JP2010106389A - 人工芝生用ポリアミド系繊維及びこれを用いた人工芝生 - Google Patents

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伸行 石神
Yasuharu Ono
康晴 大野
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Abstract

【課題】新規な防カビ性ポリアミド系モノフィラメント及びその集合体である人工芝生用ポリアミド系繊維及びこれを用いた人工芝生の提供。
【解決手段】本発明に係る人工芝生用ポリアミド系繊維は、ポリアミド系樹脂のモノフィラメント又はその集合体であって、該モノフィラメントが、有効成分としてアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物を含有する防カビ剤成分を含有し、該防カビ剤成分とポリアミド系樹脂を含有する紡糸原料とを溶融紡糸してなり、かつ50dtex〜100,000dtexの範囲内の単糸繊度を有する。本発明に係る人工芝生用ポリアミド系繊維をパイルとして有する人工芝生は優れた長期持続性の防カビ性を示す。
【選択図】なし

Description

本発明は、有効成分としてアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物を含有する防カビ剤成分を含有するモノフィラメント又はその集合体である人工芝生用ポリアミド系繊維に関する。本発明はさらに、当該人工芝生用ポリアミド系繊維を用いた人工芝生に関する。
従来、人工芝生用の樹脂製モノフィラメントとしては、熱可塑性樹脂からなるものが多く用いられている。用いられる樹脂は、例えばポリエステル系、ナイロン等のポリアミド系及びオレフィン系の樹脂もしくはそれらを複合化したものである。ポリエステル系樹脂としては、例えばPET、PBT又はPTTを主成分としたものが用いられ、ポリアミド系樹脂としては、例えばナイロン66、ナイロン6、ナイロン612又はナイロン12を主成分としたものが用いられ、オレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン又はポリエチレンを主成分としたものが用いられている。
モノフィラメントの断面形状としては、例えば丸型、中空、楕円形や、三角形、四角形(例えば長方形、台形等)、六角形、八角形等の多角形、扁平形状及びそれらの組み合わせや、それらに凹凸を付与したものがある。モノフィラメントとしては、繊度が50dtexから100,000dtexで、引張強力が2cN/dtexから10cN/dtexであるものが典型的に用いられる。色相としては、ナチュラル色及び着色材の添加や染色による白色、黒色、灰色、黄色、青色、緑色等の任意の色のものが挙げられる。上記のような特性のモノフィラメントを適宜組み合わせることで、目的とする意匠性や物性、品質を付与した製品を得ることができる。
しかし、樹脂製モノフィラメントにおいては、長期間使用する場合において原糸表面にカビが発生するという問題があり、カビの発生によって、外観が悪化したり、洗浄が必要になるといった欠点が生じていた。特に、屋外の広い範囲で使用される人工芝生用原糸では問題が顕著に発生した。すなわち、長期間使用する間に堆積した落ち葉等に含まれるカビが人工芝生上で繁殖し、黒い変色による緑色外観の悪化が問題となっていた。よって長期間、好ましくは少なくとも3〜5年間防カビ効果を維持できる人工芝生の提供が望まれていた。
カビの発生の改善策としては、上記のような樹脂製フィラメントに、例えば銀系抗菌剤に代表されるような抗菌剤や、防カビ剤を使用する方法がある。
特許文献1は、衣料の芯地、フィルター、衛生材料、日用品等に使用しうる抗菌抗黴機能を有する不織布であって、溶解性硝子を含む合成樹脂製繊維を使用するか又は不織布の接着成分中に溶解性硝子を含ませて或いは繊維及び接着成分のいずれにも溶解性硝子を含んだ抗菌抗黴機能を有する不織布を開示する。特許文献1には、従来、抗菌抗黴機能を有する不織布としては、有機系(ジフェニルエーテル系、クロルヘキシジン系、チオベンダゾール系等)、無機系(銀又は銅をイオン交換したゼオライト、銅粉等)の抗菌抗黴機能を有する物質を、合成樹脂内に練り込んで、その合成樹脂で作った繊維を使用して不織布に仕上げたり不織布に抗菌抗黴剤を後加工で付着させていたりしたが、以下の欠点があると記載されている:(1)有機系の抗菌抗黴剤を合成樹脂に練り込む場合には、約200℃前後まで加熱をする必要があるため、抗菌抗黴剤の分解、揮発があり、作業環境の悪化、製品の均一性に欠けるし、使用時に熱のかかるものでは揮発が認められること、(2)有機系の抗菌抗黴剤を後加工で付着させる場合にも、前記(1)と同様の欠点があること、及び(3)無機系の抗菌抗黴剤を合成樹脂に練り込む場合には、特に抗菌性が弱く、ゼオライト系を使用するときには、その吸着性のため、加工性、保管性が難点になっていること。そして特許文献1は、前記溶解性硝子に抗菌抗黴成分として銀、銅、亜鉛を含ませることも記載する。
特許文献2は、抗菌効果を有するポリビニルアルコール系繊維及びそれを用いた繊維シート状物を開示し、抗菌薬剤として2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール又は2−(カルボメトキシアミノ)−ベンズイミダゾールを記載する。特許文献2には、菌類の繁殖から繊維製品を守る一般的な方法として、有機スズ化合物、第四級アンモニウム塩類、フタルイミド類、ジフェニルエーテル類、ピリジン類、ベンズイミダゾール類等の抗菌薬剤で繊維製品を後処理する方法で、具体的には薬剤又は薬剤溶液への繊維製品に含浸する方法があるが、含浸作業時に激しい不快臭や刺激臭を伴う弊害があり、また薬剤が付着しているだけのものであるため極めて脱落し易く、またこれらの薬剤は溶出コントロールができないために効果の持続性に欠けることを記載されている。その対策として、抗菌薬剤を繊維内部に含有させることにより、効果の持続性のコントロールと、薬剤の脱落防止性能を得ようとする方法が考えられるが、かかる方法は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱溶融性樹脂に混合紡糸する方法であり、そして薬剤は水分介在の下に徐々に溶出することによって効果を発揮するため、疎水性繊維に混合した場合には、繊維表面付近の薬剤が溶出した後は、内部に存在するものは表面に移動できないため効果に寄与せず、効果の持続性がないという欠点があることが記載されている。また、特許文献2は、疎水性樹脂によっては混合成分がブリードアウトするものもあるが、この量は極めて僅かであり抗菌効果を発揮するには至らないと記載している。さらに、特許文献2には、「ナイロンに2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールを混合した繊維が特開昭49−80146号公報に記載されているが、この発明はフジツボ、コケムシ等の海中付着生物防止性合成樹脂成型物に関するものであり、海中での使用のように十分に水分を含有した場合には効果を発揮するものの、大気中のように通常の菌類が繁殖しやすい環境では効果は短時間に消滅する。この理由としては、ナイロンは親水性繊維であるとはいえ、その度合いはピリビニルアルコール系繊維よりもはるかに劣り、薬剤が繊維内部から移動するのに十分な湿気を吸湿・放湿することができないためである。以上述べてきたように、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール又は2−(カルボメトキシアミノ)−ベンズイミダゾールとポリビニルアルコール系繊維とを組み合わせた場合にのみ、高い抗菌効果とその持続性が発現することが明らかとなった。」と記載されている。なお、特許文献2において、ポリビニルアルコールは、湿式紡糸され、215℃において乾熱延伸されている、一方、対照として用いられたナイロン66チップは300℃で溶融紡糸されている。また、対照として前記薬剤を含有したナイロン66は青かび、黒かび、及び白癬菌に対して抗菌効果が小さいと総合評価されている(表1参照)。
特許文献3は、銀、銅及び亜鉛より選ばれた少なくとも1つの金属を担持させたハイドロキシアパタイトの焼成物を抗菌ハイドロキシアパタイトとして繊維に含有させたことを特徴とする抗菌性を有する繊維を開示し、そして使用される繊維としてナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;アクリルニトリル;ポリビニルアルコール及びこれらの共重合体などの合成ポリマー;レーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテートなどの再生又は半合成ポリマーを挙げている。また、特許文献3は、抗菌性ハイドロキシアパタイトの添加混合の時期及び方法は特に限定されず、例えば、原料モノマーに混合後重合する方法、反応中間体に混合し重合する方法、重合ポリマーに混合する方法、ポリマーペレットと混合する方法、紡糸原液に混合する方法など、通常の方法によりポリマーに混合し、繊維及び繊維素材として使用しうることを記載している。
特許文献4は、ポリアミド繊維をN−アシルアミノカルボン酸ソーダで処理した後に、アクリル共重合単量体と抗菌物質を付与して熱処理する抗菌性ポリアミド繊維の製造方法を開示する。そして特許文献4は、白癬菌に効力のある抗菌物質として、トリクロロジフェニル尿素、芳香族ジエステル、鉱物油、乳化剤、及び残り水で形成されたものを挙げている。
特許文献5は、塩化ビニリデン系樹脂の中に、0.1乃至5重量%の亜酸化銅粉末を配合して、溶融紡糸した抗菌性塩化ビニリデン系繊維を開示する。
特許文献6は、平均粒径が1〜10μmの耐熱変色性に富む銀イオン含有リン酸系水溶性ガラスの粒子を0.5〜3.0重量%含有する抗菌性ポリアミド繊維であって単糸繊度が10デニール以下で、且つ破断強度をDTとし、破断の伸度をDEとすると、DT×DE1/2の値が25以上を示す、優れた抗菌性及び強度特性を有するポリアミド繊維を開示する。特許文献6は、「銀イオン含有ゼオライト粒子を練り込んだ繊維は、一般に抗菌効果が小さいだけでなく、繊維としての引っ張り強度が低くなり、しかもゼオライト粒子自体の吸湿性のために、製品加工性、保管性が悪い。さらに、銀イオンは不安定で、溶融紡糸の際に樹脂の熱還元力により、あるいは洗濯の繰り返しによってAg+→Ag0の反応を起して黄褐色に変色するという問題がある」と記載している。
特許文献7は、平均粒径が5ミクロン以下であり、抗菌性を有する金属イオンを含有するリン酸塩型の層状化合物と、融点が10℃より低くかつ25℃での粘度が10ポイズ以上を有する液状ポリエステル系化合物が含有されているポリエステル及び/又はポリアミドの如き熱可塑性ポリマーからなる抗菌性繊維を開示する。上記構成により、使用するポリマーで得られる本来の物性を損なうことなく、かつ、染色等の繊維加工工程を経ても十分な抗菌、抗かび性を保持し、又水洗、温水洗濯の後でも、抗菌、抗かび性の低下しない、洗濯耐久性の極めて優れた抗菌性の合成成形物が提供されうると記載されている。特許文献7は、(1)繊維に抗菌性を付与する方法として繊維に有機錫、有機水銀化合物を適用する方法があるが、これらの化合物の毒性が問題視され、現在ではそれらのほとんどが使用中止になっていること、(2)後加工工程としては、安全性の高い抗菌防かび剤としてシリコーン第4級アンモニウム塩などが用いられているが、当該塩はセルロース系繊維に対しては反応性をもち洗濯耐久性のある抗菌効果を示すが、合成繊維に対しては一時的な抗菌効果を示すものしか得られていないこと、(3)銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンを溶出させる銀、銅、亜鉛等の化合物は抗菌性を有するが、溶液状では取り扱いの点で不便であり用途も限定されるので、当該金属化合物を重合体中に混合して繊維とする方法や、銀イオン、銅イオンを交換したゼオライト系固体粒子を有機高分子体に添加混合する方法が提案されているが、これらの方法では、金属化合物が高分子へ及ぼす影響が大きくて利用できる範囲が著しく限定されたり、繊維化工程での工程性特に紡糸時の単糸切れ、パックフィルター詰まりによるパック寿命が短くなったりあるいは延伸時の毛羽頻発などのトラブルが多くなる問題が発生し、そうでない場合でも、金属イオンが高分子中に単に含有されているだけでは、繊維表面への抗菌作用に効果のある金属イオンの徐放性が不十分なため抗菌性の効果の絶対レベルが低く十分な効果が期待できないこと、を記載している。
特許文献8は、銀イオンを担持したリン酸ジルコニウムセラミックスをポリマー重量に対して100ppm〜1%含有した、優れた抗菌性能を有し、紡糸中及び紡糸後の黄変性(変色)が極めて抑制され、かつ、洗濯後においても抗菌性が高水準に維持されるポリアミド繊維を開示する。
特許文献9は、工業洗濯耐久性に優れた抗菌性繊維構造物であって、繊維構造物1g当りに用いられるナイロン繊維の表面積が0.05m2以上、アクリル繊維の場合は、表面積が0.1m2以上であり、かつ、該繊維が抗菌剤を含むものであって、かつ、該抗菌剤が分子量200〜700で、無機性/有機性値が0.3〜2.0の範囲のもので、かつ、平均粒径が2μm以下である抗菌性繊維構造物、並びにこれを用いた人工芝等を開示する。ここで、抗菌剤は、形成されたナイロン繊維又はアクリル繊維に対し、後処理において、染色加工の常法に従って、強固に付着又は吸尽されると記載されている。抗菌剤の一例として、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンズチアゾール亜鉛等のチアゾール系化合物が挙げられている。
特許文献10は、不織布の表面が、一定の光沢度以下の繊維構造体で構成された防草シートであって、当該不織布が防黴剤、防虫剤及び芳香剤の少なくとも1種を含むものを開示する。当該繊維構造体はタフティング加工してなる毛状構造体であるループ構造体、例えば、透水性人工芝であることができる。ここで、ループ構造体とは、ループパイル(長繊維、短繊維)をランダムに集合して、各ループを接合したシート状物を該不織布に接合したものや、かかるループ集合体を圧着したシート状物を該不織布に接合したもの、溶融押出しした線条ポリマーを該不織布上に堆積させて融着したもの、さらに繊維を該不織布に直接タフティングしてループパイルを形成したものなどをいうと記載されている。下地の不織布や繊維構造体自体に、さらには防草シートの表面に充填される砂に含有される除草剤、防黴剤、防虫剤、芳香剤などは、通常の一般に市販されているものを使用することができ、これらの薬剤は、不織布及び繊維構造体を構成する繊維として、練り込みや樹脂加工、さらには薬剤散布することによって含有させることができ、例えば、直接繊維形成性樹脂に練り込んだものを紡糸した繊維を使用したものでもよいが、かかる薬剤を含有する樹脂を繊維表面に付着させたり不織布又は繊維構造体表面に樹脂加工して付着させたものでもよいと記載されている。特許文献10には、基布及びバッキング材に防虫剤(ピペロニルブトキサイド)及び防かび剤(ピリチオン系防かび剤)を配合したところ、35℃、90%RHの雰囲気下で3日間放置しても、かびの発生はなく、また、変色もしなかったと記載されている。
特許文献11は、パイルを有する人工芝であり、該人工芝パイル面を転がるゴルフボールの転がり時間が、5%勾配条件下での最初の0〜1m区間の通過時間が7秒以内である集球性に優れたとされるゴルフ練習場に好適な人工芝を開示する。特許文献11には、ループパイル化し易く、かつ基布部の被覆効果を高めるために、ナイロンなどの扁平糸をパイル糸として使用することが好ましいこと、当該人工芝は、防炎、難燃、耐候(光)性、防汚、防かび、防水性、水分徐放性、制電性、撥水性、忌避効果、その他の機能性が付与されてもよいと記載されている。
しかし、上述したような従来の技術においては、抗菌剤をフィラメント中に練り込んだものには抗菌性が付与されるものの、所望の防カビ効果を付与することは困難である。また防カビ剤を用いたものでも所望の防カビ効果を長期間持続させることが困難であるという問題がある。すなわち、防カビ効果の点では有機系の防カビ剤を使用することが望ましいが、有機系の防カビ剤は耐熱性に劣るため、予め形成されたモノフィラメントに後加工で防カビ剤を含有させる方法が検討されている。しかし後加工では、長期間防カビ性を維持することが困難であるという問題がある。
一方、耐熱性を有する防カビ剤を徐放させる技術開発も行われている。例えば非特許文献1には、有機物を無機物内にインターカレーションさせてなる防カビ剤が記載されている。
しかし、約300℃を超える熱履歴を受ける場合がある溶融紡糸を経た後においても長期間の優れた防カビ性が実証されたモノフィラメントについては未だ提案されていない。
特開平4−24258号公報 特開平4−126819号公報 特開平4−163308号公報 特開平4−174773号公報 特開平4−281010号公報 特開平5−51815号公報 特開平5−51816号公報 特開平7−324225号公報 特開2001−123375号公報 特開平8−103177号公報 特開2000−120015号公報 「無機・有機ハイブリッド材料」株式会社シーエムシー出版,普及版2006年4月25日発行,第244〜252頁(但し、初版は2000年6月30日発行)
したがって、本発明の課題は、長期間にわたり、好ましくは3年間以上にわたり、さらに好ましくは5年間以上にわたり良好な防カビ性が持続する人工芝生用ポリアミド系繊維、及びこれを用いた人工芝生を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、特定の防カビ剤成分をポリアミド系繊維中に含有させ、ポリアミド系繊維の製造時及び使用時における防カビ剤の分解を抑制することによって、ポリアミド系繊維の製造において通常用いられる溶融紡糸等の工程における高温環境やポリアミド系繊維の使用時の光等に対する耐熱性及び耐光性に優れ、長期にわたる良好な防カビ性を達成したポリアミド系繊維が得られることを実証し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は、ポリアミド系樹脂のモノフィラメント又はその集合体であり、該モノフィラメントが、有効成分としてアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物を含有する防カビ剤成分を含有し、該防カビ剤成分と、ポリアミド系樹脂を含有する紡糸原料とを溶融紡糸してなり、かつ50dtex〜100,000dtexの範囲内の単糸繊度を有する人工芝生用ポリアミド系繊維を提供する。
前記防カビ剤成分は、前記アルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物が無機層状化合物間にインターカレーションして安定化されている無機有機複合体であることもできる。
前記防カビ剤成分は、前記紡糸原料100質量部に対して0.08質量部〜1質量部の範囲内で配合されることができる。
前記防カビ剤成分における前記アルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物の含有量は、5質量%〜15質量%の範囲内であることができる。
前記ポリアミド系樹脂は、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン66とナイロン6とのコポリマー、及びナイロン66とナイロン6とのブレンドポリマーからなる群から選ばれることができる。
前記モノフィラメントの繊維径断面の形状は、円、楕円、多角形、扁平状、コルゲート状、スレート状、及びそれらに突起を設けた形状からなる群から選ばれることができる。
前記モノフィラメントの繊維径断面の形状は、扁平状又はそれに突起を設けたH型形状であることができる。
前記モノフィラメントの単糸繊度は、200dtex〜1700dtexの範囲内であることができる。
前記紡糸原料は、着色剤として、顔料、染料、カーボンブラック、酸化チタンからなる群から選ばれる少なくともいずれかをさらに含むことができる。
本発明は、前記人工芝生用ポリアミド系繊維をパイルとして有する人工芝生をも提供する。
本発明によれば、長期間にわたって良好な防カビ性を持続する人工芝生用ポリアミド系繊維が得られるため、これを用いて長期間にわたる防カビ性に優れる人工芝生が得られる。本発明に係る人工芝生用ポリアミド系繊維を使用することにより、屋外で使用した場合、優れた防カビ性が例えば3〜5年の長期間にわたって維持される。
以下本発明の典型的な態様について具体的に説明する。
本発明に係る人工芝生用ポリアミド系繊維は、1本のモノフィラメント又は該モノフィラメントが複数本集合してなる集合体からなり、マルチフィラメントとは区別される。本発明において、集合体とは複数本のモノフィラメントが組み合わされたもの全般を意味し、加撚等の集束処理や、繊維集束剤等の処理剤の介在の有無等により限定されるものではない。典型的な集合体としては、複数本のモノフィラメントを引き揃えて束ねたのみのもの、又はこれを加撚したもの等を例示できる。
本発明におけるモノフィラメントは防カビ剤成分を含有し、該防カビ剤成分は有効成分としてアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物を含有する。製造時の溶融紡糸等による高温、及びポリアミド系繊維の使用時にさらされる光等によるアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物の分解が抑制され、モノフィラメント中にアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物が残存できれば、該モノフィラメントは長期間良好な防カビ性を維持することができるであろう。本発明に係る人工芝生用ポリアミド系繊維は、有効量の該アルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物がモノフィラメント中に残存していることによって長期間良好な防カビ性を与えるものである。
アルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物をモノフィラメント中に良好に残存させる方法としては、例えば後述する無機有機複合体のような、無機化合物へのインターカレーションによるアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物の安定化等を例示できる。
本発明により、防カビ剤成分中の有効成分の分解が抑制されていることによって、紡糸原料と防カビ剤成分とを組み合わせる際や溶融紡糸工程における臭気発生を低減することもできる。
本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維は、上記防カビ剤成分と、ポリアミド系樹脂を含有する紡糸原料とを溶融紡糸してなるものである。これにより、モノフィラメント中に防カビ剤成分が均一に分散した状態で含有されるので、長期間にわたり良好な防カビ性を付与し得る。また本発明においては防カビ剤成分中の有効成分の熱分解が例えば無機有機複合体の形成等により抑制されているため、高温下の溶融紡糸を経ることに起因する防カビ効果の大きな低下がない。
なお、本発明において紡糸原料とは、溶融紡糸に供される原料のうち本発明において用いる防カビ剤成分を除く全成分を意味し、ポリアミド系樹脂に加え、後述するような種々の添加剤を任意に含むことができる。
本発明者は、特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明に係る人工芝生用ポリアミド系繊維が長期間防カビ性を維持できる理由として以下のように考える。防カビ剤成分と紡糸原料とを組み合わせて溶融紡糸することによって、ナイロン66等のポリアミド系樹脂に防カビ剤成分が練り込まれた本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維においては、僅かではあっても含水によって人工芝生用ポリアミド系繊維の内外の水分が交換し、防カビ剤成分が露出する可能性がある。また、人工芝生では、ボール落下等による人工芝生用ポリアミド系繊維への衝撃が長期間持続するため、繊維に生じた傷が新たな表面となって防カビ剤成分を露出させる可能性がある。これらの要因で防カビ剤成分が外部に徐放されると、長期間良好な防カビ性が持続される。この場合、例えばモノフィラメントを形成した後に、該モノフィラメント外表面に防カビ剤成分を含有させて得たポリアミド系繊維と比べて、より長期間良好な防カビ性を持続させることができる。
本発明において、モノフィラメントは、50dtex〜100,000dtexの範囲内の単糸繊度を有する。単糸繊度が50dtex未満であると、溶融紡糸の際に紡糸原料が紡糸装置内に長時間滞留し、防カビ剤成分中の有効成分の熱分解が進行して、所望の長期防カビ性を得ることが困難になる。また、人工芝生に用いる際に糸切れ等により耐久性が低くなる。一方、単糸繊度が100,000dtexを超えると人工芝生の使用感が悪くなったり競技者の転倒時に擦過傷が生じ易くなる等の不都合が生じる。モノフィラメントの単糸繊度は、より好ましくは100dtex〜50,000dtex、さらに好ましくは150dtex〜10,000dtex、さらに好ましくは200dtex〜5,000dtex、さらに好ましくは200dtex〜2,000dtex、さらに好ましくは200dtex〜1,700dtexの範囲内であることができる。
防カビ剤成分は、アルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物のみからなるものでも良いが、アルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物と、他の成分、特にアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物の存在状態を安定化する機能を有する成分、との複合体であることが好ましい。
特に、防カビ剤成分が、アルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物と無機層状化合物とを含有する無機有機複合体であることが好ましい。該無機有機複合体によれば、例えば無機層状化合物の層間に異質分子であるアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物がインターカレーションすること等によってアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物が保護及び安定化されるため、人工芝生用ポリアミド系繊維の製造時及び使用時におけるアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物の熱分解及び光分解が抑制される。これにより人工芝生の長期防カビ性が特に良好になる。
無機層状化合物としては、層状粘土鉱物、典型的には層状珪酸塩を例示できる。
上記防カビ剤成分、好ましくは上記無機有機複合体は、紡糸原料100質量部に対して0.08質量部〜1質量部の範囲内で配合されることが好ましい。紡糸原料100質量部に対する防カビ剤成分の配合量が0.08質量部以上である場合、本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維が長期間にわたって良好な防かび性を有し、1質量部以下である場合、原料コストの過度な上昇を防止できる。特に、上記無機有機複合体によれば、アルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物の熱分解及び光分解がより抑制されるため防カビ剤成分を多量に用いない場合にも良好な防カビ効果が得られ、上記配合量が1質量部程度である場合、長期間にわたって良好な防カビ性を持続できる。
紡糸原料100質量部に対する該防カビ剤成分の配合量は、0.08質量部〜0.5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.08質量部〜0.3質量部の範囲内であることが特に好ましい。
防カビ剤成分におけるアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物の含有量は、5質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましい。該含有量が5質量%以上である場合、製造時の作業性等を良好に維持しながら長期間の良好な防カビ性を付与でき、15質量%以下である場合、例えば無機層状化合物等の他の成分を含有させることによるアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物の安定化がより容易になる。該含有量は、8質量%〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。
モノフィラメント中のアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物の含有量は、0.008質量%〜0.1質量%の範囲内であることが好ましい。該含有量が0.008質量%以上である場合、本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維が長期間にわたって良好な防カビ性を有し、0.1質量%以下である場合、長期間の良好な防カビ性を維持しながら原料コストの過度な上昇を防止できる。該含有量は、0.008質量%〜0.05質量%の範囲内であることがより好ましく、0.008質量%〜0.03質量%の範囲内であることが特に好ましい。
本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維は、ポリアミド系樹脂を用いていることによって優れた耐摩耗性を有する。
ポリアミド系樹脂は、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン66とナイロン6とのコポリマー、及びナイロン66とナイロン6とのブレンドポリマーからなる群から選ばれることが好ましい。
モノフィラメントの繊維径断面の形状は、例えば、円、楕円、多角形、扁平状、コルゲート状、スレート状、及びそれらに突起を設けた形状からなる群から選ばれることができる。多角形としては、三角形、四角形(例えば正方形、長方形、台形、平行四辺形等)、六角形、八角形等を例示できる。なおコルゲート状とは、繊維径断面が半円状の複数連続する突起を表裏それぞれに有し、かつ突起部の位置及び周期が表裏で一致しているような形状を典型的に意味し、スレート状とは、上記コルゲート状における突起部の位置が表裏で例えば1/2周期のように規則的にずれており、突起の周期は表裏で一致しているような形状を典型的に意味する。
特に、扁平状又はそれに突起を設けたH型形状は、人工芝生に用いる際に基布のカバーリング性が良い点で好都合であり、特に突起を設けた形状は眩しさの低減等の点でも好都合である。
本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維を得るために用いる紡糸原料は、ポリアミド系樹脂の他に、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の他の樹脂や、種々の添加剤を任意に含むことができる。添加剤としては、着色剤、熱安定剤、光安定剤、艶消剤、滑剤、可塑剤、結晶阻害剤等が挙げられる。
着色剤としては、典型的には、顔料、染料、カーボンブラック、酸化チタンからなる群から選ばれる少なくともいずれかを用いることができる。
本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維は、モノフィラメントを製造するための種々の公知の方法を適用して製造することができる。典型的には、例えば、ポリアミド系樹脂のみ、又は本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維に含有され得る他の成分をポリアミド系樹脂とともに含むマスターペレットを溶融し、さらに必要に応じて他の成分を任意に添加した後、押出機から湿式又は乾式で溶融紡糸し、さらに任意に1回又は2回以上の延伸工程を経ることによって製造できる。防カビ剤成分は、紡糸前であればいずれの時点で添加しても良く、マスターペレット中に予め含有させても良いが、防カビ剤成分の凝集を抑制し、モノフィラメント中に防カビ剤成分をより均一に存在させることができる点で、上記マスターペレットの表面に添着剤等によって防カビ剤成分を付着させ、これを溶融紡糸する方法は好ましい。
例えば以上のようにして、本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維を構成するモノフィラメントを製造できる。本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維がモノフィラメントの集合体とされる場合には、得られたモノフィラメントを複数本引き揃え、必要に応じて加撚等を行うことができる。
本発明が提供する典型的な人工芝生としては、本発明の人工芝生用ポリアミド系繊維をパイルとして有するものを例示できる。パイルはカットパイルでもループパイルでも良い。
本発明においては、クッション性が良好になる点で、人工芝生用ポリアミド系繊維に例えば捲縮加工、より典型的には非旋回性の捲縮加工が施されて良い。この場合の捲縮伸長率は、例えば10%〜50%の範囲内であることができる。
なお上記捲縮伸長率は、以下の数式で表される。
捲縮伸長率(%)=((B−A)/B)×100
A:敷設された状態での基布面からモノフィラメント先端までの高さ
B:Aのモノフィラメントの捲縮を伸ばした状態の長さ
本発明に係る人工芝生は、本発明に係る人工芝生用ポリアミド系繊維を用いて公知の方法で製造できる。例えば、本発明に係るモノフィラメントを複数本、典型的には3本〜8本程度引き揃えた集合体を、例えば20〜50回/m、好ましくは25〜30回/m加撚して得た加工糸をタフト機にて基布にタフトすることができる。加撚は、熱セットや特殊なタフト機を必要としない点で好都合である。また加撚時に、静電気発生を抑制するための制電糸等の他の糸を混撚しても良い。
基布は特に限定されないが、例えばポリプロピレン平織基布等を例示できる。
タフト後、例えば基布の裏面にゴムラテックスを塗布して架橋させることによるゴムシート加工等を施すことでモノフィラメントを基布に固定し、人工芝生を得ることができる。なお本発明に係る人工芝生は、例えば砂入り人工芝生等としても良い。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
<モノフィラメントの5種混合カビに対する防カビ性評価>
実施例1:2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを9質量%含有する防カビ剤成分を0.3質量部配合した淡緑色モノフィラメント
ナイロン66ペレット95質量部に、添着剤0.5質量部と、防カビ剤成分(2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと層状珪酸塩との無機有機複合体、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンの含有量9質量%))0.3質量部とを添加して攪拌し、これに、顔料マスターペレットとして、淡緑色顔料を含む淡緑色N6マスターペレット5質量部をさらに添加し、均一に混合した。これを、水冷のモノフィラメント製造装置にて下記の紡糸条件で紡糸し、繊維径断面が扁平状の、単糸繊度500dtex、強力15N、糸幅(すなわち扁平形状の最大径)0.75mm、厚み0.15mmのモノフィラメントを得た。すなわち本実施例では紡糸原料100質量部に対して防カビ剤成分は約0.299質量部配合されている。
以下の紡糸条件、
紡口穴形状:扁平状
溶融ヒーター温度:290℃
冷却水種類:温水
巻取り速度:150m/分
加熱延伸:あり
下で、実施例1に係るモノフィラメントサンプルを作製した。
比較例1:防カビ剤成分を配合しない淡緑色モノフィラメント
防カビ剤成分を添加しない他は実施例1と同様の手順で、繊維径断面が扁平状の、単糸繊度500dtex、強力15N、糸幅(すなわち扁平形状の最大径)0.75mm、厚み0.15mmのモノフィラメントを作製し、実施例1と同様の手順で比較例1に係るモノフィラメントサンプルを作製した。
実施例2:2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを9質量%含有する防カビ剤成分を0.3質量部配合した濃緑色モノフィラメント
淡緑色N6マスターペレット5質量部に代えて、濃緑色顔料を含む濃緑色N6マスターペレット5質量部を添加した他は実施例1と同様の手順で、繊維径断面が扁平状の、単糸繊度500dtex、強力15N、糸幅(すなわち扁平形状の最大径)0.75mm、厚み0.15mmのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントから、実施例1と同様の手順で実施例2に係るモノフィラメントサンプルを作製した。
比較例2:防カビ剤成分を配合しない濃緑色モノフィラメント
防カビ剤成分を添加しない他は実施例2と同様の手順で、繊維径断面が扁平状の、単糸繊度500dtex、強力15N、糸幅(すなわち扁平形状の最大径)0.75mm、厚み0.15mmのモノフィラメントを作製し、実施例2と同様の手順で比較例2に係るモノフィラメントサンプルを作製した。
防カビ性試験
JIS Z2911−2000「プラスチック製品の試験 B法」に準拠した方法で行った。1000mlの水に、NH4NO3を2.0g、KH2PO3を0.7g、KClを0.5g、MgSO4・7H2Oを0.5g、FeSO4・7H2Oを0.01g、ブドウ糖を30g、寒天末を20g溶解させて培地を調製した。該培地を滅菌して直径9cmのシャーレに約10ml流し込み、冷やし固めて寒天培地を作製し、該寒天培地の上に、上記のモノフィラメントサンプルをそれぞれ配置した。これに胞子分散液を0.1ml均等に塗り付けた。ここで胞子分散液は、上記培地組成のうち寒天末を除いた組成の溶液に、黒麹カビ(Aspergillus niger)、青カビ(Penicillium funiculosum)、タケマカビ(Chaetomium globosum)、パエシロマイセス属菌(Paecilomyces varioti)、ツチアオカビ(Gliocladium virens)をそれぞれ約106/mlで懸濁させた5種混合カビの胞子分散液である。その後、温度28℃前後、湿度95%以上で28日間培養した。培養後のカビの発育状況を観察し、後述の基準で評価した。結果を表1に示す。
図1は、実施例1,2及び比較例1,2における28日間培養後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。
−評価基準−
肉眼及び顕微鏡下でカビの発育は認められない :0
肉眼ではカビの発育が認められないが、顕微鏡下では確認される :1
菌糸の発育は僅かで、発育部分の面積は試料の全面積の25%を超えない :2
菌糸の発育は中程度で、発育部分の面積は試料の全面積の25〜50% :3
菌糸はよく発育し、発育部分の面積は試料の全面積の50〜100% :4
菌糸の発育は激しく、試料全面を覆っている :5
<人工芝生の3種混合カビに対する防カビ性評価−1>
実施例3:2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを9質量%含有する防カビ剤成分を0.5質量部配合したモノフィラメントを用いた淡緑色人工芝生
2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを9質量%含有する防カビ剤成分の添加量を0.5質量部とした他は実施例1と同様の手順で作製した、繊維径断面が扁平状の、単糸繊度500dtex、強力15N、糸幅(すなわち扁平形状の最大径)0.75mm、厚み0.15mmのモノフィラメントを用い、後述の手順で人工芝生サンプルを作製した。すなわち本実施例では紡糸原料100質量部に対して防カビ剤成分は約0.498質量部配合されている。
実施例4:2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを9質量%含有する防カビ剤成分を0.1質量部配合したモノフィラメントを用いた淡緑色人工芝生
2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを9質量%含有する防カビ剤成分の添加量を0.1質量部とした他は実施例1と同様の手順で作製した、繊維径断面が扁平状の、単糸繊度500dtex、強力15N、糸幅(すなわち扁平形状の最大径)0.75mm、厚み0.15mmのモノフィラメントを用い、後述の手順で人工芝生サンプルを作製した。すなわち本実施例では紡糸原料100質量部に対して防カビ剤成分は約0.0995質量部配合されている。
実施例5:2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを9質量%含有する防カビ剤成分を0.3質量部配合したモノフィラメントを用いた淡緑色人工芝生
実施例1で作製したモノフィラメントを用い、後述の手順で人工芝生サンプルを作製した。
実施例6:2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを9質量%含有する防カビ剤成分を0.3質量部配合したモノフィラメントを用いた濃緑色人工芝生
実施例2で作製したモノフィラメントを用い、後述の手順で人工芝生サンプルを作製した。
比較例3:防カビ剤成分を配合しないモノフィラメントを用いた淡緑色人工芝生
比較例1で作製したモノフィラメントを用い、後述の手順で人工芝生サンプルを作製した。
比較例4:防カビ剤成分を配合しないモノフィラメントを用いた濃緑色人工芝生
比較例2で作製したモノフィラメントを用い、後述の手順で人工芝生サンプルを作製した。
比較例5:防カビ剤成分を配合せず抗菌剤を配合したモノフィラメントを用いた淡緑色人工芝生
防カビ剤成分に代えて、抗菌剤として銀を3%含有するナシコン型リン酸ジルコニウムを0.5質量部添加した他は実施例1と同様の手順で作製した、繊維径断面が扁平状の、単糸繊度500dtex、強力15N、糸幅(すなわち扁平形状の最大径)0.75mm、厚み0.15mmのモノフィラメントを用い、後述の手順で人工芝生サンプルを作製した。
人工芝生サンプルの作製
モノフィラメントを4本集束し、加撚したものをポリプロピレン平織基布にタフティングし、タフティング後の基布の裏面をゴムコート加工して、基布表面にモノフィラメント4本の集合体からなるループパイルが形成された人工芝生サンプルを作製した。
防カビ性試験
上記で作製した人工芝生サンプルについて防カビ性試験を行った。直径9cmのシャーレに滅菌した培地を約10ml流し込み、冷やし固めてポテトデキストロース寒天培地を作製し、この上に、胞子分散液を150μlまきかけて均等にひきのばした後、4cm四方の人工芝生サンプルを、人工芝生面が培地に対向するように配置した。ここで胞子分散液は、1000mlの水に、NH4NO3を3.0g、KH2PO3を1.0g、MgSO4・7H2Oを0.5g、KClを0.25g、FeSO4・7H2Oを0.002g添加した溶液を作製し、これに黒カビ(Cladosporium cladosporioides)、黒麹カビ(Aspergillus niger)、及び青カビ(Penicillium citrinum)の胞子をそれぞれ胞子数105/ml程度に懸濁させた3種混合カビの胞子分散液である。その後、温度25℃前後、湿度90%以上で7日間培養した。
培養後のカビの発育状況を目視で観察し、サンプル周辺においてカビの発育が認められなかった幅(阻止帯幅)(mm)から下記の3段階の基準で防カビ性を評価した。結果を表2に記す。
−評価基準−
カビ発生抑制効果が顕著に見られる:◎
カビ発生抑制効果が見られる:○
カビ発生抑制効果が見られない:×
図2は、実施例5,6及び比較例3,4における7日間培養後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。
耐光性促進試験
実施例5,6及び比較例3,4に係る人工芝生サンプルについては、さらに以下の方法で耐光性促進試験を行い、長期防カビ性を評価した。
1000mlの水に、硝酸ナトリウムを2.0g、硫酸マグネシウム・7H2Oを0.5g、りん酸二水素カリウムを0.7g、硫酸鉄・7H2Oを0.01g、りん酸水素二カリウムを0.3g、塩化カリウムを0.5g溶解させた溶液を作製し、これに、黒カビ(Cladosporium cladosporioides)、黒麹カビ(Aspergillus niger)、及び青カビ(Penicillium citrinum)の胞子をそれぞれ胞子数105/ml程度に懸濁させて3種混合カビの胞子分散液を得た。直径9cmのシャーレに滅菌した培地を約10ml流し込み、冷やし固めて作製したポテトデキストロース寒天培地の上に、該懸濁液を150μlまきかけて均等にひきのばし、4cm四方の人工芝生サンプルを、人工芝生面が培地に対向するように配置した。
その後、温度25℃前後、湿度90%以上で7日間培養し、培養後のカビの発育状況を評価した。また、上記7日間培養後のサンプル(以下イニシャルのサンプルという)を用いて、メタルウェザーによるスーパーUV試験を行い、48,96,144,192,240時間経過後のカビの発育状況を評価した。
カビの発育状況は目視で観察し、サンプル周辺においてカビの発育が認められなかった幅(阻止帯幅)(mm)(測定方法は前述に同じ)によって防カビ性を評価した。結果を表2に記す。
図3及び図4は、実施例5及び比較例3における耐光性促進試験前後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真であり、図5及び図6は、実施例6及び比較例4における耐光性促進試験前後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。
<人工芝生の3種混合カビに対する防カビ性評価−2>
実施例7
実施例3と同様にして作製した人工芝生サンプルを用いて後述の防カビ性評価及び耐光性促進試験を行った。
比較例6
比較例3と同様にして作製した人工芝生サンプルを用いて後述の防カビ性評価及び耐光性促進試験を行った。
比較例7
比較例5と同様にして作製した人工芝生サンプルを用いて後述の防カビ性評価及び耐光性促進試験を行った。
防カビ性試験
上記の通り作製した実施例7及び比較例6,7に係る人工芝生サンプルにつき、前述の防カビ性試験と同様の方法及び条件で防カビ性試験を行った。図7は、実施例7及び比較例6,7における7日間培養後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。
耐光性促進試験
また、上記7日間培養後、以下の方法でさらに耐光性促進試験を行って長期防カビ性を評価した。すなわち、紫外線フェードメーターを用い、63℃、35〜65%RHで、504時間の耐光性促進試験を行った。
図8は、実施例7及び比較例6,7における504時間の耐光性促進試験後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。
上述の各実施例及び比較例の評価結果より、防カビ剤成分を用いた実施例においては防カビ効果が確認されたが、防カビ剤成分を用いなかった比較例においては明確な防カビ効果は見られなかった。
本発明に係る人工芝生用ポリアミド系繊維は、防カビ性の長期間にわたる持続が要求される人工芝生に対して好適に適用できる。
実施例1,2及び比較例1,2における28日間培養後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。 実施例5,6及び比較例3,4における7日間培養後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。 実施例5及び比較例3における耐光性促進試験前後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。 実施例5及び比較例3における耐光性促進試験前後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。 、実施例6及び比較例4における耐光性促進試験前後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。 、実施例6及び比較例4における耐光性促進試験前後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。 実施例7及び比較例6,7における7日間培養後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。 実施例7及び比較例6,7における504時間の耐光性促進試験後のカビ発育状況を示す図面に代わる写真である。

Claims (10)

  1. ポリアミド系樹脂のモノフィラメント又はその集合体であり、
    前記モノフィラメントが、有効成分としてアルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物を含有する防カビ剤成分を含有し、
    前記防カビ剤成分と、ポリアミド系樹脂を含有する紡糸原料とを溶融紡糸してなり、かつ
    50dtex〜100,000dtexの範囲内の単糸繊度を有する、人工芝生用ポリアミド系繊維。
  2. 前記防カビ剤成分は、前記アルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物が無機層状化合物間にインターカレーションして安定化されている無機有機複合体である、請求項1に記載の人工芝生用ポリアミド系繊維。
  3. 前記防カビ剤成分が、前記紡糸原料100質量部に対して0.08質量部〜1質量部の範囲内で配合される、請求項1又は2に記載の人工芝生用ポリアミド系繊維。
  4. 前記防カビ剤成分における前記アルキル−イソチアゾリン−ケトン系化合物の含有量が5質量%〜15質量%の範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工芝生用ポリアミド系繊維。
  5. 前記ポリアミド系樹脂が、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン66とナイロン6とのコポリマー、及びナイロン66とナイロン6とのブレンドポリマーからなる群から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工芝生用ポリアミド系繊維。
  6. 前記モノフィラメントの繊維径断面の形状が、円、楕円、多角形、扁平状、コルゲート状、スレート状、及びそれらに突起を設けた形状からなる群から選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の人工芝生用ポリアミド系繊維。
  7. 前記モノフィラメントの繊維径断面の形状が、扁平状又はそれに突起を設けたH型形状である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の人工芝生用ポリアミド系繊維。
  8. 前記モノフィラメントの単糸繊度が、200dtex〜1700dtexの範囲内である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の人工芝生用ポリアミド系繊維。
  9. 前記紡糸原料が、着色剤として、顔料、染料、カーボンブラック、酸化チタンからなる群から選ばれる少なくともいずれかをさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の人工芝生用ポリアミド系繊維。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の人工芝生用ポリアミド系繊維をパイルとして有する人工芝生。
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