JP2010111236A - 車両の操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】操舵ハンドル11を有する操舵機構10と左右車輪FW1,FW2を転舵する転舵機構30とがケーブル50で連結される車両の操舵装置において、操舵機構10にトルクリミッタ20を設け、ケーブル50の耐久性を向上させる。
【解決手段】トルクリミッタ20は、操舵ハンドル11側の操舵入力軸12aと共に回転する第1プレートと、この第1プレートと嵌合して共に回転する第2プレートと、この第2プレートを第1プレートに当接するように下方から上方に弾性力を付与するスプリング25を備えている。第1プレートが回転すると、第2プレートに周方向の回転トルクと、第2回転体を下方に押圧する押圧力が生じ、第1プレートが第2プレートを下方へ押し出す押圧力がスプリング25の弾性力より大きくなると、第2プレートの溝部が第1プレートの突起部から外れ、第2プレートは空転するためケーブル50に過度なトルクが伝達されない。
【選択図】 図1
【解決手段】トルクリミッタ20は、操舵ハンドル11側の操舵入力軸12aと共に回転する第1プレートと、この第1プレートと嵌合して共に回転する第2プレートと、この第2プレートを第1プレートに当接するように下方から上方に弾性力を付与するスプリング25を備えている。第1プレートが回転すると、第2プレートに周方向の回転トルクと、第2回転体を下方に押圧する押圧力が生じ、第1プレートが第2プレートを下方へ押し出す押圧力がスプリング25の弾性力より大きくなると、第2プレートの溝部が第1プレートの突起部から外れ、第2プレートは空転するためケーブル50に過度なトルクが伝達されない。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ステアバイワイヤ方式の車両の操舵装置に係り、特に、運転者が操作する操作部材を有する操舵機構と転舵輪を転舵する転舵機構とがケーブルを介して連結されているものに関する。
従来から、操作部材を有する操舵機構と、転舵輪を転舵する転舵機構とがケーブルを介して連結された車両の操舵装置に関しては、下記特許文献1に記載されたものがある。この車両の操舵装置では、操舵機構に備えられた反力モータの出力軸にトルクリミッタを取り付けてられており、反力モータが出力した所定値以上のトルクがケーブルに伝達されないようにされている。このため、この車両の操舵装置では、ケーブルに過大なトルクが作用することはなく、ケーブルの耐久性が向上する。
特開2005−313738号公報 ところで、トルクリミッタとして一般的に用いられているトレランスリングは、入力軸から入力されるトルクが予め設定した所定値を超えると空転し、出力軸に所定値以上のトルクが伝達されないようになっている。しかしながら、何度もこの所定値を超えるトルクが入力されてトレランスリングが何度も空転すると、トレランスリングの外周で摩擦力を発生させるトレランスリングのウェーブ部が擦り減る。このように、トレランスリングのウェーブ部が擦り減ってしまうとトレランスリングのバネの弾性定数は変化してしまい、予め設定した所定値より小さいトルクでトレランスリングの空転が開始されるという問題があった。
本発明は、上記課題に対処するためになされたものであり、運転者が操作する操作部材と、前記操作部材に連結されていて前記操舵部材と連動して変位する入力軸と、前記入力軸に入力されたトルクが伝達されて、転舵輪と連動して変位する出力軸と、前記入力軸と前記出力軸の間に設けられ、前記入力軸に入力されたトルクを前記出力軸に伝達するケーブルと、前記入力軸に設けられていて、前記入力軸に入力された所定値以上のトルクが前記ケーブルに伝達されることを禁止するトルクリミッタと、を備え、前記トルクリミッタは、前記入力軸の操作部材側に設けられた第1回転体と、前記第1回転体と対向していて前記入力軸のケーブル側に設けられた第2回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体の対向する面が当接するように前記第1回転体および前記第2回転体の少なくとも一方に弾性力を付与する弾性体と、を有することを特徴とする。
この場合、入力軸に入力されたトルクが所定値より小さい場合、第1回転体が回転すると、第1回転体に当接する第2回転体は、第1回転体と第2回転体との当接する面に生じる静止摩擦力により第1回転体と一体となって回転する。このため、第1回転体に入力されたトルクと同程度のトルクが第2回転体を介してケーブルに伝達される。一方、入力軸に入力されたトルクが所定値以上の場合、第1回転体に入力されるトルクが第1回転体と第2回転体との当接する面に生じる最大静止摩擦力よりも大きくなり、第1回転体と第2回転体は相対回転をし始める。この際、第2回転体を回転させる力は静止摩擦力から動摩擦力に変わるが、動摩擦力は最大静止摩擦力よりも大きくなることはない。したがって、この場合は、ケーブルに最大静止摩擦力以上のトルクが伝達されることはなく、ケーブルへの過大なトルクの入力が禁止される。
さらに、本発明のトルクリミッタの弾性体は、第1回転体と第2回転体が当接するように第1回転体および第2回転体の少なくとも一方に弾性力を付与しているため、弾性体が第1回転体と第2回転体が相対回転によって磨耗することはない。したがって、第1回転体と第2回転体が何度も相対回転しても、弾性体のバネ定数は変化しないため、トルクリミッタで予め設定した所定値が変化することを防止することができる。
また、本発明における前記トルクリミッタは、前記第1回転体および前記第2回転体の一方に所定の角度の傾斜を有する溝部と、他方に前記溝部に嵌合する突起部とを有するとよい。この場合、溝部が所定の角度の傾斜を有しており、入力軸が回転することにより第1回転体に形成されている溝部または突起部が第2回転体に形成されている突起部または溝部を押圧する。これにより、第1回転体から第2回転体に周方向に回転させる回転トルクと、下方に押圧させる押圧力が作用する。従って、例えば、弾性体により第2回転体に下方から上方へ向かう向きに弾性力が付与されている場合は、この第1回転体と第2回転体を離そうとする押圧力が第1回転体と第2回転体とを引き寄せる弾性力と溝部の側面に生じる摩擦力の合力より大きくなれば、第1回転体と第2回転体の一方と他方に形成された溝部と突起部が外れ始める。そして、この溝部と突起部が完全に外れると第2回転体は空転する。このため、入力軸に入力された所定値以上のトルクがケーブルに伝達されることがなくなり、ケーブルへの過大なトルクの入力を抑制できる。
なお、トルクリミッタがトルクの伝達を禁止し始める所定値は、何度もこの所定値のトルクがケーブルに伝達されてもケーブルの耐久性に影響を与えない程度(例えば、5N・m)であればよい。また、溝部に形成される傾斜の所定の角度は、第1回転体が回転した場合に、第2回転体を周方向に回転させる回転トルクと、第2回転体を下方に押圧する押圧力の両方の力の成分が生じる角度であればよい。なお、この角度は、0度から90度の範囲で大きくするにつれて第2回転体を周方向に回転させる回転トルクは大きくなり、下方に押圧する押圧力は小さくなる。したがって、溝部の傾斜の角度(または、これに嵌合する突起部の傾斜の角度)を適宜設定することで、トルクリミッタがトルクの伝達を禁止し始める所定値を設定することができる。
以下に、本発明による車両の操舵装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明による車両の操舵装置の全体構成を概略的に示している。この車両の操舵装置は、運転者によって操舵操作される操舵機構10と、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を運転者の操舵操作に応じて転舵する転舵機構30と、操舵機構10を電気的に制御するとともに転舵装置30を制御する電気制御装置40とを備えている。なお、この車両の操舵装置は、転舵機構30のフェール時に操舵機構10で発生するトルクを転舵機構30に伝達するケーブル50を備えている。
操舵機構10は、回動操作により左右前輪FW1,FW2を転舵する操作部材としての操舵ハンドル11を備え、同ハンドル11は、操舵入力軸12の上端に固定されている。操舵入力軸12には操舵反力用の電動モータM1が組みつけられている。この電動モータM1は、減速機13を介して操舵入力軸12を軸線周りに回転駆動する。また、電動モータM1には、操舵角センサ14が組み込まれていて、電動モータM1の回転子の回転角度位置により操舵角θsを検出して、操舵角θsを表す検出信号を出力する。なお、操舵角θsは、操舵ハンドル11の左回転方向への操舵時における値を正とし、右回転方向への操舵時における値を負とする。
また、操舵機構10は、トルクリミッタ20を備えている。トルクリミッタ20は、図2に示すように、操舵入力軸12に軸受部材21a,21bを介して回転可能に組みつけられるハウジング22と、操舵ハンドル11側の操舵入力軸12aと共に回転する第1プレート23と、この第1プレート23に入力された回転トルクが所定値(例えば、5N・m)より小さい場合は第1プレート23と共に回転し、所定値以上の場合は第1プレート23と相対回転する第2回転体である第2プレート24と、この第2プレート24を第1プレート23に当接するように下方から上方に弾性力を付与するスプリング25を備えている。
第1プレート23は金属材料(例えば、鉄やステンレス等)で形成された円筒形状のプレートであり、その上端部23aは、操舵ハンドル11側の操舵入力軸12aの下端に同操舵入力軸12aと共に回転するように取り付けられている。第1プレート23の下端部23bには、第2プレート24の後述する溝部24cと嵌合する突起部23cが周方向に90度間隔で4箇所形成されていている。この突起部23cの周方向の両側壁は、第1プレート23が回転した場合に、第2プレート24が回転するための回転トルクと第2プレート24を下方に押し出す押圧力を第2プレート24に伝達するための所定の角度を有する傾斜面23dが設けられている。なお、本実施形態における突起部23cの傾斜は、70度に設定されている。
第2プレート24は金属材料(例えば、鉄やステンレス等)で形成された円筒形状のプレートであり、その上端部24aには、第1プレート23の突起部23cに嵌合する溝部24cが備えられている。この溝部24cは、それぞれ各突起部23cに対応するように周方向に90度間隔で4箇所に形成されていて、その周方向の両側壁は所定の角度を有する傾斜面24dが設けられている。なお、所定の角度は、第1プレートが回転した場合に、第2プレート24に周方向への回転トルクと下方に押し出す押圧力が第1プレート23から伝達されるように設定されており、本実施形態では突起部23cの傾斜面23dと同様に、70度に設定されている。なお、溝部24cの傾斜面24dの上方は、断面が滑らかな円弧状に面取りされており、溝部24cが突起部23cから離れ始めると溝部24cが突起部23cから容易に外れるように形成されている。
スプリング25は、転舵機構30側の操舵入力軸12bに巻き付けられており、その上端は、第2プレートの下端に当接している。また、転舵機構30側の操舵入力軸12bには、スプリングの下端を支持するスプリング支持部12cが設けられている。これにより、スプリングは常に、下端を原点として、第2プレート24を第1プレート23に当接するように下方から上方に第2プレートに弾性力を付与している。
次に、上述したトルクリミッタ20の作動について、図3を参照して説明する。第1プレート23の突起部23cと第2プレート24の溝部24cが嵌合した状態で、操舵ハンドル11側の操舵入力軸12aが回転すると、第1プレート23の回転方向の突起部23cの傾斜面23dが第2プレート24の反回転方向の溝部24cの傾斜面24dを押圧して、第1プレート23と第2プレート24は一体となって回転する。すなわち、操舵ハンドル11側の操舵入力軸12aから第1プレート23に入力される回転トルクが所定値より小さい場合は、スプリング25の弾性力と溝部24cの傾斜面24dに生じる摩擦力が第2プレート24を下方へ押し出す押圧力より大きく、第2プレート24の溝部24cが第1プレート23の突起部23cから外れることはない。
一方、操舵ハンドル11側の操舵入力軸12aが回転が速くなり、第1プレート23に入力される回転トルクが所定値以上になると、第1プレート23が第2プレート24を下方へ押し出す押圧力も大きくなる。この場合、図4(b)に示すように、第1プレート23が第2プレート24を下方へ押し出す押圧力がスプリング25の弾性力と第2プレート24の傾斜面24dに生じる摩擦力に打ち勝って、溝部24cが突起部23cから外れる。したがって、第1プレート23が回転しても、第2プレート24の溝部24cを除く上端部24aは突起部23cに当接したまま摺動するだけであり、第1プレート23から第2プレート24に回転トルクが伝達されず、第2プレート24は空回りすることとなる。なお、この場合、第1プレート23が回転することにより、この突起部23cが次の溝部24cに嵌合しても、第1プレート23からの第2プレートを離そうとする押圧力がスプリング25の弾性力と第2プレート24の傾斜面24dに発生する摩擦力の合力より大きい限り瞬時に外れて、第2プレート24は空回りを続ける。
以上のように、第2プレート24には、操舵ハンドル11側の操舵入力軸12aから入力される所定値以上のトルクが伝達されないようになっている。したがって、後述するケーブル50に過大なトルクが作用することはなく、ケーブル50の耐久性が向上する。
次に、転舵機構30について説明する。転舵機構30は、車両の左右に延びて配置されたラックバー31を備えている。ラックバー31は図示しないステアリングギヤボックス内に軸方向に変位可能に支持されるとともに、両端にてタイロッド32a,32bおよびナックルアーム33a,33bを介して左右前輪FW1,FW2を転舵可能に連結している。左右前輪FW1,FW2は、ラックバー31の軸線方向の変位により左右に転舵される。また、転舵機構30は、操舵入力軸12に入力された回転トルクが後述するケーブル50を介して伝達されて、軸線周りに回転可能な操舵出力軸34を有している。操舵出力軸34の外周上には、転舵用の電動モータM2が組みつけられている。この電動モータM2は、減速機35を介して操舵出力軸34を軸線周りに回転駆動する。操舵出力軸34の下端は、ピニオンギヤ36が固定されており、同ピニオンギヤ36はラックバー31に設けたラック歯に噛み合っている。このため、操舵出力軸34が同出力軸34の軸線周りに回転すると、ラックバー31は軸線方向に変位する。
また、転舵機構30は、転舵角センサ37および車速センサ38を備えている。転舵角センサ37は、電動モータM2に組み込まれていて、電動モータM2の回転子の回転角度位置により転舵角θtを検出して、操舵角θtを表す検出信号を出力する。なお、転舵角θtは、操舵ハンドル11の左回転方向への操舵時における値を正とし、右回転方向への操舵時における値を負とする。車速センサ38は、左右前輪FW1,FW2を含む4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ38により車速Vを検出し、車速Vを表す検出信号を出力する。
操舵入力軸12と操舵出力軸34との間には転舵用モータM2がフェールした場合に、操舵機構10と転舵機構30を機械的に接続するバックアップ用のケーブル50が備えられている。ケーブル50は、操舵入力軸12の軸線周りの回転を操舵出力軸34に伝達するものである。操舵入力軸12に備えられたトルクリミッタ20の上方には第1電磁クラッチ15が配置されている。第1電磁クラッチ15は、非通電状態にて切断状態に設定されてケーブル50と操舵入力軸12とを動力伝達不能に切り離し、通電状態にて接続状態に設定されてケーブル50と操舵入力軸12とを動力伝達可能に連結する。操舵出力軸34の上部には第2電磁クラッチ39が配置されている。第2電磁クラッチ39は、非通電状態にて切断状態に設定されてケーブル50と操舵出力軸34とを動力伝達不能に切り離し、通電状態にて接続状態に設定されてケーブル50と操舵出力軸34とを動力伝達可能に連結する。
電気制御装置40は、電動モータM1を駆動制御する操舵ECU41および電磁クラッチ15,39の接続・切断の切換え制御するとともに電動モータM2を駆動制御する転舵ECU42を備えている。操舵ECU41には、操舵角センサ14が接続されている。また、転舵ECU42には、転舵角センサ37および車速センサ38が接続されている。
各ECU41,42は、CPU、ROM、RAMおよびI/Fなどからなるマイクロコンピュータによって構成される。操舵ECU41は、図4の操舵反力制御プログラムを実行して、駆動回路43を介して電動モータM1を駆動制御する。転舵用ECU42は、図5の転舵制御プログラムを実行して、駆動回路44を介して各電磁クラッチ15,39を切換え制御するとともに、駆動回路45を介して転舵用の電動モータM2を駆動制御する。なお、この操舵ECU41と転舵ECU42は相互に信号の授受ができるように構成されている。
次に、上記のように構成した実施形態の動作について説明する。図示しないイグニッションスイッチの投入により、操舵ECU41および転舵ECU42は、操舵反力制御プログラムおよび転舵制御プログラムを所定の周期で繰り返し実行する。
この操舵反力制御プログラムが開始されると、操舵ECU41は、ステップS11にて、操舵角センサ14からの操舵ハンドル11の操舵角θs、車速センサ38からの車速Vおよび転舵ECU42からの転舵フェイルフラグFを入力する。この転舵フェイルフラグFは、後述するように転舵ECU42にて設定されるもので、“0”により転舵用の電動モータM2および駆動回路45からなる転舵制御系の正常状態を表し、“1”により転舵制御系の異常状態を表す。
続いて、転舵制御系が正常である場合について説明を続ける。転舵制御系が正常である場合は、ステップS12にて「Yes」と判定され、操舵ECU41は、プログラムをステップS13に進める。ステップS13においては、操舵ECU41は、ROM内に設けられている操舵反力テーブルを参照して、操舵角θsおよび車速Vに応じて変化する目標操舵反力Th*を計算する。この操舵反力テーブルは、図6に示すように、複数の代表的な車速値ごとに、操舵角θsの増加に従って非線形増加する複数の目標操舵反力Th*を記憶している。
続いて、操舵ECU41は、ステップS14にて、駆動回路43と協働して前記計算した目標操舵反力Th*に対応した駆動電流を操舵反力用の電動モータM1に流して、この操舵反力制御プログラムの実行を終了する。このように転舵制御系が正常である場合は、電動モータM1は、操舵入力軸12を目標操舵反力Th*に対応した回転トルクで駆動する。これにより、操舵ハンドル11の回動操作に対して、電動モータM1による目標操舵反力Th*が付与され、運転者は、適度な操舵反力を感じながら、操舵ハンドル11を回動操作できる。
次に、転舵制御系が異常である場合について説明を続ける。後述する図5の転舵制御プログラムにて転舵制御系が異常であると判定された場合は、ステップS11の処理により“1”に設定されている転舵フェイルフラグFが入力され、操舵ECU41は、ステップS12にて「No」と判定して、プログラムをステップS15に進める。ステップS15においては、操舵ECU41は、ROM内に設けられているアシスト指令値テーブルを参照して、操舵角θsおよび車速Vに応じて変化する目標アシストトルクTa*を計算する。このアシスト指令値テーブルは、図7に示すように、複数の代表的な車速値ごとに、操舵角θsの増加に従って非線形増加する複数の目標アシストトルクTa*を記憶している。
続いて、操舵ECU41は、ステップS16にて、駆動回路43と協働して前記計算した目標アシスト力Ta*に対応した駆動電流を電動モータM1に流す。これにより、電動モータM1は、操舵入力軸12を目標アシスト力Ta*に対応した回転トルクで駆動する。その結果、この転舵用の電動モータM2による左右前輪FW1,FW2の転舵不能状態では、操舵ハンドル11の回動操作による左右前輪FW1,FW2の転舵が電動モータM1によってアシストされるので、運転者は、操舵反力用の電動モータM1のアシストを経て操舵ハンドル11を回動操作できる。
次に、図5を用いて転舵制御プログラムについて説明する。転舵制御プログラムは、図示しないイグニッションスイッチの投入後、所定の周期で繰り返し実行される。この転舵制御プログラムが開始されると、ステップS21において、転舵ECU42は、電動モータM2および駆動回路45からなる転舵制御系が異常であるかを検出する。この場合、転舵ECU42は、電動モータM2の断線、短絡、その他の異常を駆動回路45からの信号を経て、転舵制御系に異常が発生しているかを検出し、続くステップS22にて前記ステップS21の処理によって異常が検出されたかを判定する。
続いて、転舵制御系が正常である場合について説明を続ける。ステップS21にて転舵制御系の異常が検出されなかった場合は、転舵ECU42は、ステップS22で「No」との判定し、ステップS23にて転舵フェイルフラグFを“0”に設定する。なお、この転舵フェイルフラグFは、図示しないイグニッションスイッチがオフされても、その値が保存されるように、転舵ECU42の非作動時にはメモリ領域に記憶されている。
続いて、ステップS24において転舵ECU42は、駆動回路44との協働により、各電磁クラッチ15,39に通電して同電磁クラッチ15,39を切断状態に制御する。これにより、続くステップS25〜S29で、左右前輪FW1,FW2はステアバイワイヤ状態時の転舵制御がなされるようになる。
すなわち、ステップS25においては、転舵ECU42は、操舵角センサ17からの操舵角θs、転舵角センサ37からの転舵角θt、車速センサ39からの車速Vをそれぞれ入力する。そして、ステップS26にて、ROM内に記憶されている第1転舵角テーブルを参照して、操舵角θsに応じて変化するステヤバイワイヤ用の目標転舵角θt*を計算し、同計算したステヤバイワイヤ用の目標転舵角θt*として設定する。
第1転舵角テーブルは、図8に実線で示すように、操舵角θsの増加に従って非線形に増加するステヤバイワイヤ用の目標転舵角θt*を記憶している。このステヤバイワイヤ用の目標転舵角δt*の操舵角θsに対する変化率は、操舵角θsの絶対値|θs|の小さな範囲内で小さく、操舵角θsの絶対値|θs|が大きくなると大きくなるように設定されている。
そして、ステップS27にて、転舵ECU42は、ROM内に記憶されている車速係数テーブルを参照して、車速Vに応じて変化するステヤバイワイヤ用の車速係数Kaを計算し、同計算したステヤバイワイヤ用の車速係数Kaを車速係数Kとして設定する。車速係数テーブルは、既に周知のテーブルを用い、車速Vの小さな範囲内で「1」よりも大きく、車速Vの大きな範囲内で「1」よりも小さく、車速Vの増加に従って「1」を挟んで非線形に減少するステヤバイワイヤ用の車速係数Kaを記憶している。
これらの目標転舵角θt*および車速係数Kの決定後、転舵ECU42は、ステップS28にて、下記式1の演算の実行により、目標転舵角θt*を車速係数Kで補正して最終的な目標転舵角θt*を計算する。
θt*=K・θt* …式1
続くステップS29では、転舵ECU42は、転舵角θtが最終的な目標転舵角θt*に等しくなるように、両転舵角θt*,θtの差θt*−θtを用いて駆動回路45を介して電動モータM2の回転を制御する。これにより、転舵用の電動モータM2は回転駆動され、減速機36を介してラックバー31を軸線方向に駆動して、左右前輪FW1,FW2を目標転舵角θt*に転舵する。
続くステップS29では、転舵ECU42は、転舵角θtが最終的な目標転舵角θt*に等しくなるように、両転舵角θt*,θtの差θt*−θtを用いて駆動回路45を介して電動モータM2の回転を制御する。これにより、転舵用の電動モータM2は回転駆動され、減速機36を介してラックバー31を軸線方向に駆動して、左右前輪FW1,FW2を目標転舵角θt*に転舵する。
このような転舵制御により、図8の実線で示すように、左右前輪FW1,FW2は、操舵角θsの小さな範囲で同操舵角θsの変化に対して小さく転舵され、操舵角θsの大きな範囲で同操舵角θsの変化に対して大きく転舵される。その結果、操舵ハンドル11の持ち替えなしで左右前輪FW1,FW2は大きな転舵角まで転舵される。また、図9の実線で示すように、左右前輪FW1,FW2は、車速Vが小さいときには操舵角θsに対して大きく転舵され、車速Vが大きくなると操舵角θsに対して小さく転舵される。
前記ステップS29の処理後、転舵ECU42は、ステップS30にて転舵フェイルフラグFを操舵ECU41に出力して、転舵制御プログラムの実行を終了する。
次に、転舵制御系に異常が発生した場合について説明する。この場合、転舵ECU42は、ステップS22にて「Yes」と判定して、ステップS31にて転舵フェイルフラグFを“1”に設定し、ステップS32にて電動モータM2の作動制御を中止して電動モータM2の作動を停止させる。続いて、転舵ECU42は、ステップS33にて、駆動回路44との協働により、第1および第2電磁クラッチ15,39に通電して第1および第2電磁クラッチ15,39を接続状態に制御する。そして、ステップS30において、“1”に設定された転舵フェイルフラグFを操舵ECU41に出力して、この転舵制御プログラムの実行を終了する。
このように、転舵制御系に異常が発生した場合には、転舵用の電動モータM2は左右前輪FW1,FW2を転舵制御しなくなる代わりに、第1および第2電磁クラッチ15,39が接続状態になり操舵機構10と転舵機構30が機械的に接続されることとなる。したがって、この場合は、操舵ハンドル11の回動力および電動モータM1の駆動力が、左右ケーブル50を介して前輪FW1,FW2に伝達されるようになり、操舵ハンドル11の回動操作によって前輪FW1,FW2は転舵されるようになる。
また、この場合は、操舵ハンドル11の回動操作および電動モータM1の駆動により操舵入力軸が過大な回転トルクにより回転されても、操舵入力軸12にトルクリミッタ20が設けられているため、所定値以上の回転トルクはケーブル50に伝達されることはない。したがって、ケーブル50にトルクリミッタ20で設定した以上の過大な回転トルクが作用することはなく、ケーブル50の耐久性が向上する。
以上、本発明の車両の操舵装置に係る1実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、第1プレート23に突起部23cを設け、第2プレート24に溝部24cを設けたが、第1プレートに溝部を設け、第2プレートに突起部を設けてもよい。
また、例えば、本実施形態において溝部24cの傾斜面24dと突起部23cの傾斜面23dとの傾斜角度は共に70度を採用したが、必ずしも同一の傾斜角度とする必要はない。すなわち、第1プレートである第1回転体が回転したときに、第1回転体に形成された突起部が第2プレートである第2回転体に形成された所定の角度の傾斜を有する溝部に嵌合して、第2回転体を周方向に回転させる回転トルクと、第2回転体を下方に押圧する押圧力の両方の力が生じればよい。また、突起部および溝部の形状も、上述したように、突起部と溝部が嵌合して、第1回転体から第2回転体を周方向に回転させる回転トルクと、下方に押圧する押圧力の両方の力が生じる範囲で種々の形状を採用することができ、例えば、断面が三角形状である突起部および溝部を採用してもよい。
また、例えば、本実施形態においては、第1プレート23の突起部23cと第2プレート24の溝部24cをそれぞれ周方向に90度間隔で4箇所に形成されたものを採用したが、第1プレートの突起部と第2プレートの溝部の位置と個数は適宜設計することができる。例えば、第1プレートの突起部と第2プレートの溝部をそれぞれ3箇所に等間隔で設けることにより、第1プレートと第2プレートが120度相対回転すると第1プレートと第2プレートが嵌合するようにしてもよい。あるいは、第1プレートの突起部と第2プレートの溝部をそれぞれ3箇所に不等間隔で設けることにより、360度相対回転すると第1プレートと第2プレートが嵌合するようにしてもよい。このように、突起部と溝部の位置と個数を第1プレートと第2プレートとが嵌合する回転角を設定し、この嵌合回数を検出することで、操舵ハンドル側の操舵入力軸と転舵機構側の操舵入力軸とがどれだけズレたかを検出することも可能となる。この場合、突起部と溝部の嵌合回数は、例えば、溝部に接触スイッチを設けることにより検出することができる。
また、例えば、本実施形態におけるスプリング25は、第2プレート24を第1プレート23に当接するように下方から上方に弾性力を付与するようにしたが、第1プレート23の上方に配置し、第1プレート22を第2プレート24に当接するように上方から下方に弾性力を付与するようにしてもよい。なお、本実施形態では、弾性部材としてスプリングを採用したが、弾性部材はこれに限定されるわけではなく、皿ばねや板バネ等を採用してもよい。
また、例えば、本実施形態における車両の操舵装置は、第1および第2の電磁クラッチ15,39を設け、転舵制御系がフェールした場合のみ、操舵機構10の操舵入力軸の回転トルクをケーブルを介して転舵機構30に伝達できるようにする所謂ステアバイワイヤ式の車両の操舵装置を採用した。しかしながら、本発明は、常時、操舵機構の操舵入力軸の回転トルクをケーブルを介して転舵機構に伝達する車両の操舵装置であってもよい。この場合は、操舵機構と転舵機構を機械的に分離する電磁クラッチは必要としない。
11…操舵ハンドル、12…操舵入力軸、20…トルクリミッタ、23…第1プレート、23c…突起部、23d…傾斜面、24…第2プレート、24c…溝部、24d…傾斜面、25…スプリング、31…ラックバー、34…転舵出力軸、50…ケーブル、FW1,FW2…車輪
Claims (2)
- 運転者が操作する操作部材と、
前記操作部材に連結されていて前記操舵部材と連動して変位する入力軸と、
前記入力軸に入力されたトルクが伝達されて、転舵輪と連動して変位する出力軸と、
前記入力軸と前記出力軸の間に設けられ、前記入力軸に入力されたトルクを前記出力軸に伝達するケーブルと、
前記入力軸に設けられていて、前記入力軸に入力された所定値以上のトルクが前記ケーブルに伝達されることを禁止するトルクリミッタと、を備え、
前記トルクリミッタは、前記入力軸の操作部材側に設けられた第1回転体と、前記第1回転体と対向していて前記入力軸のケーブル側に設けられた第2回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体の対向する面が当接するように前記第1回転体および前記第2回転体の少なくとも一方に弾性力を付与する弾性体と、を有することを特徴とする車両の操舵装置。 - 前記トルクリミッタは、前記第1回転体および前記第2回転体の一方に所定の角度の傾斜を有する溝部と、他方に前記溝部に嵌合する突起部とを有することを特徴とする請求項1に記載の車両の操舵装置。
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JP2012011912A (ja) * | 2010-07-01 | 2012-01-19 | Toyota Motor Corp | 車両用操舵装置 |
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