以下、本発明の実施の形態に係る制御システムおよびそれを備える鞍乗り型車両について図面を用いて説明する。なお、以下の説明においては、鞍乗り型車両の一例として自動二輪車を説明する。
(1)自動二輪車の概略構成
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車を示す概略側面図である。
図1の自動二輪車100においては、本体フレーム101の前端にヘッドパイプ102が設けられる。ヘッドパイプ102にフロントフォーク103が左右方向に揺動可能に設けられる。フロントフォーク103の下端に前輪104が回転可能に支持される。ヘッドパイプ102の上端にはハンドル105が設けられる。
図2は、自動二輪車100のハンドル105の上面図である。ハンドル105には、クラッチレバー105a、アクセルグリップ106およびアクセル開度センサSE1が設けられる。アクセル開度センサSE1は、運転者によるアクセルグリップ106の操作量(以下、アクセル開度と称する)を検出する。
図1に示すように、本体フレーム101の中央部には、エンジン107が設けられる。エンジン107には、吸気管79および排気管118が取り付けられる。エンジン107の下部には、クランクケース109が取り付けられる。クランクケース109内には、クランク角センサSE2が設けられる。クランク角センサSE2は、エンジン107の後述するクランク2(図3および図20参照)の回転角度を検出する。
また、吸気管79内には、スロットルセンサSE3が設けられる。スロットルセンサSE3は、後述する電子制御式スロットルバルブ(ETV)82(図20参照)の開度を検出する。
本体フレーム101の下部には、クランクケース109に連結されるミッションケース110が設けられる。ミッションケース110内には、シフトカム回転角センサSE4、ドライブ軸回転速度センサSE5、後述する変速機5(図3参照)および後述するシフト機構7(図3参照)が設けられる。
シフトカム回転角センサSE4は、後述するシフトカム7b(図3参照)の回転角度を検出する。ドライブ軸回転速度センサSE5は、後述するドライブ軸5b(図3参照)の回転速度を検出する。変速機5およびシフト機構7の詳細は後述する。
ミッションケース110の側部には、シフトペダル210が設けられる。シフトペダル210は、後述するペダルアーム211(図3および図5参照)に一体的に取り付けられている。シフトペダル210の後方にはバックステップ120が設けられる。バックステップ120は、本体フレーム101により支持される。
さらに、ミッションケース110の側部には、第1のリンク機構220が設けられる。第1のリンク機構220は、第1〜第3のスイッチSW1〜SW3を備える。シフトペダル210および第1のリンク機構220の詳細は後述する。
エンジン107の上部には燃料タンク112が設けられ、燃料タンク112の後方には2つのシート113が前後に並ぶように設けられる。前方のシート113の下部には、ECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)50が設けられる。
ECU50は、後述するI/F(インターフェース)501、CPU(中央演算処理装置)502、ROM(リードオンリメモリ)503およびRAM(ランダムアクセスメモリ)504を含む(図20参照)。
上記のセンサSE1〜SE5の検出値は、I/F501を介してCPU502に与えられる。また、第1〜第3のスイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態を示す電気信号が、I/F501を介してCPU502に与えられる。
CPU502は、後述するように、各センサSE1〜SE5の検出値および第1〜第3のスイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態を示す電気信号に基づいてエンジン107の動作を制御する。ROM503は、CPU502の制御プログラム等を記憶する。RAM504は、種々のデータを記憶するとともにCPU502の作業領域として機能する。
図1のエンジン107の後方に延びるように、本体フレーム101にリアアーム114が接続される。リアアーム114は、後輪115および後輪ドリブンスプロケット116を回転可能に保持する。後輪ドリブンスプロケット116には、チェーン117が取り付けられる。
エンジン107の排気ポートに排気管118の一端が取り付けられる。排気管118の他端に、マフラー119が取り付けられる。
(2)変速機およびシフト機構の概略構成
図3は、図1のミッションケース110内に設けられる変速機およびシフト機構の概略構成を説明するための図である。
図3に示すように、変速機5は、メイン軸5aおよびドライブ軸5bを備える。メイン軸5aには複数の変速ギア5cが装着されており、ドライブ軸5bには複数の変速ギア5dおよび後輪ドライブスプロケット5eが装着されている。後輪ドライブスプロケット5eには、図1のチェーン117が取り付けられる。
図1のエンジン107により発生されるトルクは図3のクランク2を介してクラッチ3に伝達される。クラッチ3に伝達されたトルクは、変速機5のメイン軸5aに伝達される。メイン軸5aに伝達されたトルクは、変速ギア5c,5dを介してドライブ軸5bに伝達される。ドライブ軸5bに伝達されたトルクは、後輪ドライブスプロケット5e、チェーン117(図1)および後輪ドリブンスプロケット116(図1)を介して後輪115(図1)に伝達される。それにより、後輪115が回転する。
エンジン107の回転時においては、クランク角センサSE2により検出されたクランク2の回転角度がECU50に与えられる。また、ドライブ軸回転速度センサSE5により検出されたドライブ軸5bの回転速度がECU50に与えられる。
図4は、メイン軸5aに伝達されたトルクがドライブ軸5bに伝達される構成を示す概略図である。
なお、図4(a)および図4(b)においては、複数の変速ギア5cのうちの変速ギア5c1および変速ギア5c2が示され、複数の変速ギア5dのうちの変速ギア5d1および変速ギア5d2が示されている。
変速ギア5c1は、セレーション構造によりメイン軸5aに装着されている。すなわち、変速ギア5c1は、メイン軸5aの軸方向においては移動自在であるが、メイン軸5aの回転方向においてはメイン軸5aに固定されている。そのため、変速ギア5c1は、メイン軸5aが回転することにより回転する。変速ギア5c2は、メイン軸5aの軸方向における移動が禁止された状態でメイン軸5aに回転自在に装着されている。
変速ギア5d1は、ドライブ軸5bの軸方向における移動が禁止された状態でドライブ軸5bに回転自在に装着されている。図4(a)に示すように、変速ギア5c1と変速ギア5d1とが噛み合っている場合には、メイン軸5aが回転することにより変速ギア5d1が回転する。
変速ギア5d2は、セレーション構造によりドライブ軸5bに装着されている。すなわち、変速ギア5d2は、ドライブ軸5bの軸方向においては移動自在であるが、ドライブ軸5bの回転方向においてはドライブ軸5bに固定されている。そのため、ドライブ軸5bは、変速ギア5d2が回転することにより回転する。
図4(a)に示すように、変速ギア5d2が変速ギア5d1から離間している場合には、変速ギア5d1は、ドライブ軸5bの回転方向においてドライブ軸5bに固定されていない。この場合、メイン軸5aが回転することにより、変速ギア5d1が回転するが、ドライブ軸5bは回転しない。このように、メイン軸5aからドライブ軸5bにトルクが伝達されない状態をギアがニュートラルポジションにあると呼ぶ。
図4(b)に示すように、変速ギア5d2が変速ギア5d1に近接するように軸方向に移動することにより、変速ギア5d2の側面に設けられた凸状のドグ5fが、変速ギア5d1の側面に設けられた凹状のドグ穴(図示せず)に係合する。それにより、変速ギア5d1と変速ギア5d2とが固定される。この場合、メイン軸5aが回転することにより、変速ギア5d1とともに変速ギア5d2が回転する。それにより、ドライブ軸5bが回転する。
なお、図4(a)の状態から、変速ギア5c1を変速ギア5c2に近接させ、変速ギア5c1と変速ギア5c2とを固定した場合には、変速ギア5c2は変速ギア5c1とともに回転する。この場合、変速ギア5d2は、変速ギア5c2の回転に基づいて回転する。それにより、ドライブ軸5bが回転する。以下、変速ギア5c1,5d2のように、メイン軸5aまたはドライブ軸5b上を軸方向に移動する変速ギアをスライドギアと称する。また、変速ギア5c2,5d1のように、メイン軸5aまたはドライブ軸5bの軸方向における移動が禁止された変速ギアをフィックスギアと称する。
このように、変速機5においては、スライドギアを移動させ、スライドギアとフィックスギアとの組み合わせを変更することにより、メイン軸5aからドライブ軸5bへのトルクの伝達経路を変更することができる。それにより、メイン軸5aの回転速度に対してドライブ軸5bの回転速度を相対的に変更することができる。なお、スライドギアは、後述するシフト機構7(図3)により移動される。
図3に戻り、シフト機構7は、シフトペダル210、ペダルアーム211、第1のリンク機構220、シフト軸250、第2のリンク機構260、ストッパープレート300、シフトカム7bおよび第1〜第3のシフトフォークc1〜c3を備える。
後述するように、運転者はシフトペダル210を踏み込むまたは蹴り上げる(以下、シフト操作と称する)。この場合、図3の太い矢印で示すように、シフト操作によりシフトペダル210に加わる荷重は、ペダルアーム211および第1のリンク機構220を通してシフト軸250に伝達される。これにより、シフト軸250が回転する。さらに、シフト軸250に伝達されたトルクは、第2のリンク機構260を通してシフトカム7bに伝達される。
シフトカム7bには、第1〜第3のカム溝d1〜d3が形成されている。各シフトフォークc1〜c3は、摺動ピンe1〜e3により第1〜第3のカム溝d1〜d3にそれぞれ連結される。シフトカム7bの一端には、ストッパープレート300が取り付けられる。さらに、シフトカム7bの一端部近傍には、ストッパープレート300に近接してシフトカム回転角センサSE4が設けられる。エンジン107の回転時においては、シフトカム回転角センサSE4により検出されたシフトカム7bの回転角度がECU50に与えられる。
シフト操作によりシフトカム7bが回転すると、各シフトフォークc1〜c3に連結される摺動ピンe1〜e3が各カム溝d1〜d3内を移動する。それにより、各シフトフォークc1〜c3が移動し、スライドギアが移動される。その結果、変速機5の変速比が変更される。
ここで、第1のリンク機構220においては、シフト操作時にペダルアーム211とシフト軸250との間で発生する荷重の大きさに応じて、第1および第2のスイッチSW1,SW2のオン/オフ状態が切り替えられる。また、シフト操作時のシフト軸250の回転に応じて、第3のスイッチSW3のオン/オフ状態が切り替えられる。各スイッチSW1〜SW3はスイッチ信号出力部SWSに接続されている。スイッチ信号出力部SWSにより、各スイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態を示す電気信号がECU50に与えられる。
これにより、ECU50は、各スイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態に基づいて運転者によるシフト操作の開始および終了を検出する。
(3)シフト機構の詳細
以下、シフト機構7について図面を用いて詳細に説明する。
(3−1)シフトペダルからシフト軸への荷重の伝達経路
図5は、図1および図3の第1のリンク機構220およびシフトペダル210の外観を示す側面図である。
図5に示すように、シフトペダル210は、略水平方向に延びるペダルアーム211の一端に一体的に取り付けられる。ペダルアーム211の略中央部には、支持部材212が設けられる。ペダルアーム211は、本体フレーム101(図1)から水平方向に延びる図示しない支持軸に支持部材212により回転可能に取り付けられる。ペダルアーム211の他端は、連結端213として第1のリンク機構220に接続される。
第1のリンク機構220は、リンク軸221、回転片230、回転プレート240および2つの連結部材LA,LBを含む。リンク軸221は、第1の検出軸220Aおよび第2の検出軸220Bが連結された構成を有する。
リンク軸221の第1の検出軸220A側の一方端220aには、連結部材LAが取り付けられる。連結部材LAに回転片230の一端が回転可能に接続される。回転片230の他端は、セレーション構造によりシフト軸250に装着されている。これにより、回転片230は、連結部材LAがリンク軸221の軸方向(上下方向)に移動することにより、シフト軸250を中心として回転する。
リンク軸221の第2の検出軸220B側の他方端220bには、連結部材LBが取り付けられる。リンク軸221の他方端220bは、連結部材LBを介してペダルアーム211の他方端213に接続される。
シフト軸250には、ネジMにより回転プレート240が取り付けられている。回転プレート240は、シフト軸250の回転とともに回転する。
運転者は、バックステップ120に左足を乗せた状態で、バックステップ120を支点としてシフトペダル210を踏み込みまたは蹴り上げることによりシフト操作を行う。
本例のシフト機構7(図3)には、リターン式の変速方式が適用される。このシフト機構7においては、例えばシフトペダル210が蹴り上げられることにより、2速から6速までのシフトアップ操作が行われる。また、シフトペダル210が踏み込まれることにより、ニュートラルから1速へのシフトアップ操作、または6速から1速までのシフトダウン操作が行われる。
ここで、図5に太い一点鎖線の矢印SU1で示すように、運転者の左足FL2によりシフトペダル210が蹴り上げられると、ペダルアーム211が支持部材212を中心として反時計回りに回転する。
これにより、太い一点鎖線の矢印SU2で示すように、連結部材LBが下方へ引き下げられる。すなわち、リンク軸221の他方端220bが下方へ引き下げられる。
それにより、連結部材LAが下方に引き下げられる。そして、太い一点鎖線の矢印SU3で示すように、回転片230の一端がシフト軸250を中心として反時計回りに回転する。このようにして、シフトペダル210に加えられた荷重が、シフト軸250に伝達される。このとき、リンク軸221には引張荷重が作用する。
リンク軸221を構成する第1の検出軸220Aに第1のスイッチSW1が設けられている。第1のスイッチSW1は、リンク軸221に加わる引張荷重が所定値よりも小さい場合にオフ状態となり、引張荷重が所定値以上である場合にオン状態となる。
一方、図5に太い点線の矢印SD1で示すように、運転者の左足FL1によりシフトペダル210が踏み込まれると、ペダルアーム211が支持部材212を中心として時計回りに回転する。
これにより、太い点線の矢印SD2で示すように、連結部材LBが上方へ押し上げられる。すなわち、リンク軸221の他方端220bが上方へ押し上げられる。
それにより、連結部材LAが上方に押し上げられる。そして、太い点線の矢印SD3で示すように、回転片230の一端がシフト軸250を中心として時計回りに回転する。このようにして、シフトペダル210に加えられた荷重が、シフト軸250に伝達される。このとき、リンク軸221には圧縮荷重が作用する。
リンク軸221を構成する第2の検出軸220Bには、上述の第2のスイッチSW2が設けられている。第2のスイッチSW2は、リンク軸221に加わる圧縮荷重が所定値よりも小さい場合にオフ状態となり、圧縮荷重が所定値以上である場合にオン状態となる。
ここで、回転プレート240には、第3のスイッチSW3の一部を構成する電極PBが設けられている。第3のスイッチSW3は、シフト操作が行われずにシフト軸250が回転していないときにオン状態となり、シフト操作が行われることによりシフト軸250が回転したときにオフ状態となる。
以下の説明においては、第1および第2のスイッチSW1,SW2のオン/オフ状態が切り替わるときにリンク軸221に加わる引張荷重および圧縮荷重を示す所定値を第1の荷重しきい値と称する。
(3−2)シフト軸からシフトカムへの荷重の伝達経路
図6は、図3のシフト軸250、第2のリンク機構260およびシフトカム7bの連結状態を示す模式的断面図である。
図6に示すように、シフト軸250の一端に回転片230が装着されている。シフト軸250における回転片230の装着部分には、回転プレート240、固定プレート241、ワッシャ240A,240Bおよびリングガイド242がネジMにより取り付けられる。
シフト軸250は、複数のベアリングBEによりミッションケース110(図1)のケース本体110Bに回転可能に支持される。
シフト軸250の他端には、第2のリンク機構260が設けられる。第2のリンク機構260は、位置決めアーム251、ローラ252、ピン253、固定ピン251F、バネ251S、ラチェットアーム261、固定ピン262、バネ261S、爪部材270およびストッパープレート300を含む。
第2のリンク機構260における各部材の接続状態および動作についての詳細は後述する。
シフト軸250と平行に並ぶように、シフトカム7bが複数のベアリングBEによりケース本体110Bに回転可能に支持される。シフトカム7bの一端は、第2のリンク機構260のストッパープレート300に接続される。
シフト操作によりシフト軸250に荷重が伝達されると、シフト軸250が一方向または逆方向に回転する。これにより、第2のリンク機構260においては、シフト軸250の回転角度に応じてストッパープレート300が所定角度回転する。
ここで、シフトカム7bは、回転方向においてストッパープレート300に固定されている。したがって、ストッパープレート300が所定角度回転すると、シフトカム7bも所定角度回転する。このようにして、シフト操作時にシフトペダル210に加えられた荷重がシフトカム7bに伝達される。
これにより、シフトカム7bに連結された図3のシフトフォークc1〜c3の少なくとも1つがシフトカム7bの軸心と平行な方向にスライドする。それにより、シフト操作が完了する。
(3−3)リンク軸の構造の詳細
第1のリンク機構220を構成するリンク軸221の詳細を説明する。
図7(a)はリンク軸221を一側方から見た図であり、図7(b)はリンク軸221を他側方から見た図である。また、図7(c)はリンク軸221を一端側から見た図であり、図7(d)はリンク軸221を他端側から見た図である。図8は図7(a)のリンク軸221のZ−Z線断面図である。
図7(a)、図7(b)および図8に示すように、リンク軸221は、主として第1の検出軸220Aおよび第2の検出軸220Bから構成されている。
(3−3−a)第1の検出軸の構造
図9(a)に図7(a)のZ−Z線における第1の検出軸220Aの拡大断面図が示され、図9(b)に図7(b)のY−Y線における第1の検出軸220Aの拡大断面図が示されている。
図9(a)および図9(b)に示すように、第1の検出軸220Aは、第1の筒状部材229、第1の棒状部材222、バネS2、第1の蓋部材223および第1のスイッチSW1を含む。
第1の筒状部材229は、第1の棒状部材222の外径よりも大きい内径を有する。第1の検出軸220Aに第1の筒状部材229の一端から他端にかけて第1の棒状部材222が挿通される。
第1の棒状部材222は、一端側にフランジ部222Fを有する。第1の棒状部材222において、他端近傍の外周面にはネジ切り加工が施されている。第1の棒状部材222が第1の筒状部材229に挿通された状態で、第1の棒状部材222の他端が第1の筒状部材229の他端から突出する。
第1の筒状部材229の他端近傍における内周部には、バネ当接面229Dが形成されている。また、第1の棒状部材222のフランジ部222F近傍における外周部にバネ当接面222Dが形成されている。
第1の筒状部材229の内周面と第1の棒状部材222の外周面との間の空間にバネS2が挿入されている。これにより、バネS2の一端が第1の棒状部材222のバネ当接面222Dに当接し、バネS2の他端が第1の筒状部材229のバネ当接面229Dに当接する。第1の棒状部材222は、バネS2の弾性力により第1の筒状部材229の他端側から一端側に向かって押し出されるように付勢される。
この状態で、第1の筒状部材229の一端面229T(図9(b))に第1の蓋部材223がネジMにより取り付けられる。これにより、第1の棒状部材222の一端面222T(図9(a))が第1の蓋部材223の端面223Tに当接する。それにより、第1の棒状部材222がバネS2の弾性力により第1の筒状部材229内で位置決めされる。
図9(a)に示すように、第1の筒状部材229の一端側には、第1の棒状部材222のフランジ部222Fに対向する規制面229Sが形成されている。第1の棒状部材222がバネS2の弾性力により位置決めされた状態で、フランジ部222Fと規制面229Sとの間には隙間G1が形成される。
図10は、図9(a)の第1の検出軸220Aに第1の荷重しきい値以上の引張荷重が作用した場合の拡大断面図である。
第1の棒状部材222の他端に第1の棒状部材222を第1の筒状部材229から引き抜くように第1の荷重しきい値以上の荷重が加わると、第1の棒状部材222はバネS2の弾性力に抗して第1の筒状部材229の一端から他端に向かう方向に隙間G1分移動する。これにより、フランジ部222Fが規制面229Sに当接する。
本実施の形態において、第1の検出軸220Aの第1の筒状部材229および第1の棒状部材222には、絶縁材料が用いられる。ここで、第1の検出軸220Aの一端部近傍には、第1のスイッチSW1が設けられる。第1のスイッチSW1は、バネS1、釣鐘状の電極PA、棒状の電極PBおよび固定片224により構成される。
図7(c)、図9(a)および図10に示すように、第1のスイッチSW1の固定片224は、第1の筒状部材229の一端にネジMにより取り付けられる。これにより、固定片224の一面が第1の棒状部材222のフランジ部222Fに接触する。固定片224には、一面から他面に貫通する貫通孔224hが形成されている。この貫通孔224hに電極PBが取り付けられる。このとき、電極PBは、その一端が固定片224の一面と面一となるように支持される。なお、電極PBの他端には、2つのナットNにより図示しない信号線の一端が接続される。信号線の他端は図3のスイッチ信号出力部SWSに接続される。
固定片224に接触する第1の棒状部材222のフランジ部222Fの一面には、第1の検出軸220Aに引張荷重が作用しない状態で固定片224の貫通孔224hから上記の隙間G1分ずれた箇所に縦孔222hが形成されている。この縦孔222hに、バネS1および電極PAがこの順で収容される。なお、電極PAは接地電極として用いられる。
これにより、第1の検出軸220Aに引張荷重が作用しない場合には、縦孔222hの内部で、バネS1が電極PAを固定片224の一面に向かって付勢する。そのため、図9(a)に示すように、電極PA,PB間に電気的接点が存在しないので、第1のスイッチSW1がオフ状態となる。
一方、第1の検出軸220Aに第1の荷重しきい値以上の引張荷重が作用する場合には、第1の棒状部材222が第1の筒状部材229に対して隙間G1分移動するため、図10に示すように、電極PAが電極PBに接触する。これにより、第1のスイッチSW1がオン状態となる。
(3−3−b)第2の検出軸の構造
図11(a)に図7(a)のZ−Z線における第2の検出軸220Bの拡大断面図が示され、図11(b)に図7(b)のY−Y線における第2の検出軸220Bの拡大断面図が示されている。
図11(a)および図11(b)に示すように、第2の検出軸220Bは、第2の筒状部材225、第2の棒状部材226、バネS3、第2の蓋部材227および第2のスイッチSW2を含む。
第2の筒状部材225は、第2の棒状部材226の外径よりも大きい内径を有する。第2の検出軸220Bに、第2の筒状部材225の他端から一端に向かって第2の棒状部材226が挿入される。
第2の棒状部材226は、他端近傍にフランジ部226Fを有する。第2の棒状部材226の他端面には、第2の棒状部材226の軸心に沿うようにネジ孔226hが形成されている。
第2の筒状部材225の一端近傍における内周部には、バネ当接面225Dが形成されている。また、第2の棒状部材226のフランジ部226F近傍における外周部にバネ当接面226Dが形成されている。
第2の筒状部材225の内周面と第2の棒状部材226の外周面との間の空間にバネS3が挿入されている。これにより、バネS3の一端が第2の筒状部材225のバネ当接面225Dに当接し、バネS3の他端が第2の棒状部材226のバネ当接面226Dに当接する。第2の棒状部材226は、バネS3の弾性力により第2の筒状部材225の一端側から他端側に向かって押し出されるように付勢される。
この状態で、第2の筒状部材225の他端面225T(図11(b))に第2の蓋部材227がネジMにより取り付けられる。これにより、第2の棒状部材226のフランジ部226Fの一部226T(図11(a))が第2の蓋部材227の端面227Tに当接する。それにより、第2の棒状部材226がバネS3の弾性力により第2の筒状部材225内で位置決めされる。
図11(a)に示すように、第2の筒状部材225の他端側には、第2の棒状部材226のフランジ部226Fに対向する規制面225Sが形成されている。第2の棒状部材226がバネS3の弾性力により位置決めされた状態で、フランジ部226Fと規制面225Sとの間には隙間G2が形成される。
図12は、図11(a)の第2の検出軸220Bに第1の荷重しきい値以上の圧縮荷重が作用した場合の拡大断面図である。
第2の棒状部材226の他端に第2の棒状部材226を第2の筒状部材225に押し込むように第1の荷重しきい値以上の荷重が加わると、第2の棒状部材226はバネS3の弾性力に抗して第2の筒状部材225の他端から一端に向かう方向に隙間G2分移動する。これにより、フランジ部226Fが規制面225Sに当接する。
本実施の形態において、第2の検出軸220Bの第2の筒状部材225および第2の棒状部材226には、絶縁材料が用いられる。ここで、第2の検出軸220Bの他端部近傍には、第2のスイッチSW2が設けられる。第2のスイッチSW2は、バネS4、釣鐘状の電極PA、棒状の電極PBおよび固定片228により構成される。
図7(d)、図11(a)および図12に示すように、第2のスイッチSW2の固定片228は、第2の筒状部材225の他端にネジMにより取り付けられる。これにより、固定片228の一面が第2の棒状部材226のフランジ部226Fに接触する。固定片228には、一面から他面に貫通する貫通孔228hが形成されている。この貫通孔228hに電極PBが取り付けられる。このとき、電極PBは、その一端が固定片228の一面と面一となるように支持される。なお、電極PBの他端には、2つのナットNにより図示しない信号線の一端が接続される。信号線の他端は図3のスイッチ信号出力部SWSに接続される。
固定片228に接触する第2の棒状部材226のフランジ部226Fの一面には、第2の検出軸220Bに圧縮荷重が作用しない状態で固定片228の貫通孔228hから上記の隙間G2分ずれた箇所に縦孔226hが形成されている。この縦孔226hに、バネS4および電極PAがこの順で収容される。なお、電極PAは接地電極として用いられる。
これにより、第2の検出軸220Bに圧縮荷重が作用しない場合には、縦孔226hの内部で、バネS4が電極PAを固定片228の一面に向かって付勢する。そのため、図11(a)に示すように、電極PA,PB間に電気的接点が存在しないので、第2のスイッチSW2がオフ状態となる。
一方、第2の検出軸220Bに第1の荷重しきい値以上の圧縮荷重が作用する場合には、第2の棒状部材226が第2の筒状部材225に対して隙間G2分移動するため、図12に示すように、電極PAが電極PBに接触する。これにより、第2のスイッチSW2がオン状態となる。
図11に示すように、第2の検出軸220Bにおいて、第2の筒状部材225の一端近傍の内周面225Kにはネジ切り加工が施されている。これにより、図8に示すように、第1の検出軸220Aおよび第2の検出軸220Bは、第1の棒状部材222の他端が第2の筒状部材225の一端に取り付けられることにより連結される。それにより、リンク軸221が組み立てられる。
(3−4)第3のスイッチおよびその周辺部材の構造の詳細
図13および図14は、第3のスイッチSW3およびその周辺部材の構造を説明するための図である。
図13に第3のスイッチSW3およびその周辺部材の縦断面図が示されている。また、図14(a)に第3のスイッチSW3およびその周辺部材を一側方から見た外観図が示され、図14(b)に図14(a)のX−X線断面図が示されている。
図13および図14(a)に示すように、シフト軸250の一端には、回転片230が装着されるとともに、リングガイド242、ワッシャ240A、固定プレート241、ワッシャ240Bおよび回転プレート240がこの順でネジMにより取り付けられる。
この状態で、回転プレート240はシフト軸250の回転とともに、シフト軸250を中心として回転する。一方、固定プレート241は、シフト軸250に取り付けられるとともに、ネジMによりミッションケース110(図1)のケース本体110Bに接続されている。すなわち、固定プレート241はケース本体110Bに固定されている。そのため、シフト軸250が回転する場合には、回転プレート240が固定プレート241に対して相対的に回転する。
本実施の形態において、回転プレート240および固定プレート241には、絶縁材料が用いられる。これらの部材に第3のスイッチSW3が取り付けられる。
第3のスイッチSW3は、バネS5、釣鐘状の電極PAおよび棒状の電極PBを備える。上記の回転プレート240には、貫通孔240hが形成されている。この貫通孔240hに電極PBがナットNにより取り付けられる。電極PBは、その一端が回転プレート240の一面と面一となるように支持される。なお、電極PBの他端には、2つのナットNにより図示しない信号線の一端が接続される。信号線の他端は図3のスイッチ信号出力部SWSに接続される。
固定プレート241においては、シフト操作が行われない状態で回転プレート240に取り付けられた電極PBと対向する箇所に貫通孔241hが形成されている。
また、ミッションケース110のケース本体110Bにおいて、固定プレート241の貫通孔241hの形成箇所には横孔110hが形成されている。この横孔110hには、バネS5および電極PAがこの順で収容される。なお、電極PAは接地電極として用いられる。
これにより、横孔110hにおいては、バネS5が電極PAを回転プレート240の一面に向かって付勢する。それにより、シフト軸250が回転しない状態においては、電極PAが回転プレート240に取り付けられた電極PBに接触する。これにより、第3のスイッチSW3がオン状態となる。
一方、シフト軸250が回転すると、回転プレート240がシフト軸250を中心として回転する。例えば、図5のシフトペダル210が運転者により蹴り上げられた場合、図14(a)および図14(b)に太い一点鎖線の矢印SU3で示すように、回転プレート240はシフト軸250を中心として反時計回りに回転する。これにより、回転プレート240に取り付けられた電極PBが、固定プレート241側の電極PAから離間するように一側方へ移動する。
また、図5のシフトペダル210が運転者により踏み込まれた場合、図14(a)および図14(b)に太い一点鎖線の矢印SD3で示すように、回転プレート240はシフト軸250を中心として時計回りに回転する。これにより、回転プレート240に取り付けられた電極PBが、固定プレート241側の電極PAから離間するように他側方へ移動する。
これにより、運転者によりシフト操作が行われるときには、電極PA,PB間に電気的接点が存在しなくなるので、第3のスイッチSW3がオフ状態となる。
(3−5)ストッパープレートおよびその周辺部材の構造と動作
本実施の形態において、図3の変速機5は、ニュートラルポジションおよび1〜6速のギアポジションを有する。シフト操作によりシフトカム7b(図3および図6)が回転されることにより、変速機5のギアポジションがニュートラル、1速、2速、3速、4速、5速および6速のいずれかに設定される。
一度のシフト操作に伴うシフトカム7bの回転角度は、ストッパープレート300(図6)により規制される。以下、図面を用いてストッパープレート300およびその周辺部材の構造について説明する。
図15は、ストッパープレート300およびその周辺部材を一側方から見た図である。図15においては、各部材の位置関係を明瞭にするために、図6のラチェットアーム261を点線で図示する。
図15に示すように、ストッパープレート300は、外周面に7つの凹部301〜307を有する。ストッパープレート300の外周面には、ローラ252が当接される。ローラ252は、略L字状の位置決めアーム251の一端にピン253により回転可能に取り付けられる。
位置決めアーム251の略中心部に支持部材250Fが設けられる。位置決めアーム251は、支持部材250Fによりシフト軸250に回転可能に取り付けられる。位置決めアーム251の他端には、バネ251Sの一端が取り付けられる。バネ251Sの他端は、固定ピン251Fに取り付けられる。
位置決めアーム251の他端は、バネ251Sにより固定ピン251F側に付勢される。そのため、運転者によりシフトカム7bにトルクが与えられていない場合には、ローラ252がストッパープレート300の凹部301〜307のいずれかに当接する。それにより、シフトカム7bの位置が保持される。
なお、本実施の形態においては、ローラ252が凹部301内に位置する場合には、変速機5(図3)が1速に設定され、凹部302内に位置する場合には、変速機5がニュートラルポジションに設定され、凹部303内に位置する場合には、変速機5が2速に設定される。同様に、凹部304、凹部305、凹部306および凹部307は、3速、4速、5速および6速のギアポジションにそれぞれ対応する。
シフト軸250には、位置決めアーム251に加えて、ストッパープレート300を回転させるためのラチェットアーム261が固定される。これにより、シフト軸250が回転することにより、ラチェットアーム261も回転する。
ラチェットアーム261の一端に、ブーメラン形状を有する爪部材270が取り付けられている。爪部材270は、ラチェットアーム261に所定の箇所Jを中心として回転可能に支持されるとともに、図示しないバネの弾性力により所定の角度(中立角度)に保持される。爪部材270の両端には、爪272,273が形成されている。2つの爪272,273の間に凹部274が形成されている。
ストッパープレート300の一面には、その同心円上に等角度間隔で6つの突起300Pが形成されている。ラチェットアーム261が回転すると、爪部材270の2つの爪272,273のいずれかが、6つの突起300Pのいずれかと係合する。この状態で、さらにラチェットアーム261が回転することにより、爪272,273のいずれかに係合される突起300Pがラチェットアーム261の回転方向に引張られる。これにより、ストッパープレート300が回転し、シフトカム7bも回転する。それにより、変速機5のギアポジションが変更される。
ここで、シフト操作が行われないときには、上記のようにローラ252がストッパープレート300の凹部301〜307のいずれかに当接する。それにより、ストッパープレート300に、その回転を規制する力(以下、回転規制力と呼ぶ)が働く。
そのため、シフト操作時には、回転規制力を超える力でストッパープレート300を回転させなければならない。したがって、シフト操作時においては、シフト軸250に上記の回転規制力に基づく反力が作用する。
以下、変速機5(図3)のギアポジションが3速から2速にシフトダウンされる場合を例に挙げて、シフト操作によりシフト軸250が回転される際のストッパープレート300およびその周辺部材(以下、ストッパープレート300等と略記する)の関係について説明する。
図16は、変速機5のギアポジションが3速から2速にシフトダウンされる際のストッパープレート300等の関係を示した図である。
図16で示すシフト操作時においては、シフト軸250がシフト操作前の状態を基準角度として反時計回りに所定角度回転した後、基準角度まで戻るように時計周りに回転する。
図16(a)は変速機5のギアポジションが3速に設定されているときのストッパープレート300等の関係を示す。以下の説明では、図16(a)で示されるシフト軸250の状態を基準角度とする。
図16(b)はシフト軸250が図16(a)の状態から反時計回りに回転し、シフト軸250の回転角度DEが1.4度となったときのストッパープレート300等の関係を示す。
図16(c)はシフト軸250が図16(b)の状態からさらに反時計回りに回転し、シフト軸250の回転角度DEが9.2度となったときのストッパープレート300等の関係を示す。
図16(d)はシフト軸250が図16(c)の状態からさらに反時計回りに回転し、シフト軸250の回転角度DEが11.2度となったときのストッパープレート300等の関係を示す。
図16(e)はシフト軸250が図16(d)の状態からさらに反時計回りに回転し、シフト軸250の回転角度DEが14度となったときのストッパープレート300等の関係を示す。
図16(f)はシフト軸250が図16(e)の状態から時計回りに回転し、シフト軸250の回転角度DEが12.3度となったときのストッパープレート300等の関係を示す。
図16(g)はシフト軸250が図16(f)の状態からさらに時計回りに回転し、シフト軸250の回転角度DEが3.8度となったときのストッパープレート300等の関係を示す。
図16(h)はシフト軸250が図16(g)の状態からさらに時計回りに回転し、シフト軸250の回転角度DEが0度となったときのストッパープレート300等の関係を示す。図16(h)においては、シフト操作が終了することにより変速機5のギアポジションが2速に設定されている。
なお、図16おいては、ストッパープレート300に形成された複数の突起300P(図15)を個別に識別するため、各突起300Pに対して符号v1,v2,v3,v4,v5,v6を付している。
図16(a)に示すように、変速機5のギアポジションが3速に設定され、シフト操作が行われていないときには、シフト軸250にトルクが伝達されない。
それにより、ラチェットアーム261に設けられた爪部材270はストッパープレート300の突起v1〜v6のいずれにも当接しない。また、この場合、ストッパープレート300の凹部304にローラ252が当接することにより、ストッパープレート300の回転が規制される。
図16(b)に示すように、運転者が図5のシフトペダル210に軽く左足FL1をかけることによりシフト軸250の回転角度DEが1.4度となった場合、シフト軸250の回転とともにラチェットアーム261がわずかに反時計回りに回転する。それにより、爪部材270の一方の爪272がストッパープレート300の突起v4に当接する。
このとき、ストッパープレート300には、大きなトルクが発生しない。そのため、ストッパープレート300は、図16(a)の状態と同様にローラ252により回転が規制される。
図16(c)に示すように、運転者が図5のシフトペダル210を踏み込むことによりシフト軸250の回転角度DEが9.2度となった場合、シフト軸250の回転とともにラチェットアーム261が反時計回りに回転する。それにより、ストッパープレート300の突起v4は、爪部材270の爪272に係合された状態で、ラチェットアーム261のトルクを受けて反時計回りに回転される。
このとき、ストッパープレート300に、大きなトルクが発生する。これにより、ストッパープレート300はローラ252による回転規制力に抗して回転する。それにより、ローラ252が、ストッパープレート300における凹部304と凹部303との間の凸部308に乗り上げられる。
図16(d)に示すように、運転者が図5のシフトペダル210をさらに踏み込むことによりシフト軸250の回転角度DEが11.2度となった場合、ラチェットアーム261が反時計回りにさらに回転する。それにより、ストッパープレート300の突起v4と爪部材270の爪272との係合状態が解除される。それにより、ラチェットアーム261からストッパープレート300へのトルクの伝達が遮断される。
このとき、ローラ252は、ストッパープレート300における凸部308の頂点よりも凹部303側に位置する。それにより、ローラ252からストッパープレート300に働く付勢力がストッパープレート300のトルクとして作用する。その結果、ストッパープレート300は図16(c)の状態に続いて、反時計回りに回転される。
図16(e)に示すように、運転者が図5のシフトペダル210をさらに踏み込むことによりシフト軸250の回転角度DEが14度となった場合、ラチェットアーム261が反時計回りにさらに回転する。
このとき、上述のように、ストッパープレート300の突起v4と爪部材270の爪272との係合状態は解除されている。これにより、爪部材270の回転角度が、図示しないバネの弾性力により中立角度に戻される。
また、このとき、ローラ252は、ストッパープレート300の凹部303中央に当接する。これにより、ストッパープレート300の回転が規制される。
図16(f)に示すように、運転者による図5のシフトペダル210の踏み込みが終了することによりシフト軸250の回転角度DEが12.3度となった場合、ラチェットアーム261が時計回りに回転する。これにより、爪部材270の爪272の外周面にストッパープレート300の突起v3が当接する。
なお、このとき、ストッパープレート300は、ローラ252により回転が規制されている。
図16(g)に示すように、図5のシフトペダル210が元の位置に復帰してゆくことによりシフト軸250の回転角度DEが3.8度となった場合、ラチェットアーム261がさらに時計回りに回転する。
これにより、爪部材270は、ストッパープレート300の突起v3に当接しつつラチェットアーム261の所定の箇所Jを中心として回転する。
その後、図16(h)に示すように、シフト軸250の回転角度DEが0度(基準角度)となった場合、ラチェットアーム261がシフト操作前の状態に戻る。このとき、爪部材270の爪272の外周面がストッパープレート300の突起v3から離間する。これにより、爪部材270の回転角度が、図示しないバネの弾性力により中立角度に戻される。それにより、変速機5(図3)のギアポジションの3速から2速へのシフトダウン動作が終了する。
上記では、シフトダウン動作時のストッパープレート300等の動作について説明したが、シフトアップ動作時においても各部材の回転方向が逆になる点を除き上記と同様の動作が行われる。
(4)シフト荷重と第1〜第3のスイッチとの関係
図17は、シフトペダル210(図5)が踏み込まれたときにリンク軸221(図5)に加わる荷重と第1〜第3のスイッチSW1〜SW3(図3)との関係を示す図である。以下の説明では、シフト操作時にリンク軸221に加わる引張荷重または圧縮荷重をシフト荷重と総称する。
図17においては、シフトペダル210が踏み込まれたときのシフト荷重の変化が最上段に示されている。また、次段以下に第1のスイッチSW1のオン/オフ状態の変化、第2のスイッチSW2のオン/オフ状態の変化、および第3のスイッチSW3のオン/オフ状態の変化がこの順で示されている。
シフト操作前の時点t1において、リンク軸221に加わるシフト荷重はほぼ0である。したがって、第1および第2のスイッチSW1,SW2はともにオフ状態で維持される。また、この場合、シフト軸250が回転しないので、図5の回転プレート240も回転しない。そのため、第3のスイッチSW3はオン状態で維持される。
時点t1におけるストッパープレート300等の状態は、例えば図16(a)の状態に相当する。
次に、運転者がシフトペダル210に左足FL1(図5)をかけることにより、時点t1から時点t2にかけて、シフト荷重が第1の荷重しきい値TH1よりも小さい第2の荷重しきい値TH2まで上昇する。この場合、第1および第2のスイッチSW1,SW2はオフ状態で維持される。
一方、リンク軸221に第2の荷重しきい値TH2以上のシフト荷重が加わると、シフトペダル210、ペダルアーム211および第1のリンク機構220におけるたわみおよび遊び等がなくなり、シフト軸250がわずかに回転する。これにより、回転プレート240が回転するので、第3のスイッチSW3がオン状態からオフ状態に切り替えられる。
時点t2におけるストッパープレート300等の状態は、例えば図16(b)の状態に相当する。
運転者がシフトペダル210を踏み込むことにより、時点t2から時点t3にかけて、シフト荷重が第1の荷重しきい値TH1まで急峻に上昇する。この場合、リンク軸221には圧縮荷重が加わる。そのため、シフト荷重が第1の荷重しきい値TH1となることにより、第2のスイッチSW2がオフ状態からオン状態に切り替えられる。一方、リンク軸221には引張荷重が加わらないので、第1のスイッチSW1はオフ状態で維持される。このとき、シフト軸250は基準角度に戻らないので、第3のスイッチSW3はオフ状態で維持される。
時点t3におけるストッパープレート300等の状態は、例えば図16(c)の状態に相当する。
運転者がシフトペダル210を踏み込んだ状態で、時点t3から時点t4にかけて、シフト荷重が第1の荷重しきい値TH1以上で維持される。この場合、第1のスイッチSW1はオフ状態で維持され、第2のスイッチSW2はオン状態で維持される。また、第3のスイッチSW3はオフ状態で維持される。
続いて、運転者がシフトペダル210を踏み込んだ状態で、時点t4を経過してから時点t5になるまでの間、シフト荷重が一時的に第1の荷重しきい値TH1よりも小さくなる。これにより、時点t4において、第2のスイッチSW2がオン状態からオフ状態に切り替えられる。そして、時点t5において、第2のスイッチSW2がオフ状態から再びオン状態に切り替えられる。一方、第1のスイッチSW1はオフ状態で維持される。また、時点t4を経過してから時点t5になるまでの間においても、シフト軸250は基準角度に戻らないので、第3のスイッチSW3はオフ状態で維持される。
ここで、運転者がシフトペダル210を踏み込んでいるにもかかわらず、シフト荷重が一時的に小さくなることの理由について説明する。
時点t4を経過してから時点t5になるまでの間におけるストッパープレート300等の状態は、例えば図16(d)の状態に相当する。図16(d)の状態においては、上述のように、ローラ252からストッパープレート300に働く付勢力がストッパープレート300のトルクとして作用する。したがって、ストッパープレート300には回転規制力が発生しない。そのため、シフト軸250に上記の回転規制力に基づく反力が作用しない。それにより、シフト軸250からストッパープレート300に伝達される荷重が一時的に小さくなる。その結果、上述のようにシフト荷重が一時的に低下する。
図17の説明に戻り、運転者によりシフトペダル210がさらに踏み込まれることにより、時点t5から時点t6においては、シフト荷重が第1の荷重しきい値TH1以上で維持される。
これにより、第2のスイッチSW2はオン状態で維持される。一方、第1のスイッチSW1はオフ状態で維持される。このとき、シフト軸250は基準角度に戻らないので、第3のスイッチSW3はオフ状態で維持される。
時点t5から時点t6におけるストッパープレート300等の状態は、例えば図16(e)の状態に相当する。
運転者によりシフトペダル210の踏み込みが終了することにより、時点t6から時点t7にかけて、シフト荷重が第1の荷重しきい値から第2の荷重しきい値TH2まで下降する。
これにより、時点t6を経過することにより、第2のスイッチSW2はオン状態からオフ状態に切り替えられる。そして、時点t7までの間、第2のスイッチSW2はオフ状態で維持される。また、シフトペダル210の踏み込みが終了しても、リンク軸221に圧縮荷重が加えられることはないので、第1のスイッチSW1はオフ状態で維持される。さらに、時点t6から時点t7においても、シフト軸250は基準角度に戻らないので、第3のスイッチSW3はオフ状態で維持される。
時点t6から時点t7におけるストッパープレート300等の状態は、例えば図16(f)および図16(g)の状態に相当する。
ここで、時点t7を経過すると、シフト荷重が第2の荷重しきい値TH2よりもさらに下降する。これにより、シフト軸250の回転角度が基準角度に戻る。それにより、時点t7の経過とともに第3のスイッチSW3がオフ状態からオン状態に切り替えられる。
時点t7から時点t8にかけては、シフト荷重が第2のしきい値TH2よりも小さいので、第1および第2のスイッチSW1,SW2がオフ状態で維持される。また、シフト軸250の回転角度が基準角度に維持されるので、第3のスイッチSW3がオン状態で維持される。
時点t7から時点t8におけるストッパープレート300等の状態は、例えば図16(h)の状態に相当する。
時点t8において、リンク軸221に加わるシフト荷重はほぼ0となる。このとき、第1および第2のスイッチSW1,SW2はともにオフ状態で維持される。また、シフト軸250の回転角度が基準角度に維持されるので、第3のスイッチSW3がオン状態で維持される。
時点t8以降において、ストッパープレート300等は、例えば図16(h)の状態で維持される。
上記では、シフトペダル210が踏み込まれたときのシフト荷重と第1〜第3のスイッチSW1〜SW3との関係について説明した。これに対して、シフトペダル210が蹴り上げられたときは、図17の括弧に示すように、第1のスイッチSW1のオン/オフ状態の変化と第2のスイッチSW2のオン/オフ状態の変化とが逆になる点を除き、シフト荷重と第1〜第3のスイッチSW1〜SW3との関係は上記と同様である。
(5)出力調整許可フラグおよび故障判定フラグ
ここで、上述のように、ECU50(図3)には、スイッチ信号出力部SWS(図3)から第1〜第3のスイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態を示す電気信号が与えられる。
ECU50においては、RAM504(図20)に予め出力調整許可フラグおよび故障判定フラグが設定されている。
出力調整許可フラグは、後述するエンジン107の出力調整を許可するか否かを示すフラグである。故障判定フラグは、第1〜第3のスイッチSW1〜SW3が故障しているか否かを示すフラグである。
ECU50のCPU502(図20)は、スイッチ信号出力部SWSから与えられる電気信号に基づいて、出力調整許可フラグおよび故障判定フラグのオン/オフを切り替える。各フラグの切り替えについて説明する。
図17には、第1〜第3のスイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態の変化とともに、各フラグのオン/オフ状態が示されている。
本実施の形態において、CPU502は、第3のスイッチSW3がオフ状態でありかつ第1および第2のスイッチSW1,SW2のいずれかがオン状態となったときに出力調整許可フラグをオフ状態からオン状態に切り替える。
また、CPU502は、第1および第2のスイッチSW1,SW2のいずれもがオフ状態でありかつ第3のスイッチSW3がオフ状態からオン状態となったときに出力調整許可フラグをオン状態からオフ状態に切り替える。
図17の例では、時点t3に、出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替えられる。また、時点t7に出力調整許可フラグがオン状態からオフ状態に切り替えられる。
さらに、CPU502は、第1〜第3のスイッチSW1〜SW3のうち少なくとも2つのスイッチがオン状態となったときに故障判定フラグをオフ状態からオン状態に切り替える。
図17の例では、第1〜第3のスイッチSW1〜SW3のうちの2つのスイッチがオン状態となることがないため、故障判定フラグが常にオフ状態となっている。
(6)フラグの設定フロー
CPU502(図21)は、後述するエンジン107の出力制御動作と並行して上述の出力調整許可フラグおよび故障判定フラグの設定動作を行う。
図18は、第1〜第3のスイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態に基づき設定されるフラグの設定動作を示すフローチャートである。なお、初期状態では、出力調整許可フラグはオフ状態となっている。
初めに、CPU502は、第1および第2のスイッチSW1,SW2のいずれか一方がオン状態であるか否かを判別する(ステップS101)。
第1および第2のスイッチSW1,SW2のいずれか一方がオン状態である場合、CPU502は、第3のスイッチSW3がオフ状態であるか否かを判別する(ステップS102)。
第3のスイッチSW3がオフ状態である場合、CPU502は、出力調整許可フラグをオン状態に設定する(ステップS103)。その後、CPU502は、第3のスイッチSW3がオン状態に切り替わったか否かを判別する(ステップS104)。
第3のスイッチSW3がオン状態に切り替わった場合、CPU502は、出力調整許可フラグをオフ状態に設定する(ステップS105)。その後、CPU502は、上記のステップS101の処理に戻る。
ステップS101において、第1および第2のスイッチSW1,SW2のいずれか一方がオン状態でない場合、CPU502は、第1および第2のスイッチSW1,SW2の両方がオン状態であるか否かを判別する(ステップS110)。
第1および第2のスイッチSW1,SW2の両方がオン状態である場合、CPU502は、故障判定フラグをオン状態に設定する(ステップS111)。この場合、フラグ設定動作が終了する。
一方、ステップS110において、第1および第2のスイッチSW1,SW2の両方がオン状態でない場合、すなわち第1および第2のスイッチSW1,SW2の両方がオフ状態である場合、CPU502は上記のステップS101の処理に戻る。
なお、ステップS104において、第3のスイッチSW3がオフ状態である場合、CPU502は、第3のスイッチSW3がオン状態に切り替わるまで待機する。
(7)エンジンの出力制御
図4を用いて説明したように、複数の変速ギア5c,5dのスライドギア(図4の変速ギア5c1,5d2)、には凸状のドグ5fが形成され、複数の変速ギア5c,5dのフィックスギア(図4の変速ギア5c2,5d1)にはドグ5fが係合される凹状のドグ穴が形成される。
図19は、スライドギアのドグとフィックスギアのドグ穴との関係を示す図である。なお、図19においては、スライドギアおよびフィックスギアのドグおよびドグ穴が形成されている部分の断面図が模式的に示されている。また、スライドギアおよびフィックスギアの図19に示す部分は、矢印で示す方向に移動(回転)しているものとする。
図19(a)は、クランク2(図3)からメイン軸5a(図3)にトルクが与えられている場合を示し、図19(b)は、メイン軸5aからクランク2にトルクが与えられている場合を示す。
以下、クランク2からメイン軸5aにトルクが与えられている場合(図19(a)の状態)をエンジン107の駆動状態と称し、その逆の場合(図1((b)の状態)をエンジン107の被駆動状態と称する。例えば、自動二輪車100が加速している場合にエンジン107が駆動状態となり、自動二輪車100が減速している場合にエンジン107が被駆動状態となる。すなわち、エンジン107の被駆動状態は、エンジンブレーキがかかっている状態である。
図19に示すように、フィックスギア51には、底面に向かって幅広となる断面台形のドグ穴52が形成されている。また、スライドギア53には、先端部に向かって幅広となる断面逆台形のドグ54が形成されている。
エンジン107の駆動状態においては、図19(a)に示すように、ドグ54の移動方向における前方側の側面がドグ穴52の移動方向における前方側の側面に当接する。これにより、スライドギア53のトルクがドグ54を介してフィックスギア51に伝達される。この場合、ドグ穴52とドグ54との接触面において大きな圧力(係合力)が発生する。したがって、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に移動させることは困難である。
また、エンジン107の被駆動状態においては、図19(b)に示すように、ドグ54の移動方向における後方側の側面がドグ穴52の移動方向における後方側の側面に当接する。これにより、フィックスギア51のトルクがドグ54を介してスライドギア53に伝達される。上述したように、エンジン107の被駆動状態においてはエンジンブレーキがかかっているので、フィックスギア51の回転は、スライドギア53によって規制される。この場合、ドグ穴52とドグ54との接触面において大きな圧力(係合力)が発生する。したがって、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に移動させることは困難である。
本実施の形態においては、ECU50(図20)のCPU502は、上記のセンサSE1〜SE5の検出値およびスイッチ信号出力部SWS(図3)からの電気信号に基づいてエンジン107の出力を調整する。
これにより、クラッチ3(図3)を切断することなく、ドグ穴52とドグ54との係合を解除させることができる。すなわち、フィックスギア51およびスライドギア53を図19(c)に示す状態にすることができる。
それにより、スライドギア53をフィックスギア51から離間する方向に移動させることが可能となる。その結果、運転者は、クラッチ3を切断することなく円滑にギアシフトを行うことができる。すなわち、クラッチレスシフトを円滑に行うことができる。以下、詳細に説明する。
(7−1)エンジンと各部との関係
図20は、エンジン107およびエンジン107の出力に関連する各部の概略構成を示す図である。
図20に示すように、エンジン107はシリンダ71を有し、シリンダ71内には、ピストン72が上下動可能に設けられる。また、シリンダ71内の上部には燃焼室73が形成される。燃焼室73は吸気ポート74および排気ポート75を介してエンジン107の外部に連通する。
吸気ポート74の下流側の開口端74aに吸気弁76が開閉自在に設けられ、排気ポート75の上流側の開口端75aに排気弁77が開閉自在に設けられる。吸気弁76および排気弁77は、通常のカム機構により駆動される。燃焼室73の上部には、燃焼室73内で火花点火を行うための点火プラグ78が設けられる。
エンジン107には、吸気ポート74と連通するように吸気管79が取り付けられ、排気ポート75と連通するように排気管118が取り付けられる。吸気管79には、シリンダ71内に燃料を供給するためのインジェクタ108が設けられる。また、吸気管79内には、電子制御式スロットルバルブ(ETV)82が設けられる。
エンジン107の作動時には、空気が吸気管79を通して吸気ポート74から燃焼室73内に吸入されるとともに、インジェクタ108により燃焼室73内に燃料が供給される。それにより、燃焼室73内で混合気が生成され、点火プラグ78により混合気に火花点火が行われる。燃焼室73内において混合気の燃焼により生じた既燃ガスは、排気ポート75から排気管118を通して排出される。
ECU50には、アクセル開度センサSE1、クランク角センサSE2、スロットルセンサSE3、シフトカム回転角センサSE4およびドライブ軸回転速度センサSE5の検出値が与えられる。
また、ECU50には、スイッチ信号出力部SWSから第1〜第3のスイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態を示す電気信号が与えられる。
(7−2)CPUの制御動作
(7−2−a)概略
本実施の形態においては、ECU50のCPU502は、通常時には、アクセル開度センサSE1の検出値に基づいてETV82のスロットル開度を調整する。それにより、エンジン107の出力がアクセル開度に応じた値に調整される。なお、アクセル開度とスロットル開度(エンジン出力)との関係は、図20のROM503またはRAM504に記憶されている。
また、CPU502は、上記のフラグ設定動作により設定されたフラグの状態に基づいて運転者のシフト操作を検出する。そして、CPU502は、運転者のシフト操作を検出したときに、エンジン107の出力を調整する。それにより、フィックスギア51(図19)とスライドギア53(図19)との係合力が低下され、運転者は容易にクラッチレスシフト(ギアシフト)を行うことができる。
さらに、CPU502は、フラグ設定動作により設定されたフラグの状態に基づいてギアシフトが完了したか否かを判別し、ギアシフトが完了した場合には、通常時のエンジン107の制御を行う。
なお、CPU502は、例えば、点火プラグ78(図20)による混合気への火花点火を停止すること、点火時期を遅角させること、またはETV82(図20)のスロットル開度を小さくすることにより、エンジン107の出力を低下させる。また、CPU502は、例えば、ETV82のスロットル開度を大きくすることによりエンジン107の出力を増加させる。
(7−2−b)エンジンの出力調整
CPU502によるエンジン107の出力調整について図面を用いて説明する。
図21は、エンジン107が駆動状態である場合に運転者がシフトアップ操作を行ったときのCPU502によるエンジン107の出力調整を説明するための図である。また、図22は、エンジン107が被駆動状態である場合に運転者がシフトダウン操作を行ったときのCPU502によるエンジン107の出力調整を説明するための図である。
なお、図21(a)および図22(a)は、出力調整許可フラグのオン/オフ状態を示している。図21(a)および図22(a)において、横軸は時間を示す。また、図21(b)および図22(b)は、シフトカム回転角センサSE4の出力波形(検出値)を示している。図21(b)および図22(b)において、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。さらに、図21(c)および図22(c)は、エンジン107の回転速度の変化を示している。図21(c)および図22(c)において、縦軸は回転速度を示し、横軸は時間を示す。
まず、図21について説明する。エンジン107が駆動状態である場合には、図21(c)に示すように、エンジン107の回転速度は時間の経過とともに上昇する。図21の例においては、エンジン107の回転速度が上昇している期間の時点u1において運転者がシフトアップ操作を開始する。なお、図21(b)では、シフトアップ前の時点u1におけるシフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)を値a1とし、シフトアップ後の時点u6におけるシフトカム回転角センサSE4の検出値を値a2とする。
運転者がシフトペダル210(図1)の操作を開始した直後は、シフトペダル210とシフトカム7b(図3)とを連結する連結機構が有するたわみおよび遊び等のためにシフトカム7bは回転しない。したがって、図21(b)に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)は、時点u2までほぼ変化しない。
図21(b)に示すように、運転者がさらにシフトペダル210を踏み込むことにより、連結機構のたわみ等がなくなり、シフトカム7b(図3)が回転する。これにより、シフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)は徐々に低下する。本例では、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、時点u2から時点u3にかけて値a1から値bにわずかに低下する。
本実施の形態においては、出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替わるときに、CPU502(図20)の制御により、エンジン107の出力が低下される。
本例では、時点u3で、出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替わり(図21(a))、エンジン107の出力が低下されている(図21(c))。なお、上述のように、エンジン107の出力の低下は、例えば点火プラグ78(図20)による混合気への火花点火を停止することにより実現される。
これにより、エンジン107の回転速度が低下し、フィックスギア51(図19)のドグ穴52(図19)とスライドギア53(図19)のドグ54(図19)との接触面における圧力(係合力)が低下する。その結果、フィックスギア51とスライドギア53とが、図19(a)で示した係合状態から図19(c)で説明した解除状態に変化する。
このとき、図21(b)に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値が値bから値cに低下する。そして、シフトカム7bの回転に伴いシフトフォークc1〜c3の移動が開始される。すなわち、時点u3においてスライドギア53の移動が開始される。
上記より、時点u3においては、エンジン107の出力が変化されるとともに、スライドギア53の移動が開始されるので、フィックスギア51およびスライドギア53の係合状態から解除状態への変化が円滑に行われる。その結果、運転者はクラッチ3(図3)を切断することなくギアシフトを行うことができる。
その後、図21(b)に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、シフトカム7b(図3)の回転角度が第1の角度(例えば約20度)に達する時点u4において値bより小さい値cになる。この時点u4において、CPU502によるエンジン107の出力低下調整が終了され、エンジン107の出力が再び増加する。それにより、図21(c)に示すように、エンジン107の回転速度が再び上昇する。このとき、1段上のギアポジションを構成するフィックスギア51とスライドギア53とが係合され(図19(a)の係合状態)、変速機5におけるシフトアップ動作が完了する。
なお、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、シフトカム7bの回転角度が第2の角度(例えば約40度)になったときに値cより小さい値dになる。このとき、CPU502は、シフトアップ動作(ギアシフト)が完了したと判別する。
次に、図22について説明する。エンジン107が被駆動状態である場合には、図22(c)に示すように、エンジン107の回転速度は時間の経過とともに低下する。図22の例においては、エンジン107の回転速度が低下している期間の時点u7において運転者がシフトダウン操作を開始する。なお、図22(b)では、シフトダウン前の時点u7におけるシフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)を値e1とし、シフトダウン後の時点u12におけるシフトカム回転角センサSE4の検出値を値e2とする。
運転者がシフトペダル210(図1)の操作を開始した直後は、シフトペダル210とシフトカム7b(図3)とを連結する連結機構が有するたわみおよび遊び等のためにシフトカム7bは回転しない。したがって、図22(b)に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)は、時点u8までほぼ変化しない。
図22(b)に示すように、運転者がさらにシフトペダル210を踏み込むことにより、連結機構のたわみ等がなくなり、シフトカム7b(図3)が回転する。それにより、シフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)は徐々に上昇する。本例では、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、時点u8から時点u9にかけて値e1から値fにわずかに上昇する。
本実施の形態においては、出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替わるときに、CPU502(図20)の制御により、エンジン107の出力が増加される。
本例では、時点u9で、出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替わり(図22(a))、エンジン107の出力が増加されている(図22(c))。なお、上述のように、エンジン107の出力の増加は、例えばETV82(図20)のスロットル開度を大きくすることにより実現される。
これにより、エンジン107の回転速度が上昇し、フィックスギア51(図19)のドグ穴52(図19)とスライドギア53(図19)のドグ54(図19)との接触面における圧力(係合力)が低下する。その結果、フィックスギア51とスライドギア53とが、図19(b)で示した係合状態から図19(c)で説明した解除状態に変化する。
このとき、図22(b)に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値が値e1から値fに上昇する。そして、シフトカム7bの回転に伴いシフトフォークc1〜c3の移動が開始される。すなわち、時点u9においてスライドギア53の移動が開始される。
上記より、時点u9においては、エンジン107の出力が変化されるとともに、スライドギア53の移動が開始されるので、フィックスギア51およびスライドギア53の係合状態から解除状態への変化が円滑に行われる。その結果、運転者はクラッチ3(図3)を切断することなくギアシフトを行うことができる。
その後、図22(b)に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、シフトカム7b(図3)の回転角度が第3の角度(例えば約20度)に達する時点u10において値fより大きい値gになる。この時点u10において、CPU502によるエンジン107の出力増加調整が終了され、エンジン107の出力が再び低下する。それにより、図22(c)に示すように、エンジン107の回転速度が再び低下する。その結果、1段下のギアポジションを構成するフィックスギア51とスライドギア53とが係合され(図19(b)の係合状態)、変速機5におけるシフトダウン動作が完了する。
なお、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、シフトカム7bの回転角度が第4の角度(例えば約40度)になったときに値gより大きい値hになる。このとき、CPU502は、シフトダウン動作(ギアシフト)が完了したと判別する。
ところで、シフトカム回転角センサSE4の検出値はギアポジションによって異なる。図23は、ギアポジションを1速と6速との間で変化させたときのシフトカム回転角センサSE4の検出値(電圧値)の一例を示す図である。なお、図23において、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。
図23に示すように、シフトカム回転角センサSE4の検出値は、ギアポジションが低速位置にある場合には高くなり、高速位置になるほど低くなる。本実施の形態においては、各ギアポジションに対応するシフトカム回転角センサSE4の値がROM503(図20)に記憶されている。CPU502(図20)は、ROM503に記憶されるシフトカム回転角センサSE4の各ギアポジションに対応する値に基づいて、エンジン107の出力制御を行う。
(7−2−c)制御フロー
次に、CPU502の制御動作をフローチャートを用いて説明する。
図24および図25は、図20のCPU502によるエンジン107の出力制御動作の一例を示すフローチャートである。なお、上述のように、CPU502は、以下に示すエンジン107の出力制御動作と平行して、上述のフラグ設定動作を行う。
初めに、CPU502は、出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替わったか否かを判別する(ステップS201)。
出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替わった場合、CPU502は、故障判定フラグがオン状態であるか否かを判別する(ステップS202)。
故障判定フラグがオン状態でない場合、CPU502は、上述のようにエンジンの出力調整を開始する(ステップS203)。
その後、CPU502は、シフトカム回転角センサSE4の検出値に基づいて、フィックスギア51とスライドギア53とが完全に係合しかつギアシフトが完了したか否かを判別する(ステップS204)。
この判別動作は、例えば図21および図22を用いて説明した第2の角度および第4の角度に対応するシフトカム回転角センサSE4の値d,hを図20のRAM504に記憶させておくことにより実現される。
フィックスギア51とスライドギア53とが完全に係合しかつギアシフトが完了した場合、CPU502は出力調整許可フラグがオン状態からオフ状態に切り替わったか否かを判別する(ステップS205)。
出力調整許可フラグがオン状態からオフ状態に切り替わった場合、CPU502は通常の制御を行う(ステップS206)。ステップS206の通常の制御においては、上述のように、CPU502は、アクセル開度センサSE1の検出値に基づいてETV82のスロットル開度を調整する。したがって、通常の制御においては、運転者のアクセルグリップ106の操作量に応じてエンジン107の出力が調整される。
ここで、ステップS204において、フィックスギア51とスライドギア53とが完全に係合しかつギアシフトが完了しない場合、CPU502は所定時間経過したか否かを判別する(ステップS210)。
これにより、所定時間が経過していない場合には、CPU502はステップS204の処理を行う。一方、所定時間が経過した場合には、CPU502はステップS205の処理に進む。
また、上記中ステップS201において、出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替わらない場合、およびステップS202において故障判定フラグがオン状態である場合、CPU502はステップS206の処理に進む。
(8)効果
(8−1)
本実施の形態に係る制御システムにおいては、運転者によりシフトペダル210にシフト操作のための荷重が加えられる。シフトペダル210に加えられた荷重は、ペダルアーム211、第1のリンク機構220、シフト軸250および第2のリンク機構260により、シフト機構7に伝達される。それにより、シフトカム7bが回転し、変速機5のギア比が切り替えられる。
ここで、運転者によりシフトペダル210(図5)が蹴り上げられると、図10に示すように、第1の棒状部材222がバネS2による付勢力に抗して第1の検出軸220Aの一端から他端に向かう方向へ移動する。そして、第1の棒状部材222が隙間G1分移動することにより、第1のスイッチSW1がオフ状態からオン状態に切り替えられる。それにより、出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替えられる。
一方、運転者によりシフトペダル210(図5)が踏み込まれると、図11に示すように、第2の棒状部材226がバネS3による付勢力に抗して第2の検出軸220Bの他端から一端に向かう方向へ移動する。そして、第2の棒状部材226が隙間G2分移動することにより、第2のスイッチSW2がオフ状態からオン状態に切り替えられる。それにより、出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替えられる。
出力調整許可フラグがオフ状態からオン状態に切り替えられたときに、エンジン107の出力調整が行われることにより、変速機5のギアの係合状態を円滑に変更することが可能となる。それにより、円滑なクラッチレスシフトが可能となる。
また、シフトペダル210が運転者に蹴り上げられ、または踏み込まれることにより、基準位置から変位した後でシフトペダル210に加えられる荷重がなくなることにより操作部材が基準位置に戻ると、第3のスイッチSW3がオフ状態からオン状態に切り替えられる。このとき、エンジン107の出力調整が禁止される。
したがって、エンジン107の出力調整が開始されると、シフトペダル210が基準位置に戻るまでエンジン107の出力調整の許可状態が維持される。そのため、例えば図17の時点t4から時点t5の期間に示すように、シフト機構7による変速機5のシフト操作の際に、シフトペダル210に加えられる荷重が一時的に第1の荷重しきい値TH1よりも小さくなるように変化しても、シフトペダル210が基準位置に戻らない限りエンジン107の出力調整は禁止されない。その結果、運転者による一度のシフト操作により、エンジン107の出力調整が誤って複数回行われることが防止される。
上記のように、運転者によるシフト操作の開始を高価な荷重センサを用いることなく第1のスイッチSW1または第2のスイッチSW2により検出し、エンジン107の出力調整を許容することができる。また、運転者のシフト操作の終了を高価な荷重センサを用いることなく検出し、エンジン107の出力調整を禁止することができる。その結果、安価な構成で確実かつ円滑なクラッチレスシフトが可能となる。
なお、本実施の形態では、リンク軸221に加わる引張荷重および圧縮荷重に対応して第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2が設けられる。これにより、本制御システムは、リターン式のシフト機構7を備える自動二輪車100に適用できる。
(8−2)
本実施の形態では、シフトペダル210に加わる荷重により移動する第1の棒状部材222(図8)および第2の棒状部材226(図8)がリンク軸221における同軸上に設けられる。そして、各棒状部材222,226は、同軸方向に移動する。これにより、シフト操作を検出するための構成を荷重の伝達経路と個別に設ける必要がないので、制御システムの小型化が実現されている。
(8−3)
上記では、変速機5のギア比の切り替えが終了したか否かが、シフトカム回転角センサSE4により検出される。そして、変速機5のギア比の切り替えが終了された場合に、エンジンの出力調整が終了される。
これにより、変速機5のギア比の切り替えが終了されるとともに、エンジン107の通常の制御が行われる。すなわち、運転者のアクセルグリップ106の操作量に応じたエンジン107の出力調整が行われる。その結果、本制御システムを備える自動二輪車100の走行フィーリングが向上する。
変速機5のギア比の切り替えが終了したか否かは、シフトカム回転角センサSE4に代えて、以下の方法により検出されてもよい。
他の方法として、ギア比の切り替えが行われている場合とギア比の切り替えが行われていない場合とで、オン/オフ状態が切り替わるスイッチを用いることもできる。この場合、そのスイッチのオン/オフ状態の切り替わりに基づいてギア比の切り替えが終了したか否かを検出することができる。
さらに他の方法として、CPU502(図20)が、ギア比の切り替えまたはエンジン107の出力調整の開始から所定時間経過することにより、ギア比の切り替えが終了したことを検出してもよい。
(8−4)
上述のように、CPU502(図20)は、第1〜第3のスイッチSW1〜SW3のうち少なくとも2つのスイッチがオン状態となったときに故障判定フラグをオフ状態からオン状態に切り替える。
そして、CPU502は、故障判定フラグがオン状態である場合に、通常の制御を行う。すなわち、CPU502は、アクセル開度センサSE1(図20)の検出値に基づいてETV82(図20)のスロットル開度を調整する。これにより、自動二輪車100の走行フィーリングの低下が防止される。
(8−5)
本実施の形態においては、点火プラグ78(図20)による混合気の点火を停止することにより、エンジン107の出力が低下される。この場合、エンジン107の出力を迅速に低下させることができる。それにより、クラッチレスシフトを迅速に行うことが可能となる。
また、図7のバネS2,S3と弾性力の異なるバネを第1の検出軸220A、第2の検出軸220Bに付け替えてもよい。この場合、第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2のオン/オフ状態を切り替えるための第1の荷重しきい値TH1を簡単に調整することができる。
上述のように、第3のスイッチSW3のオン/オフ状態は、シフト軸250の回転に応じて切り替えられる。このように、本実施の形態では、運転者によるシフト操作の終了をシフト軸250の回転角度で判別している。しかしながら、シフト操作の終了は、これに限らず、シフトペダル210の上下位置等により判別されてもよい。
(8−6)
本実施の形態では、図25のステップS204に示すように、エンジンの出力調整が開始された場合、フィックスギア51とスライドギア53とが完全に係合しかつギアシフトが完了することによりエンジンの出力調整が終了される。
これに限らず、図19(c)に示すように、フィックスギア51のドグ穴52からスライドギア53のドグ54が抜け出ることにより、エンジンの出力調整を終了してもよい。
(9)変形例
(9−1)第2の検出軸の変形例
図5の第2の検出軸220Bは、図11および図12に示す構成に代えて、以下の構成を有してもよい。
図26は、第2の検出軸220Bの一変形例を示す図である。図26(a)に圧縮荷重(シフト荷重)が加わらないときの一変形例に係る第2の検出軸220Bの断面図が示され、図26(b)に圧縮荷重が加わるときの一変形例に係る第2の検出軸220Bの断面図が示されている。本例の第2の検出軸220Bは、以下の点で図11および図12の第2の検出軸220Bと構成が異なる。
図26(a)に示すように、本例の第2の検出軸220Bにおいては、第2の筒状部材225から突出する第2の棒状部材226の端部(他端)にフランジナット227Bが取り付けられる。また、第2の棒状部材226における第2の蓋部材227とフランジナット227Bとの間の部分に、円環状のダンパーDMが取り付けられている。ダンパーDMは例えば高分子材料等の粘弾性材料により形成される。
第2の検出軸220Bに圧縮荷重が加わらない場合、フランジ部226Fと規制面225Sとの間には隙間G2が形成される。また、上記のダンパーDMがフランジナット227Bのフランジ部227Fに当接した状態で、第2の蓋部材227とダンパーDMとの間には隙間G2よりも小さい隙間G3が形成される。
図26(b)に示すように、第2の検出軸220Bに大きな圧縮荷重が加わると、図12の例と同様に、第2の棒状部材226がバネS3の弾性力に抗して第2の筒状部材225の他端から一端に向かう方向に移動する。
ここで、第2の棒状部材226の移動時においては、隙間G2よりも小さい隙間G3分移動することにより第2の蓋部材227とダンパーDMとが当接する。そして、第2の棒状部材226がさらに移動することにより、第2の蓋部材227とフランジナット227Bとの間でダンパーDMが圧縮される。
したがって、第2の棒状部材226が隙間G3分移動してから隙間G2分移動するまでの間は、第2の棒状部材226に加わる圧縮荷重の変化がダンパーDMの弾性力により緩衝される。
それにより、本構成を有する第2の検出軸220Bを用いた場合、運転者が図3のシフトペダル210を踏み込んでシフト操作を行う際のシフトフィーリングが十分に向上される。
なお、上記では、ダンパーDMに粘弾性材料を用いる旨を説明したが、ダンパーDMとして、バネを用いてもよい。
さらに、上記では第2の検出軸220Bの変形例について説明したが、第1の検出軸220Aの変形例として、例えば図9(a)に示されるフランジ部222Fと規制面229Sとの隙間G1に粘弾性材料またはバネからなるダンパーDMを設けてもよい。
この場合、第1の棒状部材222に加わる引張荷重の変化がダンパーDMの弾性力により緩衝される。それにより、運転者が図3のシフトペダル210を蹴り上げてシフト操作を行う際のシフトフィーリングが十分に向上される。
(9−2)第1および第2のスイッチの変形例
第1および第2のスイッチSW1,SW2は、図9〜図12で示す構成に代えて、以下の構成を有してもよい。
図27は、図3の第1のスイッチSW1の一変形例を示す図である。図27では一変形例に係る第1のスイッチSW1を備える第1の検出軸220Aの断面図が示されている。本例の第1のスイッチSW1は、以下の点で図9および図10の第1のスイッチSW1と構成が異なる。
図27に示すように、本例の第1のスイッチSW1は、磁石610およびホール素子を備える集積回路(以下、ホールICと略記する。)611により構成される。
本例の第1のスイッチSW1は次のように第1の検出軸220Aに取り付けられる。なお、本例では、第1の棒状部材222に非磁性体の材料が用いられる。
第1の棒状部材222のフランジ部222Fに磁石610が取り付けられる。また、フランジ部222Fに取り付けられた磁石610に対向するように、第1の筒状部材229にホールIC611が取り付けられる。ホールIC611には、信号線612の一端が接続される。信号線612の他端は図3のスイッチ信号出力部SWSに接続される。
これにより、第1の検出軸220Aに引張荷重が加わることにより第1の棒状部材222が移動すると、磁石610がホールIC611に対して相対的に移動する。それにより、ホールIC611は磁石610の移動を検出し、その移動量に応じてオン/オフ状態を示す信号をスイッチ信号出力部SWSに送出する。このように、第1のスイッチSW1には、非接触式のスイッチを用いることができる。
上記では、第1のスイッチSW1の一変形例について説明したが、第2のスイッチSW2についても同様に、非接触式のスイッチを用いることができる。
(10)他の実施の形態
上記実施の形態においては、変速機5が6段の変速比を有する場合について説明したが、変速機5が5段以下の変速比を有してもよく、7段以上の変速比を有してもよい。
上記では、シフト機構7(図3)にリターン式の変速方式が適用される旨を説明したが、上記シフト機構7に適用される変速方式は、リターン式に限定されない。例えば、シフト機構7には、ロータリー式の変速方式が適用されてもよい。
なお、ロータリー式のシフト機構7を備える自動二輪車100においては、2つのシフトペダルが設けられる。この場合、上記の第1および第2のスイッチSW1,SW2は、各シフトペダルに対応して設けてもよい。また、一方のシフトペダルに対応して第1のスイッチSW1のみを設けてもよい。
また、エンジン107の出力の調整方法は、上記の例に限定されない。例えば、運転者により変速機5のシフトアップ操作が行われたときにエンジン107の出力が低下され、運転者により変速機5のシフトダウン操作が行われたときにエンジン107の出力が増加されてもよい。
上記実施の形態においては、鞍乗り型車両の一例として自動二輪車100について説明したが、自動三輪車および自動四輪車等の他の鞍乗り型車両であってもよい。
(11)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記実施の形態においては、シフトペダル210が操作部材の例であり、シフト機構7がシフト操作機構の例であり、ペダルアーム211、第1のリンク機構220、シフト軸250、第2のリンク機構260およびシフト機構7が荷重伝達機構の例であり、第1の棒状部材222が第1の可動部材の例であり、バネS2が第1の付勢部材の例である。
また、第1、第4および第5の状態がオフ状態の例であり、第2、第3および第6の状態がオン状態の例であり、第1のスイッチSW1が第1の移動検出スイッチの例であり、第3のスイッチSW3が変位検出スイッチの例であり、アクセル開度センサSE1、クランク角センサSE2、スロットルセンサSE3、シフトカム回転角センサSE4、ドライブ軸回転速度センサSE5、点火プラグ78、ETV82およびインジェクタ108が調整部の例である。
さらに、ECU50のCPU502が制御部の例であり、第2の棒状部材226が第2の可動部材の例であり、バネS3が第2の付勢部材の例であり、第2のスイッチSW2が第2の移動検出スイッチの例であり、シフト軸250が回転軸の例であり、回転プレート240が変換機構の例である。
また、シフトカム回転角センサSE4が検出装置の例であり、ダンパーDMが衝撃緩衝部材の例であり、後輪115が駆動輪の例である。
さらに、図5において太い一点鎖線の矢印SU1で示される方向が操作部材が変位可能な一方向または他方向の例であり、図5において太い点線の矢印SD1で示される方向が操作部材が変位可能な他方向または一方向の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。