JP2010108108A - 住宅の計測管理システム - Google Patents

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Abstract

【課題】住宅と設備の状態を常時計測し、蓄積することで、個別の住宅毎の断熱性能と設備の機器性能の劣化度を的確に把握することが可能な住宅の計測管理システムを提供する。
【解決手段】住宅10の内部の複数箇所に設置されて各所の温度を計測する内部状態計測手段1と、外部の温度を計測する外部状態計測手段2と、空調設備31の電気消費量を計測するエネルギー消費量計測手段3と、これらの計測手段で検出された実測データを時刻歴とともに記録するデータ蓄積手段5と、蓄積された実測データから住宅の断熱性能及び空調設備の機器性能の少なくとも一方の劣化度を解析する劣化度解析手段6とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、長期間に亘って住宅の状態を管理する際に使用される住宅の計測管理システムに関するものである。
従来、オフィスビルや工場などの建物の内部を区画単位で管理するに際して、各区画の電気、ガス、水などのエネルギー消費量を測定し、その測定結果を画面に表示するなどして、その区画の利用者にエネルギー消費の節減を促す管理システムが知られている(特許文献1,2など参照)。
また、この特許文献1では、各区画のエネルギー消費量の最適値を算出するために、外気温などの気象データ、室内の温度や湿度や在室人数などの室内状態の測定値、建物や区画の熱効率などの建造物データ等を利用している。さらに、消費されたエネルギーをCO排出量及び廃棄物排出量に換算し、目標達成率にして各区画の端末に配信している。
また、建物に対して定期的又は不都合が生じた折に、点検、改修などをおこなうことがあるが、この際に発生した点検情報及び改修情報をデータ化して蓄積することにより建物の履歴を明確にし、劣化の度合いを精密に診断する方法が、特許文献3に開示されている。さらに、この特許文献3には、建物の履歴が明確になることによって転売時の価格設定を合理的におこなうことができることが開示されている。
また、特許文献4には、ビルなどの建物を管理するに際して、電気、ガス等のエネルギー消費量の計測値を蓄積しておき、不具合が生じたときに現況と比較することで、設備機器の不具合の特定をおこなうことが開示されている。
特開2007−133469号公報 特開2004−170310号公報 特開2002−328970号公報 特許第3025818号公報
しかしながら、従来の特許文献1,2に開示された管理システムは、エネルギー消費量の節減を目標に、各区画の利用者や管理者にわかりやすく実績を示すものであって、建物や設備の劣化の度合いを解析できるものではない。
また、特許文献3に開示されたシステムは、分散したり逸失したりしがちな文書を電子データ化して個々の住宅と結びつけて保存しておくことで、住宅の履歴を明確にするものであり、計測手段によって計測された実測データが時刻歴とともに蓄積されるものではない。
さらに、特許文献4に開示されたシステムは、設備機器のエネルギー消費量の実測データを蓄積しているが、異状の発見に利用しているに過ぎない。また、運転時間などの使用実績から残存寿命を予測するが、設備機器毎の劣化の現状分析や断熱性能の劣化の診断をおこなっているわけではないので予測に誤差が生じやすい。
そこで、本発明は、住宅と設備の状態を常時計測し、蓄積することで、個別の住宅毎の断熱性能と設備の機器性能の劣化度を的確に把握することが可能な住宅の計測管理システムを提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の住宅の計測管理システムは、住宅の内部の複数箇所に設置されて各所の温度を計測する内部状態計測手段と、前記住宅の外部の温度を取得する外部状態取得手段と、前記住宅に設置された設備のエネルギー消費量を計測するエネルギー消費量計測手段と、上記計測手段及び前記外部状態取得手段で検出された実測データを時刻歴とともに記録するデータ蓄積手段と、前記データ蓄積手段に蓄積された実測データから前記住宅の断熱性能及び前記設備の機器性能の少なくとも一方の劣化度を解析する劣化度解析手段とを備えたことを特徴とする。
ここで、前記劣化度解析手段は、前記設備の稼働時の稼働効率が低下しているか否かを前記データ蓄積手段に蓄積された実測データから判断する稼働効率診断部を備えた構成とすることができる。
また、前記劣化度解析手段は、前記断熱性能の劣化度を判断する断熱劣化度診断部を備え、前記稼働効率診断部によって稼働効率の低下が検知された際に、前記断熱劣化度診断部により前記断熱性能の劣化度を判断し、前記断熱性能の劣化度と前記稼働効率の低下度に基づいて前記機器性能の劣化度を判断する構成であってもよい。
さらに、前記内部状態計測手段では、温度とともに湿度の計測をおこなうこともできる。また、前記住宅に設置された設備が空調設備であって、前記エネルギー消費量計測手段が電気消費量計測手段であるものであってもよい。さらに、前記住宅に設置された設備が給湯設備であって、前記エネルギー消費量計測手段がガス消費量計測手段又は電気消費量計測手段であってもよい。
また、前記住宅に設置された水道設備の水消費量を計測する水消費量計測手段を備えた構成とすることもできる。
さらに、前記劣化度解析手段によって算出された劣化度に基づいて前記住宅の現状の価値を算出する価値算出手段を備えた構成とすることもできる。
また、前記住宅の構造、広さ、方位及び築年数の少なくとも一つを含む建物情報と、住宅の設備仕様及び断熱仕様の少なくとも一方の改修前後の情報を含む改修仕様情報とが蓄積されたリフォームデータベースを備えるとともに、前記劣化度解析手段によって劣化度が高いと判断された前記設備及び前記住宅の断熱部材の少なくとも一方を交換、補修又は追加した場合の改修効果を、前記リフォームデータベースに蓄積された前記建物情報及び前記改修仕様情報との比較をおこなうことで予測する改修効果予測手段を備えた構成とすることもできる。
ここで、前記改修効果予測手段は、改修費用を算出するための費用データベースを備え、前記改修効果は前記改修費用とともに出力される構成であってもよい。
このように構成された本発明の住宅の計測管理システムは、住宅の内外の温度と設備のエネルギー消費量を検出し、時刻歴とともにデータ蓄積手段に記録する。そして、その蓄積された実測データから住宅の断熱性能や設備の機器性能の劣化度を解析する劣化度解析手段を備えている。
このため、単に稼働時間や使用期間の長さから劣化度を推定する従来の方法に比べて、各住宅における現状の性能を的確に把握して劣化度を算出することができる。
また、設備の稼働効率の低下を判断する稼働効率診断部を備えることによって、住宅の断熱性能及び設備の機器性能の少なくとも一方が劣化していることを容易に検知することができる。
さらに、断熱劣化度診断部を備えることによって、断熱性能の劣化度を設備の機器性能の劣化度から分離して把握できるようになり、その結果、機器性能の劣化度も把握することができるようになる。
また、温度とともに湿度の計測をおこなうことで、より詳細に住宅の状態を計測できるようになる。
さらに、空調設備、給湯設備、水道設備などの様々な設備のエネルギー消費量を計測することで、住宅に設置された様々な設備の劣化度を解析することができる。
そして、このように劣化度が的確に算出された住宅であれば、評価を正確におこなうことができ、適正な価格で中古住宅として流通させることができる。
また、劣化度が高いと判断された場合には、改修前後の情報が蓄積されたリフォームデータベースに蓄積されたデータと比較をおこなうことで、改修による改修効果が高い精度で予測された状態でリフォームをおこなうことができる。
さらに、費用データベースによって各改修プランの改修費用を算出することで、費用対効果を判断することができる。
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の住宅の計測管理システムの構成を示したブロック図で、図2は、住宅10に配置される各手段の構成を説明する説明図である。
この住宅10の計測管理システムは、住宅10の内部の複数箇所に設置されて各所の温度などを計測する内部状態計測手段1と、住宅10の外部の温度などを取得する外部状態取得手段としての外部状態計測手段2と、住宅10に設置された設備のエネルギー消費量を計測するエネルギー消費量計測手段3と、住宅10に設置された水道設備の水消費量を計測する水消費量計測手段4と、これらの計測手段1,2,3,4で検出された実測データを時刻歴とともに記録するデータ蓄積手段5と、データ蓄積手段5に蓄積された実測データから住宅10の断熱性能及び設備の機器性能の少なくとも一方の劣化度を解析する劣化度解析手段6と、その解析結果を出力する出力手段7とを主に備えている。
この内部状態計測手段1は、図2に示すように、住宅10の内部に配置される温度センサ11、湿度センサ12などを備えた、室温、湿度などの内部状態を計測する手段である。
この住宅10には、一階部10aと二階部10bとがあり、各空間にそれぞれ温度センサ11と湿度センサ12が取り付けられ、室温・湿度の測定がおこなわれる。なお、一階部10a、二階部10bにおいて複数の部屋がある場合は、部屋毎に温度センサ11、湿度センサ12を取り付けることもできる。
また、外部状態計測手段2は、住宅10の外部の外気温、湿度などを計測するための手段であって、温度センサ21、湿度センサ22などによって構成される。ここで、住宅10の日向側と日陰側では、通常、外気温・湿度が異なっているため、複数の箇所に温度センサ21、湿度センサ22を設置するのが好ましい。さらに、風速や日照量などを計測するセンサを設置してもよい。
なお、自ら計測するのではなく、気象庁などから提供される周辺地域の気象データを取得して利用する外部状態取得手段であってもよい。
また、エネルギー消費量計測手段3は、電気、ガスなどのエネルギーの消費量を計測する手段である。例えば、設備として電気によって作動する空調設備31、照明設備32、ポンプ33、ヒートポンプ式給湯器(図示省略)などを使用する場合は、電気消費量をエネルギー消費量として測定する。ここで、空調設備31には、冷房機器、暖房機器、除湿機器、加湿機器などが含まれる。
また、これらの電気設備は、電力会社などから供給される商用電源系統からの電力によって主に作動することになるが、太陽光発電パネル10d,・・・を屋根部10cに設置して自家発電をおこなっている場合は、その電力を利用することもできる。
また、ガスによって作動する給湯設備としてのガス給湯器35、ガスコンロ(図示省略)などを設備として使用する場合は、ガス消費量をエネルギー消費量として測定する。
さらに、水道設備としての流し台41、ガス給湯器35に供給される水、バスやトイレ(図示省略)などに使用される水は、水消費量として測定する。
そして、この住宅10には、計測管理システムの邸側装置50が設置されており、この邸側装置50によって各種、エネルギー消費量の計測をおこなう。
この邸側装置50は、電気消費量の計測をおこなう電力測定器30Aと、ガス消費量の計測をおこなうガス測定器30Bと、給湯量の測定をおこなう給湯量測定器350と、水消費量の計測をおこなう水道測定器40と、これらの測定器から受信された実測データを、通信網52を通じてメインサーバ60に送信する情報送受信端末51とを備えている。
この電力測定器30Aは、分電盤34に接続されており、測定された電気消費量はデジタル値の実測データとして出力されて情報送受信端末51に送られる。また、電力測定器30Aは、空調設備31、照明設備32、ポンプ33などの各機器の電気消費量をそれぞれ個別に測定可能な構成にしておく。
また、ガスメータ36に接続されたガス測定器30Bによって測定されたガス消費量は、デジタル変換されて実測データとして情報送受信端末51に送られる。さらに、ガス給湯器35に接続された給湯量測定器350では、温水として供給された給湯量が測定され、デジタル値として出力された実測データが情報送受信端末51に送られる。
一方、水道メータ42に接続された水道測定器40によって測定された水消費量は、デジタル変換されて実測データとして情報送受信端末51に送られる。
そして、情報送受信端末51では、各測定器30A,30B,350,40から実測データを受信した際に、その実測データを受信した日時を時刻歴として付加する。また、このような各測定器30A,30B,350,40と情報送受信端末51との通信は、無線でおこなわれていても、有線でおこなわれていてもいずれであってもよい。
さらに、このように情報送受信端末51によって受信された実測データは、一時的に内部の記憶手段(図示省略)に記録される。そして、この記憶手段に記録された実測データは、定期的又は送信指令信号が入力されたときに、通信網52を通じてメインサーバ60に送信される。
このメインサーバ60は、図1に示すように、データ蓄積手段5を備えており、このデータ蓄積手段5に住宅10の邸側装置50から送信された実測データが記録される。このデータ蓄積手段5には、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置が使用できる。
また、メインサーバ60には、劣化度解析手段6が設けられている。この劣化度解析手段6は、空調設備31などの稼働時の稼働効率が低下しているか否かを判断する稼働効率診断部61と、住宅10の断熱性能の劣化度を判断する断熱劣化度診断部62とを備えている。
この稼働効率診断部61では、データ蓄積手段5に蓄積された過去の実測データと最新の実測データとを比較して、稼働効率が低下していないかを判断する。この稼働効率診断部61の処理の一例を、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、温度センサ11、湿度センサ12などの内部状態計測手段1によって、室温・湿度の測定を常時、おこなう(ステップS1)。
そして、測定された室温及び湿度の少なくとも一方が、設定値を超えた場合に、空調設備31の電源が入り、冷房機器又は暖房機器などの空調設備31が稼働することになる(ステップS3)。なお、この空調設備31の運転開始は、居住者の判断によっておこなってもよい。
さらに、この空調設備31の稼働時には、温度センサ11、湿度センサ12などによって住宅10の内部の室温・湿度の測定がおこなわれるとともに、温度センサ21、湿度センサ22などによって住宅10の外部の外気温・湿度の測定がおこなわれる(ステップS4A)。また、稼働中の空調設備31の電力消費量も測定される(ステップS4B)。
一方、これらの測定値は、情報送受信端末51からメインサーバ60に送信され、逐次、データ蓄積手段5に記録されていくことになる。そして、稼働効率診断部61では、定期的又は診断指令信号が入力されたときに、これらの蓄積された実測データに基づいて、空調設備31の稼働効率が低下していないかの診断をおこなう。
例えば、ある時点で測定された現状実測データから稼働効率の低下があるか否かを診断するには、まず、データ蓄積手段5に記録された過去の実測データから、現状実測データの室温・湿度と外気温・湿度との関係に類似するデータを抽出する(ステップS5)。
そして、現状実測データと類似する過去の実測データの電気消費量を抽出し、現状実測データの電気消費量と比較する。この結果、外気温と室温の関係がほぼ同一であるにも関わらず、現状実測データの電気消費量が多くなっていれば、空調設備31の稼働効率が低下していると判断できるため、双方の電気消費量の比などに基づいて稼動効率の低下度を算出する(ステップS6)。
さらに、このようにして算出された稼働効率の低下度が許容範囲内であるか否かを判断し(ステップS7)、許容範囲内であれば「異状なし」という判定をおこなう(ステップS8)。
他方、算出された稼働効率の低下度が許容範囲を超えた場合は、「異状あり」という判定をおこなう(ステップS9)。すなわち、空調設備31の機器性能及び住宅10の断熱性能の少なくとも一方が劣化すると、空調設備31の稼働効率が低下することになるので、低下度が大きい場合はいずれかに異状があるという判断になる。
そこで、ステップS10では断熱性能に劣化があるか否かを断熱劣化度診断部62で判断し、断熱性能に劣化がなければ稼働効率の低下の原因を空調設備31の機器性能の劣化であると判定する(ステップS11)。
他方、断熱性能に劣化があると判断された場合は、断熱性能のみが劣化しているのか、又は断熱性能と空調設備31の機器性能の両方が劣化しているのかを、断熱性能の劣化度と稼働効率の低下度とを比較することにより判断する(ステップS12)。
続いて、断熱劣化度診断部62の処理の一例を、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、断熱劣化度診断部62で診断をおこなうために、空調設備31を稼動させ(ステップS21)、室温が設定温度に到達するのを待つ(ステップS22)。そして、設定温度に到達した後に、空調設備31を停止する(ステップS23)。
さらに、ステップS24では、住宅10の内部の室温・湿度の測定と、外部の外気温・湿度の測定を続け、温度と湿度の推移を計測する。このような計測は、過去において定期的におこなっておくこともできるし、通常の使用時であっても空調設備31が停止した後の実測データが蓄積されており、これらの実測データが推移データとなる。
そして、このようにして測定された現状実測データの推移データと同一又は類似する過去の推移データを、データ蓄積手段5に記録された過去の実測データの中から抽出する。
例えば、室温と外気温との関係が現状の推移データと同一又は類似している過去の推移データから、空調設備31を停止した後に室温と外気温とが等しくなるまでにかかる時間を抽出し、現状の推移データとの比較をおこなう。その結果、現状の推移データの方が短時間で室温と外気温とが等しくなるのであれば、住宅10の断熱性能が劣化しているといえる。
そこで、過去の推移データと現状の推移データから、室温と外気温とが等しくなるまでの時間をそれぞれ抽出してその比などを求め、それを基準にして断熱性能の低下度を算出する(ステップS26)。
さらに、このようにして算出された断熱性能の低下度が許容範囲内であるか否かを判断し(ステップS27)、許容範囲内であれば「異状なし」という判定をおこなう(ステップS28)。
他方、算出された断熱性能の低下度が許容範囲を超えた場合は、断熱性能が変化する外的要因があるか否かの判断をおこなう(ステップS29)。すなわち、住宅10の周囲の植栽の変化による日照の変化、通風の変化などの外的要因がある場合は、断熱部材などの断熱性能が低下していなくても室温の推移に影響を与えることがある。
そこで、このような外的要因がない場合は断熱性能の劣化と判断する(ステップS30)。他方、外的要因がある場合は、断熱性能の低下がすべて外的要因によるものであれば「異状なし」とし、外的要因の影響以上に断熱性能の低下が認められる場合は断熱性能の劣化と判断する(ステップS31)。
また、このように劣化度解析手段6の稼働効率診断部61及び断熱劣化度診断部62で算出された空調設備31の機器性能及び住宅10の断熱性能の劣化度は、プリンタ、ディスプレイ、記憶装置などの出力手段7に出力される。
さらに、図1に示すように、価値算出手段71では、劣化度解析手段6によって算出された空調設備31の機器性能の劣化度や住宅10の断熱性能の劣化度に基づいて、住宅10の現状の価値を算出する。すなわち、空調設備31や断熱部材の状態が的確に明示できれば、残存寿命や改修費用の予測がしやすく、住宅10の性能保証などをおこなって価格に合理的に反映させることができる。
次に、本実施の形態の住宅10の計測管理システムの作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の住宅の計測管理システムは、住宅10の内外の温度・湿度と電気消費量などのエネルギー消費量を検出し、時刻歴とともにデータ蓄積手段5に記録する。
そして、その蓄積された実測データから住宅10の断熱性能や空調設備31の機器性能の劣化度を解析する劣化度解析手段6を備えている。
このため、単に稼働時間や使用期間の長さから均一に劣化度を推定する従来の方法に比べて、各住宅10における空調設備31や断熱部材の現状の性能を的確に把握して劣化度を算出することができる。
すなわち、空調設備31や断熱部材の劣化は、時間の経過だけを要因にして発生するものではなく、製造時の個体差、使用環境などによって劣化の度合いが異なることが多い。そこで、実際の使用状態の中で計測されて蓄積された実測データに基づいて、その劣化度を判断するようにすれば、現状の残存性能についての判断を適切におこなうことができる。
また、空調設備31などの設備の稼働効率の低下を判断する稼働効率診断部61を備えることによって、住宅10の断熱性能及び設備の機器性能の少なくとも一方が劣化していることを容易に検知することができる。
さらに、断熱劣化度診断部62を備えることによって、住宅10の断熱性能の劣化度を設備の機器性能の劣化度から分離して把握できるようになる。すなわち、空調設備31の稼働効率が低下しても、その原因が住宅10の断熱性能の劣化によるものであるのか、空調設備31自体の機器性能が劣化したことによるものであるのかが把握できない。その結果、まだ充分に使用可能な空調設備31や断熱部材を交換又は改修することになり、不経済である。
これに対して断熱性能のみの劣化度が明確になれば、機器性能の劣化度も明確になり、いずれか劣化の進んでいる方だけを交換又は改修することで、空調設備31の稼働効率を元に戻すことができるので、経済的である。
また、温度とともに湿度の計測をおこなうことで、より詳細に住宅10の状態を計測できるようになる。すなわち、住宅10で生活する上での快適度は、温度だけでなく湿度によっても影響を受けるので、双方を計測することによって、住宅10の内部状態を的確に把握することができる。
そして、このように劣化度が的確に算出された住宅10であれば、性能保証などの評価を正確におこなうことができ、買い手も安心して購入することができる。また、適正な価格で中古住宅として流通させることができるため、中古住宅の流通を促進することができる。さらに、まだ充分に使用できる住宅10を取り壊して新たに立て直すという無駄を省くこともできる。
次に、前記実施の形態とは別の形態の住宅の計測管理システムについて、図5−9を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
この実施例で説明する住宅10の計測管理システムは、住宅10において各種の実測データを計測し、メインサーバ60のデータ蓄積手段5に記録するまでは前記実施の形態と同様である。
そしてこのようにメインサーバ60に接続されている住宅10は、図5に示すように多数、存在する。
さらに、多数の住宅(A邸−G邸)で計測された実測データにより、図6に示すような様々な種類のデータの集約がおこなわれる。例えば、図6(a)は、空調設備31であるエアコンのメーカー、機種(型番)、運転時間、効率低下度などをまとめたデータベースである。すなわち、エアコンの機種や運転時間や劣化度は邸毎に異なっているが、そのようなデータを多数、集約することによって、後述するように様々な予測をおこなうことが可能になる。
また、図6(b)は、住宅10の断熱性能をあらわす構造、築年数、断熱仕様、効率低下度などをまとめたデータベースである。すなわち、住宅10の構造が木造か鉄筋コンクリート(RC)造かによって断熱性能が異なり、断熱部材の種類によっても断熱性能が異なる。そして、築年数によってどの程度、劣化が進むかも正確な予測が難しく、多くのデータの蓄積は予測精度の向上に貢献することになる。
一方、本実施例の住宅10の計測管理システムは、住宅10の断熱性能や設備の機器性能を現状よりも向上させるために改修をおこなう際に利用するリフォームデータベース63を備えている。
このリフォームデータベース63には、住宅10の構造、広さ、方位及び築年数の少なくとも一つを含む建物情報と、住宅10の設備仕様及び断熱仕様の少なくとも一方の改修前後の情報を含む改修仕様情報とが蓄積されている。
この建物情報は、住宅10の空調効率に影響を与える要因であり、これらの要因が似ているデータほど改修効果を予測するための参考になる。なお、上記した以外にも、ユニット建物における間取りプラン、周辺環境などを建物情報として利用することができる。
また、改修仕様情報は、空調設備31の種類などの設備仕様及び断熱部材の種類や設置箇所などの断熱仕様の少なくとも一方を含む情報であり、改修前後の設備仕様や断熱仕様が蓄積されている。
このようなリフォームデータベース63は、過去にリフォームをおこなった住宅10から必要なデータを抽出することにより形成する。例えば、図7に示すように、改修前の住宅10の邸情報SEとして、建物情報、設備仕様、断熱仕様をリフォームデータベース63に記憶させる。また、この住宅10からは、改修前の状態における前記実施の形態で説明した実測データが測定され、エネルギー消費量や水消費量が蓄積されている。
そして、このような改修前の実測データが蓄積された住宅10について、改修後の邸情報AFとして、改修後の建物情報、設備仕様、断熱仕様、エネルギー消費量、水消費量をリフォームデータベース63に記憶させる。
また、この改修前後の邸情報SE,AFの差異を、リフォームによる改修効果としてリフォームデータベース63に記憶させる。このようなデータの蓄積は、可能な限り多くの住宅10についておこなうのが好ましい。
一方、改修効果予測手段としてのコンピュータ64がリフォームデータベース63と接続されている。また、このコンピュータ64には、図7に示すように改修費用を算出するための費用データベース65が接続されている。
ここで、このコンピュータ64による改修効果の予測方法の概略について図7を参照しながら説明すると、改修予定住宅に対して、A提案、B提案、C提案の複数の改修プランが提案されたとする。ここで、A提案は、窓際にオーニングを設置して日陰を設けるプランであり、B提案は窓ガラスにウインドウフィルムを貼って開口部の断熱性能を向上させるプランであり、C提案は壁の断熱材を追加するプランである。
そして、図8のフローチャートを参照しながら、改修プランの一つについての改修効果と改修費用を算出する処理の流れを説明する。
まず、コンピュータ64に改修予定住宅の建物情報を入力する(ステップS51)。同様にして、改修予定住宅の改修仕様情報を入力する(ステップS52)。
そして、リフォームデータベース63に蓄積されたデータとの比較をおこない(ステップS53)、改修予定住宅の建物情報及び改修仕様情報と同一の情報の過去の改修事例があるか否かを判断する(ステップS54)。
ここで、過去の改修事例に建物情報及び改修仕様情報が同一となる事例があれば、その改修効果を改修予定住宅の改修効果として算出する(ステップS55)。
他方、完全に同一となる情報がない場合には、建物情報及び改修仕様情報の少なくとも一方の一部であっても同一又は類似している過去の事例を抽出し(ステップS56)、その類似度に基づいて改修によってエネルギー消費量が改善される割合(以下、「省エネ効率」という。)を算出する。
図9に、省エネ効率を算出する一例を示した。この図9に示した表の1列目には比較要因の名称が示されており、構造、断熱仕様、築年数、広さ、プラン、方位、周辺環境、設備仕様などのリフォームデータベース63に蓄積されたデータと改修予定住宅のデータとの比較をおこなう項目が表示されている。
また、表の2列目には、比較要因の比較結果が表示されている。この比較結果から、改修予定住宅は、抽出された過去の事例と、構造、断熱仕様、築年数、間取りなどのプラン、設備仕様が同一又はほぼ同一であることがわかる。また、広さは改修予定住宅が1.2倍、方位にも若干のずれがあり、周辺環境は密集地域と散在地域というように異なっている。
さらに、表の3列目の影響係数は、比較要因が改修効果の算出に与える影響を数値化した影響係数が示されている。すなわち、築年数と設備仕様が算出に最も影響を及ぼす要因であり、続いて、断熱仕様、広さ、プラン、方位の影響が大きく、周辺環境や構造の相違の影響度は低いことがわかる。
また、表の4列目の差異度は、比較結果を数値化したもので、同一又はほぼ同一の結果は「0」の差異度として、広さが1.2倍になったことは「−1」の差異度として、方位が南向きになったことは「1」の差異度として、周辺環境が密集となったことは「2」の差異度として数値化されている。
そして、表の5列目の効率変動率は、3列目の影響係数と4列目の差異度を掛け合わせた値であり、影響係数が大きな比較要因の差異度が小さければ、効率変動率も小さくなることがわかる。
すなわち、個々の比較要因ごとに算出された効率変動率を積算した値が抽出された過去の事例と改修予定住宅との効率変動率となる。ここでは、過去の事例に比べて改修予定住宅の効率が6%上昇することがわかる。
一方、オーニングを設置したことによって、過去の改修事例で20%の基本省エネ効率が上昇していたとすると、この基本省エネ効率に効率変動率を乗じた値に基づいて求められる総合省エネ効率の21.2%が、改修予定住宅のA提案の改修による省エネ効率の上昇分となる。
そして、改修前のエネルギー消費量を賄うのに必要な費用をこの総合省エネ効率と掛け合わせることによって、改修効果の算出をおこなう(ステップS57)。
また、コンピュータ64に接続されている費用データベース65に基づいて、改修をおこなうのに必要な改修費用を算出することができる(ステップS58)。
さらに、図7に示すように、複数の改修プラン(A提案,B提案,C提案)について、改修費用と改修効果が明示されれば、改修プランの選択を合理的におこなうことができる。
このように構成された実施例の住宅の計測管理システムでは、データ蓄積手段5に記録された実測データから設備の機器性能及び住宅10の断熱性能の少なくとも一方の劣化度が高いと判断された場合に、設備の交換、補修又は追加などの改修を検討することができる。
また、改修プランを検討する際に、過去の事例による改修前後の情報が蓄積されたリフォームデータベース63に蓄積されたデータと改修予定住宅のデータとの比較をおこなうことで、改修による改修効果が高い精度で予測された状態でリフォームをおこなうことができる。
さらに、費用データベース65によって各改修プランの改修費用を算出することで、改修費用と改修効果を比較しながら合理的に改修プランを選択することができる。
また、適切な時期に的確な改修をおこなうことによって、住宅10の寿命を伸ばすことができる。
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施の形態では、エネルギー消費量は電気消費量について主に説明したが、これに限定されるものではなく、エネルギー消費量はガス消費量など他のエネルギーに関する消費量であってもよい。
そして、劣化度解析手段6では、空調設備31だけでなくガス給湯器35などの給湯設備の劣化度を解析することもできる。例えば、給湯設備を使った風呂の給湯効率は、設備の機器性能及び住宅10の断熱性能の影響を受けるため、劣化度解析手段6によって劣化度の解析をおこなうなど本発明を適用することができる。
また、空調設備31、給湯設備、水道設備などの様々な設備のエネルギー消費量を計測することで、住宅10に設置された様々な設備の劣化度を解析することができる。
本発明の最良の実施の形態の住宅の計測管理システムの構成を説明するブロック図である。 本発明の最良の実施の形態の計測管理システムが適用される住宅の構成を説明する説明図である。 稼働効率診断部の処理の流れを説明するフローチャートである。 断熱劣化度診断部の処理の流れを説明するフローチャートである。 実施例の計測管理システムが適用された住宅とメインサーバとの関係を示した説明図である。 (a)は設備について集約されたデータベースの一例であり、(b)は住宅の断熱性能に影響を与える要因について集約されたデータベースである。 実施例の改修効果及び改修費用を提示するシステムの構成を例示した説明図である。 改修効果と改修費用を算出する処理の流れを説明するフローチャートである。 省エネ効率を算出する方法を説明するための表である。
符号の説明
1 内部状態計測手段
11 温度センサ
12 湿度センサ
2 外部状態計測手段(外部状態取得手段)
21 温度センサ
22 湿度センサ
3 エネルギー消費量計測手段
30A 電力測定器(電気消費量計測手段)
30B ガス測定器(ガス消費量計測手段)
31 空調設備(設備)
32 照明設備(設備)
33 ポンプ(設備)
35 ガス給湯器(給湯設備)
350 給湯量測定器
4 水消費量計測手段
40 水道測定器(水消費量計測手段)
41 流し台(水道設備)
5 データ蓄積手段
6 劣化度解析手段
61 稼働効率診断部
62 断熱劣化度診断部
63 リフォームデータベース
64 コンピュータ(改修効果予測手段)
65 費用データベース
71 価値算出手段

Claims (10)

  1. 住宅の内部の複数箇所に設置されて各所の温度を計測する内部状態計測手段と、
    前記住宅の外部の温度を取得する外部状態取得手段と、
    前記住宅に設置された設備のエネルギー消費量を計測するエネルギー消費量計測手段と、
    上記計測手段及び前記外部状態取得手段で検出された実測データを時刻歴とともに記録するデータ蓄積手段と、
    前記データ蓄積手段に蓄積された実測データから前記住宅の断熱性能及び前記設備の機器性能の少なくとも一方の劣化度を解析する劣化度解析手段とを備えたことを特徴とする住宅の計測管理システム。
  2. 前記劣化度解析手段は、前記設備の稼働時の稼働効率が低下しているか否かを前記データ蓄積手段に蓄積された実測データから判断する稼働効率診断部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の住宅の計測管理システム。
  3. 前記劣化度解析手段は、前記断熱性能の劣化度を判断する断熱劣化度診断部を備え、前記稼働効率診断部によって稼働効率の低下が検知された際に、前記断熱劣化度診断部により前記断熱性能の劣化度を判断し、前記断熱性能の劣化度と前記稼働効率の低下度に基づいて前記機器性能の劣化度を判断することを特徴とする請求項2に記載の住宅の計測管理システム。
  4. 前記内部状態計測手段では、温度とともに湿度の計測をおこなうことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の住宅の計測管理システム。
  5. 前記住宅に設置された設備が空調設備であって、前記エネルギー消費量計測手段が電気消費量計測手段であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の住宅の計測管理システム。
  6. 前記住宅に設置された設備が給湯設備であって、前記エネルギー消費量計測手段がガス消費量計測手段又は電気消費量計測手段であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の住宅の計測管理システム。
  7. 前記住宅に設置された水道設備の水消費量を計測する水消費量計測手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の住宅の計測管理システム。
  8. 前記劣化度解析手段によって算出された劣化度に基づいて前記住宅の現状の価値を算出する価値算出手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の住宅の計測管理システム。
  9. 前記住宅の構造、広さ、方位及び築年数の少なくとも一つを含む建物情報と、住宅の設備仕様及び断熱仕様の少なくとも一方の改修前後の情報を含む改修仕様情報とが蓄積されたリフォームデータベースを備えるとともに、
    前記劣化度解析手段によって劣化度が高いと判断された前記設備及び前記住宅の断熱部材の少なくとも一方を交換、補修又は追加した場合の改修効果を、前記リフォームデータベースに蓄積された前記建物情報及び前記改修仕様情報との比較をおこなうことで予測する改修効果予測手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の住宅の計測管理システム。
  10. 前記改修効果予測手段は、改修費用を算出するための費用データベースを備え、前記改修効果は前記改修費用とともに出力されることを特徴とする請求項9に記載の住宅の計測管理システム。
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