以下図面に基づいて本発明の実施の形態を詳述する。
図1(A)、(B)及び(C)において、1は本発明による回転スライド扉を示し、壁部2に形成された四辺状の開口部3に、当該開口部3とほぼ同じ形状からなり当該開口部3よりも一回り小さい扉本体4が回動自在及びスライド移動自在に設けられている。なお、図1(B)の矢印F1は、扉本体4の中心軸を中心に回転する回転方向を示し、矢印F2は、扉本体4が開口部3に沿ってスライド移動するスライド方向を示すものである。
ここで、図1(A)は開口部3全面を扉本体4によって閉塞した状態(以下、これを全閉状態と呼ぶ)を示し、図1(B)は、扉本体4を約75°回転させて、開口部3と扉本体4とが交差した状態を示し、図1(C)は、さらに扉本体4を押圧して開口部3の周縁一側部3aまでスライド移動させて、開口部3のほぼ全面を開放させた状態(以下、これを全開状態と呼ぶ)を示すものである。
実際上、この回転スライド扉1は、開口部3の周縁上部3bの全長に亘って延設された上ガイドレール5と、開口部3の周縁下部3cに周縁一側部3aから中心部まで延設された下ガイドレール6とを有し、これら上ガイドレール5及び下ガイドレール6によって開口部3の周縁一側部3a側まで扉本体4を案内し得る。
また、回転スライド扉1には、開口部3の上ガイドレール5にスライド自在に設けられるスライド回転機構部7が扉本体4の幅方向の中心上部に配置され、上側アーム部8と下側アーム部9とが扉本体4の一側部側にのみ設けられている。実際上、上側アーム部8は、一端部が上ガイドレール5の一端部に回転自在に枢支されていると共に、他端部が扉本体4の上部に回転自在に枢支されている。下側アーム部9は、一端先端が下ガイドレール6の一端部に回転自在に枢支されていると共に、他端部が扉本体4の下部に回転自在に枢支されている。
図2に示すように、上ガイドレール5内には、スライド回転機構部7と、開口部3の周縁一側部3a側にへスライド移動に抗してスライド回転機構部7に付勢力を与える付勢部11と、扉本体4が全閉状態のとき、磁力によって扉本体4を位置決めする第1の位置決め機構部12及び第2の位置決め機構部13とが設けられている。
ここで、上ガイドレール5は、図3に示すように、平板状の上板5aと、上板5aの両端から下方に垂設された一対の側板5bと、各側板5bの下端から内方に延設された棚板5cとを備えており、縦断面がほぼ偏平角型に形成されている。一対の棚板5c間には、上ガイドレール5の長手方向に沿って延設されるスリット状空間5dが形成されており、スライド回転機構部7の回動部(後述する)がスリット状空間5dから上ガイドレール5の外方に露出され得る。
図4に示すように、上ガイドレール5には、スライド回転機構部7に回転自在に枢着された4つの垂直ローラ15が各棚板5c上に当接され、スライド回転機構部7の垂直ローラ15が棚板5c上で転動し得ると共に、扉本体4の荷重がスライド回転機構部7の垂直ローラ15を介して棚板5cに伝えられ、扉本体4を支持し得るようになされている。
また、図5示すように、一対の棚板5c間のスリット状空間5dには、スライド回転機構部7に回動自在に枢着された水平ローラ16が配置され、いずれか一方の棚板5cの端部に水平ローラ16が当接して棚板5cに沿って転動し得るようになされている。かくして、上ガイドレール5は、図4に示すように、長手方向に沿ってスライド方向F2にスライド回転機構部7をスライド移動させ得るようになされている。
ここで、スライド回転機構部7は、図6及び図7に示すように、金属部材で形成された吊車本体18を備えており、吊車本体18の底板部18aの中央付近及び一端側に水平ローラ16が回動自在に枢着されていると共に、底板部18aの他端側両側部に立設した各側壁部18bにそれぞれ2つの垂直ローラ15が並んで回動自在に枢着されている。
底板部18aには、四辺状に配置された4つの垂直ローラ15の対角線上に貫通孔19が穿設されており、当該貫通孔19に回動部20が設けられている。実際上、回動部20は、図8及び図9に示すように、回転軸吊21が転がり軸受け22を介在させて吊車本体18の上面側から貫通孔19に挿通されることにより、当該回転軸吊21の拡形部21a及び転がり軸受け22が吊車本体18の底板部18a上に位置決めされると共に、当該回転軸吊21の筒部先端21bが底板部18aの下面側に露出し得るようになされている。因みに、転がり軸受け22は、複数の球状のころ23が円環状に配置された回転ベアリング22aを回転ワッシャ22b,22cで挟み込んだ構成を有し、各回転ワッシャ22b,22cがスムーズに回転し得るようになされている。
また、回動部20は、筒状の連結部24が吊車本体18の下面側から吊ベース板25の貫通孔25a及びワッシャ26を介在させて、吊車本体18の下面側に露出した回転軸吊21の筒部先端21bに嵌め込まれることにより、当該連結部24の拡形部24aが吊ベース板25の下面段部25bに位置決めされ、ビス28によって連結部24及び回転軸吊21が連結されている。これにより、回動部20は、連結部24及び回転軸吊21によって吊車本体18及び吊ベース板25を挟み込みむように設けられ、連結部24及び回転軸吊21が転がり軸受け22により吊車本体18に対して回動自在に設けられ得る(図6及び図7)。
ここで、回転軸吊21の拡形部21aは、ほぼ短円柱状に形成されており、その側面に扇型に形成された突起部21cが設けられ、回動部20が所定角度以上回転されると、吊車本体18における底板部18aの上面に突出形成された回転ストッパ30にこの突起部21cが当接し得るようになされている。
この実施の形態の場合、回転ストッパ30は、扉本体4の一面又は他面が押圧されて、扉本体4が開口部3に対して約90°まで回転したとき、突出部21cに当接するように形成されており、当該扉本体4が開口部3に対して約90°以上回転することを防止し得るようになされている。
因みに、図8において、31及び32ねじ孔を示し、これらねじ孔31,32が一致するように連結部24と吊ベース板25とが位置決めされねじ止めされることにより連結部24と吊ベース板25とを確実に連結し得るようになされている。また、33はL字状に形成された化粧金具であり、図6に示すように、ねじ34によって扉本体4の側面に固定されると共に、吊ベース板25を扉本体4にねじ35で固定する際に、当該ねじ35によって吊ベース板25にも化粧金具33が固定され得る。
かかる構成に加えて、図8に示すように、吊車本体18における底板部18aの一端部には、上面に四辺状に凹んだ凹部18eが形成されており、磁性部材からなる第1のスライド防止用磁石38が当該凹部18e内に固着されている。吊車本体18は、上ガイドレール5の所定位置に設けられた第2のスライド防止用磁石(後述する)と、第1のスライド防止用磁石38が磁力によって吸い寄せあい、上ガイドレール5の所定位置に位置決めされ得る。
そして、扉本体4は、図2及び図4に示すように、上ガイドレール5内に設けられたスライド回転機構部7によって当該上ガイドレール5に沿ってスライド移動する際に、図1(B)に示すように、上側アーム部8及び下側アーム部9によって回動範囲が規制されている。実際上、図4に示すように、上側アーム部8は、上ガイドレール5の一端における中央部分に一端部8aが回転自在に枢支され、他端部8bが扉本体4の上面部4a所定位置の中央部分に回転自在に枢支されており、一端部8aを中心に半円状の軌跡B1を描いて回転し得るようになされている。上側アーム部8は、扉本体4が一面又は他面側から押圧されると、押圧された方向と逆方向に回転し、押圧方向側に扉本体4を回転させ得るようになされている。
また、図10及び図11に示すように、下側アーム部9は、上側アーム部8と同一形状からなり、下ガイドレール6の一端における中央部分に一端部9aが回転自在に枢支され、他端部9bが扉本体4の下面部4b所定位置の中央部分に回転自在に枢支されており、上側アーム部8と同様に、一端部9aを中心に半円状の軌跡B1を描いて回転し得るようになされている。下側アーム部9は、扉本体4が一面又は他面側から押圧されると、押圧された方向と逆方向に回転し、押圧方向側に扉本体4を回転させ得るようになされている。因みに、これら上側アーム部8及び下側アーム部9は、断面扁平状に形成されており、扉本体4の上面部4aと上ガイドレール5との間と、扉本体4の下面部4bと下ガイドレール6との間との僅かな隙間に配置され得るようになされている。
実際上、この実施の形態では、図2に示すように、上側アーム部8の一端部8aの回動中心部から他端部8bの回動中心部までの距離H1が約188mmに選定されていると共に、上側アーム部8の他端部8bの回動中心部からスライド回転機構部7の回動中心部までの距離H2が約186mmに選定されており、扉本体4が回転する際の回転範囲が選定されている。また、この実施の形態では、上側アーム部8と同様に、図10に示すように、下側アーム部9の一端部9aの回動中心部から他端部9bの回動中心部までの距離H3が約188mmに選定されていると共に、下側アーム部9の他端部9bの回動中心部から、扉本体4の下面部4bに設けた突起部40までの距離H4が約186mmに選定されており、扉本体4が回転する際の回転範囲が選定されている。
なお、突起部40は、円柱状からなり扉本体4の下面部4b中心に設けられており、下ガイドレール6の長手方向に延びた溝部6aに沿って開口部3の周縁一側部3aまで案内され得るようになされている。実際上、この突起部40は、円周方向に回転自在に設けられており、下ガイドレール6の溝部6aに沿って開口部3の周縁一側部3aまで案内される際に回転することにより、溝部6aとの間で生じる摩擦を低減し得るようになされている。
ここで、図12は、全閉鎖状態の扉本体4Aから全開状態の扉本体4Bへ移行する際の軌跡を概略的に示すものである。このように全閉状態の扉本体4Aが一面側から押圧された場合には、上側アーム部8及び下側アーム部9(図示せず)が押圧を与えられた方向とは逆方向に回転し、扉本体4Aの一側部を開口部3の周縁一側部3a側に引き寄せた状態のまま扉本体4を回転させながら、同時に開口部3の周縁一側部3a側に扉本体4Aをスライド移動させてゆき、その結果、全開状態の扉本体4Bとなり得る。
また、この扉本体4Aは、押圧された一方向に向って回転しながら開口部3の周縁一側部3a側に向けてスライド動作する際、上側アーム部8及び下側アーム部9によって、当該扉本体4の一側部4cが開口部3の周縁一側部3aに非接触となるように回転範囲が調整されている。かくして、扉本体4Aは、仮に開口部3の周縁一側部3a側に当該開口部3と直交する壁部が形成されていても、開閉動作する際に、扉本体4の一側部4cが当該壁部に当接することを回避し得るようになされている。
かくして、図13に示すように、扉本体4の一面から力P1で押圧された場合には、スライド回転機構部7を中心に一方向に回転しながら、同時に開口部3の周縁一側部3a側へスライド移動してゆき、開口部3対向領域内において、扉本体4の幅寸法の約半分の領域内で回転軌跡C1を描いて開閉動作し得るようになされている。また、扉本体4の他面から力P2で押圧された場合でも同様に、スライド回転機構部7を中心に他方向に回転しながら、同時に開口部3の周縁一側部3a側へスライド移動してゆき、開口部3対向領域内において、扉本体4の幅寸法の約半分の領域内で回転軌跡C2を描いて開閉動作し得るようになされている。
かかる構成に加えて、回転スライド扉1には、図2及び図14に示すように、上ガイドレール5内に付勢部11が設けられており、扉本体4が周縁一側部3a側にスライド移動する際に、当該付勢部11によって扉本体4に対して開口部3の中心側に向けて所定の付勢力が与えられ得る。すなわち、付勢部11は、扉本体4が全開状態から全閉状態に復帰するように、扉本体4に対して付勢力を与えている。
この実施の形態の場合、付勢部11は、上ガイドレール5の上板5aの裏面に第1の回転ローラ41、第2の回転ローラ42及び第3の回転ローラ43が間隔を空けて配置され、これら第1の回転ローラ41、第2の回転ローラ42及び第3の回転ローラ43によって、所定長さの弾性紐44を、上ガイドレール5内において所定経路を経由させて引き回すような構成を有する。実際上、この弾性紐44は、一端及び他端に球状の径大部44a,44bがそれぞれ形成されており、一端側の径大部44aが上ガイドレール5の上板5aの裏面一端部側に配置された係止部45に係止され、第1の回転ローラ41、第2の回転ローラ42及び第3の回転ローラ43を順次経由した後、他端側の径大部44bがスライド回転機構部7に係止されている。
因みに、係止部45は、ほぼコ字状を有し、一端部と他端部との間の隙間から弾性紐44を挿通して一端部と他端部に弾性紐44の径大部44aを係止し得る。また、この実施の形態の場合、係止部45に係止された弾性紐44は、上ガイドレール5の中心部よりも他端側に配置された第1の回転ローラ41で上ガイドレール5の一端側に折り返されて、上ガイドレール5の係止部45よりも一端側に配置された第2の回転ローラ42で再び上ガイドレール5の他端側に折り返される。また、弾性紐44は、さらに第1の回転ローラ41と上ガイドレール5の中心部との間に配置された第3の回転ローラ43で上ガイドレール5の一端側に再び折り返された後、他端の径大部44bがスライド回転機構部7に係止されている。
このようにこの実施の形態の場合には、上ガイドレール5とスライド回転機構部7とを弾性紐44で繋げる際に、上ガイドレール5の一端側及び他端側間を複数回周回させることにより、長さの長い弾性紐44を用いるようになされており、短い弾性紐によって上ガイドレール5とスライド回転機構部7とを直接繋げる場合に比して、扉本体4に与える付勢力を弱め、扉本体4が全開状態から全閉状態に戻る際に扉本体4のスライド移動速度及び回転速度を遅くし得るようになされている。なお、第3の回転ローラ43は、板部材43aに回転自在に枢着されており、この板部材43aがスライド移動することにより、第2の回転ローラ42との距離と、スライド回転機構部7との距離とを調整し得、弾性紐44の付勢力を調整し得るようになされている。
因みに、図6及び図8に示すように、スライド回転機構部7には、吊車本体18に設けられた回転ストッパ30に、吊車本体18の一端部に向けて延設した2つの角柱状部材が並列に配置された係止突起部46が設けられ、この係止突起部46の隙間に弾性紐44が挿通されることにより、弾性紐44の他端の径大部44bが係止突起部46に挟み込まれて係止され得る。
また、図2及び図14に示すように、上ガイドレール5には、扉本体4が全閉状態のとき、スライド回転機構部7に設けた第1のスライド防止用磁石38と所定の隙間G1が形成され得るように第1の位置決め機構部12が設けられている。第1の位置決め機構部12は、第1のスライド防止用磁石38との間で磁力による吸着力を生じる第2のスライド防止用磁石49を備えており、扉本体4が全閉状態のとき、第1のスライド防止用磁石38と第2のスライド防止用磁石49との間で生じる吸着力によりスライド回転機構部7を静止させ得るようになされている。またその一方で、この実施の形態においては、第1のスライド防止用磁石38及び第2のスライド防止用磁石49間に隙間G1を設けた分だけ吸着力を弱め、所定以上の僅かな押圧力が与えられることで、スライド回転機構部7を容易にスライド移動させ得るように形成されている。
これに加えて、上ガイドレール5の他端部には、第2の位置決め機構部13が設けられている。この第2の位置決め機構部13は、磁性部材からなる揺れ防止用磁石50を備えており、扉本体4が全閉状態のとき、扉本体4に設けられたストッパ金具51との間で生じる磁力による吸着力により扉本体4の回転を防止し得るようになされている。ストッパ金具51は、揺れ防止用磁石50と磁力を生じて吸い寄せ合う金属部材からなり、扉本体4が全閉状態のとき、揺れ防止用磁石50と対向する位置となる当該扉本体4の上面端部に設けられている。また、この実施の形態の場合においては、揺れ防止用磁石50とストッパ金具51との間に隙間G2が形成されており、当該揺れ防止用磁石50及びストッパ金具51間に隙間G2を設けた分だけ吸着力を弱め、所定以上の僅かな押圧力を与えることで、扉本体4が容易に回転し得るように形成されている。
また、図14に示すように、上ガイドレール5には、扉本体4が全閉状態のとき、スライド回転機構部7の垂直ローラ15を圧接して、当該垂直ローラ15の転動を防止する板ばねストッパ機構部52が設けられている。実際上、図15(A)に示すように、板ばねストッパ機構部52は、スライド回転機構部7の垂直ローラ15を圧接する板ばね53と、当該板ばね53を上ガイドレール5に取り付けるための取付部54とから構成されている。取付部54は、ほぼ短四辺柱状からなり、図3に示すように、上ガイドレール5の上板5a裏面に形成された突出部5fと、上ガイドレール5の側板5bとの間に嵌め込まれると共に、下部に形成された段差部54aが上ガイドレール5の棚板5cに形成された突出部分5gに位置決めされることにより、上ガイドレール5の棚板5c上空間に配置され得る。
取付部54は、側面54bに斜め上方に向けて形成されたねじ孔56に、上ガイドレール5のスリット状空間5d斜め下方からねじ(図示せず)が螺着されることにより、当該ねじによって上ガイドレール5の側板5bから僅かに遠ざけられ、上ガイドレール5の突出部5fと、上ガイドレール5の棚板5cの突出部分5gとに押し付けられて固定され得る。また、取付部54には、取付面部54cに板ばね53をねじ57aで螺着させるためのねじ孔57が形成され、この取付面部54cから当該取付面部54cと対向する端面部54dに向けてハ字状に開いてゆく形状をもつ切り欠き部58が、側面54bのねじ孔56下方に形成されている。
ここで、板ばね53は、図15(B)に示すように、金属部材からなる板状部材から形成されており、一面から与えられる外力によって反発してもとの形状に復帰するような弾性力を有するように形成されている。図15(A)に示すように、この板ばね53は、L字状に曲げられた一端面53aと、一端面53aと連続したほぼ直線状の第1の平坦面53bと、第1の平坦面53bと連続した屈曲面53cと、屈曲面53cと連続したほぼ直線状の第2の平坦面53dとを有する。板ばね53は、取付部54の切り欠き部58に第1の平坦面53bが配置された状態で、取付部54の取付面部54cに設けたねじ孔57に一端面53aがねじ57aによって固定されており、取付部54に片持ち支持されている。
また、板ばね53の屈曲面53cは、上ガイドレール5の上板5aに向けて大きく湾曲して延びた後、スライド回転機構部7の垂直ローラ15が配置される空間上部付近において、上ガイドレール5の長手方向に向けて大きく湾曲し、第2の平坦面53dの先端53eがスライド回転機構部7の垂直ローラ15の高さ寸法まで緩やかに上昇してゆくように形成されている。すなわち、板ばね53は、上ガイドレール5の棚板5cと第2の平坦面53dとの距離が、先端53eから取付部54側に行くに従って次第に小さくなるように、屈曲面53cが形成されている。
これにより、板ばね53は、扉本体4が全開状態から全閉状態に復帰する際に、上ガイドレール5の棚板5c上を転動するスライド回転機構部7の垂直ローラ15と、第2の平坦面53dが先端53eから接触する。板ばね53は、第2の平坦面53dが根元部分においてスライド回転機構部7の垂直ローラ15を圧接し、上ガイドレール5の棚板5cに押し付けて当該垂直ローラ15の転動を確実に停止させ得る。因みに、この実施の形態の場合、第2の平坦面53dの先端53eは、C字状に湾曲されており、スライド回転機構部7の垂直ローラ15が当該第2の平坦面53dの下方に確実に案内され得るようになされている。
以上の構成において、回転スライド扉1では、回転自在に設けられたスライド回転機構部7を扉本体4の幅方向の中心上部に固定し、当該スライド回転機構部7が開口部3の周縁上部3bに延設された上ガイドレール5に沿って開口部3の周縁一側部3a側にスライド移動する。
また、この回転スライド扉1では、上ガイドレール5に回転自在に枢支された上側アーム部8と、下ガイドレール6に回転自在に枢支された下側アーム部9とが、扉本体4の上下にそれぞれ回転自在に枢支されており、全閉状態の扉本体4が押圧されると、当該扉本体4の回転方向とは逆方向にこれら上側アーム部8及び下側アームが回転し、扉本体4の回転範囲を規制する。
さらに、この回転スライド扉1では、扉本体4が一面又は他面のいずれから押圧されても、当該扉本体4の一側部4cが開口部3の周縁一側部3aに非接触で回転するように、上側アーム部8及び下側アーム部9の取り付け位置が選定されている。
従って、この回転スライド扉1では、扉本体4の回転方向を一面側からの一方向と、他面側からの逆方向との両方向とすることができるので、扉本体4の一面又は他面のいずれの方向から通行者が通過しても、当該通行者が自ら扉本体4を手前に引く動作を行うことなく、単に扉本体4を押圧しさえすれば、扉本体4を開くことができ、かくして高齢者や、身体が不自由で車椅子の乗った者、或いは猫や犬等の小型動物であっても扉本体4を容易に開いて通行することができる。
これに加えて、回転スライド扉1では、扉本体4が全閉状態から全開状態になる際に、スライド回転機構部7のスライド移動に伴って、上ガイドレール5内に設けた弾性紐44が引き伸ばされることにより、当該スライド回転機構部7を上ガイドレール5の中心側へ向けて復帰付勢する。
これにより、回転スライド扉1では、開状態の扉本体4への押圧が解除されると、弾性紐44によって与えられている付勢力によってスライド回転機構部7が上ガイドレール5の中心側に引っ張られてスライド移動すると共に、扉本体4のスライド移動と同時に、上側アーム部8及び下側アーム部9によって扉本体4の一側部4cのスライド移動が規制されることにより、扉本体4が回転して自動的に全閉状態になる。
従って、回転スライド扉1では、通行者が開状態の扉本体4を通過し終えて扉本体4に対する押圧が解除されると、扉本体4を自動的に全閉状態に戻すことができるので、高齢者や、身体が不自由で車椅子の乗った者、猫又は犬等の小型動物であっても、開口部3を通過後に扉本体4を確実に閉めることができる。
また、この回転スライド扉1では、上側アーム部8及び下側アーム部9によって扉本体4の回転範囲を規制すると共に、スライド移動させる付勢力を回転力に変換して扉本体4を全閉状態にさせていることから、扉本体4をスライド動作させると同時に回転動作させてスムーズに全閉状態に戻すことができる。そして、この回転スライド扉1では、扉本体4を全閉状態にさせる回転力を与えるための特別な部品を、弾性紐44とは別に他の箇所に設ける必要がなくなり、従来よりもスライド回転機構部7等の機械的構成を格段的に簡易な構成にできる。
さらに、このような回転スライド扉1では、図13に示したように、開口部3を挟んだ対向空間に対して、扉本体4の幅寸法の約半分の領域内で当該扉本体4を開閉動作させることができるので、従来のように扉本体4の一側部4cにヒンジ部を設けて開閉動作させる場合に比して、格段的に回転範囲を小さくすることができる。
また、これに加えて回転スライド扉1では、スライド回転機構部7に揺れ防止用磁石50を設けると共に、当該揺れ防止用磁石50と引き寄せあう磁力が生じるストッパ金具51を上ガイドレール5に設け、これら揺れ防止用磁石50及びストッパ金具51間に生じる吸着力を用いて、扉本体4を全閉状態に維持していることから、風等による僅かな押圧力によって全閉状態の扉本体4が回転してしまうことを防止できる。
そして、この回転スライド扉1では、扉本体4が全閉状態のとき、揺れ防止用磁石50と所定の隙間G2が形成されるように、ストッパ金具51が扉本体4に設けられていることから、揺れ防止用磁石50及びストッパ金具51間に隙間G2を有する分だけ吸着力が弱められ、通行者によって与えられる僅かな押圧力によって扉本体4を容易に回転させることができ、かくして押圧力が比較的弱い高齢者や、小動物等であっても扉本体4を容易に回転させることができる。
さらに、回転スライド扉1では、スライド回転機構部7に第1のスライド防止用磁石38を設けると共に、当該第1のスライド防止用磁石38と引き寄せあう磁力を有する第2のスライド防止用磁石49を上ガイドレール5に設け、これら第1のスライド防止用磁石38及び第2のスライド防止用磁石49間に生じる吸着力を用いて、扉本体4が全閉状態のときスライド回転機構部7を閉止位置で位置決めするようにしたことから、風等による僅かな押圧力によって全閉状態の扉本体4がスライド移動してしまうことを防止できる。
そして、この回転スライド扉1では、扉本体4が全閉状態のとき、スライド回転機構部7の第1のスライド防止用磁石38と所定の隙間G1が形成されるように、第2のスライド防止用磁石49が上ガイドレール5に設けられていることから、第1のスライド防止用磁石38及び第2のスライド防止用磁石49に隙間G1を有する分だけ吸着力が弱められ、僅かな押圧力によってスライド回転機構部7をスライド動作させることができ、かくして押圧力が比較的弱い高齢者や、小動物等であっても扉本体4を容易にスライド移動させることができる。
また、この回転スライド扉1では、扉本体4が全開状態から全閉状態に復帰するとき、スライド回転機構部7の垂直ローラ15を板ばねストッパ機構部52の板ばね53によって圧接してゆき、扉本体4が全閉状態となる位置で、当該垂直ローラ15の転動を板ばね53により確実に停止させるようにしたことにより、扉本体4が全閉状態となる位置で瞬間的に扉本体4のスライド移動を停止させることができる。かくして、この回転スライド扉1では、扉本体4が全閉状態になる際に、スライド回転機構部7が付勢部11の付勢力によってスライド移動し過ぎて、上側アーム部8及び下側アーム部9によって、扉本体4が揺動されながら次第に静止位置まで収束して全閉状態となる不安定な動作を防止できる。
以上の構成によれば、上側アーム部8及び下側アーム部9によって扉本体4の移動を規制することで、扉本体4を回転と同時にスライド移動させると共に、スライド移動させる付勢力を回転力に変換して扉本体4を全閉状態にさせることにより、扉本体4を全閉状態にさせる回転力を与えるための特別な部品が不要となり、当該特別な部品を用いない分だけ複雑な動作を回避でき、かくして従来よりも扉本体を安定させてスムーズに開くことができると共に、簡易な構成で開状態の扉本体を自動的に閉止位置まで復帰させることができる回転スライド扉を提案できる。
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能であり、例えば、図1に示すように、扉本体4を右方向へスライド移動可能としたが、左方向へスライド移動可能としてもよく、この場合、下ガイドレール6、上側アーム部8、下側アーム部9、第1の位置決め機構部12、第2の位置決め機構部13及び付勢部11について、この実施の形態と左右対称に設けるようにすればよい。
また、上述した実施の形態においては、下ガイドレールとして、床内に断面コ字状の溝部6aを埋め込むような下ガイドレール6を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図16に示すように、帯状の板部材からなる2つのレール形成部61a、61bからなる下ガイドレール61を適用してもよく、この場合、溝部に相当する凹部62を形成するように並列にレール形成部61a、61bを床上に貼り付ければよく、床自体を切削加工することなく、下ガイドレールを容易に形成することができる。
さらに、上述した実施の形態においては、付勢部として、弾性紐44を適用した付勢部11を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、付勢部としてコイルばねや空圧式シリンダ等この他種々の付勢部を適用してもよい。
さらに、上述した実施の形態においては、上側アーム部8の一端部8aの回動中心部から他端部8bの回動中心部までの距離H1を約188mmとし、上側アーム部8の他端部8bの回動中心部からスライド回転機構部7の回動中心部までの距離H2を約186mmとすると共に、下側アーム部9の一端部9aの回動中心部から他端部9bの回動中心部までの距離H3を約188mmとし、下側アーム部9の他端部9bの回動中心部から、扉本体4の下面部4bに設けた突起部40までの距離H4を約186mmとした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は扉本体4が一面又は他面から押圧されて両回転方向から回転する際に、扉本体4の一側部4cが開口部3の周縁一側部3a等に当たらなければ、上側アーム部8や下側アーム部9等の取り付け位置を種々の位置に変更してもよい。
さらに、上述した実施の形態においては、板ばねストッパ機構部52によってスライド回転機構部7の垂直ローラ15を圧接する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、板ばねストッパ機構部によってスライド回転機構部7の水平ローラ16を圧接してもよい。また、ストッパ機構部52として、板ばね53を用いた板ばねストッパ機構部52を適用したが、スライド回転機構部7自体や垂直ローラ15に当接して受け止めるコイルばねやN字状の板ばね等の受止部や、或いは空気圧シリンダ等この他種々の付勢力吸収手段を用いたストッパ機構部を適用してもよい。
さらに、上述した実施の形態においては、第1の揺れ防止用磁性部材として揺れ防止用磁石50を適用し、第2の揺れ防止用磁性部材としてストッパ金具51を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第1の揺れ防止用磁性部材として金属部材でなるストッパ金具51を適用し、第2の揺れ防止用磁性部材として揺れ防止用磁石50を適用してもよく、また、第1の揺れ防止用磁性部材及び第2の揺れ防止用磁性部材の両部材について互いに吸い寄せあう磁力を有する磁石としてもよい。なお、ここで磁性部材とは、例えば磁石等の磁場を有する部材、或いは、鉄等のように磁場をかけられたときに磁化する性質を有する部材をいう。
さらに、上述した実施の形態においては、スライド防止用磁性部材として第2のスライド防止用磁石49を適用し、対向磁性部材として第1のスライド防止用磁石38を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、スライド防止用磁性部材又は対向磁性部材のいずれか一方について磁石を適用し、他方を金属部材からなる金具を適用してもよい。