WO2019187259A1 - 測位システム、測位方法および測位システムの調整方法 - Google Patents
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Abstract
本開示による方法は、受信アンテナ装置(10)と、ビーコン信号を出力する電子機器(5)と、測位装置(20)とを有する測位システム(1)の調整方法である。装置(10)は、照明器具に電力を供給する電力線(PL、L1~L3)から供給される電力を用いてビーコン信号を受信する。測位装置は、到来方向推定アルゴリズムを用いてビーコン信号の到来方向を推定する。調整方法は、測位空間に設置された装置(10)の位置情報を取得し、測位装置(20)を用いて、位置情報および推定されたビーコン信号の到来方向から測位空間における電子機器の位置をさらに推定するために、装置(10)の座標系と測位空間の座標系とを対応付けるパラメータを取得し、測位装置に位置情報およびパラメータを記憶させる。
Description
本開示は、測位システム、測位方法および測位システムの調整方法に関する。
特開2016-57166号公報は、位置測位システムに用いられる照明器具を開示する。当該照明器具は、たとえば、地下道、駅の改札付近等の天井に設置される案内サインである。当該照明器具は、照明光を発するだけでなく、位置測位に用いられる信号(例えば、自器具に対応づけられた識別情報を含む信号)であるビーコンを送信する。
送信されたビーコンは、スマートフォン等の端末装置によって受信される。当該端末装置では位置測位用のアプリケーションが実行されており、アプリケーションは受信したビーコンを用いて自装置の位置測位を行うことができる。
上述の先行技術文献では、照明器具はビーコン信号を送信するだけであり、各端末装置がどのようにビーコン信号を利用するかについては関知しない。位置情報を取得できるかどうか、あるいは、取得した位置情報を如何に利用するかは、各端末装置に依存する。
屋内等のGPS(Global Positioning System)の利用が困難な環境において、各端末装置に依存せず、位置情報の処理を行うことが可能な測位システムが必要とされている。
本開示にかかる方法は、少なくとも1台の受信アンテナ装置と、ビーコン信号を出力する少なくとも1台の電子機器と、測位装置とを有する測位システムの調整方法であって、前記受信アンテナ装置は、測位空間内に存在する照明器具に電力を供給する電力線に接続され、前記電力線から供給される電力を用いて前記ビーコン信号を受信することが可能であり、前記測位装置は、到来方向推定アルゴリズムを用いて、前記受信アンテナ装置が受信した前記ビーコン信号の到来方向を推定することが可能であり、前記調整方法は、前記測位空間に設置された前記受信アンテナ装置の位置情報を取得し、前記測位装置を用いて、前記位置情報および推定された前記ビーコン信号の到来方向から前記測位空間における前記電子機器の位置をさらに推定するために、前記受信アンテナ装置の座標系と前記測位空間の座標系とを対応付けるパラメータを取得し、前記測位装置に前記位置情報および前記パラメータを記憶させる。
本開示の例示的な実施形態によれば、受信アンテナ装置が設置される向きを反映した、測位システムの導入および調整を実現することが可能になる。
以下、添付の図面を参照しながら、本開示にかかる測位システムを説明する。
図1は、測位システム1の構成例を示す。測位システム1は、典型的にはGPSの利用が困難な屋内に設けられるが、屋外に設けられてもよい。
測位システム1は、少なくとも1台の受信アンテナ装置10と、測位装置20とを有する。測位システム1が設置された環境には、少なくとも1つのICタグ5が存在する。測位システム1では、ICタグ5が存在する位置が推定される。
ICタグ5の位置推定が行われる環境または空間を、本明細書では「測位空間」と呼ぶ。測位空間は三次元であり得る。ただし、ICタグ5の床面に対する高さが既知の場合、または当該高さが推定もしくは所定値に近似される場合には、測位空間は実質的には二次元であり得る。
ICタグ5は無線信号(ビーコン信号)を送信する送信器である。ICタグ5は、1個の電子機器として設けられて人2が携行してもよいし、無人搬送車3、スマートフォン4等の機器に組み込まれてもよい。ICタグ5には、各々を一意に識別することが可能な識別情報(RFID)が予め付与されており、ビーコン信号には当該識別情報が含まれている。
本実施形態において、ICタグ5は、ブルートゥース(登録商標)・ロー・エナジー(BLE)規格に従って信号波を放射する。より具体的には、ICタグ5は、3つのチャネルを用いて、チャネルごとにアドバタイズメント・パケットを含む信号波を定期的に送信し続ける。信号波の周波数は、例えばマイクロ波帯域であるが、ミリ波帯域であってもよい。ICタグ5からは、例えば10ミリ秒以上200ミリ秒以下の時間間隔、典型的には100ミリ秒の時間間隔で2.4ギガヘルツ帯の信号波が放射され得る。信号波の周波数は、アレイ・アンテナ20で受信できる限り、一定である必要はなく、複数の周波数をホッピングし得る。
アドバタイズメント・パケットには、ICタグ5を一意に特定する識別情報(RFID)として機能する「パブリック・デバイス・アドレス」または「ランダム・デバイス・アドレス」が記述されている。これにより、自身の存在を周囲に知らせることができる。
本実施形態では、ICタグ5は、アドバタイジング・パケットのブロードキャストのみを行い、測位装置20等からの接続要求を受け容れない、いわゆる「ノン・コネクタブル・ビーコン」として動作し得る。しかしながらICタグ5は、測位装置20等からの接続要求を受け容れて、データの送受信を行うことが可能な「コネクタブル・ビーコン」であってもよい。
なお、ICタグ5は、他の規格に従って動作する機器であってもよい。
受信アンテナ装置10は、ビーコン信号を受信するための少なくとも1つの受信アンテナ素子を備えている。受信アンテナ装置10が複数の受信アンテナ素子を有する場合、複数の受信アンテナ素子は一次元(ライン状)アレイ構成または二次元(マトリクス状)アレイ構成で配置され得る。
受信アンテナ装置10は、所定の固定具を用いて照明ブラケット等に固定される。例示的な実施形態では、受信アンテナ装置10は、測位空間内に存在する照明器具に電力を供給する電力線に接続され、当該電力線から供給される電力を用いてビーコン信号を受信する。
なお、受信アンテナ装置10は、少なくとも1つの放射素子を有する放射装置に組み込まれていてもよい。図1には、受信アンテナ装置10の他、指令を送信する放射装置が示されている。放射素子は、電磁波または音波等の波を放射する素子である。電磁波は、可視光、不可視光、または電波であり得る。電波の場合、放射素子は送信アンテナ素子である。音波は、たとえば音声、警報音等であり得る。音波の場合、放射素子はたとえばスピーカである。
測位装置20は、各ICタグ5から出力され、受信アンテナ装置10の受信アンテナ素子を用いて受信されたビーコン信号の到来方向を、所定の到来方向推定アルゴリズムを用いて推定する。さらに測位装置20は、後述するパラメータを利用して、推定したビーコン信号の到来方向から、ICタグ5が存在する、現実の測位空間内の位置をさらに推定する。これにより、特定の識別情報を有するICタグ5の現在の位置を推定することができる。測位装置20は、ビーコン信号を送信したICタグ5の位置情報を出力することができる。
図1では、人2と無人搬送車3とが混在しているが、混在することは必須ではない。なお、無人搬送車は「AGV」(Automatic Guided Vehicle)と呼ばれることがある。以下、本明細書では、無人搬送車をAGVと呼ぶ。
図2は、ICタグ5を所有する人2、およびスマートフォン4を有する人2が存在する部屋に設けられた測位システム1の例を示す。測位システム1には複数の受信アンテナ装置10が設けられており、ICタグ5がどの位置に存在したとしても、いずれかの受信アンテナ装置10がICタグ5から放射されるビーコン信号を受信することができる。
図3は、各々にICタグ5が組み込まれた複数のAGV3が存在する測位システム1の例を示す。測位システム1に複数の受信アンテナ装置10が設けられていることは、図2の例と同じである。本例においては、受信アンテナ装置10は、放射素子を有する放射装置11内に組み込まれている。測位システム1の測位装置20によって各AGV3の位置が推定されると、図示されない制御装置を用いて、各AGV3の動作を個々に制御することができる。例えば制御装置は放射素子から誘導指令を送信して各AGV3を目的の位置まで誘導することができる。
なお、ICタグ5が存在する高さは、図2の例では概ね1メートルであると仮定し、図3の例では概ね40センチメートルであると仮定してもよい。
次に、受信アンテナ装置10および測位装置20の構成を説明する。以下では、放射装置に組み込まれた受信アンテナ装置10の例を説明する。
図4Aは、受信アンテナ装置10を有する放射装置11の外観図であり、図4Bは放射装置11の平面図である。放射装置11は、円盤形状の筐体9と、受信アンテナ装置10と、複数の放射素子11aおよび11bと、固定装置13とを有する。放射素子11aおよび11bは照明用のLED素子である。なお、参照符号は例示的に2つの放射素子のみに付している。
筐体9の内部には、複数の受信アンテナ素子14a、14b、14cが設けられている。複数の受信アンテナ素子は受信アンテナ素子アレイ14を構成している。図4Bでは受信アンテナ素子アレイ14は二次元アレイである。各受信アンテナ素子に入射するビーコン信号の位相差等を利用して、測位装置20はICタグ5が存在する二次元平面上の位置を推定することができる。ただし、受信アンテナ素子アレイ14は一次元アレイであってもよい。
図4Bに示すように、複数の放射素子は円盤形状の筐体9の周囲(円周)に沿って配列されている。
固定装置13は、受信アンテナ装置10を照明ブラケット、天井、梁、柱または壁に固定する固定具である。図示された固定装置13の形状は一例であり、当業者であれば形状を適宜変更することがきる。
放射装置11は、受信アンテナ装置付きの照明器具である。放射装置11は天井面に敷設され、電力が供給される電力線(図示せず)に接続される。このとき、受信アンテナ装置10もまた、同じ電力線に接続されている。これにより、受信アンテナ装置10を用いてビーコン信号を受信することが可能になる。
筐体9には、受信アンテナ装置10の座標軸の一つである第1角度基準軸の向きを示す記号Mが示されている。第1角度基準軸については後に詳述する。
なお、図4Aおよび図4Bで示した受信アンテナ装置10の形状は一例である。たとえば図5は、受信アンテナ装置10と異なる形状を有する放射装置11を示している。受信アンテナ装置10aは、直管型の複数の照明装置41a、41bを有していてもよい。各照明装置は少なくとも1つの照明素子を有していればよい。各照明装置は、たとえば蛍光灯であってもよいし、配列された複数のLED素子であってもよい。受信アンテナ装置10は、照明装置41aおよび41bの間に配置されている。
図6は、受信アンテナ装置10を有する放射装置11の電気的な構成を示している。放射装置11は、コンセントプラグS1と、受信アンテナ装置10と、照明用電力回路16と、電源ユニット18と、モデム19aとを有する。
図6の例では、放射装置11の受信アンテナ装置10は、動作するために必要な電力を、電力線PLを利用して確保する。当該電力線PLを利用して測位装置20と通信する。すなわち受信アンテナ装置10は、電力線通信(PLC: Power Line Communication)を行う。
放射装置11のコンセントプラグS1は、電力線PLと接続されたコンセントS2に接続される。コンセントプラグS1には電源ユニット18およびモデム19aが接続されている。電源ユニット18は、電源から供給された電力を受けて、当該電力を受信アンテナ装置10内の電子部品に分配する。電源ユニット18は、電力線PLの交流電圧を受信アンテナ装置10において利用可能な直流電圧に変圧する変圧器(図示せず)を有する。電源ユニット18は、変圧して得られた電力を受信アンテナ装置10、照明用電力回路16およびモデム19aに分配する。変圧器は、たとえばスイッチングすることによって交流電圧を直流電圧に変換することができるが、当該構成は周知であるため、具体的な説明は省略する。
受信アンテナ装置10は受信回路15を有する。受信回路15は、複数の受信アンテナ素子14a、14b、14cに入射した電磁波に由来する高周波電力信号を受信し、モデム19aに出力する。モデム19aは、PLC通信に必要な変調処理を行い、変調した信号をコンセントプラグS1およびコンセントS2および電力線PLを介して測位装置20に送信する。
照明用電力回路16は、照明用のLED素子である放射素子11aおよび11bと、各LED素子の点灯を制御する点灯制御回路17を有している。点灯制御回路17は、点灯スイッチ(図示せず)によって各LED素子の点灯を制御してもよいし、外部からの制御によって各LED素子の点灯を制御してもよい。
放射装置11は、いわゆるPoE(Power over Ethernet)方式で電力を確保することもできる。その場合、電力線PLはLANケーブルに内包される。また、コンセントプラグS1およびコンセントS2はそれぞれ、PoE方式に対応するRJ-45コネクタになり得る。
図7および図8は、いずれもPoEに対応する受信アンテナ装置10の構成例を示す。図7はオルタナティブA方式の構成例であり、図8はオルタナティブB方式の構成例である。
イーサネット(登録商標。以下同じ。)規格のLANケーブルCは、8本の銅線を2本ずつより合わせた4対の導線を有する。図7に示すオルタナティブA方式では、1対の銅線L1およびL2に、電力およびデータの両方が重畳される。そのため、電源ユニット18およびモデム19aは、それぞれ銅線L1およびL2に接続される。一方、図8に示すオルタナティブB方式では、電力およびデータは異なる1対の導線に重畳される。そのため電源ユニット18は銅線L3に接続され、モデム19aは、銅線L3とは異なる銅線L4に接続される。
なお、受信アンテナ装置10および照明用電力回路16の構成は図6で説明した通りである。よって再度の説明は省略する。
受信アンテナ装置10は、内蔵バッテリから電力を確保してもよい。図9は、バッテリBを内蔵する受信アンテナ装置10の構成例を示す。バッテリBから電力を確保する以外は、図9の構成は図8の構成と同じである。
上述の説明から明らかな通り、PLC通信の場合でもPoE方式の場合でも、電力が伝送される線は、電源ユニット18に電力を供給する「電源」の範疇である。もちろん、PoE対応のハブ、バッテリBもまた、電源である。
次に、測位装置20を説明する。
図10は、測位装置20のハードウェアの構成を示している。
測位装置20は、演算回路(CPU)21と、メモリ22と、インタフェース(I/F)装置23と、通信回路24とを有しており、これらは内部バス25で接続されている。CPU21は、後述の処理により、個々のICタグ5の位置を測定し、測定した位置を示す位置情報を生成する。メモリ22は記憶装置であり、たとえばDRAMである。DRAMはCPU21の処理に関連して利用されるワークメモリである。通信回路24は、たとえば、1または複数の通信コネクタを有する通信回路である。I/F装置23は受信アンテナ装置10と有線で接続されている。より具体的には、I/F装置23は、受信アンテナ装置10の複数の受信アンテナ素子14a、14b、14c等の出力と接続されており、各アンテナ素子によって受信された電磁波から生成された高周波電気信号を受信する。また、通信回路24は、推定された位置情報を利用する不図示の機器等との通信に用いられる。通信回路24は、たとえば、イーサネット規格の有線通信を行う有線通信回線、またはWi-Fi(登録商標)規格の無線通信を行う無線通信回線を介して他の機器と接続され得る。
以下、測位装置20が行う、ICタグ5の位置を測定する処理(到来方向推定アルゴリズム)を説明する。平面上の、または空間内の物体の測位処理は種々知られている。測位装置20は、それらのうちの1つの到来方向推定アルゴリズム、または、複数の到来方向推定アルゴリズムの組み合わせを利用してICタグ5の位置を測定する。以下、到来方向推定アルゴリズムを例示する。
(a)測位装置20は、ICタグ5が送信した無線信号の到来方向を測定し、移動体の位置を決定する(AOA(Angle Of Arrival)方式)。AOA方式は、ICタグ5が送信する信号を受信アンテナ装置10で受信した際に、基準方位(たとえば受信アンテナの正面方向)をもとに到達電波の到来角度を測定することで、ICタグ5の位置を決定する方式である。位置の決定に最低限必要な基地局数(受信アンテナ装置10を有する受信アンテナ装置10の数)は2つであるため、同時に必要な受信アンテナ装置10の数は少なくて済む。また、角度を正確に計測することができるため、基地局から端末までに障害物がなく、見通し線が明確な場合には高い精度でICタグ5の位置を決定できる。各アンテナ素子に流す電流の位相を調整することによってビーム方向や放射パターンの制御を行う、フェーズド・アレイ・アンテナを用いることもできる。
なお、アレイ・アンテナを利用する場合、単一の受信アンテナ装置10によって、その受信アンテナ装置10に対するICタグ5の方向を特定することができる。この場合、1個の受信アンテナ装置10によってICタグ5の位置を決定することも可能である。例えば、所定の高さにある天井面に配置された受信アンテナ装置10に対するICタグ5の方向が特定される場合、ICタグ5の床面に対する高さが既知または推定されるならば、ICタグ5の位置を決定することが可能である。このため、1個の受信アンテナ装置10によってICタグ5を測位することも可能である。
(b)測位装置20は、ICタグ5が発した無線信号を受信アンテナ装置10で受信し、受信アンテナ装置10の各アンテナ素子における受信時刻の差から移動体の位置を決定する(TDOA(Time Difference Of Arrival)方式)。受信アンテナ装置10を有する受信アンテナ装置10は基地局として機能して、正確に受信時刻を測定しなければならない。受信アンテナ装置10間では、ナノ秒単位の、正確な時刻の同期を行う必要がある。
(c)測位装置20は、受信アンテナ装置10の位置が既知であり、かつ、電波が距離に応じて減衰することを利用して、ICタグ5が発した無線信号の受信強度から位置を決定する(RSSI(Received Signal Strength Indication)方式)。ただし、受信信号の強度はマルチパスの影響を受けるため、距離(位置)を算出するためには、測位システム1が導入される環境ごとに距離減衰モデルが必要である。
(d)測位装置20は、ICタグ5の識別情報が付加された画像(たとえばQRコード(登録商標))をカメラで撮影し、カメラの位置、カメラが向いている方向、撮影された画像内のICタグ5の位置に基づいて、ICタグ5の位置を決定することもできる。
なお、測位処理によってその位置測定精度は異なる。測位処理(a)においては、位置測定精度はアンテナの角度分解能と被測定物との距離で決まり、一般の建物においては10cmが実現されている。測位処理(c)においてはICタグから出た電波の干渉による電波強度の変化等により、一般の室内では数メートル、条件の良い場合でも1m程の誤差が生じる可能性がある。測位処理(d)においては、測位誤差は、イメージセンサの画素数、空間分解能、レンズによる歪に依存する。また、物体認識という比較的負荷の高い処理を必要とする。
精度の観点では、現時点では上述した測位処理(a)が優れている。しかしながら、測位処理(b)から(d)のいずれかを利用して本開示の測位システム1が構築されてもよい。
測位システム1では、受信アンテナ装置10が、ICタグ5から出力される無線信号(ビーコン信号)を受信する。上述のように、測位装置20は到来方向推定アルゴリズムを用いて、受信アンテナ装置10が受信したビーコン信号の到来方向を推定する。
ビーコン信号の到来方向は、受信アンテナ装置10からみたビーコン信号の到来方向であり、受信アンテナ装置10に規定される座標系(「第1座標系」と呼ぶ。)で表現され得る。例示的な実施形態では、第1座標系には、互いに直交する第1角度基準軸および第2角度基準軸が規定される。
図11Aは、第1角度基準軸αおよび第2角度基準軸βによって規定される第1座標系Pを示している。第1角度基準軸αは、測位空間の床面または天井面に平行な方向であり、第2角度基準軸βは、当該床面または天井面の法線に平行である。典型的には、床面または天井面が水平方向である場合、第2角度基準軸βは鉛直下向きである。
ビーコン信号の到来方向は、第1角度基準軸からの偏角(第1偏角)αsおよび第2角度基準軸からの偏角(第2偏角)βsの組(αs,βs)によって表現され得る。
一方、例えば家庭、工場、ショッピングモール等の測位空間にも固有の座標系が規定され得る。図11Bは、第1水平基準軸Xおよび第2水平基準軸Yによって規定される第2座標系Qを示している。第2座標系Qは床面または天井面に平行であるとする。本実施形態では、ICタグ5の高さが一定であると仮定することにより、第2座標系Qは床面から当該高さだけ上方に広がる平面上に載る。換言すると、当該平面は、第1水平基準軸Xおよび第2水平基準軸Yによって張られる。
ここで留意すべきは、受信アンテナ装置10に規定される第1座標系Pと測位空間の第2座標系Qとが互いに関係なく規定され得ることである。
いま、受信アンテナ装置10が測位空間の天井面に取り付けられる場合を想定する。ある業者が作業した場合と他の業者が作業した場合とで、同じ受信アンテナ装置10の向きがずれて取り付けられることがあり得る。ここでいう受信アンテナ装置10の「向き」とは、天井面の法線を中心軸とする回転の向きを意味する。「向き」のずれは、例えば90度または180度であり得る。
受信アンテナ装置10が取り付けられる向きに応じて、受信アンテナ装置10に規定される第1座標系Pが定まる。一方、測位空間の第2座標系Qは予め一意に定め得る。従って、第1座標系Pと第2座標系Qとは互いに独立して規定され得る。本実施形態では、第1座標系Pで表現されるビーコン信号の到来方向と、第2座標系Qで表現される実際の測位空間内の位置とを対応付けるパラメータを算出する。つまり、測位システム1を測位空間に導入するにあたっては、当該パラメータを導出して第1座標系Pと第2座標系Qとを対応付けるための調整が必要とされる。
図12は、第1角度基準軸αと第1水平基準軸Xとの関係を示すパラメータTを示している。上述のように、本実施形態では、第1角度基準軸αおよび第1水平基準軸Xはいずれも、測位空間の床面または天井面に平行である。パラメータTは、第1角度基準軸αおよび第1水平基準軸Xがなすオフセット角として定義することができる。
第1角度基準軸αの向きは、筐体9に表示された、記号Mの方向として決定することができる。また、第1水平基準軸Xの向きは、部屋や工場等の測位空間が直方体形状の空間である場合には、測位空間の1つの壁面に沿った向きとして定義し得る。
例えば測位システム1を設置する業者は、受信アンテナ装置10を天井面に取り付けた際、受信アンテナ装置10の記号Mの向きと測位空間のある壁面とのなす角度を計測し、パラメータTとして測位装置20のメモリ22に記憶させればよい。当該業者が設置のみを担当し、測位システム1の測位装置20を運用する業者(運用業者)が別途存在する場合には、設置業者は運用業者にパラメータTを通知すればよい。通知は種々の方法によって行われ得る。例えば、設置業者が運用業者のオペレータに電話等でパラメータを通知すると、オペレータが測位装置20のメモリ22にパラメータTを記憶させればよい。そのような手順は、測位システム1の調整方法の一部に組み込まれ得る。
併せて、測位装置20のメモリ22には、測位空間の平面地図の地図データも記憶され得る。地図データは、例えば画像データの上方向を北にした部屋の間取り図のデータである。地図データには縮尺を示すデータを付与してもよい。
これらのデータは、設置業者またはユーザがPC等の任意のコンピュータシステムを用いて、運用業者の測位装置20にアップロードすることができる。これにより、測位装置20のCPU21は、平面地図上にICタグ5の位置を示すアイコン等を重畳して表示することができる。例えば、測位システム1が家庭内に設置された場合、家族にICタグ5を所持させておく。その人が家のどの位置にいるのかを、他の家族は、平面地図上のアイコンによって時間および場所を選ばず知ることができる。なお地図データに代えて、または地図データとともに、部屋の写真データを送信してもよい。
筐体9の記号Mに代えて、地磁気センサの出力を利用して第1角度基準軸αの向きを決定してもよい。例えば、受信アンテナ装置10に地磁気センサ(図示せず)を設け、受信アンテナ装置10が天井面に設置された後、地磁気センサを動作させる。地磁気センサの出力によって決定される磁北の向きを、第1角度基準軸αの向きにすればよい。
上述の処理の結果、図11Bに示す態様で、第2座標系Q上にICタグ5の位置を表示することが可能になる。
第1角度基準軸αと第1水平基準軸Xとの関係を示すパラメータTは、他の方法によって取得することもできる。例えば、測位空間である部屋の平面図が矩形である場合、少なくとも2個のICタグ5を、部屋の非対角の2隅にそれぞれ配置する。受信アンテナ装置10にその2個のICタグ5からビーコン信号をそれぞれ受信させ、測位装置20にビーコン信号の到来方向を推定させる。その結果、第1角度基準軸αに関して、一方のビーコン信号の到来方向を基準として他のビーコン信号の到来方向との相対角度を得ることができる。2つのICタグ5を結ぶ直線を第1水平基準軸Xとして捉えることにより、受信アンテナ装置10に予め定められ設定された所定の第1角度基準軸αとのオフセット角、すなわちパラメータTを設定することができる。
測位装置20の運用業者は、受信アンテナ装置10と、上述の2つのICタグ5とをセットにして販売し、受信アンテナ装置10を測位装置20に接続させてICタグ5の測位を行わせるサービスを提供することができる。
ICタグ5の数は2個に限られず4個であってもよい。番号が付与された各ICタグ5を番号順に、例えば時計回りに部屋の4隅に配置することで、部屋の任意の壁面に平行な軸を、第1水平基準軸Xに設定することができる。
なお、1個のICタグ5を部屋の1隅に配置して受信アンテナ装置10にビーコン信号を受信させ、その後、当該ICタグ5を部屋の1隅に配置して受信アンテナ装置10にビーコン信号を受信させてもよい。これにより、1個のICタグ5でも上述したパラメータTを取得することができる。
本開示の放射装置、測位システムおよび当該測位システムを含む応用システムは、屋内または屋外を移動する移動体の位置の推定および位置を利用した誘導等に広く用いられ得る。
1・・・測位システム、10・・・放射装置、11a、11b・・・放射素子、14・・・受信アンテナ素子アレイ、14a、14b・・・受信アンテナ素子、15・・・受信回路、16・・・照明用電力回路、17・・・点灯制御回路、19a・・・モデム、19b、19c・・・通信回路、100・・・応用システム、101、102警報システム、103・・・収音システム、104・・・表示システム、PL・・・電力線
Claims (9)
- 少なくとも1台の受信アンテナ装置と、ビーコン信号を出力する少なくとも1台の電子機器と、測位装置とを有する測位システムの調整方法であって、
前記受信アンテナ装置は、測位空間内に存在する照明器具に電力を供給する電力線に接続され、前記電力線から供給される電力を用いて前記ビーコン信号を受信することが可能であり、
前記測位装置は、到来方向推定アルゴリズムを用いて、前記受信アンテナ装置が受信した前記ビーコン信号の到来方向を推定することが可能であり、
前記調整方法は、
前記測位空間に設置された前記受信アンテナ装置の位置情報を取得し、
前記測位装置を用いて、前記位置情報および推定された前記ビーコン信号の到来方向から前記測位空間における前記電子機器の位置をさらに推定するために、前記受信アンテナ装置の座標系と前記測位空間の座標系とを対応付けるパラメータを取得し、
前記測位装置に前記位置情報および前記パラメータを記憶させる、調整方法。 - 前記受信アンテナ装置は、前記照明器具の近傍に配置されており、
前記受信アンテナ装置の座標系では、前記ビーコン信号の到来方向が、第1角度基準軸からの第1偏角および第2角度基準軸からの第2偏角の組によって表現され、
前記測位空間の座標系では、前記電子機器の座標値が、第1水平基準軸に関する第1位置および第2水平基準軸に関する第2位置の組で表現され、
前記パラメータは、前記受信アンテナ装置の座標系で表現された前記ビーコン信号の到来方向を、直交座標系の座標値に変換するために用いられるパラメータである、請求項1に記載の調整方法。 - 前記第1角度基準軸は、前記第1水平基準軸および前記第2水平基準軸によって張られる平面に平行であり、
前記パラメータは、前記第1角度基準軸と前記第1水平基準軸とがなすオフセット角の大きさである、請求項2に記載の調整方法。 - 前記受信アンテナ装置は、
前記ビーコン信号を受信する1または複数の受信アンテナ素子と、
前記第1角度基準軸の向きを示す記号が示された筐体と
を有し、
前記第1水平基準軸は前記測位空間の1つの壁面に沿った方向に平行である、請求項2または3に記載の調整方法。 - 前記受信アンテナ装置は、
前記ビーコン信号を受信する1または複数の受信アンテナ素子と、
地磁気センサと
を有し、
前記第1角度基準軸は、前記地磁気センサの出力によって決定される磁北の向きと平行である、請求項2または3に記載の調整方法。 - 前記測位空間の地図を示す地図データ、および、前記測位空間の前記第1水平基準軸の方位を示す北または南の方位を示す方位データをさらに取得し、
前記位置情報は前記地図上の位置によって表され、
前記測位装置に、前記地図データおよび前記方位データをさらに記憶させる、請求項2または3に記載の調整方法。 - 測位システムを用いて、ビーコン信号を出力する電子機器の位置を推定する測位方法であって、
前記測位システムは、
少なくとも1台の受信アンテナ装置と、
請求項1から6のいずれかに記載の調整方法によって前記位置情報および前記パラメータを記憶した測位装置と
を有しており、
前記受信アンテナ装置を用いて前記ビーコン信号を受信させ、
前記測位装置に到来方向推定アルゴリズムを実行させることにより、前記ビーコン信号の到来方向を推定させ、
前記測位装置に、前記パラメータを用いて、前記受信アンテナ装置の座標系で推定した前記到来方向を前記測位空間の座標で表現された方向に変換させ、
前記測位空間における前記電子機器の位置をさらに推定させる、測位方法。 - 電子機器から出力されたビーコン信号を受信する少なくとも1台の受信アンテナ装置と、
前記ビーコン信号を出力する電子機器の位置を推定する測位装置と
を有する測位システムであって、
前記測位装置は、
請求項1から6のいずれかに記載の調整方法によって前記位置情報および前記パラメータを記憶した記憶装置と、
到来方向推定アルゴリズムを実行することにより、前記受信アンテナ装置によって受信された前記ビーコン信号の到来方向を推定する演算回路と
を有し、前記演算回路は、前記パラメータを用いて、前記受信アンテナ装置の座標系で推定した前記到来方向を前記測位空間の座標で表現された方向に変換し、前記測位空間における前記電子機器の位置をさらに推定する、測位システム。 - 前記記憶装置は、前記測位空間の地図を示す地図データをさらに記憶しており、
前記測位装置は、前記電子機器の位置を前記地図上に表示する、請求項8に記載の測位システム。
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