本発明に係るハイブリッド車両の実施例を図1から図4に基づいて説明する。本発明に係るハイブリッド車両は、動力源としての原動機及び電動機と、その動力源の動力を駆動力として駆動輪に伝えるデュアルクラッチ式変速機を有する動力伝達装置と、を備えている。図1の符号1は、本実施例のハイブリッド車両を示す。
最初に、本実施例のハイブリッド車両1の構成について図1を用いて説明する。
このハイブリッド車両1には、原動機トルクを発生させる動力源としての原動機(ここでは機関トルクを発生させる内燃機関を例示する)10と、電動機トルクを発生させるもう一つの動力源たるモータ/ジェネレータ20と、その内燃機関10やモータ/ジェネレータ20の動力(原動機トルクや電動機トルク)を駆動力として左右夫々の駆動輪WL,WRに伝える動力伝達装置(後述する複数の変速段からなるデュアルクラッチ式変速機30や最終減速装置70)と、が設けられている。
また、このハイブリッド車両1には、その内燃機関10,モータ/ジェネレータ20及びデュアルクラッチ式変速機30の動作を制御する電子制御装置(ECU)100が設けられている。その電子制御装置100は、図示しないCPU(中央演算処理装置),所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory),そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory),予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
内燃機関10は、燃焼室内で燃料を燃焼させ、これにより発生した熱エネルギを機械的エネルギに変換する熱機関である。ここでは、図示しないピストンの往復運動によって出力軸(クランクシャフト)11から機械的な動力を出力する往復ピストン機関について例示する。この内燃機関10には図示しない燃料噴射装置及び点火装置が設けられており、これら燃料噴射装置及び点火装置は、その動作が電子制御装置100の機関制御手段によって制御される。その機関制御手段は、燃料噴射装置の燃料噴射量や燃料噴射時期等を制御すると共に、点火装置の点火時期を制御して、内燃機関10の出力軸11から出力される機械的な動力(つまり機関トルク)の大きさを調整する。また、その際、内燃機関10が図示しない電子制御式のスロットル装置や吸気バルブ及び排気バルブの駆動装置を備えているならば、機関制御手段は、そのスロットル装置のスロットルバルブの開度制御、吸気バルブ及び排気バルブの開閉時期制御やリフト量制御を行って、機械的な動力の大きさの調整を行う。更に、この内燃機関10には、出力軸11の回転角度(クランク角)の検出を行うクランク角センサ12が用意されている。そのクランク角センサ12は、検出信号を電子制御装置100に送信し、電子制御装置100は、その検出信号に基づいて機関回転数Neの演算を行う。
モータ/ジェネレータ20は、供給された電力を機械的な動力(つまり電動機トルク)に変換して出力する電動機としての機能と、入力された機械的な動力を電力に変換して回収する発電機としての機能と、を兼ね備えている。このモータ/ジェネレータ20は、例えば永久磁石型交流同期電動機として構成されており、インバータ27から三相の交流電力が供給されて回転磁界を形成するステータ21と、その回転磁界に引き付けられて回転する回転子としてのロータ22と、を有している。このモータ/ジェネレータ20においては、ロータ22の回転角位置を検出する図示しない回転センサ(レゾルバ)が設けられており、その回転センサが検出信号を電子制御装置100に送信する。
本実施例においては、歯車対23を介してモータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)を後述する第1変速機構40に入力させる一方、その歯車対23を介して第1変速機構40からの機械的な動力に係るトルクをモータ/ジェネレータ20に入力させるように構成する。その歯車対23は、互いに噛み合い状態にある第1ギヤ23aと第2ギヤ23bとで構成する。その第1ギヤ23aは、ロータ22と一体になって回転できるようロータ22に連結された回転軸(つまりモータ/ジェネレータ20の出力軸)24に取り付ける。一方、第2ギヤ23bは、その第1ギヤ23aよりも大径に成形し、第1変速機構40の入力軸42と一体になって回転できるよう当該入力軸42に取り付ける。つまり、この歯車対23は、ロータ22の回転軸24の回転と第1変速機構40の入力軸42の回転を連動させるべく当該回転軸24と入力軸42との係合状態を作り出すものであり、ロータ22側から回転トルクが入力されることによって減速手段として作動する一方、第1変速機構40の入力軸42側から回転トルクが入力されることによって増速手段として作動する。従って、このモータ/ジェネレータ20は、電動機として作動させることによって、ロータ22から出力された電動機トルクを減速手段として機能する歯車対23を介して第1変速機構40に伝える。また、このモータ/ジェネレータ20は、発電機として作動させることによって、増速手段として機能する歯車対23を介して第1変速機構40の入力軸42からの出力トルクがロータ22に伝達される。
ここで、二次電池28からの直流電力は、インバータ27で交流電力に変換してモータ/ジェネレータ20に供給することができる。その交流電力が供給されたモータ/ジェネレータ20は、電動機として作動して、ロータ22の回転軸24から機械的な動力(電動機トルク)を出力する。一方、このモータ/ジェネレータ20を発電機として作動させた際には、このモータ/ジェネレータ20からの交流電力をインバータ27で直流電力に変換して二次電池28に回収する(つまり電力の回生を行う)又は電力の回生を行いつつ駆動輪WL,WRに制動力を加える(つまり回生制動を行う)ことができる。その際、このモータ/ジェネレータ20は、第1変速機構40の入力軸42から出力された機械的な動力(出力トルク)が歯車対23を介してロータ22に入力されると、かかる入力トルクを交流電力に変換する。そのインバータ27の動作は、電子制御装置100のモータ/ジェネレータ制御手段によって制御される。
また、このハイブリッド車両1には、その二次電池28の充電状態(SOC:state of charge)を検出する電池監視ユニット29が設けられている。その電池監視ユニット29は、検出した二次電池28の充電状態に係る信号(換言するならば、充電状態量(SOC量)に関する信号)を電子制御装置100に送信する。その電子制御装置100には、その信号に基づいて二次電池28の充電状態の判定を行い、その二次電池28の充電の要否を判定する電池制御手段が用意されている。
動力伝達装置は、前述したように内燃機関10やモータ/ジェネレータ20の動力(機関トルクや電動機トルク)を駆動力として左右夫々の駆動輪WL,WRに伝えるものであって、その動力に係る出力トルクをデュアルクラッチ式変速機30及び最終減速装置70で変速及び減速して大きさを変化させ、左右夫々の駆動輪WL,WRに連結された駆動軸(ドライブシャフト)DL,DRに出力するものである。
ここで例示するデュアルクラッチ式変速機30は、前進5段、後退1段の変速段を有するものであって、前進用の変速段として第1速ギヤ段41,第2速ギヤ段52,第3速ギヤ段43,第4速ギヤ段54及び第5速ギヤ段45を備え、且つ、後退用の変速段として後退ギヤ段59を備えている。前進用の変速段は、変速比が第1速ギヤ段41,第2速ギヤ段52,第3速ギヤ段43,第4速ギヤ段54,第5速ギヤ段45の順に小さくなるよう構成している。
このデュアルクラッチ式変速機30には、複数種類の変速段からなる第1変速段群を有する第1変速機構40と、これらとは異なる複数種類の変速段からなる第2変速段群を有する第2変速機構50と、第1クラッチ61又は第2クラッチ62の内の何れか1つを用いて内燃機関10の出力軸11からの機械的な動力(機関トルク)を第1変速機構40又は第2変速機構50の内の何れか1つに伝達するデュアルクラッチ機構60と、が設けられている。
先ず、第1変速機構40について詳述する。この第1変速機構40は、各々の変速段に応じた複数の歯車対を備える平行軸歯車装置として構成されたものであり、第1変速段群として奇数段の第1速ギヤ段41,第3速ギヤ段43及び第5速ギヤ段45を備えている。この第1変速機構40は、入力軸42に入力された入力トルクを第1変速段群(第1速ギヤ段41,第3速ギヤ段43又は第5速ギヤ段45)の内の何れか1つの変速段を用いて変速し、それをデュアルクラッチ式変速機30の出力軸31に向けて出力する。
この第1変速機構40の入力軸42には、その一端側にデュアルクラッチ機構60の第1クラッチ61が連結され、他端側に前述したように歯車対23を介してモータ/ジェネレータ20が連結されている。従って、その入力軸42には、第1クラッチ61を介して内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を入力することができ、また、歯車対23を介してモータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)を入力することができる。つまり、この第1変速機構40の入力軸42への入力トルクとしては、第1クラッチ61を介した内燃機関10の機関トルクと、歯車対23を介したモータ/ジェネレータ20の電動機トルクと、が該当する。
第1速ギヤ段41は、互いに噛み合い状態にある第1速メインギヤ41aと第1速カウンタギヤ41cの歯車対で構成する。その第1速メインギヤ41aは、第1変速機構40の入力軸42と一体になって回転できるよう当該入力軸42に取り付ける。一方、第1速カウンタギヤ41cは、第1変速機構40の出力軸44に対して相対回転できるよう当該出力軸44に取り付ける。その入力軸42と出力軸44は、所定の間隔を空けて平行に配置されている。
ここで、第1変速機構40には、相対回転し得る第1速カウンタギヤ41cと出力軸44とが一体になって回転できるよう必要に応じてこれらを係合させる第1速カップリング機構41dを備えている。その第1速カップリング機構41dは、第1速カウンタギヤ41cと出力軸44とが一体回転するように係合させる係合状態と、その第1速カウンタギヤ41cと出力軸44とが相対回転するように解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成されている。この第1速カップリング機構41dは、その作動形態の切り替えが図示しないアクチュエータを介して電子制御装置100の変速制御手段に制御される。その変速制御手段は、第1速ギヤ段41が選択されたならば、第1速カップリング機構41dを係合状態となるように作動させて第1速ギヤ段41での変速動作が実行できるようにし、それ以外の変速段が選択されたならば、第1速ギヤ段41での変速動作を回避すべく第1速カップリング機構41dを解放状態(非係合状態)となるように作動させる。
デュアルクラッチ式変速機30において第1速ギヤ段41が選択された場合、電子制御装置100の変速制御手段は、第1速カウンタギヤ41cと出力軸44とが係合状態となるように第1速カップリング機構41dを作動させる。これにより、このデュアルクラッチ式変速機30においては、第1変速機構40の入力軸42における回転トルク(入力トルク)が第1速メインギヤ41aと第1速カウンタギヤ41cを介して出力軸44に伝わる。つまり、この場合には、入力軸42の回転トルクを第1速ギヤ段41で変速して変化させた回転トルク(出力トルク)が出力軸44に伝達される。
第3速ギヤ段43は、互いに噛み合い状態にある第3速メインギヤ43aと第3速カウンタギヤ43cの歯車対で構成する。その第3速メインギヤ43aは、第1変速機構40の入力軸42と一体になって回転できるよう当該入力軸42に取り付ける。一方、第3速カウンタギヤ43cは、第1変速機構40の出力軸44に対して相対回転できるよう当該出力軸44に取り付ける。
ここで、第1変速機構40には、相対回転し得る第3速カウンタギヤ43cと出力軸44とが一体になって回転できるよう必要に応じてこれらを係合させる第3速カップリング機構43dを備えている。その第3速カップリング機構43dは、第3速カウンタギヤ43cと出力軸44とが一体回転するように係合させる係合状態と、その第3速カウンタギヤ43cと出力軸44とが相対回転するように解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成されている。この第3速カップリング機構43dは、その作動形態の切り替えが図示しないアクチュエータを介して電子制御装置100の変速制御手段に制御される。その変速制御手段は、第3速ギヤ段43が選択されたならば、第3速カップリング機構43dを係合状態となるように作動させて第3速ギヤ段43での変速動作が実行できるようにし、それ以外の変速段が選択されたならば、第3速ギヤ段43での変速動作を回避すべく第3速カップリング機構43dを解放状態(非係合状態)となるように作動させる。
デュアルクラッチ式変速機30において第3速ギヤ段43が選択された場合、電子制御装置100の変速制御手段は、第3速カウンタギヤ43cと出力軸44とが係合状態となるように第3速カップリング機構43dを作動させる。これにより、このデュアルクラッチ式変速機30においては、第1変速機構40の入力軸42における回転トルク(入力トルク)が第3速メインギヤ43aと第3速カウンタギヤ43cを介して出力軸44に伝わる。つまり、この場合には、入力軸42の回転トルクを第3速ギヤ段43で変速して変化させた回転トルク(出力トルク)が出力軸44に伝達される。
第5速ギヤ段45は、互いに噛み合い状態にある第5速メインギヤ45aと第5速カウンタギヤ45cの歯車対で構成する。その第5速メインギヤ45aは、第1変速機構40の入力軸42と一体になって回転できるよう当該入力軸42に取り付ける。一方、第5速カウンタギヤ45cは、第1変速機構40の出力軸44に対して相対回転できるよう当該出力軸44に取り付ける。
ここで、第1変速機構40には、相対回転し得る第5速カウンタギヤ45cと出力軸44とが一体になって回転できるよう必要に応じてこれらを係合させる第5速カップリング機構45dを備えている。その第5速カップリング機構45dは、第5速カウンタギヤ45cと出力軸44とが一体回転するように係合させる係合状態と、その第5速カウンタギヤ45cと出力軸44とが相対回転するように解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成されている。この第5速カップリング機構45dは、その作動形態の切り替えが図示しないアクチュエータを介して電子制御装置100の変速制御手段に制御される。その変速制御手段は、第5速ギヤ段45が選択されたならば、第5速カップリング機構45dを係合状態となるように作動させて第5速ギヤ段45での変速動作が実行できるようにし、それ以外の変速段が選択されたならば、第5速ギヤ段45での変速動作を回避すべく第5速カップリング機構45dを解放状態(非係合状態)となるように作動させる。
デュアルクラッチ式変速機30において第5速ギヤ段45が選択された場合、電子制御装置100の変速制御手段は、第5速カウンタギヤ45cと出力軸44とが係合状態となるように第5速カップリング機構45dを作動させる。これにより、このデュアルクラッチ式変速機30においては、第1変速機構40の入力軸42における回転トルク(入力トルク)が第5速メインギヤ45aと第5速カウンタギヤ45cを介して出力軸44に伝わる。つまり、この場合には、入力軸42の回転トルクを第5速ギヤ段45で変速して変化させた回転トルク(出力トルク)が出力軸44に伝達される。
この第1変速機構40の出力軸44には、この出力軸44と一体になって回転できるように第1駆動ギヤ44aが取り付けられている。また、その第1駆動ギヤ44aは、デュアルクラッチ式変速機30の出力軸31と一体になって回転する動力統合ギヤ32に噛み合わされている。従って、そのデュアルクラッチ式変速機30の出力軸31には、第1駆動ギヤ44aと動力統合ギヤ32のギヤ比に応じて変化させた第1変速機構40の出力軸44の回転トルク(出力トルク)が伝達される。その第1駆動ギヤ44a、動力統合ギヤ32及び出力軸31は、後述する最終減速装置70や駆動軸DL,DRと共に、第1変速機構40における変速後の出力トルクを駆動輪WL,WRに向けて伝達するトルク伝達手段を成す。
次に、第2変速機構50について詳述する。この第2変速機構50は、第1変速機構40と同じように各々の変速段に応じた複数の歯車対を備える平行軸歯車装置として構成されたものであり、偶数段の第2速ギヤ段52及び第4速ギヤ段54と後退ギヤ段59とを第2変速段群として備えている。この第2変速機構50は、入力軸51に入力された入力トルクを第2変速段群(第2速ギヤ段52,第4速ギヤ段54又は後退ギヤ段59)の内の何れか1つの変速段を用いて変速し、それをデュアルクラッチ式変速機30の出力軸31に向けて出力する。
この第2変速機構50の入力軸51には、その一端側にデュアルクラッチ機構60の第2クラッチ62が連結されている。従って、その入力軸51には、第2クラッチ62を介して内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を入力することができる。つまり、この第2変速機構50への入力トルクとしては、第2クラッチ62を介した内燃機関10の機関トルクが該当する。
第2速ギヤ段52は、互いに噛み合い状態にある第2速メインギヤ52aと第2速カウンタギヤ52cの歯車対で構成する。その第2速メインギヤ52aは、第2変速機構50の入力軸51と一体になって回転できるよう当該入力軸51に取り付ける。一方、第2速カウンタギヤ52cは、第2変速機構50の出力軸53に対して相対回転できるよう当該出力軸53に取り付ける。その入力軸51と出力軸53は、所定の間隔を空けて平行に配置されている。
ここで、第2変速機構50には、相対回転し得る第2速カウンタギヤ52cと出力軸53とが一体になって回転できるよう必要に応じてこれらを係合させる第2速カップリング機構52dを備えている。その第2速カップリング機構52dは、第2速カウンタギヤ52cと出力軸53とが一体回転するように係合させる係合状態と、その第2速カウンタギヤ52cと出力軸53とが相対回転するように解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成されている。この第2速カップリング機構52dは、その作動形態の切り替えが図示しないアクチュエータを介して電子制御装置100の変速制御手段に制御される。その変速制御手段は、第2速ギヤ段52が選択されたならば、第2速カップリング機構52dを係合状態となるように作動させて第2速ギヤ段52での変速動作が実行できるようにし、それ以外の変速段が選択されたならば、第2速ギヤ段52での変速動作を回避すべく第2速カップリング機構52dを解放状態(非係合状態)となるように作動させる。
デュアルクラッチ式変速機30において第2速ギヤ段52が選択された場合、電子制御装置100の変速制御手段は、第2速カウンタギヤ52cと出力軸53とが係合状態となるように第2速カップリング機構52dを作動させる。これにより、このデュアルクラッチ式変速機30においては、第2変速機構50の入力軸51における回転トルク(入力トルク)が第2速メインギヤ52aと第2速カウンタギヤ52cを介して出力軸53に伝わる。つまり、この場合には、入力軸51の回転トルクを第2速ギヤ段52で変速して変化させた回転トルク(出力トルク)が出力軸53に伝達される。
第4速ギヤ段54は、互いに噛み合い状態にある第4速メインギヤ54aと第4速カウンタギヤ54cの歯車対で構成する。その第4速メインギヤ54aは、第2変速機構50の入力軸51と一体になって回転できるよう当該入力軸51に取り付ける。一方、第4速カウンタギヤ54cは、第2変速機構50の出力軸53に対して相対回転できるよう当該出力軸53に取り付ける。
ここで、第2変速機構50には、相対回転し得る第4速カウンタギヤ54cと出力軸53とが一体になって回転できるよう必要に応じてこれらを係合させる第4速カップリング機構54dを備えている。その第4速カップリング機構54dは、第4速カウンタギヤ54cと出力軸53とが一体回転するように係合させる係合状態と、その第4速カウンタギヤ54cと出力軸53とが相対回転するように解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成されている。この第4速カップリング機構54dは、その作動形態の切り替えが図示しないアクチュエータを介して電子制御装置100の変速制御手段に制御される。その変速制御手段は、第4速ギヤ段54が選択されたならば、第4速カップリング機構54dを係合状態となるように作動させて第4速ギヤ段54での変速動作が実行できるようにし、それ以外の変速段が選択されたならば、第4速ギヤ段54での変速動作を回避すべく第4速カップリング機構54dを解放状態(非係合状態)となるように作動させる。
デュアルクラッチ式変速機30において第4速ギヤ段54が選択された場合、電子制御装置100の変速制御手段は、第4速カウンタギヤ54cと出力軸53とが係合状態となるように第4速カップリング機構54dを作動させる。これにより、このデュアルクラッチ式変速機30においては、第2変速機構50の入力軸51における回転トルク(入力トルク)が第4速メインギヤ54aと第4速カウンタギヤ54cを介して出力軸53に伝わる。つまり、この場合には、入力軸51の回転トルクを第4速ギヤ段54で変速して変化させた回転トルク(出力トルク)が出力軸53に伝達される。
後退ギヤ段59は、後退メインギヤ59aと後退中間ギヤ59bと後退カウンタギヤ59cとで構成する。その後退メインギヤ59aは、第2変速機構50の入力軸51と一体になって回転できるよう当該入力軸51に取り付ける。後退中間ギヤ59bは、後退メインギヤ59a及び後退カウンタギヤ59cと噛み合い状態にあり、第2変速機構50の入力軸51や出力軸53とは別の回転軸59fと一体になって回転できるよう当該回転軸59fに取り付ける。後退カウンタギヤ59cは、第2変速機構50の出力軸53に対して相対回転できるよう当該出力軸53に取り付ける。
ここで、第2変速機構50には、相対回転し得る後退カウンタギヤ59cと出力軸53とが一体になって回転できるよう必要に応じてこれらを係合させる後退カップリング機構59dを備えている。その後退カップリング機構59dは、後退カウンタギヤ59cと出力軸53とが一体回転するように係合させる係合状態と、その後退カウンタギヤ59cと出力軸53とが相対回転するように解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成されている。この後退カップリング機構59dは、その作動形態の切り替えが図示しないアクチュエータを介して電子制御装置100の変速制御手段に制御される。その変速制御手段は、後退ギヤ段59が選択されたならば、後退カップリング機構59dを係合状態となるように作動させて後退ギヤ段59での変速動作が実行できるようにし、それ以外の変速段が選択されたならば、後退ギヤ段59での変速動作を回避すべく後退カップリング機構59dを解放状態(非係合状態)となるように作動させる。
デュアルクラッチ式変速機30において後退ギヤ段59が選択された場合、電子制御装置100の変速制御手段は、後退カウンタギヤ59cと出力軸53とが係合状態となるように後退カップリング機構59dを作動させる。これにより、このデュアルクラッチ式変速機30においては、第2変速機構50の入力軸51における回転トルク(入力トルク)が後退メインギヤ59aと後退中間ギヤ59bと後退カウンタギヤ59cを介して出力軸53に伝わる。つまり、この場合には、入力軸51の回転トルクを後退ギヤ段59で変速して変化させた回転トルク(出力トルク)が出力軸53に伝達される。
この第2変速機構50の出力軸53には、この出力軸53と一体になって回転できるように第2駆動ギヤ53aが取り付けられている。また、その第2駆動ギヤ53aは、前述した動力統合ギヤ32に噛み合わされている。従って、デュアルクラッチ式変速機30の出力軸31には、第2駆動ギヤ53aと動力統合ギヤ32のギヤ比に応じて変化させた第2変速機構50の出力軸53の回転トルク(出力トルク)が伝達される。その第2駆動ギヤ53a、動力統合ギヤ32及び出力軸31は、後述する最終減速装置70や駆動軸DL,DRと共に、第2変速機構50における変速後の出力トルクを駆動輪WL,WRに向けて伝達するトルク伝達手段を成す。
次に、デュアルクラッチ機構60について詳述する。このデュアルクラッチ機構60は、前述したように、第1クラッチ61又は第2クラッチ62の内の何れか1つを用いて内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を第1変速機構40又は第2変速機構50の内の何れか1つに伝達させるものである。
先ず、第1クラッチ61は、内燃機関10の出力軸11と第1変速機構40の入力軸42とを係合させる係合状態と、その出力軸11と入力軸42とを係合状態から解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成された摩擦クラッチ装置である。ここで言う係合状態とは、その出力軸11と入力軸42との間でトルクの伝達をし得る状態のことであり、解放状態(非係合状態)とは、その出力軸11と入力軸42との間でのトルクの伝達が行えない状態のことである。
例えば、この第1クラッチ61としては、乾式又は湿式の単板クラッチ又は多板クラッチを使用すればよい。ここでは、円板状の摩擦板を有し、その摩擦板の摩擦力により内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を第1変速機構40に伝達する摩擦式ディスククラッチを用いる。この第1クラッチ61は、係合動作を行って内燃機関10の出力軸11と第1変速機構40の入力軸42とを係合状態にすることで、その出力軸11から伝わってきた機械的な動力(機関トルク)を入力軸42に伝達する。これにより、第1変速機構40においては、その機械的な動力(機関トルク)が第1速ギヤ段41、第3速ギヤ段43又は第5速ギヤ段45の内の何れかで変速されて出力軸44に伝わる。
また、第2クラッチ62は、内燃機関10の出力軸11と第2変速機構50の入力軸51とを係合させる係合状態と、その出力軸11と入力軸51とを係合状態から解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成された摩擦クラッチ装置である。ここで言う係合状態とは、その出力軸11と入力軸51との間でトルクの伝達をし得る状態のことであり、解放状態(非係合状態)とは、その出力軸11と入力軸51との間でのトルクの伝達が行えない状態のことである。
例えば、この第2クラッチ62としては、第1クラッチ61と同様に、乾式又は湿式の単板クラッチ又は多板クラッチを使用すればよい。ここでは、円板状の摩擦板を有し、その摩擦板の摩擦力により内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を第2変速機構50に伝達する摩擦式ディスククラッチを用いる。この第2クラッチ62は、係合動作を行って内燃機関10の出力軸11と第2変速機構50の入力軸51とを係合状態にすることで、その出力軸11から伝わってきた機械的な動力(機関トルク)を入力軸51に伝達する。これにより、第2変速機構50においては、その機械的な動力(機関トルク)が第2速ギヤ段52、第4速ギヤ段54又は後退ギヤ段59の内の何れかで変速されて出力軸53に伝わる。
第1クラッチ61と第2クラッチ62は、その作動形態の切り替えが夫々に図1に示すアクチュエータ61a,62aを介して電子制御装置100に制御される。その電子制御装置100は、第1クラッチ61又は第2クラッチ62の内の何れか一方のみを係合状態に切り替えて、他方を解放状態(非係合状態)に切り替えるクラッチ制御手段を備えている。これが為、デュアルクラッチ機構60は、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を第1変速機構40又は第2変速機構50の内の何れか一方にのみ伝達させることができる。また、そのクラッチ制御手段は、第1クラッチ61と第2クラッチ62の双方を解放状態(非係合状態)に切り替えできるようにも構成されている。これが為、デュアルクラッチ機構60は、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を第1変速機構40にも第2変速機構50にも伝えないようにすることが可能である。
以下に、このデュアルクラッチ機構60の具体的な構造について図2を用いて詳述する。
このデュアルクラッチ機構60は、第1クラッチ61を構成する環状又は円板状の摩擦板61bと、第2クラッチ62を構成する環状又は円板状の摩擦板62bと、これら夫々の摩擦板61b,62bを収容するクラッチハウジング63と、を備えている。そのクラッチハウジング63は、内燃機関10の出力軸11と同心円上に配置され、その出力軸11と結合状態にある。従って、このクラッチハウジング63は、内燃機関10の出力軸11と一体になって回転する。
ここで、第1変速機構40の入力軸42と第2変速機構50の入力軸51は、図2に示す如く、同軸上に配置された2重軸構造になっている。ここでは、その第1変速機構40の入力軸42を中空軸として成形し、この入力軸42の内方に第2変速機構50の入力軸51を配設して相互に相対回転できるように構成している。その第2変速機構50の入力軸51は、その一端を第1変速機構40の入力軸42よりも内燃機関10の出力軸11側に向けて延伸させている。第1クラッチ61を成す摩擦板61bは、その第1変速機構40の入力軸42の一端に同心円上に取り付けられており、また、第2クラッチ62を成す摩擦板62bは、その第2変速機構50の入力軸51の一端に同心円上に取り付けられている。これら夫々の摩擦板61b,62bについても互いに相対回転を行う。
尚、本実施例のデュアルクラッチ式変速機30においては、入力軸たる内燃機関10の出力軸11側から出力軸31側に向けて、第1変速機構40の第1速ギヤ段41、第3速ギヤ段43及び第5速ギヤ段45における第1速メインギヤ41a、第3速メインギヤ43a及び第5速メインギヤ45aが入力軸42上に配設され、次に、第2変速機構50の第2速ギヤ段52、第4速ギヤ段54及び後退ギヤ段59における第2速メインギヤ52a、第4速メインギヤ54a及び後退メインギヤ59aが入力軸51上に配設されている。
第1クラッチ61は、上記の摩擦板61bに加えて、その摩擦板61bの摩擦材部分とは反対側の面に対向させて配置した摩擦板作動部材(図示略)と、この摩擦板作動部材を駆動させるアクチュエータ61aと、を備えている。そのアクチュエータ61aは、例えば油圧(以下、「第1クラッチ油圧」という。)の増減制御によって作動する。電子制御装置100のクラッチ制御手段は、第1クラッチ61を係合状態に切り替える際、第1クラッチ油圧を増圧制御して、その摩擦板作動部材が摩擦板61bをクラッチハウジング63に押し付けるようにアクチュエータ61aを作動させる。これにより、この第1クラッチ61は、摩擦板61bの摩擦材部分とクラッチハウジング63とが摩擦力によって一体になるので、内燃機関10の出力軸11と第1変速機構40の入力軸42とを係合させ、その出力軸11における機械的な動力(機関トルク)を入力軸42に伝達させる。
また、そのクラッチ制御手段は、アクチュエータ61aの作動量(換言するならば、入力軸42と内燃機関10の出力軸11との間の係合量であって、ここでは第1クラッチ油圧)を調整して、摩擦板作動部材の移動量(換言するならば、摩擦板61bのクラッチハウジング63への押圧力)を制御することができる。つまり、第1クラッチ61は、大別すると、解放状態、半係合状態及び係合状態の3つの作動状態をクラッチ制御手段の制御動作によって作り出すことができる。ここで言う解放状態とは、摩擦板61bとクラッチハウジング63とが接触していない状態を指す。一方、半係合状態とは、摩擦板61bとクラッチハウジング63とがアクチュエータ61aの制御に伴い接触し、その摩擦板61bとクラッチハウジング63の回転(換言するならば、内燃機関10の出力軸11と第1変速機構40の入力軸42の回転)が同期するまでの状態を指す。これが為、ここで言う係合状態とは、その摩擦板61bとクラッチハウジング63の回転が同期してからの状態を指す。この解放状態、半係合状態及び係合状態については、第2クラッチ62においても同様である。
ここで、この第1クラッチ61は、出力軸11と入力軸42との間における係合の解放動作を行って解放状態(非係合状態)へと切り替える際に、そのアクチュエータ61aの作動を停止させ、反発力等で摩擦板61bをクラッチハウジング63から切り離す形態のものであってもよく、そのアクチュエータ61aを係合動作のときとは逆方向に作動させ、摩擦板作動部材を動かして摩擦板61bをクラッチハウジング63から切り離す形態のものであってもよい。
第2クラッチ62は、上記の摩擦板62bに加えて、第1クラッチ61と同様の摩擦板作動部材(図示略)とアクチュエータ62aを備えている。そのアクチュエータ62aは、例えば油圧(以下、「第2クラッチ油圧」という。)の増減制御によって作動する。電子制御装置100のクラッチ制御手段は、第2クラッチ62を係合状態に切り替える際、第2クラッチ油圧を増圧制御して、その摩擦板作動部材が摩擦板62bをクラッチハウジング63に押し付けるようにアクチュエータ62aを作動させる。これにより、この第2クラッチ62は、摩擦板62bの摩擦材部分とクラッチハウジング63とが摩擦力によって一体になるので、内燃機関10の出力軸11と第2変速機構50の入力軸51とを係合させ、その出力軸11における機械的な動力(機関トルク)を入力軸51に伝達させる。
また、クラッチ制御手段は、アクチュエータ62aの作動量(換言するならば、入力軸51と内燃機関10の出力軸11との間の係合量であって、ここでは第2クラッチ油圧)を調整して、摩擦板作動部材の移動量(換言するならば、摩擦板62bのクラッチハウジング63への押圧力)を制御することができる。つまり、第2クラッチ62は、第1クラッチ61のときと同様に、大別すると、解放状態、半係合状態及び係合状態の3つの作動状態をクラッチ制御手段の制御動作によって作り出すことができる。
この第2クラッチ62は、第1クラッチ61と同様に、出力軸11と入力軸51との間における係合の解放動作を行って解放状態(非係合状態)へと切り替える際に、そのアクチュエータ62aの作動を停止させ、反発力等で摩擦板62bをクラッチハウジング63から切り離す形態のものであってもよく、そのアクチュエータ62aを係合状態のときとは逆方向に作動させ、摩擦板作動部材を動かして摩擦板62bをクラッチハウジング63から切り離す形態のものであってもよい。
このデュアルクラッチ式変速機30においては、運転者に選択される所定の変速レンジが設定されている。その変速レンジとは、自動的に変速段の切り替えを行う所謂Dレンジ、全ての変速段が解放状態になっている所謂Nレンジ等のことである。
最終減速装置70は、デュアルクラッチ式変速機30の出力軸31から入力された入力トルクを減速して、左右夫々の駆動軸DL,DRに分配するものである。この最終減速装置70は、その出力軸31の端部に取り付けたピニオンギヤ71と、このピニオンギヤ71に噛み合い、このピニオンギヤ71の回転トルクを減速させつつ回転方向を直交方向へと変換するリングギヤ72と、このリングギヤ72を介して入力された回転トルクを左右夫々の駆動軸DL,DRに分配する差動機構73と、を備えている。
また、このハイブリッド車両1においては、空気調和機の圧縮機81をモータ/ジェネレータ20のロータ22の回転によって作動させる。従って、その圧縮機81の回転軸82は、図1に示すように、そのロータ22に取り付けられている。
更に、このハイブリッド車両1には、夫々の車輪に個別の大きさの制動力を発生させることが可能な制動装置90が設けられている。尚、ここでは駆動輪WL,WRを例に挙げて制動装置90の説明を行うが、その制動装置90は、図示しない従動輪においても駆動輪WL,WRと同様に構成されている。
制動装置90は、運転者が操作するブレーキペダル91と、ブレーキペダル91に入力された運転者のブレーキ操作に伴う操作圧力(ペダル踏力)を所定の倍力比で倍化させる制動倍力手段(ブレーキブースタ)92と、この制動倍力手段92により倍化されたペダル踏力をブレーキペダル91の操作量に応じたブレーキ液圧(以下、「マスタシリンダ圧」という。)へと変換するマスタシリンダ93と、そのマスタシリンダ圧をそのまま又は車輪毎に調圧するブレーキ液圧調整手段(以下、「ブレーキアクチュエータ」という。)94と、このブレーキアクチュエータ94を経たブレーキ液圧が伝えられる駆動輪WL,WRのブレーキ液圧配管95L,95Rと、この各ブレーキ液圧配管95L,95Rのブレーキ液圧が各々供給されて夫々の駆動輪WL,WRに制動力を発生させる制動力発生手段96L,96Rと、によって構成される。
そのブレーキアクチュエータ94は、例えば、図示しないオイルリザーバ、オイルポンプ、夫々のブレーキ液圧配管95L,95Rに対してのブレーキ液圧を各々に増減する為の増減圧制御弁等によって構成されている。このブレーキアクチュエータ94は、そのオイルポンプや増減圧制御弁等が制動装置用の電子制御装置(ブレーキECU)105の制動制御手段によって駆動制御される。
制動力発生手段96L,96Rは、駆動輪WL,WRと一体になって回転する部材に対して摩擦力を加え、これにより駆動輪WL,WRの回転を抑えて制動動作を行う摩擦ブレーキ装置である。例えば、この制動力発生手段96L,96Rは、駆動輪WL,WRと一体になるよう取り付けたディスクロータ96aと、このディスクロータ96aに押し付けて摩擦力を発生させる摩擦材としてのブレーキパッド96bと、車両本体に固定され、ブレーキアクチュエータ94から供給されたブレーキ液圧によってブレーキパッド96bをディスクロータ96aに向けて押動するキャリパ96cと、を備えている。この制動力発生手段96L,96Rは、ブレーキアクチュエータ94から送られてきたマスタシリンダ圧又は調圧後のブレーキ液圧に応じた押圧力でブレーキパッド96bがディスクロータ96aに押し付けられる。従って、駆動輪WL,WRには、そのマスタシリンダ圧又は調圧後のブレーキ液圧に応じた大きさの制動力(制動トルク)が発生する。以下においては、そのマスタシリンダ圧によって発生する制動力、制動トルクのことを夫々「マスタシリンダ圧制動力」、「マスタシリンダ圧制動トルク」という。また、そのマスタシリンダ圧を加圧した調圧後のブレーキ液圧によって発生する制動力、制動トルクのことを夫々「加圧制動力」、「加圧制動トルク」という。
制動制御手段は、例えば運転者のブレーキ操作量に基づいて駆動輪WL,WRの要求制動力(要求制動トルク)を設定する。そのブレーキ操作量とは、ブレーキペダル91に入力されたペダル踏力やブレーキペダル91の踏み込み量(つまり移動量)などであり、図1に示すブレーキ操作量検出手段97で検出する。そして、この制動制御手段は、マスタシリンダ圧制動力(マスタシリンダ圧制動トルク)が要求制動力(要求制動トルク)に対して不足していれば、その不足分を補うことが可能な各制動力発生手段96L,96Rへの目標ブレーキ液圧を求め、その目標ブレーキ液圧に基づきブレーキアクチュエータ94を制御してマスタシリンダ圧の加圧を行い、その要求制動力(要求制動トルク)を満足させる加圧制動力(加圧制動トルク)を制動力発生手段96L,96Rに発生させる。
以上示したハイブリッド車両1において、電子制御装置100は、主として、その変速制御手段が一方の変速機構における要求変速段のカップリング機構を係合状態となるように作動させ、その要求変速段に対応するクラッチをクラッチ制御手段が係合させる。その際、この電子制御装置100は、変速制御手段が他方の変速機構における次の要求変速段のカップリング機構を係合状態となるように作動させ、かかる要求変速段に対応する他方のクラッチをクラッチ制御手段が解放させておく。この電子制御装置100は、次の要求変速段へと変速させるときに、クラッチ制御手段が現在の要求変速段に対応するクラッチを解放させると同時に、次の要求変速段に対応する他方のクラッチを係合させる。これにより、このハイブリッド車両1は、次の要求変速段への素早い変速が可能になり、内燃機関10の機械的な動力を途切れさせることなく駆動力として駆動輪WL,WRに伝え続けることができる。
具体的に、第1変速機構40における第1速ギヤ段41、第3速ギヤ段43又は第5速ギヤ段45の中から要求変速段が選択された場合、電子制御装置100は、変速制御手段によってその要求変速段のカップリング機構(第1速カップリング機構41d、第3速カップリング機構43d又は第5速カップリング機構45d)を係合状態に制御し、且つ、クラッチ制御手段によって第1クラッチ61を係合状態となるように制御すると共に第2クラッチ62を解放状態に制御する。
これにより、このハイブリッド車両1においては、内燃機関10の出力軸11の回転トルク(機関トルク)が半係合状態又は係合状態の第1クラッチ61を介して第1変速機構40の入力軸42にのみ伝わり、その入力軸42の回転トルクが要求変速段を介して変速されて第1変速機構40の出力軸44に伝達される。そして、その出力軸44の回転トルク(第1変速機構40の出力トルク)は、第1駆動ギヤ44a、動力統合ギヤ32及び最終減速装置70を介して減速され、その最終減速装置70の差動機構73によって左右夫々の駆動軸DL,DRに分配される。従って、この場合のハイブリッド車両1は、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を第1変速機構40及び最終減速装置70で変速及び減速し、これにより得られる駆動力を各駆動輪WL,WRに伝達して走行する。その際、モータ/ジェネレータ20は、電動機として作動させても発電機として作動させてもよい。
先ず、電子制御装置100の電池制御手段は、電池監視ユニット29から受信した二次電池28の充電状態に係る信号に基づいて、その二次電池28への充電が必要なのか否かを判断する。そして、この電子制御装置100のモータ/ジェネレータ制御手段は、その二次電池28の充電状態に応じてモータ/ジェネレータ20の作動形態を決定することができる。
モータ/ジェネレータ制御手段は、二次電池28への充電が不要(つまり二次電池28が必要充電量を満たしている)又は二次電池28の放電が可能ならば、モータ/ジェネレータ20を電動機として作動させてもよい。モータ/ジェネレータ20を電動機として作動させた場合には、その回転軸24の回転トルク(電動機トルク)が歯車対23を介して第1変速機構40の入力軸42に入力される。これが為、その入力軸42には、内燃機関10とモータ/ジェネレータ20の夫々の機械的な動力を足し合わせたもの(機関トルクと電動機トルクを合わせた総出力トルク)が入力されている。従って、このときのハイブリッド車両1においては、その総出力トルクが要求変速段で変速された後に第1駆動ギヤ44a、動力統合ギヤ32及び最終減速装置70を介して減速され、その最終減速装置70の差動機構73で左右夫々の駆動軸DL,DRに分配される。つまり、この場合には、第1変速機構40を介して伝えられた内燃機関10とモータ/ジェネレータ20による総出力トルクを利用してハイブリッド車両1を走行させることができる。
ここで、モータ/ジェネレータ20を電動機として作動させない場合、その回転軸24には、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)によって回転している第1変速機構40の入力軸42の回転トルクが歯車対23を介して入力される。モータ/ジェネレータ制御手段は、インバータ27を制御して、二次電池28への充電が必要ならばモータ/ジェネレータ20を発電機として作動させ、二次電池28への充電が不要ならばロータ22を空回りさせればよい。つまり、この場合には、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を第1変速機構40で変速してハイブリッド車両1を走行させつつ、その動力の一部を利用して電力の回生を行うこともできる。また、この場合には、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)のみを利用してハイブリッド車両1を走行させることもできる。
そのような内燃機関10の機械的な動力で又は内燃機関10とモータ/ジェネレータ20の機械的な動力を合わせて走行している状態において、変速制御手段は、第2変速機構50における次の要求変速段(加速中ならばアップシフト側の変速段、減速中ならばダウンシフト側の変速段であって、第2速ギヤ段52又は第4速ギヤ段54)のカップリング機構(第2速カップリング機構52d又は第4速カップリング機構54d)を係合状態に制御しておく。ここで、このときの第2変速機構50の出力軸53には、第1変速機構40の出力軸44の回転トルクの一部が第1駆動ギヤ44a、動力統合ギヤ32及び第2駆動ギヤ53aを介して伝達されている。従って、このときには、その出力軸53の回転トルクが次の要求変速段で変速されて入力軸51に伝わり、その入力軸51を空転させる。つまり、このときの第2変速機構50においては、次の要求変速段を同調(シンクロ)した状態で待機させたまま入力軸51と出力軸53が第1変速機構40側の動力の一部によって回転している。かかる状態のときに、電子制御装置100のクラッチ制御手段は、第1クラッチ61を係合状態から解放状態に切り替えると共に、第2クラッチ62を解放状態から係合状態となるように切り替える。これにより、デュアルクラッチ式変速機30においては、次の要求変速段への変速が完了するので、内燃機関10の出力軸11の回転トルク(機関トルク)が第2変速機構50の入力軸51にのみ伝えられ、その入力軸51の回転トルクが次の要求変速段で変速されて第2変速機構50の出力軸53に伝達されるようになる。これが為、その際のハイブリッド車両1においては、その出力軸53の回転トルクが第2駆動ギヤ53a、動力統合ギヤ32及び最終減速装置70を介して減速され、その最終減速装置70の差動機構73によって左右夫々の駆動軸DL,DRに分配されるようになる。このように、デュアルクラッチ式変速機30は、変速段を待機中の次の要求変速段へと素早く切り替えて、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を次の要求変速段に対して間髪入れずに伝えることが可能なので、その動力を途切れることなく駆動力として駆動輪WL,WRに伝達することができる。
このハイブリッド車両1においては、上記の第2変速機構50における次の要求変速段の作動状態で変速制御手段が第1変速機構40における更に次の要求変速段(加速中ならばアップシフト側の変速段、減速中ならばダウンシフト側の変速段であって、第1速ギヤ段41、第3速ギヤ段43又は第5速ギヤ段45)のカップリング機構(第1速カップリング機構41d、第3速カップリング機構43d又は第5速カップリング機構45d)を係合状態に制御しておく。これにより、このときの第1変速機構40においては、更に次の要求変速段を介して入力軸42と出力軸44との間のトルク伝達が可能になっている。かかる状態においても、モータ/ジェネレータ20は、二次電池28の充電状態に応じて作動形態を決定してもよい。
先ず、二次電池28への充電が不要又は二次電池28の放電が可能でモータ/ジェネレータ20を電動機として作動させた場合には、その回転軸24の回転トルク(電動機トルク)が歯車対23を介して第1変速機構40の入力軸42に入力される。このときには第1クラッチ61が解放状態になっているので、その入力軸42には、モータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)のみが入力されている。そして、その入力軸42の回転トルクは、更に次の要求変速段で変速されて出力軸44に伝わり、第1駆動ギヤ44a及び動力統合ギヤ32を介して出力軸31に伝達される。つまり、この場合には、第1変速機構40を経たモータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)と第2変速機構50を経た内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)とを足し合わせたもの(総出力トルク)がデュアルクラッチ式変速機30の出力軸31に伝えられている。これが為、このハイブリッド車両1においては、その総出力トルクによる出力軸31の回転トルクが最終減速装置70で減速させられ、その最終減速装置70の差動機構73で左右夫々の駆動軸DL,DRに分配される。従って、この場合には、第1変速機構40を介して伝えられたモータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)と、第2変速機構50を介して伝えられた内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)と、を利用してハイブリッド車両1を走行させることができる。
一方、モータ/ジェネレータ20を電動機として作動させない場合、第1変速機構40の入力軸42には、第2変速機構50の出力軸53から出力された回転トルクの一部が第2駆動ギヤ53a、動力統合ギヤ32、第1駆動ギヤ44a、第1変速機構40の出力軸44及び上記の更に次の要求変速段を介して伝わる。これが為、この場合には、この入力軸42の回転トルクが歯車対23を介してモータ/ジェネレータ20の回転軸24に伝達される。そして、モータ/ジェネレータ制御手段は、インバータ27を制御して、二次電池28への充電が必要ならばモータ/ジェネレータ20を発電機として作動させ、二次電池28への充電が不要ならばロータ22を空回りさせる。つまり、この場合には、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)を第2変速機構50で変速してハイブリッド車両1を走行させつつ、その動力の一部を利用して電力の回生を行うこともできる。また、この場合には、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)のみを利用してハイブリッド車両1を走行させることもできる。
このデュアルクラッチ式変速機30は、新たな要求変速段が変速制御手段によって選択されている間、上述した変速を第1変速機構40の変速段と第2変速機構50の変速段との間で交互に繰り返し行う。
また、このハイブリッド車両1において第2変速機構50の後退ギヤ段59が要求変速段として選択された場合、電子制御装置100は、変速制御手段によってその後退ギヤ段59の後退カップリング機構59dを係合状態に制御し、且つ、クラッチ制御手段によって第2クラッチ62を係合状態となるように制御すると共に第1クラッチ61を解放状態に制御する。これにより、このハイブリッド車両1においては、内燃機関10の出力軸11の回転トルク(機関トルク)が半係合状態又は係合状態の第2クラッチ62を介して第2変速機構50の入力軸51に伝わり、その入力軸51の回転トルクが後退ギヤ段59を介して変速されて第2変速機構50の出力軸53に伝達される。そして、その出力軸53の回転トルクは、第2駆動ギヤ53a、動力統合ギヤ32及び最終減速装置70を介して減速され、その最終減速装置70の差動機構73によって左右夫々の駆動軸DL,DRに分配される。従って、このハイブリッド車両1は、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)が駆動輪WL,WRに伝達されて後退走行を行う。
また、このハイブリッド車両1は、次のようにして内燃機関10の動力を用いた走行とモータ/ジェネレータ20による発電を同時に行うことができる。先ず、変速制御手段は、モータ/ジェネレータ20が連結された第1変速機構40の全てのカップリング機構(第1速カップリング機構41d、第3速カップリング機構43d及び第5速カップリング機構45d)を解放状態に制御すると共に、第2変速機構50における要求変速段に係るカップリング機構(第2速カップリング機構52d、第4速カップリング機構54d又は後退カップリング機構59d)を係合状態に制御する。また、クラッチ制御手段は、第1及び第2のクラッチ61,62を係合状態となるように制御する。かかる状態においては、内燃機関10の出力軸11の回転トルク(機関トルク)が半係合状態又は係合状態の第2クラッチ62を介して第2変速機構50の入力軸51に伝わり、その入力軸51の回転トルクが要求変速段を介して変速されて第2変速機構50の出力軸53に伝達される。そして、その出力軸53の回転トルクは、第2駆動ギヤ53a、動力統合ギヤ32及び最終減速装置70を介して減速され、その最終減速装置70の差動機構73によって左右夫々の駆動軸DL,DRに分配される。ここで、その出力軸53の回転トルクの一部は、動力統合ギヤ32及び第1駆動ギヤ44aを介して第1変速機構40の出力軸44に伝わるが、この第1変速機構40の全てのカップリング機構が解放状態になっているので、その入力軸42には伝達されない。一方、その入力軸42には、内燃機関10の出力軸11の回転トルク(機関トルク)が半係合状態又は係合状態の第1クラッチ61を介して伝達される。そして、その入力軸42の回転トルクは、歯車対23を介してモータ/ジェネレータ20の回転軸24に伝えられる。その際、電子制御装置100のモータ/ジェネレータ制御手段は、インバータ27を制御して、モータ/ジェネレータ20を発電機として作動させる。つまり、このときには、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)が要求変速段を介して駆動輪WL,WRに伝達されてハイブリッド車両1を走行させると共に、その動力の一部がモータ/ジェネレータ20に伝達されて電力の回生を行う。
更に、このハイブリッド車両1は、モータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)のみでの走行も可能である。この場合、電子制御装置100の変速制御手段は、第1変速機構40における第1速ギヤ段41、第3速ギヤ段43又は第5速ギヤ段45の中から要求変速段の選択を行う。また、電子制御装置100のモータ/ジェネレータ制御手段は、駆動輪WL,WRにおける要求駆動力に応じた電動機トルクを発生させるようにモータ/ジェネレータ20の制御を行う。そして、電子制御装置100は、変速制御手段によってその要求変速段のカップリング機構(第1速カップリング機構41d、第3速カップリング機構43d又は第5速カップリング機構45d)を係合状態に制御し、且つ、クラッチ制御手段によって第1及び第2のクラッチ61,62を解放状態に制御する。これにより、このハイブリッド車両1においては、ロータ22の回転軸24の回転トルク(電動機トルク)が歯車対23を介して第1変速機構40の入力軸42に伝わり、その入力軸42の回転トルクが要求変速段を介して変速されて第1変速機構40の出力軸44に伝達される。そして、その出力軸44の回転トルクは、第1駆動ギヤ44a、動力統合ギヤ32及び最終減速装置70を介して減速され、その最終減速装置70の差動機構73によって左右夫々の駆動軸DL,DRに分配される。従って、このハイブリッド車両1は、モータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)のみを駆動輪WL,WRに伝達して走行することもできる(EV走行モード)。このハイブリッド車両1においては、モータ/ジェネレータ20が接続されている第1変速機構40の或る変速段を使用したEV走行モードでの走行中に、その第1変速機構40の他の変速段への変速(第3速ギヤ段43から第1速ギヤ段41への切り替えのような所謂連続しない変速段間の飛ばし変速)を行うことができる。
また更に、このハイブリッド車両1は、モータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)を第2変速機構50に伝えて走行させることも可能である。この場合、電子制御装置100の変速制御手段は、第1変速機構40におけるカップリング機構(第1速カップリング機構41d、第3速カップリング機構43d及び第5速カップリング機構45d)を全て解放状態に制御すると共に、第2変速機構50において選択した要求変速段のカップリング機構(第2速カップリング機構52d、第4速カップリング機構54d又は後退カップリング機構59d)を係合状態に制御する。また、この電子制御装置100のクラッチ制御手段は、第1及び第2のクラッチ61,62を双方とも係合状態となるように制御する。これにより、第1変速機構40の入力軸42に入力されたモータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)は、半係合状態又は係合状態の第1クラッチ61と第2クラッチ62を介して第2変速機構50の入力軸51に伝達され、この第2変速機構50の要求変速段で変速されて出力軸53に伝わる。そして、その出力軸53の回転トルクは、第2駆動ギヤ53a、動力統合ギヤ32及び最終減速装置70を介して減速され、その最終減速装置70の差動機構73によって左右夫々の駆動軸DL,DRに分配される。つまり、このハイブリッド車両1は、第1変速機構40を介さずに、第2変速機構50を経たモータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)で走行することもできる。
また、このハイブリッド車両1においては、モータ/ジェネレータ20を発電機として作動させることによって、前述したように回生制動を行うことができる。この場合、電子制御装置100の変速制御手段は、第1変速機構40において選択した要求変速段のカップリング機構(第1速カップリング機構41d、第3速カップリング機構43d又は第5速カップリング機構45d)を係合状態に制御すると共に、第2変速機構50におけるカップリング機構(第2速カップリング機構52d、第4速カップリング機構54d及び後退カップリング機構59d)を全て解放状態に制御する。その要求変速段は、例えば二次電池28の充電状態に基づいて設定する。例えば、二次電池28の充電状態が低下しているほど(蓄電量が少ないほど)多量に充電を行う必要があるので、要求変速段は、二次電池28の充電状態が低下しているほどロータ22の回転を速めることのできる低速側の変速段を設定すればよい。また、このときの電子制御装置100のクラッチ制御手段は、第1及び第2のクラッチ61,62を双方とも解放状態に制御する。また、この電子制御装置100のモータ/ジェネレータ制御手段は、電力の回生が行われるようにインバータ27を制御して、モータ/ジェネレータ20を発電機として作動させる。尚、このときには、燃料を無駄に消費しないように、機関制御手段によって内燃機関10を停止させておくことが望ましい。かかる状態において、駆動輪WL,WRの回転トルクは、最終減速装置70、動力統合ギヤ32及び第1駆動ギヤ44aを介して第1変速機構40の出力軸44に入力される。その出力軸44の回転トルクは、要求変速段で変速されて第1変速機構40の入力軸42に伝達され、歯車対23を介してモータ/ジェネレータ20のロータ22に伝わる。その際、モータ/ジェネレータ20は、発電機として作動しているので、電力の回生を行うと共に、ロータ22の回転が駆動輪WL,WRの回転負荷となる。従って、このときのハイブリッド車両1においては、回生制動が行われて駆動輪WL,WRに制動力(以下、「回生制動力」という。)が加わるようになる。
かかる回生制動は、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)のみでの走行中、モータ/ジェネレータ20の機械的な動力(電動機トルク)のみでの走行中、又は内燃機関10とモータ/ジェネレータ20の夫々の機械的な動力(機関トルクと電動機トルクとを合わせた総出力トルク)での走行中の何れの場合においても実行可能である。
ここで、駆動輪WL,WRの要求制動力(要求制動トルク)は、前述したように制動装置90のマスタシリンダ圧制動力(マスタシリンダ圧制動トルク)又は加圧制動力(加圧制動トルク)のみで発生させてもよく、モータ/ジェネレータ20による回生制動力(回生制動トルク)のみで発生可能ならばそれでもよい。
また、その要求制動力(要求制動トルク)については、マスタシリンダ圧制動力(マスタシリンダ圧制動トルク)又は加圧制動力(加圧制動トルク)と回生制動力(回生制動トルク)の双方によって実現させる場合もある。この場合、ブレーキECU105の制動制御手段は、ブレーキ操作量検出手段97で検出されたブレーキ操作量に基づいて駆動輪WL,WRの要求制動力(要求制動トルク)を設定する。その際、電子制御装置100の制動制御手段は、例えば運転者のブレーキ操作を契機にして、少なくとも二次電池28の充電状態に基づき回生制動の要否を判断する。例えば、二次電池28の充電状態が所定よりも低下していれば(蓄電量が所定量よりも少なくなっていれば)、電力を回収して二次電池28の充電量を上げることが望ましいので、電子制御装置100の制動制御手段は、回生制動が必要と判断する。この電子制御装置100の制動制御手段は、回生制動が必要と判断したならば、回生制動力(回生制動トルク)を例えばロータ22の回転速度やモータ/ジェネレータ20の温度などに基づいて演算し、その回生制動力(回生制動トルク)の情報をブレーキECU105に送信する。ブレーキECU105の制動制御手段においては、マスタシリンダ圧制動力(マスタシリンダ圧制動トルク)と回生制動力(回生制動トルク)によって要求制動力(要求制動トルク)を各制動力発生手段96L,96Rに発生させることができるのか否かを判断する。そして、この制動制御手段は、マスタシリンダ圧制動力(マスタシリンダ圧制動トルク)と回生制動力(回生制動トルク)とで要求制動力(要求制動トルク)を満足させることができないならば、その不足分を補うことが可能な各制動力発生手段96L,96Rへの目標ブレーキ液圧を求め、その目標ブレーキ液圧に基づきブレーキアクチュエータ94を制御して加圧制動力(加圧制動トルク)を制動力発生手段96L,96Rに発生させる。これにより、駆動輪WL,WRには、その加圧制動力(加圧制動トルク)と回生制動力(回生制動トルク)とによって要求制動力(要求制動トルク)が加わるようになる。
以上示したハイブリッド車両1においては、運転者がアクセルペダル120を踏み込んだ際に、そのアクセルペダル120の操作量(以下、「アクセル操作量」という。)に応じた駆動輪WL,WRの要求駆動力が演算され、その要求駆動力を発生させるべく動力源(内燃機関10、モータ/ジェネレータ20)やデュアルクラッチ式変速機30が制御される。そのアクセル操作量とは、アクセルペダル120に入力されたペダル踏力やアクセルペダル120の踏み込み量(つまり移動量)などであり、図1に示すアクセル操作量検出手段121で検出する。
例えば、第1変速機構40の変速段(第1速ギヤ段41、第3速ギヤ段43又は第5速ギヤ段45)を用いたEV走行モードでの走行時には、運転者がアクセルペダル120を踏み込んで加速を要求した際に、モータ/ジェネレータ20の動力が圧縮機81等の補機の駆動にも使用されているなどの理由から電動機トルクのみでアクセル操作量に応じた要求駆動力を発生させることができなければ、動力として内燃機関10の機関トルクも加えて又は動力をその機関トルクに切り替えて、要求駆動力を発生させるように制御される。その際、このハイブリッド車両1においては、内燃機関10が作動中ならば、第1クラッチ61を係合状態に制御するだけで、その内燃機関10の機関トルクを駆動力として駆動輪WL,WRに伝え、要求駆動力を発生させることができる。尚、その際に第2クラッチ62を係合状態に制御し、第2変速機構50を介して機関トルクを伝達させるようにしてもよいが、その場合には、第2クラッチ62を係合する前に第2変速機構50における次の要求変速段のカップリング機構を係合状態に制御する必要がある。これが為、この場合には、アクセル操作が検知されてから(換言するならば内燃機関10の始動要求を受けてから)内燃機関10の出力(機関トルク)を駆動輪WL,WRに伝達させることができるようになるまでの待ち時間(以下、「出力待機時間」という。)が第1クラッチ61を係合させるときよりも長くなってしまう。
一方、EV走行中に内燃機関10が停止状態のときには、運転者の加速要求に応じて内燃機関10の再始動が求められると、その再始動にかかる分だけ機関トルクの出力待機時間が長くなってしまう。従って、このときの運転者は、アクセル操作を行ってから要求駆動力の発生に伴う加速度を感じ取るまでの間に応答遅れ(所謂もたつき感)を感じてしまう可能性がある。
例えば、このハイブリッド車両1においては、運転者のアクセル操作を検知してから要求駆動力が発生するまでの間(つまり出力待機時間の間)に、内燃機関10がクランキングされて始動するまでの時間(以下、「機関始動時間(原動機始動時間)」という。)Tengと、第1クラッチ61又は第2クラッチ62の係合に要する時間(以下、「クラッチ係合時間」という。)Tclと、が少なくとも経過している。これが為、運転者は、内燃機関10が作動中のときと比べると、少なくとも機関始動時間Teng分だけもたつき感を覚える可能性がある。また、変速段の変更も要求されている場合には、現在の変速段のカップリング機構の解放に要する時間(以下、「変速段解放時間」という。)Tgoと、機関始動時間Tengと、第2変速機構50における新たな要求変速段のカップリング機構の係合に要する時間(以下、「変速段係合時間」という。)Tglと、第2クラッチ62のクラッチ係合時間Tclと、が少なくとも必要になる。これが為、この場合の運転者は、その夫々の時間分だけもたつき感を覚える。
ここで、このハイブリッド車両1においては、モータ/ジェネレータ20を内燃機関10のスタータモータとして利用することができる。例えば、低速でのEV走行時には、高速走行時よりも内燃機関10の始動要求を受けた際のモータ/ジェネレータ20の出力が小さい。これが為、このときには、そのモータ/ジェネレータ20の出力が不足して内燃機関10を始動できないことがある。従って、このようなときには、モータ/ジェネレータ20の回転数とトルクを上昇させ、その出力を内燃機関10の始動に足る大きさへと上げる必要がある。そこで、このハイブリッド車両1においては、内燃機関10の始動要求を受けた際の車速に応じて、モータ/ジェネレータ20の回転数とトルクを内燃機関10の始動に足るものへと同期させる必要があるのか否かを判断させ、同期が必要ならば、これを実行させる。このことから、その際には、その同期に係る時間(以下、「MG同期時間」という。)Tmg分だけ更に出力待機時間が長くなり、よりもたつき感を覚えやすくなる。
また、そのモータ/ジェネレータ20は、圧縮機81等の補機の駆動源として利用されることもあり、その補機の駆動分だけ出力が小さくなる。これが為、補機の駆動中に内燃機関10の始動要求を受けた際にモータ/ジェネレータ20を始動装置として使うときには、特に低速でのEV走行時ならば、その際のモータ/ジェネレータ20が内燃機関10を始動させることができるだけの出力を残していない可能性が高くなる。このことから、このハイブリッド車両1においては、そのようなモータ/ジェネレータ20の出力不足が起きているならば、モータ/ジェネレータ20の回転数とトルクを内燃機関10の始動に足るものへと同期させる。従って、この場合にも、MG同期時間Tmg分だけ出力待機時間が長くなり、もたつき感を覚えやすくなる。
また、このハイブリッド車両1は、EV走行モードのようにモータ/ジェネレータ20の電動機トルクのみで走行する際に、第1変速機構40又は第2変速機構50の内の何れか一方の変速段のみを用いて変速動作を行う。例えば、第1変速機構40の変速段(第1速ギヤ段41、第3速ギヤ段43又は第5速ギヤ段45)でEV走行する場合には、変速制御手段が第1変速機構40の中の要求変速段のカップリング機構(第1速カップリング機構41d、第3速カップリング機構43d又は第5速カップリング機構45d)を係合状態に制御して、残りの変速段のカップリング機構を解放状態に制御すると共に、クラッチ制御手段が第1クラッチ61と第2クラッチ62を解放状態に制御する。この場合、その第1変速機構40の中の別の変速段に変速するときには、変速制御手段が第1変速機構40の中の現在の変速段のカップリング機構を解放状態から係合状態に制御すると共に、新たな要求変速段のカップリング機構を係合状態から解放状態に制御する。その際、変速段が切り替わる過程においては、第1変速機構40の何れの変速段も係合されていない状態、つまり電動機トルクを駆動輪WL,WR側に伝達できない状態(以下、「ニュートラル状態」という。)が新たな要求変速段への変速動作を終えるまで継続する。そのニュートラル状態のときに運転者が加速側にアクセル操作を行った場合には、変速動作が中止されなければ、変速動作が終わるまで内燃機関10の機関トルクを駆動輪WL,WR側に伝えることができないので、より出力待機時間が長くなってしまう。
このように、機関トルクの出力待機時間は、車両の状態や車両への要求に応じて変化する。従って、運転者の感じるもたつき感も車両の状態等によって様々に変わる。そのもたつき感を少しでも解消する為には、内燃機関10の始動専用のスタータモータ13を用意すればよい。つまり、スタータモータ13を利用した場合には、モータ/ジェネレータ20を同期させずともクランキング動作を行うことができるので、MG同期時間Tmg分の短縮が可能になり、機関トルクの出力待機時間を短くできる。しかしながら、その際には、スタータモータとしてモータ/ジェネレータ20を利用した場合と比較して消費電力が多くなり、エネルギ損失が増えてしまうので、これを車両全体として観ると燃費性能の低下を招くことになってしまう。従って、内燃機関10の始動装置としては、原則として燃費性能に優れるモータ/ジェネレータ20を利用し、その燃費性能よりももたつき感の解消を求めるときにスタータモータ13を利用することが望ましい。
そこで、本実施例においては、内燃機関10のクランキングの動力源を車両の状態や車両への要求に応じてモータ/ジェネレータ20とスタータモータ13とで使い分け、アクセル操作から要求駆動力発生までのもたつき感の改善と良好な燃費性能を両立させることができるように構成する。
本実施例においては、内燃機関10をモータ/ジェネレータ20で始動させたと仮定した際の機関トルクの出力待機時間の予測値(以下、「出力待機予測時間」という。)Tcを求め、その機関トルクの出力待機予測時間Tcの長短に応じて内燃機関10をモータ/ジェネレータ20で始動させるのかスタータモータ13で始動させるのかについて決める。本実施例においては、その出力待機予測時間Tcが長ければ、運転者の感じるもたつき感を改善する為にスタータモータ13で内燃機関10を始動させ、その出力待機予測時間Tcが短ければ、燃費性能に優れるモータ/ジェネレータ20で内燃機関10を始動させる。
ここで、その機関トルクの出力待機予測時間Tcとは、車両の状態や車両への要求に応じて変わるものであり、上述した機関始動時間Teng、第1クラッチ61又は第2クラッチ62のクラッチ係合時間Tcl、第1クラッチ61又は第2クラッチ62の解放に要する時間(以下、「クラッチ解放時間」という。)Tco、該当する変速段の変速段係合時間Tgl、該当する変速段の変速段解放時間Tgo及びMG同期時間Tmgを車両の状態等に応じて適宜組み合わせ、足し合わせたものとなる。
尚、その機関始動時間Teng等の各種の時間は、デュアルクラッチ式変速機30やモータ/ジェネレータ20等のシステム固有の値なので、実験やシミュレーションを行い導き出した結果を予め電子制御装置100のROM等に格納しておき、これを使用する。
以下に、本実施例のハイブリッド車両1における内燃機関10の始動時の制御動作についての具体例を図3のフローチャートを用いて説明する。
最初に、電子制御装置100は、内燃機関10の始動要求の有無について判定する(ステップST1)。
このステップST1においては、例えば、アクセル操作量検出手段121等の検出信号を受信した電子制御装置100の演算結果を利用すればよい。例えば、電子制御装置100は、内燃機関10の停止中にアクセル操作量検出手段121の検出結果から運転者の加速側へのアクセル操作を検知した際、そのときのアクセル操作量に基づいて要求駆動力を演算し、その要求駆動力を満足させる為に内燃機関10の機関トルクが必要なのか否かの判断を行う。ここで必要との判断が為された場合、電子制御装置100は、内燃機関10を始動させるべく機関制御手段に指令を送る。このステップST1では、その電子制御装置100が行った演算結果を用いて内燃機関10の始動要求の有無の判定を行う。
このステップST1で内燃機関10を始動させる必要はないと判定された場合、この電子制御装置100は、本動作を終わらせる。
一方、このステップST1で内燃機関10を始動させる必要があると判定された場合、この電子制御装置100は、演算処理に用いる必要情報を取得する(ステップST2)。その必要情報とは、車速センサ131によって検出された車速の情報、シフトポジションセンサ132によって検出されたデュアルクラッチ式変速機30の変速レンジの情報、変速制御手段から受け取った現在の変速段の位置情報、補機への電力供給や補機の作動形態の制御を行う電子制御装置100の補機制御手段から受け取った補機の作動状態の情報(例えば圧縮機81のON/OFF情報)等である。
そして、この電子制御装置100の閾値設定手段は、後の機関トルクの出力待機予測時間Tcとの比較の際に用いる閾値Tdを車両の状態や車両への要求に基づいて設定する(ステップST3)。
その閾値Tdは、例えば車両に要求されている走行モードに基づいて決める所定時間のことである。その走行モードとは、内燃機関10の出力やデュアルクラッチ式変速機30の変速時期等を選択結果に応じて変化させる為のものであり、例えば所謂通常走行モード、スポーツ走行モードやエコ走行モード等のことである。一般に、スポーツ走行モード選択時には、燃費特性よりも要求駆動力発生までの迅速な応答性が求められるので、機関トルクの出力待機予測時間Tcが或る程度短くても始動時の応答性に優れるスタータモータ13でのクランキングが行われるように、通常走行モード選択時よりも閾値Tdを短く設定する。これに対して、エコ走行モード選択時には、主に良好な燃費特性が求められるので、機関トルクの出力待機予測時間Tcが或る程度長くてもスタータモータ13よりも燃費特性に優れるモータ/ジェネレータ20でのクランキングが行われるように、通常走行モード選択時よりも閾値Tdを長く設定する。
次に、電子制御装置100の出力待機予測時間演算手段は、モータ/ジェネレータ20で内燃機関10を始動させると仮定した際の機関トルクの出力待機予測時間Tcを求める(ステップST4)。
続いて、電子制御装置100の始動装置設定手段は、上記ステップST3で設定した閾値Tdと上記ステップST4で求めた機関トルクの出力待機予測時間Tcとを比較して、その出力待機予測時間Tcが閾値Tdに対して長くなっているのか否かを判定する(ステップST5)。
そして、この始動装置設定手段は、その出力待機予測時間Tcが閾値Tdよりも長ければ、機関トルクによる駆動力が駆動輪WL,WRに発生するまでの応答性を高めるべく、内燃機関10の始動装置をスタータモータ13に設定する(ステップST6)。また、この始動装置設定手段は、その出力待機予測時間Tcが閾値Td以下ならば、良好な燃費性能の確保に重きを置いて、内燃機関10の始動装置をモータ/ジェネレータ20に設定する(ステップST7)。
電子制御装置100は、そのようにして内燃機関10の始動装置が設定された後、その設定された始動装置を用いて機関制御手段に内燃機関10を始動させる(ステップST8)。
例えば、ハイブリッド車両1は、現在、内燃機関10が停止中、変速レンジがDレンジで変速段が第1速ギヤ段41のEV走行モードであり、且つ、モータ/ジェネレータ20により圧縮機81が駆動中で低車速域において走行している状態にあると仮定する。そして、この状態で運転者が加速側へのアクセル操作を行った場合に、このハイブリッド車両1は、その運転者の加速要求に応じて、第2速ギヤ段52へのアップシフトと内燃機関10の始動が要求されたと仮定する。尚、このハイブリッド車両1は、変速レンジや圧縮機81の作動状態を変えることなく状態遷移するものとする。
この場合に上記ステップST4で演算される機関トルクの出力待機予測時間Tcは、第1速ギヤ段41の変速段解放時間Tgoと、第1速ギヤ段41解放後のMG同期時間Tmgと、モータ/ジェネレータ20の出力を内燃機関10に伝える為の第1クラッチ61のクラッチ解放時間Tcoと、モータ/ジェネレータ20によってクランキングさせた際の機関始動時間Tengと、第2速ギヤ段52の変速段係合時間Tglと、第2速ギヤ段52を介して内燃機関10の機関トルクを駆動輪WL,WRに伝える為の第2クラッチ62のクラッチ係合時間Tclと、を足し合わせた長さになる(Tc=Tgo+Tmg+Tco+Teng+Tgl+Tcl)。ここでは、上記ステップST5において、その出力待機予測時間Tcが閾値Tdよりも長いと判定されたものとする。つまり、この場合には、アクセル操作が為されてから内燃機関10の機関トルクによる駆動力が駆動輪WL,WRに発生するまでに時間を要し、運転者が許容し得ないもたつき感を覚えてしまう可能性がある。これが為、この場合には、上記ステップST6に進んで内燃機関10の始動装置がスタータモータ13に設定される。従って、この場合における内燃機関10の実際の出力待機時間Trは、スタータモータ13によってクランキングさせた際の機関始動時間Tengと、第2速ギヤ段52の変速段係合時間Tglと、第2速ギヤ段52を介して内燃機関10の機関トルクを駆動輪WL,WRに伝える為の第2クラッチ62のクラッチ係合時間Tclと、を足し合わせた長さになり(Tr=Teng+Tgl+Tcl)、出力待機予測時間Tcよりも短くなる。このようなことから、この場合には、アクセル操作が為されてから内燃機関10の機関トルクによる駆動力が駆動輪WL,WRに発生するまでの応答性を高めることができ、運転者の感じ取るもたつき感が改善される。
ここで、現在の車両状態において第2クラッチ62を解放状態から係合状態へと制御した際には、第2変速機構50の入力軸51や第2クラッチ62等を介してモータ/ジェネレータ20の出力(駆動輪WL,WRからの回転トルク)が伝わり、内燃機関10の機関回転数を上昇させる。低車速域とは、その際の機関回転数が内燃機関10を始動させる為に必要な高さにまで上昇するのか否かによって決められたものであり、そのような高さにまで上昇させることが不可能な車速域のときに該当する。本実施例においては、この低車速域以外の車速域、つまりそのような高さにまで機関回転数を上昇させることができる車速域を通常車速域という。
また、例えば、このハイブリッド車両1は、現在、内燃機関10が停止中、変速レンジがDレンジで変速段が第3速ギヤ段43のEV走行モードであり、且つ、モータ/ジェネレータ20により圧縮機81が駆動中で通常車速域において走行している状態にあると仮定する。そして、この状態で運転者が加速側へのアクセル操作を行った場合に、このハイブリッド車両1は、その運転者の加速要求に応じて、第2速ギヤ段52へのダウンシフトと内燃機関10の始動が要求されたと仮定する。尚、このハイブリッド車両1においても、変速レンジや圧縮機81の作動状態を変えることなく状態遷移するものとする。
この場合に上記ステップST4で演算される内燃機関10の出力待機予測時間Tcは、第2速ギヤ段52の変速段係合時間Tglと、第2変速機構50の入力軸51の回転トルクを内燃機関10の出力軸11に伝える為の第2クラッチ62のクラッチ係合時間Tclと、モータ/ジェネレータ20によってクランキングさせた際の機関始動時間Tengと、を足し合わせた長さになる(Tc=Tgl+Tcl+Teng)。ここでは、上記ステップST5において、その出力待機予測時間Tcが閾値Td以下と判定されたものとする。つまり、この場合には、モータ/ジェネレータ20を始動装置に用いても、アクセル操作から機関トルクによる駆動力の発生に至るまでの応答性が所望の範囲内で確保されている。これが為、この場合には、上記ステップST7に進んで内燃機関10の始動装置がモータ/ジェネレータ20に設定される。従って、この場合における内燃機関10の実際の出力待機時間Trは、出力待機予測時間Tcと同じ長さになる。このようなことから、この場合には、アクセル操作から機関トルクによる要求駆動力発生までの応答性を犠牲にすることなく、良好な燃費性能を確保することができる。
以上示した如く、本実施例のハイブリッド車両1は、車両の状態や車両への要求に基づきモータ/ジェネレータ20で始動させたと仮定した際の内燃機関10の出力待機予測時間Tcを演算して、モータ/ジェネレータ20での内燃機関10の始動を許容し得る出力待機予測時間Tcについて最大でももたつき感の抑制と良好な燃費性能の確保が可能な閾値Tdまでとし、出力待機予測時間Tcが閾値Tdを超えた際に、もたつき感の改善に重きを置いてスタータモータ13での内燃機関10の始動に切り替える。つまり、このハイブリッド車両1においては、その出力待機予測時間Tcが長くなっており、実際の出力待機時間Trの短縮化を望むときに、スタータモータ13で内燃機関10を始動させる一方、その出力待機予測時間Tcが短くなっており、運転者にもたつき感を感じさせないときに、良好な燃費性能の確保に重きを置いてモータ/ジェネレータ20で内燃機関10を始動させる。従って、このハイブリッド車両1は、車両の状態や車両への要求に応じて、アクセル操作から要求駆動力発生までのもたつき感の改善と燃費性能の悪化の抑制を最適な状態で両立させることができる。
ところで、上述した本実施例のデュアルクラッチ式変速機30においては第1変速機構40の入力軸42と第2変速機構50の入力軸51を同軸上に配置した2重軸構造のものとして例示したが、例えば、その夫々の入力軸42,51は、図4に示す如く所定の間隔を空けて平行に配置してもよい。この場合のデュアルクラッチ機構60には、内燃機関10の出力軸11に当該出力軸11と一体になって回転するよう取り付けたメイン駆動ギヤ64と、このメイン駆動ギヤ64に噛み合う第1及び第2の駆動ギヤ65,66と、を設ける。この場合の第1クラッチ61は、その入力側(つまり内燃機関10側)に第1駆動ギヤ65を取り付けると共に、出力側に第1変速機構40の入力軸42を取り付け、内燃機関10の出力軸11に対してメイン駆動ギヤ64を介して係合状態にある第1駆動ギヤ65と第1変速機構40の入力軸42とを係合させることができる。一方、第2クラッチ62は、その入力側(つまり内燃機関10側)に第2駆動ギヤ66を取り付けると共に、出力側に第2変速機構50の入力軸51を取り付け、内燃機関10の出力軸11に対してメイン駆動ギヤ64を介して係合状態にある第2駆動ギヤ66と第2変速機構50の入力軸51とを係合させることができる。これら第1及び第2のクラッチ61,62は、例えば乾式又は湿式の単板クラッチ又は多板クラッチを用いればよい。この場合の電子制御装置100のクラッチ制御手段は、第1クラッチ61と第2クラッチ62を交互に係合状態と解放状態(非係合状態)とで切り替えさせるように構成し、内燃機関10の機械的な動力(機関トルク)が第1変速機構40又は第2変速機構50の内の何れか一方にのみ伝達されるようにする。
更に、本実施例においてはモータ/ジェネレータ20と第1変速機構40の間に歯車対23を介在させているが、そのモータ/ジェネレータ20は、第1変速機構40の入力軸42にロータ22を取り付けてもよい。また、本実施例においてはモータ/ジェネレータ20を第1変速機構40側に設けたが、そのモータ/ジェネレータ20を第2変速機構50側に設けたものであってもよい。