JP2010125506A - 上ノズルの配置構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】ノズル孔が扁平形状とされた上ノズルについて、溶融金属容器から流出する溶融金属に含まれるスラグの混入量が極小となる最適配置を示す上ノズルの配置構造を提供する。
【解決手段】溶融金属容器11の底部に設置された上ノズルに形成されているノズル孔10の平断面を、少なくとも上端部において長軸12と短軸を有する扁平形状とし、ノズル孔10の中心P及び溶融金属容器11の中心Cを通る直線13とノズル孔10の長軸12とがなす鋭角側の角度Rを+30°〜−30°とする。これにより、溶融金属容器11から流出する溶融金属に含まれるスラグの混入量を最小とすることができる。
【選択図】図1
【解決手段】溶融金属容器11の底部に設置された上ノズルに形成されているノズル孔10の平断面を、少なくとも上端部において長軸12と短軸を有する扁平形状とし、ノズル孔10の中心P及び溶融金属容器11の中心Cを通る直線13とノズル孔10の長軸12とがなす鋭角側の角度Rを+30°〜−30°とする。これにより、溶融金属容器11から流出する溶融金属に含まれるスラグの混入量を最小とすることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、溶融金属容器の底部に設置される上ノズルの配置構造に関する。
溶融金属容器の底部に設置された上ノズルのノズル孔から溶融金属を流出(出湯)させる際、溶融金属容器中の溶融金属が少なくなる鋳込み末期において、ノズル孔の周りを旋回する渦流が溶融金属に発生する。この渦流が溶融金属の浴面を浮遊する酸素ポテンシャル(平衡酸素圧)の高いスラグを巻き込むと、溶融金属中のAl等、酸素と結合しやすい金属が酸化されて鋼中介在物となり、疵や割れ等の欠陥の原因となる。そのため、溶融金属容器内スラグの流出を極力抑えることが必要となる。
例えば、出湯に伴うスラグの流出を抑える手段として、スラグを検出する装置が従来より知られており、特許文献1には、送信コイルと受信コイルを納めた非磁性のカセットを取鍋(溶融金属容器)からの溶鋼(溶融金属)の流下路を囲むかたちで取り付け、流下溶鋼中に含まれるスラグによる磁気変化を検知することにより、流下溶鋼中のスラグを検出する装置が開示されている。
また、特許文献2には、スラグの連行を助成する中空渦流の発生を効果的に阻止するため、湯出し通路(ノズル孔)の平断面が少なくとも溶湯入口面においてスリット状あるいは楕円状に形成した湯出し通路の発明が開示されている。
しかし、特許文献1のように、磁気変化を利用して溶鋼排出とスラグ排出との境目を見いだそうとする試みは、実操業において各社とも長年続けてきているが、満足な結果が得られていない。これは、渦流が形成され、溶鋼とスラグが同時に排出される状態では、明確な境目を判別することが困難なためであると考えられる。
取鍋からの出湯における長年にわたる重要な技術課題は、溶鋼を完全に排出して歩留まりを向上させることと、溶面に浮いているスラグを極力排出しないようにして溶鋼の清浄性を維持することの両方を如何に完全に行うかということである。しかし、溶鋼の清浄性が厳しく要求される場合は、溶鋼を取鍋中に少量残してスラグを極力排出しないようにして対処しなければならず、歩留まりが犠牲となっていた。一方、コストを低減するため歩留まりを重視する場合は、取鍋に残す溶鋼の量を抑えなければならず、スラグの巻き込みによる溶鋼の清浄性低下を犠牲にしなければならなかった。従って、この二律背反する課題を解決することは困難であると考えられていた。
本願発明者は、その原因をいろいろ研究する中で、取鍋からの溶鋼排出末期に、渦流が鍋内に発生し、下層の溶鋼と上層のスラグが渦流によって同時に排出している実態を発見した。そして、この渦流の発生を防止できれば、上記二律背反課題を解消できると考え、特許文献2に記載されている上ノズルに着目した。
特許文献2には、流出する溶湯の円状流れが湯出し通路平断面のスリット状構成によって最初から阻止されるので、中空渦流が全く発生しないと記載されている。しかしながら、本願発明者は、上ノズルのノズル孔の形状をスリット状あるいは楕円状にした場合でも、溶融金属容器内におけるノズル孔の配置の違いによって、溶融金属容器から流出する溶融金属に含まれるスラグの混入量に大きな差が生じることを発見した。
特許文献2には、流出する溶湯の円状流れが湯出し通路平断面のスリット状構成によって最初から阻止されるので、中空渦流が全く発生しないと記載されている。しかしながら、本願発明者は、上ノズルのノズル孔の形状をスリット状あるいは楕円状にした場合でも、溶融金属容器内におけるノズル孔の配置の違いによって、溶融金属容器から流出する溶融金属に含まれるスラグの混入量に大きな差が生じることを発見した。
本発明はかかる知見に基づいてなされたものであって、ノズル孔が扁平形状とされた上ノズルについて、溶融金属容器から流出する溶融金属に含まれるスラグの混入量が極小となる最適配置を示す上ノズルの配置構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る上ノズルの配置構造は、溶融金属容器の底部に設置された上ノズルに形成されているノズル孔の平断面が、上端部において長軸と短軸を有する扁平形状とされ、前記ノズル孔の中心及び前記溶融金属容器の中心を通る直線と前記ノズル孔の長軸とがなす角度が+30°〜−30°であることを特徴としている。
ここで、ノズル孔の中心及び溶融金属容器の中心を通る直線とノズル孔の長軸とがなす角度(以下では、「振り角度」と呼ぶことにする。)について、図1を用いて説明する。
扁平形状とされたノズル孔10の中心をP、溶融金属容器11の中心をCとすると、P及びCを通る直線13とノズル孔10の長軸12とがなす鋭角側の角度Rがノズル孔10の振り角度となる。
なお、図1では、溶融金属容器11の平面形状を円形としたが、これに限定されるものではなく、楕円形や矩形などでもよい。また、長軸と短軸を有する扁平形状としては、長円形や楕円形あるいはコーナー部をアールにした矩形などが挙げられる。
扁平形状とされたノズル孔10の中心をP、溶融金属容器11の中心をCとすると、P及びCを通る直線13とノズル孔10の長軸12とがなす鋭角側の角度Rがノズル孔10の振り角度となる。
なお、図1では、溶融金属容器11の平面形状を円形としたが、これに限定されるものではなく、楕円形や矩形などでもよい。また、長軸と短軸を有する扁平形状としては、長円形や楕円形あるいはコーナー部をアールにした矩形などが挙げられる。
ノズル孔は通常、スライディングノズル装置の設置位置を考慮して溶融金属容器の周縁部に設けられる。溶融金属容器の周縁部に、平断面が扁平のノズル孔を設けた場合、鋳込み末期になると、溶融金属容器の中心部から周縁部に向かう流れが発生する。ノズル孔の振り角度を90°、即ち溶融金属流の向きと直交する方向にノズル孔の長軸を配置した場合、溶融金属流に面するノズル孔の幅は、ノズル孔が同断面積の真円の場合に比べて広くなる。このため、ノズル孔に流れ込む溶融金属は、ノズル孔が同断面積の真円の場合に比べて増大し、併せて溶融金属に含まれるスラグ量も増大する。一方、ノズル孔の振り角度を0°、即ち溶融金属流の向きにノズル孔の長軸を配置した場合、溶融金属流に面するノズル孔の幅は、ノズル孔が同断面積の真円の場合に比べて狭くなる。このため、ノズル孔に流れ込む溶融金属量は、ノズル孔が同断面積の真円の場合に比べて減少し、併せて溶融金属に含まれるスラグ量も減少する。
本発明者が実施した水モデル試験によれば、ノズル孔の振り角度を0°とした場合がスラグ混入量が最小となるが、ノズル孔の振り角度を+30°〜−30°とすることにより、スラグ混入量を略10%以下とすることができる。
本発明に係る上ノズルの配置構造では、平断面が扁平形状とされたノズル孔の振り角度を+30°〜−30°とすることにより、溶融金属容器から流出する溶融金属に含まれるスラグの混入量を、ノズル孔が同断面積の真円の場合に比べて大幅に減少させることができる。
また、本発明によれば、渦流の発生を抑え、長時間にわたって、溶融金属とスラグが二層に分かれた状態を維持しながら溶融金属容器内の溶融金属を排出することができるので、溶融金属中のスラグを検出する装置を使用した場合、磁気変化によるスラグ検知の精度を飛躍的に向上させることができる。
また、本発明によれば、渦流の発生を抑え、長時間にわたって、溶融金属とスラグが二層に分かれた状態を維持しながら溶融金属容器内の溶融金属を排出することができるので、溶融金属中のスラグを検出する装置を使用した場合、磁気変化によるスラグ検知の精度を飛躍的に向上させることができる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図2は、本発明の一実施の形態に係る配置構造を有する上ノズル20が設置されている箇所における溶融金属容器11の底部縦断面を示したものである。上ノズル20は、その外径が上方に向けて縮径しており、ノズル受け台である羽口ブロック21の内部に嵌挿された状態で溶融金属容器11の底部に固定される。
上ノズル20に形成されているノズル孔10の平断面は、下端部10aのみ円形、その他の部分は、長軸と短軸を有する長円形や楕円形などの扁平形状とされており、円形とされたノズル孔10の内径は、扁平形状とされたノズル孔10の短軸側の幅と等しい。そして、図1に示すように、ノズル孔10の振り角度が+30°〜−30°、より好ましくは+15°〜−15°となるように、溶融金属容器11の底部に上ノズル20が設置される。
上ノズル20の直下には、溶融金属容器11の底面に固定された固定金枠24を介して固定プレート22が設置されており、上ノズル20のノズル孔10は、固定プレート22に形成されたノズル孔22aに接続されている。また、固定プレート22の底面には、ノズル孔23aを有し、固定プレート22の底面に密着して摺動する摺動プレート23が配置されており、摺動プレート23が固定プレート22の底面に沿って摺動することで、上ノズル20から流出する溶融金属の流量制御が行われる。
なお、固定プレート22及び摺動プレート23のノズル孔22a、23aの平断面は、それぞれ円形とされ、その内径は上ノズル20の下端部10aの内径と同一である。
なお、固定プレート22及び摺動プレート23のノズル孔22a、23aの平断面は、それぞれ円形とされ、その内径は上ノズル20の下端部10aの内径と同一である。
上ノズル20に続く内孔の平断面は、摺動プレート23の摺動によって、真円と楕円との間で変化する。しかし、スラグの巻き込みは、上ノズルに形成されているノズル孔の上端部の平断面形状や向きが重要であることから、後述する水モデル試験では、ノズル下端部の内孔形状を真円として試験を行った。
[水モデル試験]
次に、上ノズルの配置構造を決定するために実施した水モデル試験について説明する。
図3(A)、(B)に、溶融金属容器を模擬した水モデル試験用の水槽31を示す。水槽31は内径400mmの円筒容器である。水槽31の底部には下方に向けて突出するノズル30が設けられており、水槽31の中心Cからノズル孔33の中心Pまでの距離は150mmとされている。
なお、図示していないが、水槽31に貯えた水32の表面には擬似スラグを浮遊させている。擬似スラグとしては、比重1未満のプラスチック(例えばポリプロピレン)からなる、直径2mm、高さ2mm〜4mmの円柱状のペレットを用いた。
次に、上ノズルの配置構造を決定するために実施した水モデル試験について説明する。
図3(A)、(B)に、溶融金属容器を模擬した水モデル試験用の水槽31を示す。水槽31は内径400mmの円筒容器である。水槽31の底部には下方に向けて突出するノズル30が設けられており、水槽31の中心Cからノズル孔33の中心Pまでの距離は150mmとされている。
なお、図示していないが、水槽31に貯えた水32の表面には擬似スラグを浮遊させている。擬似スラグとしては、比重1未満のプラスチック(例えばポリプロピレン)からなる、直径2mm、高さ2mm〜4mmの円柱状のペレットを用いた。
水モデル試験に使用したノズル30は、ノズル孔33の平断面が円形で内径Dが20mmの円形ノズルと、ノズル孔33の平断面が楕円形で短軸の長さが10mm、長軸の長さが34mmの扁平ノズルAと、ノズル孔33の平断面が楕円形で短軸の長さが15mm、長軸の長さが24mmの扁平ノズルBの三種類とした。これら三種類のノズル孔33の平断面積は同一、且つノズル孔33の形状は上端から下端まで同一とした。
水モデル試験に使用した水槽31のサイズは一般的な溶融金属容器の約1/10であり、渦が発生しにくいことが予想された。そのため、以下の方法により意図的に渦を発生させて、試験を行った。
先ず、水槽31に上方からプロペラ(図示省略)を入れ、擬似スラグが浮遊している水32の中でプロペラを反時計回りに回転させることによって、反時計回りの方向に流れる水流Wを作り出した(図3(B)参照)。そして、プロペラを水槽31から取り出した後、ノズル孔33を開いて水槽31から水32を流出させた。
先ず、水槽31に上方からプロペラ(図示省略)を入れ、擬似スラグが浮遊している水32の中でプロペラを反時計回りに回転させることによって、反時計回りの方向に流れる水流Wを作り出した(図3(B)参照)。そして、プロペラを水槽31から取り出した後、ノズル孔33を開いて水槽31から水32を流出させた。
通常、浴高Hがノズル孔33の径と同じか、その倍くらいあたりから渦が発生する。そのため、水モデル試験においては、浴高Hが円形ノズルの内径Dと同じ20mmを基準として、ノズル孔33から流出する水32に含まれる擬似スラグの混入量(以下では、「スラグ混入量」と呼ぶ。)について、ノズル孔33の振り角度をパラメータとして調べた。なお、本試験では、反時計回りの鋭角側の角度Rを振り角度の正方向としている(図3(B)参照)。また、渦が発生する鋳込み末期に着目しているため、ノズル孔33は全開状態を想定している。
図4、図5に試験結果を示す。図4は、浴高Hが20mmとなる時点までにノズル孔33から流出した水32について、ノズル孔33の形状とスラグ混入量との関係を棒グラフで示したものである。同図より、ノズル孔33を扁平にした場合、振り角度を0°とすると、ノズル孔33が円形の場合に比べてスラグ混入量は大幅に減少するが、振り角度を90°とすると、ノズル孔33が円形の場合に比べてスラグ混入量が大幅に増加することがわかる。また、扁平ノズルBに比べて扁平度が大きい扁平ノズルAのほうが、その傾向は顕著になっている。
図5は、浴高Hが20mmとなる時点までに扁平ノズルAから流出した水32について、ノズル孔33の振り角度とスラグ混入量との関係を曲線グラフで示したものである。同図より、スラグ混入量を略10%以下とするためには、ノズル孔33の振り角度を+30°〜−30°とする必要があり、スラグ混入量を略8%以下とするためには、ノズル孔33の振り角度を+15°〜−15°とする必要があることがわかる。また、ノズル孔33の振り角度が0°の場合にスラグ混入量が極小となると共に、時計方向側にノズル孔33を振った場合に比べて、反時計方向側にノズル孔33を振ったほうがスラグ混入量は若干多くなることがわかる。
実際の操業では、浴高がノズル孔の径とほぼ同じ値になった時点で閉栓する。本試験において基準とした20mmという浴高は、円形ノズルの内径と同じ値であり、当該浴高で閉栓した場合、従来に比べて溶鋼中の介在物の量を大幅に低減できることは明らかである。
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
10:ノズル孔、10a:下端部、11:溶融金属容器、12:長軸、13:直線、20:上ノズル、21:羽口ブロック、22:固定プレート、22a:ノズル孔、23:摺動プレート、23a:ノズル孔、24:固定金枠、30:ノズル、31:水槽、32:水、33:ノズル孔
Claims (1)
- 溶融金属容器の底部に設置された上ノズルに形成されているノズル孔の上端部の平断面が長軸と短軸を有する扁平形状とされ、前記ノズル孔の中心及び前記溶融金属容器の中心を通る直線と前記ノズル孔の長軸とがなす角度が+30°〜−30°であることを特徴とする上ノズルの配置構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008304934A JP2010125506A (ja) | 2008-11-28 | 2008-11-28 | 上ノズルの配置構造 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2008304934A JP2010125506A (ja) | 2008-11-28 | 2008-11-28 | 上ノズルの配置構造 |
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Family
ID=42326250
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JP2008304934A Pending JP2010125506A (ja) | 2008-11-28 | 2008-11-28 | 上ノズルの配置構造 |
Country Status (1)
Country | Link |
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Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS58107254U (ja) * | 1982-01-19 | 1983-07-21 | 日本鋼管株式会社 | タンデイツシユノズル |
JPH0952170A (ja) * | 1995-08-15 | 1997-02-25 | Nippon Steel Corp | 溶融金属容器 |
JP2001526119A (ja) * | 1997-12-19 | 2001-12-18 | エスエムエス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト | 溶融金属の供給装置 |
JP2003501608A (ja) * | 1999-06-04 | 2003-01-14 | エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシヤフト | 溶融炉と鋳鍋の湯出し通路 |
-
2008
- 2008-11-28 JP JP2008304934A patent/JP2010125506A/ja active Pending
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