以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は光学測定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。光の状態変化を測定する光学測定装置1は、例えば分光エリプソメータ、ポラリメータ、干渉計、またはこれらを組み合わせた装置が用いられる。以下では光学測定装置1として分光エリプソメータ1を用いた例を説明する。分光エリプソメータ1はキセノンランプ2、光照射器3、ステージ4、光取得器5、分光器7、データ取込機8、モータ制御機9、スイッチング制御回路17、及び、コンピュータ10等を含んで構成される。分光エリプソメータ1は、一部が共通する層を有する複数の積層体が規則的に配置された1セットが分散配置された試料50を計測する。
分光エリプソメータ1は、膜を複数積層した試料50に偏光した光を照射すると共に、試料50で反射した光を取得して反射光の偏光状態を測定し、この測定結果と試料50に応じたモデルとに基づき試料50の各膜層の特性を解析する。図2は試料50の平面を示す平面図であり、図3は試料50の断面を示す模式的断面図である。試料50は、基板51、及び、セット30、30、30・・・を含む。試料50は例えばONO膜が用いられる。基板51は例えばシリコンウェハであり、基板51上には共通膜300が積層される。共通膜300は例えばシリコン酸化膜である。共通膜300の略中央部には第2膜302が積層され、共通膜300の端部であって第2膜302に隣接する位置には第3膜303が積層される。
第2膜302及び第3膜303は例えばシリコン窒化膜等である。第3膜303の上側にはさらに、第4膜304が積層されている。第4膜304は例えばシリコン酸化膜等が用いられる。第1積層体31乃至第3積層体33は断面視において図3に示す如く階段状となっている。なお、本実施の形態においては、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を例としてあげたが、あくまで一例でありこれらの材料に限るものではない。また層数も3層として説明するが、これに限るものではない。さらに、ONOはSi基板を用いるが、TFT(Thin Film Transistor)デバイス等のSOI基板、プラスチック等の透明基板、または、フレキシブル金属基板等も同様であり、半導体分野だけでなく、FPD(Flat Panel Display)分野においても同様に適用することが可能である。共通膜300により第1積層体31が形成され、共通膜300及び第2膜302により第2積層体32が形成され、共通膜300、第3膜303及び第4膜304により第3積層体33が形成される。なお、本実施の形態においてはONO膜を例に挙げて説明するが、あくまで一例でありこれに限るものではない。さらに本実施の形態においては第1積層体31、第2積層体32及び第3積層体33が連結している例を示したが、これに限るものではない。第1積層体31、第2積層体32及び第3積層体33が所定間隔を空けて相互に独立して基板51上に形成されていても良い。この点後述する他の実施の形態においても同様である。この場合、基板51上に3つの分離した第1の共通膜300、第2の共通膜300、及び第3の共通膜300が積層される。第1の共通膜300が第1積層体31となる。第2の共通膜300上に第2膜302が形成され第2積層体32となる。第3の共通膜300上に、第3膜303が形成され、されにこの第3膜303上に第4膜304が形成され、第3積層体33となる。
図2(a)は試料50全体を示す平面図であり、図2(b)は図2(a)の一部を拡大した拡大平面図である。基板51上には略正方形状のチップ100、100、100、・・・が格子状に複数配置されている。チップ100とチップ100とはスクライブライン102を介して所定間隔を空けて配置される。以下では、図2(b)における基板51の平面視左上側を原点座標(0,0)とし、原点から右側へ向かう方向をx軸正方向、原点から下側へ向かう方向をy軸正方向であるものとして説明する。セット30、30、30、・・・は、スクライブライン102上の所定の座標位置に規則的に分散して形成される。本実施の形態においてはチップ100の左右のスクライブライン102、102上にセット30、30が形成される例を挙げて説明する。第1積層体31を測定する場合、第1基準位置C1である第1基準座標を中心に測定を行う。第2積層体32を測定する場合、補助基準位置C2である補助基準座標を中心に測定を行う。同様に第3積層体33を測定する場合、補助基準位置C3である補助基準座標を中心に測定を行う。なお、本実施の形態においては測定位置を第1積層体31乃至第3積層体33の略中心としたが、一例でありこれに限るものではない。第1積層体31の形成位置である第1基準座標は、予め記憶されている。またセット30は、スクライブライン102上ではなく、テストパターン上に設置しても良い。図4は他の形態に係る試料50の平面を示す平面図である。図4(a)は試料50全体を示す平面図であり、図4(b)は図4(a)の一部を拡大した拡大平面図である。基板51の外周の複数箇所にはテストパターン101、101、・・・が設けられている。この各テストパターン101上にセット30を形成するようにしても良い。
図1に戻り分光エリプソメータ1のハードウェア構成について説明する。上述した構造の試料50の第1積層体31乃至第3積層体33を解析する分光エリプソメータ1は、一対の光照射器3及び光取得器5からなる測定器を含む測定解析系の部分及び駆動系部分に大別される。分光エリプソメータ1は測定解析系の部分として、キセノンランプ2及び光照射器3を第1光ファイバケーブル15aで接続する。分光エリプソメータ1は、ステージ4上に載置した試料50へ偏光した状態の光を照射して光を入射させると共に、試料50で反射した光を光取得器5で取り込む。光取得器5は第2光ファイバケーブル15bを介して分光器7に接続されており、分光器7は波長毎に測定を行って測定結果をアナログ信号としてデータ取込機8へ伝送する。データ取込機8は、アナログ信号を所要値に変換してコンピュータ10へ伝送する。コンピュータ10は解析を行う。
また、分光エリプソメータ1は駆動系部分として、ステージ4、光照射器3、光取得器5及び分光器7に第1モータM1〜第6モータM6を夫々設けている。第1モータM1〜第6モータM6の駆動をコンピュータ10に接続したモータ制御機9で制御することで、ステージ4、光照射器3、光取得器5及び分光器7を測定に応じた適切な位置、姿勢に変更する。モータ制御機9は、コンピュータ10から出力される指示に基づき第1モータM1〜第6モータM6の駆動制御を行う。
次に、分光エリプソメータ1の上述した各部分を順番に詳述する。まず、キセノンランプ2は光源であり、複数の波長成分を含む白色光を発生し、発生した白色光を光照射器3へ第1光ファイバケーブル15aを介して送る。光照射器3は半円弧状のレール6上に配置され、内部には偏光子3aを有しており、白色光を偏光子3aで偏光し、偏光状態の光を試料50へ照射する。また、光照射器3は、第4モータM4が駆動されることでレール6に沿って移動し、照射する光のステージ4のステージ面4aの垂線Hに対する角度(入射角度φ)を調整可能にしている。
ステージ4は移動レール部(図示せず)に摺動可能に配置されており、第1モータM1〜第3モータM3の駆動によりステージ4を図1中のx軸方向、y軸方向(図1の紙面に直交する方向)及び高さ方向となるz方向へ夫々移動可能にしている。ステージ4の移動により、試料50へ光を入射させる箇所を適宜変更し、試料50の面分析を行う。なお、本実施の形態においては、ステージ4をx軸方向及びy軸方向に動かす例を挙げて説明するがこれに限るものではない。例えばステージ4を固定し、光照射器3及び光取得器5を動かし、照射位置をx軸方向及びy軸方向に移動させるようにしても良い。また、ステージ4の試料50を載置するステージ面4aは、光の反射を防止するため黒色にされている。
光取得器5は試料50で反射した光を取得し、取得した光の偏光状態を測定する。光取得器5は、光照射器3と同様にレール6上に配置されており、PEM(Photo Elastic Modulator:光弾性変調器)5a及び検光子(Analyzer)5bを内蔵し、試料50で反射された光を、PEM5aを介して検光子5bへ導いている。光取得器5は、第5モータM5の駆動によりレール6に沿って移動可能である。光取得器5は、光照射器3の移動に連動して反射角度φと入射角度φとが同角度になるように、モータ制御機9で制御されている。なお、光取得器5に内蔵されたPEM5aは、取り込んだ光を所要周波数(例えば50kHz)で位相変調することにより直線偏光から楕円偏光を得ている。また、検光子5bは、PEM5aで位相変調された各種偏光の中から選択的に偏光を取得して測定する。
分光器7は、反射ミラー、回折格子、フォトマルチプライヤー(PMT:光電子倍増管)及び制御ユニット等を内蔵し、光取得器5から第2光ファイバケーブル15bを通じて送られた光を反射ミラーで反射して回折格子へ導いている。回折格子は第6モータM6により角度を変更し出射する光の波長を可変する。分光器7の内部へ進んだ光はPMTで増幅され、光の量が少ない場合でも、測定された信号(光)を安定化させる。また、制御ユニットは測定された波長に応じたアナログ信号を生成してデータ取込機8へ送出する処理を行う。
データ取込機8は、分光器7からの信号に基づき反射光の偏光状態(p偏光、s偏光)の振幅比Ψ及び位相差Δを波長毎に算出し、算出した結果をコンピュータ10へ送出する。なお、振幅比Ψ及び位相差Δは、p偏光の振幅反射係数Rp及びs偏光の振幅反射係数Rsに対し以下の数式(1)の関係が成立する。
Rp/Rs=tanΨ・exp(i・Δ)・・・(1)
但し、iは虚数単位である(以下同様)。また、Rp/Rsは偏光変化量ρという。
また、コンピュータ10は、データ取込機8で得られた偏光状態の振幅比Ψ及び位相差Δと、試料に応じたモデルとに基づき試料50の解析を行うと共に、ステージ4の移動等に対する制御を行う。コンピュータ10は、CPU11(Central Processing Unit)、表示部14、入力部13、記憶部15、時計部11e、及びRAM12(Random Access Memory)等を含む。CPU11は、バスを介してコンピュータ10のハードウェア各部と接続されていて、それらを制御すると共に、記憶部15に格納された各種プログラムに従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。
RAM12は半導体素子等であり、CPU11の指示に従い必要な情報の書き込み及び読み出しを行う。表示部14は例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等である。入力部13はキーボード及びマウス等である。入力部13は表示部14上に積層されたタッチパネルであっても良い。時計部11eは日時情報をCPU11へ出力する。記憶部15は例えばハードディスクまたは大容量メモリで構成され、解析用のコンピュータプログラム、及びステージ4の移動制御用のコンピュータプログラム等の各種プログラムを予め記憶すると共に、表示部14へ表示するための各種メニュー画像のデータ、試料50に係る既知のデータ、複数のモデル、モデルの作成に利用される複数の分散式、作成されたモデル、各種試料に応じたリファレンスデータ、及び干渉縞に関連した比較処理に用いる基準値等を記憶する。
記憶部15は、その他、座標値ファイル151、結果データベース(以下、DBという)152、モデルファイル153及び関連ファイル154等を格納している。なお、これらのファイル及びDBは、図示しないDBサーバ等に記憶しても良い。試料50の解析に関し、コンピュータ10は第1積層体31を構成する共通膜300、第2積層体32を構成する共通膜300及び第2膜302、並びに、第3積層体33を構成する共通膜300、第3膜303及び第4膜304の光学特性として屈折率及び消衰係数(以下、場合により光学定数で代表する)を解析すると共に、これら各層の膜厚等も解析する。CPU11は座標値ファイル151を参照し、ステージを逐次移動し、第1積層体31乃至第3積層体33の計測を行う。
図5は移動量入力画面のイメージを示す説明図である。CPU11は記憶部15から図5に示す移動量入力画面を読み出し、表示部14へ出力する。ユーザは入力部13から第2積層体32の移動量として第1積層体31に対する移動量を入力する。また、ユーザは入力部13から第3積層体33の移動量として第2積層体32に対する移動量を入力する。なお、第3積層体33の移動量として第1積層体31に対する移動量を入力させるようにしても良い。CPU11は入力部13からx軸方向及びy軸方向に対する移動量が入力され、決定ボタン41が操作された場合、入力された第2積層体32及び第3積層体33の移動量を受け付ける。なお、本実施の形態においては移動量はnm単位で入力する例を示しているが、μm単位等他の単位で入力しても良い。
CPU11は記憶部15に記憶した単位長あたりの座標数を読み出し、座標数に移動量(長さ)を乗じて、第2積層体32及び第3積層体33のそれぞれの移動座標数を算出する。CPU11は算出した第2積層体32の移動座標数を第1基準座標に加算し、第2基準座標を算出する。また、CPU11は第2基準座標に、第3積層体33の移動座標数を加算し、第3基準座標を算出する。CPU11は算出した第2基準座標及び第3基準座標を座標値ファイル151に記憶する。
図6は座標値ファイル151のレコードレイアウトを示す説明図である。座標値ファイル151はセット30毎に第1積層体31の第1基準座標、第2積層体32の補助基準座標(以下、第2基準座標という)、及び、第3積層体33の補助基準座標(以下、第3基準座標)を記憶している。座標値ファイル151はセットIDフィールド、第1基準座標フィールド、第2基準座標フィールド及び第3基準座標フィールドを含む。セットIDフィールドには、セット30、30、30、・・・を特定するための固有のIDが記憶されている。第1基準座標フィールドには、第1積層体31に対して測定すべき座標値が記憶されている。なお、本実施の形態においては座標値を記憶する例を説明するが、座標値から一意に変換される距離を記憶しても良い。
第2基準座標フィールドには、第2積層体32に対して測定すべき座標値が記憶されている。第2膜302は第1積層体31に対して所定位置ずれた方向に形成されることから、予め第1基準位置である第1基準座標からの移動量を入力部13から入力しておく。さらに第3積層体の第3基準座標フィールドが設けられている。CPU11は記憶部15に記憶した単位長あたりの座標数を読み出し、移動座標数を算出する。CPU11は算出した移動座標数を第1基準座標に加算し、第2基準座標を算出する。図6の例では、移動座標数は(Sx,Ty)であり、セットID01の第2基準座標は(x1+Sx,y1+Ty)となる。また、第3積層体33の第2積層体32に対する移動座標数は(Ux,Vy)であり、セットID01の第3基準座標は(x1+Sx+Ux,y1+Ty+Vy)となる。なお、移動量はx軸方向またはy軸方向の双方、または、単独のどちらでも良い。CPU11は座標値ファイル151を参照し、ステージの移動制御を行い、第1基準座標にて第1積層体31の計測を行い、第2基準座標にて第2積層体32の計測を行う。同様に第3基準座標にて第3積層体33の計測を行う。
関連ファイル154は第1積層体31乃至第3積層体33を構成する各層の膜厚または光学定数が共通するか否かに関する関連情報を記憶している。ユーザは入力部13から関連情報入力画面を参照し、関連情報を入力する。図7は関連情報入力画面のイメージを示す説明図である。第1積層体31乃至第3積層体33に対するモデルがモデルファイル153に予め記憶されている。CPU11はモデルファイル153に記憶した第1モデル乃至第3モデルを参照し、関連情報入力画面を生成して表示部14へ出力する。第1モデルは第1積層体31に対応し、共通膜300により構成される。第2モデルは第2積層体32に対応し、共通膜300及びこれに積層される第2膜302により構成される。第3モデルは第3積層体33に対応し、共通膜300並びにこれに積層される第3膜303及び第4膜304により構成される。本実施の形態においては、共通膜300の第1モデル乃至第3モデルのパラメータである膜厚及び光学定数が共通である例を挙げて説明する。また共通膜300上に積層される第2モデルの第2膜302および第3モデルの第3膜303の膜厚または光学定数を共通としても良いことはもちろんである。
CPU11は、各層に対応づけて関連情報を入力するための下層用のチェックボックス300c及び上層用のチェックボックス301cを表示する。ユーザは入力部13から、層及び共通するパラメータをクリックする。なお、本実施の形態においては膜厚及び光学定数の双方を共通のパラメータとしたが、いずれか一方としても良い。入力部13から共通膜300の初期値となる共通の膜厚、及び、光学定数に対応する分散式のパラメータが入力された場合、CPU11は、これらの情報を記憶部15に記憶する。図7の例では、共通膜300に対応するチェックボックス300cの膜厚及び光学定数が共通するパラメータであることが理解できる。CPU11は決定ボタン41の入力を受け付けた場合、入力部13から受け付けた関連情報、すなわち層及び共通するパラメータを関連ファイル154に記憶する。CPU11は、解析(以下、フィッティングという)に際しては、これらの関連情報を考慮した上で、すなわち、共通膜300の膜厚及び光学定数が第1積層体31乃至第3積層体33において共通することを条件としてフィッティングを行う。
コンピュータ10のCPU11は、測定された振幅比Ψ及び位相差Δから、基板51及び試料50の周囲雰囲気等の複素屈折率を既知とした場合に、記憶部15に予め記憶されているモデリングプログラムを用いる。そして、ユーザに設定される試料50の項目及び試料50の材料構造に応じたモデルを作成してモデルファイル153に記憶しておく。本実施の形態においては、第1基準位置に対応する第1積層体31の第1モデル、補助基準位置に対応する第2積層体32の補助モデル(以下、第2モデルという)及び、補助基準位置に対応する第3積層体33の補助モデル(以下、第3モデルという)がモデルファイル153に記憶されている。CPU11は、解析段階で記憶している第1モデルを用いて第1積層体31の共通膜300の膜厚及び複素屈折率を求める。同様にCPU11は第2モデルを用いて第2積層体32の共通膜300及び第2膜302の膜厚及び複素屈折率を求める。さらに、CPU11は第3モデルを用いて第3積層体33の共通膜300、第3膜303及び第4膜304の膜厚及び複素屈折率を求める。
複素屈折率Nは、解析する膜層の屈折率n及び消衰係数kとした場合、以下の光学式で表した数式(2)の関係が成立する。
N=n−ik・・・(2)
また、入射角度をφ、光照射器3が照射する光の波長をλとした場合、データ取込機8から出力されるエリプソメータで測定された振幅比Ψ及び位相差Δは、解析する第2膜302、第3膜303、第4膜304及び共通膜300の膜厚d、屈折率n及び消衰係数kに対して以下の数式(3)の関係が成立する。
(d,n,k)=F(ρ)=F(Ψ(λ,φ),Δ(λ,φ))・・・(3)
コンピュータ10のCPU11は、解析する各層の膜厚、及び複数のパラメータを有する複素誘電率の波長依存性を示す分散式を用いて、記憶したモデルから理論的な演算で得られるモデルスペクトル(ΨM (λi )、ΔM (λi))(偏光状態)と、データ取込機8から出力される測定結果に係る測定スペクトル(ΨE (λi )、ΔE(λi ))(偏光状態)との差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う。なお、適用される分散式の一例を下記の数式(4)に示す。なお、分散式はあくまで一例であってこれに限るものではない。
数式(4)において左辺のεは複素誘電率を示し、ε∞、εs は誘電率を示し、Γ0 、ΓD 、γj は粘性力に対する比例係数(damping factor)を示し、ωoj、ωt 、ωp は固有角振動数(oscillator frequency, transverse frequency, plasma frequency)を示す。なお、ε∞は高周波における誘電率(high frequency dielectric constant)であり、εs は低周波における誘電率(static dielectric constant)であり、fj =(εSj−ε∞)である。また、複素誘電率ε(ε(λ)に相当)、及び複素屈折率N(N(λ)に相当)は、下記の数式(5)の関係が成立する。
ε(λ)=N2 (λ)・・・(5)
フィッティングについて説明する。試料50を測定した場合でT個の測定データ対をExp(i=1,2,・・・,T)、T個のモデルの計算データ対をMod(i=1,2,・・・,T)としたときに測定誤差は正規分布すると考えて標準偏差をσi とした際の最小二乗法に係る平均二乗誤差χ2 は下記の数式(6)で求められる。なお、Pはパラメータの数である。平均二乗誤差χ2 の値が小さいときは、測定結果と作成したモデルの一致度が大きいことを意味するため、複数のモデルを比較する場合、平均二乗誤差χ2 の値が最も小さいものがベストモデルに相当する。
上述したコンピュータ10のCPU11が行う試料解析に係る一連の処理は、記憶部15に記憶された解析用のコンピュータプログラムに規定されている。本実施の形態に係る分光エリプソメータ1は、試料50における複数の予め作成されているモデルタイプ(モデルの構造)を記憶部15のモデルファイル153に記憶している。これらのモデルタイプの構造が、記憶部15に記憶されるコンピュータプログラム(モデリングプログラム)が規定する処理に基づき読み出されて解析に用いられる。
以上述べたモデルに基づくフィッティングを、第1積層体31乃至第3積層体33それぞれに対して実行する。CPU11は、フィッティングに際しては、上述した関連情報を考慮した上で、すなわち、共通膜300の膜厚及び光学定数が第1積層体31乃至第3積層体33において共通することを条件としてフィッティングを行う。これにより、CPU11は、第1積層体31の共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータを算出する。同様に、CPU11は、第2積層体32の共通膜300及び第2膜302のそれぞれの膜厚及び分散式のパラメータを算出する。さらに、CPU11は、第3積層体33の共通膜300、第3膜303及び第4膜304それぞれの膜厚及び分散式のパラメータを算出する。なお、共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータが同一であることを条件にしていることから、共通膜300の膜厚は第1積層体31乃至第3積層体33間で同一となる。また、膜厚及び分散式パラメータから求まる共通層300の屈折率及び消衰係数も、膜厚と同様に、第1積層体31乃至第3積層体33間で同一となる。CPU11は、第1積層体31の共通膜300の分散式のパラメータ等を参照することで、共通膜300の光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する。同様に、CPU11は、第2積層体32の共通膜300及び第2膜302のそれぞれの分散式のパラメータ等を参照することで、共通膜300及び第2膜302のそれぞれの光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する。さらに、CPU11は、第3積層体33の共通膜300、第3膜303及び第4膜304のそれぞれの分散式のパラメータ等を参照することで、共通膜300、第3膜303及び第4膜304のそれぞれの光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する。
CPU11はフィッティングにより求めた膜厚及び光学定数等を結果DB152に記憶する。図8は結果DB152のレコードレイアウトを示す説明図である。結果DB152はセットIDフィールド、膜フィールド、測定スペクトルフィールド、膜厚フィールド、膜厚、屈折率及び消衰係数の異常フラグフィールド、屈折率フィールド、並びに、消衰係数フィールドを含む。CPU11は、結果DB152のフィールドのキーを関連づけたスキーマにおいてSQL(Structured Query Language)等のデータベースの形式に応じたアクセスインターフェースを用いて対話することにより、必要な情報の記憶、検索等の処理を実行する。
結果DB152は第1積層体31乃至第3積層体33それぞれの、測定スペクトル、膜厚及び光学定数等を記憶している。なお、図8の例では、第2積層体32の記憶内容を示している。セットIDフィールドには上述したセットIDが記憶されている、膜フィールドには積層体を構成する膜の名前が記憶されている。図8の例では第2積層体32の上層である第2膜302及び共通膜300が記憶されている。測定スペクトルフィールドには、測定により得られた測定スペクトル(ΨE (λi )、ΔE (λi))がセットIDの膜毎に記憶されている。
膜厚フィールドには第1積層体31の第1モデル、第2積層体32の第2モデルまたは第3積層体33の第3モデルから理論的な演算で得られるモデルスペクトル(ΨM (λi )、ΔM (λi))(以下、ΨM、ΔMと省略する)と測定スペクトル(ΨE (λi )、ΔE(λi ))(以下、ΨE、ΔEと省略する)とのフィッティングにより得られた膜厚がセットIDの膜毎に記憶されている。屈折率フィールド及び消衰係数フィールドには、フィッティングにより得られた分散式のパラメータから算出される屈折率及び消衰係数が、セットIDの膜毎に記憶されている。
異常フラグフィールドには、膜厚または光学定数が、予め記憶した基準膜厚、または、基準光学定数(基準屈折率、基準消衰係数)の所定範囲外となる場合に異常を示すフラグがセットIDの膜毎に記憶される。図8の例では異常フラグを白抜き丸印で示している。セットID01の第2膜302は膜厚及び消衰係数に異常が存在することが理解できる。基準膜厚及び所定範囲は記憶部15に予め記憶されている。基準膜厚及び所定範囲については、ユーザの設定により入力部13から適宜の値を入力し、記憶部15に記憶することが可能である。所定範囲は許容誤差を示し、例えば、基準膜厚に対して±数nmとするほか、基準膜厚の99%〜101%(±1%)等とすれば良い。
図9及び図10は測定処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は変数であるqに1を代入する(ステップS2610)。CPU11はセットIDがqの第1基準座標を座標値ファイル151から読み出す(ステップS2620)。変数qが1の場合セットID「01」の第1基準座標が読み出される。CPU11はモータ制御機9を介して第1モータM1及び第2モータM2を制御し、ステージを第1基準座標まで移動させる(ステップS2630)。これにより、第1積層体31の計測準備が整う。分光エリプソメータ1のCPU11は、光照射器3及び光取得器5を制御し、第1積層体31へ向けて光を照射し、測定スペクトルΨE1、ΔE1を測定する(ステップS2640)。CPU11はデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨE1、ΔE1を受け付け、セットIDに対応づけて結果DB152に記憶する(ステップS2650)。
CPU11はセットIDがqの第2基準座標を座標値ファイル151から読み出す(ステップS2660)。CPU11はモータ制御機9を介して第1モータM1及び第2モータM2を制御し、ステージを第2基準座標まで移動させる(ステップS2670)。これにより、第2積層体32の計測準備が整う。分光エリプソメータ1のCPU11は、光照射器3及び光取得器5を制御し、第2積層体32へ向けて光を照射し、測定スペクトルΨE2、ΔE2を測定する(ステップS2680)。
CPU11はデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨE2、ΔE2を受け付け、セットIDに対応づけて結果DB152に記憶する(ステップS2690)。CPU11はセットIDがqの第3基準座標を座標値ファイル151から読み出す(ステップS2710)。CPU11はモータ制御機9を介して第1モータM1及び第2モータM2を制御し、ステージを第3基準座標まで移動させる(ステップS2720)。これにより、第3積層体33の計測準備が整う。分光エリプソメータ1のCPU11は、光照射器3及び光取得器5を制御し、第3積層体33へ向けて光を照射し、測定スペクトルΨE3、ΔE3を測定する(ステップS2730)。
CPU11はデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨE3、ΔE3を受け付け、セットIDに対応づけて結果DB152に記憶する(ステップS2740)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したか否かを判断する(ステップS2750)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了していないと判断した場合(ステップS2750でNO)、変数であるqをインクリメントする(ステップS2760)。CPU11は処理をステップS2620へ戻し、次のセット30の測定スペクトルを測定する。一方、CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したと判断した場合(ステップS2750でYES)、一連の処理を終了する。
図11乃至図13はフィッティング処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は関連ファイル154に記憶した関連情報を読み出す(ステップS361)。本実施の形態においては共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータ並びに光学定数が共通であるものとして説明する。CPU11はモデルファイル153から第1積層体31に対応して予め記憶部15に記憶された第1モデルを読み出す(ステップS362)。CPU11は、読み出した第1モデルに対応して、予め記憶した第1モデルに対する共通膜300の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータを記憶部15から読み出す(ステップS363)。CPU11は読み出した第1モデル、初期膜厚及びパラメータに基づき、第1モデルのモデルスペクトルΨM1、ΔM1を算出し、結果を記憶部15に記憶する(ステップS364)。
CPU11はモデルファイル153から第2積層体32に対応して予め記憶部15に記憶された第2モデルを読み出す(ステップS365)。CPU11は、読み出した第2モデルに対応して、予め記憶した第2モデルに対する共通膜300の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータ、並びに、第2モデルに対する第2膜302の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータを記憶部15から読み出す(ステップS366)。CPU11は読み出した第2モデル、初期膜厚及びパラメータに基づき、第2モデルのモデルスペクトルΨM2、ΔM2を算出し、結果を記憶部15に記憶する(ステップS367)。
CPU11はモデルファイル153から第3積層体33に対応して予め記憶部15に記憶された第3モデルを読み出す(ステップS368)。CPU11は、読み出した第3モデルに対応して、予め記憶した第3モデルに対する共通膜300の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータ、並びに、第3モデルに対する第3膜303及び第4膜304の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータを記憶部15から読み出す(ステップS369)。CPU11は読み出した第3モデル、初期膜厚及びパラメータに基づき、第3モデルのモデルスペクトルΨM3、ΔM3を算出し、結果を記憶部15に記憶する(ステップS371)。
CPU11は変数であるqに1を代入する(ステップS372)。CPU11はセットIDがqの第1積層体31に係る測定スペクトルΨE1、ΔE1、第2積層体32に係る測定スペクトルΨE2、ΔE2及び第3積層体33に係る測定スペクトルΨE3、ΔE3を結果DB152から読み出す(ステップS373)。
CPU11は、フィッティングのため読み出した、第1積層体31に係る測定スペクトルΨE1、ΔE1、第1モデルのモデルスペクトルΨM1、ΔM1、第2積層体32に係る測定スペクトルΨE2、ΔE2、第2モデルのモデルスペクトルΨM2、ΔM2、第3積層体33に係る測定スペクトルΨE3、ΔE3、及び、第3モデルのモデルスペクトルΨM3、ΔM3、を比較し、共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータが同一であることを条件に測定スペクトルとモデルスペクトルとの差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う(ステップS374)。CPU11はこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。ステップS374における平均二乗誤差χ2 は式(7)により算出することができる。
なお、第1積層体31を測定した場合におけるT1 個の測定データ対をExp(i=1,2,・・・,T1 )、T1 個のモデルの計算データ対をMod(i=1,2,・・・,T1 )とする。第2積層体32を測定した場合におけるT2 個の測定データ対をExp(i=1,2,・・・,T2 )、T2 個のモデルの計算データ対をMod(i=1,2,・・・,T2 )としている。第3積層体33を測定した場合におけるT3 個の測定データ対をExp(i=1,2,・・・,T3 )、T3 個のモデルの計算データ対をMod(i=1,2,・・・,T3 )としている。また、P1 は第1積層体31を測定する際のパラメータの数であり、P2 は第2積層体32を測定する際のパラメータの数であり、P3 は第3積層体33を測定する際のパラメータである。
フィッティングの結果としてCPU11は算出した平均二乗誤差が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS375)。なお、この所定値は記憶部15に記憶されている。CPU11は、算出した平均二乗誤差が所定値以下でないと判断した場合(ステップS375でNO)、ステップS376へ移行する。CPU11は、共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータが同一であることを条件に、モデルの初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再びモデルスペクトルΨM1、ΔM1、モデルスペクトルΨM2、ΔM2、及び、モデルスペクトルΨM3、ΔM3を算出する(ステップS376)。
CPU11は、算出した平均二乗誤差が所定値以下であると判断した場合(ステップS375でYES)、第1積層体31の膜厚及び分散式のパラメータ、第2積層体32各層の膜厚及び分散式のパラメータ、並びに、第3積層体33各層の膜厚及び分散式のパラメータを決定する(ステップS377)。なお、共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータが同一であることを条件にしていることから、共通膜300の膜厚は第1積層体31乃至第3積層体33間で同一となる。また、分散式のパラメータから求まる共通膜300の屈折率及び消衰係数も、膜厚と同様に、第1積層体31乃至第3積層体33間で同一となる。CPU11は、共通膜300の分散式のパラメータ等を参照することで、第1積層体31の共通膜300の屈折率、及び、消衰係数を算出し、共通膜300及び第2膜302の分散式のパラメータ等を参照することで、第2積層体32の共通膜300及び第2膜302の屈折率、及び、消衰係数を算出し、共通膜300、第3膜303及び第4膜304の分散式のパラメータ等を参照することで、第3積層体33の共通膜300、第3膜303、及び第4膜304の屈折率、及び、消衰係数を算出する(ステップS378)。
CPU11は、セットID及び第1積層体31に対応づけて、共通膜300の膜厚、屈折率、及び消衰係数を結果DB152に記憶する(ステップS379)。同様に、CPU11は、セットID及び第2積層体32に対応づけて、共通膜300及び第2膜302の膜厚、屈折率、及び消衰係数を結果DB152に記憶する(ステップS381)。CPU11は、セットID及び第3積層体33に対応づけて、共通膜300、第3膜303及び第4膜304の膜厚、屈折率、及び消衰係数を結果DB152に記憶する(ステップS382)。
CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したか否かを判断する(ステップS383)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了していないと判断した場合(ステップS383でNO)、変数であるqをインクリメントする(ステップS384)。CPU11は処理をステップS373へ戻し、次のセット30のフィッティングを行う。一方、CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したと判断した場合(ステップS383でYES)、一連の処理を終了する。
実施の形態2
図14は実施の形態2に係る光学測定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。光の状態変化を測定する光学測定装置1は、例えば分光エリプソメータ、ポラリメータ、干渉計、またはこれらを組み合わせた装置が用いられる。以下では光学測定装置1として分光エリプソメータ1を用いた例を説明する。分光エリプソメータ1はキセノンランプ2、光照射器3、ステージ4、光取得器5、分光器7、データ取込機8、モータ制御機9、スイッチング制御回路17、及び、コンピュータ10等を含んで構成される。分光エリプソメータ1は、一部が共通する層を有する複数の積層体が規則的に配置された1セットが分散配置された試料50を計測する。
分光エリプソメータ1は、膜を複数積層した試料50に偏光した光を照射すると共に、試料50で反射した光を取得して反射光の偏光状態を測定し、この測定結果と試料50に応じたモデルとに基づき試料50の各膜層の特性を解析する。図15は実施の形態2に係る試料50の平面を示す平面図であり、図16は実施の形態2に係る試料50の断面を示す模式的断面図である。試料50は、基板51、及び、セット30、30、30・・・を含む。基板51は例えばガラス、プラスチック等よりなる透明基板、プラスチック基板もしくはフレキシブル金属基板、または、ウエハ等である。図16に示す如く、基板51上にはCVD(Chemical Vapor Deposition)、ALD(Atomic Layer Deposition)、熱酸化、または、スパッタリング等により、共通膜(以下、下層膜という)300が形成される。
この下層膜300は例えば、CVDによりウエハ上に成膜されたシリコン酸化膜(SiO2 )である。下層膜300の上側一側には、第1膜301が形成される。この第1膜301は例えばアモルファスシリコン膜等であり、CVD等により下層膜300上に成膜される。下層膜300の上側他側には、第2膜302が形成される。この第2膜302は第1膜とは異なる膜、例えばポリシリコン膜等であり、CVD等により下層膜300上に成膜される。以下では、下層膜300上に第1膜301が積層された積層体を第1積層体31といい、下層膜300上に第2膜302が積層された積層体を第2積層体32という。また第1積層体31及び第2積層体32の組み合わせをセット30という。
本実施の形態においては、説明を容易にするために、第1積層体31及び第2積層体32間で共通する下層膜300は1層である例を挙げて説明するがこれに限るものではない。下層膜300は、第1積層体31及び第2積層体32間で共通すればよく、複数の膜が積層されたものであっても良い。また、下層膜300は、第1膜301及び第2膜302を上側及び下側双方において挟み込む複数の膜であっても良い。さらに、第1積層体31及び第2積層体32に電極またはこれら覆う保護カバー等を形成しても良い。
第1膜301及び第2膜302は相互に膜厚または屈折率及び消衰係数を含む光学特性が異なる物質である。本実施の形態においては第1膜301及び第2膜302の膜厚及び光学定数が異なる物質であるものとして説明する。図15に示す如く、セット30は基板51の平面上に分散配置されている。以下では、基板51の平面視左上側を原点座標(0,0)とし、原点から右側へ向かう方向をx軸正方向、原点から下側へ向かう方向をy軸正方向であるものとして説明する。
セット30を構成する第1積層体31及び第2積層体32は、回路設計に応じて所定の座標位置に分散して形成される。第1積層体31を測定する場合、第1基準位置C1である第1基準座標を中心に測定を行う。第2積層体32を測定する場合、補助基準位置C2である補助基準座標を中心に測定を行う。なお、本実施の形態においては測定位置を第1積層体31及び第2積層体32の略中心としたが、一例でありこれに限るものではない。第1積層体31の形成位置である第1基準座標は、予め記憶されている。
図14に戻り分光エリプソメータ1のハードウェア構成について説明する。上述した構造の試料50の第1積層体31及び第2積層体32を解析する分光エリプソメータ1は、一対の光照射器3及び光取得器5からなる測定器を含む測定解析系の部分及び駆動系部分に大別される。分光エリプソメータ1は測定解析系の部分として、キセノンランプ2及び光照射器3を第1光ファイバケーブル15aで接続する。分光エリプソメータ1は、ステージ4上に載置した試料50へ偏光した状態の光を照射して光を入射させると共に、試料50で反射した光を光取得器5で取り込む。光取得器5は第2光ファイバケーブル15bを介して分光器7に接続されており、分光器7は波長毎に測定を行って測定結果をアナログ信号としてデータ取込機8へ伝送する。データ取込機8は、アナログ信号を所要値に変換してコンピュータ10へ伝送する。コンピュータ10は解析を行う。
また、分光エリプソメータ1は駆動系部分として、ステージ4、光照射器3、光取得器5及び分光器7に第1モータM1〜第6モータM6を夫々設けている。第1モータM1〜第6モータM6の駆動をコンピュータ10に接続したモータ制御機9で制御することで、ステージ4、光照射器3、光取得器5及び分光器7を測定に応じた適切な位置、姿勢に変更する。モータ制御機9は、コンピュータ10から出力される指示に基づき第1モータM1〜第6モータM6の駆動制御を行う。
次に、分光エリプソメータ1の上述した各部分を順番に詳述する。まず、キセノンランプ2は光源であり、複数の波長成分を含む白色光を発生し、発生した白色光を光照射器3へ第1光ファイバケーブル15aを介して送る。光照射器3は半円弧状のレール6上に配置され、内部には偏光子3aを有しており、白色光を偏光子3aで偏光し、偏光状態の光を試料50へ照射する。また、光照射器3は、第4モータM4が駆動されることでレール6に沿って移動し、照射する光のステージ4のステージ面4aの垂線Hに対する角度(入射角度φ)を調整可能にしている。
ステージ4は移動レール部(図示せず)に摺動可能に配置されており、第1モータM1〜第3モータM3の駆動によりステージ4を図14中のx軸方向、y軸方向(図14の紙面に直交する方向)及び高さ方向となるz方向へ夫々移動可能にしている。ステージ4の移動により、試料50へ光を入射させる箇所を適宜変更し、試料50の面分析を行う。なお、本実施の形態においては、ステージ4をx軸方向及びy軸方向に動かす例を挙げて説明するがこれに限るものではない。例えばステージ4を固定し、光照射器3及び光取得器5を動かし、照射位置をx軸方向及びy軸方向に移動させるようにしても良い。また、ステージ4の試料50を載置するステージ面4aは、光の反射を防止するため黒色にされている。
光取得器5は試料50で反射した光を取得し、取得した光の偏光状態を測定する。光取得器5は、光照射器3と同様にレール6上に配置されており、PEM(Photo Elastic Modulator:光弾性変調器)5a及び検光子(Analyzer)5bを内蔵し、試料50で反射された光を、PEM5aを介して検光子5bへ導いている。光取得器5は、第5モータM5の駆動によりレール6に沿って移動可能である。光取得器5は、光照射器3の移動に連動して反射角度φと入射角度φとが同角度になるように、モータ制御機9で制御されている。なお、光取得器5に内蔵されたPEM5aは、取り込んだ光を所要周波数(例えば50kHz)で位相変調することにより直線偏光から楕円偏光を得ている。また、検光子5bは、PEM5aで位相変調された各種偏光の中から選択的に偏光を取得して測定する。
分光器7は、反射ミラー、回折格子、フォトマルチプライヤー(PMT:光電子倍増管)及び制御ユニット等を内蔵し、光取得器5から第2光ファイバケーブル15bを通じて送られた光を反射ミラーで反射して回折格子へ導いている。回折格子は第6モータM6により角度を変更し出射する光の波長を可変する。分光器7の内部へ進んだ光はPMTで増幅され、光の量が少ない場合でも、測定された信号(光)を安定化させる。また、制御ユニットは測定された波長に応じたアナログ信号を生成してデータ取込機8へ送出する処理を行う。
データ取込機8は、分光器7からの信号に基づき反射光の偏光状態(p偏光、s偏光)の振幅比Ψ及び位相差Δを波長毎に算出し、算出した結果をコンピュータ10へ送出する。なお、振幅比Ψ及び位相差Δは、p偏光の振幅反射係数Rp及びs偏光の振幅反射係数Rsに対し上述の数式(1)の関係が成立する。
また、コンピュータ10は、データ取込機8で得られた偏光状態の振幅比Ψ及び位相差Δと、試料に応じたモデルとに基づき試料50の解析を行うと共に、ステージ4の移動等に対する制御を行う。コンピュータ10は、CPU11(Central Processing Unit)、表示部14、入力部13、記憶部15、時計部11e、及びRAM12(Random Access Memory)等を含む。CPU11は、バスを介してコンピュータ10のハードウェア各部と接続されていて、それらを制御すると共に、記憶部15に格納された各種プログラムに従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。
RAM12は半導体素子等であり、CPU11の指示に従い必要な情報の書き込み及び読み出しを行う。表示部14は例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等である。入力部13はキーボード及びマウス等である。入力部13は表示部14上に積層されたタッチパネルであっても良い。時計部11eは日時情報をCPU11へ出力する。記憶部15は例えばハードディスクまたは大容量メモリで構成され、解析用のコンピュータプログラム、及びステージ4の移動制御用のコンピュータプログラム等の各種プログラムを予め記憶すると共に、表示部14へ表示するための各種メニュー画像のデータ、試料50に係る既知のデータ、複数のモデル、モデルの作成に利用される複数の分散式、作成されたモデル、各種試料に応じたリファレンスデータ、及び干渉縞に関連した比較処理に用いる基準値等を記憶する。
記憶部15は、その他、座標値ファイル151、結果データベース(以下、DBという)152及びモデルファイル153等を格納している。なお、これらのファイル及びDBは、図示しないDBサーバ等に記憶しても良い。試料50の解析に関し、コンピュータ10は第1積層体31を構成する下層膜300及び第1膜301、並びに、第2積層体32を構成する下層膜300及び第2膜302の光学特性として屈折率及び消衰係数(以下、場合により光学定数で代表する)を解析すると共に、これら各層の膜厚等も解析する。CPU11は座標値ファイル151を参照し、ステージを逐次移動し、第1積層体31及び第2積層体32の計測を行う。
図17は実施の形態2に係る座標値ファイル151のレコードレイアウトを示す説明図である。座標値ファイル151はセット30毎に第1積層体31の第1基準座標及び第2積層体32の補助基準座標(以下、第2基準座標という)を記憶している。座標値ファイル151はセットIDフィールド、第1基準座標フィールド及び第2基準座標フィールドを含む。セットIDフィールドには、セット30、30、30、・・・を特定するための固有のIDが記憶されている。第1基準座標フィールドには、第1積層体31に対して測定すべき座標値が記憶されている。なお、本実施の形態においては座標値を記憶する例を説明するが、座標値から一意に変換される距離を記憶しても良い。
第2基準座標フィールドには、第2積層体32に対して測定すべき座標値が記憶されている。第2膜302は第1膜301に対して所定位置ずれた方向に形成されることから、予め第1基準位置である第1基準座標からの移動量を入力部13から入力しておく。図18は実施の形態2に係る移動量入力画面のイメージを示す説明図である。CPU11は記憶部15から図18に示す移動量入力画面を読み出し、表示部14へ出力する。ユーザは入力部13から移動量を入力する。CPU11は入力部13からx軸方向及びy軸方向に対する移動量が入力され、決定ボタン41が操作された場合、入力された移動量を受け付ける。なお、本実施の形態においては移動量はnm単位で入力する例を示しているが、μm単位等他の単位で入力しても良い。
CPU11は記憶部15に記憶した単位長あたりの座標数を読み出し、移動座標数を算出する。CPU11は算出した移動座標数を第1基準座標に加算し、第2基準座標を算出する。図17の例では、移動座標数は(Sx,Ty)であり、セットID01の第2基準座標は(x1+Sx,y1+Ty)となる。なお、移動量はx軸方向またはy軸方向の双方、または、単独のどちらでも良い。CPU11は座標値ファイル151を参照し、ステージの移動制御を行い、第1基準座標にて第1積層体31の計測を行い、第2基準座標にて第2積層体32の計測を行う。
コンピュータ10のCPU11は、測定された振幅比Ψ及び位相差Δから、基板51及び試料50の周囲雰囲気等の複素屈折率を既知とした場合に、記憶部15に予め記憶されているモデリングプログラムを用いる。そして、ユーザに設定される試料50の項目及び試料50の材料構造に応じたモデルを作成してモデルファイル153に記憶しておく。本実施の形態においては、第1基準位置に対応する第1積層体31の第1モデル、及び、補助基準位置に対応する第2積層体32の補助モデル(以下、第2モデルという)がモデルファイル153に記憶されている。CPU11は、解析段階で記憶している第1モデルを用いて第1積層体31の下層膜300及び第1膜301の膜厚及び複素屈折率を求める。同様にCPU11は第2モデルを用いて第2積層体32の下層膜300及び第2膜302の膜厚及び複素屈折率を求める。
複素屈折率Nは、解析する膜層の屈折率n及び消衰係数kとした場合、上述の数式(2)の関係が成立する。
また、入射角度をφ、光照射器3が照射する光の波長をλとした場合、データ取込機8から出力されるエリプソメータで測定された振幅比Ψ及び位相差Δは、解析する第1膜301、第2膜302及び下層膜300の膜厚d、屈折率n及び消衰係数kに対して上述の数式(3)の関係が成立する。
コンピュータ10のCPU11は、解析する各層の膜厚、及び複数のパラメータを有する複素誘電率の波長依存性を示す分散式を用いて、記憶したモデルから理論的な演算で得られるモデルスペクトル(ΨM (λi )、ΔM (λi))(偏光状態)と、データ取込機8から出力される測定結果に係る測定スペクトル(ΨE (λi )、ΔE(λi ))(偏光状態)との差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う。なお、適用される分散式の一例は上述の数式(4)のとおりである。
数式(4)において左辺のεは複素誘電率を示し、ε∞、εs は誘電率を示し、Γ0 、ΓD 、γj は粘性力に対する比例係数(damping factor)を示し、ωoj、ωt 、ωp は固有角振動数(oscillator frequency, transverse frequency, plasma frequency)を示す。なお、ε∞は高周波における誘電率(high frequency dielectric constant)であり、εs は低周波における誘電率(static dielectric constant)であり、fj =(εSj−ε∞)である。また、複素誘電率ε(ε(λ)に相当)、及び複素屈折率N(N(λ)に相当)は、上述の数式(5)の関係が成立する。
フィッティングについて説明する。試料50を測定した場合でT個の測定データ対をExp(i=1,2,・・・,T)、T個のモデルの計算データ対をMod(i=1,2,・・・,T)としたときに測定誤差は正規分布すると考えて標準偏差をσi とした際の最小二乗法に係る平均二乗誤差χ2 は上述の数式(6)で求められる。なお、Pはパラメータの数である。平均二乗誤差χ2の値が小さいときは、測定結果と作成したモデルの一致度が大きいことを意味するため、複数のモデルを比較する場合、平均二乗誤差χ2 の値が最も小さいものがベストモデルに相当する。
上述したコンピュータ10のCPU11が行う試料解析に係る一連の処理は、記憶部15に記憶された解析用のコンピュータプログラムに規定されている。本実施の形態に係る分光エリプソメータ1は、試料50における複数の予め作成されているモデルタイプ(モデルの構造)を記憶部15のモデルファイル153に記憶している。これらのモデルタイプの構造が、記憶部15に記憶されるコンピュータプログラム(モデリングプログラム)が規定する処理に基づき読み出されて解析に用いられる。
以上述べたモデルに基づくフィッティングを、第1積層体31及び第2積層体32それぞれに対して実行する。これにより、CPU11は、第1積層体31の下層膜300及び第1膜301のそれぞれの膜厚及び分散式のパラメータを算出する。同様に、CPU11は、第2積層体32の下層膜300及び第2膜302のそれぞれの膜厚及び分散式のパラメータを算出する。CPU11は、第1積層体31の下層膜300及び第1膜301のそれぞれの分散式のパラメータ等を参照することで、下層膜300及び第1膜301のそれぞれの光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する。同様に、CPU11は、第2積層体32の下層膜300及び第2膜302のそれぞれの分散式のパラメータ等を参照することで、下層膜300及び第2膜302のそれぞれの光学定数(屈折率n、消衰係数k)を算出する。
CPU11はフィッティングにより求めた膜厚及び光学定数等を結果DB152に記憶する。図19は実施の形態2に係る結果DB152のレコードレイアウトを示す説明図である。結果DB152はセットIDフィールド、膜フィールド、測定スペクトルフィールド、膜厚フィールド、膜厚、屈折率及び消衰係数の異常フラグフィールド、屈折率フィールド、並びに、消衰係数フィールドを含む。CPU11は、結果DB152のフィールドのキーを関連づけたスキーマにおいてSQL(Structured Query Language)等のデータベースの形式に応じたアクセスインターフェースを用いて対話することにより、必要な情報の記憶、検索等の処理を実行する。
結果DB152は第1積層体31及び第2積層体32それぞれの、測定スペクトル、膜厚及び光学定数等を記憶している。なお、図19の例では、第1積層体31の記憶内容を示している。セットIDフィールドには上述したセットIDが記憶されている、膜フィールドには積層体を構成する膜の名前が記憶されている。図19の例では第1積層体31の上層である第1膜301及び下層膜300が記憶されている。測定スペクトルフィールドには、測定により得られた測定スペクトル(ΨE (λi )、ΔE (λi))がセットIDの膜毎に記憶されている。
膜厚フィールドには第1積層体31の第1モデルまたは第2積層体32の第2モデルから理論的な演算で得られるモデルスペクトル(ΨM (λi )、ΔM (λi))(以下、ΨM、ΔMと省略する)と測定スペクトル(ΨE (λi )、ΔE(λi ))(以下、ΨE、ΔEと省略する)とのフィッティングにより得られた膜厚がセットIDの膜毎に記憶されている。屈折率フィールド及び消衰係数フィールドには、フィッティングにより得られた分散式のパラメータから算出される屈折率及び消衰係数が、セットIDの膜毎に記憶されている。
異常フラグフィールドには、膜厚または光学定数が、予め記憶した基準膜厚、または、基準光学定数(基準屈折率、基準消衰係数)の所定範囲外となる場合に異常を示すフラグがセットIDの膜毎に記憶される。図19の例では異常フラグを白抜き丸印で示している。セットID01の第1膜301は膜厚及び消衰係数に異常が存在することが理解できる。基準膜厚及び所定範囲は記憶部15に予め記憶されている。基準膜厚及び所定範囲については、ユーザの設定により入力部13から適宜の値を入力し、記憶部15に記憶することが可能である。所定範囲は許容誤差を示し、例えば、基準膜厚の±数nmとするほか、基準膜厚の99%〜101%(±1%)等とすれば良い。
屈折率及び消衰係数についても同様に、基準屈折率、基準消衰係数及び所定範囲が記憶部15に予め記憶されている。なお、結果DB152のレイアウト例はあくまで一例であり、データ間の関係が維持されていれば、設計に応じて自由なデータの持たせ方をすれば良い。CPU11は全てのセット30に対し計測処理を終えた場合、表示部14に結果表示を出力する。
図20は実施の形態2に係る結果表示画面のイメージを示す説明図である。CPU11は座標値ファイル151の第1基準座標及び第2基準座標を参照し、各セット30を構成する第1積層体31及び第2積層体32を示す矩形状の枠を表示部14へ出力する。図20に示すように第1積層体31を示す枠体及び第2積層体32を示す枠体、並びに、これらセット30を特定するセットIDが表示部14に表示される。CPU11は結果DB152を参照し、下層膜300以外の膜、すなわち第1膜301及び第2膜302に係る膜厚、屈折率及び消衰係数の異常フラグを検索する。CPU11は第1膜301の膜厚に異常フラグが設定されている場合、膜厚を示す「d」を対応するセットIDの第1膜に係る枠体に表示する。
同様に、CPU11は第1膜301の屈折率に異常フラグが設定されている場合、屈折率を示す「n」を対応するセットIDの第1膜に係る枠体に表示する。さらに、CPU11は第1膜301の消衰係数に異常フラグが設定されている場合、消衰係数を示す「k」を対応するセットIDの第1膜に係る枠体に表示する。第2膜302についても同様に、対応するセットIDの第2膜に係る枠体に「d」、「n」または「k」を、異常を示す信号として出力する。
また、CPU11は異常フラグが少なくとも一つ設定されている第1積層体31または第2積層体32の座標値を、座標値ファイル151を参照し、表示部14へ出力する。図20の例では、第1基準座標(x1、y1)で示すセットID01については、第1積層体31に係る第1膜301の膜厚に異常が存在することが理解できる。また、第2基準座標(x7+Sx,y7+Ty)で示すセットID07については第2積層体32に係る第2膜302の膜厚、屈折率及び消衰係数の全てに異常が存在することが理解できる。なお、本実施の形態においては、図20に示す如く、上層である第1積層体31及び第2積層体32の異常を示す例を説明したが、同様に下層である下層膜300の異常状態を図示しても良いことはもちろんである。図20に表示の「下層」に設定されたハイパーリンクがクリックされた場合、CPU11は以下の処理を行う。CPU11は座標値ファイル151の第1基準座標を参照し、下層膜300を示す矩形状の枠を表示部14へ出力する。第1積層体31及び第2積層体32の表示と同様に、下層膜300を示す枠体、及び、セット30を特定するセットIDが表示部14に表示される。CPU11は結果DB152を参照し、下層膜300に係る膜厚、屈折率及び消衰係数の異常フラグを検索する。CPU11は下層膜300の膜厚に異常フラグが設定されている場合、膜厚を示す「d」を対応するセットIDの枠体に表示する。同様に、CPU11は下層膜300の屈折率に異常フラグが設定されている場合、屈折率を示す「n」を対応するセットIDの枠体に表示する。さらに、CPU11は下層膜300の消衰係数に異常フラグが設定されている場合、消衰係数を示す「k」を対応するセットIDの枠体に表示する。また、CPU11は異常フラグが少なくとも一つ設定されている下層膜300の座標値を、座標値ファイル151を参照し、表示部14へ出力する。また紙面の都合上、下層膜300と第1積層体31及び第2積層体32との異常を示す画面を分けて記載したが、同一画面上に表示しても良いことはもちろんである。
以上のハードウェア構成において各ソフトウェア処理の手順を、フローチャートを用いて説明する。図21は実施の形態2に係る座標値の記憶処理手順を示すフローチャートである。CPU11は各セット30の第1積層体31の第1基準位置を受け付ける(ステップS81)。この第1基準位置については、ユーザが入力部13から適宜数値を入力等すればよい。この他、CPU11は、記録媒体(図示せず)から読み取ることにより取得した第1基準位置、または、通信網を介してダウンロードすることにより取得した第1基準位置を、受け付けるようにしても良い。CPU11は記憶部15に記憶した単位長あたりの座標値を参照し、受け付けた第1基準位置に対応する各セット30の第1基準座標を算出する(ステップS82)。
CPU11はセットIDに対応づけて算出した第1基準座標を座標値ファイル151に記憶する(ステップS83)。CPU11は記憶部15に記憶した移動量入力画面を読み出し、表示部14へ出力する。CPU11は入力部13から入力された移動量を受け付ける(ステップS84)。CPU11は単位長あたりの座標値、受け付けた移動量及び第1基準座標に基づき、各セットの第2基準座標を算出する(ステップS85)。CPU11はセットIDに対応づけて第2基準座標を座標値ファイル151に記憶する(ステップS86)。
図22及び図23は実施の形態2に係る測定処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は変数であるqに1を代入する(ステップS91)。CPU11はセットIDがqの第1基準座標を座標値ファイル151から読み出す(ステップS92)。変数qが1の場合、セットID「01」の第1基準座標が読み出される。CPU11はモータ制御機9を介して第1モータM1及び第2モータM2を制御し、ステージを第1基準座標まで移動させる(ステップS93)。これにより、第1積層体31の計測準備が整う。分光エリプソメータ1のCPU11は、光照射器3及び光取得器5を制御し、第1積層体31へ向けて光を照射し、測定スペクトルΨE1、ΔE1を測定する(ステップS94)。CPU11はデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨE1、ΔE1を受け付け、セットIDに対応づけて結果DB152に記憶する(ステップS95)。
CPU11はフィッティングを行うべく、モデリングプログラムへ測定スペクトルΨE1、ΔE1を出力する(ステップS96)。なお、フィッティング処理については後述する。CPU11はセットIDがqの第2基準座標を座標値ファイル151から読み出す(ステップS97)。CPU11はモータ制御機9を介して第1モータM1及び第2モータM2を制御し、ステージを第2基準座標まで移動させる(ステップS98)。これにより、第2積層体32の計測準備が整う。分光エリプソメータ1のCPU11は、光照射器3及び光取得器5を制御し、第2積層体32へ向けて光を照射し、測定スペクトルΨE2、ΔE2を測定する(ステップS99)。
CPU11はデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨE2、ΔE2を受け付け、セットIDに対応づけて結果DB152に記憶する(ステップS101)。なお、測定後すぐに解析を行うのではなく、後日解析を行っても良い。CPU11はフィッティングを行うべく、モデリングプログラムへ測定スペクトルΨE2、ΔE2を出力する(ステップS102)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したか否かを判断する(ステップS103)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了していないと判断した場合(ステップS103でNO)、変数であるqをインクリメントする(ステップS104)。CPU11は処理をステップS92へ戻し、次のセット30の測定スペクトルを測定する。一方、CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したと判断した場合(ステップS103でYES)、一連の処理を終了する。
図24乃至図26は実施の形態2に係る膜厚及び光学定数の算出手順を示すフローチャートである。CPU11はモデルファイル153から第1モデルを読み出す(ステップS111)。CPU11は、読み出した第1モデルに対応して、予め記憶されていた初期値となる複数の膜厚及び複数の分散式のパラメータを記憶部15から読み出す(ステップS112)。CPU11は読み出した第1モデル、初期膜厚及びパラメータに基づき、第1モデルのモデルスペクトルΨM1、ΔM1を算出し、結果を記憶部15に記憶する(ステップS113)。
CPU11はモデルファイル153から第2モデルを読み出す(ステップS114)。CPU11は、読み出した第2モデルに対応して、予め記憶されていた初期値となる複数の膜厚及び複数の分散式のパラメータを記憶部15から読み出す(ステップS115)。CPU11は読み出した第2モデル、初期膜厚及びパラメータに基づき、第2モデルのモデルスペクトルΨM2、ΔM2を算出し、結果を記憶部15に記憶する(ステップS116)。
CPU11は変数であるqに1を代入する(ステップS117)。CPU11はセットIDがqの測定スペクトルΨE1、ΔE1を結果DB152から読み出す(ステップS118)。CPU11は、この読み出した測定スペクトルΨE1、ΔE1と、第1モデルのモデルスペクトルΨM1、ΔM1とに基づいて、フィッティングを行う(ステップS119)。具体的には、CPU11は、フィッティングのため読み出した、測定スペクトルΨE1、ΔE1と第1モデルのモデルスペクトルΨM1、ΔM1とを比較し測定スペクトルとモデルスペクトルとの差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う。CPU11はこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。平均二乗誤差χ2 は上述した数式(2)により算出することができる。
フィッティングの結果としてCPU11は算出した平均二乗誤差が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS121)。なお、この所定値は記憶部15に記憶されている。CPU11は、算出した平均二乗誤差が所定値以下でないと判断した場合(ステップS121でNO)、第1モデルへ初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再び第1モデルのモデルスペクトルΨM1、ΔM1を算出する(ステップS122)。なお、この変更はCPU11による変更であっても良いし、オペレータによる変更であっても良い。その後、再びステップS119へ移行し、同様の処理を繰り返す。
CPU11は、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であると判断した場合(ステップS121でYES)、そのときのフィッティングで得られた膜厚及び分散式のパラメータを採用すべき値として決定する(ステップS123)。これにより、第1積層体31の下層膜300及び第1膜301の膜厚が算出される。なお、ステップS121の処理においては、所定の値以下となるまで、処理を行うようにしているがこれに限るものではない。所定時間内に各モデルへ設定すべき初期膜厚及び分散式のパラメータを逐次変更し、所定時間内で最小の平均二乗誤差をとる場合の膜厚及び分散式のパラメータを結果として採用するようにしても良い。
CPU11は、下層膜300及び第1膜301の分散式のパラメータ等を参照することで、第1積層体31の下層膜300及び第1膜301の屈折率、及び、消衰係数を算出する(ステップS124)。CPU11は、セットID及び第1積層体31に対応づけて、下層膜300及び第1膜301の膜厚、屈折率、及び消衰係数を結果DB152に記憶する(ステップS125)。
CPU11はセットIDがqの測定スペクトルΨE2、ΔE2を結果DB152から読み出す(ステップS126)。CPU11は、この読み出した測定スペクトルΨE2、ΔE2と、第2モデルのモデルスペクトルΨM2、ΔM2とに基づいて、フィッティングを行う(ステップS127)。具体的には、CPU11は、フィッティングのため読み出した、測定スペクトルΨE2、ΔE2と第2モデルのモデルスペクトルΨM2、ΔM2とを比較し測定スペクトルとモデルスペクトルとの差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う。CPU11はこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。平均二乗誤差χ2 は上述した数式(2)により算出することができる。
フィッティングの結果としてCPU11は算出した平均二乗誤差が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS128)。CPU11は、算出した平均二乗誤差が所定値以下でないと判断した場合(ステップS128でNO)、第2モデルへ初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再び第2モデルのモデルスペクトルΨM2、ΔM2を算出する(ステップS129)。その後、再びステップS127へ移行し、同様の処理を繰り返す。
CPU11は、算出した平均二乗誤差χ2 が所定値以下であると判断した場合(ステップS128でYES)、そのときのフィッティングで得られた膜厚及び分散式のパラメータを採用すべき値として決定する(ステップS131)。これにより、第2積層体32の下層膜300及び第2膜302の膜厚が算出される。CPU11は、下層膜300及び第2膜302の分散式のパラメータ等を参照することで、第2積層体32に係る下層膜300及び第2膜302の屈折率、及び、消衰係数を算出する(ステップS132)。CPU11は、セットID及び第2積層体に対応づけて、下層膜300及び第2膜302の膜厚、屈折率、及び消衰係数を結果DB152に記憶する(ステップS133)。
CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したか否かを判断する(ステップS134)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了していないと判断した場合(ステップS134でNO)、変数であるqをインクリメントする(ステップS135)。CPU11は処理をステップS118へ戻し、次のセット30の膜厚及び光学定数の算出処理を行う。一方、CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したと判断した場合(ステップS134でYES)、一連の処理を終了する。これにより、最初に座標値ファイル151の生成及びこれらに対応するモデルを用意しておくだけで、計測対象となるセット30の第1積層体31及び第2積層体32の膜厚及び光学定数を取得することが可能となる。
図27乃至図29は実施の形態2に係る異常検出処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は変数であるqに初期値1を代入する(ステップS141)。CPU11はセットIDがqの第1基準座標及び第2基準座標を座標値ファイル151から読み出す(ステップS142)。CPU11は図20に示した矩形状の枠体を2つ、第1基準座標及び第2基準座標を参照して表示部14に出力する。具体的には、CPU11は第1基準座標を参照して第1積層体31に対応する第1枠体を出力し、第2基準座標を参照して第2積層体32に対応する第2枠体を出力し、さらにその近傍にセットIDを出力する(ステップS143)。
CPU11は結果DB152に記憶したセットIDqに対応する第1膜301の膜厚を読み出す。CPU11は第1膜301の膜厚は、記憶部15に予め記憶した基準膜厚の所定範囲外となるか否かを判断する(ステップS144)。CPU11は所定範囲外と判断した場合(ステップS144でYES)、当該セットIDqの第1膜301に対応づけて膜厚異常フラグを結果DB152に記憶する(ステップS145)。CPU11は第1枠体に膜厚異常を示す情報及び座標値ファイル151に記憶されたセットIDに対応する第1基準座標を出力する(ステップS146)。当該処理の後、及び、CPU11が所定範囲外と判断できない場合(ステップS144でNO)、ステップS147の処理へ移行する。
CPU11は結果DB152に記憶したセットIDqに対応する第1膜301の屈折率を読み出す。CPU11は第1膜301の屈折率は、記憶部15に予め記憶した基準屈折率の所定範囲外となるか否かを判断する(ステップS147)。CPU11は所定範囲外と判断した場合(ステップS147でYES)、当該セットIDqの第1膜301に対応づけて屈折率異常フラグを結果DB152に記憶する(ステップS148)。CPU11は第1枠体に屈折率異常を示す情報及び座標値ファイル151に記憶されたセットIDに対応する第1基準座標を出力する(ステップS149)。なお、第1基準座標が既にステップS146にて出力されている場合は、再度出力しなくても良い。当該処理の後、及び、CPU11が所定範囲外と判断できない場合(ステップS147でNO)、ステップS151の処理へ移行する。
CPU11は結果DB152に記憶したセットIDqに対応する第1膜301の消衰係数を読み出す。CPU11は第1膜301の消衰係数は、記憶部15に予め記憶した基準消衰係数の所定範囲外となるか否かを判断する(ステップS151)。CPU11は所定範囲外と判断した場合(ステップS151でYES)、当該セットIDqの第1膜301に対応づけて消衰係数異常フラグを結果DB152に記憶する(ステップS152)。CPU11は第1枠体に消衰係数異常を示す情報及び座標値ファイル151に記憶されたセットIDに対応する第1基準座標を出力する(ステップS153)。当該処理の後、及び、CPU11が所定範囲外と判断できない場合(ステップS151でNO)、ステップS154の処理へ移行する。
CPU11は結果DB152に記憶したセットIDqに対応する第2膜302の膜厚を読み出す。CPU11は第2膜302の膜厚は、記憶部15に予め記憶した基準膜厚の所定範囲外となるか否かを判断する(ステップS154)。CPU11は所定範囲外と判断した場合(ステップS154でYES)、当該セットIDqの第2膜302に対応づけて膜厚異常フラグを結果DB152に記憶する(ステップS155)。CPU11は第2枠体に膜厚異常を示す情報及び座標値ファイル151に記憶されたセットIDに対応する第2基準座標を出力する(ステップS156)。当該処理の後、及び、CPU11が所定範囲外と判断できない場合(ステップS154でNO)、ステップS157の処理へ移行する。
CPU11は結果DB152に記憶したセットIDqに対応する第2膜302の屈折率を読み出す。CPU11は第2膜302の屈折率は、記憶部15に予め記憶した基準屈折率の所定範囲外となるか否かを判断する(ステップS157)。CPU11は所定範囲外と判断した場合(ステップS157でYES)、当該セットIDqの第2膜302に対応づけて屈折率異常フラグを結果DB152に記憶する(ステップS158)。CPU11は第2枠体に屈折率異常を示す情報及び座標値ファイル151に記憶されたセットIDに対応する第2基準座標を出力する(ステップS159)。当該処理の後、及び、CPU11が所定範囲外と判断できない場合(ステップS157でNO)、ステップS161の処理へ移行する。
CPU11は結果DB152に記憶したセットIDqに対応する第2膜302の消衰係数を読み出す。CPU11は第2膜302の消衰係数は、記憶部15に予め記憶した基準消衰係数の所定範囲外となるか否かを判断する(ステップS161)。CPU11は所定範囲外と判断した場合(ステップS161でYES)、当該セットIDqの第2膜302に対応づけて消衰係数異常フラグを結果DB152に記憶する(ステップS162)。CPU11は第2枠体に消衰係数異常を示す情報及び座標値ファイル151に記憶されたセットIDに対応する第2基準座標を出力する(ステップS163)。当該処理の後、及び、CPU11が所定範囲外と判断できない場合(ステップS161でNO)、ステップS164の処理へ移行する。
CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したか否かを判断する(ステップS164)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了していないと判断した場合(ステップS164でNO)、変数であるqをインクリメントする(ステップS165)。CPU11は処理をステップS142へ戻し、次のセット30の異常検出処理を行う。一方、CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したと判断した場合(ステップS164でYES)、一連の処理を終了する。これにより、測定対象の膜厚及び光学定数の測定にあわせて、異常箇所が容易に視認でき、検査効率及び生産効率を向上させることが可能となる。
本実施の形態2は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態3
実施の形態3は共通のパラメータを利用する形態に関する。図30は実施の形態3に係る分光エリプソメータ1のハードウェア構成を示すブロック図である。実施の形態2の構成に加えて、記憶部15には関連ファイル154が記憶されている。関連ファイル154は第1積層体31及び第2積層体32を構成する各層の膜厚または光学定数が共通するか否かに関する関連情報を記憶している。ユーザは入力部13から関連情報入力画面を参照し、関連情報を入力する。
図31は実施の形態3に係る関連情報入力画面のイメージを示す説明図である。CPU11はモデルファイル153に記憶した第1モデル及び第2モデルを参照し、関連情報入力画面を生成して表示部14へ出力する。第1モデルは第1積層体31に対応し、下層膜(以下本実施の形態においては共通膜という)300及びこれに積層される第1膜301により構成される。第2モデルは第2積層体32に対応し、共通膜300及びこれに積層される第2膜302により構成される。本実施の形態においては、共通膜300の第1モデル及び第2モデルのパラメータである膜厚及び光学定数が共通である例を挙げて説明する。
CPU11は、各層に対応づけて関連情報を入力するための下層用のチェックボックス300c及び上層用のチェックボックス301cを表示する。ユーザは入力部13から、層及び共通するパラメータをクリックする。なお、本実施の形態においては膜厚及び光学定数の双方を共通のパラメータとしたが、いずれか一方としても良い。入力部13から共通膜300の初期値となる共通の膜厚、及び、光学定数に対応する分散式のパラメータが入力された場合、CPU11は、これらの情報を記憶部15に記憶する。図31の例では、共通膜300に対応するチェックボックス300cの膜厚及び光学定数が共通するパラメータであることが理解できる。CPU11は決定ボタン41の入力を受け付けた場合、入力部13から受け付けた関連情報、すなわち層及び共通するパラメータを関連ファイル154に記憶する。CPU11は、フィッティングに際しては、これらの関連情報を考慮した上で、すなわち、共通膜300の膜厚及び光学定数が第1積層体31及び第2積層体32において共通することを条件としてフィッティングを行う。
図32乃至図34は実施の形態3に係るフィッティング処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は関連ファイル154に記憶した関連情報を読み出す(ステップS180)。CPU11はモデルファイル153から第1モデルを読み出す(ステップS181)。CPU11は、読み出した第1モデルに対応して、予め記憶した第1モデルに対する共通膜300の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータ、並びに、第1モデルに対する第1膜301の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータを記憶部15から読み出す(ステップS182)。CPU11は読み出した第1モデル、初期膜厚及びパラメータに基づき、第1モデルのモデルスペクトルΨM1、ΔM1を算出し、結果を記憶部15に記憶する(ステップS183)。
CPU11はモデルファイル153から第2モデルを読み出す(ステップS184)。CPU11は、読み出した第2モデルに対応して、予め記憶した第2モデルに対する共通膜300の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータ、並びに、第2モデルに対する第2膜302の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータを記憶部15から読み出す(ステップS185)。CPU11は読み出した第2モデル、初期膜厚及びパラメータに基づき、第2モデルのモデルスペクトルΨM2、ΔM2を算出し、結果を記憶部15に記憶する(ステップS186)。
CPU11は変数であるqに1を代入する(ステップS187)。CPU11はセットIDがqの第1積層体31に係る測定スペクトルΨE1、ΔE1を結果DB152から読み出す(ステップS188)。同様に、CPU11は、セットIDがqの第2積層体32に係る測定スペクトルΨE2、ΔE2を結果DB152から読み出す(ステップS189)。
CPU11は、フィッティングのため読み出した、第1積層体31に係る測定スペクトルΨE1、ΔE1、第1モデルのモデルスペクトルΨM1、ΔM1、第2積層体32に係る測定スペクトルΨE2、ΔE2、及び、第2モデルのモデルスペクトルΨM2、ΔM2を比較し、共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータが同一であることを条件に測定スペクトルとモデルスペクトルとの差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う(ステップS191)。CPU11はこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。ステップS191における平均二乗誤差χ2 は式(8)により算出することができる。
なお、第1積層体31を測定した場合におけるT1 個の測定データ対をExp(i=1,2,・・・,T1 )、T1 個のモデルの計算データ対をMod(i=1,2,・・・,T1 )とする。第2積層体32を測定した場合におけるT2 個の測定データ対をExp(i=1,2,・・・,T2 )、T2 個のモデルの計算データ対をMod(i=1,2,・・・,T2 )としている。また、P1 は第1積層体31を測定する際のパラメータの数であり、P2 は第2積層体32を測定する際のパラメータの数である。
フィッティングの結果としてCPU11は算出した平均二乗誤差が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS192)。なお、この所定値は記憶部15に記憶されている。
CPU11は、算出した平均二乗誤差が所定値以下でないと判断した場合(ステップS192でNO)、ステップS193へ移行する。CPU11は、共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータが同一であることを条件に、モデルの初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再びモデルスペクトルΨM1、ΔM1及びモデルスペクトルΨM2、ΔM2を算出する(ステップS193)。なお、この変更はCPU11による変更であっても良いし、オペレータによる変更であっても良い。その後、再びステップS191へ移行し、同様の処理を繰り返す。
CPU11は、算出した平均二乗誤差が所定値以下であると判断した場合(ステップS192でYES)、第1積層体31各層の膜厚及び分散式のパラメータを決定し、また第2積層体32各層の膜厚及び分散式のパラメータを決定する(ステップS194)。なお、共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータが同一であることを条件にしていることから、共通膜300の膜厚は第1積層体31及び第2積層体32間で同一となる。また、膜厚及び分散式のパラメータから求まる共通膜300の屈折率及び消衰係数も、膜厚と同様に、第1積層体31及び第2積層体32間で同一となる。CPU11は、共通膜300及び第1膜301の分散式のパラメータ等を参照することで、第1積層体31の共通膜300及び第1膜301の屈折率、及び、消衰係数を算出し、また、共通膜300及び第2膜302の分散式のパラメータ等を参照することで、第2積層体32の共通膜300及び第2膜302の屈折率、及び、消衰係数を算出する(ステップS195)。
CPU11は、セットID及び第1積層体31に対応づけて、共通膜300及び第1膜301の膜厚、屈折率、及び消衰係数を結果DB152に記憶する(ステップS196)。同様に、CPU11は、セットID及び第2積層体32に対応づけて、共通膜300及び第2膜302の膜厚、屈折率、及び消衰係数を結果DB152に記憶する(ステップS197)。
CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したか否かを判断する(ステップS198)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了していないと判断した場合(ステップS198でNO)、変数であるqをインクリメントする(ステップS199)。CPU11は処理をステップS188へ戻し、次のセット30のフィッティングを行う。一方、CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したと判断した場合(ステップS198でYES)、一連の処理を終了する。これにより、パラメータの相関が弱まり適切な解を算出することが可能となる。なお、実施の形態2の図32乃至図34で述べた膜厚及び光学定数の異常検出処理がこの後同様に行われるが、重複するため説明を省略する。
本実施の形態3は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1及び2と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態4
実施の形態4はさらに多くの積層体が形成される形態に関する。実施の形態2及び3では第1積層体31及び第2積層体32の例を挙げたが3つ以上の積層体を設けても良いことはもちろんである。以下では第3積層体33をさらに設ける例を説明する。図35は実施の形態4に係る試料50の断面を示す模式的断面図である。実施の形態2及び3の構成に加えて、第3積層体33が第2積層体32に隣接して形成されている。共通膜300上には、第2膜32に隣接させて第3膜303が形成されている。第3膜303は第1膜31及び第2膜32とは膜厚または光学定数が相違する異なる物質であり、例えば、シリコン窒化膜(Si3 N4 )等が用いられる。第3積層体33は共通膜300及び第3膜303により構成される。以上述べた第1積層体31、第2積層体32及び第3積層体33の組み合わせからなるセット30が、基板51上に分散配置されている。
図36は実施の形態4に係る移動量入力画面のイメージを示す説明図である。CPU11は記憶部15から図36に示す移動量入力画面を読み出し、表示部14へ出力する。ユーザは入力部13から第2積層体32の移動量として第1積層体31に対する移動量を入力する。また、ユーザは入力部13から第3積層体33の移動量として第2積層体32に対する移動量を入力する。なお、第3積層体33の移動量として第1積層体31に対する移動量を入力させるようにしても良い。CPU11は入力部13からx軸方向及びy軸方向に対する移動量が入力され、決定ボタン41が操作された場合、入力された第2積層体32及び第3積層体33の移動量を受け付ける。なお、本実施の形態においては移動量はnm単位で入力する例を示しているが、μm単位等他の単位で入力しても良い。
CPU11は記憶部15に記憶した単位長あたりの座標数を読み出し、座標数に移動量(長さ)を乗じて、第2積層体32及び第3積層体33のそれぞれの移動座標数を算出する。CPU11は算出した第2積層体32の移動座標数を第1基準座標に加算し、第2基準座標を算出する。また、CPU11は第2基準座標に、第3積層体33の移動座標数を加算し、第3基準座標を算出する。CPU11は算出した第2基準座標及び第3基準座標を座標値DB151に記憶する。図37は実施の形態4に係る座標値ファイル151のレコードレイアウトを示す説明図である。さらに第3積層体の第3基準座標フィールドが設けられている。
図37の例では、第3積層体33の第2積層体32に対する移動座標数は(Ux,Vy)であり、セットID01の第3基準座標は(x1+Sx+Ux,y1+Ty+Vy)となる。CPU11は座標値ファイル151を参照し、ステージの移動制御を行い、第1基準座標にて第1積層体31の計測を行い、第2基準座標にて第2積層体32に計測を行い、さらに第3基準座標にて第3積層体33の計測を行う。
図38は実施の形態4に係る関連情報入力画面のイメージを示す説明図である。実施の形態4においては、第3積層体33に対するモデルがモデルファイル153に予め記憶されている。CPU11はモデルファイル153に記憶した第1モデル乃至第3モデルを参照し、関連情報入力画面を生成して表示部14へ出力する。第1モデルは第1積層体31に対応し、共通膜300及びこれに積層される第1膜301により構成される。第2モデルは第2積層体32に対応し、共通膜300及びこれに積層される第2膜302により構成される。第3モデルは第3積層体33に対応し、共通膜300及びこれに積層される第3膜303により構成される。本実施の形態においては、共通膜300の第1モデル乃至第3モデルのパラメータである膜厚及び光学定数が共通である例を挙げて説明する。
CPU11は、各層に対応づけて関連情報を入力するための下層用のチェックボックス300c及び上層用のチェックボックス301cを表示する。ユーザは入力部13から、層及び共通するパラメータをクリックする。なお、本実施の形態においては膜厚及び光学定数の双方を共通のパラメータとしたが、いずれか一方としても良い。入力部13から共通膜300の初期値となる共通の膜厚、及び、光学定数に対応する分散式のパラメータが入力された場合、CPU11は、これらの情報を記憶部15に記憶する。図38の例では、共通膜300に対応するチェックボックス300cの膜厚及び光学定数が共通するパラメータであることが理解できる。CPU11は決定ボタン41の入力を受け付けた場合、入力部13から受け付けた関連情報、すなわち層及び共通するパラメータを関連ファイル154に記憶する。CPU11は、フィッティングに際しては、これらの関連情報を考慮した上で、すなわち、共通膜300の膜厚及び光学定数が第1積層体31乃至第3積層体33において共通することを条件としてフィッティングを行う。
図39及び図40は実施の形態4に係る測定処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は変数であるqに1を代入する(ステップS261)。CPU11はセットIDがqの第1基準座標を座標値ファイル151から読み出す(ステップS262)。変数qが1の場合セットID「01」の第1基準座標が読み出される。CPU11はモータ制御機9を介して第1モータM1及び第2モータM2を制御し、ステージを第1基準座標まで移動させる(ステップS263)。これにより、第1積層体31の計測準備が整う。分光エリプソメータ1のCPU11は、光照射器3及び光取得器5を制御し、第1積層体31へ向けて光を照射し、測定スペクトルΨE1、ΔE1を測定する(ステップS264)。CPU11はデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨE1、ΔE1を受け付け、セットIDに対応づけて結果DB152に記憶する(ステップS265)。
CPU11はセットIDがqの第2基準座標を座標値ファイル151から読み出す(ステップS266)。CPU11はモータ制御機9を介して第1モータM1及び第2モータM2を制御し、ステージを第2基準座標まで移動させる(ステップS267)。これにより、第2積層体32の計測準備が整う。分光エリプソメータ1のCPU11は、光照射器3及び光取得器5を制御し、第2積層体32へ向けて光を照射し、測定スペクトルΨE2、ΔE2を測定する(ステップS268)。
CPU11はデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨE2、ΔE2を受け付け、セットIDに対応づけて結果DB152に記憶する(ステップS269)。CPU11はセットIDがqの第3基準座標を座標値ファイル151から読み出す(ステップS271)。CPU11はモータ制御機9を介して第1モータM1及び第2モータM2を制御し、ステージを第3基準座標まで移動させる(ステップS272)。これにより、第3積層体33の計測準備が整う。分光エリプソメータ1のCPU11は、光照射器3及び光取得器5を制御し、第3積層体33へ向けて光を照射し、測定スペクトルΨE3、ΔE3を測定する(ステップS273)。
CPU11はデータ取込機8を介して出力される測定スペクトルΨE3、ΔE3を受け付け、セットIDに対応づけて結果DB152に記憶する(ステップS274)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したか否かを判断する(ステップS275)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了していないと判断した場合(ステップS275でNO)、変数であるqをインクリメントする(ステップS276)。CPU11は処理をステップS262へ戻し、次のセット30の測定スペクトルを測定する。一方、CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したと判断した場合(ステップS275でYES)、一連の処理を終了する。
図41乃至図43は実施の形態4に係るフィッティング処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は関連ファイル154に記憶した関連情報を読み出す(ステップS281)。CPU11はモデルファイル153から第1モデルを読み出す(ステップS282)。CPU11は、読み出した第1モデルに対応して、予め記憶した第1モデルに対する共通膜300の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータ、並びに、第1モデルに対する第1膜301の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータを記憶部15から読み出す(ステップS283)。CPU11は読み出した第1モデル、初期膜厚及びパラメータに基づき、第1モデルのモデルスペクトルΨM1、ΔM1を算出し、結果を記憶部15に記憶する(ステップS284)。
CPU11はモデルファイル153から第2モデルを読み出す(ステップS285)。CPU11は、読み出した第2モデルに対応して、予め記憶した第2モデルに対する共通膜300の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータ、並びに、第2モデルに対する第2膜302の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータを記憶部15から読み出す(ステップS286)。CPU11は読み出した第2モデル、初期膜厚及びパラメータに基づき、第2モデルのモデルスペクトルΨM2、ΔM2を算出し、結果を記憶部15に記憶する(ステップS287)。
CPU11はモデルファイル153から第3モデルを読み出す(ステップS288)。CPU11は、読み出した第3モデルに対応して、予め記憶した第3モデルに対する共通膜300の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータ、並びに、第3モデルに対する第3膜303の初期値となる膜厚及び分散式のパラメータを記憶部15から読み出す(ステップS289)。CPU11は読み出した第3モデル、初期膜厚及びパラメータに基づき、第3モデルのモデルスペクトルΨM3、ΔM3を算出し、結果を記憶部15に記憶する(ステップS291)。
CPU11は変数であるqに1を代入する(ステップS292)。CPU11はセットIDがqの第1積層体31に係る測定スペクトルΨE1、ΔE1、第2積層体32に係る測定スペクトルΨE2、ΔE2及び第3積層体33に係る測定スペクトルΨE3、ΔE3を結果DB152から読み出す(ステップS293)。
CPU11は、フィッティングのため読み出した、第1積層体31に係る測定スペクトルΨE1、ΔE1、第1モデルのモデルスペクトルΨM1、ΔM1、第2積層体32に係る測定スペクトルΨE2、ΔE2、第2モデルのモデルスペクトルΨM2、ΔM2、第3積層体33に係る測定スペクトルΨE3、ΔE3、及び、第3モデルのモデルスペクトルΨM3、ΔM3、を比較し、共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータが同一であることを条件に測定スペクトルとモデルスペクトルとの差が最小になるように膜厚、分散式のパラメータ等を変化させる処理(フィッティング)を行う(ステップS294)。CPU11はこのフィッティング結果として最小二乗法を用い、平均二乗誤差χ2 を得る。ステップS294における平均二乗誤差χ2 は式(7)により算出することができる。
フィッティングの結果としてCPU11は算出した平均二乗誤差が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS295)。なお、この所定値は記憶部15に記憶されている。CPU11は、算出した平均二乗誤差が所定値以下でないと判断した場合(ステップS295でNO)、ステップS296へ移行する。CPU11は、共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータが同一であることを条件に、モデルの初期値として設定した膜厚及び分散式のパラメータを適宜変更して、再びモデルスペクトルΨM1、ΔM1、モデルスペクトルΨM2、ΔM2、及び、モデルスペクトルΨM3、ΔM3を算出する(ステップS296)。なお、この変更はCPU11による変更であっても良いし、オペレータによる変更であっても良い。その後、再びステップS294へ移行し、同様の処理を繰り返す。
CPU11は、算出した平均二乗誤差が所定値以下であると判断した場合(ステップS295でYES)、第1積層体31各層の膜厚及び分散式のパラメータ、第2積層体32各層の膜厚及び分散式のパラメータ、並びに、第3積層体33各層の膜厚及び分散式のパラメータを決定する(ステップS297)。なお、共通膜300の膜厚及び分散式のパラメータが同一であることを条件にしていることから、共通膜300の膜厚は第1積層体31乃至第3積層体33間で同一となる。また、分散式のパラメータから求まる共通膜300の屈折率及び消衰係数も、膜厚と同様に、第1積層体31乃至第3積層体33間で同一となる。CPU11は、共通膜300及び第1膜301の分散式のパラメータ等を参照することで、第1積層体31の共通膜300及び第1膜301の屈折率、及び、消衰係数を算出し、共通膜300及び第2膜302の分散式のパラメータ等を参照することで、第2積層体32の共通膜300及び第2膜302の屈折率、及び、消衰係数を算出し、共通膜300及び第3膜303の分散式のパラメータ等を参照することで、第3積層体33の共通膜300及び第3膜303の屈折率、及び、消衰係数を算出する(ステップS298)。
CPU11は、セットID及び第1積層体31に対応づけて、共通膜300及び第1膜301の膜厚、屈折率、及び消衰係数を結果DB152に記憶する(ステップS299)。同様に、CPU11は、セットID及び第2積層体32に対応づけて、共通膜300及び第2膜302の膜厚、屈折率、及び消衰係数を結果DB152に記憶する(ステップS301)。CPU11は、セットID及び第3積層体33に対応づけて、共通膜300及び第3膜303の膜厚、屈折率、及び消衰係数を結果DB152に記憶する(ステップS302)。
CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したか否かを判断する(ステップS303)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了していないと判断した場合(ステップS303でNO)、変数であるqをインクリメントする(ステップS304)。CPU11は処理をステップS293へ戻し、次のセット30のフィッティングを行う。一方、CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したと判断した場合(ステップS303でYES)、一連の処理を終了する。これにより、セット30内の積層体の数が増加した場合でも、予め位置及びモデルを対応づけておくことで試料50の測定対象となる複数のセット30を、手間をかけることなく測定することが可能となる。またセット30内で横断的に少なくとも一層のパラメータを共通化することで、より精度良く膜厚または光学定数を算出することが可能となる。
本実施の形態4は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至3と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態5
図44は実施の形態5に係る分光エリプソメータ1の構成を示すブロック図である。実施の形態5に係る分光エリプソメータ1のコンピュータ10を動作させるためのコンピュータプログラムは、本実施の形態5のように、CD−ROM、メモリーカード等の可搬型記録媒体1Aで提供することも可能である。さらに、コンピュータプログラムを、LAN、またはインターネット等の図示しない通信網を介して図示しないサーバコンピュータからダウンロードすることも可能である。以下に、その内容を説明する。
図44に示すコンピュータ10の図示しない記録媒体読み取り装置に、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記録された可搬型記録媒体1Aを、挿入して記憶部15のプログラム内にこのプログラムをインストールする。または、かかるプログラムを、図示しない通信部を介して外部の図示しないサーバコンピュータからダウンロードし、記憶部15にインストールするようにしても良い。かかるプログラムはRAM12にロードして実行される。これにより、上述のようなコンピュータ10として機能する。
本実施の形態5は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至4と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態6
実施の形態6はセット30の他の形態に関する。図45は試料50の他の形態に係る平面を示す平面図である。実施の形態2においては、第2積層体32が第1積層体31のx軸方向に平行に設けられる例を説明したがこれに限るものではない。図45(a)は第2積層体32が第1積層体31のy軸方向に平行に設けられる例を示す。y軸方向にて連結される第1積層体31及び第2積層体32はセット30を形成する。このセット30が基板51のx軸及びy軸方向に分散配置される。図45(b)は第2積層体32のx座標最小値及びy座標最小値の点が、第1積層体31のx座標最大値及びy座標最大値の点に隣接する例を示す。第1積層体31のx座標最大値及びy座標最大値の点と、第2積層体32のx座標最小値及びy座標最小値の点とが隣接することで連結されるセット30は、基板51のx軸及びy軸方向に分散配置される。
本実施の形態6は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至5と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
実施の形態7
実施の形態7は、実施の形態2で述べた下層膜300、並びに、実施の形態1、3及び4で述べた共通膜300の異常検出処理に関する。実施の形態1乃至4で述べた第1積層体31乃至第3積層体33の異常検出処理に加え、共通膜300(下層膜300を含む)の異常検出処理を行っても良い。
図46及び図47は共通膜300の異常検出処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は変数であるqに初期値1を代入する(ステップS331)。CPU11はセットIDがqの第1基準座標を座標値ファイル151から読み出す(ステップS332)。CPU11は矩形状の枠体を1つ、第1基準座標を参照して表示部14に出力する。具体的には、CPU11は第1基準座標を参照して共通膜300に対応する第1枠体及び第2枠体と略同一面積を有する枠体を出力し、さらにその近傍にセットIDを出力する(ステップS333)。
CPU11は結果DB152に記憶したセットIDqに対応する共通膜300の膜厚を読み出す。CPU11は共通膜300の膜厚は、記憶部15に予め記憶した基準膜厚の所定範囲外となるか否かを判断する(ステップS334)。CPU11は所定範囲外と判断した場合(ステップS334でYES)、当該セットIDqの共通膜300に対応づけて膜厚異常フラグを結果DB152に記憶する(ステップS335)。CPU11は枠体に膜厚異常を示す情報及び座標値ファイル151に記憶されたセットIDに対応する第1基準座標を出力する(ステップS336)。当該処理の後、及び、CPU11が所定範囲外と判断できない場合(ステップS334でNO)、ステップS337の処理へ移行する。
CPU11は結果DB152に記憶したセットIDqに対応する共通膜300の屈折率を読み出す。CPU11は共通膜300の屈折率は、記憶部15に予め記憶した基準屈折率の所定範囲外となるか否かを判断する(ステップS337)。CPU11は所定範囲外と判断した場合(ステップS337でYES)、当該セットIDqの共通膜300に対応づけて屈折率異常フラグを結果DB152に記憶する(ステップS338)。CPU11は枠体に屈折率異常を示す情報及び座標値ファイル151に記憶されたセットIDに対応する第1基準座標を出力する(ステップS339)。当該処理の後、及び、CPU11が所定範囲外と判断できない場合(ステップS337でNO)、ステップS341の処理へ移行する。
CPU11は結果DB152に記憶したセットIDqに対応する共通膜300の消衰係数を読み出す。CPU11は共通膜300の消衰係数は、記憶部15に予め記憶した基準消衰係数の所定範囲外となるか否かを判断する(ステップS341)。CPU11は所定範囲外と判断した場合(ステップS341でYES)、当該セットIDqの共通膜300に対応づけて消衰係数異常フラグを結果DB152に記憶する(ステップS342)。CPU11は枠体に消衰係数異常を示す情報及び座標値ファイル151に記憶されたセットIDに対応する第1基準座標を出力する(ステップS343)。当該処理の後、及び、CPU11が所定範囲外と判断できない場合(ステップS341でNO)、ステップS344の処理へ移行する。
CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したか否かを判断する(ステップS344)。CPU11は全てのセット30に対する処理を終了していないと判断した場合(ステップS344でNO)、変数であるqをインクリメントする(ステップS345)。CPU11は処理をステップS332へ戻し、次のセット30の異常検出処理を行う。一方、CPU11は全てのセット30に対する処理を終了したと判断した場合(ステップS344でYES)、一連の処理を終了する。
本実施の形態7は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至6と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
以上の実施の形態1乃至7を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
試料の膜厚または光学定数を計測する分光エリプソメータにおいて、
計測すべき複数の第1基準位置及び該第1基準位置に対する少なくとも一つの移動量を記憶部に記憶する記憶手段と、
前記記憶部に記憶した一の第1基準位置に計測位置を移動させて、光を照射し反射した光の偏光状態を測定する第1測定手段と、
前記記憶部に記憶した一の第1基準位置に対する移動量に基づく補助基準位置に計測位置を移動させて、光を照射し反射した光の偏光状態を測定する補助測定手段と、
前記記憶部に記憶した第1基準位置に対応する第1モデル及び前記補助基準位置に対応する補助モデル双方に共通のパラメータを前記記憶部に記憶する手段と、
前記記憶部に記憶した共通のパラメータを含む第1モデル及び補助モデル、並びに、前記第1測定手段により測定した光の偏光状態及び前記補助測定手段により測定した光の偏光状態に基づき解析を行い、膜厚または光学定数を算出する算出手段と
を備えることを特徴とする分光エリプソメータ。
(付記2)
前記記憶手段は、
計測すべき複数の第1基準位置及び該第1基準位置に対する複数の移動量を記憶部に記憶するよう構成してあり、
前記補助測定手段は、
前記記憶部に記憶した一の第1基準位置に対する複数の移動量に基づく複数の補助基準位置それぞれに計測位置を移動させて、光を照射し反射した光の偏光状態を測定するよう構成してあり、
前記記憶部には第1モデル及び複数の補助モデルが記憶されており、前記第1モデル及び複数の補助モデル間で共通する少なくとも一の層の膜厚を共通のパラメータとしてあり、
前記算出手段は、
前記一の層の膜厚を含む共通のパラメータを有する第1モデル及び複数の補助モデル、並びに、前記第1測定手段により測定した光の偏光状態及び前記補助測定手段により測定した複数の補助基準位置に係る光の偏光状態に基づき解析を行い、前記第1基準位置及び前記複数の補助基準位置における膜厚または光学定数を算出するよう構成してある
ことを特徴とする付記1に記載の分光エリプソメータ。