JP2010110222A - 新規な食品保存料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】穀類等を原料として、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性である乳酸菌及び高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性を兼ね備えた酵母を用いて、pHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%で、食塩濃度が3〜20%の穀類からの発酵諸味を製造する。
【選択図】 なし
Description
従来の天然系保存資材は、酸・エチルアルコール・塩化ナトリウムの抗菌三要素の中の1種類乃至2種類の要素を用いた資材である。また、近年開発された新規技術では三要素を兼ね備えたものもあるが、三要素の濃度・範囲が抗菌性より調味に重点を置いた技術である。そのため、保存性を維持するためには漬け込み素材に対して配合量を多くしなければならなかった。
しかしながら、抗菌三要素のバランスが悪いため期待する食品の品質保持期間を達成するためには高配合となるので、素材の風味を損なう傾向があった。また、調味機能を付与した保存資材では、原料としてではなく、添加物として配合する場合が多く表示が複雑となる。そのため、添加物ではなく微生物の発酵による物質変換が考えられるが、本来、微生物汚染を防止するための資材であるため、微生物が活動出来難い環境であるので発酵法による保存資材の開発は行われてこなかった。また、このような環境に耐性の高い微生物は知られていなかった。
(1)並式複発酵により、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性の乳酸菌の産生する乳酸と高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性の酵母の産生するエチルアルコールによりpHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%であることを特徴とする食塩濃度が3〜20%の発酵諸味を提供するものである。
(2)発酵基材として穀類又は発芽穀類とこれらを原料とする麹を用いることを特徴とする前記(1)の発酵諸味製造方法を提供するものである。
(3)使用乳酸菌が高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性であることを特徴とする前記(1)の発酵諸味製造方法を提供するものである。
(4)使用酵母が高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性であることを特徴とする前記(1)の発酵諸味製造方法を提供するものである。
(5)前記(1)の発酵諸味を固液分離した液体を提供するものである。
(6)アルコール発酵以前に塩化ナトリウム添加して諸味塩化ナトリウム濃度3%以上とすることを特徴とする前記(1)の発酵諸味製造方法を提供するものである。
本発明によれば、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性乳酸菌及び高塩化ナトリウム耐性と高エチルアルコール耐性を兼ね備えた酵母を用いて、pHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%で、食塩濃度が3〜20%の穀類からの発酵諸味を製造が可能となった。
また、本発明者らは乳酸菌及び酵母の発酵基材として穀類又は発芽穀類とこれらを原料とする麹を用いることを見いだして、本発明を完成するに至った。
次に本発明者らは、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性である乳酸菌を使用することにより食品保存資材が製造できることを新規に見いだしたことで、本発明を完成するに至った。
さらに、高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性である酵母を使用することにより食品保存資材が製造できることを新規に見いだしたことで、本発明を完成するに至った。
またさらに、固液混合した食品保存資材を固液分離した液体だけでも抗菌三要素を有する食品保存資材となりうることを見いだし、本発明を完成するに至った。
そして、酵母によるエチルアルコール発酵以前に塩化ナトリウムを添加して諸味塩化ナトリウム濃度3%以上とすることで安定的に食品保存資材を製造できることを新規に見いだして、本発明を完成するに至った。
麹菌と高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性である乳酸菌及び高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性を兼ね備えた酵母による発酵でpHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%で、食塩濃度が3〜20%の穀類からの発酵諸味が製造可能かどうかを次の方法により検討した。
蒸煮した精米1kgに水2リットルと米麹1kgを加え、60℃で2時間加熱し甘酒を調製した。甘酒の濃度はBx.29.5であった。この甘酒に天然塩227gを加え冷却後に、予め調製した上記甘酒と同一製法の甘酒で培養した白神乳酸菌3138aC培養液500mlを添加し、30℃で24時間乳酸発酵をさせた。乳酸発酵後の甘酒のpHは4.1であった。この乳酸発酵甘酒に製パン用として市販されている白神こだま酵母を20g添加し、30℃で20日間時々撹拌して発酵させた。発酵後に62℃・5分の加熱処理を行い、諸味中に残存する乳酸菌及び酵母の殺菌と酵素の失活を行った。加熱処理後の諸味の成分はエチルアルコール10.9%、pH4.1、塩化ナトリウム濃度5.1%であった。
実施例1で製造した諸味に天然塩150gを添加して諸味の塩化ナトリウム濃度を
8.1%としたものを適宜蒸留水で希釈して30℃での保存試験を行った。希釈諸味の
pHは4.1であった。保存性はpHを測定して判定した。その結果を表2に示した。
実施例1より高塩化ナトリウム濃度での発酵諸味の製造と、乳酸菌・酵母の殺菌を行わない場合の諸味の保存性について次の方法により検討した。
蒸煮した精米10kgに水30リットルと米麹10kgさらに天然塩4.7kgを加えた。この諸味に予め調製した実施例1で記載した甘酒で培養した白神の乳酸菌作々楽培養液5リットルを添加し、20℃で24時間乳酸発酵をさせた。乳酸発酵後の諸味のpHは4.7であった。この乳酸発酵諸味に製パン用として市販されている白神こだま酵母を
100g添加し、5日後にさらに蒸煮した精米10kgと米麹10kg・水30リットル・天然塩4.7kg・白神こだま酵母100gを加えた。この後20℃で30日間発酵を行わせたところ、諸味のpHは4.6、エチルアルコール濃度は10.5%となった。
製造する食品保存資材の天然系色素による有色化の可能性を次の方法により検討した。
蒸煮した赤色米1kgに水2リットルとうるち精米麹1kgを加え、60℃で2時間加熱し甘酒を調製した。この甘酒に天然塩227gを加え冷却後に、予め調製した実施例1で記載した甘酒で培養した白神乳酸菌3138aC培養液1リットルを添加し、30℃で24時間乳酸発酵をさせた。乳酸発酵後の甘酒のpHは3.7であった。この乳酸発酵甘酒に製パン用として市販されている白神こだま酵母を20g添加し、5日後にさらに蒸煮した有色米1kgとうるち精米麹1kg・水3リットル・白神こだま酵母20g・天然塩227gを加えた。この後30℃で30日間発酵を行わせた。発酵後に62℃・5分の加熱処理を行い、諸味中に残存する乳酸菌及び酵母の殺菌と酵素の失活を行った。加熱処理後の諸味のpHは3.7、エチルアルコール濃度は11.5%であった。
製造する食品保存資材の米以外の素材による発酵の可能性を次の方法により検討した。
蒸煮したひえ1kgに水2リットルと蒸煮した粟より製造した粟麹1kgを加え、60℃で2時間加熱し甘酒を調製した。この甘酒に天然塩227gを加え冷却後に、予め調製した実施例1で記載した甘酒で培養した白神の乳酸菌作々楽培養液1リットルを添加し、30℃で24時間乳酸発酵をさせた。乳酸発酵後の甘酒のpHは4.6であった。この乳酸発酵甘酒に製パン用として市販されている白神こだま酵母を20g添加し、30℃で20日間時々撹拌して発酵させた。発酵後に天然塩150gを加えてミキサーにより残存する粗粒を粉砕してから62℃・5分の加熱処理を行い、諸味中に残存する乳酸菌及び酵母の殺菌と酵素の失活を行った。加熱処理後の諸味の成分はエチルアルコール11.8%、pH4.6、塩化ナトリウム濃度8.0%であった。
本発明による食品保存資材は、塩化ナトリウムを含有していることから、本食品保存資材は、塩化ナトリウムが含有されていても風味上影響の少ない生鮮食品・加工食品全てで利用が可能であり、その範囲は非常に広く、また、これまで賞味期間の問題で流通が不可能であった食品の広域流通が可能になるとともに、新規な食品や加工方法の開発にも繋がる。
Claims (6)
- 並式複発酵により、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性の乳酸菌の産生する乳酸と高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性の酵母の産生するエチルアルコールによりpHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%であることを特徴とする食塩濃度が3〜20%の発酵諸味
- 発酵基材として穀類又は発芽穀類とこれらを原料とする麹を用いることを特徴とする請求項1記載の発酵諸味製造方法
- 使用乳酸菌が高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性であることを特徴とする請求項1記載の発酵諸味製造方法
- 使用酵母が高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性であることを特徴とする請求項1記載の発酵諸味製造方法
- 請求項1記載の発酵諸味を固液分離した液体
- アルコール発酵以前に塩化ナトリウム添加して諸味塩化ナトリウム濃度3%以上とすることを特徴とする請求項1記載の発酵諸味製造方法
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JPN6012033035; 秋田魁新報, (2008.08.14), 朝刊, p.22 * |
JPN6012033036; Innovation, (2006), 16, [5], p.24-27 * |
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