以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
本発明は、無線測位を行うタグリーダをユーザが設置する際に、タグリーダの設置誤差を推定する設置誤差推定に関する。特に、実施の形態1は、ユーザがタグリーダを設置する際に、タグリーダの周辺(観測点)に無線タグを置いて、無線タグの位置を計測(観測)し、得られた観測データに基づいて、タグリーダの設置誤差を推定する。また、実施の形態2は、ユーザがタグリーダを設置する際、タグリーダの周辺(観測点)に無線タグを置いて、無線タグの位置を計測(観測)し、得られた観測データに基づいて、タグリーダの設置誤差を推定し、推定した設置誤差を評価する。また、実施の形態3は、実施の形態2に加え、タグリーダの設置誤差を推定した際、さらに、推定した設置誤差が収束条件を満たしていない場合に、新たに観測対象とする無線タグを置く位置を推奨する。
本発明は、取り扱う無線タグの周波数帯やタイプ(アクティブ型、パッシブ型)、位置検出方式などが異なる種々のタグリーダの設置に適用可能である。実施の形態1〜3では、一例として、例えば、通信方式にUWBを採用した無線タグ(UWBタグ)を用いた、一点測位と称する方式(以下「一点測位方式」という)を例にとって説明する。
ここで、一点測位方式について簡単に説明しておく。
一点測位方式は、タグリーダがUWB信号を送信した後、無線タグから返信される信号の遅延時間を測定し、測定した遅延時間を距離に換算する方法である。さらに、タグリーダは、UWB信号を送信した後、無線タグによって反射された反射波を複数の受信アンテナで受信し、受信した受信波の位相差から無線タグの方向を決定する。そして、タグリーダは、このようにして得られた距離と無線タグの方向から、無線タグの位置を推定(計測)するものである。
以下、順に、実施の形態1〜3を説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る設置誤差推定装置を含むUWB測位システムの構成図である。
図1に示すシステムは、設置誤差推定装置100、タグリーダ200、および無線タグ300を有する。図1には、無線タグ300として、3つの無線タグ300a、300b、300cが示されている。設置誤差推定装置100は、タグリーダ200の設置位置を推定する。設置誤差推定装置100の構成および動作については、後で詳細に説明する。タグリーダ200は、一点測位方式によって無線タグ300の位置検出を行う。無線タグ300は、例えば、UWBタグである。
例えば、UWB測位システムは、無線タグ300を人や物に装着してタグリーダ200と無線通信を行うことによって無線タグ300の位置を逐次的に検出する。このため、UWB測位システムは、オフィスにおける入退出管理や、病院での医薬品位置管理、工場における動線を把握した作業効率改善などに適用することができる。
タグリーダ200と無線タグ300は、無線(UWB)による通信を行う。また、設置誤差推定装置100とタグリーダ200は、例えば、IP(Internet Protocol)ネットワークによる通信によってデータの交換を行う。
図2は、本実施の形態における測位対象エリアの一例を示す概略図である。図3は、図2に示す測位対象エリアの見取り図である。ここで、測位対象エリアとは、タグリーダ200を設置して無線タグ300の位置検出を行う空間領域のことである。
本実施の形態における測位対象エリア400は、図2に示すように、直方体の形状を有し、床面401、天井面402、四方の壁面403〜406、およびドア407からなる単純な部屋とする。
図3は、天井方向から床方向を鳥瞰した部屋の見取り図である。ここでは、図3に示すように、部屋の左下隅を原点(0,0,0)410とする。測位対象エリア400には、x軸方向に長さm、y軸方向に長さm、z軸(紙面奥から手前方向)方向に高さh(図示せず)がそれぞれ割り当てられている。この座標系(xyz)420は、後述するグローバル座標系である。
また、タグリーダ200は、図3に示すように、天井面402の中央(m/2,m/2,Rz)の設置位置411に設置されるとする。タグリーダ200には、内部に保持され、測位するときの座標系(この座標系(XYZ)は、後述するローカル座標系である)421が定義されている。したがって、タグリーダ200は、ローカル座標系421のX軸がグローバル座標系420のx軸と、ローカル座標系421のY軸がグローバル座標系420のy軸とそれぞれ一致する向きで設置されることが期待されている。
そのため、無線タグ300の位置検出においては、タグリーダ200に定義された座標系と、タグリーダ200の設置位置および無線タグ300の移動範囲が定義された座標系とを関連付ける必要がある。例えば、タグリーダ200の設置位置および無線タグ300の移動範囲が定義された座標系とは、オフィスや工場などにおいて、設計図面や見取り図などのように、ある点を基準点とする座標系(以下「グローバル座標系」という)である。一方、タグリーダ200に定義された座標系とは、タグリーダ200のある点を基準点とする座標系(以下「ローカル座標系」という)である。本実施の形態では、上記のように、無線タグ300の位置は、グローバル座標系420では(x,y,z)で表され、ローカル座標系421では(X,Y,Z)で表される。以下、グローバル座標系における座標(x,y,z)を「グローバル座標」と、ローカル座標系における座標(X,Y,Z)を「ローカル座標」と、それぞれ称する。
タグリーダ200を本来設置すべき設計図上の位置および姿勢に対して誤差なく設置すれば、結果としてグローバル座標系420とローカル座標系421を、次の式(1)に表すように完全に一致させることができる。この場合、タグリーダ200がローカル座標系421で計測した無線タグ300の位置は、グローバル座標系420で表すことができる。
ここで、(a1,a2,a3)は、グローバル座標系420上の原点410とタグリーダ200を設置すべき位置411との差として設計図において既知の情報であり、かつ、固定値である。
図4は、本実施の形態に係る設置誤差推定装置100の構成を示すブロック図である。
図4に示す設置誤差推定装置100は、観測点設定部110、予想パターン計算部120、観測データ入力部130、散布パターン解析部140、設置誤差推定部150、および設置誤差出力部160を有する。
設置誤差推定装置100は、例えば、通信機能を有するコンピュータシステム(パーソナルコンピュータやワークステーションなど)で構成されている。このコンピュータシステムは、図示しないが、大別して、入力装置、コンピュータ本体、出力装置、および通信装置を有する。入力装置は、例えば、キーボードやマウスなどである。出力装置は、例えば、ディスプレイやプリンタなどである。通信装置は、例えば、IPネットワークと接続可能な通信インタフェースなどである。コンピュータ本体は、例えば、主に、CPU(Central Processing Unit)と記憶装置で構成されている。CPUは、制御機能と演算機能を有する。記憶装置は、例えば、プログラムやデータを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMとを有する。ROMは、電気的に内容の書き直しが可能なフラッシュメモリであってもよい。
以下、設置誤差推定装置100を構成する各部110〜160の構成(入力と出力を含む)について説明した後、設置誤差推定装置100の動作(内部処理)について説明する。
観測点設定部110は、無線タグ300を設置して測位する観測点に関する情報を観測点情報として設定する、つまり、ユーザによる観測点の指定の結果を記憶する。具体的には、観測点設定部110は、ユーザが入力装置(図示せず)を用いてそれぞれ入力した観測点情報を所定のフォーマットで記憶する。観測点情報は、無線タグ300の識別子(以下「タグID」という)、無線タグ300を置く観測点の座標(以下「観測点座標」という)(x,y,z)、および無線タグ300を置く観測点の名称(以下「観測点名称」という)を含む。
図5は、観測点情報の一例を示す図である。
図5に示すように、観測点情報500には、データの種類(項目)として、タグID501と観測点座標502と観測点名称503とが互いに関連付けられて格納されている。
また、観測点設定部110は、ユーザによって設置誤差推定装置100が起動されると、観測点情報を設定するための操作画面を表示する。
図6は、観測点情報を設定するための操作画面の表示の一例を示す図である。
図6に示す操作画面510(以下「画面1」ともいう)には、観測点情報500の項目に応じて、タグID入力欄511、観測点座標入力欄512、および観測点名称入力欄513が設けられている。操作画面510は、設定完了ボタン514が押されるまで表示される。
予想パターン計算部120は、観測点設定部110によって設定された観測点情報に基づいて、観測点毎に、理論上の測位分布を予想して得られた予想測位分布の特徴的なパターンを予想測位分布パターンとして算出する。具体的には、予想パターン計算部120は、観測点設定部110から観測点情報500(タグID501、観測点座標502、および観測点名称503)を取得する。次に、予想パターン計算部120は、各観測点座標502に対する測位分布(理論値)を予想して、後述する予想測位分布パターンLを作成する。例えば、タグリーダ200の設置誤差は、向き(回転方向)のずれをθ、x軸方向の位置のずれをa、y軸方向の位置のずれをbとする。このとき、各観測点における予想測位分布パターンLは、無線タグ300の理論上の測位分布特性とアフィン変換を利用して、関数fとして次の式(2)で表現することができる。なお、関数fの導出方法、つまり、予想パターン計算部120における予想測位分布パターンの作成方法については、後で詳述する。
なお、本実施の形態では、観測点設定部110および予想パターン計算部120を設けて、ユーザが観測点情報を入力する度に予想測位分布パターンを算出するようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、予想測位分布パターンは、あらかじめ観測点毎に予想測位分布パターンを算出し、観測点情報に対応付けて設置誤差推定装置100の内部または外部に保持しておくことも可能である。予想測位分布パターンの保持手段は、設置誤差推定装置100に内蔵された記憶装置でも、設置誤差推定装置100に接続された外部記憶装置でも、あるいは、設置誤差推定装置100と通信可能なネットワーク上の各種装置であってもよい。
観測データ入力部130は、無線タグ300に対するタグリーダ200の測位結果を観測データとして入力する、つまり、タグリーダ200による無線タグ300の測位結果を記憶する。具体的には、観測データ入力部130は、タグリーダ200によって無線タグ300毎にそれぞれ複数回(例えば、100回)測位して得られた観測データを、タグリーダ200から受信して記憶する。観測データは、タグリーダ200からリアルタイムに受信しても、観測(すべての無線タグ300に対して複数回ずつ測位を行う)終了後にまとめて受信してもよい。本実施の形態では、観測データをリアルタイムに受信する場合を例にとって説明する。
図7は、観測データの一例を示す図である。
図7に示す観測データ520には、データの種類(項目)として、シーケンス番号521、タグID522、測位された無線タグ300の測位位置座標(測位結果)523、観測点名称524、および測位の信頼度525が含まれている。無線タグ300の測位位置座標523は、タグID522と観測点名称524の少なくともいずれか一方で識別される。また、測位の信頼度525は、例えば、通信状況が良好であると判断された場合に、高いランクが付与される。なお、本実施の形態では、無線タグ300をすべて見通しのよい場所に設置しているため、通信状況は良好であり、計測毎に最高ランクの「A」が付与されているものとする。
また、観測データ入力部130は、測位を開始・終了するための操作画面を表示する。
図8は、測位を開始・終了するための操作画面の表示の一例を示す図である。
図8に示す操作画面530(以下「画面2」ともいう)には、ログファイル入力欄531、観測データ表示欄532、測位開始ボタン533、および測位終了ボタン534が設けられている。
観測データ520の測位開始は、ユーザが、ファイル名をログファイル入力欄531に入力し、測位開始ボタン533を押すと、タグリーダ200に「測位開始」の指示が渡され、タグリーダ200が無線タグ300の測位を開始する。観測データ入力部130は、タグリーダ200から観測データ520を受信すると、受信した観測データ520に含まれるデータを観測データ表示欄532に時々刻々と表示すると同時に、ユーザが指定したファイルに測位結果を書き込む。
図9は、ログのフォーマットの一例を示す図である。特に、図9(A)は、観測データ表示欄532に表示されるログの一例を示し、図9(B)は、ファイル出力されるログの一例を示している。
観測データ表示欄532に表示されるログ540は、図9(A)に示すように、シーケンス番号と、タグIDと、タグIDで識別されるタグのx座標、y座標、z座標と、観測点名称と、推定の信頼度とが、次々と表示される。また、ログ540は、画面サイズの制限によって、過去のログ(シーケンス番号の小さいデータ)から順に非表示となる。
また、ファイル出力されるログ541は、図9(B)に示すように、画面に表示されるログ540と同様のデータが、左から順に、項目名なしで、カンマ区切りでファイルに次々と追加される。
なお、無線タグ300の測位は、所定の観測回数(例えば、無線タグ1個当たり100回)に到達したとき、自動的に終了し、または、ユーザが測位終了ボタン534を押すことによって、強制的に終了される。本実施の形態では、例えば、観測回数は、無線タグ1個当たり100回に設定されている。したがって、例えば、3つの無線タグ300を測位する場合、シーケンス番号521を確認して、シーケンス番号が300番目に到達したときに、自動的に測位は終了する。なお、図示しないが、操作画面530には、観測回数の設定に関するボタンまたは入力欄が追加されていてもよい。
散布パターン解析部140は、観測データ入力部130によって入力された観測データに基づいて、観測点毎に、測位結果を統計的に解析して得られた計測測位分布の特徴的なパターンを計測測位分布パターンとして算出する。具体的には、散布パターン解析部140は、観測データ入力部130から観測データ520を受け取り、タグID522で識別される無線タグ300毎に測位分布(計測値)を統計的に解析する。次に、散布パターン解析部140は、得られた計測測位分布の特徴的なパターン(計測測位分布パターン)を「散布パターンS」として設置誤差推定部150に渡す。
より具体的には、散布パターン解析部140は、観測データ入力部130から観測データ520(ログファイル541)を受け取ると、例えば、図10に示す座標管理表550を作成する。座標管理表550は、タグID、観測点名称、および座標情報から構成されている。また、座標情報は、通し番号、x座標の値、y座標の値、および信頼度から構成されている。図10において、座標管理表551は、タグIDが「1」、観測点名称が「1」で管理される座標管理表である。同様に、座標管理表552は、タグIDが「2」、観測点名称が「2」で管理される座標管理表であり、座標管理表553は、タグIDが「3」、観測点名称が「3」で管理される座標管理表である。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、z軸方向の座標は、タグリーダ200と無線タグ300とで同じであり、後で詳述する処理には不要であるため、省略している。
また、散布パターン解析部140は、作成した座標管理表550を用いて、例えば、図11に示す計測測位分布パターン一覧表560を作成する。計測測位分布パターン一覧表560は、計測測位分布パターンを解析した結果を記録したものである。計測測位分布パターン一覧表560は、例えば、図11に示すように、タグIDと、観測結果のx座標またはy座標の平均値μおよび分散値σと、後述する算出式に基づくパターン長Pとから構成されている。なお、散布パターン解析部140における具体的な解析方法については、後で詳述する。
設置誤差推定部150は、予想パターン計算部120で算出された予想測位分布パターン、および散布パターン解析部140で観測データ520に基づいて算出された散布パターンSを用いて、ダグリーダ200の設置誤差を算出する。具体的には、設置誤差推定部150は、無線タグ300を置いた観測点毎に、予想パターン計算部120から式(2)で示す予想測位分布パターンLと、散布パターン解析部140からの散布パターンSとを、それぞれ受け取る。そして、設置誤差推定部150は、受け取った予想測位分布パターンLおよび散布パターンSを用いて、各観測点における予想測位分布パターンLが散布パターンSの良い近似となるように次の式(3)を解く。これによって、設置誤差推定部150は、タグリーダ200の設置誤差であるθ、a、bを推定する。設置誤差推定部150は、推定した設置誤差(θ、a、b)を設置誤差出力部160に渡す。なお、設置誤差推定部150の具体的な処理内容については、後で詳述する。
ただし、式(3)を用いて3つの変数θ、a、bを推定するためには、最低3つの観測点に関する散布パターンS1、S2、S3が必要である。そこで、本実施の形態では、図2に示すように、3つの観測点431、432、433(順に観測点1、観測点2、観測点3)を設けている。
設置誤差出力部160は、設置誤差推定部150によって推定された設置誤差(θ、a、b)を、所定の操作画面を通じてユーザに通知する。
図12は、推定された設置誤差(θ、a、b)を表示するための操作画面の表示の一例を示す図である。
図12に示す操作画面570(以下「画面3」ともいう)には、回転方向誤差表示欄571、X軸方向誤差表示欄572、Y軸方向誤差表示欄573、やり直しボタン574、および終了ボタン575が設けられている。回転方向誤差表示欄571には角度誤差θが、X軸方向誤差表示欄572にはX軸方向の距離誤差aが、Y軸方向誤差表示欄573にはY軸方向の距離誤差bが、それぞれ表示される。やり直しボタン574は、ユーザが最初からやり直すためのボタンである。やり直しボタン574が押されると、「画面遷移」の指示が観測点設定部110に送られ、画面1(図6に示す操作画面510)が表示される。終了ボタン575が押されると、設置誤差出力部160は、画面3の表示を終了し、設置誤差推定装置100も動作を終了する。
なお、推定された設置誤差(θ、a、b)は、ローカル座標系とグローバル座標系との間で座標変換を行う変換行列を求めるのに利用される。例えば、本実施の形態では、推定された設置誤差(θ、a、b)を用いて、ローカル座標からグローバル座標への変換行列を作成し、その変換行列を用いて、タグリーダ200のローカル座標系での測位データをグローバル座標に変換出力する。これにより、精密な計測と修正を繰り返して正しい位置と向きにタグリーダ200を設置した場合と同等の効果を得ることができる。これは、タグリーダ200の設置精度が不十分であったとしても、設置誤差(θ、a、b)を正確に推定することによって、高精度な測位が可能になることを示している。したがって、タグリーダ200の設置が簡単であっても、高精度の測位を実現することができる。
ここでの説明は、予想パターン計算部120における予想測位分布パターンの作成方法についてであり、図13〜図17を用いて詳細に説明する。
最初は、予想測位分布パターンについて説明する。
本実施の形態では、測位結果を、無線タグ300をタグリーダ200に対して、間に障害物がない見通しの良い場所(観測点420)に置いて、複数回(例えば、100回)計測することによって取得する。測位結果の分布は、タグリーダ200と無線タグ300の2つの設置位置411、430を結ぶ線分を半径rとする球面600上における角度誤差αの円弧上に広がる(図13(A)参照)。以下、この分布を「円弧状測位分布」601と称する。ここで、半径rは、タグリーダ200の設置位置の座標と観測点情報500の観測点座標502とを用いて算出される。また、角度誤差αは、各観測点座標502に対する理論上の測位分布特性に基づいて算出される。ここで、理論上の測位分布特性とは、あらかじめ実験環境において無線タグを測位した結果から導き出したものである。
図13(B)は、図13(A)に示す観測点430付近を拡大した図である。本実施の形態では、円弧状測位分布601は、観測点430における接線方向に射影される。射影を行う理由は、測位結果が多次元ベクトルであるため、特徴が出る方向に射影して次元を縮約させるためである。以下、射影された分布を、単に「測位分布」602と称する。
例えば、角度誤差αが小さく、および、半径rが十分大きい場合には、円弧状測位分布601は、測位分布602として近似することができる(いずれか一方の条件を満たす場合も同様)。これは、例えば、円弧状測位分布601が正規分布を示す場合、直線(接線)上の測位分布602も正規分布として扱うことができることを意味する。
さらに、ここでは、予想される測位分布と、実際に計測した結果から得られる測位分布とを区別するために、以下、前者を「予想測位分布」、後者を「計測測位分布」とそれぞれ称する。
予想測位分布の特徴的なパターンとして、測位分布の幅Lに着目した場合、予想測位分布602の幅L(以下「予想測位分布パターンL」という)は、次の式(4)で表すことができる。ここで、「r」および「α」は、上記のように、それぞれ円弧状測位分布601における半径および角度誤差である。
なお、本実施の形態では、理論値であれ観測値であれ、測位分布パターンとして、測位分布の幅(誤差分布幅)Lを用いているが、本発明は、これに限定されない。例えば、測位分布パターンは、測位分布の幅(誤差分布幅)Lに代えて、測位分布パターンとして、測位分布のピーク値などを用いてもよい。また、主成分解析などを行うことも可能である。
次に、例えば、タグリーダ200を見取り図上の(m/2,m/2,Rz)に設置した際に(図3参照)、タグリーダ200の設置がずれた場合の予想測位分布パターンの作成方法について説明する。なお、ここでは、説明の便宜のため、3つに場合を分けて順に説明する。
まず第1に、タグリーダ200は、正しい位置に設置できたものの、タグリーダ200の向きがずれた場合における予想測位分布パターンの作成方法について説明する。
第2に、タグリーダ200は、期待通りの向きに設置できたものの、タグリーダ200の位置がずれた場合における予想測位分布パターンの作成方法について説明する。
第3に、タグリーダ200は、向きも位置もずれて設置された場合における予想測位分布パターンの作成方法について説明する。
(1)向きがずれた場合
予想測位分布パターンの第1の作成例は、例えば、タグリーダ200を見取り図上の(m/2,m/2,Rz)に設置することを試みたところ、正しい位置には設置できたものの、向きがずれた場合である。この場合の予想測位分布パターンの作成方法について、図14を用いて説明する。
図14(A)に示す実線の座標系610は、見取り図に割り当てられた座標系(グローバル座標系)420を、タグリーダ200の設置を期待する位置411に平行移動したものである(以下「仮想グローバル座標系」という)。また、図14(A)に示す点線の座標系は、タグリーダ200が内部で保持し、測位するときの座標系(ローカル座標系)421である。この場合、タグリーダ200のローカル座標系421は、仮想グローバル座標系610に対して角度θだけ回転しているとする。なお、ここでは、簡単化のため、Z軸(z軸)方向の座標は、タグリーダ200と無線タグ300とで同じであるとし、2次元座標で説明する。また、仮想グローバル座標系における座標は、以下「仮想グローバル座標」と称する。
例えば、両方の座標系が完全に一致し、無線タグ300を観測点1(m/2,m)に置いて複数回計測した場合、タグリーダ200が出力するローカル座標系421上の予想測位分布パターンは、x軸方向に式(4)で示すパターンとなる。
しかし、この場合、観測点1の座標が、仮想グローバル座標(x,y)に対して角度θだけずれたローカル座標(X,Y)では、次の式(5)で示すように、(X1,Y1)となる。ただし、この場合、r=m/2である。なお、この半径rは、以下の数式でも頻出するが、式(5)と同じものであり、出現箇所での記述は省略する。
したがって、タグリーダ200が出力する測位結果を、そのままグローバル座標系420にマッピングすると、観測点1の座標は、次の式(6)で示す本来の座標(x1,y1)に対して、式(7)で示すずれた座標(x2,y2)となる。
図14(D)は、これら2つの座標(x1,y1)と(x2,y2)の位置関係を示す図である。式(6)と式(7)に共通する項(m/2,m−r)T(Tは転置)は、グローバル座標系420における原点410と、タグリーダ200を設置する期待位置411との位置関係を示しており、固定値となる。
このとき、予想測位分布パターンL0は、タグリーダ200が期待通りに設置されていると仮定した場合の式(4)で示す予想測位分布パターンLidealに対して、ずれることになる(図14(B)参照)。
図14(C)は、図14(B)の要部拡大図であり、予想測位分布パターンのずれの様子を示す図である。
この場合、座標系が回転したとしても、タグリーダ200と無線タグ300との距離(つまり、半径)に変化はないため、予想測位分布パターンLidealと、ずれた予想測位分布パターンL0とで大きさは変わらない。ずれた予想測位分布パターンL0は、予想測位分布パターンLidealを−θの角度だけ回転した形状になる。
次に、ずれた予想測位分布パターンL0を予想測位分布パターンLidealと平行な直線方向に射影して、予想測位分布パターンL1を作成する。予想測位分布パターンL1は、次の式(8)で表すことができる。なお、射影を行う理由については、再度、後で、散布パターン解析部140における解析方法を説明する際に、併せて説明する。
(2)位置がずれた場合
予想測位分布パターンの第2の作成例は、例えば、タグリーダ200を見取り図上の(m/2,m/2,Rz)に設置することを試みたところ、期待通りの向きには設置できたものの、位置がずれてしまった場合である。この場合の予想測位分布パターンの作成方法について、図15を用いて説明する。
図14と同様に、図15(A)に示す実線の座標系は、仮想グローバル座標系610であり、点線の座標系は、ローカル座標系421である。タグリーダ200のローカル座標系421は、仮想グローバル座標系610に対して、x軸方向にa、y軸方向にb、それぞれずれているとする。なお、ここでも、簡単化のため、Z軸(z軸)方向の座標は、タグリーダ200と無線タグ300とで同じとし、2次元座標で説明する。
例えば、両方の座標系が完全に一致し、無線タグ300を観測点1(m/2,m)に置いて複数回計測した場合、タグリーダ200が出力するローカル座標系421上の予想測位分布パターンは、x軸方向に式(4)で示すパターンとなる。
しかし、この場合、仮想グローバル座標系610に対してローカル座標系421が平行移動してずれることにより、ローカル座標系421ではタグリーダ200と無線タグ300との距離(つまり、半径)が変わる。このため、位置がずれた場合は、半径rが変わることにより、予想測位分布パターンLidealと、ずれた予想測位分布パターンL0とで大きさが変わることになる。
これは、一点測位方式の特徴として、同一半径上に並ぶ観測点であれば、図13(A)に示す角度誤差αは、常に同じであることに起因する。したがって、式(4)から明らかなように、半径rが大きくなれば予想測位分布パターンLも大きくなる。
ここで、観測点1をローカル座標系421でみれば、半径r1は、次の式(9)で表すことができる。
また、この半径r1に垂直な方向に予想測位分布パターンが存在することになる。
さらに、観測点1は、仮想グローバル座標系610に対してx軸方向にaだけ、y軸方向にbだけ、それぞれずれたローカル座標系421では、次の式(10)で示すように、(X1,Y1)となる(図15(A)参照)。
したがって、タグリーダ200が出力する測位結果を、そのまま仮想グローバル座標系にマッピングすると、予想測位分布パターンL0は、式(4)で示す予想測位分布パターンLidealに対して、ずれることになる。(図15(B)参照)
そこで、ずれた予想測位分布パターンL0を予想測位分布パターンLidealと平行な直線方向に射影して、予想測位分布パターンL1が作成される。予想測位分布パターンL1は、次の式(11)で表すことができる。
(3)向きと位置がずれた場合
予想測位分布パターンの第3の作成例は、例えば、タグリーダ200を見取り図上の(m/2,m/2,Rz)に設置することを試みたところ、向きも位置もずれてしまった場合である。この場合の予想測位分布パターンの作成について、図16を用いて説明する。
図14と同様に、図16(A)に示す実線の座標系は、仮想グローバル座標系610であり、点線の座標系は、ローカル座標系421である。タグリーダ200のローカル座標系421は、仮想グローバル座標系610に対して、x軸方向にa、y軸方向にb、回転方向にθ、それぞれずれているとする。なお、ここでも、簡単化のため、Z軸(z軸)方向の座標は、タグリーダ200と無線タグ300とで同じとし、2次元座標で説明する。
タグリーダ200の向きも位置もずれた場合は、第1の回転と第2の平行移動との線形和として表現することができる。
したがって、タグリーダ200の向きも位置もずれた場合は、式(11)に回転の要素を追加すればよい。すなわち、図15(B)に示すずれた予想測位分布パターンL0は、図14(C)に示すように、−θの角度だけ回転すればよい(図16(B)に示すずれた予想測位分布パターンL0´参照)。
したがって、観測点1に対するx軸方向の予想測位分布パターンL1は、次の式(12)で表すことができる。
次に、3つの観測点1〜3における予想測位分布パターンについて、図17にその概略図を示し、説明する。
図17に示すように、観測点1では、射影前のずれた予想測位分布パターンL0´(ここでは、他の観測点と区別するため、L01´で表す)に対して、射影角度T1で射影を行って、予想測位分布パターンL1を取得する。
以上の考え方は、他の観測点、例えば、観測点2(m,m/2)および観測点3(m/2,0)に適用することができる。観測点2に対するy軸方向の予想測位分布パターンL2は、式(13)で表される。また、観測点3に対するx軸方向の予想測位分布パターンL3は、式(14)で表される。
図17に示すように、観測点2では、射影前のずれた予想測位分布パターンL02´に対して、射影角度T2で射影を行って、予想測位分布パターンL2を取得する。また、観測点3では、射影前のずれた予想測位分布パターンL03´に対して、射影角度T3で射影を行って、予想測位分布パターンL3を取得する。
このようにして、予想パターン計算部120は、観測点情報500で指定される観測点1〜3に対して、予想測位分布パターンL1〜L3を作成する。
次に、散布パターン解析部140における解析方法について、新たに図18を加えて、詳細に説明する。
散布パターン解析部140は、観測データ入力部130からログファイル541(観測データ520)を受け取ると、図10に示す座標管理表550を作成する。具体的な手順は、次の通りである。
まず、散布パターン解析部140は、観測データ入力部130から受け取ったログファイル541を1行ずつ読み込む。図9(B)に示す例の場合、散布パターン解析部140は、シーケンス番号が「1」で始まる1行目を読み込んで、タグIDが「1」、観測点名称が「観測点1」であることを確認すると、これが既知か否かを判定する。このとき、タグIDが「1」かつ観測点名称が「観測点1」は既知でないため、散布パターン解析部140は、タグIDが「1」、観測点名称が「1」で管理する座標管理表551を作成する。
このとき、散布パターン解析部140は、座標管理表551を作成するタイミングで、タグIDに「1」を、観測点名称に「観測点1」を、それぞれ格納する。通し番号は、1からはじまり、新たな座標情報を追加する度に1だけインクリメントされる。x座標の値、y座標の値、および信頼度は、ログファイル541のデータをコピーする。
散布パターン解析部140は、ログファイル541の2行目、3行目についても、1行目と同様に処理して、それぞれ座標管理表552、553を作成し、x座標の値、y座標の値、および信頼度をコピーする。
ログファイル541の4行目を読み込んだときには、タグIDが「1」かつ観測点名称が「観測点1」は既知であるため、散布パターン解析部140は、既に作成した座標管理表551を更新する。具体的には、散布パターン解析部140は、通し番号「2」、x座標の値「x41」、y座標の値「x41」、信頼度「A」を追加する。以下、散布パターン解析部140は、同様の処理をファイルの最終行まで繰り返す。
次に、散布パターン解析部140は、作成した座標管理表550を用いて、図11に示す計測測位分布パターン一覧表560を作成する。
実際に計測した結果は、2次元上に分布するため、図18に示すように、さまざまな直線620、621が、測位分布の特徴を調べるための候補となり得る。したがって、計測測位分布パターンSを一意に特定するのは難しい。
そこで、本実施の形態では、例えば、計測結果の分布を、予想測位分布パターンLと平行な直線方向に射影して、計測測位分布パターンSを抽出する。図18に示す例では、計測測位分布パターンSは、予想測位分布パターンLに平行な直線621上に存在することになる。
射影することは、予想測位分布パターンLと計測測位分布パターンSとの特徴比較において、同次元で比較することのメリットを適用するものである。また、射影角度が小さければ、射影前のデータの特徴をそのまま近似することが可能である。例えば、正規分布する射影前のデータを射影したデータも、正規分布するとみなすことができる。
すなわち、散布パターン解析部140は、グローバル座標系のy軸上の観測点1(m/2,m)に設置された無線タグ300の計測測位分布パターンS1として、x軸方向のパターンを抽出する。散布パターン解析部140は、グローバル座標系のx軸上の観測点2(m,m/2)に設置された無線タグ300の計測測位分布パターンS2として、y軸方向のパターンを抽出する。散布パターン解析部140は、グローバル座標系のy軸上の観測点3(m/2,0)に設置された無線タグ300の計測測位分布パターンS3として、x軸方向のパターンを抽出する。
散布パターン解析部140は、このようにして計測測位分布パターンを解析した結果を、例えば、図11に示す計測測位分布パターン一覧表560の形で記録する。上記のように、計測測位分布パターン一覧表560は、例えば、タグIDと、観測結果のx座標またはy座標の平均値μと、分散値σ、およびパターン長Pとから構成されている。
ここで、パターン長Pは、例えば、正規分布の特徴に応じてあらかじめ決められた算出式(次の式(15)参照)によって抽出される。ただし、Nは、標準正規確率表における標準化得点である。
この算出式をx軸方向に射影するタグID「1」の場合に適用すると、N=2のときには、約95%のデータが、μ−2σ≦x≦μ+2σに収まることを意味している。
散布パターン解析部140は、このように、あらかじめ定義されたNを適用して、パターン長Pを算出することができる。
次に、設置誤差推定部150の具体的な処理内容について、詳細に説明する。
設置誤差推定部150は、事前に、予想パターン計算部120から無線タグ300を置いた観測点毎の予想測位分布パターンLと、散布パターン解析部140から観測データ520に基づく計測測位分布パターンSとを取得する。次に、設置誤差推定部150は、これらを式(3)に代入した方程式を解くことによって、設置誤差(θ、a、b)を推定する。
具体的には、グローバル座標系の観測点1(m/2,m)に置かれた無線300aについては、次の式(16)が成り立つ。
また、グローバル座標系の観測点2(m,m/2)に置かれた無線タグ300bについては、次の式(17)が成り立つ。
また、グローバル座標系の観測点3(m/2,0)に置かれた無線タグ300cについては、次の式(18)が成り立つ。
したがって、式(16)、式(17)、および式(18)の3元連立方程式を解くことによって、設置誤差(θ、a、b)を算出することができる。
次の説明は、上記構成を有する設置誤差推定装置100の動作についてであり、図19を用いて説明する。
まず、設置誤差推定装置100による誤差推定処理に先立って、ユーザは、最初に、タグリーダ200を設置するための位置決めを行う。本実施の形態では、位置決めの手段は特に限定されない。例えば、位置決めの方法は、巻尺を用いて、床面401の原点410からx軸方向にm/2、y軸方向にm/2の位置をマーキングして、位置決めを行う。この時点では、期待値である位置(m/2,m/2,Rz)と向きにずれがあってもよい。
次に、ユーザは、位置決めした位置にタグリーダ200を固定する。本実施の形態では、固定の手段は特に限定されない。例えば、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントが天井面402に固定されているように、既存の手段を利用すればよい。ここでも、位置決めの場合と同様に、期待値である位置(m/2,m/2,Rz)と向きにはずれがあってもよい。
ユーザは、最少で3箇所、例えば、座標が(m/2,m,Rz)の観測点431(観測点1)、座標が(m,m/2,Rz)の観測点432(観測点2)、および座標が(m/2,0,Rz)の観測点433(観測点3)を選択する。次に、選択した観測点1〜3にあらかじめタグIDがわかっている無線タグ300を設置する。例えば、無線タグ300の具体的な設置例として、観測点1にはタグIDが「1」の無線タグ300aを、観測点2にはタグIDが「2」の無線タグ300bを、観測点3にはタグIDが「3」の無線タグ300cを、それぞれ設置する。
このようにして、既に、タグリーダ200は、期待値である位置(m/2,m/2,Rz)の近辺に設置されたとする。次に、3つの無線タグ300a〜300cが3箇所の観測点1〜3の近辺に設置されている状態において、ユーザは、設置誤差推定装置100を起動する。すなわち、図19に示すフロー図がスタートする。
まず、ステップS1000において、観測点設定部110は、画面1の表示を行う。具体的には、ユーザが設置誤差推定装置100を起動すると、観測点設定部110は、図6に示す操作画面510(画面1)を表示する。これにより、ユーザは、観測点情報500の設定に必要なデータを入力することができる。
そして、ステップS1010において、ユーザは、観測点情報の設定に必要なデータの入力を行う。具体的には、ユーザは、ステップS1000で表示した画面1上のタグID入力欄511、観測点座標入力欄512、および観測点名称入力欄513に、観測点情報の各データ(タグID、観測点座標、観測点名称)をそれぞれ入力する。例えば、観測点座標入力欄512には、観測点1、観測点2、および観測点3の座標がそれぞれ入力される。なお、観測点名称については、ユーザが入力してもよいし、デフォルト値を表示してもよい。
そして、ステップS1020において、観測点設定部110は、設定完了ボタン514が押されたか否かを判断する。この判断の結果として、観測点設定部110は、設定完了ボタン514が押された場合は(S1020:YES)、ステップS1030に進む。一方、観測点設定部110は、設定完了ボタン514が押されていない場合は(S1020:NO)、ステップS1010に戻る。すなわち、観測点設定部110は、設定完了ボタン514が押されるまで画面1の表示を継続する。
ステップS1030において、観測点設定部110は、観測点情報の設定を行う。具体的には、設定完了ボタン514による「設定」の指示を受け、観測点設定部110は、ステップS1010で入力したデータ(タグID、観測点座標、観測点名称)を互いに関連付けて、図5に示す観測点情報500を作成し、記憶する。
そして、ステップS1040において、予想パターン計算部120は、全観測点に対して予想測位分布パターンの作成を行う。具体的には、予想パターン計算部120は、観測点設定部110から、ステップS1030で設定した観測点情報500(タグID501、観測点座標502、および観測点名称503)を取得する。次に、予想パターン計算部120は、観測点情報500で指定されたすべての観測点に対して、測位分布(理論値)を予想して、予想測位分布パターンLを作成する。予想測位分布パターンLの作成方法は、上記の通りである。例えば、予想パターン計算部120は、上記の作成方法に従って、観測点情報500で指定される観測点1〜3に対して、予想測位分布パターンL1〜L3を作成する。予想パターン計算部120は、すべての観測点に対して予想測位分布パターンLの作成を完了すると、観測データ入力部130に「画面遷移」の指示を送る。
そして、ステップS1050において、観測データ入力部130は、画面2の表示を行う。具体的には、観測データ入力部130は、予想パターン計算部120から「画面遷移」の指示を受けると、図8に示す操作画面530(画面2)を表示する。
そして、ステップS1060において、観測データ入力部130は、測位開始ボタン533が押されたか否かを判断する。この判断の結果として、観測データ入力部130は、測位開始ボタン533が押された場合は(S1060:YES)、ステップS1070に進む。一方、観測データ入力部130は、測位開始ボタン533が押されていない場合は(S1060:NO)、ステップS1050に戻り、画面2の表示を継続する。例えば、観測データ520をファイル出力するために、ユーザが、ファイル名をログファイル入力欄531に入力し、測位開始ボタン533を押すと、観測データ入力部130は、タグリーダ200に「測位開始」の指示を渡す。
ステップS1070において、観測データ入力部130は、無線タグ300の測位を実行させる。具体的には、観測データ入力部130は、タグリーダ200に「測位開始」の指示を渡す。タグリーダ200は、観測データ入力部130から「測位開始」の指示を受け取ると、無線タグ300の測位を開始し、観測データ520を観測データ入力部130に渡す。
観測データ入力部130は、タグリーダ200から観測データ520を受信すると、受信した観測データ520に含まれるデータを画面2の観測データ表示欄532に時々刻々と表示する(図9(A)参照)。同時に、観測データ入力部130は、ユーザによって指定されたファイルに測位結果を書き込む(図9(B)参照)。観測データ入力部130は、例えば、無線タグ1個当たり100回の観測(測位)が推奨されている場合、シーケンス番号を確認し、例えば、300番目に到達したときに自動的に測位を終了する。本実施の形態では、例えば、観測回数は、無線タグ1個当たり100回に設定されている。
そして、ステップS1080において、観測データ入力部130は、観測回数が所定の回数に到達したか否かを判断する。この判断の結果、観測データ入力部130は、観測回数が所定の回数に到達した場合は(S1080:YES)、ステップS1090に進む。一方、観測データ入力部130は、観測回数が所定の回数に到達していない場合は(S1080:NO)、ステップS1070に戻り、無線タグ300の測位を継続する。例えば、本実施の形態では、3つの無線タグ300a、300b、300cが設置されているため、観測回数は、合計で300回である。したがって、観測データ入力部130は、シーケンス番号を確認し、300番目に到達したときに、観測回数が所定の回数(300回)に到達したと判断する。無線タグ300の測位が終了すると、観測データ入力部130は、散布パターン解析部140に、観測データ520が書き込まれたログファイル541を渡す。
ステップS1090において、散布パターン解析部140は、全観測点に対して計測測位分布パターンの作成を行う。具体的には、散布パターン解析部140は、観測データ入力部130から観測データ520(ログファイル541)を取得し、観測データ520の解析を行う。次に、散布パターン解析部140は、結果を計測測位分布パターン一覧表560に格納し、計測測位分布パターン一覧表560を設置誤差推定部150に渡す。例えば、散布パターン解析部140は、上記の解析方法によって、図10に示す座標管理表550を作成し、作成した座標管理表550を用いて、図11に示す計測測位分布パターン一覧表560を作成する。
そして、ステップS1100において、設置誤差推定部150は、設置誤差の推定を行う。具体的には、設置誤差推定部150は、ステップS1040で予想パターン計算部120が作成した、無線タグ300の観測点毎の予想測位分布パターンLを取得する。かつ、設置誤差推定部150は、ステップS1090で散布パターン解析部140が作成した、観測データ520に基づく計測測位分布パターンSを取得する。次に、設置誤差推定部150は、これらを式(3)に代入した方程式を解くことによって、設置誤差(θ、a、b)を推定する。例えば、グローバル座標系の観測点1(m/2,m)に置かれた無線300aについては、式(16)が成り立つ。グローバル座標系の観測点2(m,m/2)に置かれた無線タグ300bについては、式(17)が成り立つ。グローバル座標系の観測点3(m/2,0)に置かれた無線タグ300cについては、式(18)が成り立つ。したがって、設置誤差推定部150は、式(16)、式(17)、および式(18)の3元連立方程式を解くことによって、設置誤差(θ、a、b)を算出することができる。設置誤差推定部150は、設置誤差(θ、a、b)の推定を完了すると、推定結果(θ、a、b)を設置誤差出力部160に渡す。
そして、ステップS1110において、設置誤差出力部160は、画面3において設置誤差の推定結果の表示を行う。具体的には、設置誤差出力部160は、設置誤差推定部150からステップS1100で推定した設置誤差(θ、a、b)を受け取ると、図12に示す操作画面570(画面3)を表示する。画面3では、回転方向誤差表示欄571に角度誤差θが、X軸方向誤差表示欄572にX軸方向の距離誤差aが、Y軸方向誤差表示欄573にY軸方向の距離誤差bがそれぞれ表示される。
そして、ステップS1120において、設置誤差出力部160は、やり直しボタン574が押されたか否かを判断する。この判断の結果として、設置誤差出力部160は、やり直しボタン574が押された場合は(S1120:YES)、ステップS1000に戻る。一方、設置誤差出力部160は、やり直しボタン574が押されていない場合は(S1120:NO)、ステップS1130に進む。例えば、ユーザがやり直しボタン574を押すと、設置誤差出力部160は、「画面遷移」を観測点設定部110に指示する。観測点設定部110は、設置誤差出力部160から「画面遷移」の指示を受け取ると、画面1を表示する。したがって、これ以降、ユーザは、最初から処理をやり直すことができる。
ステップS1130において、設置誤差出力部160は、終了ボタン575が押されたか否かを判断する。この判断の結果として、終了ボタン575が押された場合は(S1130:YES)、設置誤差出力部160は、画面3の表示を終了し、設置誤差推定装置100も動作を終了する。一方、設置誤差出力部160は、終了ボタン575が押されていない場合は(S1130:NO)、ステップS1110に戻り、画面3の表示を継続する。
なお、以上の説明では、便宜上、無線タグ300をタグリーダ200と同じ高さに設置する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されず、無線タグ300をタグリーダ200と異なる高さに設置することも可能である。
ここでは、無線タグ300をタグリーダ200と異なる高さに設置する場合について、タグリーダ200の位置は正しく設置できたものの、向きがずれた場合を例にとって説明する。なお、タグリーダ200の向きは、期待通りに設置できたものの、タグリーダ200の位置がずれた場合、および、タグリーダ200の向きも位置もずれた場合については、同様の方法が適用可能であるため、その説明を省略する。
図20は、3次元データを処理する場合を説明するための概念図である。図20は、座標が(m/2,m,Rz)の観測点431(観測点1)を、z軸方向にずらした観測点434(観測点1’)に無線タグ300を設置して、測位した場合を示している。なお、観測点1’の座標は、(m/2,m,Rz’)であるとする。
ここで、図20(A)は、x軸の正から負の方向に視線を置いたときの説明図であり、図20(B)は、タグリーダ200の真上から、z軸の正から負の方向に視線を置いたときの説明図である。ここでは、無線タグ300の複数ある測位結果のうち、A(xA,yA,zA)とB(xB,yB,zB)を取り出して説明する。
まず、予測測位分布パターンLは、式(8)における半径rを、図20(A)に示す半径r’で置き換えればよい。半径r’は、次の式(19)で表すことができる。
また、以上の説明において、計測測位分布パターンSは、無線タグ300を置いた観測点のz座標がRzであるときに、測位結果をz=Rzで示されるx−y平面に射影した結果を解析したものであると解釈することができる。
したがって、測位結果が3次元座標で示される場合であっても、A(xA,yA,zA)は、z=Rz’で示されるx−y平面に射影してa(xa,ya,za)とする。また、B(xB,yB,zB)は、同じx−y平面に射影してb(xb,yb,zb)とする。3次元データの処理は、上記のように、図18と同様の図20(B)に示すような2次元平面上で解析を行うことができる。
これにより、測位結果が3次元座標で示される場合であっても、前述したように、予想測位分布パターンLと計測測位分布パターンSを算出することによって、設置誤差(θ、a、b)を推定することができる。
以上、本実施の形態では、ユーザがタグリーダ200を設置するときに、その周辺に無線タグ300を置き、その観測データ(測位結果)に基づいて、タグリーダ200の設置誤差を推定する設置誤差推定装置について説明した。
したがって、本実施の形態の設置誤差推定装置は、タグリーダ200に対して設置専用の特殊な構造や部品などの追加を必要とせず、かつ、設置実施者に対して設置と計測に高度な専門性を必要としない。このため、タグリーダ200の設置に際し、専門性が必要な冶具や工具などを使って計測したり調整したりする時間を排除することができる。また、特殊な経験やノウハウなどがない人でも簡単にタグリーダ200の設置を行うことができる。このように、物的にも人的にも、さらには時間的にも、タグリーダ200を設置する手間を大幅に削減することができるため、施工コストを大幅に低減することができる。
要するに、本実施の形態によれば、高度な専門性や特殊な技能などがなくても、誤差のない高精度な測位を簡単な設置で実施可能にすることができる。
なお、本実施の形態では、初期の設置工事を想定して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明は、初期の設置工事のみならず、定期的なメンテナンスにも適用可能である。
また、本実施の形態では、設置誤差が回転方向と、x軸方向およびy軸方向とにある場合を想定して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明は、回転方向のみを対象にする場合や、x軸方向およびy軸方向のみを対象にする場合にも適用可能である。
例えば、回転方向のみを対象にする場合は、式(3)におけるaとbに「0」を代入すればよい。この場合、1変数のθを求めることになるため、観測点は最低1つでよい。
また、x軸方向およびy軸方向のみを対象にする場合は、式(3)におけるθに「0」を代入すればよい。この場合、2変数のaとbを求めることになるため、観測点は最低2つでよい。
また、本実施の形態では、タグリーダ200の周辺に、3つの無線タグ300a、300b、300cを設置して、同時に計測するシーンを想定して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、個々の無線タグに個体差が顕著な場合は、1つの無線タグを用いて時間をずらして計測を行ってもよい。
また、本実施の形態では、タグリーダ200を1箇所に設置し、タグリーダ200が送信した信号を、無線タグ300が反射して返信した信号を見て、距離と到来方向を推定し、位置に換算するという一点測位方式について説明した。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、タグリーダを3つ以上設置して、無線タグからの受信時間差を利用して位置を算出するTDOA(Time Difference of Arrival)方式にも、適用可能である。
また、本実施の形態では、予想測位分布パターンを、タグリーダ200を中心に、タグリーダ200から無線タグ300を設置した観測点までの距離を半径とする円弧状測位分布特性を活用して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、予想測位分布パターンは、半径方向の分布の特性を活用してもよい。
(実施の形態2)
実施の形態2は、タグリーダを設置する際、タグリーダの周辺(観測点)に無線タグを置いて、無線タグの位置を計測し、得られた観測データに基づいて、タグリーダの設置誤差を推定し、さらに、推定した設置誤差を評価する場合である。
以下、本実施の形態について、図21〜図24を用いて説明する。
図21は、本発明の実施の形態2に係る設置誤差推定装置の構成を示すブロック図である。なお、この設置誤差推定装置700は、図4に示す実施の形態1に対応する設置誤差推定装置100と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図21に示す設置誤差推定装置700は、観測点設定部110、予想パターン計算部120、観測データ入力部130、散布パターン解析部140、設置誤差推定部710、および設置誤差出力部160に加えて、収束判定部720を有する。
ここでは、図4に示す実施の形態1に係る設置誤差推定装置100と、図21に示す本実施の形態に係る設置誤差推定装置700との主な差異部分である、収束判定部720を中心に、以下、詳細に説明する。
実施の形態1では、無線タグ300a、300b、300cをタグリーダ200に対して見通しのよい観測点に設置しているため、通信状況は良好であった。これは、図7に示す観測データ520において信頼度が最高ランクの「A」として評価され続けていることが示している。なお、通信状況の良否(信頼度)は、例えば、電波強度を計測することによって取得可能である。
しかし、無線タグ300の位置検出を行う測位対象エリア400内に什器などが存在する場合には、タグリーダ200からの送信電波に対する反射波が増えるため、無線タグ300の測位精度が低下することがある。
この場合、あらかじめ、どの観測点で無線タグ300の測位精度が良好であるか否かは設置時点では明確でない。そこで、本実施の形態では、3つ以上の無線タグ300をタグリーダ200の周辺に設置し、測位精度が良好な観測点の絶対数を大きくするようにしている。
本実施の形態の特徴は、収束判定部720が、無線タグ300の位置検出時の信頼度から、設置誤差推定に関与させるべき観測点を取捨選択することである。また、本実施の形態の特徴は、収束判定部720が、選択した観測点すべての誤差分布を最も近似できる最尤設置誤差を推定することである。
設置誤差推定部710は、実施の形態1における設置誤差推定部150と同様の基本的構成を有するが、次の点で相違している。実施の形態1における設置誤差推定部150は、散布パターン解析部140から散布パターンSを受け取ったタイミングで、式(16)、式(17)、および式(18)で示す方程式を連立して解いて、設置誤差(θ、a、b)を推定する。これに対し、本実施の形態2における設置誤差推定部710は、散布パターン解析部140から散布パターンSを受け取ったタイミングで、まずは収束判定部720に計算対象の絞り込みを依頼する。その後、設置誤差推定部710は、収束判定部720によって絞り込まれた計算対象をもとに、設置誤差(θ、a、b)を推定する。
収束判定部720は、上記のように、無線タグ300の位置検出時の信頼度から、設置誤差推定に関与させるべき観測点を取捨選択し、選択した観測点すべての誤差分布を最も近似できる最尤設置誤差を推定する。このため、収束判定部720は、設置誤差推定部710から計算対象の絞り込みを依頼されると、例えば、図22に示す収束判定情報730と、図23に示す推定結果一覧表740を作成する。
収束判定情報730は、収束判定部720が収束判定に使用する情報を含む観測データ情報731と、選択した観測点すべての誤差分布を最も近似できる最尤設置誤差を、算出した観測点の組み合わせを示す最尤組み合わせ情報732とを含む。観測データ情報731は、さらに、タグID733、観測点名称734、観測点座標735、および平均信頼度736を含む。
また、推定結果一覧表740は、観測点の組み合わせ741と設置誤差742とから構成されている。観測点の組み合わせ741は、収束判定部720が取捨選択し、実施の形態1で説明した連立方程式を成立させる観測点の組み合わせである。また、設置誤差742は、観測点の組み合わせによる連立方程式を設置誤差推定部710が解いた結果である設置誤差である。
また、本実施の形態では、収束判定部720は、最小二乗法を用いて最尤設置誤差を推定する。具体的には、収束判定部720は、設置誤差の推定に関与しなかった観測点以外の観測点である判定観測点の計測測位分布パターンと、推定された設置誤差を予想測位分布パターンに代入した値と、の差の2乗である誤差距離を算出する。次に、収束判定部720は、得られた誤差距離を判定観測点の数だけ足し合わせた合計値を求め、この合計値を最小にする推定された設置誤差を求めて、これを最尤設置誤差とする。
なお、収束判定部720の具体的な処理内容については、さらに、後で詳述する。
次いで、上記構成を有する設置誤差推定装置700の動作について、図24を用いて説明する。
ここでは、例えば、5箇所の観測点において無線タグ300の測位を行い、得られた観測データから設置誤差(θ、a、b)を推定する場合を例にとって説明する。ただし、図24に示す処理内容は、実施の形態1における図19に示すステップS1100に代わるものであり、図19に示すステップS1090とステップS1110との間に挿入されるべきものである。すなわち、図19に示すフローチャートの各ステップのうち、ステップS1100以外のステップは、本実施の形態でも同様であるため、実施の形態1と共通する部分についてはその説明を省略する。
図19に示すステップS1090が完了した段階で、設置誤差推定部710は、5つの観測点(図示せず)をそれぞれ対象とした、予想測位分布パターンLを示す関数fと散布パターンSとを保持している。
その後、図24のステップS2000において、設置誤差推定部710は、計算対象となる観測点を選出するために収束判定情報730の作成を行う。具体的には、設置誤差推定部710は、散布パターン解析部140から散布パターンSを受け取ったタイミングで、収束判定部720に計算対象の絞り込みを依頼する。収束判定部720は、設置誤差推定部710から計算対象の絞り込みを依頼されると、図22に示す収束判定情報730を作成する。
具体的な手順は、例えば、次の通りである。
まず、収束判定部720は、設置誤差推定部710から計算対象の絞り込みの依頼を受けると、続いて、散布パターン解析部140から図10に示す座標管理表550(ただし、観測点1から観測点5までのすべての座標管理表)を受け取る。そして、収束判定部720は、受け取った座標管理表550のタグIDと観測点名称を、収束判定情報730のタグID733と観測点名称734にそれぞれコピーする。また、収束判定部720は、座標管理表550の信頼度の平均を算出して、収束判定情報730の平均信頼度736に登録する。例えば、信頼度が「A」に3点、信頼度が「B」に2点をそれぞれ割り当てて、加算平均をとり、加算平均が2.5点以上であれば「A」という平均信頼度を割り当てる。
次に、収束判定部720は、予想パターン計算部120から図5に示す観測点情報500を受け取る。そして、収束判定部720は、収束判定情報730の観測点名称734と観測点情報500の観測点名称503とが一致する観測点情報500の行から、観測点座標を取り出して、収束判定情報730の観測点座標735に登録する。
なお、実施の形態2は、実施の形態1と同様に、説明の便宜上、z座標を省略し、2次元座標で説明する。
そして、ステップS2010において、収束判定部720は、計算対象となる観測点の選出を行う。具体的には、収束判定部720は、内部に取捨選択の選択基準を保持しており、収束判定情報730の平均信頼度736をその選択基準と比較して計算対象となる観測点を選出する。例えば、図22に示す例において、選択基準が「平均信頼度がAであること」である場合に、収束判定部720は、収束判定情報730の平均信頼度736をその選択基準と比較する。この比較により、収束判定部720は、計算対象となる観測点として観測点1から観測点4を選択し、観測点5を除外する。
そして、ステップS2020において、収束判定部720は、観測点の組み合わせを登録した推定結果一覧表740の作成を行う。具体的には、収束判定部720は、ステップS2010で選出した観測点から、設置誤差の推定を行うための観測点の組み合わせを求め、得られた観測点の組み合わせを推定結果一覧表740の観測点組み合わせ741に登録する。例えば、ステップS2010で4箇所の観測点が選出された場合、組み合わせの数は、4C3(=4)から、4組となる。図23には、4組の組み合わせのうち、観測点1、観測点2、および観測点3からなる組み合わせ1と、観測点1、観測点2、および観測点4からなる組み合わせ2との2組の組み合わせのみを例示している。収束判定部720は、観測点の組み合わせ741に登録された観測点の組み合わせ毎に、設置誤差の推定を設置誤差推定部710に依頼する。
そして、ステップS2030において、設置誤差推定部710は、収束判定部720から依頼を受けて、観測点の組み合わせ毎に設置誤差の推定を行う。具体的には、設置誤差推定部710は、ステップS2020で登録された観測点の組み合わせ毎に、指定された観測点の予想測位分布パターンと計測測位分布パターンとから、設置誤差(θ、a、b)を推定する。具体的な推定方法は、実施の形態1で説明した方法と同様であるため、その説明を省略する。設置誤差推定部710は、推定した設置誤差を収束判定部720に渡す。
そして、ステップS2040において、収束判定部720は、設置誤差の推定結果一覧表740への登録を行う。具体的には、収束判定部720は、ステップS2030で推定された設置誤差(θ、a、b)を設置誤差推定部710から受け取り、受け取った設置誤差を推定結果一覧表740の設置誤差欄742の対応する組み合わせの位置に登録する。
そして、ステップS2050において、収束判定部720は、すべての組み合わせについて、設置誤差の推定が完了したか否か、つまり、推定結果一覧表740への登録が完了したか否かを判断する。この判断の結果として、収束判定部720は、すべての組み合わせについて設置誤差の推定が完了した(つまり、推定結果一覧表740への登録が完了)場合は(S2050:YES)、ステップS2060に進む。一方、収束判定部720は、すべての組み合わせについて設置誤差の推定が未完了(推定結果一覧表740への登録が未完了)場合は(S2050:NO)、ステップS2030に戻り、未計算の組み合わせについて設置誤差の推定を行う。例えば、図22に示す例では、すべての組み合わせについて、設置誤差の推定が完了し、推定結果一覧表740への登録が完了すると、4組の推定設置誤差が存在することになる。
ステップS2060において、収束判定部720は、推定した設置誤差の評価を行う。具体的には、収束判定部720は、ステップS2030で設置誤差推定部710において推定した設置誤差を、連立方程式に関係した観測点以外の観測点(以下「判定観測点」という)に適用して、この場合の評価を行う。設置誤差の評価は、例えば、判定観測点を対象に最小二乗法を用いて行う。
より具体的には、図22および図23に示す例において、組み合わせ1(観測点1、観測点2、観測点3)の判定観測点は、観測点4のみである。また、組み合わせ2(観測点1、観測点2、観測点4)の判定観測点は、観測点3のみであり、他の組み合わせについても同様である。
このとき、収束判定部720は、各組み合わせに対して、当該組み合わせの判定観測点k(1つ以上)に関して、次の式(20)で定義される誤差距離Dk 2の和(以下「合計値」という)を最小にする設置誤差を求める。誤差距離Dk 2は、計測測位分布パターンSkと、予想測位分布パターンLを示す関数fkに推定された設置誤差(θ、a、b)を代入した値と、の差の2乗(│Sk−fk│2)として定義される。
例えば、誤差距離Dk 2について、判定観測点が観測点3である場合を例にとって説明すると、次のようになる。判定観測点が観測点3の場合、誤差距離D3 2は、式(18)に、組み合わせ2(観測点1、2、4)の測位結果から推定された設置誤差(θ(2),a(2),b(2))を代入した値を用いて、次の式(21)で表すことができる。図22および図23に示す例では、各組み合わせに対して1つしか判定観測点が存在しない。このため、結局、この式(21)を用いて、組み合わせ2(観測点1、観測点2、観測点4)の測位結果から推定された設置誤差(θ(2),a(2),b(2))が評価されることになる。
そして、ステップS2070において、収束判定部720は、すべての組み合わせについて設置誤差を評価したか否かを判断する。この判断の結果として、収束判定部720は、すべての組み合わせについて設置誤差を評価した場合は(S2070:YES)、ステップS2080に進む。一方、収束判定部720は、設置誤差を評価していない組み合わせが存在する場合は(S2070:NO)、ステップS2060に戻り、残りの組み合わせについて設置誤差の評価を行う。
ステップS2080において、収束判定部720は、最尤設置誤差の決定を行う。具体的には、収束判定部720は、ステップS2060の評価結果(つまり、式(20)で示される合計値)を用いて、合計値を最小にする組み合わせを求め、この組み合わせにおける推定された設置誤差(θ、a、b)を求める。この設置誤差(θ、a、b)が、合計値(誤差距離Dk 2の和)を最小にする設置誤差であり、「最尤設置誤差」である。得られた最尤設置誤差は、設置誤差出力部160に渡される。
例えば、図22および図23に示す例において、すべての組み合わせにおける推定された設置誤差に対して、式(22)で表されるような式を用いて評価を行い、次の式(22)で示す関係が得られたとする。
このとき、最小となる合計値(誤差距離Dk 2)は、組み合わせ2(観測点1、観測点2、観測点4)の測位結果から推定された設置誤差(θ(2),a(2),b(2))を用いた誤差距離D3 2である。したがって、この例では、誤差距離D3 2に対応する組み合わせ2における設置誤差(a(2),b(2),θ(2))が、最尤設置誤差として決定される。
その後、設置誤差推定装置700の動作は、図19に示すステップS1110に進む。なお、本実施の形態では、収束判定部720は、最尤設置誤差を推定し、推定した最尤設置誤差を設置誤差出力部160に渡す。このため、設置誤差出力部160は、この最尤設置誤差を、図12に示す操作画面570(画面3)に表示することになる。
したがって、本実施の形態によれば、収束判定部720を設けて、推定された設置誤差の評価を行うため、必ずしも通信状況が良くない環境においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、タグリーダ200および無線タグ300の設置にあたっては、タグリーダ200の設置位置のみならず、無線タグ300の設置位置にも誤差を含む可能性がある。観測点の組み合わせの中に、無線タグ300の設置位置の誤差が大きい観測点を含む場合には、その組み合わせの測位結果から推定された設置誤差を判定収束点に適用することによって誤差距離Dk 2が大きくなる。これにより、無線タグ300の設置位置に、誤差の大きい観測点を設置誤差の推定に含んでしまう可能性を排除することが可能となる。
なお、本実施の形態では、最尤設置誤差を推定するときに、判定観測点を対象にした最小二乗法を適用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、最尤設置誤差の推定は、組み合わせ毎の設置誤差を加算平均したものを用いてもよい。
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態2に加え、さらに、推定した設置誤差が収束条件を満たしていない場合に、新たに観測対象とする無線タグを置く位置を推奨する場合である。
以下、本実施の形態について、図25〜図28を用いて説明する。
図25は、本発明の実施の形態3に係る設置誤差推定装置の構成を示すブロック図である。なお、この設置誤差推定装置800は、図4に示す実施の形態1に対応する設置誤差推定装置100、および図21に示す実施の形態2に対応する設置誤差推定装置700と、同様の基本的構成を有している。ただし、同一の構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図25に示す設置誤差推定装置800は、実施の形態2の構成に加えて、観測点推奨部830を有する。
ここでは、図21に示す実施の形態2に係る設置誤差推定装置700と、図25に示す本実施の形態に係る設置誤差推定装置800と、の主な差異部分である、観測点推奨部830を中心に、以下、詳細に説明する。
実施の形態2では、推定した複数の設置誤差の中から、観測データの予想測位分布パターンおよび計測測位分布パターンを最も精度良く近似する設置誤差を、最尤設置誤差として決定する形態について説明した。
これに対し、本実施の形態では、近似の精度に閾値を設け、閾値以上の高精度に至るまで無線タグ300を新たに測位したり設置誤差の推定を繰り返したりする形態について説明する。
特に、本実施の形態に係る設置誤差推定装置800は、観測点推奨部830が、追加する観測点の位置を決定し、観測点設定部810が、ユーザに、無線タグ300の再設置と再計測を促すように通知することを特徴とする。
収束判定部820は、実施の形態2における収束判定部720と同様の機能に加えて、さらに、次の機能を有する。すなわち、収束判定部820は、内部に閾値Tを保持しており、現在のすべての組み合わせにおいて最小となった距離誤差の合計値を判定観測点の数で割った値(以下「距離誤差の分散V」という)と、閾値Tとを比較する機能を有する。さらに、収束判定部820は、距離誤差の分散Vが閾値条件を満たすか否かを判定する機能を有する。
収束判定部820は、距離誤差の分散Vが閾値T以下の場合は(V≦T)、閾値条件を満たすと判定し、距離誤差の分散Vが閾値Tよりも大きい場合は(V>T)、閾値条件を満たさないと判定する。収束判定部820は、閾値条件を満たさないと判定した場合は、図22に示す収束判定情報730と、最小となった距離誤差の合計値に対応する設置誤差(実施の形態2では、最尤設置誤差となる)とを、観測点推奨部830に渡す。
例えば、実施の形態2において式(22)で最小となった誤差距離D3 2から算出した距離誤差の分散Vが閾値Tよりも大きい(T<D3 2)場合、収束判定部820は、距離誤差の分散Vは閾値条件を満たしていないと判定する。なお、この場合、距離誤差の分散Vは、判定観測点の数が1つであるため、誤差距離D3 2と一致する。次に、収束判定部820は、判定により、現在の収束判定情報730と、距離誤差の分散Vに対応する設置誤差(a(2),b(2),θ(2))とを、観測点推奨部830に渡す。
観測点推奨部830は、収束判定部820から収束判定情報730を受け取ると、新たに無線タグ300を置いて測位を行う観測点を決定し、決定した観測点の座標を観測点設定部810に渡す。なお、観測点推奨部830の具体的な処理内容については、後で詳述する。
観測点設定部810は、実施の形態1および実施の形態2における観測点設定部110と同様の機能に加えて、さらに、次の機能を有する。すなわち、観測点設定部810は、観測点推奨部830から新たな観測点座標を受け取る点、および、新たな観測点座標を受け取った後、それをユーザに通知するための所定の操作画面を表示する点で、観測点設定部110と相違する。観測点推奨部830の出力(追加される新たな観測点座標)をユーザに通知するための操作画面は、例えば、図26に示すように、図6に示す画面1と同様の画面構成を有する。かつ、操作画面は、受け取った観測点座標を観測点座標入力欄512に入力した画面である。
図26は、観測点推奨部830が、2つの観測点の追加を決定したときの画面であり、(x6,y6,Rz)と(x7,y7,Rz)に無線タグ300を設置して測位することを推奨している。
次に、観測点推奨部830が、新たに無線タグ300を置いて測位を行う追加観測点を決定する方法について、まず概略を説明する。
観測点推奨部830は、所定の決定ルールに基づいて、新たに観測点を決定する。決定ルールは、観測点推奨部830によって保持されており、例えば、以下のように定義されている。
ルール1:最寄の観測点の信頼度が高いこと。
ルール2:他の観測点との距離が一定以上であること。
ルール3:推定したローカル座標系において、信頼度が高い観測点と同心円上または同一半径上にあること。
ここで、ルール1は、「信頼度が高い観測点近辺では通信状況が良い確率が高い」ことを根拠としている。ルール2は、「局所的な近似でなく、測位エリア全体での近似をする」ことに基づいている。ルール3は、以下の3点を根拠として、計測測位分布パターンを算出するときに、相互の類似性を比較することによって算出精度の向上を期待するものである。ルール3の根拠は、第1に、ローカル座標系において同心円上に存在する観測点は同じ散布パターンを有する可能性が高いことである。ルール3の根拠は、第2に、同一半径上に存在する観測点は、タグリーダとの間の見通しや、反射波の影響など、通信環境が近い可能性が高いことである。さらに、ルール3の根拠は、第3に、図13で説明したように、「測位結果の分布は、タグリーダと無線タグを結ぶ直線を半径rとする球面上における角度誤差αの円弧上に広がる」という特性により、同じ角度誤差αが期待できること、である。
観測点推奨部830は、ルール1からルール3をすべて満たす点を新たな観測点として決定する。
ただし、新たな観測点が多ければ多いほど、無線タグ300を設置する作業コストが増大したり、設置誤差の推定を行う観測点の組み合わせの数が増加して計算コストが増大したりするため、新たな観測点の個数は適度に少ないことが望ましい。
以下、観測点推奨部830が新たな観測点を決定するまでの処理手順について、図27および図28を用いて説明する。図27は、追加観測点の決定処理の内容を示すフロー図である。図28は、追加観測点の決定方法を説明するための概略図である。
ここでは、処理の前提として、新たな観測点を2つ選択するものとあらかじめ決められているものとする。また、ルール2における他の観測点との距離として、所定値dがあらかじめ決められているものとする。
まず、ステップS3000において、観測点推奨部830は、収束判定部820から収束判定情報730を受け取ると、受け取った収束判定情報730に基づいて、例えば、図28(A)に示すようなマップを作成する。なお、実際には、それぞれ破線で示す座標軸および円を作図する必要はないが、ここでは、説明の便宜上、破線で示す座標軸および円を描画している。
図28において、観測点は、観測データ情報731の平均信頼度736に応じた異なる記号によって表示されている。例えば、記号「◎」は、平均信頼度が2.75以上といった、ほとんどの観測データの信頼度がAであること意味する。記号「○」は、平均信頼度が2.5以上2.75未満といった、一部Bも含むが平均的にはAとみなせる。記号「△」は、平均信頼度が2.5以下といった、ほとんどの観測データの信頼度がBであることを意味している。マップ上の位置および観測点名称は、観測データ情報731の観測点名称734および観測点座標735を利用して関連付けることができる。
そして、ステップS3010において、観測点推奨部830は、観測点の選択を行う。具体的には、観測点推奨部830は、平均信頼度が高い観測点から、1つの観測点を選択する。例えば、観測点推奨部830は、ルール1に基づいて、平均信頼度が高い観測点1、観測点2、および観測点3の中から1つの観測点を選択し、選択した観測点の周辺に候補を絞る。ここでは、同じ平均信頼度が付与された3つの観測点1〜3から、ランダムに選択することによって、1つの観測点3が選択されたとする。ただし、この場合、選択する観測点は、観測点1または観測点2でもよいことはもちろんである。
そして、ステップS3020において、観測点推奨部830は、ルール3における適用基準の選択決定を行う。具体的には、観測点推奨部830は、ルール3の適用基準として、同心円上に存在する点と、ローカル座標上の原点と既存観測点を結ぶ直線上の点と、のどちらを選択するかを決定する。ここでは、ルール3に従って、どの点を優先するかを、ランダムまたは交互に選択するなど、その都度決定することができる。
そして、ステップS3030において、観測点推奨部830は、ステップS3020で直線上の点を選択することを決定したか否かを判断する。この判断の結果として、観測点推奨部830は、直線上の点を選択することを決定した場合は(S3030:YES)、ステップS3040に進む。一方、観測点推奨部830は、直線上の点を選択することを決定しなかった場合、つまり、同心円上の点を選択することを決定した場合は(S3030:NO)、ステップS3090に進む。
なお、ステップS3040〜ステップS3080は、ステップS3030の判断の結果として、(1)ローカル座標上の原点と既に観測済みの既存観測点とを結ぶ直線上に存在する点を優先すると決定した場合の処理内容を示す。また、ステップS3090〜ステップS3140は、ステップS3030の判断の結果として、(2)同心円上に存在する点を優先すると決定した場合の処理内容を示している。以下、それぞれの場合について説明する。
(1)ローカル座標上の原点と既に観測済みの既存観測点とを結ぶ直線上に存在する点を優先すると決定した場合
ステップS3040において、観測点推奨部830は、現在選択されている観測点とローカル座標上の原点とを結ぶ直線と、ローカル座標系の原点を中心とし現在選択されている観測点との距離が所定値dとなる円と、の交点を算出する。
具体的に、例えば、図22および図23を例にとって説明する。観測点推奨部830は、最小である誤差距離D3 2に対応する設置誤差(a(2),b(2),θ(2))から、ローカル座標(X,Y)と仮想グローバル座標(x,y)の関係を、次の式(23)および式(24)で表す。ここで、式(24)は、式(23)から導かれる。
次に、観測点推奨部830は、推定した変換行列(式(24)参照)を用いて、それぞれの観測点の座標をグローバル座標に変換する。
仮想グローバル座標系における観測点3の座標は、収束判定情報730の観測点座標735から(x3,y3)であることが既知であるため、式(23)に代入してローカル座標系における観測点3の座標(X3,Y3)を得ることができる。
ただし、正確には、(x3,y3)はグローバル座標系における座標であり、グローバル座標系と仮想グローバル座標系には、式(6)および式(7)で示す平行移動の関係がある。しかし、本実施の形態では、説明の便宜上、両者を同一視して取り扱うこととする。
したがって、追加観測点6(X6,Y6)は、直線841と円842との交点となる(図28(B)参照)。直線841は、ローカル座標上の原点840と観測点3とを結ぶ次の式(25)で表される直線である。円842は、ローカル座標系の原点840を中心とし観測点3との距離が所定値dとなる次の式(26)で表される円である。
したがって、追加観測点6の仮想グローバル座標(x6,y6)は、式(23)の逆変換である式(24)に代入することによって得られる。
そして、ステップS3050において、観測点推奨部830は、ステップS3040で算出した点(追加観測点6)がルール1を満たすか否かを判断する。この判断の結果として、観測点推奨部830は、算出した点(追加観測点6)がルール1を満たす場合は(S3050:YES)、ステップS3060に進む。一方、観測点推奨部830は、ルール1を満たさない場合は(S3050:NO)、ステップS3040に戻る。
また、ステップS3060において、観測点推奨部830は、ステップS3040で算出した点(追加観測点6)がルール2を満たすか否かを判断する。この判断の結果として、観測点推奨部830は、算出した点(追加観測点6)がルール2を満たす場合は(S3060:YES)、ステップS3070に進む。一方、観測点推奨部830は、ルール2を満たさない場合は(S3060:NO)、ステップS3040に戻る。
ステップS3070において、観測点推奨部830は、ステップS3040で算出した点(追加観測点6)を新たな観測点(追加観測点)として決定する。また、観測点推奨部830は、現在選択されている観測点をこの追加観測点に更新する。例えば、追加観測点6は、ルール1およびルール2を満たすため、新たな観測点(追加観測点)として決定される。
そして、ステップS3080において、観測点推奨部830は、追加観測点の個数が所定値(ここでは、2個)に到達したか否かを判断する。この判断の結果として、観測点推奨部830は、追加観測点の個数が所定値に到達した場合は(S3080:YES)、一連の処理を終了する。一方、観測点推奨部830は、追加観測点の個数が所定値に到達していない場合は(S3080:NO)、ステップS3040に戻る。そして、観測点推奨部830は、例えば、同様の手順により、追加観測点7(x7,y7)を求める。
このように、ステップS3040〜ステップS3080は、新たな観測点の個数が所定値に到達するまで繰り返される。
(2)同心円上に存在する点を優先すると決定した場合
一方、ステップS3090において、観測点推奨部830は、ローカル座標系の原点を中心とし現在選択されている観測点との距離が所定値dとなる円を算出する。例えば、観測点推奨部830は、ローカル座標系の原点840を中心とし観測点3との距離が所定値dとなる円842を算出する(図28(B)参照)。この円842は、式(26)で表される。
そして、ステップS3100において、観測点推奨部830は、ステップS3090で算出した円上の点をランダムに選択する。例えば、観測点推奨部830は、式(26)を満たす追加観測点6(X6,Y6)を選択する。
具体的には、例えば、上記のように、式(25)で表される直線841と、式(26)で表される円842と、の交点を算出し、この交点を1つ目の追加観測点の候補(X6,Y6)として選択すればよい。なお、上記のように、式(25)で表される直線841は、現在選択されている観測点(観測点3)とローカル座標上の原点840とを結ぶ直線である。また、式(26)で表される円842は、ローカル座標系の原点840を中心とし現在選択されている観測点(観測点3)との距離が所定値dとなる円である。
そして、ステップS3110において、観測点推奨部830は、ステップS3100で算出した点(追加観測点6)がルール1を満たすか否かを判断する。具体的には、観測点推奨部830は、例えば、式(24)に(X6,Y6)を追加して得られる追加観測点6の仮想グローバル座標(x6,y6)がルール1を満たすかを判断する。この判断の結果として、観測点推奨部830は、算出した点(追加観測点6)がルール1を満たす場合は(S3110:YES)、ステップS3120に進む。一方、観測点推奨部830は、ルール1を満たさない場合は(S3110:NO)、ステップS3100に戻る。
また、ステップS3120において、観測点推奨部830は、ステップS3100で算出した点(追加観測点6)がルール2を満たすか否かを判断する。具体的には、観測点推奨部830は、例えば、式(24)に(X6,Y6)を追加して得られる追加観測点6の仮想グローバル座標(x6,y6)がルール2を満たすかを判断する。この判断の結果として、観測点推奨部830は、算出した点(追加観測点6)がルール2を満たす場合は(S3120:YES)、ステップS3130に進む。一方、観測点推奨部830は、ルール2を満たさない場合は(S3120:NO)、ステップS3100に戻る。
ステップS3130において、観測点推奨部830は、ステップS3100で算出した点(追加観測点6)を新たな観測点(追加観測点)として決定する。また、観測点推奨部830は、現在選択されている観測点をこの追加観測点に更新する。例えば、追加観測点6は、ルール1およびルール2を満たすため、新たな観測点(追加観測点)として決定される。
そして、ステップS3140において、観測点推奨部830は、追加観測点の個数が所定値(ここでは、2個)に到達したか否かを判断する。この判断の結果として、観測点推奨部830は、追加観測点の個数が所定値に到達した場合は(S3140:YES)、一連の処理を終了する。一方、観測点推奨部830は、追加観測点の個数が所定値に到達していない場合は(S3140:NO)、ステップS3100に戻る。このとき、追加観測点7のローカル座標は、例えば、ローカル座標系において追加観測点6をあらかじめ決められた角度βだけ回転させた点(X7,Y7)として決定すればよい。
このように、ステップS3100〜ステップS3140は、新たな観測点の個数が所定値に到達するまで繰り返される。
なお、このようにして観測点推奨部830によって決定された2つの追加観測点(x6,y6,Rz)、(x7,y7,Rz)は、観測点設定部810に渡される。観測点設定部810は、観測点推奨部830から新たな観測点座標を受け取ると、受け取った観測点座標を観測点座標入力欄512に入力した操作画面840(画面4)を表示する(図26参照)。上記のように、図26は、2つの追加観測点(x6,y6,Rz)、(x7,y7,Rz)に無線タグ300を設置して測位することを推奨している。
その後、ユーザが、タグID入力欄511に、追加観測点に設置する無線タグ300のタグIDを入力する。ユーザが、追加観測点に無線タグ300を設置した後、設定完了ボタン514を押すことによって、追加観測点に設置された2つの無線タグ300に対する測位が開始される。
このように、本実施の形態によれば、実施の形態1および実施の形態2の効果に加えて、近似の精度に閾値を設け、閾値以上の高精度に至るまで無線タグ300を新たに測位したり設置誤差の推定を繰り返したりするため、閾値を満足するまでの再計測および再推定の回数を減らすことができる。
特に、本実施の形態によれば、観測点推奨部830が、追加する観測点の位置を決定するときに、観測点のばらつきや、観測点の通信状況、同じような測位分布が得られる可能性が高い観測点の選択などを考慮する。このため、本実施の形態では、観測点の設置状況や通信状況などにかかわらず、より一層、高精度な測位を簡単な設置で実施可能にすることができる。