JP2010110971A - タイヤ加硫装置及びタイヤ製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】タイヤ加硫装置のブラダ内の温度分布の均一性を高めつつ、ブラダが局部的に損傷するのを抑制する。
【解決手段】加硫モールド内に収納した生タイヤ内でブラダ20を膨張させ、複数の噴出口43からスチームSをブラダ20内に噴き出して供給する。噴出口43のスチームSの噴出方向をセンターポスト30に向け、噴出口43から噴き出したスチームSをセンターポスト30に当てて、スチームSを所定方向に拡散させるようにしてブラダ20内に供給する。これにより、スチームSがブラダ20に直接噴き出されて当たるのを防止しつつ、各噴出口43からブラダ20の周方向の同じ側に向けてスチームSを噴き出して、ブラダ20内にスチームSの螺旋流を発生させ、生タイヤを加熱して加硫成型を進行させる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、加硫モールドに収納した生タイヤ(グリーンタイヤ)内でブラダを膨張させて生タイヤを加硫するタイヤ加硫装置及びタイヤ製造方法に関する。
空気入りタイヤは、一般に、未加硫ゴム等からなるタイヤ構成部材により生タイヤを成形した後、タイヤ加硫装置の加硫モールド内に収納して加硫成型して製造される。また、このタイヤ加硫装置として、従来、センターポスト等に取り付けたブラダを生タイヤ内に配置して膨張させ、ブラダ内にスチームを供給して生タイヤを加熱及び加硫するタイヤ加硫装置が知られている(特許文献1参照)。
図4Aは、このような従来のタイヤ加硫装置が備えるブラダ機構の例を模式的に示す要部正面図、図4Bは、図4AのX−X線矢視断面図である。また、図4Aでは、膨張した状態のブラダ等を透視して内部の構成も示している。
この従来のタイヤ加硫装置100は、図示のように、膨張収縮可能な袋状のブラダ101と、ブラダ101の上下端部を各々保持する上下のクランプ部材102、103と、上下方向に進退して上クランプ部材102を上下方向に移動させるブラダ101の中央部に配置されたセンターポスト104とを備えている。
また、タイヤ加硫装置100は、下クランプ部材103に、スチーム供給手段の供給管路105が接続されたスチーム供給孔(傾斜ザグリ孔)103Hが形成され、その内部にノズル等からなるスチームSの噴出口106が設けられている。この噴出口106は、センターポスト104の周りに等間隔で3つ、それぞれ斜め上方に向けて配置され、スチームSを、センターポスト104側からブラダ101内面の所定位置(ここでは、上下の中央付近)に向かって斜め上方に噴き出す。タイヤ加硫装置100は、加硫時の所定のタイミングで、この各噴出口106からスチームSを噴き出してブラダ101内に供給し、スチームSをブラダ101内に充填して、スチームSからの熱伝達により生タイヤを加熱して加硫する。
このように、従来は、スチームS等の加熱媒体の噴出口106を、その加熱媒体の噴出方向がブラダ101の所定位置に向くようにブラダ101内に配置し、噴出口106から加熱媒体をブラダ101に向かって直接噴出させるのが一般的である。ところが、このようにすると、噴出口106から噴き出した加熱媒体が、ブラダ101内面の所定箇所に繰り返し直接当たるため、ブラダ101の加熱媒体が当たる特定範囲が、熱や圧力等により局部的に損傷する傾向があり、その内面側から損傷が優先的に進行し易くなる。その結果、ブラダ101が局部的に劣化や老化して耐久性が低下し、その寿命も短くなって使用可能時間や回数が減少し、ブラダ101の交換頻度も高くなることがある。
また、ブラダ101の局部的な劣化に伴い、その部分の膨張が設定よりも大きくなり、タイヤの内面が部分的に変形するとともに、加熱媒体としてスチームSを使用すると、ブラダ101が劣化して部材内部に水が溜まる等し、より劣化が進行し易くなる。加えて、この従来のタイヤ加硫装置100では、供給する加熱媒体をブラダ101に向けて噴き出すだけであり、ブラダ101内の加熱媒体の流れを適宜調整して温度分布の均一性を高めるのが難しく、ブラダ101の周方向や上下方向で温度差が生じる恐れもある。
特開2004−122650号公報
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、タイヤ加硫装置のブラダ内の温度分布の均一性を高めつつ、ブラダが局部的に損傷するのを抑制し、ブラダの耐久性を高めて寿命を延長させることである。
本発明は、生タイヤを収納する加硫モールドと、生タイヤ内に配置されて膨張するブラダと、ブラダ内に配置されるセンターポストと、ブラダ内に加熱媒体を噴き出して供給する供給手段とを備え、加硫モールドに収納した生タイヤ内でブラダを膨張させ、ブラダ内に加熱媒体を供給して生タイヤを加硫するタイヤ加硫装置であって、供給手段は、加熱媒体の噴出方向がセンターポストに向けて配置された噴出口を有し、噴出口から噴き出した加熱媒体をセンターポストに当てて供給することを特徴とする。
また、本発明は、加硫モールドに収納した生タイヤ内でブラダを膨張させ、ブラダ内に加熱媒体を供給して生タイヤを加硫するタイヤ製造方法であって、ブラダ内のセンターポストに向けて噴出口から加熱媒体を噴き出す工程と、噴き出した加熱媒体をセンターポストに当ててブラダ内に供給する工程と、供給した加熱媒体により生タイヤを加熱する工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、タイヤ加硫装置のブラダ内の温度分布の均一性を高めつつ、ブラダが局部的に損傷するのを抑制でき、ブラダの耐久性を高めて寿命を延長させることができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のタイヤ加硫装置は、加硫モールドに収納した生タイヤ内でブラダを膨張させ、ブラダ内に加熱媒体を供給して生タイヤを加熱し、加硫成型して製品タイヤを製造する。また、この加熱媒体は、所定温度に加熱された流体(気体や液体)等であり、以下では、加熱媒体としてスチームを使用する例を説明する。
図1は、本実施形態のタイヤ加硫装置を模式的に示す要部断面図であり、型閉めした状態のタイヤ加硫装置の概略構成を、加硫する生タイヤの軸線を含む面で切断した断面(一部を除く)により示している。
このタイヤ加硫装置1は、図示のように、生タイヤGTを収納する加硫モールド10と、生タイヤGT内に配置されて膨張するブラダ20と、生タイヤGT内のブラダ20内に配置されるセンターポスト30と、ブラダ20内に加熱媒体であるスチームSを噴き出して供給するスチーム供給手段40とを備えている。
加硫モールド10は、タイヤの外面形状を規定する外型であり、ここでは、生タイヤGTの赤道面付近で上下に分割された上型11及び下型12からなる。これら上型11と下型12は、生タイヤGTを挟んで対向して配置され、上下方向から組み合わされて、内部に生タイヤGTを収納可能なキャビティを区画する。また、各型11、12の生タイヤGT側の内面は、成型するタイヤのトレッドパターンを含む外面形状に応じて、各面がタイヤ各部の成型面に各々形成され、収納した生タイヤGTを型付けする。更に、加硫モールド10は、上型11や下型12を上下方向に相対移動させて互いに接近及び離反させ、型閉め及び型開きさせる移動機構(図示せず)を備え、これにより、キャビティを開放及び閉鎖して、生タイヤGTの内部への収納と、加硫後のタイヤの取り出しとが行われる。
ブラダ20は、ゴム等の耐熱性や伸縮性を有する材料により膨張収縮可能な袋状に形成され、加硫時に、スチーム供給手段40からのスチームS、又は他の供給手段(図示せず)から供給される加圧媒体により内圧が付加されて生タイヤGT内で膨張し、生タイヤGTを押圧して加硫モールド10に押し付ける。また、ブラダ20には、内部のスチームS等を排出する手段(図示せず)が接続され、これにより、加硫の所定段階で加圧媒体やスチームSが排出され、或いは、加硫終了後に、内部の開放とスチームSの排出とに応じて、タイヤの押圧を解除して収縮する。加えて、ブラダ20は、その上下の中心孔を囲む環状の端部21、22が、それぞれ上下のクランプ部材31、32により気密状に保持されている。
クランプ部材31、32は、ブラダ20の断面T字状の各端部を挟み込んで係止し、同芯状に保持する挟込部材等(図示せず)からなる係止(保持)手段であり、それぞれ全体として、加硫モールド10の内周部に当接した状態で配置可能なリング状(円盤状)に形成されている。本実施形態では、下クランプ部材32が、下型12と共に位置が固定され、それらに対し、上クランプ部材31と上型11が互いに独立して上下方向に移動可能に構成され、上クランプ部材31を移動させてブラダ20の両端部21、22間の距離を変化させる。これにより、ブラダ20は、上クランプ部材31の上昇に伴い筒状に変形し、その下降による両クランプ部材31、32の接近及び、上記した内圧の付加により生タイヤGT内で膨張する。
その際、このタイヤ加硫装置1では、筒状や柱状等(ここでは円筒状)のセンターポスト30を、下クランプ部材32の中央孔を摺動可能に貫通させてブラダ20内に配置し、その上端部に上クランプ部材31の中央部を取り付け、センターポスト30を上下方向に進退させて上クランプ部材31を移動させる。このように、センターポスト30は、ブラダ20の両端部21、22間に亘って配置され、膨張するブラダ20内の中央部に位置する中央部材であり、ピストン・シリンダ機構等からなる駆動機構(図示せず)により駆動されて、所定のタイミングで上下方向に進退する。これにより、上クランプ部材31を移動させて、ブラダ20を筒状形状と膨張形状との間で変形させる。
本実施形態のタイヤ加硫装置1は、上型11を上昇させて加硫モールド10を型開きし、かつ、上クランプ部材31を上昇させた状態で、生タイヤGTを筒状のブラダ20の周囲に沿って下降させて下型12上に載置する。続いて、上クランプ部材31を下降させつつブラダ20を膨張させて、ブラダ20を、生タイヤGT内に挿入及び配置して生タイヤGTの内面に密着させる。その後、上型11を下降させて加硫モールド10を型閉めし、その内側に生タイヤGTやブラダ20等を収納する。また、タイヤ加硫装置1は、スチーム供給手段40の供給源41(例えば、ボイラ)から、加熱及び加圧したスチームSを供給管路42に供給し、スチームSを、供給管路42に連通してブラダ20内に位置する噴出口43から噴き出す。このスチームSを、ブラダ20内に拡散等させて供給し、ブラダ20に内圧を付加して生タイヤGTを所定圧力で押圧しながら、ブラダ20を介して生タイヤGTを所定の加硫温度に加熱する。
図2は、このタイヤ加硫装置1のブラダ20を透視して内部に配置された構成と共に模式的に示す要部正面図であり、図3は図2のY−Y線矢視断面図である。
タイヤ加硫装置1は、図示のように、下クランプ部材32に、スチーム供給孔32H(図2では、その付近を透視して示す)と、その内部に設けられた噴出口43とを備え、それらが膨張したブラダ20内(図3参照)の周方向に沿って複数(ここでは3つ)配置されている。
スチーム供給孔32Hは、下クランプ部材32の上面に開口するザグリ孔であり、その下クランプ部材32内の終端部に、スチーム供給手段40の供給管路42が接続されている。また、スチーム供給孔32Hは、後述する噴出口43の配置方向や角度に応じて、所定方向及び角度で、下クランプ部材32の外周側に向かって傾斜して形成されている。
噴出口43は、スチームSをブラダ20内に噴き出す噴出手段(噴出部材)であり、スチーム供給孔32H内に収容されて取り付けられ、供給管路42からのスチームSを所定方向に向けて噴出(噴射)するノズル等からなる。また、噴出口43は、センターポスト30の周りに等間隔で、かつ、それぞれセンターポスト30から所定距離を隔てた位置で、各スチームSの噴出方向をセンターポスト30に向けて配置され、噴き出したスチームSをセンターポスト30の所定位置に向けて噴き出す。噴出口43は、このスチームSを、噴出方向前方側のセンターポスト30の対向面に当てて、その流れをセンターポスト30で遮り、ブラダ20内の他の所定方向に向かって反射させるようにして拡散させてブラダ20内に供給する。このように、スチームSがブラダ20に直接噴き出されて特定範囲に当たるのを防止しつつ、スチームSを、ブラダ20内の下方から上方のセンターポスト30に向けて傾斜等させて噴き出し、センターポスト30を介してスチームSをブラダ20内に各々拡散して充填する。
その際、この噴出口43は、スチームSの噴出方向が水平方向から上方に所定角度K(図2参照)(ここでは10〜30°)で傾斜して配置され、スチームSを、膨張したブラダ20内の下方の配置位置から上方のセンターポスト30に向けて、斜め上方に向かって傾斜させて噴き出す。また、噴出口43は、スチームSを、センターポスト30の上下方向の中央部T(ここでは、センターポスト30の上下方向の中心Cから上下の両方向にそれぞれ、そのブラダ20内長さLの10%の距離内の領域)に向けて噴き出すように、その方向に向けて噴出方向が設定されている。これにより、スチームSを、センターポスト30に当てて、その入射側の逆側の上方側に向けて主に反射させ、センターポスト30により、その各位置の外面の形状や湾曲等に応じた各方向に向けて拡散させる。
更に、噴出口43は、スチームSの噴出方向を膨張した状態のブラダ20の周方向側(図3参照)に向けて、同方向に傾斜等して配置され、スチームSをブラダ20の周方向側に向けて、センターポスト30の接線方向に沿うように噴き出す。このようにして、スチームSをセンターポスト30の外周面に沿うように当てて、噴出方向前方側のブラダ20の周方向側に向けて拡散させて供給する。また、ここでは、複数の噴出口43は、それぞれのスチームSの噴出方向が、ブラダ20の周方向の同じ側(図3では反時計回りのR方向側)に向けて、同方向に対する傾斜角度を揃える等して同じ状態に配置されている。これにより、各スチームSをブラダ20の周方向の同じ側に向けて、互いに同じ角度Kで噴き出し、センターポスト30により同様に拡散させるようになっている。
加えて、このタイヤ加硫装置1は、噴出口43のセンターポスト30に対するスチームSの噴出角度又は方向を変更する変更手段(図示せず)を有し、これらを各々変更することで、スチームSの噴出態様を各位置で変化させる。この変更手段は、例えば、噴出口43の先端に、スチームSを案内してその流れの方向を変更可能な筒状やラッパ状のガイド部材を取り付けて構成し、その案内方向を任意に変更してスチームSの噴出角度等を変化させる。或いは、変更手段は、噴出口43のノズルを、それよりも大きなスチーム供給孔32H内に首振り変位可能に取り付けるとともに、その状態を所定状態で固定するロック機構を設ける等して構成される。これにより、噴出口43は、スチームSがセンターポスト30に当たる位置や角度、又は方向等を変更し、それぞれに応じて、ブラダ20内におけるスチームSの拡散する角度や方向、又は拡散の仕方等を適宜変化させる。
次に、このタイヤ加硫装置1により、生タイヤGTを加硫してタイヤを製造する手順や動作について説明する。なお、以下の手順等は、タイヤ加硫装置1が備える制御装置(図示せず)により制御され、装置各部を予め設定されたタイミングや条件で関連動作させる等、連動して作動させて実行される。この制御装置は、例えばマイクロプロセッサ(MPU)、各種プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、及びMPUが直接アクセスするデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータから構成され、接続手段を介して装置各部が接続されている。これにより、制御装置は、装置各部と制御信号や各種データを送受信し、加硫に関する各動作を各々実行させる。
タイヤ加硫装置1は、まず、上記したように、加硫モールド10(図1参照)内に生タイヤGTを収納し、その内部にブラダ20を配置して、加圧媒体、又は加熱媒体でもあるスチームSを供給し、ブラダ20を膨張させて生タイヤGTの内面に密着させる。また、所定のタイミングで、ブラダ20内のセンターポスト30に向けて各噴出口43(図2、図3参照)からスチームSを噴き出してブラダ20内に供給し、スチームSをブラダ20内に充填する。その際、噴出口43から噴き出したスチームSをセンターポスト30に当てて、所定方向に反射させるようにしてブラダ20内に拡散させて供給する。このスチームSをブラダ20内に充填して生タイヤGTを加熱しつつ加圧し、所定のタイミングで、スチームSを止めてブラダ20内を密閉し、或いは、スチームSの供給を再開等させて、生タイヤGTを所定の加硫温度に維持して加硫成型を進行させる。このように、加硫モールド10に収納した生タイヤGT内でブラダ20を膨張させ、膨張したブラダ20内にスチームSを供給して生タイヤGTを加硫し、所定形状に成型して製品タイヤを順次製造する。
このように、本実施形態では、噴出口43からスチームSをセンターポスト30に向けて噴き出し、スチームSをセンターポスト30に当てて拡散等させてブラダ20内に供給する。即ち、スチームSをセンターポスト30に一旦当ててから供給するため、スチームSがブラダ20に向けて直接噴き出し、流速を維持して当たるのを防止することができる。同時に、スチームSが拡散するため、圧力を分散させて略均等にした状態で、スチームSをブラダ20の広範囲に向けて供給でき、ブラダ20内面の所定箇所に繰り返し高圧のスチームSが当たるのを防止することもできる。その結果、ブラダ20の特定範囲が損傷し、局部的に劣化や老化が進行するのを抑制できるため、ブラダ20の耐久性を高めて寿命も長くでき、その使用可能時間や回数を増加させて交換頻度を減少させることもできる。これに伴い、ブラダ20の膨張が部分的に大きくなり、タイヤ内面が部分的に変形するのを抑制できるため、製品タイヤの内面形状の精度を高めることもできる。
また、スチームSの流れを拡散(又は散乱)させて、ブラダ20内の全体に亘って、より均等に供給できるため、ブラダ20内の温度分布の均一性を高めることができる。その際、噴出口43のスチームSの噴出方向や角度等を任意に変更して、スチームSがセンターポスト30に当たる位置、角度、方向、或いは、スチームSの拡散の方向や仕方等を変化させることで、容易にブラダ20内のスチームSの流れを変化させて適宜調整することができる。これにより、例えばスチームSをブラダ20内の必要な部分に向かって優先して供給し、或いは、スチームSをブラダ20内で螺旋状をなすように周方向に回転(図3の矢印R参照)させ、ブラダ20内に螺旋流を発生させて撹拌等し、スチームSをブラダ20の全体に効率的に供給することもできる。その結果、ブラダ20内全体のスチームS及び熱の流れを円滑かつ適切にすることができ、温度やスチームSによる損傷を最小限に抑制しながら、ブラダ20の周方向や上下方向の温度差の発生を抑制して温度分布を一層均一にすることができる。
併せて、スチームSが凝縮してブラダ20の下部に水(ドレン水)が溜まり、その部分の温度が上昇し難くなっても、スチームSを順次供給して同温度を早期に上昇させて、ブラダ20の上下の温度差を緩和することができる。更に、ブラダ20各部における温度の上昇率の差を減少させて、ブラダ20内全体の温度分布を、加硫の間を通して、より均一にすることができ、生タイヤGTの加硫も、全体に亘って均一に進行して、その加硫時間を短縮することもできる。
従って、本実施形態によれば、タイヤ加硫装置1のブラダ20内の温度分布の均一性を高めつつ、ブラダ20が局部的に損傷するのを抑制でき、ブラダ20の耐久性を高めて寿命を延長させることができる。また、本発明は、噴出口43によるスチームSの噴出方向をセンターポスト30に向けることで実現できるため、ブラダ20内に他の部材等を設ける必要がなく、装置の構成を簡略にして、コストの増加や装置の複雑化を防止することもできる。更に、このタイヤ加硫装置1は、上記したように、センターポスト30に対する噴出口43のスチームSの噴出角度又は方向を変更する手段を有するため、噴出口43の配置及びスチームSの流れの調整を容易に行え、スチームSをブラダ20内に一層適切に供給することができる。その結果、タイヤサイズにより異なる上記した各効果を最大限に得るためのスチームSの噴出角度や方向を、それぞれに応じて適宜調整でき、様々なタイヤサイズに対応して、それぞれ最適な位置にスチームSを拡散等させることができる。
ここで、このタイヤ加硫装置1では、スチームSをブラダ20内の下方から上方のセンターポスト30に向けて傾斜させて噴き出したが、スチームSは、噴出口43のブラダ20内における配置位置等に応じて、上方から下方に向けて傾斜させ、或いは、傾斜させずにセンターポスト30に向けて噴き出すようにしてもよい。ただし、噴出口43を、下方から上方に傾斜させてスチームSを噴き出すように配置するときには、センターポスト30に当たる前後のスチームSが互いに干渉せず、拡散されたスチームSを滞留無くブラダ20の上方側等の必要な方向に円滑に供給することができる。同時に、ブラダ20内の上記した螺旋流もより確実に発生するため、ブラダ20内の全体のスチームSの流れを円滑にして温度分布を更に均一にできる。併せて、噴出口43から、センターポスト30の中央部T(図2参照)に向けてスチームSを噴き出すことで、よりスチームSを供給する必要がある膨張したブラダ20の上下方向の中央部付近に向けてスチームSを拡散させて供給でき、生タイヤGTの加硫を適切に行うこともできる。
その際、スチームSの噴出方向の角度Kは、噴出口43とセンターポスト30間の距離やブラダ20の大きさ等にもよるが、10°よりも小さいと、ブラダ20の下方側に拡散するスチームSが増加して、上方側へのスチームSの供給量が必要量よりも少なくなる恐れがある。これに対し、角度Kが30°よりも大きいと、ブラダ20の下方側へ供給されるスチームSの供給量を確保できずに、上下の温度差が大きくなる恐れがある。従って、スチームSの噴出方向の角度Kは、10〜30°の角度に設定するのがより望ましい。これにより、スチームSを適切に拡散させてブラダ20内の全体に螺旋流を確実に発生させ、ドレン水の発生等に伴うブラダ20内の上下の温度差を一層低減させて温度分布の均一性を効果的に高めることができる。
また、噴出口43を、そのスチームSの噴出方向をブラダ20の周方向側に向けて配置すると、センターポスト30を介して、拡散等したスチームSがブラダ20内で周方向に回転するように供給される結果、上記した螺旋流がブラダ20内の全体に亘って確実に発生する。従って、噴出口43は、そのように配置するのがより望ましい。同様に、複数の噴出口43を、それぞれのスチームSの噴出方向をブラダ20の周方向の同じ側に向けて配置するときには、各スチームSの流れの方向が揃い、より確実、強力に螺旋流がブラダ20内の全体で発生して、ブラダ20内の温度分布をより均一にすることができる。その際、噴出口43をセンターポスト30の周りに3つ以上設けた場合には、スチームSをブラダ20の周方向に沿ってより均等に供給でき、周方向の流れや螺旋流を円滑かつ適切に発生させることができる。
なお、本実施形態では、スチームSを加熱媒体として使用したが、スチームSは、ブラダ20の膨張開始時等の加圧媒体として使用してもよい。即ち、加熱媒体は、加熱だけでなく、同時に、加圧するための加圧媒体をかねるように作用させてもよい。また、加熱媒体には、スチームS以外に、加熱された空気や窒素等、他の加熱された流体を使用してもよい。ただし、加熱媒体にスチームSを使用するときには、ブラダ20の部材内部に水が溜まる現象が生じ難くなり、劣化の進行を効果的に抑制して、より大きな効果が得られるため、本発明は、このような場合に好適である。一方、噴出口43は、スチームSを、ある程度の広がりを持たせて所定方向に噴き出すようにしてもよく、その噴き出したスチームSの流速や噴出範囲も、ブラダ20の大きさや形状、センターポスト30の外面形状や離間距離等に応じて適宜設定すればよい。
(タイヤ加硫試験)
本発明の効果を確認するため、以上説明したタイヤ加硫装置1により生タイヤGTを加硫(以下、実施例という)し、スチームSをブラダ101(図4参照)に向かって直接噴出させる従来のタイヤ加硫装置100による生タイヤGTの加硫(以下、従来例という)と比較した。その際、実施例及び従来例では、いずれも加硫する生タイヤGTの3本に1回の割合で、生タイヤGTの内面に離型剤(タイヤ内面液)を塗布し、この離型剤をブラダ20の外面に転写して、ブラダ20と加硫後のタイヤとの離型性を確保した。
このようにして、それぞれのブラダ20の耐久限界(使用可能加硫回数)を調査してブラダ寿命を比較するとともに、生タイヤGTの加硫に要した時間(タイヤ加硫時間)を比較した。表1に、この比較結果を示すが、ブラダ寿命とタイヤ加硫時間は、それぞれ従来例を100とした指数で表す。
Figure 2010110971
その結果、表1に示すように、ブラダ寿命は、従来例の100に対し、実施例では2倍の200であり、大幅にブラダ寿命が長くなることが分かった。また、タイヤ加硫時間は、従来例の100に対し、実施例では90であり、ブラダ20内の温度分布の均一性が高くなる等して、タイヤ加硫時間が従来よりも短くなることが分かった。これより、本発明により、タイヤ加硫装置1のブラダ20内の温度分布の均一性を高めつつ、ブラダ20が局部的に損傷するのを抑制でき、ブラダ20の耐久性を高めて寿命を延長できることが証明された。
本実施形態のタイヤ加硫装置を模式的に示す要部断面図である。 図1のタイヤ加硫装置のブラダを透視して内部に配置された構成と共に模式的に示す要部正面図である。 図2のY−Y線矢視断面図である。 図4Aは従来のタイヤ加硫装置が備えるブラダ機構の例を模式的に示す要部正面図、図4Bは図4AのX−X線矢視断面図である。
符号の説明
1・・・タイヤ加硫装置、10・・・加硫モールド、11・・・上型、12・・・下型、20・・・ブラダ、30・・・センターポスト、31・・・上クランプ部材、32・・・下クランプ部材、40・・・スチーム供給手段、43・・・噴出口、GT・・・生タイヤ、S・・・スチーム。

Claims (7)

  1. 生タイヤを収納する加硫モールドと、生タイヤ内に配置されて膨張するブラダと、ブラダ内に配置されるセンターポストと、ブラダ内に加熱媒体を噴き出して供給する供給手段とを備え、加硫モールドに収納した生タイヤ内でブラダを膨張させ、ブラダ内に加熱媒体を供給して生タイヤを加硫するタイヤ加硫装置であって、
    供給手段は、加熱媒体の噴出方向がセンターポストに向けて配置された噴出口を有し、噴出口から噴き出した加熱媒体をセンターポストに当てて供給することを特徴とするタイヤ加硫装置。
  2. 請求項1に記載されたタイヤ加硫装置において、
    噴出口のセンターポストに対する加熱媒体の噴出角度又は方向を変更する変更手段を有することを特徴とするタイヤ加硫装置。
  3. 請求項1又は2に記載されたタイヤ加硫装置において、
    噴出口が、ブラダ内の下方から上方のセンターポストに向けて傾斜させて加熱媒体を噴き出すことを特徴とするタイヤ加硫装置。
  4. 請求項3に記載されたタイヤ加硫装置において、
    噴出口が、センターポストの上下方向の中央部に向けて加熱媒体を噴き出すことを特徴とするタイヤ加硫装置。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載されたタイヤ加硫装置において、
    噴出口が、加熱媒体の噴出方向をブラダの周方向側に向けて配置されていることを特徴とするタイヤ加硫装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載されたタイヤ加硫装置において、
    供給手段は、それぞれの加熱媒体の噴出方向がブラダの周方向の同じ側に向けて配置された複数の噴出口を有することを特徴とするタイヤ加硫装置。
  7. 加硫モールドに収納した生タイヤ内でブラダを膨張させ、ブラダ内に加熱媒体を供給して生タイヤを加硫するタイヤ製造方法であって、
    ブラダ内のセンターポストに向けて噴出口から加熱媒体を噴き出す工程と、
    噴き出した加熱媒体をセンターポストに当ててブラダ内に供給する工程と、
    供給した加熱媒体により生タイヤを加熱する工程と、
    を有することを特徴とするタイヤ製造方法。
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