GaN、AlN、InNおよびこれらの混晶に代表される窒化物系III−V族化合物半導体結晶はバンドギャップが直接遷移型であり、半導体発光素子への利用が期待されている。特に、InGaNの混晶は、紫外光から赤色光にいたる波長の光を発光させることが可能である。このため、すでに、InGaNの混晶を用いて紫外光から緑色光にいたる波長の発光ダイオード素子並びに青紫レーザダイオード素子が実用化されている。これらの半導体発光素子は、高密度光ディスクやフルカラーディスプレー、さらには環境・医療分野など、広く応用が考えられている。
また、発光ダイオード素子、レーザダイオード素子などの半導体発光素子の製造方法として、有機金属化学気相蒸着法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:以下、MOCVD法と呼称する)が一般的に用いられるこのMOCVD法を用いて化合物半導体の薄膜成長を行なう気相成長装置はMOCVD装置と呼ばれる。
図21は、従来の典型的なMOCVD装置の反応室の構成を説明する断面図である。従来のMOCVD装置501では、反応室502内に原料ガスを基板上に効率よく導くために管状のフローチャネル503が設けられている。このフローチャネル503は、その両端が反応室502外部に向けて開口し、その開口部はフローチャネル503の両端でガス供給口517とガス排出口518を形成している。また、フローチャネル503の長手方向の略中央部には基板ホルダー508上に載置された半導体基板507表面がフローチャンネル503内部に臨む開口部が形成されている。そして、ガス供給口517からフローチャネル503内部に導入された成膜原料成分を含有する原料ガスは半導体基板507表面と接触して反応・成膜し、半導体基板507表面に化合物半導体薄膜が形成される。また、半導体基板507表面で反応に寄与しなかった原料ガスはガス排出口518から反応室502外部に排出される。
このとき、半導体基板507を保持する基板ホルダー508の下部には、半導体基板507を加熱するための加熱ヒータ509が設けられ、結晶成長に最適な反応状態になるよう半導体基板507を加熱することができる。また、加熱ヒータ509と基板ホルダー508との間には、通常、均熱板515が設けられる。この均熱板515は加熱ヒータ509からの熱を基板ホルダー508に均一に熱伝導させる。なお、加熱ヒータ509からの熱を直接半導体基板507全域にわたり均一に熱伝導することができれば、均熱板515を省略することができる。
しかしながら、上記MOCVD装置501では半導体基板507上に成長させた化合物半導体薄膜の結晶性および層厚が半導体基板507全域にわたり不均一になるという不都合があり、製造歩留まりが低下するという問題があった。
このような問題に対して、本発明者は成膜原料成分を含有する原料ガスが半導体基板507表面で接触して反応・成膜する際、半導体基板507の表面温度が同一基板面内で不均一になっていることに起因して、成長する化合物半導体薄膜の結晶性および層厚が半導体基板507面内において不均一になり、作製される窒化物系化合物半導体素子の発振波長にバラツキが発生することを見出した。
また、半導体基板507の表面温度が面内で不均一になる原因として、半導体基板507の反り形状が半導体基板507毎に異なり、半導体基板507と基板ホルダー508との接触度合いが異なることが挙げられる。
例えば、本発明者が特許文献1で開示したGaN基板では、成長させた化合物半導体薄膜の表面平坦性が悪化する問題を解決するために、ストライプ状の溝からなる掘り込み領域を半導体基板507上に形成し、半導体基板507表面に化合物半導体薄膜を成長させて窒化物系化合物半導体素子を作成する。しかし、ストライプ状の溝からなる掘り込み領域を形成した半導体基板507は化合物半導体薄膜を成長させる前後で異なる反りの形状をとる。
図22は本発明者が特許文献1で開示したGaN基板において、化合物半導体薄膜を形成する前の半導体基板507の反り量を示すヒストグラムである。ここで、図22において示す中心部が負の反り量を示すGaN基板とは、化合物半導体を成膜する方向と逆方向に反っている凹状の基板であり、このGaN基板の成膜面を下にして水平板上に基板を静置したとき、GaN基板の端部が接触し且つ基板中心部が浮き上がる反り形状をいう。このとき水平板と浮き上がった基板中心部との距離を反り量としている。図22に示すように、化合物半導体薄膜が形成される前の半導体基板507にはその中心部近傍に反りがあり、その反り方向及び反り量は基板ごとのバラツキが大きい。このため、このような形状の半導体基板507の成膜面を上にして基板ホルダー508上に載置した場合、加熱ヒータ509から基板ホルダー508へ熱伝導した熱が半導体基板507の基板面内へ不均一に熱伝導し、半導体基板507の表面温度が基板面内で不均一となっていた。
また、図23は従来の半導体基板の上面図であり、図24は図23に示した半導体基板のX−X’線およびY−Y’線における薄膜形成が行われる前の反り量を示す図であり、図25は図23に示した半導体基板507のX−X’線およびY−Y’線における薄膜形成が行われた後の反り量を示す図である。ここで、半導体基板507は特許文献1で開示された作製方法と同様の方法により、掘り込み領域がY方向に350μmの間隔を隔てて周期的に複数形成され、掘り込み領域のY方向のオフ角θaが−0.28°、X方向のオフ角θbが−0.03°、掘り込み領域の開口幅が3μm、深さが3μmに加工された半導体基板である。また、X方向は〈11−20〉で半導体基板507上に形成された掘り込み領域に垂直な方向であり、Y方向は〈1−100〉で半導体基板507上に形成された掘り込み領域に対して水平な方向である。また「掘り込み領域」とは、特許文献1で開示されている半導体基板507表面でストライプ状に加工された凹部を意味する。図24および図25に示すように、薄膜形成が行われる前後で掘り込み領域が形成された半導体基板507はX方向において凸状、Y方向において凹状に変形し、X、Y方向における基板の反り量には大きな差が見られる。特に、半導体基板507のX方向における半導体基板507の反りは、薄膜形成が行われる前後で逆転している。
また、図26は従来の気相成長装置を構成する基板ホルダーの上面図であり、図27は図26に示したX−X’線に沿った断面図であり、図28は図26に示したY−Y’線に沿った断面図である。図26〜図28に示すように、図25に示したX方向において凸状、Y方向において凹状に変形した半導体基板507を基板ホルダー508上に載置したとき、半導体基板507はX方向において凸状、Y方向において凹状に変形しているため、X方向において半導体基板507の端部が基板ホルダー508と接触し、半導体基板507底面と基板ホルダー508の基板載置面508aとの間に空隙が生じる。このため、基板ホルダー508と半導体基板507との接触部分を介した熱伝導及び基板ホルダー508の基板載置面508aと半導体基板507底面との空隙の大きさに応じた輻射熱により半導体基板507が基板面内において不均一に加熱され、半導体基板507表面の温度が面内で不均一となっていた。
また、図23〜図25に示したX方向において凸状、Y方向において凹状に変形した複数の半導体基板507をチップ状に分割して窒化物半導体レーザ素子を複数作製し、各窒化物半導体レーザ素子の分割前の半導体基板507における発振波長の面内分布を図29、図30のグラフにまとめた。図29は図23に示したX−X’線に沿った発振波長の面内分布であり、図30は図23に示したY−Y’線に沿った発振波長の面内分布である。図29、図30のグラフが示すように、窒化物系半導体レーザ素子の波長面内分布に標準偏差σに最大σ=1.9nmのバラツキがあり、基板毎の波長は標準偏差σに最大σ=2.5nmのバラツキがあった。また、図23〜図25と図29、図30とを比較した場合、基板ホルダー508の基板載置面508aと半導体基板507との空隙が大きく、基板載置面508aと半導体基板507との距離が離れている部分から得られる窒化物半導体レーザ素子はその距離に応じて発振波長が長波長化していることがわかる。このことから、半導体基板507と基板ホルダー508の基板載置面との距離が離れた部位では基板ホルダー508からの輻射熱が減少し、半導体基板507の表面温度が低下するため、この部分を分割して得られる窒化物半導体レーザ素子の発振波長が長波長化し、発振波長の半導体基板面内分布全域の不均一化が起きていると考えられる。
また、半導体基板507の表面温度が面内で不均一になる他の原因として、基板ホルダー508や加熱ヒータ514の製作精度の問題により、加熱ヒータ514と基板ホルダー508との接触面又は均熱板515と基板ホルダー508との接触面の平面度や鏡面度により接触度合いが異なることが挙げられる。基板ホルダー508と加熱ヒータ514との接触面または基板ホルダー508と均熱板515との接触面の加工精度が悪く、平面度にバラツキが発生している場合、加熱ヒータ514毎、均熱板515毎で基板ホルダー508との間の密着度にバラツキが発生する。その結果、基板ホルダー508への熱伝導にバラツキが発生し、基板ホルダー508の面内における温度分布が不均一になり、半導体基板507への熱輻射量が変化することにより半導体基板507の面内温度が不均一になっていた。
以下、本発明を具体化した実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、気相成長装置の一例であるMOCVD装置に本発明を適用した例について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による気相成長装置の反応室の断面図であり、図2は図1に示した本発明の第1実施形態による気相成長装置を構成する基板ホルダーの上面図であり、図3は図2に示したX−X’線に沿った断面図であり、図4は図2に示したY−Y’線に沿った断面図である。ここで、X方向は〈11−20〉で半導体基板上に形成された掘り込み領域に垂直な方向であり、Y方向は〈1−100〉で半導体基板上に形成された掘り込み領域に対して水平な方向である。まず、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態のMOCVD装置101について説明する。
第1実施形態のMOCVD装置101は、図1に示すように、反応室102内に原料ガスを基板上に効率よく導くために管状のフローチャネル103が設けられ、フローチャネル103の両端でガス供給口117とガス排出口118を形成している。また、フローチャネル103の長手方向の略中央部には基板ホルダー108上に載置された半導体基板107表面がフローチャンネル103内部に臨む開口部が形成されている。また、基板回転機構111が設置され、基板回転機構111は半導体基板107を基板ホルダー108とともに、基板回転機構111の回転により回転させる。これにより、基板回転機構111を回転させながら半導体基板107表面に薄膜形成を行うことで、半導体基板107全域にわたり形成される化合物半導体薄膜の結晶性および層厚を均一化することができる。また、半導体基板107を保持する基板ホルダー108の下部には、半導体基板107を加熱するための加熱ヒータ109が設けられ、結晶成長に最適な反応状態になるよう半導体基板107を加熱することができる。また、反応室102内には、図示しないが半導体基板107と基板ホルダー108を自動搬出入するための自動搬出入機が設けられている。
また、図2に示すように、基板ホルダー108の上面には基板ホルダー108の回転中心に対して等しい円周角で第1凸部105が4点設けられ、これら第1凸部105が半導体基板107をフローティング状に支持する。これにより、半導体基板107毎に基板ホルダー108との接触度合いが異なることに起因して、半導体基板107の表面温度が基板面内で不均一になるのを防ぐことができる。また、本実施形態では、掘り込み領域がY方向に形成された半導体基板107を2点の第1凸部105でY方向に支持するとともに、残り2点の第1凸部105で掘り込み領域と垂直方向であるX方向に支持する。なお、第1凸部105と半導体基板107に形成された掘り込み領域の延在方向との位置関係は上記場合に限定されず、半導体基板107の反りの形状に応じて変更することができる。例えば、図5は図1に示した本発明の第1実施形態による気相成長装置を構成する基板ホルダーの上面図であるが、図5に示すように、掘り込み領域の延在方向(Y方向)が線状に並んだ2点の第1凸部105に対して45°の角度を有するように各第1凸部105を回転させて基板ホルダー108上に載置しても、半導体基板107の面内温度を均一に加熱することができる。なお、第1凸部105は基板ホルダー108上に2点設けることにより半導体基板107を保持することができ、3点以上設けることにより、半導体基板107をより安定して保持することができる。ここで、第1凸部105の頂部は半導体基板107を支持する際、半導体基板107と当接するが、半導体基板107保持の安定性の観点から、第1凸部105の頂部を平面的に見た場合に5mm以上の長さを有するとともに1mm以上の幅を有するように構成されているのが好ましい。
また、図3および図4に示すように、第1凸部105は、薄膜形成による半導体基板107の変形時に基板ホルダー108と半導体基板107とが接触しない程度に十分高さを有している。具体的には、第1凸部105は約100μmの高さを有している。これにより、薄膜形成が行われる前後で半導体基板107と基板ホルダー108とが接触するのを防ぐことができる。したがって、薄膜形成が行われる前後で反りの形状が変形する半導体基板107を基板ホルダー108に載置した場合でも、半導体基板107と基板ホルダー108との接触度合により、半導体基板107の表面温度が基板面内で不均一になるのを防ぐことができる。なお、基板ホルダー108の基板載置面108aから第1凸部105の頂部までの距離である第1凸部105の高さを高く設けることにより、薄膜形成が行われる前後で半導体基板107と基板ホルダー108が接触するのを防ぐことができるが、基板ホルダー108から第1凸部105を介して半導体基板107へ伝導する熱および、基板ホルダー108から半導体基板107への熱輻射分による加熱性を考慮して、第1凸部105の高さは、5〜5000μmとなるように設けるのが好ましく、50〜2000μmとなるように設けるのがより好ましい。
また、図3および図4に示すように、基板ホルダー108の半導体基板107と対向する基板載置面108aは、薄膜形成が行われた後の半導体基板107の基板ホルダー108と対向する面の反りの形状と略同一形状にするため、X方向において0μm、Y方向において下に40μm凹んだ形状に加工されている。このような形状に基板載置面108aを成形することにより、薄膜形成が行われる前の半導体基板107を基板ホルダー108aに載置したとき、対向する基板ホルダー108と半導体基板107との距離は半導体基板107の基板面内において不均一であるが、薄膜形成が行われ半導体基板107が変形した後、対向する基板ホルダー108と半導体基板107との距離は半導体基板107の基板面内において略均一になる。これにより、基板変形後、基板ホルダー108からの輻射熱が基板面内において略均一に半導体基板107に熱伝導し、半導体基板107の表面温度を面内で略均一に加熱することができる。なお、半導体基板107の反り方向及び反り量は基板ごとのバラツキが大きいため、想定される基板反り量の最大値から基板載置面108aの反りの形状を決定することにより、半導体基板107ごとの反り量のバラツキによる半導体基板107の表面温度の面内分布の不均一化を防止することができる。
なお、半導体基板107の反りの形状と略同一になるように基板載置面108aを加工するかわりに、半導体基板107の反りの形状に合わせて少なくとも1つ以上の段差(ステップ)を持つ階段状に基板載置面108aを加工した場合においても、同様の効果を得ることができる。この場合、段差(ステップ)の数を多くするほど、加工された基板載置面108aは半導体基板107の反りの形状に近似し、略同一化する。例えば、基板載置面108aを格子状に複数の面に分割し、各分割面と対向する半導体基板107との距離が略同一になるよう隣接する分割面に段差(ステップ)を持たせて階段状に加工することで、各分割面からの輻射熱により基板の面内温度が均一になるように半導体基板107を加熱することができる。また、段差(ステップ)の形状は任意の形状に加工することができ、分割面の形状は四角形状又は円形状が好ましい。また、四角形状及び円形状の面を組み合わせて複数の段差(ステップ)を加工することも可能である。また、各分割面は対向する半導体基板107の反りの形状に応じて傾斜させてもよい。また、分割面は格子状に複数分割する場合に限らず、基板中心と対向する面のみを四角形状に1つ段差を持たせて階段状に凹ませたり、凸ませて分割面を形成してもよい。
次に、特許文献(特開2006−134926)に開示された作製方法と同様の方法により、Y方向に延在する掘り込み領域が350μmの間隔を隔ててX方向に周期的に複数形成され、掘り込み領域のY方向のオフ角θaが−0.28°、X方向のオフ角θbが−0.03°、掘り込み領域の開口幅が3μm、深さが3μmに加工された半導体基板107を上記第1実施形態のMOCVD装置101の第1凸部105が設けられた基板ホルダー108上に載置し、MOCVD法により、所定の成長条件で半導体基板107上に複数の窒化物半導体薄膜から成る窒化物半導体成長層を積層した。なお、上記掘り込み領域が形成された半導体基板107は薄膜形成を行なう前後の反りの形状は、図24および図25で示した反り量と略同一の反り量を示す基板である。
このようにして窒化物半導体成長層が形成された半導体基板107をチップ状に分割して窒化物半導体レーザ素子を複数作製し、各窒化物半導体レーザ素子に分割前の半導体基板107における発振波長面内分布を図6および図7のグラフにまとめた。図6は図2に示したX−X’線に沿った発振波長の面内分布であり、図7は図2に示したY−Y’線に沿った発振波長の面内分布である。なお、窒化物半導体成長層の具体的な積層方法及び窒化物半導体レーザ素子の具体的な作製方法について特許文献(特開2006−134926)および周知の技術を用いて実施されるので、その詳細な説明は以下省略する。図6および図7のグラフより、窒化物系半導体レーザ素子の波長面内分布の標準偏差σをσ=0.59nmのバラツキに抑えることができた。したがって、載置面の形状が半導体基板の反りの形状に関係なく平面状に形成された基板ホルダーを用いて窒化物半導体成長層を積層して得られた図29および図30に示す測定値と比較して各発振波長のバラツキが低く抑えられ、非常に高い製造歩留まり結果を得ることができた。
なお、図8〜図10は第1実施形態による気相成長装置の変形例を説明する図であり、図8は、基板ホルダーの上面図であり、図9は図8に示したX−X’線に沿った断面図であり、図10は図8に示したY−Y’線に沿った断面図である。ここで、X方向は〈11−20〉で半導体基板上に形成された掘り込み領域に垂直な方向であり、Y方向は〈1−100〉で半導体基板上に形成された掘り込み領域に対して水平な方向である。
図8〜図10に示す第1実施形態の変形例では、掘り込み領域が形成されていない半導体基板607を載置するための基板ホルダー608が用いられ、この基板載置面608aの形状は薄膜形成後の半導体基板607の反りの形状と略同一になるよう加工されている。このため、図9および図10に示すようにX方向において下に40μm、Y方向において下に40μm凹んだ状態に加工され、この半導体基板607の変形後、半導体基板607と基板ホルダー608との距離が基板面内において略同一となるよう設計されている。なお、基板ホルダー607以外の構成は上記第1実施形態の気相成長装置101と同一であり説明を省略する。
ここで、この基板ホルダー108上に掘り込み領域が形成されていない半導体基板607を載置し、MOCVD法により、所定の成長条件で半導体基板607上に複数の窒化物半導体薄膜から成る窒化物半導体成長層を積層し、窒化物半導体成長層が形成された半導体基板607をチップ状に分割して窒化物半導体レーザ素子を複数作成したところ、各窒化物半導体レーザ素子の分割前の半導体基板607における発振波長面内分布の標準偏差σをσ=0.55nmのバラツキに抑えることができた。
また、載置面の形状が平面状に形成された基板ホルダーを用いて同様の方法により窒化物半導体成長層を積層して、窒化物半導体レーザ素子を複数作成したところ、各窒化物半導体レーザ素子の分割前の半導体基板における発振波長面内分布の標準偏差σはσ=1.37nmのバラツキがあった。すなわち、上述のように薄膜形成が行われた後、変形した半導体基板107または半導体基板607の反りの形状と略同一形状に基板載置面108aまたは基板載置面608aを加工することにより、半導体基板を基板ホルダーに載置して、成膜原料成分を含有する原料ガスが半導体基板表面で接触して反応・成膜した場合、薄膜形成が行われ半導体基板が変形し、対向する基板ホルダーと半導体基板との距離は半導体基板の基板面内において略均一になる。これにより、半導体基板の変形後、基板ホルダーからの輻射熱が基板面内において略均一に半導体基板に熱伝導し、半導体基板の表面温度が面内で略均一になるよう加熱することができ、その後成長する化合物半導体薄膜の結晶性および層厚が半導体基板全域にわたり均一化し、作製される窒化物系化合物半導体素子の発振波長のバラツキを抑えることができる。
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態による気相成長装置を構成する基板ホルダーを示す上面図であり、図12は図11に示したX−X’線に沿った断面図であり、図13は図11に示したY−Y’線に沿った断面図である。ここで、X方向は〈11−20〉で半導体基板上に形成された掘り込み領域に垂直な方向であり、Y方向は〈1−100〉で半導体基板上に形成された掘り込み領域に対して水平な方向である。図11〜図13を参照して、本発明の第2実施形態のMOCVD装置201について説明する。
第2実施形態のMOCVD装置201は、図11〜図13に示すように、反応室内の基板ホルダー208と加熱ヒータ209との間に均熱板215が配され、基板ホルダー208の半導体基板207と対向する面である基板載置面208aは平面状に形成されている。また、均熱板215の基板ホルダー208と対向する面は薄膜形成が行われた後の半導体基板207の反りの形状と略同一にするために、均熱板215の基板ホルダー208と対向する面がX方向は上に5μm凸、Y方向は下に40μm凹んだ形状に加工されている。また、基板ホルダー208の均熱板215との接触面は均熱板215の形状に合わせて加工されている。つまり、均熱板215の基板ホルダー208と対向する面は、基板ホルダー208の均熱板215と対向する面の形状と略同一であり、均熱板215と基板ホルダー208とが面で接触し、均熱板215と基板ホルダー208との間に空隙がない。このため、均熱板215から基板ホルダー208へ均一に熱伝導させることができる。なお、半導体基板207の反り方向及び反り量は基板ごとのバラツキが大きいため、想定されるX方向およびY方向における基板反り量の最大値から基板載置面208aの形状を決定することにより、半導体基板207ごとの反り量のバラツキによる半導体基板207の表面温度の面内分布の不均一化を防止することができる。
なお、均熱板215の基板ホルダー208と対向する面は薄膜形成が行われた後の半導体基板207の反りの形状と略同一になるように加工するかわりに、半導体基板207の反りの形状に合わせて少なくとも1つ以上の段差(ステップ)を持つ階段状に加工した場合においても、同様の効果を得ることができる。この場合、段差(ステップ)の数を多くするほど、加工された均熱板215の基板ホルダー208と対向する面は半導体基板107の反りの形状に近似し、略同一化する。また、段差(ステップ)の形状は任意の形状に加工することができ、分割面の形状は四角形状又は円形状が好ましい。また、四角形状及び円形状の面を組み合わせて複数の段差(ステップ)を加工することも可能である。また、各分割面は対向する半導体基板207の反りの形状に応じて傾斜させてもよい。また、分割面は格子状に複数分割する場合に限らず、基板中心と対向する面のみを四角形状に1つ段差を持たせて階段状に凹ませたり、凸ませて分割面を形成してもよい。
また、基板ホルダー208の均熱板215側の面は均熱板の215の形状に合わせて加工されているが、半導体基板207側の面は平面状に形成されている。このため、均熱板215の熱は接触する基板ホルダー208に熱伝導し、基板載置面208aを均熱板215の反りの形状に応じた面内温度分布で加熱することができる。このとき、均熱板215の基板ホルダー208と対向する面の反りの形状は、半導体基板207の基板ホルダー208と対向する面の反りの形状と略同一であるため、基板載置面208を結果的に輻射熱により半導体基板207を基板面内で略均一に加熱可能な温度分布に加熱することができる。
また、基板ホルダー208上面には基板ホルダー208の回転中心に対して等しい円周角で第1凸部205が4点設けられ、これら第1凸部205が半導体基板207をフローティング状に支持する。これにより、半導体基板207毎に基板ホルダー208との接触度合いが異なることに起因して、半導体基板207の表面温度が基板面内で不均一になるのを防ぐことができる。このとき、掘り込み領域がY方向に形成された半導体基板207を2点の第1凸部205でY方向に支持するとともに、残り2点の第1凸部205で掘り込み領域と垂直方向であるX方向に支持する。
また、第1凸部205は、薄膜形成による半導体基板207の変形時に基板ホルダー208と半導体基板207とが接触しない程度に十分高さを有している。具体的には、第1凸部205は約200μmの高さを有している。
また、輻射熱は距離の2乗に反比例するため、平面状の基板載置面208aと反った形状の半導体基板207間の距離を第1凸部205の高さを調節することにより、基板載置面208aから半導体基板207への輻射熱による加熱分布の影響を調整することができる。このため、本実施形態において基板載置面208aが基板載置面208aと半導体基板207との基板面内における距離に応じた温度分布で加熱されていない場合、第1凸部205の高さを調節して、基板載置面208aからの輻射熱による基板面内における加熱分布の強弱を調整することで半導体基板207の表面温度を基板面内で略均一にすることができる。
ここで、特許文献(特開2006−134926)に開示された作製方法と同様の方法により、Y方向に延在する掘り込み領域が350μmの間隔を隔ててX方向に周期的に複数形成され、掘り込み領域のY方向のオフ角θaが−0.33°、X方向のオフ角θbが−0.06°、掘り込み領域の開口幅が3μm、深さが3μmに加工された半導体基板207を上記第2実施形態のMOCVD装置201の基板ホルダー208上に載置し、MOCVD法により、半導体基板207を所定の成長条件で半導体基板207上に複数の窒化物半導体薄膜から成る窒化物半導体成長層を積層した。
このようにして窒化物半導体成長層が形成された半導体基板207をチップ状に分割して窒化物半導体レーザ素子を複数作製したところ、各窒化物半導体レーザ素子の分割前の半導体基板207における発振波長面内分布の標準偏差σをσ=0.65nmのバラツキに抑えることができた。
また、均熱板の基板ホルダーと対向する面を平面状に形成するとともに、載置面の形状が半導体基板の反りの形状に関係なく平面状に形成された基板ホルダーを用いて窒化物半導体成長層を積層して、窒化物半導体レーザ素子を複数作製したところ、各窒化物半導体レーザ素子の分割前の半導体基板における発振波長面内分布の標準偏差σはσ=1.37nmのバラツキがあった。すなわち、上述のように、薄膜形成が行われた後、変形した半導体基板207の反りの形状と略同一形状に均熱板215の基板ホルダー208と対向する面を加工することにより、基板ホルダー208に半導体基板207を載置して、成膜原料成分を含有する原料ガスが半導体基板207表面で接触して反応・成膜した場合、薄膜形成が行われ半導体基板207が変形した後、均熱板215の基板ホルダー208と対向する面と半導体基板207との距離は半導体基板207の基板面内において略均一になる。これにより、均熱板215からの熱が基板ホルダー208を介して半導体基板207の基板面内において略均一に熱伝導し、半導体基板207の表面温度を基板面内で略均一にすることができる。そして、半導体基板207の表面温度が基板面内で略均一になるよう加熱することができ、その後成長する化合物半導体薄膜の結晶性および層厚が半導体基板207全域にわたり均一化し、作成される窒化物系化合物半導体素子の発振波長のバラツキを抑えることができる。
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態による気相成長装置を構成する基板ホルダーの上面図であり、図15は図14に示したX−X’線に沿った断面図であり、図16は図14に示したY−Y’線に沿った断面図である。ここで、X方向は〈11−20〉で半導体基板上に形成された掘り込み領域に垂直な方向であり、Y方向は〈1−100〉で半導体基板上に形成された掘り込み領域に対して水平な方向である。図14〜図16を参照して、本発明の第3実施形態のMOCVD装置301について説明する。
第3実施形態のMOCVD装置301は、図14〜図16に示すように、反応室内の基板ホルダー308と加熱ヒータ309との間に均熱板315が配され、基板ホルダー308の半導体基板307と対向する面である基板載置面308aは、薄膜形成が行われた後の半導体基板307の反りの形状と略同一形状にするため、X方向において上に5μm凸、Y方向において下に40μm凹んだ形状に加工されている。また、均熱板315の基板ホルダー308と対向する面も薄膜形成が行われた後の半導体基板307の反りの形状と略同一にするため、X方向は上に5μm凸、Y方向は下に40μm凹んだ形状に加工されている。また、基板ホルダー308は均熱板315と面で当接するよう均熱板315との接触面は均熱板315の形状に合わせて加工されている。つまり、均熱板315の基板ホルダー308と対向する面は、基板ホルダー308の均熱板315と対向する面の形状と略同一であり、均熱板315と基板ホルダー308とが面で接触し、均熱板315と基板ホルダー308との間に空隙がない。このため、均熱板315から基板ホルダー308へ均一に熱伝導させることができる。なお、半導体基板307の反り方向及び反り量は基板ごとのバラツキが大きいため、想定されるX方向およびY方向における基板反り量の最大値から基板載置面308aの形状を決定することにより、半導体基板307ごとの反り量のバラツキによる半導体基板307の表面温度の面内分布の不均一化を防止することができる。
また、基板ホルダー308の均熱板315側の面は均熱板の315の形状に合わせて加工され、半導体基板307側の面は半導体基板307の反りの形状と略同一形状に形成されている。このため、基板面内における半導体基板307と基板載置面308aとの距離および基板載置面308aと均熱板315の基板ホルダー308と対向する面との距離がそれぞれ略均一になる。これにより均熱板315からの熱伝導により、基板載置面308aが面内で略均一に加熱され、基板載置面308aからの輻射熱により半導体基板307を基板面内で略均一に加熱することができる。
なお、薄膜形成が行われた後の半導体基板307の反りの形状と略同一になるように基板載置面308a及び均熱板315の基板ホルダー308と対向する面を加工するかわりに、半導体基板307の反りの形状に合わせて少なくとも1つ以上の段差(ステップ)を持つ階段状に基板載置面308a及び均熱板315の基板ホルダー308と対向する面を加工した場合においても、同様の効果を得ることができる。この場合、段差(ステップ)の数を多くするほど、加工された基板載置面308a及び均熱板315の基板ホルダー308と対向する面は半導体基板307の反りの形状に近似し、略同一化する。例えば、基板載置面308a及び均熱板315の基板ホルダー308と対向する面をそれぞれ格子状に複数の面に分割し、各分割面と対向する半導体基板307との距離が略同一になるよう隣接する分割面に段差(ステップ)を持たせて階段状に加工することで、均熱板315からの熱伝導により、基板載置面308aが面内で略均一に加熱され、基板載置面308aからの輻射熱により半導体基板307を基板面内で略均一に加熱することができる。このとき、基板載置面308a及び均熱板315の基板ホルダー308と対向する面は同一に加工する必要はなく、半導体基板307が面内で略均一に加熱されるようにそれぞれの形状を加工しても良い。
また、基板ホルダー308上面には基板ホルダー308の回転中心に対して等しい円周角で第1凸部305が4点設けられ、これら第1凸部305が半導体基板307をフローティング状に支持する。これにより、半導体基板307毎に基板ホルダー308との接触度合いが異なることに起因して、半導体基板307の表面温度が基板面内で不均一になるのを防ぐことができる。このとき、掘り込み領域がY方向に形成された半導体基板307を2点の第1凸部305でY方向に支持するとともに、残り2点の第1凸部305で掘り込み領域と垂直方向であるX方向に支持する。
また、第1凸部305は、薄膜形成による半導体基板307の変形時に基板ホルダー308と半導体基板307とが接触しない程度に十分高さを有している。具体的には、第1凸部305は約100μmの高さを有している。
また、輻射熱は距離の2乗に反比例するが、本実施形態の基板載置面308aは半導体基板307の反りの形状と略同一であるため、基板載置面308aと半導体基板307間の距離により、基板面内における基板載置面308aから半導体基板307への輻射熱による加熱分布の強弱は変化しない。このため、第1凸部305の高さを低く調節して、基板面内における基板載置面308aからの輻射熱により半導体基板307を強く加熱することができる。
ここで、特許文献(特開2006−134926)に開示された作製方法と同様の方法により、Y方向に延在する掘り込み領域が350μmの間隔を隔ててX方向に周期的に複数形成され、掘り込み領域のY方向のオフ角θaが−0.33°、X方向のオフ角θbが−0.06°、掘り込み領域の開口幅が3μm、深さが3μmに加工された半導体基板307を上記第3実施形態のMOCVD装置301の基板ホルダー308上に載置し、MOCVD法により、半導体基板307を所定の成長条件で半導体基板307上に複数の窒化物半導体薄膜から成る窒化物半導体成長層を積層した。
このようにして窒化物半導体成長層が形成された半導体基板307をチップ状に分割して窒化物半導体レーザ素子を複数作製したところ、各窒化物半導体レーザ素子の分割前の半導体基板307における発振波長面内分布の標準偏差σをσ=0.50nmのバラツキに抑えることができた。
また、均熱板の基板ホルダーと対向する面を平面状に形成するとともに、載置面の形状が半導体基板の反りの形状に関係なく平面状に形成された基板ホルダーを用いて窒化物半導体成長層を積層して、窒化物半導体レーザ素子を複数作製したとろ、各窒化物半導体レーザ素子の分割前の半導体基板における発振波長面内分布の標準偏差σはσ=1.37nmのバラツキであった。すなわち、上述のように、薄膜形成が行われた後、変形する半導体基板307の反りの形状と略同一形状に基板載置面308a及び均熱板315の基板ホルダー308と対向する面を加工することにより、基板ホルダー308に半導体基板307を載置して、成膜原料成分を含有する原料ガスが半導体基板307表面で接触して反応・成膜した場合、薄膜形成が行われ半導体基板307が変形した後、基板面内における半導体基板307と基板載置面308aとの距離および基板載置面308aと均熱板315の基板ホルダー308と対向する面との距離が略均一になる。これにより、均熱板315からの熱伝導により、基板載置面308aが面内で略均一に加熱され、基板載置面308aからの輻射熱により半導体基板307を基板面内で略均一に加熱され、その後、成長する化合物半導体薄膜の結晶性および層厚が基板全域にわたり均一化し、作製される窒化物系化合物半導体素子の発振波長のバラツキを抑えることができる。
(第4実施形態)
図17は、第4実施形態による気相成長装置を構成する基板ホルダーの上面図であり、図18は図17に示したX−X’線に沿った断面図であり、図19は図17に示したY−Y’線に沿った断面図である。ここで、X方向は〈11−20〉で半導体基板上に形成された掘り込み領域に垂直な方向であり、Y方向は〈1−100〉で半導体基板上に形成された掘り込み領域に対して水平な方向である。図17〜図19を参照して、本発明の第4実施形態のMOCVD装置301について説明する。
第4実施形態のMOCVD装置401は、図17〜図19に示すように、反応室内の基板ホルダー408と加熱ヒータ409との間に均熱板415が配され、基板ホルダー408の半導体基板407と対向する面である基板載置面408aは、薄膜形成が行われた後の半導体基板407の反りの形状と略同一形状にするため、X方向において上に5μm凸、Y方向において下に40μm凹んだ形状に加工されている。また、均熱板415の基板ホルダー408と対向する面も薄膜形成が行われた後の半導体基板407の反りの形状と略同一にするため、X方向は上に5μm凸、Y方向は下に40μm凹んだ形状に加工されている。また、基板ホルダー408の均熱板415と対向する面は均熱板415の形状に合わせて加工されるとともに、均熱板415上に第2凸部406が4点設けられ、これら第2凸部406が基板ホルダー408をフローティング状に支持している。つまり、均熱板415の基板ホルダー408と対向する面は、基板ホルダー408の均熱板415と対向する面の形状と略同一であり、このような形状に均熱板415および基板ホルダー408を成形することにより、基板ホルダー408の載置面408aに半導体基板407を載置したとき、均熱板415からの輻射熱により基板ホルダー408が加熱され、基板載置面408aからの輻射熱により半導体基板407を加熱することができる。なお、半導体基板407の反り方向及び反り量は基板ごとのバラツキが大きいため、想定されるX方向およびY方向における基板反り量の最大値から基板載置面408aの形状を決定することにより、半導体基板407ごとの反り量のバラツキによる半導体基板407の表面温度の面内分布の不均一化を防止することができる。
このとき、基板載置面408aと均熱板415の基板ホルダー408と対向する面はともに半導体基板407の反りの形状と略同一形状に形成されているため、基板面内における半導体基板407と基板載置面408aとの距離および基板載置面408aと均熱板415の基板ホルダー408と対向する面との距離はそれぞれ略均一になる。また、均熱板415上に設けられた第2凸部406が基板ホルダー408をフローティング状に支持しているため、均熱板415からの熱を基板ホルダー408へ輻射熱により熱伝導することができる。このため、均熱板415と基板ホルダー408の接触面の加工精度の不良により均熱板415から基板ホルダー408へ不均一に熱伝導することを防止することができる。以上より、均熱板415からの輻射熱により、基板載置面408aが面内で略均一に加熱され、基板載置面408aからの輻射熱により半導体基板407を基板面内で略均一に加熱することができる。
なお、薄膜形成が行われた後の半導体基板407の反りの形状と略同一になるように基板載置面408a及び均熱板415の基板ホルダー408と対向する面を加工するかわりに、半導体基板407の反りの形状に合わせて少なくとも1つ以上の段差(ステップ)を持つ階段状に基板載置面408a及び均熱板415の基板ホルダー308と対向する面を加工した場合においても、同様の効果を得ることができる。この場合、段差(ステップ)の数を多くするほど、加工された基板載置面408a及び均熱板415の基板ホルダー408と対向する面は半導体基板407の反りの形状に近似し、略同一化する。例えば、基板載置面408a及び均熱板415の基板ホルダー408と対向する面をそれぞれ格子状に複数の面に分割し、各分割面と対向する半導体基板407との距離が略同一になるよう隣接する分割面に段差(ステップ)を持たせて階段状に加工することで、均熱板415からの熱伝導により、基板載置面408aが面内で略均一に加熱され、基板載置面408aからの輻射熱により半導体基板407を基板面内で略均一に加熱することができる。このとき、基板載置面408a及び均熱板415の基板ホルダー408と対向する面は同一に加工する必要はなく、半導体基板407が面内で略均一に加熱されるようにそれぞれの形状を加工しても良い。
また、基板ホルダー408上面には基板ホルダー408の回転中心に対して等しい円周角で第1凸部405が4点設けられ、これら第1凸部405が半導体基板407をフローティング状に支持する。これにより、半導体基板407毎に基板ホルダー408との接触度合いが異なることに起因して、半導体基板407の表面温度が基板面内で不均一になるのを防ぐことができる。このとき、掘り込み領域がY方向に形成された半導体基板407を2点の第1凸部405でY方向に支持するとともに、残り2点の第1凸部405で掘り込み領域と垂直方向であるX方向に支持する。
また、第1凸部405は、薄膜形成による半導体基板407の変形時に基板ホルダー408と半導体基板407とが接触しない程度に十分高さを有している。具体的には、第1凸部405は約100μmの高さを有している。
また、輻射熱は距離の2乗に反比例するが、本実施形態の基板載置面408aは半導体基板407の反りの形状と略同一であるため、基板載置面408aと半導体基板407間の距離により、基板面内における基板載置面408aから半導体基板407への輻射熱による加熱分布の強弱は変化しない。このため、第1凸部405の高さを低く調節して、基板面内における基板載置面408aからの輻射熱により半導体基板407を強く加熱することができる。また、第2凸部406についても第1凸部405と同様に、均熱板415と基板ホルダー408との対向する面の距離が面内において略同一であるため、第2凸部406の高さを低く調節して、基板面内における均熱板415からの輻射熱により基板ホルダー408を強く加熱することができる。
ここで、特許文献(特開2006−134926)に開示された作製方法と同様の方法により、Y方向に延在する掘り込み領域が350μmの間隔を隔ててX方向に周期的に複数形成され、掘り込み領域のY方向のオフ角θaが−0.33°、X方向のオフ角θbが−0.06°、掘り込み領域の開口幅が3μm、深さが3μmに加工された半導体基板407を上記第4実施形態のMOCVD装置401の第1凸部405が設けられた基板ホルダー408上に載置し、MOCVD法により、半導体基板407を所定の成長条件で半導体基板407上に複数の窒化物半導体薄膜から成る窒化物半導体成長層を積層した。
このようにして窒化物半導体成長層が形成された半導体基板407をチップ状に分割して窒化物半導体レーザ素子を複数作成し、各窒化物半導体レーザ素子の分割前の半導体基板407における発振波長面内分布を図20のグラフにまとめた。図20は図17に示したX−X’線に沿った発振波長の面内分布である。図20のグラフより、窒化物系半導体レーザ素子の波長面内分布の標準偏差σをσ=0.1nmのバラツキに抑えることができ、基板毎の波長は標準偏差σに最大σ=2.5nmのバラツキがあった。
また、均熱板の基板ホルダーと対向する面を平面状に形成するとともに、載置面の形状が半導体基板の反りの形状に関係なく平面状に形成された基板ホルダーを用いて窒化物半導体成長層を積層して、窒化物半導体レーザ素子を複数作成し、各窒化物半導体レーザ素子の分割前の半導体基板における発振波長の面内分布の標準偏差σはσ=1.37nmのバラツキがあった。
すなわち、上述のように、薄膜形成が行われた後、変形する半導体基板407の反りの形状と略同一形状に基板載置面408a及び均熱板415の基板ホルダー408と対向する面を加工することにより、基板ホルダー408に半導体基板407を載置して、成膜原料成分を含有する原料ガスが半導体基板407表面で接触して反応・成膜した場合、薄膜形成が行われ半導体基板407が変形した後、基板面内における半導体基板407と基板載置面408aとの距離および基板載置面408aと均熱板415の基板ホルダー408と対向する面との距離が略均一になる。また、均熱板415上には第2凸部406が4点設けられ、これら第2凸部406が基板ホルダー408をフローティング状に支持している。これにより、均熱板315からの輻射熱により基板載置面408aが面内で略均一に加熱され、基板載置面408aからの輻射熱により半導体基板407を基板面内で略均一に加熱され、その後、成長する化合物半導体薄膜の結晶性および層厚が基板全域にわたり均一化し、作製される窒化物系化合物半導体素子の発振波長のバラツキを抑えることができる。