JP2010121720A - ボールジョイント - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
樹脂シート17は、樹脂部分70と金属部材43と一体に備えた複合構造を有している。樹脂シート17の内周面17Aおよび外周面17Bは、樹脂インサート成形により金属部材43に形成された樹脂部分70で構成されている。各弾性金属板片62は、樹脂シート17の外周面17Bの下端から下方へ突出している。金属部材43の非拘束状態では、円筒60と各弾性金属板片62とは角度α2をなす。ハウジング16内への収容状態(図(b)参照)では、円筒60と各弾性金属板片62との間の角度はα1(α1<α2)となり、各弾性金属板片62が開口部46に向けて樹脂シート17全体を弾力付勢する。
【選択図】図5
Description
特許文献1では、樹脂シートを、相対的に硬い樹脂からなるカップ状の第1シートと、相対的に柔らかい樹脂からなる平坦な第2シートとの2つ割構造にした構成が提案されている。
一方、特許文献2で提案されている構成では、コイルばねと球頭部とに挟まれた樹脂シートの底部に、コイルばねからの押圧力が集中する。このため、樹脂シートの底部だけにクリープ変形が生じ、底部だけが劣化して異常磨耗する。その結果、球頭部とハウジングとの間にがたつきが発生するおそれがある。
そこで、本発明の目的は、安定した揺動トルクを有し、しかも、長期にわたって球頭部とハウジングとの間のがたつきの発生を防止することができるボールジョイントを提供することである。
この構成によれば、ハウジングと球頭部との間に介在される樹脂シートが、複数枚の弾性金属板片を有している。この弾性金属板片がハウジングの内底面と接して、樹脂シート全体をハウジングの開口方向に弾力付勢しているので、樹脂シート全体が球頭部に押し付けられる。
前記樹脂シートが、展開状に形成された複数枚のばね板片(66)を含むばね鋼板(64)を円筒状に曲げた後、前記ばね板片のみが露出するように樹脂インサート成形されたものであることが好ましい(請求項2)。この構成によれば、弾性金属板片と一体の複合構造の樹脂シートを、比較的簡単に形成することができる。
前記複数枚の弾性金属板片が、球頭部の周囲を取り囲む金属製の円筒(60)の一端部(60a)から延設されていてもよい。この構成によれば、円筒が球頭部の周囲を取り囲んでいるので、弾性金属板片による押圧力は、球頭部の外表面を覆う樹脂シート全体に均一に分散する。このため、樹脂シートと球頭部との間における面圧のばらつきをより効果的に抑制することができる。そして、弾性金属板片による押圧力が樹脂シート全体に均一に分散しているので、樹脂シートに大きな力が局所的に集中しない。これにより、樹脂シートの磨耗を、より効果的に抑制することができる。
図1は、本発明の一実施形態にかかるボールジョイント(インナーボールジョイント)12が搭載されたステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。ステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール2と、転舵輪(図示せず)を転舵する転舵機構としてのラックアンドピニオン機構3とを備えている。
ラックアンドピニオン機構3は、ピニオン軸6およびラック軸7を備えている。ピニオン軸6は、中間軸5に連結された軸部8と、この軸部8の先端に連結されたピニオン9とを含む。ステアリングホイール2の回転は、ステアリングシャフト4および中間軸5を介してピニオン軸6に伝達される。
ラック軸7は筒状のラックハウジング11に挿通されている。ラック軸7の両端部は、それぞれラックハウジング11から突出している。ラック軸7の各端部(いわゆるラックエンド)には、インナーボールジョイント12を介して、タイロッド14の一端が連結されている。また、タイロッド14の他端(いわゆるタイロッドエンド)には、アウターボールジョイント(タイロッドエンド用ボールジョイント)13が設けられている。このアウターボールジョイント13は、ナックルアーム41(図2参照)を介して転舵輪に連結されている。
インナーボールジョイント12は、ラック軸7(図1参照)の端部に連結されるカップ状のハウジング16と、このハウジング16内に収容されたカップ状の樹脂シート17と、ハウジング16および樹脂シート17によって揺動可能に支持されたボールスタッド18とを備えている。ハウジング16の底部には、ハウジング16をラック軸7の端部に連結するための連結部20が設けられている。
スタッド軸24は、ハウジング16から突出している。このスタッド軸24と、このスタッド軸24に連結されるアウターボールジョイント13に連結されたロッド25とによって、タイロッド14が構成されている。
また、雄ねじ部26にはロックナット28が螺合されている。ボールスタッド18およびロッド25は、ロックナット28によって互いに固定されている。また、雌ねじ孔27に対する雄ねじ部26のねじ込み量は、スタッド軸24を回転させ調節し、ロックナット28によって固定されている。雌ねじ孔27に対する雄ねじ部26のねじ込み量を調節することにより、転舵輪のトーイン角を調節することができる。
一方、アウターボールジョイント13は、カップ状のハウジング29と、このハウジング29内に収容された樹脂シート30と、ハウジング29および樹脂シート30によって揺動可能に支持されたボールスタッド31とを備えている。
ハウジング29の開放側端部、すなわち、本体32の他端部(図2で示す上端部)には、その内面が半径方向内方に突出した突出部38が形成されている。そのため、本体32の他端部(図2では上端部)は、本体32の他の部分に比べてその内径が小径にされている。
ボールスタッド31は、鋼等の金属製の部材であり、球面状の外表面を有する球頭部39と、この球頭部39から突出するスタッド軸40とが一体的に形成されている。球頭部39は、樹脂シート30に覆われた状態でハウジング29に収容されている。樹脂シート30と球頭部39との間には、グリース等の潤滑剤が充填されている。スタッド軸40は、ハウジング29の本体32から突出している。
ハウジング29およびボールスタッド31には、筒状のカバー42が取り付けられている。カバー42の一端は、ハウジング29の開放側端部に外嵌されて、この開放側端部に固定されている。また、カバー42の他端は、ボールスタッド31のスタッド軸40に外嵌されて、このスタッド軸40に固定されている。ハウジング29の開放側端部およびスタッド軸40の一部は、カバー42によって覆われている。このカバー42によって、水や埃などの異物が、アウターボールジョイント13内に進入することが防止されている。
ハウジング16は、たとえば鋼などの金属製の部材を用いた一体成形品である。ハウジング16は、厚肉の円板からなる底壁44と、この底壁44の周縁から立ち上る周壁45とを有している。周壁45は、中心軸線Cを中心とするほぼ円筒状に形成されている。周壁45の先端部、すなわちハウジング16の開放側端部16aには、スタッド軸24が挿通する開口部46が形成されている。底壁44および周壁45によって、球頭部23、樹脂シート17を収容するための収容空間47が区画されている。
金属部材43は、ハウジング16内への収容状態で中心軸線Cを中心とする円筒状をなす円筒60を備えている。円筒60は、球頭部23の側方を取り囲んでいる。円筒60には、インサート成形(一体成形)により、樹脂部分70が一体に形成されている。円筒60の内周および外周の全域が、樹脂部分70の円筒部55によって覆われている。円筒60の他端部60b(図3で示す上端部)は、樹脂部分70の円筒部55の先端(図3に示す上端)付近まで達している。すなわち、円筒60は、樹脂部分70の円筒部55の内部を中心軸線Cに沿って挿通している。これにより、樹脂部分70が金属部材43に強固に固定されている。
図4は、樹脂シート17の製造工程を示す図である。
次いで、図4(c)に示すように、樹脂インサート成形によって、ばね鋼リング67に樹脂シート17が形成される。具体的には、ばね鋼リング67を予め金型内に設置しておき、このばね鋼リング67にばね板片66のみが露出するように、樹脂を射出成形により充填される。これにより、樹脂部分70が得られる。
図5は、インナーボールジョイント12の製造方法を示す模式的な断面図である。この製造方法は、嵌入工程(図5(a)参照)と、かしめ加工工程(図5(b)参照)とを備えている。
内周面48とテーパ面51とがなす角度がα1(α1<α2)であるので、樹脂シート17がハウジング16内に嵌め入れられた状態(収容された状態)で、各弾性金属板片62がハウジング16のテーパ面51と当接して弾性変形して、円筒60と各弾性金属板片62との間の角度はα1となる。したがって、樹脂シート17のハウジング16内への収容状態では、各弾性金属板片62が開口部46に向けて樹脂シート17全体を弾力付勢する。
また、樹脂シート17全体がハウジング16の開口部46に向けて弾力付勢されるので、樹脂シート17と球頭部23との間における面圧にほとんどばらつきがない。このため、ボールスタッド18の揺動トルクが安定する。しかも、弾性金属板片62からの押圧力が樹脂シート17全体に分散するので、樹脂シート17に大きな力が局所的に集中せず、これにより、樹脂シート17の磨耗を抑制することもできる。
さらにまた、円筒60がばね鋼製であるので、中心軸線Cに沿う方向(軸方向)の剛性が良い。それに加え、この円筒60が弾性金属板片62によってハウジング16の開口部46に向けて弾性的に押圧されるので、インナーボールジョイント12の中心軸線Cに沿う方向の剛性が一段と良い。
たとえば、各弾性金属板片62の先端部には、さらに内方に向けて屈曲された屈曲部が形成されていてもよい。この屈曲部は、ハウジング16の底面50と接触して、樹脂シート17を、ハウジング16の開口部46に向けて弾力付勢する。
さらに、図1〜図5の実施形態では、樹脂シート17の形成の後に、各弾性金属板片62(各ばね板片66)の曲げ加工を行うものとして説明したが、樹脂シート17の形成に先立って、各弾性金属板片62(各ばね板片66)の曲げ加工を行ってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
Claims (3)
- 球頭部およびスタッド軸を有するボールスタッドと、
前記球頭部の表面を覆う樹脂シートと、
前記球頭部および前記樹脂シートを収容し、前記球頭部を前記樹脂シートに対して摺動可能に支持するカップ状のハウジングとを備えたボールジョイントであって、
前記樹脂シートは、前記球頭部の表面と対向する内面、および前記ハウジングの内周面と対向する外周面が樹脂で形成され、前記樹脂の前記外周面の下端から下方へ突出する複数枚の弾性金属板片を有する複合構造をしており、
前記各弾性金属板片は、前記ハウジングの内底面と接し、前記樹脂シート全体を前記ハウジングの開口方向に弾力付勢していることを特徴とする、ボールジョイント。 - 前記樹脂シートが、展開状に形成された複数枚のばね板片を含むばね鋼板を円筒状に曲げた後、前記ばね板片のみが露出するように樹脂インサート成形されたことを特徴とする、請求項1に記載のボールジョイント。
- 前記ばね板片を前記ハウジングの前記内底面に沿わせるための曲げ加工と、前記ハウジング開口部のかしめ加工とが同時に行われて形成されたことを特徴とする、請求項2に記載のボールジョイント。
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