JP2010121835A - 減圧超流動ヘリウム冷却熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【課題】HeII冷却熱交換器の熱伝達特性を大幅に改善する。
【解決手段】ヘリウム貯槽から供給されて液体ヘリウム槽5に貯えられた液体ヘリウムを、圧縮機2で吸気して減圧し、λ点(2.18K、5.04kPa)より低温低圧の減圧HeIIに維持する。冷却対象液体ヘリウムを導く銅管周囲に、大径銅円板と、円周上に複数の切り欠きがある厚さ0.5mm以下の小径銅円板とを交互に重ねて取り付けた熱交換器4の銅管に、冷凍機1から供給される冷却対象のHeIを通す。減圧HeIIを熱交換器4の大径銅円板と小径銅円板との間の狭小流路に満たす。減圧HeIIが飽和HeII状態と過熱HeII状態と過熱HeI状態と沸騰状態とを繰り返しながら熱を吸収する沸騰冷却サイクルを、狭小流路中の切り欠きで誘起して、冷却対象ヘリウムを効率的に冷却する。切り欠きの代わりに網リングやスリット等の微細空間部を設けてもよい。
【選択図】図1
【解決手段】ヘリウム貯槽から供給されて液体ヘリウム槽5に貯えられた液体ヘリウムを、圧縮機2で吸気して減圧し、λ点(2.18K、5.04kPa)より低温低圧の減圧HeIIに維持する。冷却対象液体ヘリウムを導く銅管周囲に、大径銅円板と、円周上に複数の切り欠きがある厚さ0.5mm以下の小径銅円板とを交互に重ねて取り付けた熱交換器4の銅管に、冷凍機1から供給される冷却対象のHeIを通す。減圧HeIIを熱交換器4の大径銅円板と小径銅円板との間の狭小流路に満たす。減圧HeIIが飽和HeII状態と過熱HeII状態と過熱HeI状態と沸騰状態とを繰り返しながら熱を吸収する沸騰冷却サイクルを、狭小流路中の切り欠きで誘起して、冷却対象ヘリウムを効率的に冷却する。切り欠きの代わりに網リングやスリット等の微細空間部を設けてもよい。
【選択図】図1
Description
本発明は、減圧超流動ヘリウム冷却熱交換器に関し、特に、超流動ヘリウムの優れた冷却特性を利用した高密度な減圧超流動ヘリウム冷却熱交換器に関する。
従来、液体ヘリウムは、超伝導磁石などを極低温に冷却するための冷却材として広く利用されている。ヘリウムは、図15(a)のヘリウム相図に示すように、大気圧下では4.2Kで液体ヘリウムになる。液体ヘリウムを飽和蒸気圧曲線に沿って圧力を下げながら冷却すると、λ点(2.18K、5.04kPa)で2次の相転移を起こして超流動ヘリウムになる。しかし、λ点以下でいきなり全成分が超流動ヘリウムになるわけではない。超流動ヘリウムの粘性を測定すると有限の粘性も示すことから、常流動ヘリウムと超流動ヘリウムが混在していて、図15(b)の二流体モデルのグラフに示すように、λ点から温度が低下するにつれて、超流動ヘリウムの割合が徐々に増えていくと考えられている。
常流動ヘリウムのみが存在する相をHeI相とよび、HeI相の常流動ヘリウムを略してHeIという。常流動ヘリウムと超流動ヘリウムが混在している相をHeII相とよぶことにする。HeII相の液体ヘリウムを略してHeIIという。HeII相中の常流動ヘリウムのみを区別するときは、常流体とよぶ。HeII相中の超流動ヘリウムのみを区別するときは、超流体とよぶ。λ点圧力より高い圧力下のHeIIを、加圧HeIIとよぶ。λ点圧力より低い圧力下のHeIIを、減圧HeIIとよぶ。飽和蒸気圧下の液体ヘリウムを飽和HeIまたは飽和HeIIとよぶ。沸点より低温に冷却された液体ヘリウムを強冷却HeIまたは強冷却HeIIとよぶ。沸点より高温に加熱されても液体のままである準安定状態の液体ヘリウムを過熱HeIまたは過熱HeIIとよぶ。気体のヘリウムを略してHe(G)とよぶ。
HeII相では、通常の音波(第一音波)のほかに、第二音波と第三音波と第四音波がある。第一音波は、超流動成分と常流動成分が同相で振動する通常の音波である。第二音波は、温度が振動する波である。第二音波では、2つの成分は互いに逆相で振動するため、全体としての流れも圧力振動も存在しない。第三音波は、薄膜状超流動ヘリウムでのみ起こる波である。第四音波は、0.1μm程度の隙間に閉じこめられた超流動成分のみが振動する圧力波である。
2つの容器を比較的太い管で繋いでHeIIで満たして、一方の容器のヘリウムをヒーターで加熱すると、超流体の流れが生じる。この流れは、常流体の流れとは反対向きである。これを、熱対向流という。HeIIにおけるこの流れは、極めて効率よく熱を運ぶ。これを超熱伝導性という。図15(c)に、HeIとHeIIと銅の熱伝導率を示す。HeIでは、熱は通常通り減衰拡散することしかできないが、HeIIでは熱伝導の効率がよいから、温度が第二音波として伝播できる。
密閉容器の中に、大気圧で4.2KのHeIを満たして排気して減圧してゆくと、HeIは激しく沸騰しながら、飽和蒸気圧曲線に沿って冷却されてゆく。HeIの熱伝導率が小さいために、HeI内部の温度が不均一になり、温度が高くなった部分で蒸発(気化)が起こって泡ができる。しかし、排気を継続して温度がλ点温度になると沸騰が突然おさまり、鏡のように平坦な液面に変わる。また、この状態で液中に置いたヒーターを加熱しても、なお沸騰する様子はない。ヒーターを赤熱させても、ヒーター表面にだけ僅かに気泡ができ、密度の揺らぎによるモヤモヤが見えるだけで泡は発生しない。これは、超熱伝導によって液体の温度が究極的に一様になり、熱が直ちに液面に到達し、液面のみで蒸発が起こるためである。
このように、HeIIは、超熱伝導性という優れた熱伝達特性を有するので、超伝導磁石の冷却に利用されている。例えば、HeIIを減圧した減圧HeIIを冷却材に用いて、大気圧に加圧したHeIIを生成する熱交換器がある(Bon Mardion G. Claudet G., Verdier J. Proc ICEC6 1976:159-62.)。この場合、減圧HeIIの無沸騰状態における熱伝達率(単位冷却面積当たりの除熱量)を利用している。したがって、飽和蒸気圧温度に達する臨界熱流束Qsが設計基準の上限である。加圧HeIIは、加速器、核磁気共鳴装置、ハイブリッド磁石などに使われているが、いずれも直流電流で動作され、発熱が比較的小さい装置である。HeIIを沸点より低温に冷却した強冷却HeIIは、いっそう優れた冷却特性をもつので、超伝導磁石の冷却材として頻繁に用いられてきている。強冷却HeIIでは、コイルの電気絶縁層間に形成される微小な空間を冷却流路とすることで、効率的に冷却できる。すなわち、HeIIに特有な超熱伝導性と大熱容量と粘性零の性質を総合的に利用することで、超伝導磁石をさらに低温にして、超伝導磁石の性能を上げることができる。以下に、これに関連する従来技術の例をいくつかあげる。
特許文献1に開示された「超流動ヘリウムを製造する方法」は、大型の真空ポンプを使わずに加圧HeIIを製造することで、真空ポンプの潤滑油による汚染を本質的に回避する方法である。3He(G)を圧縮する。圧縮した3He(G)を、4HeIで冷却する。冷却した3He(G)を膨張させて2.18K以下まで冷却する。2.18K以下の3Heで4HeIを冷却して4HeIIにする。
特許文献2に開示された「加圧超流動クライオスタット」は、全高を大幅に低くして小型化低コスト化したものである。中空円環筒状の加圧HeII槽を最も内側に、中空円環筒状の飽和HeI槽を中間に、中空円環筒状の液体窒素槽を最も外側にして、真空断熱容器内に同心円状に配置する。飽和HeI槽と加圧HeII槽を連通管路で結ぶ。連通管路を、並列の2本の管に分岐し、一方に逆止供給弁を設け、他方に圧力放出弁を設ける。これらを、熱交換器とともに真空断熱容器内に配置する。外部のHeI供給源と飽和HeI槽を、断熱管路で接続する。断熱管路に、He(G)ボンベを分岐接続する。飽和HeI槽の飽和HeIをジュール・トムソン膨張させて、熱交換器で加圧HeII槽内の加圧HeIIを冷却する。
特許文献3に開示された「極低温冷却装置」は、加圧HeIIの良好な冷却特性を損なわずに予冷時間を短縮することができるものである。超電導コイルを収容した第1容器と、加圧HeIIが生成される第2容器との間を、複数の配管により接続する。予冷時に、一方の配管を通して、第2容器から第1容器に液体ヘリウムを送る。超電導コイルを冷却して蒸発したHe(G)を、他の配管を通して第1容器から第2容器に送る。
特許文献4に開示された「加圧HeIIクライオスタット」は、冷却器の冷却効率を、予冷熱交換器より向上させたものである。4.2KHeI槽底部のHeI取り込み口と主ジュール・トムソン弁との間に、副ジュール・トムソン弁と予冷器を設ける。予冷器を真空ポンプで減圧して冷却する。4.2KHeI槽から冷却器にHeIが流れ込むようにするために、予冷器温度を冷却器温度より僅かに高い温度に保つ。4.2KHeI槽から取り込まれたHeIは、副ジュール・トムソン弁でジュール・トムソン膨張して、2.2Kよりも低温の予冷器温度まで下がって予冷器に溜まる。予冷器に溜まったHeIは、主ジュール・トムソン弁でジュール・トムソン膨張して、冷却器に入る。このようにして、冷却器の効率を予冷熱交換器より高める。
特許文献5に開示された「ヘリウム槽中に超伝導磁石を設けたNMR磁石装置」は、強力な一様磁場を生成するものである。冷却装置は、第1槽と第2槽を備えている。第1槽に設けられている冷却器で、液体ヘリウムを、4.2Kよりはるかに低い1.8〜2.3Kに冷却して、第1槽中に4.2K以下の温度の強冷却HeIを保持し、その中に超伝導磁石を設ける。第2槽は、大気圧で4.2Kの飽和HeIを保持している。第1槽と第2槽は接続されていて、第1槽の強冷却HeIも大気圧とされている。
非特許文献1には、「HeII容器中の熱伝導への流路形状の影響」が報告されている。槽中における水平表面からHeIIへの熱伝導を調べた。長さ13mmの試験流路の一端を容器に接続して、他端をヘリウム槽に開放した。ほぼ空洞状の11種類の流路と、内径が1.9mmから13mmの6種類の丸管流路を用いた。ワイヤを詰めた流路を、毛細管流路として採用した。ワイヤを詰めた流路と丸くない管の径としては、等価径を用いた。極限熱流束は、熱伝導表面で膜沸騰が始まる点での熱流束として定義されるが、等価径が1.94mmのとき最大値を示し、等価径がさらに増加すると急速に減少した。単管流路の熱伝導能力は、等分割された管の流路と比較して低いことがわかった。
非特許文献2には、「加圧HeII流路における分布熱源から強冷却HeI層経由の熱伝導」が報告されている。強冷却HeI層は、加圧HeIIで満ちた流路中の加熱された大きな表面に接しており、沸騰臨界熱流束までKapitza領域の上の沸騰していない領域に広がっている。その上では沸騰の種が生じる。槽温度を下げると、沸騰臨界熱流束はλ臨界熱流束より急速に増大する。λ臨界熱流束では、加熱された表面の中心で超流動が破壊される。沸騰臨界熱流束の値は、流路の隙間が増大すると増大し、λ臨界熱流束と同様に、流路の方向と独立である。超伝導磁石の準安定化は、沸騰しない限界の沸騰臨界熱流束を考慮に入れることで、改善できる。
非特許文献3には、「強冷却HeII槽中の熱伝導の2段階相転移モデル」が報告されている。強冷却HeII槽中の熱伝導は、他の冷却材の熱伝導と比べて異なり、主に超流動特性に関連しており、また、He(G)とHeIと強冷却HeIIの3相にも関連している。He(G)とHeIの界面現象と、HeIと強冷却HeIIの界面現象を考察するための2段階相転移モデルを想定する。このモデルで、実験結果をうまく説明できる。
非特許文献4には、「λ遷移熱流束におけるHeII流路の形状効果」が報告されている。HeIIの流路が熱伝達特性、特にλ遷移熱流束と流路端の温度上昇に及ぼす効果を、実験と数値解析で調べた。流路の両端は、大気圧下の超流動ヘリウム槽に開放されている。流路への熱供給により、流路端で温度が上昇する。この温度上昇は、流路の縦横比が大きくなると増大する。温度上昇の増加は、λ遷移熱流束の減少をもたらす。温度上昇とλ遷移熱流束は、流路とHeII槽を考慮した2次元熱伝導方程式を解いて見積もられた。その結果によれば、超流動ヘリウム流路での温度分布は、流路端周りの2次元または3次元の熱流に影響される。特に大きな縦横比の流路で、影響が大である。
非特許文献5には、「2次元狭小流路中のHeIIを加熱して起こる相転移の可視化」が報告されている。透明平板ヒーターとガラス板で2次元狭小流路を構成した。2次元狭小流路中のHeIIの相転移を影絵法で可視化して、その数を調べた。液体-気体界面と、HeII-HeI界面と、過熱HeII-過熱HeI界面が、画像処理技術で分解能を高めることにより、はっきりと観察された。その結果、大気圧と飽和蒸気圧での膜沸騰の特徴的な様相が区別できた。さらに、2.1K以上での飽和HeII中の過熱HeII-過熱HeI界面が可視化された。
2006年春季低温工学・超電導学会(2D-a05)において、本発明者らにより、「HeII2次元流路における熱伝達特性の圧力依存性」が報告された。加圧HeII中の2次元流路においては、臨界熱流束以上で強冷却HeIが流路内加熱面を部分的に断熱することによって、熱伝達特性に中間状態をもたらす。同様に、飽和HeII中では、過熱HeIによる部分的断熱が中間状態をもたらすと考えられる。中間状態に転移する臨界熱流束を、HeII槽圧力依存性として測定し、異なるHe相が共存する場合の熱伝達機構の解明を行った。
2007年春季低温工学・超電導学会(1D-a09)において、本発明者らにより、「狭小2次元流路中の沸騰開始における圧力依存性」が報告された。平板透明ヒーター(酸化インジウム膜)とガラスにより形成された平行2次元流路を使用して、狭小2次元流路の可視化実験を行った。その結果として、沸騰開始期における気液界面のダイナミクスの圧力に対する変化を、大気圧〜飽和蒸気圧の広い範囲で画像計測した。
2007年度秋季低温工学・超電導学会(3D-a07)において、本発明者らにより、「狭小2次元流路中のHeII膜沸騰現象における蒸気泡挙動の変化」が報告された。大気圧下から飽和蒸気圧近傍の条件下において、透明ヒーターとガラス板によって形成された平行平板流路を用いた可視化実験により、熱流束・圧力に依存して変化する蒸気泡の挙動の特徴を調べた。狭小2次元流路中でのHeII沸騰現象は、開放空間中のそれとは異なる蒸気泡の挙動を見せる。
2007年度秋季低温工学・超電導学会(3D-a10)において、本発明者らにより、「HeII2次元流路における熱伝達特性−λ点圧力以下の混合状態」が報告された。HeII2次元流路における熱伝達特性は、浴槽圧力により大きく異なり、一般的にλ点圧力以下の方が良い。λ転移後に現れる混合状態に注目し、λ点圧力以下における熱伝達特性の機構を調べた。その結果では、過熱HeIIが過渡的に発生し、混合状態に影響している。過熱HeIも過渡的に発生している。
2007年度秋季低温工学・超電導学会(3D-a11)において、本発明者らにより、「HeII2次元流路における熱伝達特性−HeI相の影響」が報告された。加熱体に良導体を用いたHeII2次元流路における熱伝達特性には、同心円状にHeII相とHeI相、またはHeII相と過熱HeII相及び過熱HeI相が加熱面上に共存する中間状態が形成される。この中間状態において良導体加熱面上に広がるHeI相の大きさを温度計測から推定した。その結果では、HeI相と過熱HeI相の広がりがほぼ一致する。また、可視化されたHeI相の広がりとの比較を行った。
2007年度秋季低温工学・超電導学会(3D-a12)において、本発明者らにより、「良導体から成るHeII2次元流路における過熱相の安定性」が報告された。
しかし、上記従来の冷却装置では次のような問題がある。従来の熱交換器は、減圧HeIIにより加圧HeIIを生成する。これは、加圧HeII槽への熱流入が比較的小さい加速器のような装置には有効である。しかし、高速励磁による交流損失や放射線加熱等の熱負荷が大きい被冷却体に対しては、低温を維持することは困難である。このように、従来の熱交換器は、冷却対象の発熱量が小さい装置を対象としているため、急速励磁する超伝導磁石などのように、多量の発熱を伴う装置には不向きである。また、加圧強冷却HeIIを狭小流路に満たす方法でも、大きな熱流束では低温を維持できない。熱交換器に存在する無数の狭小流路では、加圧HeIIでもλ臨界熱流束(加圧HeIIからHeIになる熱流束)は低下し、冷却効率を上げることができない。
熱負荷が大きい被冷却体に対しては、加圧HeIIまたは低温のHeIを使った強制冷却が必要である。しかし、交流損失などによる大きな発熱をHeII冷却によって除去する方法はまだ確立していない。ITER計画においては、λ線温度近くまで冷却したHeIを強制冷却の冷却材とすることが要求されている。ところが、減圧HeIIを冷却材として、HeIをλ点近くまで冷却し、強制冷却に供する熱交換器はない。
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、減圧HeIIの狭小流路における振動的な熱的状態変動を利用して、熱伝達特性を大幅に改善することである。
上記の課題を解決するために、本発明では、減圧超流動ヘリウム冷却熱交換器を、冷却対象ヘリウムを通す熱良導体管と、熱良導体管に接続された熱良導体と、λ点(2.18K、5.04kPa)より低温低圧の減圧超流動ヘリウムを冷却材として満たすように熱良導体で形成された狭小流路と、減圧超流動ヘリウムが飽和蒸気圧超流動ヘリウム状態と過熱超流動ヘリウム状態と過熱常流動ヘリウム状態と沸騰状態とを繰り返しながら熱を吸収する沸騰冷却サイクルを狭小流路中に誘起するための微細空間部とを備える構成とした。微細空間部は、熱良導体に設けた切り欠きまたは熱良導体に設けたスリットまたは狭小流路中に設けた網目状金属部材である。
上記のように構成したことにより、熱交換器の有効熱伝達係数を大幅に改善でき、多量の加圧HeIIまたは強冷却HeIを高効率で生成できる。その結果、高速励磁する高磁界超伝導磁石の安定性を確保するための冷却手段を実現できる。また、MHDや核磁気共鳴装置等の超伝導の大型装置にも適用できる。さらに、臨界電流値がやや低い既存の低温超伝導材料である金属間化合物(Nb3Sn、Nb3Al等)を用いて、熱核融合計画(ITER)の規格を満たす超伝導磁石が実現できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図14を参照しながら詳細に説明する。
本発明の実施例は、λ点(2.18K、5.04kPa)より低温低圧の減圧HeIIを生成し、狭小流路の減圧HeIIに沸騰冷却サイクルを励起して、冷却対象の加圧HeIIまたは強冷却HeIを冷却する減圧HeII冷却熱交換器である。
図1は、本発明の実施例における減圧HeII冷却熱交換器の概念図である。図2は、減圧HeII冷却熱交換器の動作説明図である。図3は、熱交換器を構成する要素を示す図である。図4は、熱交換器を組み立てる手順を説明する図と、熱交換器の動作説明図である。
図1〜図4において、冷凍機1は、He(G)を圧縮冷却して液化し、加圧HeIにする装置である。この冷凍機は、減圧HeII槽からヘリウムを回収して液化し、超伝導磁石からのヘリウムを処理し、HeI貯蔵用のヘリウムを液化するという機能を有する冷凍機を機能的概念的に図示したものであり、機能毎に別な冷凍機としてもよい。圧縮機2は、真空ポンプで液体ヘリウム槽を減圧してHe(G)を吸引することにより、液体ヘリウム槽の液体ヘリウムの温度をλ点以下に下げて減圧HeIIにするとともに、圧縮したHe(G)を冷凍機に送る装置である。超伝導磁石3は、最終的な冷却対象の装置である。熱交換器4は、冷却対象の加圧HeIIなどから減圧HeIIで熱を吸収して冷却する装置である。液体ヘリウム槽5は、熱交換器を浸す減圧HeIIの密閉断熱容器である。小径銅円板6は、複数の切り欠きがある銅円板である。大径銅円板7は、小銅板より大径の銅円板である。銅管8は、冷却対象液体ヘリウムを通す銅製の管である。通常の銅管でもよいが、硬銅多孔管とするのが好適である。断熱板9は、銅円板を介して軸方向に伝わる熱を遮断するためのステンレス円板である。接合部10は、冷凍機または超伝導磁石に至る冷却対象液体ヘリウムの流路と銅管とを接続する部分である。
図5は、熱伝達特性の説明図と、熱流束の経路を説明する図である。図6は、2次元狭小流路中のヘリウムの4つの状態を示す図である。図7は、過熱状態から中間状態になるメカニズムを説明する図である。図8は、混合状態における変化を示す図である。図9は、状態変化を状態遷移図として示した図である。
図10は、実験用2次元狭小流路の模式図である。図10において、銅円板11は、冷却対象物としての銅の円板である。熱絶縁円板12は、断熱材でできた円板である。ヒーター13は、銅円板を加熱する手段である。熱流路温度計14は、熱絶縁円板に設置されて熱流路のヘリウムの温度を測定する温度計である。半径方向に6個の温度計があり、中心の温度計で計った温度を流路中心ヘリウム温度ということにする。銅円板温度計15は、銅円板に設置されて銅円板の温度を測定する温度計である。熱流路圧力計16は、熱絶縁円板に設置されて熱流路のヘリウムの圧力を測定する圧力計である。槽圧力計17は、熱流路圧力計と同じ高さに設置されて、液体ヘリウム槽のヘリウムの圧力を測定する圧力計である。スペーサ18は、銅円板と熱絶縁円板の間の隙間に熱流路を形成するための間隙調整部材である。真空容器19は、銅円板を収めた容器である。これらは、減圧HeIIを満たした液体ヘリウム槽に浸してある。ステンレス網が沸騰冷却サイクルを誘起する効果を調べるときは、銅表面と熱絶縁円板間にステンレス網(直径2.6mm〜8.5mm)を設けた。
図11は、異なる流路間隔ごとに、熱流束に対する銅板温度とヘリウム温度を示した熱伝達特性グラフである。図12は、熱流束に対する銅板温度とヘリウム温度と圧力変化を示す詳細な熱伝達特性のグラフである。図13は、狭小流路の半径方向に沿った液体ヘリウムの温度分布を示すグラフと、狭小流路中の金属網の効果を示すグラフである。図14は、混合状態における温度変化と圧力変化を示すグラフである。
上記のように構成された本発明の実施例における減圧HeII冷却熱交換器の機能と動作を説明する。最初に、図1を参照しながら、減圧HeII冷却熱交換器の機能の概要を説明する。超伝導磁石3を極低温に冷却するヘリウム冷却装置に熱交換器4を設ける。HeI貯槽からHeIを液体ヘリウム槽5に供給する。液体ヘリウム槽5のHeIを、圧縮機2で排気して減圧し、λ点(2.18K、5.04kPa)より低温低圧の減圧HeIIにして維持する。大量の減圧HeIIの生成のために、圧縮機2の排気ポンプを有効に動作させる必要がある。液体ヘリウム槽5の壁側を這い上がるフイルム・フローを遮断し、蒸発面積の広がりを食い止めるため、高温の熱流入側に接触させたフイルム・フロー遮断部を設ける。
減圧により気化したHe(G)を圧縮機2で圧縮して、冷凍機1に送る。冷凍機1から供給される冷却対象液体ヘリウムの熱を、液体ヘリウム槽5の中にある熱交換器4で吸収する。熱負荷の一部は、貯蔵した減圧HeIIの大きな熱容量に蓄熱され、他は超熱伝導性によって蒸発表面に速やかに伝達された後、蒸発潜熱により除去される。蒸発後の顕熱は、流入熱の予冷として利用される。潜熱と顕熱による冷却は、減圧HeIIにおいて最も効力を発揮する。
熱交換器4として、減圧HeII冷却熱交換器を用いる。熱交換器4の中に冷却対象液体ヘリウムを通す。冷却対象液体ヘリウムは、強冷却HeIである。熱交換器4の外側の銅円板の間の狭小流路に減圧HeIIを通す。λ点(2.18K、5.04kPa)より低温低圧の減圧HeIIにより、狭小流路において沸騰冷却サイクルを利用して冷却される銅円板は、大気圧下の飽和HeIの臨界熱流束より十数倍も大きい熱流束でも、ほぼ一定の低温を保てる。また、飽和または強冷却の減圧HeIIを従来方法で使用する場合の2倍程度の熱流束まで、ほぼ一定の低温を保てる。このように減圧HeIIを利用して、加圧HeIIまたは強冷却HeIを多量に高効率で生成する。
次に、図2を参照しながら、熱交換器の動作の概要を説明する。この熱交換器は、超流動遷移点であるλ点(2.18K、5.04kPa)以下に減圧したHeII(図2(a)のA領域)を冷却材として用い、λ線近くのHeI(図2(a)のB領域)を生成するヘリウム冷却装置の要素機器である。熱交換器は、銅などの熱良導体で構成されていて、外側に熱良導体で挟まれた2次元狭小流路がある。2次元狭小流路では、飽和臨界熱流束Qs以上の熱流束で、減圧HeIIが飽和蒸気圧温度を超えても準安定な過熱HeIIができ、λ臨界熱流束Qλまで超熱伝導性による冷却が維持される。
図2(b)に、熱流束に対するHeの温度(図2(b-1))と放熱板の温度(図2(b-2))のグラフを示す。実線は、減圧HeII(圧力4.5kPa)のグラフである。破線は、加圧HeII(大気圧)のグラフである。液槽温度は1.95K、放熱板間隔は0.2mmである。2次元狭小流路においては、図2(b)に示すように、過熱HeIIの超流動性が破れて過熱HeI相が発生するλ臨界熱流束Qλ以上では、冷却面に断熱的な過熱HeIが成長し、2次元狭小流路は一種の「目詰まり」を起こす。λ臨界熱流束Qλで過熱HeIが生じ始め、沸騰臨界熱流束Qnまで、過熱HeIが成長し続ける。この間では、断熱的な過熱HeIにより、放熱板からHeIIへの熱伝導が阻害されて、温度が上昇している。
熱伝達率を下げる「目詰まり」を防止するために、放熱板に切り欠き部を設けて、局所的に熱流束密度を高めることによって、過熱HeIを発泡させ、準安定な過熱HeI相を除去する。こうすることにより、熱伝達率を低下させることなく、自励熱振動状態へ速やかに移行させることができる。沸騰臨界熱流束Qn以上では、図2(b)に示すように、自励熱振動が起きる。ここでいう熱振動は、原子や分子の熱的振動ではなく、ヘリウムの相が熱により振動的に変化することである。
図2(c)に、熱流束に対する放熱板の温度(図2(c-1))と圧力差(図2(c-2))のグラフを示す。液槽温度は1.95K、圧力は4.5kPa、放熱板間隔は0.15mmである。蒸発面からの深さhは30cmである。放熱板に切り欠き部を設け、熱伝達率が低い部分を発泡させて除去する様子を示すものである。図2(c-2)の圧力差のグラフに見られるように、λ臨界熱流束Qλ以上における圧力の変動は、発泡が起こっていることを意味する。また、図2(d)は、直径dfのステンレス網円板を挿入した結果、過熱相が除去され、放熱板の温度上昇ΔTcが減少した例を示している。ステンレス網がない場合(df=0)に比べ、8.5mmの円板を挿入すると放熱板温度が約0.7Kも低下することが判る。
図2(d)に、液槽圧力に対する規格化λ臨界熱流束Qλと、規格化膜沸騰臨界熱流量Qfのグラフを示す。各臨界熱流束は、大気圧のλ臨界熱流束Qλで規格化してある。λ点圧力Pλ以下でもλ臨界熱流束Qλが1であることは、過熱HeIIが生じてλ点に達していることを意味する。無沸騰状態と同等の高い熱伝達率が、膜沸騰臨界熱流束Qfまで持続される。膜沸騰臨界熱流束Qfが最大になる液相圧力(約3kPa)で、冷凍能力が最大になる。3kPaにおける膜沸騰臨界熱流量Qfは、λ臨界熱流束Qλの約3倍に達する。この自励熱振動は、膜沸騰臨界熱流量Qfまで持続するため、設計基準を飽和臨界熱流束Qsから膜沸騰臨界熱流量Qfにまで高めることができる。減圧HeIIにおける熱伝達が向上し、大きな熱負荷にも対応できる熱交換器が実現できる。これら減圧HeIIの特質を最大限に活かした熱交換器は、図2(a)のB領域のHeIを大量に生成することができる。
蒸発表面からの探さhが増すとともに、静水圧により液相圧力が上がって冷却能力が減少する。例えば、槽圧力が3kPaの場合には、hが約1.5メートルで、液相圧力がλ点圧力に達し、安定なHeI相ができる。これらの事実を考慮し、熱交換器の位置取りや配置構造を決める。蒸発表面からの深さhにおける静水圧がλ点圧力を超えないように、熱交換器の配置を決める。熱負荷量が大きい場合は、例えば、hが小さい所で熱交換器を螺旋状に巻き、高い膜沸騰臨界熱流束Qfによる冷却ができるように、形状より効率を優先させる。
次に、図3を参照しながら、熱交換器を構成する要素を説明する。放熱板として、図3(a)に示す大径銅円板7を用いる。大径銅円板7の間に冷却のための狭小流路を形成するために、図3(b)に示す小径銅円板6を用いる。図3(b)に示すように、小径銅円板6には複数の切り欠きがある。図3(b)の下部に切り欠きの変形例を示す。熱交換器4の小径銅円板と大径銅円板の間の狭小流路の切り欠きで、減圧HeIIが飽和HeII状態と過熱HeII状態と過熱HeI状態と沸騰状態とを繰り返しながら熱を吸収する沸騰冷却サイクルを誘起する。減圧HeIIが切り欠きの間に入ることで沸騰しやすくなり、沸騰冷却サイクルによって冷却効率が高まる。
この例では、狭小流路中に沸騰冷却サイクルを誘起するための手段として、小径銅円板6に切り欠き部を設けたが、沸騰冷却サイクルを誘起できる手段として、例えば、図3(c)、図3(d)のように、ステンレス網リングやスリットを入れる方法がある。切り欠き部やリングやスリットの形状は、沸騰冷却サイクルをトリガできるものであれば、有効冷却表面積を狭めない範囲で、どのような形状でもよい。銅板の厚さや、流路ギャップ等の幾何学形状や、槽圧力・槽温度等の条件を変えて、沸騰冷却サイクルを誘起するようにしてもよい。図3(e)に示す銅管8は、冷却対象の加圧HeIIなどを通す管である。複数の孔を通して、冷却対象の加圧HeIIなどが直接小径銅円板6や大径銅円板7に接触するので、熱交換効率が高まる。
図4を参照しながら、熱交換器を組み立てる手順と、熱交換器の動作を説明する。図4(a)に示すように、小径銅円板と大径銅円板を交互に積み重ねる。銅管の円周上に同心円状に、小径銅円板と大径銅円板とを交互に重ねて取り付ける。小径銅円板は厚さ5mm以下で、円周上に複数の切り欠きがある。沸騰冷却サイクルを誘起するための小径銅円板は、図3(c)に示したステンレス製の金属網リングや、図3(d)に示したスリットに置き換えることができる。図4(b)に示すように、これを圧着して、大径銅円板の間の隙間が所定の距離、例えば0.5mmとなるようにする。図4(c)に示すように、銅管を通して固定する。銅管に冷却対象液体ヘリウムを通す。
熱良導体である大径銅円板と小径銅円板を介して、熱流入する高温側から熱交換器の軸方向に伝わる熱を遮断するために、図4(c)に示すように、適宜間隔を空けてステンレス製の断熱板9を入れる。例えば、大径銅円板7の10枚目ごとに、大径銅円板7の代わりにステンレス製の断熱板9を挟んで断熱する。このように構成された熱交換器要素は、接合部10によって接続され、冷却対象液体ヘリウムが適宜分配される。熱交換器の基本的な構成と組立方法は、狭小流路と微細空間部を除いて従来のものと同様である。ここに示した例以外の周知の構成や組立方法を適用して、狭小流路と微細空間部を備えた熱交換器を実現することも可能である。
図4(e)〜(h)に、切り欠きの部分で沸騰冷却サイクルが起こる様子を模式的に示す。図4(e)の左側は、切り欠きの平面図である。右側は側面図である。平衡状態では、切り欠きの部分も減圧HeIIで満たされている。冷却対象の熱流束が増加すると、切り欠きの部分の減圧HeIIの温度が最初に上がるので、図4(f)に示すように、その部分で減圧HeIIが過熱HeIIになる過熱状態となる。さらに熱流束が増加すると、切り欠きの部分の温度がさらに上がり、図4(g)に示すように、その部分の過熱HeIIが過熱HeIになる中間状態となる。さらに熱流束が増加すると、切り欠きの部分の温度がさらに上がり、図4(h)に示すように、その部分の過熱HeIIが気化してHe(G)になる沸騰状態となる。He(G)は減圧HeIIによって冷やされて減圧HeIIになり、図4(e)に示す平衡状態に戻る。この沸騰冷却サイクルについて、以下に詳しく説明する。
次に、図5〜図9を参照しながら、減圧HeII冷却熱交換器で利用する沸騰冷却サイクルによる冷却方法の原理を説明する。λ点圧力以下の減圧HeIIで満たされた狭い2次元狭小流路中に、冷却対象として、銅板などの熱良導体(高温側銅板ということにする)があるとする。図5(a)の熱伝達特性に示すように、熱流束が増えて、高温側銅板の温度が、減圧HeIIの飽和蒸気圧温度(沸点)を超えると、減圧HeIIは、高温側銅板の最高温度領域の中心から次第に準安定な過熱HeIIになる。HeIIは沸点を超えても沸騰しないが、広い流路では、臨界熱流束が大きく、加熱体表面積当たりの熱流束密度が高くなるため膜沸騰が発生し、鋭い相転移が起きてHe(G)になる。しかし、狭い流路では、高温側銅板の表面温度が沸点を超えてもHe(G)に覆われることはなく、準安定な過熱HeII相になるため、高温側銅板は緩やかに可逆的な温度変化を呈する。
λ点圧力Pλ以上で液体ヘリウムの温度がλ線を横切るとき2次の相転移が起きるのと同様に、λ点圧力Pλの下に延ばした延長λ線を横切って過熱HeIIの温度を上げると、過熱HeIIに2次の相転移が起きて、すでに過熱HeIIで覆われた領域に、泡ではなく過熱HeIの核が発生する。平衡状態では、熱は図5(b)に示すように流れるが、λ臨界熱流束Qλ以上の中間状態では、図5(c)に示すように、熱流束の大部分が、熱伝導度が小さい過熱HeIを避けるようにして、熱伝導度が大きい過熱HeIIと減圧HeIIを通るようになる。ただし、この図では過熱HeIIは省略してある。このように熱流が分配されるので、過熱HeIが急速に加熱されて沸騰することはなく、準安定状態ではあるが、銅の高い熱拡散係数によって、機械的・熱的外乱は緩和されるため、かなり安定化される。
高温側銅板の最高温度領域の温度が延長λ線の温度を超えると、過熱HeIIに覆われた過熱HeIが高温側銅板に生じる。熱伝導率が小さい過熱HeIが広がり、過熱HeIと過熱HeIIが共存する状態となる。過熱HeIと過熱HeIIの準安定相は、銅の高い熱拡散係数によって、過熱HeIで覆われた部分の熱は、銅の中を偏流するため、準安定相を直接加熱しないので比較的安定である。機械的衝撃などにより準安定相が崩壊しても、直ぐに過熱状態が再現される。高温側銅板の温度が沸騰臨界温度を超えると、過熱HeIが突沸を起こして沸騰状態になる。沸騰は1秒程度で収まり、冷却されて再び飽和HeIIと過熱状態を経由して沸騰状態になる。これを繰り返す沸騰冷却サイクルが継続する。すなわち、過熱相崩壊・沸騰・過熱相再生が循環する熱的状態振動が発生する。乱れの大きい沸騰状態から準安定な過熱相に復帰するという逆説的な現象は、可視化技術で確認されている。減圧HeIIは超流動性であるので、10μm程度の隙間にも浸透し、熱的状態振動を起こす。
このように、熱交換器の狭小流路中の減圧HeIIが、飽和蒸気圧温度を超えて加熱されたとき、準安定な過熱状態と沸騰状態とを繰り返させるようにすることで、沸騰臨界温度を大きく超えることなく維持できる。つまり、沸騰冷却サイクルを利用すると、加圧HeIIの飽和臨界熱流束を大幅に超える熱流束まで、加圧HeIIによる冷却よりもはるかに低い温度を維持できる。熱交換器の熱伝達率を飛躍的に高めることができ、熱交換率(単位面積当たりの除熱量)が極めて高くなって、驚異的な冷却特性が得られるので、熱交換器を小型化できる。
減圧HeIIの熱伝達特性を整理すると、膜沸騰臨界熱流束Qf以下の熱流束について、次の4つの状態に分類される。膜沸騰臨界熱流束Qfは、過熱HeIが膜沸騰を起こす温度になる限界の熱流束である。
(1)平衡状態(Kapitza(K)状態、0<Q<Qs):減圧HeIIが飽和蒸気圧温度Tsを超えない安定状態である。図6(a)に示すように、高温側銅板の表面は、熱流束Qが飽和臨界熱流束Qsに達するまで、減圧HeIIで全体的に覆われている。飽和臨界熱流束Qsでは、流路中心ヘリウム温度T1は、飽和蒸気圧温度Tsに等しい。飽和臨界熱流束Qsは、減圧HeIIが飽和蒸気圧温度Tsを超える限界の熱流束である。
(1)平衡状態(Kapitza(K)状態、0<Q<Qs):減圧HeIIが飽和蒸気圧温度Tsを超えない安定状態である。図6(a)に示すように、高温側銅板の表面は、熱流束Qが飽和臨界熱流束Qsに達するまで、減圧HeIIで全体的に覆われている。飽和臨界熱流束Qsでは、流路中心ヘリウム温度T1は、飽和蒸気圧温度Tsに等しい。飽和臨界熱流束Qsは、減圧HeIIが飽和蒸気圧温度Tsを超える限界の熱流束である。
(2)過熱状態(Superheat(S)状態、Qs<Q<Qλ):減圧HeIIの一部が、飽和蒸気圧温度Tsを超えて、過熱HeIIとなる準安定状態である。図6(b)に示すように、高温側銅板の最高温度領域の中心に準安定な過熱HeIIができる。過熱HeIIは、強い外乱が加わるとHe(G)になることがある。飽和臨界熱流束Qsにおいては、熱伝達特性のグラフに飛びも折れもない。なぜなら、飽和HeIIは、何の特性変化も伴わずに滑らかに過熱HeIIに変わるからである。
(3)中間状態(Intermediate(I)状態、Qλ<Q<Qn):過熱HeIIの一部が、延長λ線を超えて加熱されて、過熱HeIになった準安定状態である。図6(c)、(d)に示すように、過熱HeIIに覆われた過熱HeIができ、過熱HeIと過熱HeIIが共存する状態である。過熱HeIは、強い外乱が加わるとHe(G)になることがある。また、沸騰臨界熱流束Qnを超えると、図6(e)に示すように、沸騰状態になる。熱伝達特性曲線は、λ臨界熱流束Qλで曲がる。なぜなら、熱伝導度が小さい過熱HeIが、高温側銅板表面の中心領域を覆い始めるからである。λ臨界熱流束Qλは、過熱HeIIが延長λ線の温度を超える限界の熱流束である。
図7に、中間状態になるメカニズムを示す。図7(a)に、過熱HeIと過熱HeIIが共存している状態の上面図を示す。図7(b)に、高温側銅板表面の中心で、過熱HeIが生成される様子を示す。図7(c)に、図7(a)の断面図を示す。濃いハッチング領域は、半径rλの過熱HeI層である。薄いハッチング領域は、半径rsの過熱HeII層である。図7(a)に模式的に示すように、中間状態では、過熱HeII層は、過熱HeI層を半径rλで同心状に取り囲む。過熱HeIIと過熱HeIの界面は環状である。実際、減圧HeIIと加圧HeIIの両方における遷移λ環を、透明ヒーターで2次元狭小流路を構成することで観察できる。HeII中の熱流に対する実効的流路長、つまり、(rc−rλ)は、増大する熱流束にともなう過熱HeIの成長のために短くなる(図7(c)参照)。そのため、Gorter-Mellink方程式に従って、より多くの熱が伝達できる。過熱HeIそれ自身は、その小さい熱伝導度のために、熱流束のほんの一部を吸収するだけである。
(4)混合状態(Mixed(M)状態、Qn<Q<Qf):過熱HeIが沸騰臨界温度を超えて加熱されてHe(G)になり、冷却されて減圧HeIIに戻り、再び加熱されて過熱HeIIから過熱HeIなって沸騰することを繰り返す沸騰冷却サイクルが継続する状態である。沸騰臨界熱流束Qnは、過熱HeIが沸騰臨界温度になる限界の熱流束である。図6(e)に、沸騰状態を示す。図8に、混合状態における状態変化の様子を示す。
減圧HeIIの変化を状態遷移図で示すと、図9(a)のようになる。熱流束をゆっくり変化させると、このように状態遷移する。混合状態から熱流束を減らすと、見かけ上は中間状態に遷移するように見えるが、沸騰状態から準安定状態に直接遷移することはありえないので、平衡状態と過熱状態を経由して中間状態に遷移しているはずである。混合状態は複合的な状態であり、その内部状態の変化は、図9(b)のようになる。4つの状態を循環していることになる。
次に、図10を参照しながら、沸騰冷却サイクルによる冷却方法の実験装置について説明する。図10は、実験用2次元狭小流路の模式図である。図10(a)は、上面図である。図10(b)は、真空容器の直径に沿って切断した断面図である。半径10mmで厚さ5mmの銅円板は、厚さ0.8mmのステンレス鋼フランジに半田付けされている。銅円板と熱絶縁円板の間に、半径方向の2次元狭小流路を形成するために、半径11mmの熱絶縁円板が銅円板の表面に平行に置かれている。熱絶縁円板を、狭い隙間をあけて銅円板に平行に対面させて3つのネジで固定されている。
0.05mmから0.50mmの間隔距離gは、ステンレス鋼のスペーサを使って室温で調整される。真空中の側壁上に取り付けられたヒーター(72.3Ωの発熱箔)から熱流束Qが加えられる。印加された熱は、2次元狭小流路に沿って放射状に拡散するので、相転移は、加熱された表面の中心で始まる。2次元狭小流路を浸す減圧HeIIの液体ヘリウム槽の圧力Pbは、真空ポンプを使って大気圧から下げられ、λ点圧力より低い飽和蒸気圧Psになるように調節される。
次に、図11〜図14を参照しながら、冷却実験の結果について説明する。図11は、熱流束に対する温度変化を、2次元狭小流路の3種類のギャップについて示したグラフである。図11(a)、(b)、(c)に、銅円板温度TCのグラフを示す。図11(d)、(e)、(f)に、流路中心ヘリウム温度T1のグラフを示す。測定時の液体ヘリウム槽の圧力(Pb)は4.50kPaであり、液体ヘリウム槽の温度(Tb)は、1.95K〜1.97Kである。破線は、大気圧下で得られたデータである。図11(f)の1pと2pは、平坦部である。
図12(a)に、熱流束の変化に対するヘリウム温度の変化のグラフを示す。図12(a)中の挿入図は、液体ヘリウム槽の圧力Pb=3.75kPaのときの流路中心ヘリウム温度を示すグラフである。この条件では、過熱状態となる熱流束の範囲は広がっている。図12(b)に、熱流束の変化に対する銅板温度の変化のグラフを示す。図12(c)に、熱流束の変化に対する液体ヘリウムの圧力変化のグラフを示す。圧力差は、狭小流路の圧力から槽の圧力を引いたものである。Kは平衡状態(Kapitza状態)を意味し、Sは過熱状態を意味し、Iは中間状態を意味し、Mは混合状態を意味する。測定周期は30Hzである。液体ヘリウム槽の温度Tb=1.95K、液体ヘリウム槽の圧力Pb=4.25kPa、狭小流路の間隙g=0.15mmである。
平衡状態と過熱状態と中間状態はすべて非沸騰状態であるので、流路中心ヘリウム温度T1は、図12(c)に矢印aで示す沸騰臨界熱流束Qnでの沸騰の開始まで、圧力が一定の状態で上昇を続ける。図12(a)の場合、流路中心ヘリウム温度T1は、λ遷移温度Tλ(=2.18K)を超える2.30Kまで上昇する。復帰臨界熱流束Qrより僅かに少ない熱流束の場合、中間状態は少なくとも90分間維持される。機械的外乱が一時的に準安定過熱相を壊しても、中間状態は、一時的な混合状態から1秒後に回復する。沸騰臨界熱流束Qnでは、中間状態は外乱なしに壊れる。
中間状態において熱流束をゆっくり増していくと、沸騰臨界熱流束Qnで過熱HeIが沸騰して中間状態が崩壊し、圧力差ΔPc(流路中心ヘリウム圧力Pcから槽圧力Pbを差し引いた値)が突然増加する。その後、流路中心ヘリウム温度T1は、飽和蒸気圧温度Tsに低下する。混合状態において、熱流束が回復熱流束Qrを下回るようになると、中間状態に復帰する。熱流束が沸騰臨界熱流束Qn以上から減少すると、流路中心ヘリウム温度T1は、回復臨界熱流束Qrで2.20Kまでとぶ。同時に、図12(c)に矢印bで示すように、圧力差ΔPcはゼロになる。図12(a)の差込図に示すように、間隔gが0.5mmの大きさのときは、回復臨界熱流束Qrは、飽和臨界熱流束Qsに等しい。直線状流路では、たとえ過熱HeIIが発生するとしても、過熱HeIは安定化されず、中間状態にはならない。
復帰臨界熱流束Qr近傍の領域(図12(a)参照)を除く混合状態においては、流路ヘリウム温度T1〜T6を測定する温度計は、熱伝導度が小さいHeIとHe(G)の温度を計っているので、急速な温度変化に迅速には応答しない。その結果、図11(f)の2pの線で示すように、第2の平坦部が流路中心ヘリウム温度T1のグラフに現れる。一方、熱伝導度の大きい銅円板の温度は、急速に変化する(図11(c)参照)。広い流路では、流路中心ヘリウム温度の熱伝達特性グラフには、1pで示す第1平坦部がある。第1平坦部では、流路中心ヘリウム温度T1は、λ遷移温度Tλより僅かに低い一定の値になっている。狭い流路では、図11(d)の流路中心ヘリウム温度T1からわかるように、熱流束の増大にともなって、平坦部なしに過熱HeIが成長する。
このように、激しい変化をしている混合状態から準安定状態に復帰できるので、2次元狭小流路において、熱良導体である銅と過熱HeIIで、過熱HeIの準安定相を安定化できる。しかし、約3.5kPaより低い槽圧Pbでは、混合状態から過熱状態にも中間状態にも戻らない。
中間状態の発生の様子を説明する。図13(a)に、狭小流路の半径方向に沿ったHe温度分布のグラフを示す。●印は、熱流束がλ臨界熱流束Qλであるときの中間状態における温度を示す。Δ印は、熱流束が沸騰臨界熱流束Qn以下であって、混合状態への遷移の直前である中間状態における温度である。このとき、半径rが3mm以内の領域の温度はλ遷移温度Tλより高く、そこは過熱HeIで覆われている。□印は、熱流束が沸騰臨界熱流束Qn以上である混合状態における温度である。液体ヘリウム槽の温度Tb=1.95K、液体ヘリウム槽の圧力Pb=4.25kPa、狭小流路の間隙g=0.15mmである。
狭小流路中の金属網による沸騰冷却サイクル誘起の効果について説明する。図10に示した銅円板11の表面に、2.6mm径のステンレス製の金属網リングを付ける。槽圧力は4.2kPa、液槽温度は1.95K、流路幅gは0.17mmである。図13(b)のグラフ(a)に、金属網リングが無い場合の熱流束に対する温度変化を示す。図13(b)のグラフ(b)に、金属網リングがある場合の熱流束に対する温度変化を示す。金属網リングが無いと、Qλ以上の熱流束では、グラフ(a)のように、過熱HeIによる温度上昇が起こる。しかし、金属網リングがあると、温度上昇が抑えられて、グラフ(b)のようにかなり低温状態での変化を辿る。
混合状態の詳しい状態変化を説明する。混合状態における温度変動には、2タイプの銅板温度TCパルスがある。図14に示すように、1つ目は上部が平らな主パルスである。2つ目は鋭いピークの小パルスである。主パルスの上部に対応する状態は中間状態である。なぜなら、上部における銅板温度Tcは、安定した中間状態の温度に等しいからである。銅板温度TCの上昇は、ヘリウム圧力Pcの下降と一致する。つまり、銅板温度TCとヘリウム圧力Pcは、ほぼ逆相で変化する。過熱状態になるときには、パルスで示される銅板温度TCが上がり、一方、沸騰状態になるときには、パルスで示される銅板温度TCが下がる。銅板温度TCのパルスの下端は、図14に示すα線に一致している。
銅板温度TCのグラフの平らな上部の値が、過熱HeIを含む中間状態の銅板温度TCに等しいことから、安定化された2次元狭小流路においては、過熱HeIIと過熱HeIが混合状態として共存していることがわかる。過熱HeI層の急速な成長は、狭小流路における熱伝導の実効長を急速に短くして、熱伝導を増強させる。気化潜熱をともなう過熱HeIの突沸で発生するHe(G)は、大きな熱容量で多量の熱を銅板から吸収しながら、減圧HeIIを狭小流路から押し出す。沸騰状態になって狭小流路出口近くに広がったHe(G)は、減圧HeIIで冷やされて再凝縮する。すると、減圧HeIIが狭小流路内に吸い込まれる。吸い込まれた減圧HeIIは、多量の熱を銅板から吸収して再び過熱減圧HeIIと過熱減圧HeIになっていく。
高温側銅板表面は、沸騰が中断する度毎に、飽和蒸気圧温度Tsの減圧HeIIで全体的に覆われることになる。したがって、TC=(CS)-1/4(4Q+CSTs 4)1/4で与えられるKapitza熱伝導度は、α線で近似される。ここで、Cは、Tb=2.1Kで約0.03Wcm-2K-4である。それは、ピーク上のヘリウム圧力Pc(=4.26K)における飽和蒸気圧温度Tsに対応する。したがって、混合状態の1周期で、狭小流路から多量の熱が除去される。膜沸騰の発生に至らないかぎり、混合状態の周期の繰り返しにより、銅板は効率よく冷却され続ける。つまり、銅板温度TCは、流路中心ヘリウム温度T1のグラフの平坦部の温度で冷却されて、数Kの範囲に維持される。
上記のように、本発明の実施例では、減圧HeII冷却熱交換器を、λ点(2.18K、5.04kPa)より低温低圧の減圧HeIIを生成し、狭小流路の減圧HeIIに沸騰冷却サイクルを励起して、冷却対象の加圧HeIから熱を吸収することにより、加圧HeIIまたは強冷却HeIを生成する構成としたので、熱交換器の有効熱伝達係数を大幅に改善できる。
本発明の減圧HeII冷却熱交換器は、超伝導磁石をλ点まで冷却する冷却装置用の熱交換器として最適である。その他のものをλ点にまで冷却するための熱交換器としても使用できる。本熱交換器は、より低温の冷媒であるHeを高効率で生成することが可能であるため、高速励磁可能な高磁界超伝導磁石の安定性を確保することができる。広範な分野の大型超伝導装置(例えばMHD発電、加速器等)にも適用が可能である。低温ほど超伝導導体の臨界電流値が増加する性質を利用し、現有の低温超伝導導体(Nb3Sn、Nb3Al等)を用いた超伝導磁石の高磁場化や、交流損失などによる熱負荷の大きな核融合炉の達成の早急な実現が可能になる。また、この熱交換機は熱負荷の変動が大きな被冷却体にも対応可能な冷凍の要素機器となる。
1 冷凍機
2 圧縮機
3 超伝導磁石
4 熱交換器
5 液体ヘリウム槽
6 小径銅円板
7 大径銅円板
8 銅管
9 断熱板
10 接合
11 銅円板
12 熱絶縁円板
13 ヒーター
14 熱流路温度計
15 銅円板温度計
16 熱流路圧力計
17 槽圧力計
18 スペーサ
19 真空容器
2 圧縮機
3 超伝導磁石
4 熱交換器
5 液体ヘリウム槽
6 小径銅円板
7 大径銅円板
8 銅管
9 断熱板
10 接合
11 銅円板
12 熱絶縁円板
13 ヒーター
14 熱流路温度計
15 銅円板温度計
16 熱流路圧力計
17 槽圧力計
18 スペーサ
19 真空容器
Claims (6)
- 冷却対象ヘリウムを通す熱良導体管と、前記熱良導体管に接続された熱良導体と、λ点(2.18K、5.04kPa)より低温低圧の減圧超流動ヘリウムを冷却材として満たすように前記熱良導体で形成された狭小流路と、減圧超流動ヘリウムが飽和蒸気圧超流動ヘリウム状態と過熱超流動ヘリウム状態と過熱常流動ヘリウム状態と沸騰状態とを繰り返しながら熱を吸収する沸騰冷却サイクルを前記狭小流路中に誘起するための微細空間部とを備えることを特徴とする減圧超流動ヘリウム冷却熱交換器。
- 前記微細空間部は、前記熱良導体に設けた切り欠きまたは前記熱良導体に設けたスリットまたは前記狭小流路中に設けた網目状金属部材であることを特徴とする請求項1記載の減圧超流動ヘリウム冷却熱交換器。
- 液体ヘリウムの供給元であるヘリウム貯槽と、断熱し密閉して液体ヘリウムを貯える液体ヘリウム槽と、前記液体ヘリウム槽中の液体ヘリウムをλ点(2.18K、5.04kPa)より低温低圧の減圧超流動ヘリウムに維持するように減圧するとともに気化したヘリウムを圧縮する圧縮機と、ヘリウムを冷却する冷凍機と、前記液体ヘリウム槽の中にあって前記冷凍機から冷却対象液体ヘリウムとして供給される液体ヘリウムの熱を吸収する熱交換器とを具備するヘリウム冷却装置において、前記熱交換器は、前記冷却対象液体ヘリウムを通す熱良導体管と、前記熱良導体管に接続された熱良導体と、減圧超流動ヘリウムを冷却材として満たすように前記熱良導体で形成された狭小流路と、減圧超流動ヘリウムが飽和蒸気圧超流動ヘリウム状態と過熱超流動ヘリウム状態と過熱常流動ヘリウム状態と沸騰状態とを繰り返しながら熱を吸収する沸騰冷却サイクルを前記狭小流路中に誘起するための微細空間部とを備えることを特徴とするヘリウム冷却装置。
- 前記熱良導体管は、銅管であり、前記熱良導体は、前記銅管の円周上に同心円状に交互に重ねて取り付けられた厚さ5mm以下の小径銅円板と前記小径銅円板より大径の大径銅円板であり、前記狭小流路は、前記小径銅円板と前記大径銅円板との間に形成されており、前記微細空間部は、前記小径銅円板の円周上に設けた複数の切り欠きであることを特徴とする請求項3記載のヘリウム冷却装置。
- 前記熱良導体管は、銅管であり、前記熱良導体は、前記銅管の円周上に同心円状に重ねて取り付けられた銅円板であり、前記狭小流路は、前記銅円板の間に形成されており、前記微細空間部は、前記銅円板間に設けたスリットまたは前記狭小流路中に設けた金属網リングであることを特徴とする請求項3記載のヘリウム冷却装置。
- 断熱して密閉した液体ヘリウム槽に、ヘリウム貯槽から液体ヘリウムを供給し、前記液体ヘリウム槽の液体ヘリウムを圧縮機で減圧して、λ点(2.18K、5.04kPa)より低温低圧の減圧超流動ヘリウムに維持し、気化したヘリウムを圧縮して冷凍機に送り、前記液体ヘリウム槽の中にある熱交換器の0.5mm以下の間隔の狭小流路に前記減圧超流動ヘリウムを満たして、前記狭小流路における前記減圧超流動ヘリウムが飽和蒸気圧超流動ヘリウム状態と過熱超流動ヘリウム状態と過熱常流動ヘリウム状態と沸騰状態とを繰り返しながら熱を吸収する沸騰冷却サイクルを利用して、前記冷凍機から冷却対象液体ヘリウムとして供給される液体ヘリウムを冷却することを特徴とするヘリウム冷却方法。
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2008
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