JP2010111071A - 階調模様作製方法及び階調模様を有する用紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、レーザ加工による階調模様の作製方法に関するものである。
【解決手段】 原画像取得部にて、紙基材へ付与する階調模様の原画像を取得し、デジタルデータへ変換する原画像取得工程と、デジタルデータを多階調とするために、グレースケールデータへと変換し、グレースケールデータの階調範囲を補正して階調補正データを作製し、階調補正データを2値化処理して加工用データを作製する加工用データ作製工程と、加工用データに基づいて、レーザ光線の照射密度、出力、照射強度及び走査速度の加工条件を設定し、加工条件をレーザ加工部へ送信するレーザ加工条件設定工程と、紙基材における階調模様加工領域を所定の水分量となるまで水分を調整する水分調整工程と、加工用データ及びレーザ加工条件に従って水分調整された紙基材における階調模様加工領域に、レーザ加工部からレーザ光線を照射し、階調模様を付与するレーザ加工工程とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】 原画像取得部にて、紙基材へ付与する階調模様の原画像を取得し、デジタルデータへ変換する原画像取得工程と、デジタルデータを多階調とするために、グレースケールデータへと変換し、グレースケールデータの階調範囲を補正して階調補正データを作製し、階調補正データを2値化処理して加工用データを作製する加工用データ作製工程と、加工用データに基づいて、レーザ光線の照射密度、出力、照射強度及び走査速度の加工条件を設定し、加工条件をレーザ加工部へ送信するレーザ加工条件設定工程と、紙基材における階調模様加工領域を所定の水分量となるまで水分を調整する水分調整工程と、加工用データ及びレーザ加工条件に従って水分調整された紙基材における階調模様加工領域に、レーザ加工部からレーザ光線を照射し、階調模様を付与するレーザ加工工程とを有する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、紙基材へのレーザ加工による階調模様の作製方法及び階調模様を有する用紙に関するものである。
従来から、模様紙に付与することで意匠性を向上させる階調模様として、エンボス模様が知られている。エンボス模様とは、高低差を有する凹凸で階調模様が表現されたレリーフ型を紙基材に型押しすることで、紙基材上に高低差により付与する模様である。また、前述以外にも、レーザ光線を用いて紙基材上に階調模様を作製するレーザ加工法がある。レーザ加工法は、レリーフ型を必要としないことから、比較的少量の模様紙作製に適している。
レーザ加工法には、レーザ光線を紙基材に照射し、紙基材を形成する紙層を除去することで階調模様を作製する除去法と、レーザ光線の出力を増減させながら紙基材に照射し、レーザ光線の出力に応じた焦げと窪みを紙基材に付与することで階調模様を作製する焼失法等が知られている。
例えば、特許文献1には、除去法による紙基材への絵柄形状の模様を製造する方法が開示されている。除去法としては、発振器より出力されたレーザ光線を、紙基材に対して照射する。レーザ光線が照射された紙基材は、紙基材を形成する紙層が除去されることで、絵柄形状の模様を製造することが可能となる。
また、特許文献2には、焼失法による紙基材への階調模様の付与方法が開示されている。焼失法としては、まず、原画像データをグレースケールデータへ変換し、階調データを作製する。次に、階調データにおける各画素に応じた出力で、レーザ光線を紙基材上に照射する。紙基材上における照射部は、紙基材が焦げて変色するとともに、非照射部に比べて紙基材表面が窪むことで、紙基材に階調模様を付与することが可能となる。
しかしながら、特許文献1に開示されている紙基材への絵柄形状の模様を製造する方法では、発振器の出力を連続的に変化させることで、紙基材を形成する紙層の除去する割合を連続的に変化させ、深さも自由で複雑な絵柄の模様を製造することができる旨の記載があるが、その具体的な作製方法に関する記載はなく、実現性については、不明である。
また、特許文献2に開示されている階調模様の付与方法では、始めに、レーザ光線の出力に応じた窪みを紙基材に付与し階調模様を作製している。次に、窪みだけでは表現できない階調範囲を、レーザ光線の出力に応じた焦げを前述した窪みが付与された紙基材に付与することで、陰影表現が補足される。それにより、多階調の階調模様を作製している。そのため、多階調の階調模様を作製する際には、焼失による紙基材の破壊を防ぐために、紙基材の厚さを官製はがきや名刺程度の厚さとする必要があり、紙基材が薄いものには多階調表現を有する階調模様を付与することができないという問題がある。
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、具体的には、紙基材へレーザ光線を照射して模様を付与する際、焼失による紙基材の変色及び破壊を防止することを目的とする。また、薄い紙基材に対しても、多階調表現を有する階調模様を付与することが可能なレーザ加工による階調模様作製方法及び階調模様を有する用紙を提供するものである。
前述の目的を達成するために、本発明は、取得手段を少なくとも有する原画像取得部と、データ作製部及びレーザ加工部から成る階調模様作製装置を用いて、紙基材における階調模様加工領域に、レーザ光線の照射により階調模様を付与するレーザ加工による階調模様作製方法であって、前記原画像取得部において、前記紙基材へ付与する前記階調模様の原画像を取得する原画像取得工程と、前記デジタルデータを多階調とするために、グレースケールデータへと変換し、前記グレースケールデータの階調範囲を補正して階調補正データを作製し、前記階調補正データを2値化処理して加工用データを作製する加工用データ作製工程と、前記加工用データに基づいて、前記レーザ光線の照射密度、出力、照射強度及び走査速度の加工条件を設定し、前記加工条件を前記レーザ加工部へ送信するレーザ加工条件設定工程と、前記紙基材における前記階調模様加工領域を所定の水分量となるまで水分を調整する水分調整工程と、前記加工用データ及び前記レーザ加工条件に従って前記水分調整された前記紙基材における前記階調模様加工領域に、前記レーザ加工部からレーザ光線を照射し、前記階調模様を付与するレーザ加工工程と、を有することを特徴とするレーザ加工による階調模様作製方法である。
また、本発明の前記水分調整工程は、前記紙基材における前記階調模様加工領域を所定の水分量となるまで液体を付与、脱水及び/又は乾燥することで、水分を調整することを特徴とするレーザ加工による階調模様作製方法である。
また、本発明の前記液体は、揮発性の低い液体とすることを特徴とするレーザ加工による階調模様作製方法である。
また、本発明の前記グレースケールデータへの変換は、前記デジタルデータにおける階調を、0階調から255階調までをISO/DIS12218:1996で規定した0.15の一定の濃度間隔を有する無彩色で表すことを特徴とするレーザ加工による階調模様作製方法である。
また、本発明の前記階調補正データの作製は、あらかじめ作製してあるグレースケールデータにおける画像濃度と階調模様における階調再現性の関係を示す散布図に基づき、前記変換したグレースケールデータの階調範囲を前記散布図の比例区間の範囲内に補正することを特徴とするレーザ加工による階調模様作成方法である。
また、本発明の前記取得手段における原画像の取得は、前記原画像が施されている媒体から直接取得する、前記データ作製部により原画像を作製及び/又は入力する撮像機器により原画像を撮像する入出力機器により原画像を取得するか又はあらかじめデータ作製部に記憶している原画像を読み込むかのいずれか一つにより取得することを特徴とするレーザ加工による階調模様作製方法である。
また、本発明は、上記記載のいずれかの方法により得られる階調模様を有する用紙である。
紙基材へのレーザ加工による階調模様の作製方法において、紙基材を所定の水分量を維持するまで水分を付与させた状態でレーザ加工を行うことで、紙基材へレーザ光線を照射して階調模様を付与する際、燃焼による紙基材の変色及び破壊を抑制することができる。また、紙基材を液体で濡らすことで、紙基材を構成する紙繊維が膨潤するとともに、紙繊維間に液体が浸透することにより、レーザ光の到達深度を抑制することができる。それにより、レーザ加工深度の制御をレーザ光の強弱以外で調整することができ、紙基材が薄い場合においても多階調表現を有する階調模様を付与することが可能となる。さらには、本発明における模様は、紙基材の繊維構造を変化させ、付与している。
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明にかかわる階調模様作製装置全体構成を表す模式図の一例である。図2は、本発明にかかわる階調模様作製装置の構成を示すブロック図である。図3は、本発明にかかわる原画像画像濃度と階調模様画像濃度の関係を示す散布図の一例である。図4は、本発明にかかわる模様の作製工程の流れを示すフローチャートである。図5は、本発明にかかわる階調模様を施した紙基材断面のモデル図である。図6は、本発明にかかわる原画像からレーザ加工による模様を取得するまでの画像の変化を示す図である。図7は、本発明にかかわる図6(D6)に示したレーザ加工による階調模様を有する上質紙を表す図である。
図1は、本発明における階調模様を作製するための階調模様作製装置全体構成を表す模式図の一例である。階調模様作製装置(1)は、原画像取得部(2)、データ作製部(3)及びレーザ加工部(4)から成り、それぞれが接続手段(5)を介して直接的及び/又は間接的に接続されている。原画像取得部(2)は、紙基材(S)へ付与する階調模様の原画像を取得するところであり、データ作製部(3)は、原画像取得部(2)にて取得した原画像に基づき、加工用データを作製するところである。また、レーザ加工部(4)は、データ作製部(3)にて作製した加工用データに基づき、紙基材(S)へレーザ光線を照射し、階調模様を付与するところである。なお、本発明における接続手段(5)には、ケーブル、無線LAN又は情報通信網等が挙げられる。
図2は、前述した階調模様作製装置(1)の構成を示すブロック図である。階調模様作製装置(1)における原画像取得部(2)は、紙基材(S)へ付与する階調模様の原画像を取得又は入力する取得手段(6)を少なくとも有している。また、取得手段(6)により取得又は入力した原画像がデジタルデータ化されていない場合には、デジタルデータへ変換する必要があるため、原画像をデジタルデータへ変換するデータ変換手段(7)を更に有することが必要となる。この原画像取得部(2)において取得した原画像のデジタルデータは、接続手段(5)を介してデータ作製部(3)へ送信される。
本発明における原画像取得部(2)は、紙基材(S)の階調模様加工領域(S1)に付与する階調模様の元となる原画像を取得する取得手段(6)と、取得した画像をデジタルデータに変換するデータ変換手段(7)を一つの機器内に備えたスキャナ等の読取機器又はデジタルカメラ、ビデオカメラ若しくは携帯端末等の撮像機器としても良く、また、あらかじめ作製及び/又は取得した原画像を既にデジタルデータとして記録してあるCD−ROM、FD又はUSBメモリ等の情報記録媒体からデジタルデータを取得するMOドライブ、CD−ROMドライブ、FDドライブ又はイメージカードリーダ等の入出力機器としても良い。なお、原画像取得部(2)を入出力機器とした場合には、前述のとおり、原画像は既にデジタルデータ化されているため、データ変換手段(7)を必要とはしない。
取得手段(6)は、データ作製部(3)に備えたキーボード(8)、ポインティングデバイス(9)により原画像を作製及び/又は入力する構成としても良い。キーボード(8)及びポインティングデバイス(9)により作製及び/又は入力した原画像は、デジタルデータとして直接データ作製部(3)におけるCPU(10)へ送信することができる。さらには、原画像は、接続手段(5)を介して遠隔地からデータ作製部(3)へデジタルデータとして取得する構成としても良い。
次に、データ作製部(3)について説明する。階調模様作製装置(1)におけるデータ作製部(3)は、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)とし、CPU(10)、記憶手段(11)、表示手段(12)、キーボード(8)及びポインティングデバイス(9)から成る。さらに、CPU(10)は、グレースケール変換手段(13)、階調範囲補正手段(14)及び2値化手段(15)から成る。グレースケール変換手段(13)は、グレースケールデータを取得するために、CPU(10)に入力したデジタルデータをグレースケールデータに変換した後、2値化手段(15)へと送信する手段である。
グレースケールデータとは、白、灰及び黒のような輝度成分しか持たない色である無彩色により表したものである。グレースケールデータにおいて0階調は黒色となり、255階調は白色となり、0階調から255階調までを一定の濃度間隔により表している。なお、一定の濃度間隔とは、ISO/DIS12218:1996では0.15と規定している。デジタルデータを、グレースケールデータへ変換せずに2値化手段(15)により2値化した後のデジタルデータは、0階調と255階調の単純な二つの階調で表現したデータとなる。しかし、デジタルデータを、グレースケールデータへ変換した後、2値化手段(15)により2値化した際には、2値化後のデジタルデータは、0階調から255階調までの多階調で表現したデータとなる。
階調範囲補正手段(14)は、グレースケールデータの階調範囲を補正する手段である。グレースケールデータは、前述のとおり0階調から255階調までを無彩色により表している。グレースケールデータを、階調範囲を補正せずにレーザ加工用データを作製した場合、レーザ加工用データの階調ごとのレーザ出力は、0階調から255階調までが一定の比例関係を有するレーザ出力となる。
図3は、グレースケールデータにおける画像濃度と階調模様における階調再現性の関係を示す散布図の一例である。しかし、実際には図3に示すように、グレースケールデータにおける画像濃度と階調模様における階調再現性の関係は、比例関係ではない。そのため、グレースケールデータの階調範囲を補正する必要がある。階調範囲を補正する方法としては、まず、原画像として0階調から255階調までを一定の濃度間隔を有する無彩色により表したグレースケールデータを取得した後、デジタルデータへと変換する。次に、デジタルデータを基にレーザ加工用データを作製し、紙基材(S)へレーザ加工を行い、階調模様を作製する。最後に作製した階調模様における透過光観察時の画像濃度を反射濃度測定器等公知の濃度測定器を用いて測定することで、図3に示すような、グレースケールデータにおける画像濃度と階調模様における階調再現性を基に散布図を作製する。
なお、階調範囲の補正に用いる散布図は、レーザ照射装置(19)におけるレーザ加工条件、紙基材(S)の種類及び階調模様加工領域へ付与する液体等の各種作業条件を変更したものを、あらかじめ複数作製しておく。その複数作製した散布図の中から、作業条件が適合するものを選択し、その散布図に基づきグレースケールデータの階調範囲を補正する。
図3矢印に示すように、グレースケールデータにおける画像濃度X1から画像濃度X2までの範囲においては、グレースケールデータにおける画像濃度と、階調模様における階調再現性の関係が比例関係となる(A)比例区間が存在することがわかる。そこで、この(A)比例区間の範囲内にグレースケールデータの画像濃度を補正することで、単純な比例関係のレーザ加工用データとすることが可能である。なお、図3に示した散布図は、本発明における一例であるが、同様に散布図を作製した際には、(A)比例区間は散布図内に必ず存在する。ただし、(A)比例区間を示す画像濃度X1及び画像濃度X2は、レーザ加工による階調模様を作製する紙基材(S)及び/又はレーザ加工工程前における水分量調整時に用いた液体を変更した際には、一例で示した画像濃度とは異なる場合がある。その際には、グレースケールデータにおける画像濃度と、階調模様における階調再現性の関係が比例関係となる(A)比例区間を再度見い出した後、その場所に合わせて、グレースケールデータの画像濃度を補正する必要がある。
また、レーザ加工終了時には、水分量調整工程において紙基材(S)に付与した液体が、レーザ加工開始時と比較すると作業時間経過により蒸発していくことで水分量が減少する。そのため、画像濃度が高い範囲、例えば、画像濃度80〜100%の範囲においては、レーザ照射強度が高くなり、作業時間経過により、所定の水分量を維持することができなくなった紙基材(S)上に焼失が発生する場合があり、好ましくない。そのため、レーザ加工による焼失を未然に防止するために、(A)比例区間内ではあるが、レーザ加工により紙基材(S)が焼失しない範囲を除いた範囲内に画像濃度を補正することが好ましい。
なお、グレースケールデータにおける画像濃度と、階調模様における階調再現性の関係が比例関係となる(A)比例区間は、階調模様を付与する紙基材(S)の種類により異なるため、異なる種類の紙基材(S)へレーザ加工する際には、あらかじめ階調範囲を見極める必要がある。ただし、一度見極めた階調範囲は、後述する記憶手段(11)に加工データ(18)として記憶し、必要に応じて適宜呼び出すことも可能である。
2値化手段(15)は、階調範囲補正後のグレースケールデータを2値化することで、加工用データを取得する手段である。2値化することで、グレースケールデータは、画素単位ごとに0又は1の情報を持つ。それにより、レーザ加工部(4)においてレーザを出力する際、画素単位ごとにおける0又は1の情報に対して、照射又は未照射を選択することが可能となる。2値化手段(15)における2値化処理方法は、ディザ法、誤差拡散法及び濃度パターン法等公知の2値化処理方法を用いることが可能である。
記憶手段(11)は、CPUデータ(16)、準備データ(17)及び加工データ(18)を記憶する手段である。CPUデータ(16)とは、CPU(10)を動作するプログラムデータである。準備データ(17)とは、あらかじめ作製及び/又は取得した原画像をデジタルデータとして記憶したデータである。また、加工データ(18)とは、レーザ加工部(4)にて紙基材(S)にレーザ加工する際のレーザ加工条件をあらかじめ記憶したデータである。
表示手段(12)は、CPU(10)に入力したデジタルデータを表示する手段であり、階調模様作製装置(1)における表示手段(12)は、ディスプレイとする。キーボード(8)及びポインティングデバイス(9)は、ディスプレイ(13)上に原画像をデジタルデータとして入力したり、入力動作により記憶手段(11)に記憶したCPUデータ(16)、準備データ(17)及び加工データ(18)を読み出したりする手段である。
次に、レーザ加工部(4)について説明する。階調模様作製装置(1)におけるレーザ加工部(4)は、レーザ照射装置(19)及び加工ステージ(20)から成る。レーザ照射装置(19)は、データ制御手段(21)、発振器(22)、集光レンズ(23)及び図示しないスキャナモータから成る。データ制御手段(21)は、PC(3)にて作製した加工用データを受信した後、受信した加工用データに基づき画素単位ごとのレーザ出力となる電気エネルギーを決定する手段である。発振器(22)は、レーザ光を励起した後に出力する手段であり、データ制御手段(21)にて決定した電気エネルギーに応じて励起したレーザ光を出力する。集光レンズ(23)は、レーザ光を集光するレンズであり、発振器(22)にて出力したレーザ光を、紙基材(S)における階調模様加工領域(S1)へ集光する。スキャナモータは、集光レンズ(23)で集光したレーザ光を、X方向及びY方向へと走査する手段である。階調模様加工領域(S1)へ集光したレーザ光は、スキャナモータにより集光レンズ(23)を走査することで、熱加工により紙基材(S)における階調模様加工領域(S1)上に階調模様を付与する。
加工ステージ(20)は、紙基材(S)を積載する台である。加工ステージ(20)における紙基材(S)との接触面は、レーザ加工可能な程度の耐熱性を有するものとする。また、レーザ照射装置(19)と、一定の距離を保つために平滑性を有するものとする。さらに、本発明においては、紙基材(S)における階調模様加工領域(S1)は、所定の水分量となるまで水分を調整する必要がある。そのため、加工用ステージ(21)における材質は、耐水性を有するものとし、金属、セラミック、ガラス又は耐熱プラスチックが好ましい。
以降、図4により、図1の階調模様作製装置(1)を用いて原画像を紙基材(S)に階調模様として付与する方法について説明する。
図4は、階調模様の作製工程の流れを示すフローチャートである。始めに、紙基材(S)上へ付与する階調模様の原画像を取得する(ステップ1)。まず、ユーザは、紙基材(S)上へ付与する階調模様の原画像を準備する。原画像を取得する方法としては、原画像が施されている媒体から直接取得する方法、PC(3)により原画像を作製及び/若しくは入力し、取得する方法、撮像機器により原画像を撮像し、取得する方法、入出力機器により原画像を取得する方法又はあらかじめPC(3)に記憶している原画像を読み込み、取得する方法がある。原画像が施されている媒体から直接取得する方法とは、まず、写真、ロゴマーク、文字、絵画等の原画像が付与された媒体を準備する。原画像が付与された媒体とは、原画像が印刷された印刷物又は原画像が焼付けられた印画紙等とする。次に、原画像取得部(2)における取得手段(6)を動作し、準備した媒体から原画像を読み取った後、データ変換手段(7)へと送信する。データ変換手段(7)は、受信した原画像をデジタルデータへと変換した後、接続手段(5)を介してPC(3)におけるCPU(10)へ送信する。
PC(3)により原画像を作製及び/又は入力して取得する方法とは、PC(3)に備えたキーボード(8)、ポインティングデバイス(9)により原画像を作製及び/又は入力する方法である。画像処理ソフト(アドビ社製のPhotoshop等)を用いて、キーボード(8)及びポインティングデバイス(9)を動作し、ディスプレイ上に原画像を作製及び/又は入力する。作製及び/又は入力した原画像は、デジタルデータとして直接CPU(10)へ送信することができる。なお、一度作製及び/又は入力した原画像は、記憶手段(11)に準備データ(17)として記憶することで、再度原画像として用いることが可能となる。
撮像機器により原画像を撮像し、取得する方法とは、風景、人物、写真等の被写体を、撮像機器を動作し、撮像することで原画像を取得する。取得した原画像は、デジタルデータへと変換し、接続手段(5)を介してPC(3)におけるCPU(10)へ送信する。
入出力機器により原画像を取得する方法とは、あらかじめ作製及び/又は取得した原画像をデジタルデータとして記録した情報記録媒体を、PC(3)と接続手段(5)を介して接続した入出力機器を用いて、原画像をデジタルデータとして入力し、取得する。取得した原画像は、デジタルデータとして直接CPU(10)へ送信する。
あらかじめ、PC(3)における記憶手段(11)に記憶している原画像を読み込み、取得する方法とは、PC(3)により作製及び/又は入力し、PC(3)における記憶手段(11)に準備データ(17)として記憶した原画像を、キーボード(8)及びポインティングデバイス(9)を動作して読み込むことにより取得する方法である。取得した原画像は、デジタルデータとして直接CPU(10)へ送信する。さらには、原画像は、接続手段(5)を介して遠隔地からデジタルデータとして直接CPU(10)へ入力する構成としても良い。次にデジタルデータは、接続手段(5)を介してPC(3)へ送信する。
原画像が、赤、緑、青、黄又は紫等フルカラーにより表したカラー画像においては、PC(3)にて受信したデジタルデータの階調も、0階調から255階調までフルカラーにより表す。しかし、レーザ加工により得られる階調模様は、0階調から255階調まで階調を無彩色により表している。そこで、次に、PC(3)に記憶したデジタルデータから、レーザ加工部(4)において入出力可能な無彩色のデータを得るために、加工用データを作製する(ステップ2)。まず、原画像取得部(2)におけるデータ変換手段(7)により送信されたデジタルデータを、PC(3)におけるCPU(10)にて受信する。受信したデジタルデータは、グレースケールデータ変換手段(14)により、グレースケールデータとなる。グレースケールデータ変換手段(14)には、画像処理ソフト(アドビ社製Photoshop等)を用いる。画像処理ソフトを用いて、0階調から255階調までをRGBのフルカラーにより表したデジタルデータを、0階調から255階調までを無彩色の濃度変化により表現することで、グレースケールデータとなる。なお、原画像が、白、灰及び黒の無彩色により表した白黒画像の際には、PC(3)にて受信したデジタルデータは、そのままグレースケールデータとなる。
次に、階調補正手段(14)において、グレースケールデータにおける階調範囲を補正する。階調範囲は、あらかじめ、図3に示す散布図を作成しておき、その散布図に基づき補正する。なお、図3に示す散布図に基づく補正については、レーザ加工による階調模様を作製する紙基材(S)及び/又はレーザ加工工程前における水分量調整時に用いた液体を変更した際には、図3に示す(A)比例区間は変化するため、再度散布図を作成し、その散布図に基づき補正を行う必要がある。階調範囲補正後のグレースケールデータは、階調補正画像となる。最後に、階調補正データに対し、2値化手段(15)において2値化処理を行う。階調補正データにおける、画素が黒い箇所を「1」とし、画素が白い箇所を「0」で表すことで、2値化処理後の階調補正データは、加工用データとなる。
なお、レーザ加工により作製した階調模様を透過光で観察した際、明度が低く視認される箇所は、紙基材(S)におけるレーザ非照射部又はレーザ照射密度が低い部分である。反対に透過光で観察した際、明度が高く視認される箇所は、紙基材(S)におけるレーザ照射密度が高い部分である。加工用データにおける「1」及び「0」のうち、どちらを「オン(レーザ光照射部)」又は「オフ(レーザ光非照射部)」とするかは、用いるレーザ照射装置(19)により異なる。加工用データにおける「1」を「オン(レーザ光照射部)」とし、「0」を「オフ(レーザ光非照射部)」と設定したレーザ照射装置(19)を用いてレーザ加工した際には、レーザ加工により作製した階調模様を透過光で観察した原画像と階調が反転してしまう。そのため、加工用データにおける「1」を「オン(レーザ光照射部)」とし、「0」を「オフ(レーザ光非照射部)」と設定したレーザ照射装置(19)を用いる際には、階調補正データに対して2値化処理を行った後、階調を反転させ加工用データを得る必要がある。
次に、紙基材(S)に階調模様を付与する際のレーザ加工条件の設定を行う(ステップ3)。レーザ加工条件としては、レーザ出力、走査速度、レーザ波長、解像度等がある。レーザ出力、走査速度、レーザ波長、解像度及びレーザ照射密度は、加工用データにおけるすべての画素単位で同じ設定とし、レーザ照射密度においては、加工用データの画素単位ごとの画像濃度に応じて変化する。ただし、加工用データが異なるものを用いた際には、レーザ加工条件は、適宜設定し直す必要がある。
レーザ加工工程前においては、レーザ加工対象である紙基材(S)の水分量を調整する(ステップ4)。基材(S)における階調模様加工領域(S1)を十分に液体で濡らした後、加工ステージ(20)上に設置する。階調模様加工領域(S1)を液体で濡らすことで、レーザ照射時における階調模様加工領域(S1)の焦げ及び変色の発生を抑制することができる。また、液体で濡らすことで、紙基材(S)を構成する紙繊維が膨潤するとともに、紙繊維間に液体が浸透することで、レーザ光の到達深度を抑制することができる。それにより、レーザ加工深度の制御をレーザ光の強弱以外で調整することができ、紙基材(S)が薄い場合においても多階調表現を有する階調模様を付与することが可能となる。
紙基材(S)の水分量の調整方法としては、液体を紙基材(S)へ付与する方法、液体を紙基材(S)から脱水する方法及び/又は液体を紙基材(S)から乾燥により蒸発させる方法がある。水分量を調整する方法としては、まず、紙基材(S)の少なくとも階調模様を付与する階調模様加工領域(S1)を、所定の水分量を維持するまで十分に濡らす。液体は、霧吹き又はスポイト等を用いる方法及び/又は液体が入った容器へ紙基材(S)を投入することで付与する方法がある。液体付与後においては、階調模様加工領域(S1)表面を脱脂綿等で拭うことが好ましい。脱脂綿等で表面を拭うことで、レーザ加工時における加工ムラを抑制することができる。ただし、紙基材(S)の厚みが薄い場合においては、階調模様加工領域(S1)表面を脱脂綿等で拭うことにより損傷するおそれがある。その際は液体を紙基材(S)から自然乾燥又は送風により蒸発させ、水分量を調整することが好ましい。付与する液体は、水道水等の水、アルコール、ワニス、ワセリン等を用いることが可能であるが、好ましくは、揮発性の低い液体が良い。揮発性が高い液体を階調模様加工領域(S1)へ付与した際には、レーザ加工終了時まで所定の水分を維持することができないため、レーザ加工中に適宜、階調模様加工領域へ液体を補給する必要があり、好ましくない。
前述の水分量の調整方法は、製造工程を経て完成した紙基材(S)の水分量を調整する方法であるが、元々多量の水分を有している場合、例えば、紙基材(S)の製造工程においては、まず、紙基材(S)原料である紙繊維を離解及び叩解した後、填料及び薬品類を添加することで、紙料を作製する。次工程で抄紙機上において紙料は、抄紙工程、脱水工程、乾燥工程等を経て紙基材(S)となる。本発明における水分量の調整方法は、前述した脱水工程において紙料を脱水し、所定の水分量にすることでも良い。その場合、レーザ照射装置(19)を抄紙機上に設置することも可能となる。
次に、水分量調整後の紙基材(S)に、レーザ照射装置(19)を用いてレーザ光を照射し、階調模様の加工を行う(ステップ5)。レーザ照射装置(19)は、従来公知のものであり、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等を用いる。まず、PC(3)で作製した加工用データ(D4)を、レーザ照射装置(19)におけるデータ制御手段(21)に送信する。データ制御手段(21)は、受信した加工用データ(D4)の階調に応じたレーザ光を、発振器(22)より出力する。出力したレーザ光は、集光レンズ(23)を通して紙基材(S)の表面で集光した後、スキャナモータを走査することにより紙基材(S)における階調模様加工領域(S1)へ照射する。レーザ光を照射することで、階調模様加工領域(S1)に、原画像に基づく階調を有する階調模様を加工する。
図5は、階調模様を施した紙基材(S)断面のモデル図である。図5(a)は、加工ステージ(20)上に紙基材(S)を置いた図であり、図5(b)は、図5(a)に図示する領域Aの拡大図である。紙基材(S)は、紙繊維を叩解及び切断した後、抄紙工程、脱水工程及び乾燥工程を経て紙基材(S)となる。離解及び叩解することで、紙繊維1本1本は、それぞれが適当な長さと太さを有する紙繊維となる。したがって、図5(b)に示すように、紙基材(S)は、(ア)細繊維と(イ)太繊維から成る紙繊維が集合して構成される。
図5(c)は、紙基材(S)を所定の水分量を維持するまで液体で十分に濡らした後、表面を脱脂綿等で拭った図である。破線で表す領域は、紙基材(S)における階調模様加工領域(S1)である。図5(c)に示すように、紙基材(S)を液体で濡らすことで、紙基材(S)を構成する紙繊維に液体が浸透し、紙繊維が膨張する。同時に、膨張した紙繊維間の空隙にも液体が浸透する。図5(d1)は、図5(c)に示す、階調模様加工領域(S1)の表層に照射密度を低く設定したレーザ光を照射した図であり、図5(e1)は、照射密度の低いレーザ光を照射した後の紙基材(S)である。図5(e1)に示すように、紙基材(S)を構成する紙繊維間に液体を浸透した状態で、照射密度の低いレーザ光を照射することにより、紙基材(S)を形成している紙繊維中の細繊維のみが焼失する。同時に、レーザ光を照射することで紙繊維間に浸透していた液体が急激に気化する。それにより、焼失せずに残留した紙繊維間には、レーザ加工前と比較し、多くの空隙が形成される。レーザ光照射後の階調模様加工領域(S1)は、透過光で観察した際、紙繊維間に形成された空隙にて入射光が散乱することによって、入射光の透過率が低下する。それにより、照射密度を低く設定したレーザ光を照射した箇所は、上質紙(S)における未レーザ光照射部よりも入射光の透過率は低くなり、透過光で視認した際に明度が低く視認される。
図5(d2)は、図5(c)に示す、階調模様加工領域(S1)の表層に照射密度を高く設定したレーザ光を照射した図であり、図5(e2)は、照射密度の高いレーザ光を照射した後の紙基材(S)である。図5(e2)に示すように、紙基材(S)を構成する紙繊維間に液体を浸透した状態で、照射密度の高いレーザ光を照射することで、紙基材(S)を形成していた太繊維及び細繊維が焼失する。レーザ光照射後の階調模様加工領域(S1)を透過光で観察した際、照射密度を高く設定したレーザ光を照射した箇所は、紙基材(S)における未レーザ光照射部よりも紙層が薄いので、入射光の透過率は高くなり、透過光で視認した際に明度が高く視認される。
本発明のレーザ加工による階調模様作製方法の構成である水分調整工程は、特許第3385461号記載の穿孔によって画像を形成する技術、特許第3438066号記載の穿孔の大小によって階調画像を形成する技術等の形成体を製造する際に用いることができる。穿孔は、レーザの照射強度によって基材を焼失することで形成され、焼失する際に穿孔の周辺部が変色してしまう問題がある。この問題を解決するために本発明の構成である水分調整工程を用いて、穿孔を形成することによって穿孔の周辺部の変色を防止することができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照にして更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。
(実施例)
実施例として、図6に示すとおり、原画像であるカラー原稿から、レーザ加工による階調模様を作製する例を説明する。なお、図6は、本発明において採用する任意の模様を有するカラー原稿であるが、これは一例に過ぎず、この例に限定されるものではない。始めに、図6(D1)に示す原画像を準備した。原画像は、浮世絵がオフセット印刷により紙基材(S)に付与した印刷物である。次に、準備した印刷物を、原画像取得部(2)における取得手段(6)を動作して画像を読み取った。本実施例において、原画像取得部(2)は、スキャナ(GT−X700、エプソン社製)とした。読み取った画像は、スキャナ(2)におけるデータ変換手段(7)へと送信した後、デジタルデータへと変換した。次に、デジタルデータは、ケーブル(5)を介してPC(3)へ送信した。
実施例として、図6に示すとおり、原画像であるカラー原稿から、レーザ加工による階調模様を作製する例を説明する。なお、図6は、本発明において採用する任意の模様を有するカラー原稿であるが、これは一例に過ぎず、この例に限定されるものではない。始めに、図6(D1)に示す原画像を準備した。原画像は、浮世絵がオフセット印刷により紙基材(S)に付与した印刷物である。次に、準備した印刷物を、原画像取得部(2)における取得手段(6)を動作して画像を読み取った。本実施例において、原画像取得部(2)は、スキャナ(GT−X700、エプソン社製)とした。読み取った画像は、スキャナ(2)におけるデータ変換手段(7)へと送信した後、デジタルデータへと変換した。次に、デジタルデータは、ケーブル(5)を介してPC(3)へ送信した。
次に、PC(3)にて受信したデジタルデータを基に、加工用データ(D5)を作製した。まず、スキャナ(2)より送信されたデジタルデータを、PC(3)におけるCPU(10)にて受信した。受信したデジタルデータは、画像処理ソフトであるPhotoshop(アドビ社製)を用いて、グレースケールデータ(D2)へと変換した。Photoshopにおけるカラーモードをグレーに設定することで、RGBのフルカラーにより表したデジタルデータは、0階調から255階調までを無彩色の濃度変化により表現したグレースケールデータ(D2)となる。
次に、階調補正手段(14)において、あらかじめ作製した図3に示す散布図に基づき、グレースケールデータ(D2)における階調範囲を補正した。なお、本実施例においては、図3矢印に示すように、グレースケールデータにおける画像濃度が30%から100%までの範囲で、グレースケールデータにおける画像濃度と、階調模様における階調再現性の関係が比例関係となる(A)比例区間が存在することがわかる。ただし、レーザ加工による焼失を未然に防止するために、画像濃度30〜80%の範囲内に階調範囲を補正した。階調範囲補正後の階調補正データ(D3)は、(A)比例区間である画像濃度30%から80%の範囲内である71階調〜132階調へと補正したデータとなる。最後に、階調補正データ(D3)に対してディザ法により2値化処理し、2値化データ(D4)を得た。本実施例のレーザ照射装置(19)においては、加工用データ(D5)における画素が黒い箇所「1」をレーザ照射部とし、反対に画素が白い箇所「0」は、レーザ非照射部と設定している。そのため2値化データ(D4)の階調を反転させることで加工用データ(D5)を得た。
次に、紙基材(S)に階調模様を付与する際のレーザ照射装置(19)の加工条件を設定した。レーザ加工条件としては、レーザ出力、走査速度、レーザ波長及び解像度等がある。これらは、適宜設定することができる。なお、本実施例に用いたレーザ照射装置においては、レーザ出力は0〜30W、走査速度は0〜6000mm/s、解像度は50〜800dpiの範囲内においてそれぞれ適宜設定可能なものを用いた。なお、本実施例においては、レーザ出力3W、走査速度2000mm/s、レーザ波長10.6μm及び解像度600dpiとした。また、レーザ照射密度においては、20%から80%までの範囲とし、この範囲内で加工用データの画素単位ごとの画像濃度に応じたレーザ照射密度に設定した。
レーザ加工工程前においては、レーザ加工対象である紙基材(S)の水分量を調整した(ステップ4)。なお、本実施例において紙基材(S)は、上質紙(厚さ0.088mm:紀州製紙社製)とし、階調模様加工領域(S1)の水分量は、水道水をスポイトで付与することで調整した。所定の水分量を維持するまでスポイトを用いて水道水を階調模様加工領域(S1)へ付与した後、階調模様加工領域(S1)表面を、レーザ加工時における加工ムラを抑制するため脱脂綿で拭い、水分量調整を終了した。水分量調整後の階調模様加工領域(S1)の水分量は、公知の秤(AT400:メトラー・トレド)を用いて、測定したところ35%であった。なお、水分量は、水分量(%)=(液体の重量/(紙基材の重量+液体の重量))×100で求めた。
次に、水分量調整後の上質紙(S)に、レーザ照射装置(19)を用いてレーザ光を照射し、階調模様加工を行った(ステップ5)。本実施例においてレーザ照射装置(19)は、炭酸ガスレーザ装置(ML−G9310:キーエンス社製)を用いた。まず、PC(3)で作製した加工用データ(D5)を、炭酸ガスレーザ装置(20)におけるデータ制御手段(21)に送信した。データ制御手段(21)は、受信した加工用データ(D4)の階調に応じたレーザ光を1画素ごとに発振器(22)より出力した。出力したレーザ光は、集光レンズ(23)を通して上質紙(S)表面で集光され、スキャナモータを走査することにより、上質紙(S)における階調模様加工領域(S1)へ照射し、階調模様(D6)を加工した。
図7は、図6における(D6)に示したレーザ加工による階調模様を有する上質紙(S)の表面の状態を表す図である。図7に示すようにレーザ加工を施していない無地部(P1)、レーザ照射密度80%でレーザ光を照射し、作製した明度が高い階調模様部(P2)、レーザ照射密度20%でレーザ光を照射し作製した明度が低い階調模様部(P3)を表す。レーザ加工を施していない無地部(P1)、明度が高い階調模様部(P2)及び明度が低い階調模様部(P3)における透過率を、透過型スキャナ(ES−2200:エプソン社製)を用いて、本実施例における階調模様を施した上質紙(S)を入力し、公知の画像処理ソフト(Photoshop:アドビ社製)を用いて測定した。その際、画素値255=透過率100%として透過率を測定した。図7に示した、本実施例に用いた上質紙(S)無地部(P1)における透過率は、29.8%であった。
また、図7に示した、本実施例において階調模様の加工を施した最も明度の高い箇所(P2)の透過率は、58.8%であり、最も明度の低い箇所(P3)の透過率は25.5%であった。
なお、レーザ加工による階調模様を作製する紙基材(S)は、上記枚葉紙にかかわらず、連続紙においても同様にレーザ加工を行うことが可能である。また、紙基材(S)は、繊維状の素材から構成されている基材であり、繊維間に液体が浸透するものであれば良く、コピー紙又はトイレットペーパーのように、紙基材(S)の厚さが0.05〜0.08mmと薄い場合においても、多階調表現を有する階調模様を付与することができ、上質紙に限定されるものではない。
1 階調模様作製装置
2 原画像取得部
3 データ作製部
4 レーザ加工部
5 接続手段
6 取得手段
7 データ変換手段
8 キーボード
9 ポインティングデバイス
10 CPU
11 記憶手段
12 表示手段
13 グレースケール変換手段
14 階調範囲補正手段
15 2値化手段
16 CPUデータ
17 準備データ
18 加工データ
19 レーザ照射装置
20 加工ステージ
21 データ制御手段
22 発振器
23 集光レンズ
S 紙基材
S1 階調模様加工領域
P1 レーザ加工を施していない無地部
P2 明度が高い階調模様部
P3 明度が低い階調模様部
2 原画像取得部
3 データ作製部
4 レーザ加工部
5 接続手段
6 取得手段
7 データ変換手段
8 キーボード
9 ポインティングデバイス
10 CPU
11 記憶手段
12 表示手段
13 グレースケール変換手段
14 階調範囲補正手段
15 2値化手段
16 CPUデータ
17 準備データ
18 加工データ
19 レーザ照射装置
20 加工ステージ
21 データ制御手段
22 発振器
23 集光レンズ
S 紙基材
S1 階調模様加工領域
P1 レーザ加工を施していない無地部
P2 明度が高い階調模様部
P3 明度が低い階調模様部
Claims (7)
- 取得手段を少なくとも有する原画像取得部と、データ作製部及びレーザ加工部から成る階調模様作製装置を用いて、紙基材における階調模様加工領域に、レーザ光線の照射により階調模様を付与するレーザ加工による階調模様作製方法であって、
前記原画像取得部において、前記紙基材へ付与する前記階調模様の原画像を取得する原画像取得工程と、
前記デジタルデータを多階調とするために、グレースケールデータへと変換し、前記グレースケールデータの階調範囲を補正して階調補正データを作製し、前記階調補正データを2値化処理して加工用データを作製する加工用データ作製工程と、
前記加工用データに基づいて、前記レーザ光線の照射密度、出力、照射強度及び走査速度の加工条件を設定し、前記加工条件を前記レーザ加工部へ送信するレーザ加工条件設定工程と、
前記紙基材における前記階調模様加工領域を所定の水分量となるまで水分を調整する水分調整工程と、
前記加工用データ及び前記レーザ加工条件に従って前記水分調整された前記紙基材における前記階調模様加工領域に、前記レーザ加工部からレーザ光線を照射し、前記階調模様を付与するレーザ加工工程と、
を有することを特徴とするレーザ加工による階調模様作製方法。 - 前記水分調整工程は、前記紙基材における前記階調模様加工領域を所定の水分量となるまで液体を付与、脱水及び/又は乾燥することで、水分を調整することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工による階調模様作製方法。
- 前記液体は、揮発性の低い液体とすることを特徴とする請求項2記載のレーザ加工による階調模様作製方法。
- 前記グレースケールデータへの変換は、前記デジタルデータにおける階調を、0階調から255階調までをISO/DIS12218:1996で規定した0.15の一定の濃度間隔を有する無彩色で表すことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のレーザ加工による階調模様作製方法。
- 前記階調補正データの作製は、あらかじめ作製してあるグレースケールデータにおける画像濃度と階調模様における階調再現性の関係を示す散布図に基づき、前記変換したグレースケールデータの階調範囲を前記散布図の比例区間の範囲内に補正することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のレーザ加工による階調模様作成方法。
- 前記取得手段における原画像の取得は、前記原画像が施されている媒体から直接取得する、前記データ作製部により原画像を作製及び/又は入力する撮像機器により原画像を撮像する入出力機器により原画像を取得するか又はあらかじめデータ作製部に記憶している原画像を読み込むかのいずれか一つにより取得することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のレーザ加工による階調模様作製方法。
- 請求項1乃至6いずれかの方法により得られる階調模様を有する用紙。
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JP2008286831A JP2010111071A (ja) | 2008-11-07 | 2008-11-07 | 階調模様作製方法及び階調模様を有する用紙 |
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JP2014523813A (ja) * | 2011-10-03 | 2014-09-18 | エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド | 対象物に最適にレーザマーキングを施すための方法及び装置 |
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-
2008
- 2008-11-07 JP JP2008286831A patent/JP2010111071A/ja active Pending
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