JP2019046815A - 多重極イオンガイド - Google Patents

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Abstract

【課題】気流とイオンを分離することができ、かつイオン透過効率が高いイオンガイドを提供する。【解決手段】本開示の多重極イオンガイドは、多重極電極を有する多重極イオンガイドであって、前記多重極電極は、前記多重極イオンガイドの中心軸に垂直な平面において、前記多重極電極で囲まれた領域に単一の極小点を持つ擬ポテンシャルと、静電ポテンシャルとを形成し、前記擬ポテンシャルと前記静電ポテンシャルの合成ポテンシャルが前記擬ポテンシャルの極小点と異なる位置に極小点を持つことを特徴とする。【選択図】図4

Description

本発明は、イオンガイド及びそれを用いた質量分析装置に関する。
イオンガイドは質量分析装置内でイオンを輸送するのに広く用いられている。特許文献1には、多重極(四重極、六重極、八重極など)の平行なロッド電極で構成される多重極イオンガイドが開示されている。特許文献2には、イオンが2つのイオンガイド間の擬ポテンシャル障壁をDCポテンシャルにより乗り越えることでイオンガイド間移動するイオンガイドが開示されている。特許文献3には、2つの独立した多重極イオンガイドを組み合わせて、1つの多重極イオンガイドを形成するイオンガイドが開示されている。
US 7,256,395 B2 US 8,581,182 B2 US 2010/0176295 A1
特許文献1に記載のイオンガイドでは、気流とイオンガイドの擬ポテンシャルの中心がほぼ同軸となるように入射されるため、イオンと気流を分離できないという問題があった。
特許文献2のイオンガイドでは2つのイオンガイドの軸の間に擬ポテンシャル障壁が存在する。このため、イオンを一方のイオンガイドから他方のイオンガイドに移動するには、擬ポテンシャル障壁よりも十分高いDC電界を印加する必要がある。しかし、高いDC電界を印加すると擬ポテンシャル障壁を乗り越えた後のイオンの運動エネルギーが高くなり、イオンガイド外にイオンが排出される。このため、イオンガイドの透過効率が低いという問題があった。また、特許文献2の方式は高次の多重極イオンガイドやリングスタック型のイオンガイドには適用可能であるが、四重極などの次数の低い多重極に適用するのは困難である。そのため四重極イオンガイドなど次数の低い多重極イオンガイドと比較するとイオンを収束する性能が低いという問題もあった。
特許文献3には気流が存在する条件下での動作に関する記述はない。また、特許文献3には、イオンガイドを構成するロッド電極の一部のロッドに他のロッド電極と異なるDC電圧を印加する記述はなく、イオンは擬ポテンシャルの極小点付近に分布するという問題があった。
本発明は、気流とイオンを分離することができ、かつイオン透過効率が高いイオンガイドを実現するものである。
本発明によるイオンガイドは、第1の中心軸を有しイオンと気流が導入される第1のロッド電極セットと、第1の中心軸から離間した第2の中心軸を有しイオンが排出される第2のロッド電極セットと、第1のロッド電極セットと第2のロッド電極セットに電圧を印加する電源とを有し、第1のロッド電極セットと第2のロッド電極セットは長手方向に重なり合う領域を有し、当該重なり合う領域において組み合わされて単一の多重極イオンガイドを形成し、第1のロッド電極セットと第2のロッド電極セットは電源からそれぞれ異なるオフセットDC電圧が印加され、オフセットDC電圧は、第1のロッド電極セットによってガイドされてきたイオンを重なり合う領域において第2のロッド電極セットに移動させるDCポテンシャルを形成するものである。
本発明の一態様によると、第1のロッド電極セット及び第2のロッド電極セットは四重極であり、前記単一の多重極イオンガイドは六重極である。
また、本発明の別の態様によると、第1のロッド電極セット及び第2のロッド電極セットは四重極であり、前記単一の多重極イオンガイドは八重極である。
本発明によれば、気流とイオンを分離することができ、かつイオン透過効率が高いイオンガイドを実現できる。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明のイオンガイドを用いた質量分析装置の構成例を示す断面模式図。 細孔を通して導入される気流の模式図。 細管を通して導入される気流の模式図。 イオンガイド全体を示す斜視模式図。 イオンガイドをY軸方向から見た概略図。 イオンガイドの径方向(YZ平面)断面模式図。 ロッド電極の断面模式図。 イオンガイド電源の一例を示す模式図。 イオンガイドによって生成されるポテンシャルを示す図。 イオンガイドによって生成されるポテンシャルを示す図。 イオンガイドによって生成されるポテンシャルを示す図。 合成ポテンシャルを示す図。 気流の影響を考慮したイオン軌道シミュレーションの結果を示す図。 気流の影響を考慮したイオン軌道シミュレーションの結果を示す図。 イオンの質量スペクトル及びオフセットDC電圧とイオン信号強度の関係を示す図。 イオンガイド全体を示す斜視模式図。 イオンガイドをY軸方向から見た概略図。 セグメントDC電圧の一例を示す図。 セグメントDC電圧とオフセットDC電圧の和を示す図。 イオンガイド全体を示す斜視模式図。 イオンガイドをY軸方向から見た概略図。 イオンガイドの径方向(YZ平面)断面模式図。 イオンガイド全体を示す斜視模式図。 イオンガイドをY軸方向から見た概略図。 イオンガイドの径方向(YZ平面)断面模式図。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[実施例1]
図1は、本発明のイオンガイドを用いた質量分析装置の構成例を示す断面模式図である。
エレクトロスプレーイオン源、大気圧化学イオン源、大気圧光イオン源、大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン源などのイオン源14で生成されたイオンは、気流とともに細孔18を通過して質量分析装置の真空室に導入される。細孔18から直接差動排気部12に導入してもよいし、図1のように中間真空室17を経て細孔10から差動排気部12に導入してもよい。差動排気部12にはイオンを輸送するためのイオンガイド4が設置されていて、真空ポンプ15で排気される。イオンガイド4にはイオンガイド電源300から電圧が印加されている。後述するようにイオンガイド4で気流101と分離されたイオン100は、細孔11を通過して質量分析部13へと導入される。質量分析部13は真空ポンプ16で排気されている。本実施例のイオンガイドが動作する圧力は10000Pa〜10-3Pa程度である。特に10000Pa〜10Paでは中性気体分子との衝突でイオンの運動エネルギーが冷却されるためにイオンを効率よく収束することができる。
図2は、穴径dに対して厚さが十分小さい細孔の場合に、細孔203を通して圧力p0のチャンバー208から圧力p1のチャンバー209に導入される気流の模式図である。図中に矢印で示したように気流の入射方向202は細孔203が設けられた平面に対して垂直方向である。細孔203の前後の圧力差に応じてバレルショック200やマッハディスク201が形成され、マッハディスク以降はマッハディスクとほぼ同じ直径で気流が直進する。マッハディスク201の直径Djetは以下の式で与えられる。
[式1]
図3は、穴径dに対して厚さが十分大きい細管の場合に、細管204を通して圧力p0のチャンバー208から圧力p1のチャンバー209に導入される気流の模式図である。細管の場合も、細孔の場合と同様にマッハディスク201が形成され、マッハディスク以降はマッハディスクとほぼ同じ直径で気流が直進する。細管の場合、気流の方向202は細管204の中心軸方向である。
図4から図7は、本実施例のイオンガイドの構成例を示す模式図である。図4はイオンガイド全体を示す斜視模式図、図5はイオンガイドをY軸方向から見た概略図、図6は図4中に(i)、(ii)、(iii)で示した位置の径方向(YZ平面)断面模式図、図7は一部のロッド電極21a,21d、及びロッド電極22b,22cのXY平面の断面模式図である。
イオンと気流が導入される側のロッド電極の組21をロッド電極セット1、イオンが排出される側のロッド電極の組22をロッド電極セット2と定義する。本実施例では、ロッド電極セット1は、4本のロッド電極21a,21b,21c,21dによって構成され、ロッド電極セット2は4本のロッド電極22a,22b,22c,22dによって構成される。また、ロッド電極セット1のイオンと気流26が導入される側の端をイオンガイド入口24、ロッド電極セット2のイオンが排出される側の端をイオンガイド出口25とする。ロッド電極の形状は、図4に示したような円柱に近い形状でも、角柱や多角形でもよい。ロッド電極21d,22c,21a,22bは、ロッド電極21d,22cの組、及びロッド電極21a,22bの組で一つの円柱や角柱を近似するように半円柱などの形状をとる。隣接するロッド電極21dとロッド電極22c、及びロッド電極21aとロッド電極22bの間隔は、0.1mm〜2mm程度である。
ロッド電極セット1の中心軸とロッド電極セット2の中心軸は互いに平行であるが、Z軸方向に一定距離だけずれている。また、ロッド電極セット1とロッド電極セット2は長手方向の一部領域で重なり合い、当該重なり合った領域において図6に示すようにロッド電極セット1とロッド電極セット2のロッド電極同士が組み合わされて単一の多重極イオンガイドを形成している。
図6中の符号“+”、“−”は、イオンガイド電源300からロッド電極に印加されるRF電圧の位相を示す。同じ符号が付されたロッド電極には同位相、同振幅、同周波数のRF電圧が印加される。同じロッド電極セットでは対向するロッド電極が同位相、隣接するロッド電極が逆位相となるようにRF電圧が印加される。また、また異なるロッド電極セットで隣接するロッド電極21d,22c及びロッド電極21a,22bには同位相、同振幅、同周波数のRF電圧を印加する。このように電圧を印加することで電極間の間隔が狭いロッド電極21d,22c及びロッド電極21a,22b間にRF電圧の電位差が発生せず、放電を防ぐことができる。
また、ロッド電極セットにはRF電圧に加えてDCのオフセット電圧が印加される。同じロッド電極セットに含まれるロッド電極には同じオフセットDC電圧が印加される。オフセットDC電圧は測定する試料のイオンをロッド電極セット1からロッド電極セット2の方向に動かす電界が形成されるよう印加する。すなわち正イオンを測定する場合には、ロッド電極セット1にロッド電極セット2よりも高い電位になるオフセットDC電圧を印加し、負イオンを測定する場合にはロッド電極セット1にロッド電極セット2よりも低いオフセット電圧を印加する。ロッド電極セット1とロッド電極セット2のDCオフセットの差を、0.1V以上100V以下に設定すると、イオンを効率よくロッド電極セット1側からロッド電極セット2側に移動することができる。
図5に示すように、ロッド電極セット2のイオンガイド入口側の末端にインキャップ電極23を配置して、ここにイオンをイオンガイド出口25の方向に押し込むDC電圧を印加するとイオンのロスを低減することもできる。インキャップ電極23に印加される電圧は正イオンを測定する場合にはロッド電極セット2に印加されるオフセットDC電圧よりも高く、負イオンを測定する場合にはロッド電極セット2に印加されるオフセットDC電圧よりも低く設定する。
図8は、イオンガイド電源の一例を示す模式図である。イオンガイド電源300は、ロッド電極セット1のオフセット電圧を生成するDC電源301、ロッド電極セット2のオフセット電圧を生成するDC電源302、及び180度位相が異なる2相のRF電圧を生成するRF電源303からなり、各ロッド電極にそれぞれオフセット電圧とRF電圧を印加する。
図4及び図5に示すように、本実施例のイオンガイドは領域1〜3の3つの領域に分けられる。各領域でロッド電極の組21,22の径方向(YZ平面)における位置関係が異なり、結果として形成される擬ポテンシャルも異なる。
領域1ではロッド電極セット1の四本のロッド電極がほぼ正方形の頂点付近の位置に配置され、四重極イオンガイドが形成される。ロッド電極セット1の四本のロッド電極に印加されるRF電圧により径方向(YZ平面)の擬ポテンシャルが形成される。
擬ポテンシャルは、イオンの運動が追随できない速度で変動する電界が印加された場合にイオンに時間平均として作用する力を与えるポテンシャルで以下の式で与えられる。
[式2]
ここでmはイオンの質量、Zはイオンの価数、eは電気素量、ΩはRF電圧の周波数、Eは電界である。
図9はイオンガイドによって生成されるポテンシャルを示す図であり、図9(A)は、領域1の径方向(YZ平面)の擬ポテンシャルを示す図である。また図9(B)は、図9(A)中に波線で示した軸におけるポテンシャルの高さをZ方向位置に対してプロットした図である。四重極の擬ポテンシャルは、RF電圧によって形成される電界が最小となる点を極小点とした二次関数となる。イオンガイドの中心軸は径方向(YZ平面)の擬ポテンシャルの極小点50を連結した線で定義する。領域1ではロッド電極セット1とロッド電極セット2の間には擬ポテンシャル障壁が存在するため、イオンはロッド電極セット間を移動することはできない。
領域2では、ロッド電極セット1とロッド電極セット2が重なり合っている。また、図7に示すように、領域1及び領域3の位置からロッド電極21a,22bの組とロッド電極21d,22cの組の間隔が広がり、図6のように、ロッド電極21a,22bの組、ロッド電極21b、ロッド電極21c、ロッド電極21d,22cの組、ロッド電極22d、及びロッド電極22aがほぼ正六角形の頂点の位置に配置された六重極イオンガイドが形成される。ロッド電極21d,22cの組、ロッド電極21a,22bの組にはそれぞれ同位相、同振幅、同周波数のRF電圧が印加されるため、擬ポテンシャルを考える際にはロッド電極21a,22bの組、及びロッド電極21d,22cの組を、それぞれひとつの極とみなすことができる。
図10はイオンガイドによって生成されるポテンシャルを示す図であり、図10(A)は、領域2の径方向(YZ平面)の擬ポテンシャルを示す図である。また図10(B)は、図10(A)中に波線で示した軸におけるポテンシャルの高さをZ座標に対してプロットした図である。ロッド電極セット1、ロッド電極セット2が組み合わさり六重極を形成することで、ロッドに囲まれた領域の中心付近に極小点をもつ単一の擬ポテンシャルが形成される。図10(B)から明らかなように、ロッド電極セット1とロッド電極セット2の間には擬ポテンシャル障壁が存在せず、イオンが自由に行き来することができる。
一方、ロッド電極セット1とロッド電極セット2に印加したオフセットDC電圧の差により、径方向(YZ平面)にDCポテンシャルが形成される。図11はイオンガイドによって生成されるポテンシャルを示す図であり、図11(A)は、領域2の径方向(YZ平面)のDCポテンシャルを示す図である。また図11(B)は、図11(A)中に波線で示した軸におけるポテンシャルの高さをZ方向の位置に対してプロットした図である。このDCポテンシャルにより、イオンをZ方向(ロッド電極セット1からロッド電極セット2の方向)に動かす力が働く。本実施例のイオンガイドでは、ロッド電極セット1とロッド電極セット2そのものに異なるオフセットDC電圧を印加することで効果的にDCポテンシャルを形成することができる。一方、特許文献3のようにロッド電極以外の電極、例えばロッド電極に間隙挿入した電極などで形成されるDCポテンシャルは、ロッド電極によって遮蔽されるためイオンガイド内部に与える影響が小さく、また特にロッド電極の近傍においてポテンシャルが乱れるため、イオンのロスの要因にもなる。
図12は、RF電圧による擬ポテンシャルとDCポテンシャルを足し合わせた合成ポテンシャルを示す図である。図12(A)はYZ面内の合成ポテンシャルを示し、図12(B)はZ軸に沿った合成ポテンシャルを示す。合成ポテンシャルの極小点51は、擬ポテンシャルの極小点よりロッド電極セット2側に位置する。また、合成ポテンシャルの極小点51は、イオンガイド領域2へのイオンの入射位置52よりロッド電極セット2の側に位置し、領域1においてロッド電極セット1によってガイドされてきたイオンを領域2においてロッド電極セット2側に移動させるように作用する。
領域2と領域1、領域3の間の接続部分は、ほぼ90度に折れ曲がる構成でもゆるい角度で折れ曲がる構成でもよい。ゆるい角度で折れ曲がる場合、接続部分の径方向のポテンシャルは接続元のポテンシャルから接続先のポテンシャルに連続的に変化する。また、図4、図5に示すようにロッド電極セット1のロッド電極が領域3の入口まで存在していると、イオンを領域2から領域3の方向に移動させる電界が生じるため、イオンを領域2から領域3に効率よく輸送することができる。
領域3では領域2の位置から、ロッド電極21a,22bの組とロッド電極21d,22cの組の間隔が狭まり、ロッド電極セット2の四本のロッド電極がほぼ正方形の頂点付近の位置に配置される。領域1と同様に、ロッド電極セット2の4本のロッド電極により擬ポテンシャルが形成され、領域3におけるロッド電極セット2の中心軸にイオンを収束させる。四重極によって形成される擬ポテンシャルは、図9(B)のように極小点付近でのポテンシャルの傾きが高次の多重極やリングスタック型のイオンガイドより大きいため、イオンを軸上に収束させる効果が高い。イオンを収束する効果が高いほど、イオンがイオンガイドの後段の細孔11を透過する効率が高くなり、高感度な測定が可能になる。
図13及び図14は、本実施例のイオンガイド内のイオンの流れについて、気流の影響を考慮したイオン軌道シミュレーションの結果を示す図である。図13(A)にY軸方向から見たイオンの軌道30を、図13(B)にY軸方向からみた気流に含まれる中性粒子の流れ31を示す。また、図14(A)にX軸方向から見たイオンの軌道を、図14(B)にイオンガイドの出口におけるイオンと中性粒子の分布範囲を示す。
イオンは、細孔や細管を通してイオンガイド4が設置されている差動排気部12に導入される。細孔や細管の出口では、図2や図3に示すような気流が発生する。イオンはこの気流にそってイオンガイド4に導入される。気流は領域1におけるロッド電極セット1の中心軸とほぼ同軸に入射する。領域1におけるロッド電極セット1の中心軸と同軸にイオンを入射することで、イオンが図9(A)の擬ポテンシャルの中心軸50付近を流れることになり、イオンを効率よくイオンガイド4に導入することができる。また、図4のロッド電極セット1の擬ポテンシャルの内側に図2のマッハディスクが生成されるようにすると、イオンをイオンガイドの中心軸上に収束させる力により、マッハディスク付近での拡散による損失が抑えられ、イオンガイドの透過効率が向上する。イオンはロッド電極セット1で構成される四重極イオンガイドの中心軸上に収束される。
イオンは気流に沿って領域1から領域2に移動する。図12中に示したように、イオンが領域2に入射される位置52は、領域1においてロッド電極セット1で構成される四重極イオンガイドの中心軸の延長線付近である。イオンはロッド電極セット1とロッド電極セット2のオフセットDC電圧の差により、図13(A)及び図14(A)に示されるように図12に示した合成ポテンシャルの極小点51があるロッド電極セット2側に移動する。DCポテンシャルと擬ポテンシャルの[式2]を比較すると、同じ印加電圧ではDCポテンシャルのほうがイオンに与える力が大きい。このため、DCポテンシャルを用いることで、低い印加電圧でも効果的にイオンを気流から引き剥がすことができる。一方、気流に含まれる中性粒子や液滴は電界の影響を受けにくいため、図13(B)のようにX軸方向にそのまま直進する。このように、ロッド電極セット1とロッド電極セット2のオフセットDC電圧の差によって形成されるDCポテンシャルを用いることで、イオンと気流に含まれる中性粒子の分布を分離することができる。
領域2においてロッド電極セット2側に移動したイオンは、領域3のロッド電極セット2で構成される四重極イオンガイドに導入される。領域3では気流とイオンが分離されているため、気流によるイオンの拡散、気流中の密度が高いことによる収束への影響がない。そのため、イオンをイオンガイドの中心軸上に収束させやすい。イオンガイドの出口でイオンが狭い範囲に収束されていると、細孔11の透過率が高くなり高感度が得られる。
図14(B)は、イオンガイドの出口25における気流に含まれる中性粒子の分布34とイオンの分布33を示す図である。気流はロッド電極セット1の領域1における中心軸とほぼ同軸に入射するため、気流に含まれる中性粒子はロッド電極セット1の中心軸の延長線上に分布する。一方、イオンはロッド電極セット2の中心軸付近に分布する。このため、本実施例のイオンガイドを用いることで、イオンガイドの出口25で気流に含まれる中性粒子の分布34とイオンの分布33がお互いに重なりあわないように分離できる。
図15(A)は、本実施例のイオンガイドを用いて測定したレセルピン(m/z=609)の質量スペクトルを示す。また、図15(B)は、レセルピンのイオン信号強度をロッド電極セット1とロッド電極セット2のオフセットDC電圧の差に対してプロットした図である。ロッド電極セット1とロッド電極セット2のオフセットDC電圧の差が0Vの場合には、イオンはほとんど観測されなかった。これはイオンが図13(B)に示した気流の流れ31に沿って直進するためであると考えられる。ロッド電極セット1とロッド電極セット2のオフセットDC電圧の差が大きくなるとイオン信号強度は徐々に増加し、4V以上ではほぼ一定の値になった。これはオフセットDC電圧4V以上ではほぼすべてのイオンがロッド電極セット2に移動し、ロッド電極セット2の中心軸から排出されていることを示している。
本実施例のイオンガイドにより気流とイオンの分布を分離し、イオンの分布範囲の成分のみを切り出して質量分析部側に導入することで、イオンガイドより質量分析部側に導入される気体の流量が減り、真空ポンプの負荷が低下する。これにより排気速度が小さい、小型で安価な真空ポンプを使うことができるようになる。また、質量分析部のイオンのパスに気流に含まれる中性分子、気流に含まれる液滴が進入するのを防ぎ、装置のロバスト性も向上する。特に液滴はノイズの原因ともなるため、液滴の進入を防ぐことでS/Nも向上する。
[実施例2]
図16及び図17は、本発明のイオンガイドの他の実施例を示す構成図である。図16はイオンガイド全体を示す斜視模式図、図17はイオンガイドをY軸方向から見た概略図である。
本実施例のイオンガイドは、ロッド電極の組21、ロッド電極の組22がイオンガイドの長手方向(X軸方向)に複数のセグメントに分割されている点が実施例1と異なる。第1のロッド電極セット及び第2のロッド電極セットの各ロッド電極は長手方向の同一位置を分割点として複数のセグメントに分割され、各セグメントは互いに電気絶縁されている。電気絶縁の方法は、隣接するセグメント同士を離間させて間に隙間を設ける方法でもよいし、隣接するセグメントの間にセラミックなどの絶縁材料を介在させる方法でもよい。図にはロッド電極の組21,22をそれぞれ4つのセグメントに分割する例を示したが、セグメントの数は2個以上であればよい。
ロッド電極の組21及びロッド電極の組22は同一のX座標のYZ平面によって分割され、任意のX座標のYZ平面には同一のセグメントに含まれるロッド電極のみが存在する。ロッド電極の組21、ロッド電極の組22にはRF電圧、オフセットDC電圧に加えて、セグメント毎に独立にセグメントDC電圧が印加される。図18は、セグメントDC電圧の一例を示す図である。同一のセグメントに含まれるロッド電極には同一のセグメントDC電圧が印加される。正イオン測定時にイオンガイド入口からイオンガイド出口に向かってセグメントDC電圧が徐々に低くなるように設定すると、イオンをX軸方向に加速する電界が生じ、圧力が高い条件でもイオンガイド内部にイオンが停留するのを防ぐことができる。
一方、RF電圧とオフセットDC電圧は実施例1と同じように印加する。すなわち図6に同じ符号を付して示したロッド電極にはすべてのセグメントにおいて同一の位相、同一の振幅、同一の周波数のRF電圧を印加する。また、同じロッド電極セットに含まれるロッド電極の組には同じオフセットDC電圧を印加する。図19は、セグメントDC電圧とオフセットDC電圧の和を示す図である。図19において、61はロッド電極セット1の各セグメントに印加されるDC電圧を、62はロッド電極セット2の各セグメントに印加されるDC電圧を示し、60はオフセットDC電圧の差を示している。
このとき各領域のYZ平面において擬ポテンシャルの極小点から見た相対的なポテンシャルは実施例1と同じになる。したがって、実施例1と同様に、領域1においてイオンをロッド電極セット1の中心軸に収束させ、領域2においてイオンを気流から分離してロッド電極セット1側からロッド電極セット2側に移動させ、領域3においてロッド電極セット2の中心軸上にイオンを収束させることが可能である。このように、ロッド電極をセグメントに分割した場合でも、実質的に実施例1と同じ機能を得ることができる。このことから、本実施例のようにイオンガイドの長手方向(X軸方向)でロッド電極をセグメントに分割した構成でも、長手方向に連続するセグメントの電極をまとめて一つのロッド電極として定義できる。
[実施例3]
図20から図22は、本発明のイオンガイドの他の実施例を示す構成図である。図20はイオンガイド全体を示す斜視模式図、図21はイオンガイドをY軸方向から見た概略図、図22は図20中に(i)、(ii)、(iii)で示した位置の径方向(YZ平面)断面図である。ロッド電極の形状は、図20に示したような円柱に近い形状でも、角柱や多角形でもよい。
イオンと気流が導入される側のロッド電極の組21をロッド電極セット1、イオンが排出される側のロッド電極の組22をロッド電極セット2とする。同じロッド電極セットに含まれるロッド電極には同じオフセットDC電圧を印加する。図22中の符号“+”、“−”はRF電圧の位相を示し、同じ符号が記入されたロッド電極には同位相、同振幅、同周波数のRF電圧を印加する。
領域1ではロッド電極セット1の4本のロッド電極21a,21b,21c,21dにより四重極イオンガイドが形成される。領域2では領域1の位置からロッド電極セット1のロッド電極21a,21dとロッド電極セット2のロッド電極22b,22cの間隔が広がり、図22のように各ロッド電極がほぼ正八角形の頂点の位置にくる。ロッド電極セット1とロッド電極セット2が組み合わさり八重極を形成することで、ロッドに囲まれた領域の中心付近に極小点をもつ単一の擬ポテンシャルが形成される。ロッド電極セット1とロッド電極セット2の間には擬ポテンシャル障壁が存在せず、イオンが自由に行き来することができる。オフセットDC電圧を、測定する試料のイオンをロッド電極セット1からロッド電極セット2の方向に動かす電界が形成されるよう印加すると、領域2でイオンを気流から引き剥がしてロッド電極セット1側からロッド電極セット2側に移動させることができる。ロッド電極セット2側に移動したイオンは領域3に導入される。領域3ではロッド電極セット2の4本のロッド電極22a,22b,22c,22dにより4重極イオンガイドが形成され、イオンは4重極イオンガイドの中心軸上に収束する。本実施例では八重極を例に説明したが、10、12、16、20重極など八重極以上の多重極でもよい。
本実施例の構成では、ロッド電極21a,21d,22b,22cにも加工が容易で安価な円柱状のロッド電極を用いることができるため、実施例1に比べて安価である。一方、八重極など高次の多重極では擬ポテンシャルの中心付近の勾配がゆるいため、イオンが径方向の広い範囲に分布し、多重極から四重極への変形箇所でイオンの損失が発生しやすい。
[実施例4]
図23から図25は、本発明のイオンガイドの他の実施例を示す構成図である。図23はイオンガイド全体を示す斜視模式図、図24はイオンガイドをY軸方向から見た概略図、図25は図23中に(ii)、(iii)で示した位置の径方向(YZ平面)断面図である。
本実施例のイオンガイドでは実施例1の領域1に相当する部分がなく、図25に示したようにイオンを含む気流26は領域2のロッド電極セット1のロッド電極21a,21b,21c,21dで囲まれた範囲に、イオンガイドの領域2の中心軸と平行に入射する。領域2、領域3における構成、印加電圧、及びイオンと気流の挙動は実施例1と同様である。
本実施例の構成では、実施例1の構成に比べて構造が単純で安価であるという利点がある。一方、イオンを収束させる領域1の部分がないため、イオンガイドの透過効率自体は実施例1の構成よりも低くなる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
4 イオンガイド
10,11 細孔
12 差動排気部
13 質量分析部
14 イオン源
17 中間真空室
18 細孔
21−22 ロッド電極セット
23 インキャップ電極
24 イオンガイド入口
25 イオンガイド出口
27 イオンの排出位置
30 イオン軌道
33 イオンの分布範囲
50 四重極イオンガイド中心軸
51 合成ポテンシャル極小点
91 イオンの分布
100 イオン
101 気流
200 バレルショック
201 マッハディスク
203 気流の入射方向
204 細管
300 イオンガイド電源

Claims (3)

  1. 多重極電極を有する多重極イオンガイドであって、
    前記多重極電極は、前記多重極イオンガイドの中心軸に垂直な平面において、前記多重極電極で囲まれた領域に単一の極小点を持つ擬ポテンシャルと、静電ポテンシャルとを形成し、
    前記擬ポテンシャルと前記静電ポテンシャルの合成ポテンシャルが前記擬ポテンシャルの極小点と異なる位置に極小点を持つ
    ことを特徴とする多重極イオンガイド。
  2. 請求項1に記載の多重極イオンガイドであって、
    単一の極小点を持つ第1の擬ポテンシャルのみが形成される第1の領域と、
    単一の極小点を持つ第2の擬ポテンシャルと、静電ポテンシャルとが形成される第2の領域と、
    第3の擬ポテンシャルが形成され、前記第1の領域と前記第2の領域を接続する第3の領域と、を備える
    ことを特徴とする多重極イオンガイド。
  3. 請求項2に記載の多重極イオンガイドであって、
    前記第1の領域中の前記中心軸に垂直な平面における前記第1の擬ポテンシャルの前記極小点の位置は、前記第2の領域中の前記中心軸に垂直な平面における前記第2の擬ポテンシャルの前記極小点の位置と異なる
    ことを特徴とする多重極イオンガイド。
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