JP2010125487A - 重力鋳造用鋳型 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋳造品の品質を向上させるために、鋳型への溶湯の充填が完了した後直ちに鋳型を反転させることができ、かつ、溶湯が鋳型から流出することがない重力鋳造用鋳型を提供する。
【解決手段】溶湯7の供給口である湯口2と、該湯口2から供給された溶湯7を成形空間たる製品部5へ案内する湯道3と、が形成され、水平方向に軸支される反転軸10によって支持され、反転軸10回りに上下反転される反転工程を有する重力鋳造方法に用いられる鋳型1であって、湯口2の、反転工程において鋳型1から流出する溶湯7の流出経路となる部位である側面部2aと連通し、かつ、湯道3の内容積に比して大きい内容積を有する凹部たる貯溜部6が形成される構成とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋳造中に鋳型を上下方向に180度反転させる工程を含む重力鋳造方法に用いられる鋳型の技術に関する。
従来、鋳造工程の途中で鋳型を上下方向に180度反転させる工程を含む重力鋳造方法が知られており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。係る特許文献1に示されている従来技術では、湯口や湯道に連通して形成された押湯部に貯溜される溶湯によって押湯する構成としているが、鋳型を上下方向に180度反転させると、湯口や湯道に貯溜されている溶湯が排出されるため、こぼれ出た溶湯を再利用するために回収する作業に労力が費やされていた。
また、従来の一般的な反転工程を含む重力鋳造方法では、鋳型の中に溶湯が注入されると同時に溶湯の凝固が始まるため、溶湯の注入後できるだけ早く鋳型を上下方向に180度反転させることが望ましいとされている。しかしながら、鋳型の反転時には鋳型から溶湯を流出させないことが望ましいため、従来は湯口に蓋をしたり、また湯口表面の溶湯が凝固するのを待ったりしてから、鋳型を反転させていた。このため、反転工程を実施するタイミングが遅れてしまい、鋳造品の品質に悪影響を及ぼす場合があった。
特開平7−80628号公報
本発明は、係る現状を鑑みてなされたものであり、鋳造品の品質を向上させるために、鋳型への溶湯の充填が完了した後直ちに鋳型を反転させることができ、かつ、溶湯が鋳型から流出することがない重力鋳造用鋳型を提供することを課題としている。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、溶湯の供給口である湯口と、該湯口から供給された溶湯を成形空間へ案内する湯道と、が形成され、水平方向に軸支される反転軸によって支持され、前記反転軸回りに上下反転される反転工程を有する重力鋳造方法に用いられる鋳型であって、前記湯口の、前記反転工程において前記鋳型から流出する溶湯の流出経路となる部位と連通し、かつ、前記湯道の内容積に比して大きい内容積を有する凹部たる貯溜部が形成されるものである。
請求項2においては、前記貯溜部は、その一部、あるいは、その全体が、前記鋳型の構成素材に比して熱伝導率が大きい素材で構成されるものである。
請求項3においては、前記貯溜部は、前記湯道の口径に比して大きい幅に形成され、かつ、前記湯道の口径に比して小さい高さに形成されるものである。
請求項4においては、前記貯溜部は、楔体状の空隙部として形成されるものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、反転工程時に、湯口および湯道に貯溜されていた溶湯を、貯溜部によって、受容することができ、鋳型から溶湯が流出することを防止できる。またこれにより、鋳型に溶湯を注入した後直ちに反転工程を実施することができる。
請求項2においては、貯溜部に流入した溶湯を、早期に凝固させることができ、これにより、反転工程時に、鋳型から溶湯が流出することを確実に防止できる。
請求項3においては、貯溜部に流入した溶湯が板状に拡散されるため、溶湯をより確実に早期に凝固させることができる。
請求項4においては、貯溜部で凝固した溶湯を容易に回収することができる。
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の第一実施例に係る重力鋳造用鋳型の全体構成について、図1および図2を用いて説明をする。図1は本発明の一実施例に係る鋳型の全体構成(注入工程時の姿勢)を示す模式図、(a)側面断面図、(b)平面図、図2は本発明の一実施例に係る鋳型の全体構成を示す模式図、(a)反転途中の姿勢を示す側面断面図、(b)反転工程後の姿勢を示す側面断面図である。
図1(a)・(b)に示す如く、本発明の第一実施例に係る重力鋳造用鋳型である鋳型1は、主に鋳砂を用いて成形されるものであり、湯口2、湯道3、押湯部4、製品部5および貯溜部6等が形成されている。また、鋳型1は、反転軸10によって、回転可能に支持されており、反転軸10を軸心として上下方向に180度反転可能に構成されている。
湯口2は、鋳型1に対して溶湯を供給するための供給口となる略擂鉢状に形成された部位である。また、湯道3は、湯口2と押湯部4とを連通する部位として形成される流路であり、湯口2から注入された溶湯を流通させて、押湯部4に連設される製品部5へ案内する役割を果たすものである。
押湯部4は、図1(a)に示す鋳型1に溶湯が注入される注入工程時の姿勢において、成形空間となる製品部5の下方にあたる部位に形成される空隙部であり、湯道3と製品部5とを連通する部位として形成されている。そして押湯部4は、図2(b)に示す反転工程後の姿勢においては、製品部5の上方に位置し、押湯部4に充填された溶湯によって製品部5を押湯する役割を果たすものである。
湯道3と押湯部4の境界部にはフィルター8が配設されており、湯道3から押湯部4に流入する溶湯に抵抗を付与して溶湯の流れを整流するとともに、溶湯に混入した異物等を捕集する役目を果たして、鋳造品の品質確保に寄与している。そして、湯口2から注入された溶湯は、湯道3、フィルター8および押湯部4を介して製品部5に供給される。
製品部5は、最終製品である鋳造品の製品形状をなす空隙部であり、製品部5に注入された溶湯を、製品部5内で凝固させることによって、凝固された溶湯を製品形状に形成するための部位である。
また、鋳型1には、図1(a)に示す鋳型1に溶湯が注入される注入工程時の姿勢において、製品部5の上方に位置する部位に形成される空隙部たる貯溜部6が形成されている。
貯溜部6は、湯口2に対して、該湯口2の側面部2aの途中において連通している。そして貯溜部6は、図2(b)に示す反転工程後の姿勢においては、製品部5の下方に位置し、湯口2および湯道3から流出した溶湯を流入させて受容する役割を果たすものである。
また貯溜部6は、図1(a)に示すように、側面視において、略楔体状の空隙部として形成されている。これにより、貯溜部6に貯溜された溶湯が凝固した後に、貯溜部6から容易に離型することができる構成としている。
即ち、本発明の一実施例に係る鋳型1では、貯溜部6は、楔体状の空隙部として形成されるものである。
このような構成により、貯溜部6で凝固した溶湯を容易に回収することができる。
さらに、貯溜部6は、貯溜部6に流入した溶湯が、できる限り薄い厚みで、かつ、広範囲に拡散するような、内部形状とすることが望ましいため、貯溜部6の幅Wは、湯道3の口径rに比して大きく、かつ、貯溜部6の高さHは、湯道3の口径rに比して小さい空隙部として形成されている。このような構成により、貯溜部6に流入した溶湯は、平板状に薄く広範囲に拡散されるため、効果的に放熱(冷却)がなされて、確実に早期に凝固される。
また、貯溜部6の内容積は、湯道3の内容積に比して大きい容積が確保されている。現実的には、湯口2に貯溜される分の溶湯の体積も考慮して、湯道3の内容積にさらに余裕を加えた容積が確保されている。そして、反転工程時において、湯口2から湯道3にかけて貯溜される溶湯が流出しても、流出した全ての溶湯を貯溜部6によって受容できる構成としている。
貯溜部6には、鋳型1を形成する素材(例えば、鋳砂(熱伝導率0.8W/(m・k)程度))に比して十分大きな熱伝導率を有する素材(例えば、銅(熱伝導率398W/(m・k)程度))によって形成される冷却部材9が配設されており、貯溜部6に流入した溶湯を冷却部材9と接触させることによって、直ちに溶湯を凝固させることができる。
ここで、その他の実施例に係る重力鋳造用鋳型について、図3を用いて説明をする。図3は貯溜部の構成が異なる本発明の一実施例に係る鋳型の全体構成を示す模式図、(a)第二実施例を示す側面断面図、(b)第三実施例を示す側面断面図、(c)第四実施例を示す側面断面図である。
図3(a)には、本発明の第二実施例に係る鋳型11を示しており、図3(b)には、本発明の第三実施例に係る鋳型21を示しており、図3(c)には、本発明の第四実施例に係る鋳型31を示している。ここで示す各鋳型11・21・31は、各貯溜部16・26・36の態様が異なっているが、その他の部位の構成は、本発明の第一実施例に係る鋳型1の構成と共通している。
本発明の第一実施例に係る鋳型1では、貯溜部6全体を冷却部材9によって形成する構成としているが、例えば、図3(a)・(b)に示す本発明の第二実施例および第三実施例に係る各鋳型11・21のように、各貯溜部16・26の一部を冷却部材9によって構成することも可能である。さらに、貯溜部の内部形状は、略楔体状とする構成に限定するものではなく、例えば、図3(c)に示す本発明の第四実施例に係る鋳型31のように、貯溜部36を略直方体状の凹部として形成することも可能である。
尚、図示は省略しているが、その他の第二・第三・第四の各実施例に示す各鋳型11・21・31においても、各貯溜部16・26・36の幅Wは、湯道3の口径rに比して大きく、かつ、貯溜部16・26・36の高さHは、湯道3の口径rに比して小さい空隙部として形成されている。また、貯溜部の形状は、本実施例で示した4つの態様に限定するものではなく、鋳型の状態に合わせて適宜設定することができる。
即ち、本発明の一実施例に係る各鋳型1・11・21・31では、各貯溜部6・16・26・36は、湯道3の口径rに比して大きい幅Wに形成され、かつ、湯道3の口径rに比して小さい高さHに形成されるものである。
このような構成により、各貯溜部6・16.・26・36に流入した溶湯が薄く板状に拡散されるため、溶湯をより確実に早期に凝固させることができる。
また、図3(b)・(c)に示すように、冷却部材9を各鋳型21・31の外部に露出させて、冷却部材9を外気と触れさせる配置とすれば、冷却部材9による放熱効率をより高めることができ、これにより、貯溜部6に流入した溶湯をより確実に放熱(冷却)させることが可能となる。
即ち、本発明の一実施例に係る各鋳型1・11・21・31では、各貯溜部6・16・26・36は、その一部、あるいは、その全体が、各鋳型1・11・21・31の構成素材(本実施例では鋳砂)に比して熱伝導率が十分高い素材(本実施例では銅)で構成されるものである。
このような構成により、各貯溜部6・16・26・36に流入した溶湯を、早期に凝固させることができ、これにより、反転工程時に、各鋳型1・11・21・31から溶湯が流出することを確実に防止できる。
次に、本発明の一実施例に係る鋳型1を用いた重力鋳造方法について、図4および図5を用いて説明をする。図4は本発明の一実施例に係る鋳型を用いた重力鋳造方法(注入工程)を示す模式図、(a)注入状態を示す側面断面模式図、(b)注入完了状態を示す側面断面模式図、図5は本発明の一実施例に係る鋳型を用いた重力鋳造方法(反転工程〜押湯工程)を示す模式図、(a)反転状態を示す側面断面模式図、(b)反転完了後の押湯状態を示す側面断面模式図である。尚、ここでは、本発明の第一実施例に係る鋳型1を用いた場合を例示して説明を行うが、前述した各鋳型11・21・31を用いても同様の重力鋳造方法とすることができる。
(注入工程)
図4(a)に示す如く、鋳型1に対して溶湯7を注入する注入工程では、湯口2から溶湯7が注入される。湯口2から注入された溶湯7は、湯道3、フィルター8および押湯部4を介して製品部5に供給される。
そして、図4(b)に示す如く、所定量の溶湯7が鋳型1に注入され、製品部5が溶湯7によって充満された状態になると、溶湯7の供給を停止する。
(反転工程)
図5(a)に示す如く、鋳型1を上下180度反転させる反転工程では、鋳型1に対して所定量の溶湯7が注入されると、直ぐに反転軸10回りに鋳型1が回転される。この回転時に、鋳型1の傾斜角がある一定以上の角度になると、湯口2および湯道3に貯溜されていた溶湯7が湯口2の側面部2aの傾斜に沿って重力の作用によって自然に流出し始める。
本発明の第一実施例に係る鋳型1では、側面部2aと連通する貯溜部6が形成されているため、この側面部2aに沿って流出する溶湯7は、貯溜部6へと流入する。そして、貯溜部6の内容積は、湯道3の内容積に比して大きい容積としているため、湯道3(厳密には、湯口2および湯道3)に貯溜されていた溶湯7は、反転工程の間に全て貯溜部6へと流入する。
このとき、貯溜部6へと流入した溶湯7は、貯溜部6の内部形状に沿って薄く広範囲に拡散されるとともに、冷却部材9と接触することによって、確実に放熱され、直ちに凝固される。
(押湯工程)
そして、図5(b)に示す如く、鋳型1を180度上下に反転させた状態とし、押湯部4内の溶湯7に作用する重力によって製品部5を押湯しながら製品部5内の溶湯7を凝固させる。すると、製品部5内の溶湯7が凝固するのに伴って体積が収縮しても、その収縮した体積分の溶湯7を押湯部4から補給することができ、品質の安定した鋳造品を得ることができる。
このとき、本発明の第一実施例に係る鋳型1では、貯溜部6へと流入した溶湯7は、反転工程の間に直ぐに放熱(冷却)され、確実に凝固されるため、鋳型1が180度上下に反転された状態でも、鋳型1の外部に溶湯7が流出することがない。このように、本発明の一実施例に係る鋳型1を用いることによって、鋳型1への溶湯7の充填が完了した後直ちに鋳型1を反転させることができ、かつ、溶湯7が鋳型1から流出することがないため、鋳造品の品質を向上させることができる。
即ち、本発明の一実施例に係る鋳型1は、溶湯7の供給口である湯口2と、該湯口2から供給された溶湯7を成形空間たる製品部5へ案内する湯道3と、が形成され、水平方向に軸支される反転軸10によって支持され、反転軸10回りに上下反転される反転工程を有する重力鋳造方法に用いられる鋳型1であって、湯口2の、反転工程において鋳型1から流出する溶湯7の流出経路となる部位である側面部2aと連通し、かつ、湯道3の内容積に比して大きい内容積を有する凹部たる貯溜部6が形成されるものである。
このような構成により、反転工程時に、湯口2および湯道3に貯溜されていた溶湯7を、貯溜部6によって、受容することができ、鋳型1から溶湯7が流出することを防止できる。またこれにより、鋳型1に溶湯7を注入した後直ちに反転工程を実施することができる。
本発明の一実施例に係る鋳型の全体構成(注入工程時の姿勢)を示す模式図、(a)側面断面図、(b)平面図。 本発明の一実施例に係る鋳型の全体構成を示す模式図、(a)反転途中の姿勢を示す側面断面図、(b)反転工程後の姿勢を示す側面断面図。 貯溜部の構成が異なる本発明の一実施例に係る鋳型の全体構成を示す模式図、(a)第二実施例を示す側面断面図、(b)第三実施例を示す側面断面図、(c)第四実施例を示す側面断面図。 本発明の一実施例に係る鋳型を用いた重力鋳造方法(注入工程)を示す模式図、(a)注入状態を示す側面断面模式図、(b)注入完了状態を示す側面断面模式図。 本発明の一実施例に係る鋳型を用いた重力鋳造方法(反転工程〜押湯工程)を示す模式図、(a)反転状態を示す側面断面模式図、(b)反転完了後の押湯状態を示す側面断面模式図。
符号の説明
1 鋳型
2 湯口
3 湯道
4 押湯部
5 製品部
6 貯溜部
7 溶湯
8 フィルター
9 冷却部材
10 反転軸

Claims (4)

  1. 溶湯の供給口である湯口と、
    該湯口から供給された溶湯を成形空間へ案内する湯道と、
    が形成され、
    水平方向に軸支される反転軸によって支持され、
    前記反転軸回りに上下反転される反転工程を有する重力鋳造方法に用いられる鋳型であって、
    前記湯口の、前記反転工程において前記鋳型から流出する溶湯の流出経路となる部位と連通し、かつ、
    前記湯道の内容積に比して大きい内容積を有する凹部たる貯溜部が形成される、
    ことを特徴とする重力鋳造用鋳型。
  2. 前記貯溜部は、
    その一部、あるいは、その全体が、
    前記鋳型の構成素材に比して熱伝導率が大きい素材で構成される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の重力鋳造用鋳型。
  3. 前記貯溜部は、
    前記湯道の口径に比して大きい幅に形成され、かつ、
    前記湯道の口径に比して小さい高さに形成される、
    ことを特徴とする請求項2に記載の重力鋳造用鋳型。
  4. 前記貯溜部は、
    楔体状の空隙部として形成される、
    ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の重力鋳造用鋳型。
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