JP2010107822A - 波長変換素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】波長変換効率の高い波長変換素子であって、かつ簡便な工程で製造が可能である。
【解決手段】単一ドメイン強誘電体結晶基板10に周期的分極反転構造が形成されており、入射される被波長変換光の波長を周期的分極反転構造に基づく擬似位相整合により変換する波長変換素子である。周期的分極反転構造を通過するリッジ型光導波路16が形成されている。第1回折格子20a及び第2回折格子20bは、それぞれ被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で、リッジ型光導波路の頂上部に誘電体22が配置されることによって構成されている。
【選択図】図1
【解決手段】単一ドメイン強誘電体結晶基板10に周期的分極反転構造が形成されており、入射される被波長変換光の波長を周期的分極反転構造に基づく擬似位相整合により変換する波長変換素子である。周期的分極反転構造を通過するリッジ型光導波路16が形成されている。第1回折格子20a及び第2回折格子20bは、それぞれ被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で、リッジ型光導波路の頂上部に誘電体22が配置されることによって構成されている。
【選択図】図1
Description
この発明は、擬似位相整合(QPM: Quasi-Phase matching)による波長変換を実現するための波長変換素子及びその製造方法に関する。
被波長変換光の波長を、周期的分極反転構造に基づくQPMにより変換する波長変換素子(以後、QPM波長変換素子ということもある。)が広く知られている。分極反転構造の周期は任意に設定可能であることから、QPM波長変換素子は、如何なる波長の被波長変換光を波長変換する目的の波長変換素子としても形成可能であるという特長を有している。このため、QPM波長変換素子は、光通信、光計測等の広い分野での利用が期待されている。
波長変換素子に共通して求められる特性のひとつは、被波長変換光のエネルギーのうち波長変換光に変換されるエネルギーの割合である波長変換効率が高いという特性である。QPM波長変換素子の波長変換効率は、被波長変換光のエネルギー密度に比例し、作用長の2乗に比例する。ここで、作用長とは、QPM波長変換素子において被波長変換光が伝播する長さであり、具体的にはQPM波長変換素子の長さを意味する。
上述のように、波長変換効率を高くするためには、被波長変換光のエネルギー密度を大きくすればよく、このために被波長変換光を光共振器に閉じ込め、この光共振器内に、周期的分極反転構造が形成された強誘電体結晶を配置する構成の波長変換素子が知られている(例えば特許文献1参照)。
一方、作用長を長くすることによって波長変換効率を高くする構成とされた波長変換素子が知られている。例えば、周期的分極反転構造が形成された強誘電体結晶の被波長変換光の入射端面と出射端面とに誘電体多層膜を形成し、この誘電体多層膜で被波長変換光を反射させて、被波長変換光を、この強誘電体結晶内を複数回往復させることで作用長を長くする構成が開示されている(特許文献2参照)。
国際公開 2005/033791号パンフレット
特開2006-208629号公報
上述の被波長変換光を光共振器に閉じ込め、この光共振器内に周期的分極反転構造が形成された強誘電体結晶を配置する構成は、波長変換効率を高くする効果が高いものの、共振器端面の反射率及び共振器長の調整を必要とし、適用分野によっては、利用しにくい場合もある。
また、上述の周期的分極反転構造が形成された強誘電体結晶の被波長変換光の入射端面と出射端面とに誘電体多層膜を形成して構成される波長変換素子にあっては、入射端面と出射端面とに誘電体多層膜を形成するための高度な技術を要する。すなわち、被波長変換光の入射端面と出射端面とに、スパッタリング法あるいは真空蒸着法によって誘電体多層膜を形成するか、別途作成した誘電体多層膜を貼り付ける方法がとられるが、いずれの方法も高度な技術を必要とする製造工程を含んでいる。
この発明の発明者は、周期的分極反転構造が形成された強誘電体結晶基板に光導波路を設け、この光導波路のいずれか一方の端にブラッグ反射回折格子を形成し、この回折格子によって被波長変換光及び波長変換光を反射させる構造とすれば、素子長の2倍の長さの作用長を持つ光変換素子が形成できることを思い立った。
そこで、この発明の目的は、波長変換効率の高い波長変換素子であって、かつ簡便な工程で製造が可能である波長変換素子及びこの波長変換素子を製造する方法を提供することにある。
この発明の要旨によれば、波長変換素子及びこの波長変換素子を製造する方法は、以下の構成上の特徴を具えている。
この発明の波長変換素子は、自発分極ベクトルの向きに直交する平面でカットされた平行平板単一ドメイン強誘電体結晶基板に周期的分極反転構造が形成されており、入射される被波長変換光の波長を周期的分極反転構造に基づくQPMにより変換する波長変換素子である。
この発明の波長変換素子には、被波長変換光及び波長変換光を導波する光導波路が、被波長変換光及び波長変換光が伝播する方向が、強誘電体結晶基板の自発分極ベクトルの方向と直交する方向であって、かつ周期的分極反転構造の非分極反転領域と分極反転領域との境界面を通過することが可能な方向に形成されている。そしてこの光導波路のいずれか一方の端側に、被波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第1回折格子と、波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第2回折格子とが隣接して設置されて一組の回折格子部分が形成されている。
光導波路は、リッジ型光導波路とするのが好適である。
また、第1回折格子及び第2回折格子は、それぞれ被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で、リッジ型光導波路の頂上部に誘電体を配置することによって形成するのがよい。
また、第1回折格子及び第2回折格子は、それぞれ被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で、リッジ型光導波路の導波方向に対して直交する方向に当該リッジ型光導波路に対して溝をつけることによって形成してもよい。
この発明の波長変換素子の製造方法は、上述の一組の回折格子部分を形成する回折格子部分形成工程と、この一組の回折格子部分が一方の端側に配置される関係で光導波路を形成する光導波路形成工程を含んで構成される。
この発明の波長変換素子によれば、被波長変換光及び波長変換光が導波される光導波路のいずれか一方の端側に一組の回折格子部分が形成されている。この回折格子部分で被波長変換光及び波長変換光が反射される。従って、被波長変換光は波長変換素子中を1往復して波長変換光を生成する構成となっている。従って、波長変換素子の素子長を変えることなく作用長を2倍とすることができ、波長変換効率を4倍とすることが可能である。従って、一枚の強誘電体結晶基板から製造可能な素子の数は、従来の波長変換素子を製造する場合と同数である。すなわち、製造コストを低廉な水準に保ったまま、しかも波長変換効率が4倍である波長変換素子を実現することが可能となる。
しかも、光導波路はリッジ型光導波路として構成することが可能であり、回折格子部分は、リッジ型光導波路の頂上部に誘電体を周期的に配置するか、あるいはリッジ型光導波路の導波方向に対して直交する方向に当該リッジ型光導波路に対して溝を周期的に刻むことで形成される。
従って、被波長変換光及び波長変換光を反射するための回折格子部分は、上述したように誘電体を周期的に配置するか、あるいはリッジ型光導波路に対して溝を周期的に刻むことで形成されるので、この回折格子部分は周知のフォトリソグラフィーを利用することで形成可能である。
すなわち、この発明の波長変換素子の形成に当たっては、上述の従来の波長変換素子を形成する場合のように、入射端面と出射端面とに誘電体多層膜を形成する必要がなく、そのための高度な技術を必要としない。
また、この発明の波長変換素子は、光導波路のいずれか一方の端側に形成されて設置される回折格子部分が、被波長変換光をブラッグ反射する第1回折格子及び波長変換光をブラッグ反射する第2回折格子が独立に隣接して設けられた構成となっている。
従来の波長変換素子において、被波長変換光を閉じ込めるための光共振器を構成する反射手段、あるいは作用長を長くするために被波長変換光の入射端面と出射端面とに形成される反射手段は、その設置理由が被波長変換光を反射させることにあり、波長変換光を反射することは考慮されていない。むしろ、波長変換光は一部透過されることを念頭に設定されている。
これに対して、この発明の波長変換素子にあっては、被波長変換光は第1回折格子で完全に反射され、また、波長変換光は第2回折格子で完全に反射される構成となっている。このため、波長変換素子中で発生する波長変換光の全エネルギーを効率よく外部に取り出すことが可能である。すなわち、出力される波長変換光のエネルギー損失がないので、高出力の波長変換光が得られる。従って、波長変換効率の高い波長変換素子が実現される。
以下、図1〜図7を参照して、この発明の実施形態の波長変換素子につき説明する。なお、図1及び図5は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の断面形状や配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。図2から図4及び図6は、図1及び図5に示すこの発明の実施形態のQPM波長変換素子の製造方法の一例を示すものであり、図示例に製造方法を限定するものではない。また、以下の説明において、特定の材料および条件等を用いることがあるが、これら材料および条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。
<第1実施形態の波長変換素子>
図1(A)及び(B)を参照して、この発明の第1実施形態の波長変換素子の構造を説明する。図1(A)はこの発明の第1実施形態の波長変換素子の概略的斜視図であり、図1(B)は、被波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第1回折格子と、波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第2回折格子とが隣接して設置された一組の回折格子部分の近傍を拡大して示す図である。
図1(A)及び(B)を参照して、この発明の第1実施形態の波長変換素子の構造を説明する。図1(A)はこの発明の第1実施形態の波長変換素子の概略的斜視図であり、図1(B)は、被波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第1回折格子と、波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第2回折格子とが隣接して設置された一組の回折格子部分の近傍を拡大して示す図である。
この発明の第1実施形態の波長変換素子は、周期的分極反転構造が形成された強誘電体結晶基板10と、これに作り込まれた光導波路16とを具えている。この強誘電体結晶基板10として、自発分極ベクトル(上向き及び下向きの矢印で示してある。)の向きに直交する平面でcカットされた平行平板単一ドメインLiNbO3結晶基板を用いている。LiNbO3結晶は、酸化リチウム(Li2O)と酸化ニオブ(Nb2O5)を要素とし、両者が1対1の組成で構成される 複酸化物結晶である。
単一ドメイン強誘電体結晶基板は、その表面に垂直な方向に自発分極の向きが揃えられているシングルドメイン結晶基板である。自発分極ベクトルの終端側の面を+c面、自発分極ベクトルの初端側の面を-c面と呼ぶこともある。
周期的分極反転構造は、非分極反転領域24aと分極反転領域24bとを互いに周期的に具えて構成されている。非分極反転領域24aと分極反転領域24bとは、波長変換素子を構成する素材である強誘電体結晶の自発分極の向きが互いに180°をなす関係となっている。
分極反転領域24bは、単一ドメイン結晶基板であるcカットされたLiNbO3基板の自発分極ベクトルの向きを反転させて形成される。したがって、周期的分極反転構造は、単一ドメイン結晶基板としての自発分極が保たれているドメイン(非分極反転領域24a)と自発分極の方向が反転されたドメイン(分極反転領域24b)とで構成される。
周期的分極反転構造の非分極反転領域24aの幅はLuであり分極反転領域24bの幅はLdである。周期的分極反転構造の周期Λは、Lu+Ldで与えられる。波長変換を実現する擬似位相整合条件は、後述するように、この周期的分極反転構造の周期Λの関数として与えられる。
光導波路16はリッジ型光導波路であり、リッジの頂上から数μmの幅でプロトン交換が行われプロトン交換部分(高屈折率部分)14が形成されている。すなわち、光導波路16は、プロトン交換が行われて形成されたプロトン交換部分14と、非プロトン交換部分12とから構成されており、被波長変換光及び波長変換光はプロトン交換部分14を導波される。プロトン交換法は、H+-Li+イオン交換法とも称せられ、LiNbO3結晶を構成するLi+イオンをH+イオンに置換する方法であり、この置換によって屈折率を高めることができる。
光導波路は、一般的に強誘電体結晶の自発分極ベクトルの方向と直交する方向であって、かつ周期的分極反転構造の非分極反転領域24aと分極反転領域24bとの境界面sを通過することが可能な条件で形成されていればよい。図1に示す実施形態の波長変換素子では、被波長変換光及び波長変換光が伝播する方向が、周期的分極反転構造の非分極反転領域24aと分極反転領域24bとの境界面sに対して直交するように、光導波路16が形成されている。
光導波路16は、強誘電体結晶基板10の主面を穿って溝部分26a及び26bが形成され、強誘電体結晶基板主面18a及び18bを残すことで形成されたリッジ型光導波路である。この光導波路16のいずれか一方の端側(図1(A)で破線で円形に囲った部分)に、被波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第1回折格子20aと、波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第2回折格子20bとが隣接して設置されて一組の回折格子部分20が形成されている。
第1回折格子20a及び第2回折格子20bは、それぞれ被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で、光導波路16の頂上部に誘電体22が配置されることによって構成されている。すなわち、第1回折格子20aにあっては、誘電体22が被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で配置されており、第2回折格子20bにあっては、誘電体22が波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で配置されている。
光導波路16のプロトン交換部分14を伝播する被波長変換光は、第1回折格子20aに到達すると、誘電体22が周期的に配置されていることによってブラッグ反射される。
すなわち、光導波路16のプロトン交換部分14を伝播する被波長変換光の消衰場(エバネッセント場:evanescent field)は誘電体22に一部入り込み、誘電体22の屈折率の影響を受けることによって、誘電体22の配置された部分と配置されていない部分とで実効屈折率に差異が生じる。このため、被波長変換光が第1回折格子20aに到達すると、誘電体22の配置されている周期によって決定される波長に対してブラッグ反射が起こる。第1回折格子20aは、被波長変換光に対してブラッグ反射が起こるように誘電体22が周期的に配置されている。
同様に、第2回折格子20bは、波長変換光に対してブラッグ反射が起こるように誘電体22が周期的に配置されている。そのため、光導波路16のプロトン交換部分14を伝播する波長変換光は、第2回折格子20bに到達すると、誘電体22が周期的に配置されていることによってブラッグ反射される。
この発明の実施形態のQPM波長変換素子にあっては、被波長変換光は第1回折格子20aで反射され、また、波長変換光は第2回折格子20bで反射される構成となっている。このため、波長変換素子中、すなわち光導波路16の回折格子部分20を除く部分で発生する波長変換光の全エネルギーを効率よく外部に取り出すことが可能となる。
回折格子部分20を構成する第1回折格子20aと第2回折格子20bとの配置関係は、図1(A)に示した関係とは逆に、第1回折格子20aを光導波路の端側に配置し、それに隣接させて第2回折格子20bを配置してもよい。
光導波路16のいずれか一方の端側(図1(A)で破線で円形に囲った部分)に形成される回折格子部分20は、上述のように光導波路16(リッジ型光導波路)の頂上部に誘電体22を配置する代わりに、図5を参照して後述するように、リッジ型光導波路の導波方向に対して直交する方向に当該リッジ型光導波路に対して溝を形成することによっても実現可能である。この場合、溝の配置間隔は、上述の誘電体22を配置する間隔と同一である。
光導波路16のプロトン交換部分14を伝播する被波長変換光及び波長変換光は、回折格子部分20に到達すると、リッジ型光導波路の導波方向に対して直交する方向に当該リッジ型光導波路に対して溝が形成されていることによってブラッグ反射される。
すなわち、光導波路16のプロトン交換部分14を伝播する被波長変換光及び波長変換光は、リッジ型光導波路に周期的に形成された溝の影響を受けることによって、溝が形成された部分と形成されていない部分とで実効屈折率に差異が生じる。このため、被波長変換光及び波長変換光が回折格子部分に到達すると、ブラッグ反射が起こる。
<第1実施形態の波長変換素子の製造方法>
図2(A)〜(E)を参照して、MgOドープのcカット平行平板単一ドメインLiNbO3結晶基板に周期的分極反転構造を形成する方法について説明する。図2(A)〜(E)は、強誘電体結晶基板に周期的分極反転構造を形成する方法の説明に供する図であって、それぞれ基板面に直交しかつ光の伝播方向に沿ってとった断面で示してある。なお、図中、断面を表すハッチングの一部を省略して示してある。
図2(A)〜(E)を参照して、MgOドープのcカット平行平板単一ドメインLiNbO3結晶基板に周期的分極反転構造を形成する方法について説明する。図2(A)〜(E)は、強誘電体結晶基板に周期的分極反転構造を形成する方法の説明に供する図であって、それぞれ基板面に直交しかつ光の伝播方向に沿ってとった断面で示してある。なお、図中、断面を表すハッチングの一部を省略して示してある。
図2(A)はcカットの平行平板単一ドメインLiNbO3結晶基板の断面を示す図であり、図2(B)は+c面に分極反転パターンが形成されたcカットの平行平板単一ドメインLiNbO3結晶基板の断面を示す図であり、図2(C)はパルス状の電圧を印加して分極反転構造を形成する工程の説明に供する図であり、図2(D)は周期的分極反転構造の形成工程が終了した時点でのLiNbO3基板の構造の説明に供する図であり、図2(E)は周期的分極反転構造に用いたマスクパターンが除去されて完成された状態のLiNbO3結晶基板の断面を示す図である。
図2(A)に示すように、この発明の実施形態のQPM波長変換素子の製造に利用する強誘電体結晶基板10は、MgOドープのcカットの平行平板単一ドメインLiNbO3結晶基板である。自発分極ベクトルの向きを矢印で示してある。
図2(B)に示すように、強誘電体結晶基板10であるLiNbO3基板の+c面に、フォトリソグラフィー等の周知の技術を用いて、波長変換を実現させる擬似位相整合条件を満たす周期で間隔を隔てて複数の絶縁膜(フォトレジスト膜)32を配置することで分極反転パターンを形成する。
周期的分極反転構造を形成する工程は、図2(C)に示すように、図2(B)に示す分極反転パターンが形成された強誘電体結晶基板10を、液体金属電極としての役割を果たす塩化リチウム水溶液36に浸す。具体的には、塩化リチウム水溶液36を容器40aと容器40bで密閉し、この塩化リチウム水溶液36に強誘電体結晶基板10を浸す。パルス電圧供給源34からは電極板38a及び38bがつながれており、電極板38a及び38bのそれぞれは、塩化リチウム水溶液36に浸されている。従って、パルス電圧供給源34から供給されるパルス電圧は、電極板38a及び38bから塩化リチウム水溶液36を介して強誘電体結晶基板10に印加される。
この状態で、図2(C)に示すように強誘電体結晶基板10を挟んで、パルス電圧供給源34によって、パルス幅が数ナノ秒、ピーク電圧が4 kVのパルス電圧を印加すると、絶縁膜32が形成されていない領域の自発分極ベクトルが反転し、周期的分極反転構造が形成される。
図2(D)に分極反転構造形成工程終了後、塩化リチウム水溶液36から強誘電体結晶基板10を取り出した直後の強誘電体結晶基板10の断面を示す。図2(E)に分極反転パターンを形成していた絶縁膜32を除去した状態の、+c面あるいは-c面に垂直な平面で切断した強誘電体結晶基板10の断面を示す。非分極反転領域と分極反転領域との境界面Sは、強誘電体結晶10の+c面から-c面に貫通している。
図2(A)〜(E)を参照して説明した方法は、LiNbO3基板に周期的分極反転構造を形成する方法の一例であり、これ以外の方法として周知のイオン交換法あるいは電子ビーム照射法によって形成することも可能である。
ここで、図1に示したリッジ型光導波路である光導波路16のプロトン交換部分(高屈折率部分)14の形成方法について説明する。
図2(E)に示す分極反転パターンが形成されたた強誘電体結晶基板10を安息香酸(Benzoic acid)溶融液に浸すことで、強誘電体結晶10の+c面及び-c面にプロトン交換がなされ、強誘電体結晶基板10より屈折率の高い高屈折率層が形成される。
安息香酸溶融液の温度は200℃とし、2時間15分間にわたって、強誘電体結晶基板10を安息香酸溶融液中に浸した。その後、安息香酸溶融液から強誘電体結晶基板10を取り出して室温に戻した後、エタノールで安息香酸を強誘電体結晶基板10から洗い流した。
安息香酸が洗い流された強誘電体結晶基板10に対して、湿潤酸素雰囲気中で、400℃に保って2時間15分アニール処理を施し、プロトン交換処理を終了した。アニール処理をすることによって、プロトン交換部分の光損失が低減され、低損失の光導波路を形成することが可能となる。
上述の方法でプロトン処理を行った結果、波長が1.55μmの光に対する屈折率変化量が0.00553であり、0.775μmの光に対する屈折率変化量が0.00557であるプレーナ光導波路を形成することができた。
図3(A)〜(E)を参照して、被波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第1回折格子20aと、波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第2回折格子20bとを隣接させて一組の回折格子部分20を形成する回折格子部分形成工程について説明する。ここでは、第1回折格子20aと第2回折格子20bとを、リッジ型光導波路の頂上部に周期的に誘電体を配置して構成する方法について説明する。第1回折格子20a及び第2回折格子20bは、それぞれ被波長変換光及び波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で誘電体が配置されて構成される。
図3(A)〜(E)は、回折格子部分20の形成工程の説明に供する図であり、図3(A)は上述のプロトン交換処理終了後の強誘電体結晶基板10の斜視図であり、図3(B)はプロトン交換処理によって形成されたプロトン交換部分(高屈折率部分)14上に誘電体の膜を形成した強誘電体結晶基板10の斜視図であり、図3(C)は回折格子部分にレジストパターンが形成された状態を示す図であり、図3(D)は回折格子部分のレジストパターンが存在する部分を除き誘電体の膜が除去された状態を示す図であり、図3(E)は回折格子部分20が形成された状態を示す図である。
図3(A)に示すように、プロトン交換処理終了後の強誘電体結晶基板10にはプロトン交換部分(高屈折率部分)14が形成されている。このプロトン交換部分14上に図3(B)に示すように、誘電体の膜を形成する。ここでは、プロトン交換部分14上に形成される誘電体の膜をSiO2膜64とした。SiO2膜64は、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、あるいは化学気相成長法(CVD: Chemical Vapor Deposition)によって形成することが可能である。
次に、図3(C)に示すように、第1回折格子を形成する部分に被波長変換光に対してブラッグ反射条件を満たす周期Laでレジストパターン66aを形成し、第2回折格子を形成する部分に波長変換光に対してブラッグ反射条件を満たす周期Lbでレジストパターン66bを形成する。引き続きいて図3(D)に示すように、回折格子部分のレジストが存在する部分、すなわち、レジストパターン66a及びレジストパターン66bが形成されている部分以外の部分のSiO2膜64がエッチング処理によって除去される。
SiO2膜64のエッチング処理は周知の方法で実現可能である。例えば、水で10%に希釈されたフッ化水素酸溶液を用いるウエットエッチング法、あるいは三フッ化メタンガスを用いるドライエッチング法によって実行できる。SiO2膜64のエッチング処理が終了したら、図3(E)に示すように、レジストパターン66a及び66bを形成しているフォトレジストを除去することによって、SiO2膜による第1回折格子68a及び第2回折格子68bが残り、この第1回折格子68a及び第2回折格子68bが回折格子部分20を構成する。
図4を参照して、リッジ型光導波路16の形成方法について説明する。図4はリッジ型光導波路16の形成方法の説明に供する図である。
強誘電体結晶基板10であるLiNbO3結晶基板に、LiNbO3結晶の自発分極ベクトルの方向と直交する方向であって、かつ周期的分極反転構造の非分極反転領域と分極反転領域との境界面を通過することが可能な方向に、リッジ型光導波路16を回折格子部分20が当該光導波路16の一方の端側に配置される関係で形成する。リッジ型光導波路16は、その両サイドを強誘電体結晶基板10の主面を穿って溝部分26a及び26bを形成し、強誘電体結晶基板主面18a及び18bを残すことで形成される。
溝部分26a及び26bの形成は、ダイシングソー等によって機械的に加工する方法、あるいはドライエッチング法によって実現される。図4ではダイシングソーのブレード70を示してある。このブレード70によって溝部分26a及び26bが形成される。
リッジ型光導波路16の幅を10μmとし、高さを20μmとしたところ、波長1.55μmの光に対して等価屈折率(effective guide index)が2.1358、波長0.775μmの光に対して等価屈折率が2.1787となった。
<第2実施形態の波長変換素子>
図5(A)及び(B)を参照して、この発明の第2実施形態のQPM波長変換素子について説明する。図5(A)及び(B)は、この発明の第2実施形態のQPM波長変換素子の概略的斜視図である。図5(A)及び(B)に示すQPM波長変換素子は、図1(A)及び(B)に示したQPM波長変換素子とは、回折格子部分の構成が異なるだけであり他の部分は共通するので、重複する部分の説明を省略し、回折格子部分の構成について説明する。
図5(A)及び(B)を参照して、この発明の第2実施形態のQPM波長変換素子について説明する。図5(A)及び(B)は、この発明の第2実施形態のQPM波長変換素子の概略的斜視図である。図5(A)及び(B)に示すQPM波長変換素子は、図1(A)及び(B)に示したQPM波長変換素子とは、回折格子部分の構成が異なるだけであり他の部分は共通するので、重複する部分の説明を省略し、回折格子部分の構成について説明する。
この発明の第2実施形態のQPM波長変換素子の回折格子部分80は、第1回折格子80aと第2回折格子80bとで構成されている。第1回折格子80a及び第2回折格子80bは、それぞれ被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で、リッジ型光導波路16の導波方向に対して直交する方向に当該リッジ型光導波路16に対して溝を形成することで構成されている。
この発明の第2実施形態のQPM波長変換素子の回折格子部分80は、LiNbO3結晶が存在する部分と存在しない部分との周期的な繰り返し構造によって実現されている。LiNbO3結晶が存在しない部分は空気でありその屈折率は1であり、LiNbO3結晶の屈折率はほぼ2であるから、LiNbO3結晶が存在する部分と存在しない部分との屈折率差は1に近い値である。
これに対して、この発明の第1の実施形態のQPM波長変換素子の回折格子部分20は、SiO2膜の屈折率はほぼ1.5程度であるから、SiO2膜が存在する部分と存在しない部分との屈折率差はほぼ0.5程度である。従って、この発明の第2実施形態のQPM波長変換素子の回折格子部分80は、屈折率差の大きい周期構造によって構成される回折格子であるので、この回折格子の長さは短くともブラッグ反射の効率は高い。従って、回折格子部分80を短く形成することが可能であり、それだけコンパクトな波長変換素子が実現されるという利点がある。
<第2実施形態の波長変換素子の製造方法>
図6(A)〜(F)を参照して、被波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第1回折格子と、波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第2回折格子とを隣接させて一組の回折格子部分80を形成する回折格子部分形成工程について説明する。ここでは、第1回折格子及び第2回折格子を、リッジ型光導波路の頂上部にそれぞれ被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で、リッジ型光導波路16の導波方向に対して直交する方向に当該リッジ型光導波路16に対して溝を形成することで構成する方法について説明する。
図6(A)〜(F)を参照して、被波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第1回折格子と、波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第2回折格子とを隣接させて一組の回折格子部分80を形成する回折格子部分形成工程について説明する。ここでは、第1回折格子及び第2回折格子を、リッジ型光導波路の頂上部にそれぞれ被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で、リッジ型光導波路16の導波方向に対して直交する方向に当該リッジ型光導波路16に対して溝を形成することで構成する方法について説明する。
図6(A)〜(F)は、第2実施形態の波長変換素子の回折格子部分80の形成工程の説明に供する図であり、リッジ型光導波路を含み、このリッジ型光導波路の導波方向に沿って切断して示す概略的断面図である。
図6(A)は、上述のプロトン交換処理終了後の強誘電体結晶基板10の断面図である。強誘電体結晶基板10の一方の面に、プロトン交換処理によって形成されたプロトン交換部分(高屈折率部分)14が形成されている。
図6(B)は、プロトン交換部分14が形成されている面に第1回折格子と第2回折格子とを形成するために、それぞれの周期でフォトレジスト92が配置されたパターンが形成された状態を示している。図6(B)では、煩雑を避けるため、第1回折格子と第2回折格子とを形成する部分のフォトレジストを区別することなく一体としてフォトレジスト92と示してある。しかしながら、フォトレジスト92は、第1回折格子と第2回折格子とを形成する部分のそれぞれにおいて、被波長変換光のブラッグ反射条件及び波長変換光のブラッグ反射条件を満たす周期で、フォトレジスト92が配置されているものと理解されたい。
図6(C)は、LiNbO3結晶基板をエッチングする際の、レジストマスクとなるNi膜94を電子ビーム蒸着法等の周知の方法で形成された状態を示す図である。
図6(D)は、リッジ型光導波路16に形成される溝部分となる領域のNi膜94及びフォトレジスト92がリフトオフ法によって除去された状態を示す図である。
図6(E)は、ドライエッチングによって、リッジ型光導波路16に形成される溝部分となる領域がエッチングされた状態示す図である。このドライエッチングは、例えば、ECR(電子サイクロトロン共鳴:Electron Cyclotron Resonance)型反応性イオンエッチング法を利用するのが好適である。ECR型反応性イオンエッチングを行う際の反応ガスとして、SF6等のフッ化物ガスを利用することができる。
図6(F)は、ECR型反応性イオンエッチングの際のレジストマスクであるNi膜94が除去されて、回折格子部分80が形成される予定の領域に、第1回折格子と第2回折格子とが隣接して形成された状態を示す図である。第1回折格子と第2回折格子とが形成される予定部分を区別することなく一体として回折格子部分80と示してある。しかしながら、回折格子部分80は、第1回折格子と第2回折格子とを形成する部分のそれぞれにおいて、被波長変換光のブラッグ反射条件及び波長変換光のブラッグ反射条件を満たす周期で、溝が形成されているものと理解されたい。
<QPM波長変換素子の動作>
この発明の第1実施形態のQPM波長変換素子と第2実施形態のQPM波長変換素子とは、回折格子部分の構造に相違があるが、その他の部分は同一の構造である。そこで、以下の説明においては、回折格子部分の構造の相違に基づく動作の相違が問題となる場合を除き、第1及び第2実施形態のQPM波長変換素子を区別せずにその動作の説明を行う。
この発明の第1実施形態のQPM波長変換素子と第2実施形態のQPM波長変換素子とは、回折格子部分の構造に相違があるが、その他の部分は同一の構造である。そこで、以下の説明においては、回折格子部分の構造の相違に基づく動作の相違が問題となる場合を除き、第1及び第2実施形態のQPM波長変換素子を区別せずにその動作の説明を行う。
回折格子部分が形成された側と反対側から、被波長変換光がリッジ型光導波路16の高屈折率部分であるプロトン交換部分14に入力される。被波長変換光は、プロトン交換部分14を伝播すると同時に、リッジ型光導波路16に作りつけられた周期的分極反転構造の周期に基づく擬似位相整合により変換される波長変換光を生成する。以下の説明は、波長変換光として第2高調波発生(SHG: Second-Harmonic Generation)によるSHG光であるものとして説明する。しかしながら、波長変換光としては、差周波発生(DFG: Difference Frequency Generation)あるいは和周波発生(SFG: Sum Frequency Generation))によるDFG光あるいはSFG光であっても、擬似位相整合条件を与える条件式が異なるだけであり、以下の説明の要旨はそのまま成立する。
被波長変換光である基本波光のパワーをPωとし、変換光であるSHG光のパワーをP2ωとすると、P2ωは次式(1)で与えられる。
P2ω=Pω2κ2L2[sin(ΔSHGL)/(ΔSHGL)] (1)
ここで、κは結合係数、Lは素子長、ΔSHGは位相不整合量である。
P2ω=Pω2κ2L2[sin(ΔSHGL)/(ΔSHGL)] (1)
ここで、κは結合係数、Lは素子長、ΔSHGは位相不整合量である。
位相不整合量ΔSHGは次式(2)で与えられる。
ΔSHG=β2ω−(2βω+K) (2)
ここで、β2ωは光導波路を伝播するSHG光の伝播定数、βωは光導波路を伝播する基本波光の伝播定数である。
ΔSHG=β2ω−(2βω+K) (2)
ここで、β2ωは光導波路を伝播するSHG光の伝播定数、βωは光導波路を伝播する基本波光の伝播定数である。
β2ω、βω及びKはそれぞれ、以下に示す式(3a)、(3b)及び(3c)で与えられる。
β2ω=k2ωN2ω (3a)
βω=kωNω (3b)
K=2π/Λ (3c)
ここで、k2ωはSHG光の波数、kωは基本波光の波数、N2ωはSHG光に対する光導波路の等価屈折率、Nωは基本波光に対する光導波路の等価屈折率、Λは周期的分極反転構造の周期である。
β2ω=k2ωN2ω (3a)
βω=kωNω (3b)
K=2π/Λ (3c)
ここで、k2ωはSHG光の波数、kωは基本波光の波数、N2ωはSHG光に対する光導波路の等価屈折率、Nωは基本波光に対する光導波路の等価屈折率、Λは周期的分極反転構造の周期である。
擬似位相整合条件は次式(4)で与えられる。
ΔSHG=0 (4)
ここで、基本波光の波長をλωとし、SHG光の波長をλ2ωとすれば、λ2ω=2λωであり、k2ω及びkωは、それぞれ次式(5a)及び(5b)で与えられる。
k2ω=2π/λ2ω (5a)
kω=2π/λω (5b)
従って、式(2)で与えられる擬似位相整合条件は、次式(6)で与えられることになる。
Λ=λ2ω/(N2ω−Nω) (6)
ΔSHG=0 (4)
ここで、基本波光の波長をλωとし、SHG光の波長をλ2ωとすれば、λ2ω=2λωであり、k2ω及びkωは、それぞれ次式(5a)及び(5b)で与えられる。
k2ω=2π/λ2ω (5a)
kω=2π/λω (5b)
従って、式(2)で与えられる擬似位相整合条件は、次式(6)で与えられることになる。
Λ=λ2ω/(N2ω−Nω) (6)
すなわち周期的分極反転構造の周期Λが式(6)で与えられる条件を満たすように設定されていれば、変換光であるSHG光のパワーをP2ωは、式(1)で与えられるように、素子長Lの2乗に比例する。すなわち、この発明の実施形態の第1及び第2のQPM波長変換素子は、回折格子部分で基本波光及びSHG光が反射される構成となっているので、素子長が2倍になっていることに相当する。従って、SHG光のパワーP2ωは、通常の回折格子部分が設けられていないQPM波長変換素子と比較して、素子長が等しければ、4倍の値が得られることになる。
ここで、この発明の第1実施形態のQPM波長変換素子の回折格子部分20における基本波光とSHG光の反射率について説明する。ここで、基本波光の波長は1.55μmである。
第1回折格子20a及び第2回折格子20bは、光導波路16の頂上部に厚さが0.5μmのSiO2回折格子が、それぞれ基本波光及びSHG光に対するブラッグ反射条件を満たす周期で形成されている。また、第1回折格子20a及び第2回折格子20bのリッジ型光導波路16の導波方向に沿った長さはそれぞれ3.95μm及び3.13μmである。
この条件で第1回折格子20aによる基本波光の反射率、及び第2回折格子20bによるSHG光の反射率をそれぞれ見積ると共に95%となった。ただし、この見積りにおいては、光導波路16のプロトン交換部分(高屈折率部分)14を伝播する基本波光及びSHG光の伝播モードは基本モードであると仮定している。
この発明の第2実施形態のQPM波長変換素子の回折格子部分80における基本波光とSHG光の反射率についても同様に95%とすることが可能である。すなわち、この発明の第1及び第2実施形態のQPM波長変換素子によれば、上述したように、作用長を2倍とすることができ、被波長変換光及び波長変換光をそれぞれ95%反射する回折格子部分が設けられている。
被波長変換光及び波長変換光の95%が回折格子部分で反射されることにより、この回折格子部分での被波長変換光及び波長変換光の損失はほとんどないと見なせる。従って、この発明の第1及び第2実施形態のQPM波長変換素子によれば、回折格子部分が設けられていない従来のQPM波長変換素子に比べ、波長変換効率をほぼ4倍とすることが可能である。
<その他の波長変換素子の製造方法>
上述した実施形態においては、強誘電体結晶基板10として、LiNbO3結晶基板を用いたが、タンタル酸リチウム(LiTaO3)あるいはニオブ酸カリウム(KNbO3)等も適宜利用することが可能である。また、ZnOドープのLiNbO3結晶を利用することも可能であり、強誘電体結晶としては定比組成(stoichiometric mixture)の結晶であっても非定比組成(nonstoichiometric mixture)の結晶であっても利用可能である。
上述した実施形態においては、強誘電体結晶基板10として、LiNbO3結晶基板を用いたが、タンタル酸リチウム(LiTaO3)あるいはニオブ酸カリウム(KNbO3)等も適宜利用することが可能である。また、ZnOドープのLiNbO3結晶を利用することも可能であり、強誘電体結晶としては定比組成(stoichiometric mixture)の結晶であっても非定比組成(nonstoichiometric mixture)の結晶であっても利用可能である。
ここで、定比組成のLiNbO3結晶とは、酸化リチウム(Li2O)と酸化ニオブ(Nb2O5)とが厳密に1対1の割合で構成されたLiNbO3結晶を意味する。また、非定比組成のLiNbO3結晶とは、この組成比が1対1の割合からずれて構成されているLiNbO3結晶を意味する。
また、高屈折率部分を構成する方法としてプロトン交換による例を示したが、他の方法によって形成してもよい。プロトン源としても、安息香酸以外、ピクリン酸(Picric acid)、グルタル酸(Glutaric acid)、等を適宜利用することもできる。光導波路の形態は、プレーナ型に限定されることはなく、リッジ型、装荷型等の形態であってもよい。
10:強誘電体結晶基板
12:非プロトン交換部分
14:プロトン交換部分
16:光導波路(リッジ型光導波路)
18a、18b:強誘電体結晶基板主面
20、80:回折格子部分
20a、68a:第1回折格子
20b、68b:第2回折格子
22:誘電体
24a:非分極反転領域
24b:分極反転領域
26a、26b:溝部分
32:絶縁膜
34:パルス電圧供給源
36:塩化リチウム水溶液
38a、38b:電極板
40a、40b:容器
64:SiO2膜
66a、66b:レジストパターン
70:ブレード
92:フォトレジスト
94:Ni膜
12:非プロトン交換部分
14:プロトン交換部分
16:光導波路(リッジ型光導波路)
18a、18b:強誘電体結晶基板主面
20、80:回折格子部分
20a、68a:第1回折格子
20b、68b:第2回折格子
22:誘電体
24a:非分極反転領域
24b:分極反転領域
26a、26b:溝部分
32:絶縁膜
34:パルス電圧供給源
36:塩化リチウム水溶液
38a、38b:電極板
40a、40b:容器
64:SiO2膜
66a、66b:レジストパターン
70:ブレード
92:フォトレジスト
94:Ni膜
Claims (8)
- 自発分極ベクトルの向きに直交する平面でカットされた平行平板単一ドメイン強誘電体結晶基板に周期的分極反転構造が形成されており、入射される被波長変換光の波長を前記周期的分極反転構造に基づく擬似位相整合により変換する波長変換素子であって、
前記被波長変換光及び波長変換光が伝播する方向が、前記強誘電体結晶基板の前記自発分極ベクトルの方向と直交する方向であって、かつ前記周期的分極反転構造の非分極反転領域と分極反転領域との境界面を通過することが可能な方向に、前記被波長変換光及び前記波長変換光を導波する光導波路が形成されており、
前記光導波路のいずれか一方の端側に、前記被波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第1回折格子と、前記波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第2回折格子とが隣接して設置されて一組の回折格子部分が形成されている
ことを特徴とする波長変換素子。 - 前記光導波路は、リッジ型光導波路であることを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子。
- 前記第1回折格子及び前記第2回折格子は、それぞれ前記被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び前記波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で、前記リッジ型光導波路の頂上部に誘電体が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の波長変換素子。
- 前記第1回折格子及び前記第2回折格子は、それぞれ前記被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び前記波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で、前記リッジ型光導波路の導波方向に対して直交する方向に当該リッジ型光導波路に対して溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の波長変換素子。
- 自発分極ベクトルの向きに直交する平面でカットされた平行平板単一ドメイン強誘電体結晶基板に周期的分極反転構造が形成されており、入射される被波長変換光の波長を前記周期的分極反転構造に基づく擬似位相整合により変換する波長変換素子の製造方法であって、
前記被波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第1回折格子と、波長変換光をブラッグ反射する条件で形成された第2回折格子とを隣接させて一組の回折格子部分を形成する回折格子部分形成工程と、
前記強誘電体結晶基板に、前記被波長変換光及び前記波長変換光が伝播する方向が、前記強誘電体結晶基板の前記自発分極ベクトルの方向と直交する方向であって、かつ前記周期的分極反転構造の非分極反転領域と分極反転領域との境界面を通過することが可能な方向に、前記被波長変換光及び前記波長変換光を導波する光導波路を、前記一組の回折格子部分が、当該光導波路の一方の端側に配置される関係で形成する光導波路形成工程と
を含むことを特徴とする波長変換素子の製造方法。 - 前記光導波路形成工程は、リッジ型光導波路を形成するリッジ型光導波路形成工程であることを特徴とする請求項5に記載の波長変換素子の製造方法。
- 前記回折格子形成工程は、前記第1回折格子及び前記第2回折格子を、前記リッジ型光導波路の頂上部にそれぞれ前記被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び前記波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で誘電体を、前記リッジ型光導波路の頂上部に配置する工程であることを特徴とする請求項6に記載の波長変換素子の製造方法。
- 前記回折格子形成工程は、前記第1回折格子及び前記第2回折格子を、前記リッジ型光導波路の頂上部にそれぞれ前記被波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期及び前記波長変換光をブラッグ反射する条件を満たす周期で前記リッジ型光導波路の導波方向に対して直交する方向に当該リッジ型光導波路に対して溝を刻む工程であることを特徴とする請求項6に記載の波長変換素子の製造方法。
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JP2008281087A JP2010107822A (ja) | 2008-10-31 | 2008-10-31 | 波長変換素子及びその製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023157549A1 (ja) * | 2022-02-17 | 2023-08-24 | 日本碍子株式会社 | 波長変換素子および波長変換システム |
-
2008
- 2008-10-31 JP JP2008281087A patent/JP2010107822A/ja not_active Withdrawn
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