dを設定していたが、犠牲層を除去した際、感熱膜12と反射膜21との間に除去しきれなかった犠牲層の一部が残留したり、感熱膜12と反射膜21との間の距離Dを精度よく設定できなかったりして、検出精度を確保することが難しかった。一方、本実施形態の赤外線センサ10においては、感熱膜12と反射膜21との間に犠牲層を形成する必要がなく、また、感熱膜12と反射膜21との間の距離Dがスペーサ3により精度よく設定されることから、検出精度が充分に確保される。
また、距離Dがスペーサ3により設定されることから、精度よくλ/4に決まる。このように構成される赤外線センサ10において、第1基板1の第2基板2側とは反対側の表面に向けて、外部から検出対象の赤外線が放射されると、赤外線の多くは感熱膜12に吸収され、その一部が感熱膜12を透過するが、透過した赤外線は、反射膜21で反射されて再び感熱膜12へ戻る際に、反射膜21と感熱膜12との距離Dがλ/4に精度よく設定されていることから、検出対象から放射される赤外線の波長λに共振して、感熱膜12に吸収されやすくされている。従って、感熱膜12の赤外線吸収効率が高められ、赤外線センサ10の検出精度が充分に確保される。
さらに、前述したように、赤外線センサ10に感熱膜12と反射膜21との対を複数形成する場合においては、従来のように、前記対毎に距離Dを設定するような必要がないことから、感熱膜12と反射膜21との間の距離Dが精度よく設定される。すなわち、スペーサ3が、複数の前記対の距離Dを同一寸法に設定するので、検出精度が充分に確保される。
また、梁部13が、感熱膜12の外周から感熱膜12の面方向に沿って延び、感熱膜12と凹部11の開口縁とを連結して感熱膜12を支持しているので、従来のように、梁部が感熱膜及び基板に対し傾斜して延びて、感熱膜と基板とを連結するとともに感熱膜を支持しているような構成に対比して、感熱膜12の振動が確実に抑制されて、感熱膜12と反射膜21との間の距離D(=λ/4)がより精度よく設定される。すなわち、従来では、傾斜して形成された梁部がばね材のように作用して、感熱膜12が振動して検出精度が確保できないことがあったが、本実施形態の赤外線センサ10によれば、梁部13が感熱膜12の面方向に沿って延びていることから感熱膜12の振動が抑制されて、検出精度が充分に確保される。
また、スペーサ3が、第1基板1と第2基板2との間を減圧雰囲気に封止しているので、この赤外線センサ10を構成する部品点数が削減される。すなわち、従来では、感熱膜12が、第1基板1において第2基板2側とは反対側を向く表面に形成され、さらに第1基板1の前記表面に対向するように集光基板4等からなる蓋部材を配設して、第1基板1と集光基板4との間の感熱膜12を減圧雰囲気に封止するとともに感熱膜12の検出精度を確保していたが、本実施形態に係る赤外線センサ10においては、第1、第2基板1,2の間がスペーサ3により減圧雰囲気に封止されているとともに感熱膜12が減圧雰囲気中に配設されることから、第1基板1と集光基板4との間を減圧雰囲気に封止する必要が生じず、また、集光基板4を用いなくともよい。従って、赤外線センサ10の製造コストが大幅に削減される。
尚、集光基板4を用いない場合には、図3に示すように、第1基板1における第2基板2側とは反対側を向く表面に、凸レンズ状の集光部24を複数形成することとしてもよい。これらの集光部24は各感熱膜12に対応して配置され、検出対象から放射される赤外線を感熱膜12に夫々集光させるように形成されている。このように集光部24を第1基板1に直接形成することとした場合、集光部24と感熱膜12との間の距離をより精度よく決められるとともに赤外線を感熱膜12に精度よく集光させることができる。また、検出精度を確保できるとともに、赤外線センサ10を構成する部品点数が削減される。
すなわち、従来では、検出基板の回路基板とは反対側の表面に感熱膜12が配設されていたので、検出基板に集光部24を形成することができなかった。一方、図3における赤外線センサ10によれば、感熱膜12が第1基板1の第2基板2側を向く表面に配設されることから、第1基板1の第2基板2側とは反対側を向く表面に集光部24を形成することができ、部品点数が削減する。
また、感熱膜12として、ボロメータ材料の酸化バナジウムを用いているので、感熱膜12の熱抵抗を大きくでき、検出精度を充分に確保できる。また、赤外線センサ10の製造コストをより削減できる。
また、スペーサ3を、半田、ガラスフリット又はガラスペーストにより形成した場合には、スペーサ3が第1基板1と第2基板2との間を減圧雰囲気に気密に封止し、赤外線センサ10の精度が充分に確保される。また、スペーサ3の形成が、他の金属接合とともに行えることから、製造がより簡便となる。
また、第1基板1の凹部11を用いて犠牲層を形成し、この犠牲層の表面に感熱膜12及び梁部13を形成していることから、感熱膜12及び梁部13の形成が簡便に行える。すなわち、従来のように、平坦面からなる基板の表面に反射膜12を形成し、該反射膜12の表面に犠牲層を形成する場合には、犠牲層の膜厚を確保しつつ該膜厚を精度よく設定することが難しく、また製造工程が煩雑となっていたが、本実施形態によれば、凹部11に犠牲層を充填するのみの簡便な作業により、犠牲層の膜厚を確保できるとともに該膜厚を精度よく設定できる。
また、前述のように凹部11の開口縁に梁部13を介して感熱膜12を形成するにあたり、凹部11の深さを前記距離Dに関係なく設定できることから比較的浅く形成することが可能であり、この場合、犠牲層の膜厚を低減でき、製造がより簡便となる。
尚、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では、第1基板1がSiからなることとして説明したが、第1基板1は赤外線を透過する性質を有していればよく、それ以外のポリエステル等の樹脂により形成されていても構わない。このように第1基板1をポリエステルで形成した場合には、材料費がより削減される。
また、本実施形態では、感熱膜12を構成するボロメータ材料として、酸化バナジウムを用いることとして説明したが、他のボロメータ材料を用いることとしても構わない。また、感熱膜12として、ボロメータ材料以外の材料を用いても構わない。
また、本実施形態では、感熱膜12に酸化バナジウムを用い、梁部13にPoly−Siを用いることとして説明したが、感熱膜12及び梁部13を同一材料により一体成形することとしても構わない。この場合、製造工程が削減されるとともに、生産性が向上する。
また、本実施形態では、検出対象として主に人体を想定し、人体から放射される赤外線の波長λ(約10μm)より、感熱膜12と反射膜21との間の距離D(=λ/4)=2.5μmに設定することとして説明したが、距離Dは、本実施形態に限定されるものではない。すなわち、距離Dは、検出対象から放射される赤外線の波長λに合わせて、適宜設定可能である。
また、本実施形態では、反射膜21がAlで形成されていることとして説明したが、反射膜21は、赤外線を反射する性質のものであればよく、それ以外のAl−Si等であっても構わない。
また、本実施形態では、凹部11が、略直方体穴状に形成されていることとして説明したが、凹部11の形状はそれ以外の略円柱穴状や略多角柱穴状であっても構わない。また、凹部11が、アレイ状に配列していることとして説明したが、凹部11の配列は、本実施形態に限定されない。
また、本実施形態では、梁部13が2本設けられており、これらの梁部13が略Z字状に夫々形成されていることとして説明したが、梁部13の数量や形状は、本実施形態に限定されない。
また、第2基板2が、CMOSICを有することとして説明したが、第2基板2は、CMOSIC以外の信号処理回路を有していることとしても構わない。
また、本実施形態では、第1基板1の前記導体パターンと第2基板2の前記CMOSICが、フレキシブル基板等の外部配線を介して電気的に接続されていることとして説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、スペーサ3として、導電性粒子を含有した感光性硬化樹脂材料等を用い、スペーサ3を介して、前記導体パターンと前記CMOSICとを導通することとしても構わない。
本発明の一実施形態に係る赤外線センサを示す概略側断面図である。 本発明の一実施形態に係る赤外線センサの感熱膜を拡大して示す概略部分平面図である。 本発明の一実施形態に係る赤外線センサの第1基板の変形例を示す概略側断面図である。
符号の説明
1 第1基板
2 第2基板
3 スペーサ
10 赤外線センサ
11 凹部
12 感熱膜
13 梁部
21 反射膜
24 集光部
D 感熱膜と反射膜との間の距離

Claims (5)

  1. 赤外線を透過する材料からなる第1基板と、信号処理回路を有し前記第1基板に対向配置される第2基板と、を備え、
    前記第1基板は、前記第2基板側を向く表面に形成された凹部と、前記凹部の底面から離間して配設された感熱膜と、前記感熱膜の外周に複数形成されるとともに該感熱膜の面方向に沿って延び、前記感熱膜と前記凹部の開口縁とを連結する梁部と、を備え、
    前記第2基板は、前記第1基板側を向く表面に形成されるとともに前記感熱膜に対向配置される反射膜を備え、
    前記第1基板と前記第2基板との間には、前記感熱膜と前記反射膜との間の距離を検出対象の波長λに対してλ/4に設定するスペーサが配置されていることを特徴とする赤外線センサ。
  2. 請求項1に記載の赤外線センサであって、
    前記スペーサは、前記第1基板の前記第2基板側を向く表面の外周縁部と、前記第2基板の前記第1基板側を向く表面の外周縁部とに夫々密接されているとともに、前記第1基板と前記第2基板との間を減圧雰囲気に封止していることを特徴とする赤外線センサ。
  3. 請求項1又は2に記載の赤外線センサであって、
    前記第1基板には、前記感熱膜に赤外線を集光させる集光部が形成されていることを特徴とする赤外線センサ。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の赤外線センサであって、
    前記感熱膜として、ボロメータ材料を用いていることを特徴とする赤外線センサ。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の赤外線センサであって、
    前記スペーサが、半田、ガラスフリット又はガラスペーストにより形成されていることを特徴とする赤外線センサ。
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