JP2010113944A - 質量分析装置及びイオン輸送光学系の組立方法 - Google Patents

質量分析装置及びイオン輸送光学系の組立方法 Download PDF

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Abstract

【課題】組立や調整の容易性を維持しつつ、イオン透過率を改善する。
【解決手段】イオン光軸Cに向く縁端を円弧状とした電極素板21a〜21dとスペーサ26とを交互に積層した構造体を1本の仮想ロッド電極とし、4本の仮想ロッド電極をねじ27とナット28とで絶縁体であるベースプレート25に固定することでユニット化する。電極素板21a〜24dで囲まれる空間から径方向に外側を見たときの隙間が広いため、イオンとともに気化溶媒などの不所望のガスが導入されたときにも、そうしたガスは上記隙間を通って速やかにイオン収束空間から除去される。したがって、イオンがそうしたガスに接触しにくくなり、イオン透過率が向上する。
【選択図】図2

Description

本発明は質量分析装置に関し、さらに詳しくは、質量分析装置においてイオンを収束させつつ後段に輸送するためのイオン輸送光学系及びその組立方法に関する。
質量分析装置では、前段から送られて来るイオンを収束し、場合によっては加速して後段の例えば四重極質量フィルタ等の質量分析器に送り込むために、イオンレンズやイオンガイドと呼ばれるイオン輸送光学系が用いられる。こうしたイオン輸送光学系の1つとして、従来より、四重極、八重極などの多重極型のものが利用されている。図9(a)は一般的な四重極型のイオンガイドの概略斜視図である。
このイオンガイド70は、円柱(又は円筒)形状の4本のロッド電極71、72、73、74がイオン光軸Cを取り囲むように互いに平行に配置された構造を有している。一般的には、イオン光軸Cを挟んで対向する2本のロッド電極71と73には同一の高周波電圧が印加され、これと周方向に隣接する2本のロッド電極72、74には先の高周波電圧と振幅が同一で位相が反転された高周波電圧が印加される。このように印加される高周波電圧により4本のロッド電極71、72、73、74で囲まれる空間には四重極高周波電場が形成され、この高周波電場中でイオンを振動させつつイオン光軸C付近に収束させながら後段に輸送することができる。
本願出願人は、イオンの収束性が良好であるという上記多重極型イオンガイドの利点を生かしつつ、イオンを加速することもできるイオン輸送光学系として、図9(b)の斜視図に示すような仮想ロッド電極を用いるイオン輸送光学系を提案している(例えば特許文献1など参照)。この構成では、図9(a)に示した各ロッド電極71、72、73、74をそれぞれ、イオン光軸Cの方向に沿って並べられた複数(この図の例では4枚)の板状の電極素板79で構成した仮想ロッド電極75、76、77、78で置き換えている。
この仮想ロッド多重極型のイオン輸送光学系では、1本の仮想ロッド電極75、76、77、78を構成する4枚の電極素板79にそれぞれ異なる電圧を印加することが可能である。そこで例えば、イオンが進行する方向に段階的に増加する直流電圧を高周波電圧に重畳するように印加することにより、仮想ロッド電極75、76、77、78で囲まれる空間を通過するイオンを加速したり逆に減速させたりすることができる。さらにまた、図9(c)に示すように、仮想ロッド電極を構成する電極素板79をイオンの進行方向に段階的にイオン光軸Cに近づくように配置することにより、イオン流を収束させつつ徐々に絞ることもできる。
上述のように仮想ロッド電極を用いるイオン輸送光学系は優れた特性を持つものの、もともと1本のロッド電極で構成され得る電極が複数の電極素板に分割されていることから必然的に部品点数が増加し、組立作業や調整作業が煩雑になることが避けられない。こうした問題に対し、本願出願人は、特許文献2において、仮想ロッド電極を用いた多重極型イオンガイドの具体的な構成を提案している。
図8(a)はこの文献に開示された多重極型イオンガイドの正面図、(b)は側面図である。この多重極型イオンガイドでは、1枚の電極素板81a〜84dは、組立完成時にイオン光軸Cに向く側の一縁端が円弧状とされたやや長い形状とされ、イオン光軸Cに直交する面内でイオン光軸Cを取り囲むように配置される4枚の電極素板(例えば81a〜84a)を1組として、4本の仮想ロッド電極を構成するべくイオン光軸C方向に並ぶ4組の電極素板、即ち、全部で16枚の電極素板81a〜84dが絶縁体である合成樹脂製のホルダ85にねじで取り付けられる。また、イオン光軸Cに直交する面内でイオン光軸Cを挟んで対向配置された、同一の電圧が印加される電極素板同士(例えば81aと83a、81bと81d)は導電線で接続される。このようにして、電極素板を含む主要な構成要素はユニット化されるため、取扱いが容易であって組立や調整の手間も軽減することができるという利点がある。
特開2000−149865号公報 特開2001−351563号公報
しかしながら、例えば液体クロマトグラフから供給される試料液中の試料成分をイオン化する大気圧イオン化部の次段の中間真空室内などに上記従来構造のイオンガイドを配設した場合、イオン透過率を高めるのが困難であるという問題がある。これは次のような理由による。即ち、通常、大気圧イオン化部から次段の中間真空室へは、サンプリングコーンや加熱パイプなどのイオン導入部を通して、目的イオンのほかに多量の大気や気化溶媒などが流入する。上記構造のイオンガイドはイオン光軸の周りを絶縁性のホルダが取り囲んだ構造であるため、電極素板で囲まれる空間に導入された大気や気化溶媒はその空間から排出されにくい。つまり、中間真空室自体は真空ポンプにより真空排気されていても、電極素板で囲まれる、イオン光軸を中心とする空間内のガス圧はホルダ外側の中間真空室内のガス圧よりも高くなる。その結果、イオンは残留分子に接触する機会が多くなり、円滑な通過が阻まれることになる。
実際、本願発明者らの検討によっても、電極素板で囲まれる空間からその外周方向を見回した際の隙間の割合(開口率)が高いほど、イオンの透過率が高くなることが確認できている。そこで、図8(c)、(d)に示すように、上記構造でホルダ85に溝86を形成することで、ホルダ85の一部に、その内周側と外周側とを連通する開口部を設ける試みが行われている。しかしながら、こうした対策によって開口率を上げるには限界があり、イオン透過率を大幅に改善することは難しい。
本発明はこうした点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、製造時の組立の容易性などを損なうことなくイオン透過率を改善し、検出感度の向上を図ることができる仮想ロッド多重極型イオン輸送光学系を備えた質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、イオンを収束させつつ後段へ輸送するイオン輸送光学系として、イオン光軸方向に互いに分離されたm(mは2以上の整数)枚の電極素板からなる仮想ロッド電極を、イオン光軸を取り囲むように2n(nは2以上の整数)本配置した仮想ロッド多重極型イオン輸送光学系を具備する質量分析装置であって、
各仮想ロッド電極を構成する各電極素板の少なくともイオン光軸に向いた縁端を所定の形状に形成し、
各電極素板にあってイオン光軸から離れた部位において導電体、絶縁体又はそれらの複合体からなるスペーサを介してイオン光軸方向に隣接する電極素板同士をそれぞれ連結させることで各仮想ロッド電極を構成し、
さらに2n本の仮想ロッド電極を絶縁体からなるベースに固定することで前記仮想ロッド多重極型イオン輸送光学系をユニット化したことを特徴としている。
イオンはイオン光軸の近傍を進むため、その挙動を制御するにはイオン光軸の近傍の電場を適切に設定すればよい。このため、電極素板はイオン光軸に向いた縁端が所定の形状に形成されていさえすれば十分である。この「所定の形状」とは、理論的に若しくは実験的に定まる形状、又は、それに近似した加工容易な形状である。一般的には、その形状は円弧状又は双曲線状である。但し、例えば電極素板縁部の形状が、先尖形状など直線を組み合わせたり角があったりする形状であっても、その縁部とイオン光軸との距離が大きければイオン光軸近傍で電場が十分に適切に設定されることもある。
1本の仮想ロッド電極を構成するm枚の電極素板に同一の電圧を印加する場合には、それらm枚の電極素板を互いに連結するスペーサを導電体からなるものとすればよい。これにより、その中の或る1枚の電極素板又はそれに電気的に接続された部材に電圧を印加しさえすれば、1本の仮想ロッド電極を構成するm枚の電極素板は同電位になる。一方、イオンを加速又は減速するために、1本の仮想ロッド電極を構成するm枚の電極素板の全て又は一部の電圧を異なるものとしたい場合には、それらm枚の電極素板を互いに連結するスペーサを絶縁体からなるものとすればよい。
また、2n本の仮想ロッド電極はベースに固定されるが、2n本の仮想ロッド電極の一方の端部でのみベースに固定される片持ち支持構造としてもよいし、2n本の仮想ロッド電極の両方の端部でそれぞれ別のベースに固定される両持ち支持構造のいずれでもよい。前者であれば部品点数が少なくて済み、コストを下げることができる。一方、後者であれば、スペーサと電極素板とで構成された仮想ロッド電極の変形などが生じにくく、各電極素板の位置の精度の確保が容易である。
本発明に係る質量分析装置によれば、1本の仮想ロッド電極は、電極素板とスペーサとを交互に重ねることで構成され、その一方又は両方の端部でベースに固定されて一体化される。したがって、電極素板を適切な位置に保持するために電極素板の周りを被覆するように取り囲むホルダは不要になり、周方向に隣接する電極素板の間は、イオン光軸方向に広く空いた状態となる。即ち、電極素板で囲まれる空間からその外周方向を見回した際の開口率は非常に高くなり、例えばイオンとともに電極素板で囲まれる空間に導入された大気や気化溶媒などのガスは速やかに電極素板で囲まれる空間から排除される。その結果、目的イオンが不所望のガスに接触する機会が減少し、仮想ロッド電極により形成される電場の作用により、良好に収束されつつ効率良く通過して後段へと送出される。そして、イオン透過率が高まることで、検出感度の向上が期待できる。
また本発明に係る質量分析装置によれば、イオン光軸方向に隣接する電極素板の間隔を、安価で入手容易なスペーサの厚さにより自在に設定することができる。したがって、イオン輸送光学系の設計や製造の際に掛かる手間や時間、コストなどを節約することができる。また、イオンを輸送するために適切な電場を形成するために、電極素板はイオン光軸に向いた縁端を精度よく所定の形状にしさえすればよく、スペーサはその厚さを精度よく所定の厚さにしさえすればよい。こうした部材は比較的低コストで容易に入手することができ、イオン輸送光学系のコストの引き下げに寄与する。
なお、上記開口率をできるだけ高めるには、スペーサの大きさ(特にイオン光軸周りの周方向の大きさ)が小さいほうが望ましい。1つの目安として、電極素板のイオン光軸周りの周方向の幅よりもスペーサを小さくしておくとよい。
本発明に係る質量分析装置において、スペーサを介した電極素板の連結の方法は特に問わず、例えば接着剤などを用いて固着してもよいが、組立性や位置調整の容易性などを考慮すると、ねじやナットなどを用いた締結が好ましい。
そこで、本発明の一実施態様に係る質量分析装置において、各電極素板はイオン光軸から離れた部位に開口部を有し、前記スペーサは前記開口部と略同一大きさの開口部を有し、各電極素板の開口部及び各スペーサの開口部に挿通される棒状部を含む締結部材により2n本の仮想ロッド電極をベースに固定する構成とするとよい。
さらにまた、前記締結部材は、前記棒状部を軸体とするねじと、該ねじの軸体に形成されたねじ溝に螺合するナットとを含む構成とするとよい。
こうした構成によれば、棒状部又はこれを軸体とするねじに電極素板やスペーサを入れることでそれらの位置の粗調整が行われるので、組立や位置の微調整が容易になる。また、分解も容易になるので、汚れた電極素板の洗浄作業などが容易になるほか、こうした部材をリサイクル、リユースするのも容易になる。
なお、上述したように1本の仮想ロッド電極を構成するm枚の電極素板を同電位にしたい場合には、棒状部(又はねじ)を導電体からなるものとすればよい。他方、1本の仮想ロッド電極を構成するm枚の電極素板の全て又は一部を異なる電位としたい場合には、棒状部(又はねじ)を絶縁体からなるものとするか、或いは、棒状部自体は導電体とし、異なる電位としたい電極素板に接触する箇所を絶縁体で被覆する構成とするとよい。
また、上記本発明に係る質量分析装置が具備する仮想ロッド多重極型イオン輸送光学系の組立方法は、
ユニット化された状態の2n本の仮想ロッド電極が挿入可能であって、且つ、その挿入状態で、イオン光軸の周りに配設される2n枚の電極素板の周方向の位置をそれぞれ規制するとともにそれら電極素板のイオン光軸を中心とする内接円半径をそれぞれ規制する、イオン光軸方向に延伸する所定形状の孔、が形成されたブロックである組立治具を用い、該組立治具の孔に電極素板とスペーサとを交互に入れてゆくことで各仮想ロッド電極を形成することを特徴としている。
上記組立治具を用いれば、組立作業者は組立治具の孔に電極素板とスペーサとを交互に入れてゆき、例えば最終的にそれらからなる仮想ロッド電極をベースに固定することで、容易に仮想ロッド多重極型イオン輸送光学系を組み上げることができる。こうした作業には特殊な知識、技能を必要とせず、作業に未熟練であっても組立・調整ミスをなくすことができる。したがって、製造コストの引き下げに有利である。
本発明に係る質量分析装置の一実施例である大気圧イオン化質量分析装置を、図面を参照して説明する。図1は本実施例の大気圧イオン化質量分析装置の全体構成図である。
この質量分析装置の前段には液体クロマトグラフ(LC)が接続され、LCのカラムからの溶出液が試料液として所定流量でもって供給される。この質量分析装置は、イオン化室1と、質量分析室4と、その両者の間にそれぞれ隔壁で隔てられた第1中間真空室2、第2中間真空室3と、を備える。質量分析室4には四重極質量フィルタ11及びイオン検出器12が配設され、第1中間真空室2及び第2中間真空室3にはそれぞれ第1イオンガイド7と第2イオンガイド9とが設けられている。イオン化室1と第1中間真空室2との間は細径の脱溶媒管6を介して、第1中間真空室2と第2中間真空室3との間は極小径の通過孔を有するスキマー8を介してのみ連通している。
イオン化室1内は、ESIノズル5から連続的に供給される試料液の気化分子によりほぼ大気圧になっている。一方、質量分析室4内は、質量分析のためにターボ分子ポンプ15により約10−3〜10−4Pa程度の高真空状態まで真空排気される。このように真空度の差の大きいイオン化室1と質量分析室4との間に、イオンを通過させるための開口部を設けなければならないことから、それらの間に2つの中間真空室2、3を設け、段階的に真空度を上げるようにしている。具体的には、第1中間真空室2内はロータリポンプ13により約10Pa程度まで、第2中間真空室3内はターボ分子ポンプ14により約10−1〜10−2Pa程度まで真空排気される。
試料液はESIノズル5の先端から電荷を付与されつつイオン化室1内に噴霧され、その帯電液滴が周囲の大気に衝突して微細化される過程で試料分子はイオン化される。発生したイオンは微小液滴とともに、イオン化室1と第1中間真空室2との圧力差により脱溶媒管6中に引き込まれる。第1イオンガイド7は、その電場により脱溶媒管6を介してのイオンの引き込みを助けるとともに、イオンをスキマー8の通過孔近傍に収束させる。スキマー8の通過孔を通って第2中間真空室3に導入されたイオンは、第2イオンガイド9により収束及び加速された後、小孔10を通って質量分析室4へと送られる。質量分析室4では、特定の質量(厳密には質量電荷比m/z)を有するイオンのみが四重極質量フィルタ11の中央の長手方向の空間を通り抜け、イオン検出器12に到達し検出される。
脱溶媒管6を通して第1中間真空室2内には、イオンとともに大気や気化溶媒が盛んに流れ込む。本実施例の大気圧イオン化質量分析装置では、こうした大気や気化溶媒などの不所望のガスをイオン経路から適切に除去しつつイオンを効率良く後段へと輸送するために、第1イオンガイド7として特徴的な構成の仮想ロッド四重極型イオンガイド20を用いている。
次に、この仮想ロッド四重極型イオンガイド20の詳細な構造を図2〜図6により説明する。図2はこの仮想ロッド四重極型イオンガイド20の外観斜視図、図3はイオン光軸Cを含む面での仮想ロッド四重極型イオンガイド20の一部断面図、図4は図3中のA−A’線断面図である。この仮想ロッド四重極型イオンガイド20は、イオン光軸C方向に互いに分離された4枚の電極素板(例えば21a〜21d)から1本の仮想ロッド電極を構成し、これをイオン光軸Cの周りに、90°の回転角度離して4本配設したものである。即ち、本発明において、mを4、nを2とした場合の一例である。もちろん、m、nはこれらの値に限定されるものでないことは当然である。
この仮想ロッド四重極型イオンガイド20の構成部材は、同一形状である16枚の電極素板21a〜24dのほか、12個の円筒形状のスペーサ26、4本のねじ27、各ねじ27のねじ溝に螺合する4個のナット28、1個の略円盤状のベースプレート25、である。1枚の電極素板21a〜24dは、組立時にイオン光軸Cに向く縁端が円弧状である、略短冊形状の金属製の板状部材である。全ての電極素板21a〜24dには、組立時にイオン光軸Cから離れた部位(つまり円弧状に形成された端部とは反対側の端部に近い部位)に、後述するねじ27の軸体の外径より若干大きな径の挿通孔が穿設されている。
スペーサ26の外径は電極素板21a〜24dの幅よりも少し小さく、挿通孔の内径はねじ27の軸体の外径より若干大きな径であり、厚さ(高さ)はイオン光軸C方向に隣接する電極素板の間隔に応じた適宜のサイズである。ここでは、1本の仮想ロッド電極を構成する4枚の電極素板に同一の電位を印加するものとする。そこで、スペーサ26及びねじ27は金属製とする。但し、例えば、イオン光軸C方向に勾配を有する直流電場を形成したい場合など、同一の仮想ロッド電極に属する異なる電極素板に異なる電圧を印加したい場合には、スペーサ26をセラミック、合成樹脂などの絶縁体からなるものとし、ねじ27も少なくとも電極素板と接触する部位が絶縁体で被覆された構造のものを使用すればよい。このように、スペーサ26やねじ27の構成材料は目的に応じて適宜に変更すればよい。一方、ベースプレート25は例えばテフロン(登録商標)樹脂などの絶縁体からなり、所定の箇所にねじ27の軸体が挿通されるねじ孔が穿設されている。
図5、図6は上記仮想ロッド四重極型イオンガイド20の組立時に用いられる組立治具を示す図であり、図5(a)、(b)は組み合わせて使用される第1及び第2治具の平面図、図6は第1及び第2治具を組み合わせた状態の縦断面図である。
組立治具は、外形が円柱形状である第1治具40と、略円盤形状であってその円盤の中央に円柱形状の棒体52が立設された第2治具50と、からなる。第1治具40は、円柱形状の中央孔41と、中央孔41から放射状に設けられた、イオン光軸Cを取り囲んで配設される4枚の電極素板の幅方向の位置を規制する角孔42、43、44、45とを、有する金属等のブロックである。一方、第2治具50は、第1治具40の外周に嵌合するフランジ51を有し、中央の棒体52の外径は電極素板の内接円の直径に設定されている。つまり、電極素板の内接円半径が相違する仮想ロッド四重極型イオンガイドを作製したい場合には、棒体52の径が相違する第2治具50を用いればよい。
上記組立治具を用いて仮想ロッド四重極型イオンガイド20は次のような手順で組み立てられる。組立作業時には、第1治具40と第2治具50とは図6に示すように組み合わせて使用される。組み合わせた状態では、第2治具50の棒体52の周囲に、それぞれ電極素板21とスペーサ26とを収容するための、イオン光軸C方向に延伸する4つの空隙が形成される。第1治具40と第2治具50との間に、4本のねじ27をねじ孔に挿入したベースプレート25を挟持し、各ねじ27の軸体がそれぞれに形成されている挿通孔に挿通するように電極素板21とスペーサ26とを交互に入れる。電極素板21の幅方向(周方向)の位置は第1治具40に設けられている角孔42〜45で規制され、電極素板21の径方向の位置は第2治具50に設けられている棒体52に当接することで規制される。これにより、各電極素板21はイオン光軸Cの周りの適切な位置に収まる。
所定の枚数(この例では4枚)の電極素板21と所定個数(この例では3個)のスペーサ26とを交互に各ねじ27の軸体に挿入したならば、上方に突出しているねじ27の軸体末端にナット28を螺入して強く締め付ける。電極素板21の周方向の位置は規制されているため、ナット28を締め付けることで交互に積み重ねた電極素板21とスペーサ26とをベースプレート25に対し固定する際にも、電極素板21は周方向に移動しない。それによって、図2に示したような、各電極素板21a〜24dの円弧状縁端が正確にイオン光軸Cに向き、各電極素板21a〜24dの内接円半径が適切に、つまり設計通りに設定された状態の仮想ロッド四重極型イオンガイド20を組み上げることができる。
なお、イオン光軸Cを挟んで対向する2本の仮想ロッド電極同士を電気的に接続するためには、例えば導電線や細い導電板を電極素板21にハンダ付けすればよい。
上記のような組立治具を用いさえすれば、組立作業は容易であって、特段の知識、技能、経験などを殆ど必要としない。したがって、未熟練の作業者でも高い寸法精度で、設計通りの仮想ロッド四重極型イオンガイドを効率よく組み立てることができる。
仮想ロッド四重極型イオンガイド20は、各仮想ロッド電極が電極素板21とスペーサ26との積み重ねにより構成され、その4本の仮想ロッド電極は該電極の一方の端部でベースプレート25により片持ち支持される。しかもスペーサ26の外径は電極素板21の幅よりも小さくなっている。そのため、電極素板21a〜24dで囲まれる空間から径方向に外周側を見たときの開口率は非常に大きく、第1中間真空室2内で脱溶媒管6を通してイオンとともに導入された気化溶媒や大気などの不所望のガスは、電極素板21a〜24dで囲まれる空間から速やかに除去される。それによって、こうしたガスがイオンの透過の妨げになりにくく、イオン透過率を向上させることができる。
図7は上記仮想ロッド四重極型イオンガイドの効果を検証するための実験結果を示す図である。この実験は、図1に示したような構成の大気圧イオン化質量分析装置を用い、図2に示した仮想ロッド四重極型イオンガイドと図8(c)、(d)に示した溝有りホルダを用いた従来の仮想ロッド四重極型イオンガイドとのイオン強度の比較を行ったものである。サンプルは標準試料のPEG(ポリエチレングリコール)であり、測定対象イオンはm/z=168.1の正イオンである。図7で明らかなように、本実施例で採用した仮想ロッド四重極型イオンガイド は従来構造に比べて約2倍強のイオン強度を達成できていることが分かる。
なお、上記実施例の大気圧イオン化質量分析装置で使用した仮想ロッド四重極型イオンガイドは、仮想ロッド電極の一端側にのみ設けたベースプレートにより仮想ロッド電極を保持する片持ち支持構造であるが、仮想ロッド電極の両端にそれぞれベースプレートを設けた両持ち支持構造としてもよいことは当然である。両持ち支持構造ではベースプレートが2枚必要でコストが掛かるものの、何らかの外力が加わったような場合でも仮想ロッド電極の曲がりや歪みが生じにくく、電場の安定性を保つことが容易である。
また、上記実施例の質量分析装置では、本発明の特徴である仮想ロッド多重極型イオンガイドを略大気圧であるイオン化室1の次段の中間真空室2内に配設していたが、この仮想ロッド多重極型イオンガイドは、それ以外の、イオンを収束させつつ後段に輸送する部位で利用することもできる。例えば、三連四重極型質量分析装置において、コリジョンセル内に配設される多重極イオンガイドとして上記仮想ロッド多重極型イオンガイドを用いることもできる。
また、それ以外にも、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても、本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
本発明の一実施例である大気圧イオン化質量分析装置の全体構成図。 本実施例の大気圧イオン化質量分析装置で用いられる仮想ロッド四重極型イオンガイドの外観斜視図。 イオン光軸を含む面での仮想ロッド四重極型イオンガイドの一部断面図。 図3中のA−A’線断面図。 図2の仮想ロッド四重極型イオンガイドの組立時に用いられる組立治具の平面図。 図5の組立治具を使用する状態での縦断面図。 図2の仮想ロッド四重極型イオンガイドの効果を検証するための実験結果を示す図。 従来の仮想ロッド多重極型イオンガイドの正面図(a)、側面図(b)と、これの改良型の正面図(c)、側面図(d)。 従来の四重極型のイオンガイドの概略斜視図。
符号の説明
1…イオン化室
2…第1中間真空室
3…第2中間真空室
4…質量分析室
5…ESIノズル
6…脱溶媒管
7…第1イオンガイド
8…スキマー
9…第2イオンガイド
10…小孔
11…四重極質量フィルタ
12…イオン検出器
13…ロータリポンプ
14、15…ターボ分子ポンプ
20…仮想ロッド四重極型イオンガイド
21、21a〜24d…電極素板
25…ベースプレート
27…ねじ
26…スペーサ
28…ナット
40…第1治具
41…中央孔
42…角孔
50…第2治具
51…フランジ
52…棒体
C…イオン光軸

Claims (4)

  1. イオンを収束させつつ後段へ輸送するイオン輸送光学系として、イオン光軸方向に互いに分離されたm(mは2以上の整数)枚の電極素板からなる仮想ロッド電極を、イオン光軸を取り囲むように2n(nは2以上の整数)本配置した仮想ロッド多重極型イオン輸送光学系を具備する質量分析装置であって、
    各仮想ロッド電極を構成する各電極素板の少なくともイオン光軸に向いた縁端を所定の形状に形成し、
    各電極素板にあってイオン光軸から離れた部位において導電体、絶縁体又はそれらの複合体からなるスペーサを介してイオン光軸方向に隣接する電極素板同士をそれぞれ連結させることで各仮想ロッド電極を構成し、
    さらに2n本の仮想ロッド電極を絶縁体からなるベースに固定することで前記仮想ロッド多重極型イオン輸送光学系をユニット化したことを特徴とする質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の質量分析装置であって、
    各電極素板はイオン光軸から離れた部位に開口部を有し、前記スペーサは前記開口部と略同一大きさの開口部を有し、各電極素板の開口部及び各スペーサの開口部に挿通される棒状部を含む締結部材により2n本の仮想ロッド電極をベースに固定することを特徴とする質量分析装置。
  3. 請求項2に記載の質量分析装置であって、
    前記締結部材は、前記棒状部を軸体とするねじと、該ねじの軸体に形成されたねじ溝に螺合するナットとを含むことを特徴とする質量分析装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の質量分析装置が具備する仮想ロッド多重極型イオン輸送光学系の組立方法であって、
    ユニット化された状態の2n本の仮想ロッド電極が挿入可能であって、且つ、その挿入状態で、イオン光軸の周りに配設される2n枚の電極素板の周方向の位置をそれぞれ規制するとともにそれら電極素板のイオン光軸を中心とする内接円半径をそれぞれ規制する、イオン光軸方向に延伸する所定形状の孔、が形成されたブロックである組立治具を用い、
    該組立治具の孔に電極素板とスペーサとを交互に入れてゆくことで各仮想ロッド電極を形成することを特徴とするイオン輸送光学系の組立方法。
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