JP2010118491A - 光電変換装置および電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】量子ドットを用いた波長変換部(素子)を光電変換装置に組み込むことで、特性の良好な光電変換装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る光電変換装置は、光電変換部(1A)と、前記光電変換部の光入射面上に配置され、複数のナノ結晶粒を含有する層を有する波長変換部(1B)と、を有する。かかる構成によれば、複数のナノ結晶粒を含有する波長変換部により、光子の合成又は分解が生じ、上記光電変換部における光電効率を向上させることができる。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係る光電変換装置は、光電変換部(1A)と、前記光電変換部の光入射面上に配置され、複数のナノ結晶粒を含有する層を有する波長変換部(1B)と、を有する。かかる構成によれば、複数のナノ結晶粒を含有する波長変換部により、光子の合成又は分解が生じ、上記光電変換部における光電効率を向上させることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、光電変換装置、特に、ナノ結晶粒を用いた光電変換装置に関する。
省エネルギーかつ省資源でクリーンなエネルギー源として太陽電池(光電変換装置)の開発が盛んに行われている。太陽電池は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する電力機器である。その変換効率を向上させるため各種構造の太陽電池が検討されている。その中でも、理論的には60%以上の変換効率を可能にする次世代の太陽電池として量子ドット(ナノ結晶粒)を用いた太陽電池が注目を浴びている。
この種の太陽電池としては、例えば、下記特許文献1、2に開示されているものがある。
特開平8−264825号公報
特開2006−114815号公報
しかしながら、上記量子ドット型太陽電池の構造においても、量子ドットにより生成された電子とホールを外部に起電力として取り出すことが難しく、未だ研究・開発段階であり、実用に至っていない。
そこで、本発明に係る具体的態様は、量子ドットを用いた波長変換部(素子)を光電変換装置に組み込むことで、特性の良好な光電変換装置を提供することを目的とする。
本発明に係る光電変換装置は、光電変換部と、前記光電変換部の光入射面の上方に配置され、複数のナノ結晶粒を含有する層を有する波長変換部と、を有する。
かかる構成によれば、複数のナノ結晶粒を含有する波長変換部により、光子の合成又は分解が生じ、上記光電変換部における光電効率を向上させることができる。
前記複数のナノ結晶粒を含有する層は、第1層上に配置された第1の複数のナノ結晶粒と、前記第1層上に前記第1の複数のナノ結晶粒を介して配置された第2層と、前記第2層上に配置された第2の複数のナノ結晶粒と、を有する。このように、複数のナノ結晶粒の配置に周期性を持たせてもよい。
前記第1の複数のナノ結晶粒の各々のバンドギャップおよび前記第2の複数のナノ結晶粒の各々のバンドギャップは、前記複数のナノ結晶粒を含有する層のバンドギャップより小さい。このように、ナノ結晶粒と上記層とのバンドギャップ差に起因する量子井戸が形成される。
更に、分光器を有し、前記分光器を介して所定のエネルギー以上のエネルギー光を前記波長変換部に入射させ、前記分光器を介して前記所定のエネルギー未満のエネルギー光を前記光電変換部に入射させる。また、前記波長変換部は、前記所定のエネルギー以上のエネルギー光を前記光電変換部で利用可能な光に変換し、前記利用可能な光が前記光電変換部に入射される。このように、選択的に高エネルギーの光子を波長変換部に入射させることで、より低エネルギーではあるが前記光電変換部において効果的に利用可能な光に変換でき、光電効果の向上を図ることができる。
本発明に係る光電変換装置は、第1光電変換部と、第2光電変換部と、前記第1光電変換部および前記第2光電変換部の間に配置され、複数のナノ結晶粒を含有する層を有する波長変換部と、を有する。
かかる構成によれば、第1光電変換部で光電効果に寄与しなかった光子を、波長変換部で合成し、第2光電変換部において光電変換させることができる。
前記複数のナノ結晶粒を含有する層は、第1層上に配置された第1の複数のナノ結晶粒と、前記第1層上に前記第1の複数のナノ結晶粒を介して配置された第2層と、前記第2層上に配置された第2の複数のナノ結晶粒と、を有する。このように、複数のナノ結晶粒の配置に周期性を持たせてもよい。
前記第1の複数のナノ結晶粒の各々のバンドギャップおよび前記第2の複数のナノ結晶粒の各々のバンドギャップは、前記複数のナノ結晶粒を含有する層のバンドギャップより小さい。このように、ナノ結晶粒と上記層とのバンドギャップ差に起因する量子井戸が形成される。
前記第1光電変換部を通過した光が、前記波長変換部により前記第2光電変換部で利用可能な光に変換され、前記利用可能な光が前記第2光電変換部に入射される。
本発明に係る電子機器は、上記光電変換装置を有する。かかる構成によれば、電子機器の特性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の機能を有するものには同一もしくは関連の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態の光電変換装置(太陽電池)の構成を模式的に示す断面図である。
図1は、本実施の形態の光電変換装置(太陽電池)の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示す光電変換装置は、光電変換部(光電変換素子、光起電力発生部)1Aと波長変換部(波長変換素子)1Bとを有する。波長変換部1Bは、光電変換部1Aの光入射側に配置される。ここでは、上面からの光を取り込むため、光電変換部1Aは、波長変換部1Bの下層に配置されている。
この光電変換部1Aの構成に限定は無いが、例えば、pin型構造、pn型構造の光電変換部(光電変換素子)が用いられる。pin型構造の光電変換素子とは、例えば、基板上に下層電極、p型半導体層、i型半導体層、n型半導体層および上層透明電極が順次積層された積層部を有する光電変換素子である。また、pn型構造の光電変換素子とは、例えば、基板上に下層電極、p型半導体層、n型半導体層および上層透明電極が順次積層された積層部を有する光電変換素子である。なお、TaおよびTbは、起電力取り出し端子であり、例えば、上記下層電極や上層透明電極の端部を端子(Ta、Tb)として用いてもよい。
図2は、本実施の形態の光電変換装置の波長変換部1Bの構造を示す断面図である。図2に示すように、波長変換部1Bは、量子ドットdとその周囲を取り囲む層M(以降、この層を「マトリクス層M」と呼ぶことがある)よりなる。
ここで、「量子ドット(ナノ結晶粒)」とは、半導体(化合物半導体を含む)で作られた微小な結晶粒子を意味し、数百から数万個の原子が集まったものである。粒径は電子のドブロイ波長程度(数十〜数ナノメートル)のものをいう。特に、本明細書においては、粒径が1nm以上20nm以下のものを「量子ドット」と言い、また、結晶としては、単結晶の他、多結晶状態のものも含むものとする。
また、マトリクス層Mは、例えば、酸化シリコン膜などの誘電体よりなる。このマトリクス層Mの材料に限定はない。即ち、後述するように、量子ドットdのバンドギャップEgとマトリクス層MのバンドギャップEgsとの差(Egs>Eg)により量子井戸が形成されればよく、誘電体の他、半導体で構成してもよい(図4(B)参照)。
かかる波長変換部1B、即ち、量子ドットdが分散したマトリクス層Mの形成方法に限定はないが、例えば、酸化シリコン薄膜上に分子線エピタキシーなどを用い、部分的に小さいシリコンなどの半導体よりなる島(ドット)を形成し、さらに、その上部に酸化シリコン薄膜を堆積し、その上部にドットを形成する工程を繰り返すことにより、酸化シリコン膜中に量子ドットdを周期的に形成することができる(図2参照)。
次いで、量子ドットの作用効果である、(1)量子サイズ効果、(2)複数エキシトン生成効果および(3)ミニバンド形成効果について説明する。図3は、量子サイズ効果を説明するためのエネルギーバンド図である。また、図4は、バルクの場合および量子ドットの場合のエネルギーバンド図である。図5は、超格子構造を模式的に示した断面斜視図であり、図6及び図7は、ミニバンドが形成された場合のエネルギーバンド図であり、図8は、ミニバンドが形成されない場合のエネルギーバンド図である。なお、バンド図において黒丸は電子(e)を白丸はホール(h)を示すものとする。
(1)量子サイズ効果
図3に示すように、半導体原子1個についてのHOMO(最高占有分子軌道:Highest Occupied Molecular Orbital)およびLUMO(最低非占有分子軌道:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)は、分子、クラスター、ナノ結晶粒、バルクと原子の集合数が増加するにしたがって、分離し、バルクにおいては、各軌道が連続し、伝導帯および価電子帯となる。逆に言えば、バルク状態の半導体の塊を、粒子レベルを経て原子レベルまで小さくするとバンドギャップ(Band gap、禁止帯、禁制帯)Egが大きくなる。図3において、縦軸はエネルギーを示し、原子、分子、クラスター、ナノ結晶粒の「バルクの粒径(nm)および原子数」の関係は、それぞれ例えば、「0.1nm以下、原子数1個」、「0.2nm以下、原子数2個」、「1nm未満、原子数10個以下」、「1nm以上20nm以下、原子数102個以上104個以下」、「1000nm以上、原子数1023個以上」である。
図3に示すように、半導体原子1個についてのHOMO(最高占有分子軌道:Highest Occupied Molecular Orbital)およびLUMO(最低非占有分子軌道:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)は、分子、クラスター、ナノ結晶粒、バルクと原子の集合数が増加するにしたがって、分離し、バルクにおいては、各軌道が連続し、伝導帯および価電子帯となる。逆に言えば、バルク状態の半導体の塊を、粒子レベルを経て原子レベルまで小さくするとバンドギャップ(Band gap、禁止帯、禁制帯)Egが大きくなる。図3において、縦軸はエネルギーを示し、原子、分子、クラスター、ナノ結晶粒の「バルクの粒径(nm)および原子数」の関係は、それぞれ例えば、「0.1nm以下、原子数1個」、「0.2nm以下、原子数2個」、「1nm未満、原子数10個以下」、「1nm以上20nm以下、原子数102個以上104個以下」、「1000nm以上、原子数1023個以上」である。
(2)複数エキシトン生成効果(MEG:Multiple Exciton Generation)
図4(A)に示すように、バルクの半導体においては、キャリア(電子)は、光エネルギー(E=hν=hc/λ、h:プランク定数、ν:振動数、c:光の速さ、λ:波長)を受け、価電子帯に遷移する。ここで、バンドギャップEgより光エネルギーhνが2倍以上大きい場合(hν>2Eg)、キャリアは価電子帯の上部まで遷移するものの、Egを超えた余分なエネルギーは速やかに格子系に熱として移動して、より安定的な価電子帯の下部まで移動する。つまり、Egを超えたエネルギーは熱として失われる。したがって、1つの光子によって1つのキャリアしか生成できない。なお、励起された電子に対しホールは残存するため、これらの対をエキシトン(exciton、励起子)という。
図4(A)に示すように、バルクの半導体においては、キャリア(電子)は、光エネルギー(E=hν=hc/λ、h:プランク定数、ν:振動数、c:光の速さ、λ:波長)を受け、価電子帯に遷移する。ここで、バンドギャップEgより光エネルギーhνが2倍以上大きい場合(hν>2Eg)、キャリアは価電子帯の上部まで遷移するものの、Egを超えた余分なエネルギーは速やかに格子系に熱として移動して、より安定的な価電子帯の下部まで移動する。つまり、Egを超えたエネルギーは熱として失われる。したがって、1つの光子によって1つのキャリアしか生成できない。なお、励起された電子に対しホールは残存するため、これらの対をエキシトン(exciton、励起子)という。
これに対し、図4(B)に示すように、量子ドットdを用いた場合、量子ドットdのバンドギャップEgとその周囲を取り囲む層(マトリクス層)のバンドギャップEgsとの差(Egs>Eg)により量子井戸が形成される。
この量子井戸により電子の移動方向が三次元的に制限される。また、この量子井戸中に形成される電子軌道は連続的ではない。この電子軌道のエネルギー準位を低い方からE1〜E6とする。この場合、バンドギャップEgより光エネルギーhνが2倍以上大きい場合(hν>2Eg)に、上位の軌道(E6)まで励起された電子が、より下位の軌道まで落ちる際に、格子系にエネルギーを熱として与えて緩和する過程が非常に遅くなる。その結果、同じ量子井戸中の別の電子をEg以上に励起するインパクトイオン化の確率が高くなり、当該光エネルギーhνが2Egより大きい場合には、更なる、電子(エキシトン)を生成する。よって、1つの光子から複数のキャリア(例えば、電子)を生成することができる。したがって、これらを電流として取り出すことにより光電変換効率を向上させたものが量子ドット型太陽電池である。
(3)ミニバンド形成効果
例えば、図5に示すように、量子ドットdを3次元的に規則正しく配置させる(3次元的な周期性を持たせる)ことにより、量子ドット(量子井戸)間で相互作用が生じ、ミニバンドが形成される。即ち、図6に示すように、トンネル効果により量子井戸間にミニバンドが生じる。なお、ここでは、pn層間にi層として量子ドットdを3次元的に気相正しく配置した層を有する構造体のバンド図を示している。また、図7に示すように、前述の複数エキシトン生成効果により生じた遷移電子や、ミニバンド間における遷移電子などもミニバンドを介して移動可能となる。なお、図7に示すように、電子のみならず、下側の量子井戸中に残存するホールも同様に移動可能となる。このように、量子ドットに3次元的な周期性を持たせた構造を超格子(SL:supper lattice)又は多重量子井戸(MQW:Multi-Quantum Well)構造という。
例えば、図5に示すように、量子ドットdを3次元的に規則正しく配置させる(3次元的な周期性を持たせる)ことにより、量子ドット(量子井戸)間で相互作用が生じ、ミニバンドが形成される。即ち、図6に示すように、トンネル効果により量子井戸間にミニバンドが生じる。なお、ここでは、pn層間にi層として量子ドットdを3次元的に気相正しく配置した層を有する構造体のバンド図を示している。また、図7に示すように、前述の複数エキシトン生成効果により生じた遷移電子や、ミニバンド間における遷移電子などもミニバンドを介して移動可能となる。なお、図7に示すように、電子のみならず、下側の量子井戸中に残存するホールも同様に移動可能となる。このように、量子ドットに3次元的な周期性を持たせた構造を超格子(SL:supper lattice)又は多重量子井戸(MQW:Multi-Quantum Well)構造という。
これに対し、量子ドットdを3次元的にランダムに分散させた場合は、図8に示すように、量子井戸間のトンネル効果が起こりにくい箇所が存在する。この場合、量子井戸間にミニバンドは形成されない。
また、図5に示すように、量子ドットdが縦横および上下に規則正しく並んだ構造は理想的ではあるが、量子ドットdをこのように配列させることは容易ではない。よって、図2では、薄膜間に、平面的にランダムに量子ドットdを配列させ、積層させることにより、配列の周期性を持たせている。かかる構成によっても、ミニバンドの形成率を向上させることができる。
以上(1)〜(3)を通じて詳細に説明したように、量子ドットdにより種々の量子効果が生じる。量子ドット型太陽電池においては、光により遷移した電子などのキャリアを、ミニバンドを通じて外部に取り出すものであるが、本実施の形態においては、量子ドットdによる量子効果により高エネルギーHEの光子を下層の光電変換部において光電変換に寄与し得る程度のエネルギーMEを有する複数の光子に変換(分解)し、下層の光電変換部における光電変換効率を向上させるものである。以下、下層の光電変換部において光電変換に寄与し得る程度のエネルギーMEを「光電変換エネルギーME」と言う。この光電変換エネルギーMEは、下層の光電変換部において光電変換に必要な最低のエネルギーMEmin以上のエネルギーであればよい。
ここで、本明細書において、高エネルギーHEとは、上記MEminの2倍以上のエネルギーを言い、低エネルギーLEとは、上記MEmin未満のエネルギーを言うものとする。
以下、図9および図10を参照しながら、高エネルギーHEの光子を複数の光電変換エネルギーMEを有する複数の光子に分解する現象が生じることを説明する。
図9は、量子ドット型太陽電池における複数エキシトン生成効果を示すエネルギーバンド図およびファインマン図である。
前述の「(2)複数エキシトン生成効果」の欄でも説明したように、上位の軌道(ここではE3)まで励起された電子が、より下位の軌道(ここではE1)まで落ちる際に、同じ量子井戸中の別の電子を励起するインパクトイオン化が生じ、更なる、電子(エキシトン)を生成する(図9(A)(B)参照)。
図9(C)は、図9(A)および(B)で示した2つのエキシトン生成過程を表すファインマン図形である。ここでは、光は破線で、また電子とホールは矢印の付いた実線で示されている。電子とホールの区別は矢印の方向によってなされる。即ち、その方向が時間方向と一致する場合は電子、逆になる場合はホールである。
図10は、本実施の形態の光電変換装置の波長変換部における光子分解効果(複数光子生成効果)を示すエネルギーバンド図およびファインマン図である。
この場合、図10(A)〜(C)に示すように、高エネルギーHEの光子により、上位の軌道(ここではE3)まで励起された電子が、より下位の軌道(ここではE2)に落ちる際に、光電変換エネルギーMEの光を放出する(MEの光子となる。)。さらに、より下位の軌道(ここではE1)に落ちる際に、光電変換エネルギーMEの光を放出する(MEの光子となる。)。
このように、高エネルギーHEの光子が光電変換エネルギーMEの2つの光子となる。かかる効果を、ここでは「光子分解効果」という。当該効果は、言い換えれば、低波長(高エネルギーHE)の1つの光が、高波長(HEより低いエネルギーである光電変換エネルギーME)の2つの光に波長変換されることとなる。
図10(D)は、図10(A)〜(C)で示した2つの光子分解過程を表すファインマン図形である。図10(D)から、量子ドットと外部との間でやりとりされるのは光子だけであり、電子やホールという電荷のやりとりは全くないことが分かる。即ち、量子ドットが下層の光電変換部の電気回路系に組み込まれることなく、1つの光子が2つの光子となることが一目瞭然に理解できる。
一方、光と電子・ホール系と類似する系として光と電子・陽電子系がある。これはホールを陽電子に置き換えた系であり、量子電気力学によって取り扱われる。量子電気力学によれば、図10(D)のファインマン図形に対応する光と電子・陽電子の過程は、電子と陽電子に付く矢印を反対にして得られる過程と相殺して観測にかからないことが知られている(ファリイの定理)。
しかしながら、本実施の形態における光と電子・ホール系は以下の3点(I〜III)で光と電子・陽電子系とは異なっている。I.格子振動(熱)の影響を受けている。II.電子とホールの対称性は完全ではなく、たとえばそれらの質量に差がある。III.量子ドットのバンド構造は真空のそれと異なる。以上の理由により、図10(D)のファインマン図形の過程にその電子とホールに付く矢印を反対にして得られる過程を加えても相殺しない。それゆえ、この過程は実際に起きる過程であることが分かる。
このように、量子ドットの効果として、前述の複数エキシトン効果が生じるが、一方で、上記光子分解効果も生じることが上記ファインマン図により分かる。
よって、本実施の形態においては、量子ドットdを含有する層(1B)を光電変換部1Aの上層に配置し、光子を分解し、光電変換部1Aに入射する光子数を増やすことで、光電効率の向上を図ることができる。
ここで、後述の実施の形態2で説明するように、本実施の形態の光電変換装置の波長変換部1Bにおいては、光子合成効果(複数光子合成効果)も生じる。即ち、低エネルギーLEの2つの光子が光電変換エネルギーMEの1つの光子に合成される。かかる効果によれば、光電変換エネルギーMEの2つの光子を高エネルギーHEの1つの光子に合成してしまう場合もあり得るため、本実施の形態の光電変換装置は、次の条件下において効果的である。
即ち、入射光において、高エネルギーHE光子が低エネルギーLE光子より多い場合には、分解現象が優先的となり、入射する光子数の増大による光電効果の向上を図ることができる。
特に、下層の光電変換部1Aにおいて光電変換に必要な最低のエネルギーMEminより、量子井戸中の電子軌道のエネルギー準位(図10のE1〜E3、図4(B)のE1〜E6)間のギャップが大きくなるよう調整することで、光子分解により生成した光子を下層の光電変換部1Aで効果的に活用することができる。
上記エネルギー準位間のギャップは、例えば、[1]量子ドットdやマトリクス層Mの材料を適宜選択し組み合わせる、また、[2]量子ドットdの周期性(例えば、薄膜の厚さなど)を変えることにより変化させることができる。
<実施の形態2>
上記実施の形態1においては、光子分解効果を利用したが、光子合成効果を利用してもよい。
上記実施の形態1においては、光子分解効果を利用したが、光子合成効果を利用してもよい。
図11は、本実施の形態の光電変換装置(太陽電池)の構成を模式的に示す断面図である。本実施の形態の光電変換装置の構成は、実施の形態1と同様である。
但し、ここでは、光子合成効果を利用し、今まで光電効果に寄与しなかった光子を波長変換部1Bで光電効果に寄与できる光子に変換(合成)し、光電効果の向上を図る。
図12は、本実施の形態の光電変換装置の波長変換部における光子合成効果を示すエネルギーバンド図およびファインマン図である。
この場合、図12(A)〜(C)に示すように、低エネルギーLEの光子により、上位の軌道(ここではE1→E2)まで励起された電子が、さらに、低エネルギーLEの光子により、上位の軌道(ここではE2→E3)まで励起され、より下位の軌道(ここではE1)に落ちる際に、光電変換エネルギーMEの光を放出する(MEの光子となる。)。
このように、低エネルギーLEの2つの光子が光電変換エネルギーMEの1つの光子に合成される。言い換えれば、高波長(低エネルギーLE)の2つの光が、低波長(LEより高いエネルギーである光電変換エネルギーME)の1つの光に波長変換される。
図12(D)は、図12(A)〜(C)で示した2つの光子合成過程を表すファインマン図形である。前述したように、上記光子分解も光子合成も同様の確率で生じることから、本実施の形態の光電変換装置は、次の場合に効果的であることがわかる。
即ち、入射光において、低エネルギーLE光子が高エネルギーHE光子より多い場合には、合成現象が優先的となり、今まで光電効果に寄与しなかった光子を波長変換部1Bで光電効果に寄与できる光子に変換(合成)し、光電効果の向上を図ることができる。
特に、下層の光電変換部1Aにおいて光電変換に必要な最低のエネルギーMEminより、量子井戸中の電子軌道のエネルギー準位(図10のE1〜E3、図4(B)のE1〜E6)間のギャップが小さくなるよう調整することで、光子合成により生成した光子を下層の光電変換部1Aで効果的に活用することができる。
上記エネルギー準位間のギャップは、例えば、[1]量子ドットdやマトリクス層Mの材料を適宜選択し組み合わせる、また、[2]量子ドットdの周期性(例えば、薄膜の厚さなど)を変えることにより変化させることができる。
<実施の形態3>
図13は、本実施の形態の光電変換装置(太陽電池)の構成を示す図である。本実施の形態においては、図13に示すように、プリズムなどの分光器3を用いて、高エネルギーHEの光子を選択的に波長変換部1Bに入射し、高エネルギーLEの光子を光電変換エネルギーMEの光子に分解した後、光電変換部1Aに入射させる。この入射には、例えば、ミラー5などによる反射を用いてもよいし、直接、分解光子(ME)が入射するように光電変換部1Aを配置してもよい。
図13は、本実施の形態の光電変換装置(太陽電池)の構成を示す図である。本実施の形態においては、図13に示すように、プリズムなどの分光器3を用いて、高エネルギーHEの光子を選択的に波長変換部1Bに入射し、高エネルギーLEの光子を光電変換エネルギーMEの光子に分解した後、光電変換部1Aに入射させる。この入射には、例えば、ミラー5などによる反射を用いてもよいし、直接、分解光子(ME)が入射するように光電変換部1Aを配置してもよい。
このように、選択的に高エネルギーHEの光子を波長変換部1Bに入射させることで、実施の形態1で詳細に説明したように、光電変換部1Aに入射する光子数の増大による光電効果の向上を図ることができる。また、HE以下のエネルギーの光子は、波長変換部1Bを介さず光電変換部1Aに入射させることで、光電変換エネルギーMEの光子の不要な合成を回避でき、光電効果の向上を図ることができる。
<実施の形態4>
図14は、本実施の形態の光電変換装置(太陽電池)の構成を示す図である。本実施の形態においては、図14(A)に示すように、2つの光電変換部1AAと1ABとの間に、波長変換部1Bを配置する。2つの光電変換部1AAと1ABは、ほぼ同じ構成(性能)であり、光電変換に必要な最低のエネルギーMEminが同程度である。
図14は、本実施の形態の光電変換装置(太陽電池)の構成を示す図である。本実施の形態においては、図14(A)に示すように、2つの光電変換部1AAと1ABとの間に、波長変換部1Bを配置する。2つの光電変換部1AAと1ABは、ほぼ同じ構成(性能)であり、光電変換に必要な最低のエネルギーMEminが同程度である。
この場合、図14(B)に示すように、光の入射側に配置された光電変換部1AAにおいて、光電効果に寄与しなかった低エネルギーLEの光子(MEmin未満の光子)が、光電変換部1AAを透過し、波長変換部1Bに到達する。この波長変換部1Bで、低エネルギーLEの光子が合成され、光電変換エネルギーMEの光子となり、最下層の光電変換部1ABにおいて光電変換に寄与する。このように、光電効率を向上させることができる。
通常、このようなタンデム型光電変換装置においては、下層の光電変換部においては、光電変換に必要な最低のエネルギーを小さく設計する必要があるが、本実施の形態においては、同じ光電変換装置(1AA、1AB)を用いても光電効率を向上させることができる。
なお、上記実施の形態1〜4においては、量子ドットdの配置に周期性をもたせた(図2参照)が、量子ドットdがランダムに分散されたマトリクス層を波長変換部1Bとして用いてもよい。この場合、図8を参照しながら説明したように、量子井戸間のトンネル効果が起こりにくい箇所が存在するが、各量子井戸中での光子の合成や分解が可能であり、前述の効果を奏する。
また、上記実施の形態1〜4においては、2つの光子への分解や2つの光子の合成を例に説明したが、3以上の光子への分解や、3以上の光子の合成も考えられ、これれの現象によっても前述の効果を奏する。
<電子機器>
上記光電変換装置は、各種電子機器に組み込むことができる。適用できる電子機器に制限はないがその一例について説明する。
上記光電変換装置は、各種電子機器に組み込むことができる。適用できる電子機器に制限はないがその一例について説明する。
図15は、本発明の太陽電池(光電変換装置)を適用した電卓を示す平面図、図16は、本発明の太陽電池(光電変換装置)を適用した携帯電話機(PHSも含む)を示す斜視図である。
図15に示す電卓100は、本体部101と、本体部101の上面(前面)に設けられた表示部102、複数の操作ボタン103および光電変換素子設置部104とを備えている。
図15に示す構成では、光電変換素子設置部104には、光電変換素子1が5つ直列に接続されて配置されている。この光電変換素子1として上記光電変換装置を組み込むことができる。
図16に示す携帯電話機200は、本体部201と、本体部201の前面に設けられた表示部202、複数の操作ボタン203、受話口204、送話口205および光電変換素子設置部206とを備えている。
図16に示す構成では、光電変換素子設置部206が、表示部202の周囲を囲むようにして設けられ、光電変換素子1が複数、直列に接続されて配置されている。この光電変換素子1として上記光電変換装置を組み込むことができる。
なお、本発明の電子機器としては、図15に示す電卓、図16に示す携帯電話機の他、例えば、光センサー、光スイッチ、電子手帳、電子辞書、腕時計、クロック等に適用することもできる。
図17は、電子機器の一例である腕時計を示す斜視図である。この腕時計1100は、表示部1101を備え、例えば、この表示部1101の外周に、上記光電変換装置を組み込むことができる。
また、上記光電変換装置を、家庭用又は業務用の太陽光発電システムに用いてもよい。
なお、上記実施の形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではない。
1A…光電変換部、1AA、1AB…光電変換部、1B…波長変換部、3…分光器、5…ミラー、100…電卓、101…本体部、102…表示部、103…操作ボタン、104…光電変換素子設置部、200…携帯電話機、201…本体部、202…表示部、203…操作ボタン、204…受話口、205…送話口、206…光電変換素子設置部、1100…腕時計、1101…表示部、d…量子ドット、Eg…量子ドットのバンドギャップ、Egs…マトリクス層のバンドギャップ、e…電子、E1〜E6…エネルギー準位、h…ホール、HE…高エネルギー、LE…低エネルギー、M…マトリクス層、ME…光電変換エネルギー、MEmin…光電変換部において光電変換に必要な最低のエネルギー、Ta、Tb…起電力取り出し端子
Claims (10)
- 光電変換部と、
前記光電変換部の光入射面の上方に配置され、複数のナノ結晶粒を含有する層を有する波長変換部と、
を有することを特徴とする光電変換装置。 - 前記複数のナノ結晶粒を含有する層は、
第1層上に配置された第1の複数のナノ結晶粒と、
前記第1層上に前記第1の複数のナノ結晶粒を介して配置された第2層と、
前記第2層上に配置された第2の複数のナノ結晶粒と、
を有する、請求項1記載の光電変換装置。 - 前記第1の複数のナノ結晶粒の各々のバンドギャップおよび前記第2の複数のナノ結晶粒の各々のバンドギャップは、前記複数のナノ結晶粒を含有する層のバンドギャップより小さい請求項1又は2記載の光電変換装置。
- 更に、分光器を有し、
前記分光器を介して所定のエネルギー以上のエネルギー光を前記波長変換部に入射させ、
前記分光器を介して前記所定のエネルギー未満のエネルギー光を前記光電変換部に入射させる、
請求項1乃至3のいずれか一項記載の光電変換装置。 - 前記波長変換部は、前記所定のエネルギー以上のエネルギー光を前記光電変換部で利用可能な光に変換し、
前記利用可能な光が前記光電変換部に入射される、
請求項4に記載の光電変換装置。 - 第1光電変換部と、
第2光電変換部と、
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部の間に配置され、複数のナノ結晶粒を含有する層を有する波長変換部と、
を有することを特徴とする、光電変換装置。 - 前記複数のナノ結晶粒を含有する層は、
第1層上に配置された第1の複数のナノ結晶粒と、
前記第1層上に前記第1の複数のナノ結晶粒を介して配置された第2層と、
前記第2層上に配置された第2の複数のナノ結晶粒と、
を有する、請求項6記載の光電変換装置。 - 前記第1の複数のナノ結晶粒の各々のバンドギャップおよび前記第2の複数のナノ結晶粒の各々のバンドギャップは、前記複数のナノ結晶粒を含有する層のバンドギャップより小さい請求項6又は7記載の光電変換装置。
- 前記第1光電変換部を通過した光が、前記波長変換部により前記第2光電変換部で利用可能な光に変換され、
前記利用可能な光が前記第2光電変換部に入射される、
請求項6乃至8のいずれか一項記載の光電変換装置。 - 請求項1乃至9のいずれか一項記載の光電変換装置を有する電子機器。
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