JP2010105043A - 金属の低温接合方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被接合材における接合面の少なくとも一方に、図に示すように、凸部間又は凹部間の距離が200〜1000nmの間の任意の値であると共に、隣接する凹凸部間の高低差が40〜300nmの間の任意の値である微細凹凸を形成した状態で接合面同士を突き合わせ、被接合材の融点よりも低い温度に加熱して接合する。
【選択図】図2
Description
そもそも、これらのろう付け部は一般に延性に乏しく、接合できたとしても使用時の温度サイクルや部位間の温度差による熱応力に対し耐久性が不足する。また、接合時に配線層であるCuやAlと反応して、脆弱な金属間化合物を生成する虞れもある。
この粒子の構成物質の融解熱をΔHm、融解エントロピーをΔSmとし、dWの重量が溶解したことによってdAの表面積減少があったとすると、次式(1)が成立する。
ΔHmdW−ΔSmTsdW−EsdA=0 ・・・(1)
式(1)において、Tsが相変化の温度(融点)である。
ΔHmdW−ΔSmTsdW=0 ・・・(2)
例えば、平均粒径が20nmのAg超微粒子の場合、60〜80℃の低温で焼結が開始するという公表データ(佐藤稔雄「日本金属学会シンポジウム予稿 金属超微粒子の製作から応用まで」、1975年、p.26参照)がある。
固体の粒子同士が接触すると、高温下や圧力下では、時間と共に次第に接触面積が増大する。この現象は、複数の粒子とそれらを取り囲む環境からなる系が、全体としてより安定な系へと移行するために、その自由エネルギー(または化学ポテンシャル)を減少させようとする駆動力(Driving force)に基づいている。最初の粒子系の表面エネルギーは,粒子の大きさが小さいほど大きいので、微粒の原料粉体を用いるほど焼結の駆動力が大きいとされている(社団法人日本セラミックス協会編「セラミック工学ハンドブック第2版」技報堂出版、p.109−121参照)。
また、微細凹凸を設けることで凸先端には大きな荷重が発生し、これによって表面酸化皮膜が破壊される。表面酸化皮膜は、接合を阻害する要因であるため、その破壊によって相互の被接合材の新生面同士が直接接触し、良好な接合部が形成される。さらに、副次的効果として微細凹凸同士がかしまることによるアンカー効果も引き出せる。
すなわち、本発明の低温接合方法の特徴は、接合面を形成する被接合材の相対する少なくとも一方の表面に微細凹凸形状を形成することによる表面エネルギーの減少を積極的に利用し、微粒子に見られるような融点降下現象、凝集現象を発現させ、融点よりも低温にて接合を実現するところにある。したがって、熱変形や接合時の加圧などに起因する変形を伴うことなく、被接合材同士を接合することができる。また、溶融溶接のような母材の変質層(熱影響部)もほとんど存在しない。
なお、上記した距離及び高低差としては、それぞれ200〜800nm、40〜150nmの範囲内であることがより好ましい。
この結果、純銅の加工表面には、隣接する凸部間の距離が240〜720nmの範囲に、隣接する凹凸部間の高低差が48〜144nmの範囲の微細凹凸が形成されていることが確認された。
これらの図から明らかなように、銅の融点が1083℃であるのに対して、銅表面の微細凹凸形状が上記温度域、特に400℃でも崩れる現象が認められ、表面に上記のような微細凹凸を形成することによって、焼結の際に微粒子に観察されるような融点降下現象、凝集現象が発現することが確認された。
このとき、上記微細凹凸形状の形成工程と接合面加熱工程の一方、又は両工程を真空中、又は低酸素濃度雰囲気、又は非酸化性雰囲気で行うことが望ましく、これによって接合面の酸化が抑制され、より健全な接合部を得ることができる。なお、両工程を同一雰囲気内で連続して行うことがより望ましい。
また、非酸化性雰囲気とするための非酸化性ガスとしては、窒素やアルゴンが代表例として挙げられるが、大気に較べて被接合材の接合面の酸化を抑制する作用を有するガスであればよい。
これによって、微細凹凸加工時の雰囲気制御や真空引きを省略することも可能となり、装置を簡素化することができる。また、微細凹凸加工工程から接合工程までの間で被接合材に形成された微細凹凸表面の酸化を抑制することが可能となり、加工から接合までの工程間の工法上の自由度が増すことになる。
また、当該接合装置には、必要に応じて、微細凹凸加工を施した接合面にコーティングを施すためのコーティング剤噴射手段を設けることも可能である。
なお、当該接合装置10には、さらに微細凹凸加工と同時、あるいはその直後の接合面にコーティングを施すためのコーティング剤噴射手段(図示せず)を上記レーザ加工装置13と同様の位置に配置してもよい。
図5に示すように、純銅材から成り、径5mm、長さ15mmの円柱状をなす被接合材1と、同じく純銅材から成り、径10mm、長さ25mmの円柱状をなす被接合材2とを突き合わせ接合するに際して、10mm径の円柱状被接合材2の接合面にフェムト秒レーザによる微細凹凸加工を施した。
すなわち、図1に示したように構成したレーザ加工装置を用い、パルス幅:120fs、波長:800nm、パルスエネルギ密度:1mJ/pulse、繰り返し周波数:1kHzのフェムト秒レーザを照射することにより、凸部間距離240〜720nmの範囲、高低差48〜144nmの範囲の微細凹凸を形成した。
接合後、引張試験片を切り出し、引張試験に供した。
このように、本発明によれば、バルク固体融点の約1/3である400℃という低温でも、良好な接合を実現できることが確認された。
被接合材1,2の接合面の両方に、同様の微細凹凸加工を施すと共に、当該加工の直後に、加工面の酸化防止のためにウレタン樹脂を主成分とする酸化防止剤(熱分解温度:200℃)をコーティングしたこと以外は、上記実施例1と同じ操作を繰り返すことによって、被接合材1,2を接合したのち、引張試験を同様に実施した。
その結果、400℃という低温でも、良好な接合を実現できると共に、試験後の破断面は、図6と同様のディンプル破面を示し、良好な接合部が得られることが確認できた。
図7に示すように、純銅材から成る5mm径の被接合材1と、同じく純銅材から成り、10mm径の被接合材2との間に、その両面に同様の微細凹凸加工を施した厚さ50μmの純ニッケル箔3を中間材として挟持したこと以外は、上記実施例1と同じ操作を繰り返し、中間材3を介して被接合材1,2を接合した。
その結果、400℃という低温でも、良好な接合を実現できることが確認された。そして、接合部から引張試験片を切り出し、引張試験を同様に実施した結果、試験片の破断面は、同様のディンプル破面を示し、ニッケル中間材を挟んだ場合にも、良好な接合部が得られることが確認された。
10mm径の円柱状被接合材2の接合面に、ダイヤモンド工具を用いた切削加工によって、凸部間距離800〜1000nmの範囲、高低差150〜300nmの範囲の微細凹凸を形成した。なお、このときの微細形状加工工程は、大気雰囲気とし、加工後、酸化皮膜除去のために酸洗を実施した。
これによって、円柱状被接合材2の接合面に形成された微細形状を図8(a)〜(c)に示す。
その結果、上記実施例1と同様に、バルク固体融点の約1/3である400℃という低温でも、良好な接合を実現することが確認された。
また、引張試験の破断面は、図9(a)及び(b)に示すように、ディンプル破面を示し、良好な接合部を形成していることが判明した。
接合雰囲気を酸素濃度が400ppm程度の窒素雰囲気としたこと以外は、上記実施例4と同じ操作を繰り返すことによって、被接合材1,2を接合したのち、引張試験を同様に実施した。
その結果、上記実施例1と同様に、400℃という低温でも良好な接合を実現することが確認された。また、引張試験の破断面はディンプル破面を示し、良好な接合部を形成していることが判明した。
上記実施例1と同様の突き合わせ接合(図5参照)を行うに際して、接合面に微細凹凸加工を施すことなく、#80の研磨紙によって周期100μmの凹凸を有する研磨痕を付けた状態で、同様の接合を試みた。
その結果、400℃ではもとより、700℃でも、極めて低い強度の接合部しか得られなかった。破断面を観察しても機械加工を施した凹凸の凸の部分で一部接合がなされているのみで、破断面の大半が未接合であった。
上記実施例3と同様の接合を行うに際して、純銅材から成る5mm径の被接合材1と純銅材から成る10mm径の被接合材2の接合面に、微細凹凸加工を施すことなく、上記比較例1と同様に、#80の研磨紙によって周期100μmの凹凸を有する研磨痕をそれぞれ形成した。そして、図10に示すように、被接合材1及び2の間に、微細凹凸加工のない厚さ50μmの純ニッケル箔3を中間材として挟持した後、上記実施例3と同じ操作によって、中間材3を介して被接合材1,2を接合した。
しかし、400℃では、微細凹凸加工を施した実施例3の場合に較べて、強度の値が十分の1以下であり、僅かに強度が向上するものの、700℃でも満足のいく接合強度を有する良好な接合部を得ることができなかった。また、破断面を観察しても未接合の領域が多く見られた。
10mm径の円柱状被接合材2の接合面に、ダイヤモンド工具を用いた切削加工によって、鏡面加工を施した。加工後、酸化皮膜除去のために酸洗を実施した。これ以外は、上記実施例1と同じ操作を繰り返すことによって、被接合材1,2を接合したのち、引張試験を同様に実施した。なお、得られた鏡面の平面度は1μm以下、10点平均粗さ(Ra)は0.01μm以下、凸部間距離は0.1mmであった。
その結果、接合強度は、上記実施例3の1/2程度の値に留まり、良好な接合ができないことが判明した。
10 接合装置
11 密閉炉
12 熱制御装置(熱制御手段)
13 フェムト秒レーザ加工装置(レーザ加工手段)
14 エアシリンダ(加圧手段)
Claims (6)
- 被接合材における接合面の少なくとも一方に、隣接する凸部間又は凹部間の距離が200〜1000nmの間の任意の値であって、隣接する凹凸部間の高低差が40〜300nmの間の任意の値である微細凹凸を形成した状態で接合面同士を突き合わせ、被接合材の融点よりも低い温度に加熱して接合することを特徴とする金属の低温接合方法。
- 微細凹凸における隣接する凸部間又は凹部間の距離が200〜800nmの間の任意の値であり、隣接する凹凸部間の高低差が40〜150nmの間の任意の値であることを特徴とする請求項1に記載の低温接合方法。
- 少なくとも一方の被接合材の接合面に微細凹凸形状を形成する工程と、被接合材の接合面同士を突き合わせる工程と、被接合材の接合面を加熱する工程から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の低温接合方法。
- 微細凹凸形状を形成する工程と被接合材の接合面を加熱する工程の少なくとも一方を真空中又は低酸素濃度雰囲気又は非酸化性雰囲気で行うことを特徴とする請求項3に記載の低温接合方法。
- 微細凹凸形状の加工と同時又は加工直後に、加工面にコーティングを施すことを特徴とする請求項3又は4に記載の低温接合方法。
- 被接合材を収納する雰囲気制御可能な密閉炉と、密閉炉内の温度を調整する熱制御手段と、被接合材の接合面に微細凹凸形状加工を施すレーザ加工手段と、被接合材の接合面同士を突き合わせる加圧手段を備えたことを特徴とする接合装置。
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