JP2010094962A - 微細繊維集合体の積層体及び分離膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】多孔性支持体と微細繊維集合体からなる積層体で、気体あるいは液体の分離操作に十分耐えうる機械的強度を持ちながら流体透過速度が低下することのない積層体及びその製造方法と、該積層体からなる気体または液体の分離膜と、該分離膜をもちいる水処理方法とその水処理装置を提供する。
【解決手段】多孔性支持体1と微細繊維集合体2からなる積層体であって、好ましくは、多孔性支持体1が、織布、不織布、綿、抄紙及び多孔体からなる群から選ばれる少なくとも1つのものであり、また、好ましくは、微細繊維集合体2が、平均直径1〜1000nmの微細繊維よりなるものであり、また、好ましくは、微細繊維集合体2が、微細繊維同士が固定されている微細繊維集合体2である。
【選択図】図1
【解決手段】多孔性支持体1と微細繊維集合体2からなる積層体であって、好ましくは、多孔性支持体1が、織布、不織布、綿、抄紙及び多孔体からなる群から選ばれる少なくとも1つのものであり、また、好ましくは、微細繊維集合体2が、平均直径1〜1000nmの微細繊維よりなるものであり、また、好ましくは、微細繊維集合体2が、微細繊維同士が固定されている微細繊維集合体2である。
【選択図】図1
Description
本発明は、気体や液体中の物質を分離する用途に用いられている微細繊維集合体からなる積層体およびその製造方法、該積層体からなる分離膜並びに該分離膜を用いた水処理方法及びその装置に関するものである。
微細繊維集合体は、表面積が大きい、空隙率が高い、孔径が小さい、通気度が高い、流体透過速度が速いなどの特徴を持つため、フィルター分野、医療材料分野、バイオテクノロジー分野などの特殊分野への開発が盛んに行われている。
微細繊維集合体の作製法としては、溶融した合成樹脂を高圧空気で延伸するメルトブロー法が提案されており、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等の微細繊維製造が可能であり、フィルター、ワイパー用途に利用されている(非特許文献1)。
また、高温高圧下で溶解させた合成樹脂を常温大気中に噴射するフラッシュ紡糸法も提案されており、ポリエチレンに適用されて、直径や繊維の形状の均一性に問題があるものの建築資材やメディカル分野などに利用されている(非特許文献1)。
最近では、特殊な紡糸口金から海島繊維を溶融紡糸した後、海成分を除去することでポリエステル微細繊維集合体を製造する報告もあり、衣料用から産業用まで幅広い用途が期待されている。(特許文献1)。
また、原料ガスと触媒を反応させる化学気相成長法によって大量製造することが可能であるカーボンナノチューブは、電子材料やフィラー材料への展開が期待されている(特許文献2)。
また、電界紡糸法は、溶液または融液の流体状にした合成樹脂に高電圧を印加するだけで簡便に微細繊維が製造できるために汎用性が高く、様々な合成樹脂の微細繊維に関する開発が盛んに行われており、現実に、特殊用フィルター(非特許文献2)分野で実用化されており、更にその特徴を生かして医療やバイオテクノロジーの分野で人工血管(非特許文献3)や細胞培養用の基材(非特許文献4)への応用に関する開発が盛んに行われている。
一方、最近では合成樹脂だけでなく機械的、化学的、生物的手法を用いて、植物、生物、細菌から天然樹脂であるセルロースなどのバイオ微細繊維の製造も提案されている(非特許文献5、6、特許文献3)。
しかし、上記微細繊維集合体は機械的強度が弱いために、気体や液体中などの物質を分離膜として用いる際には、分離操作における吸引や加圧による圧力で微細繊維集合体が破損するという問題があった。
さらに、気体や液体中などの物質を分離する際に生じる流れによって微細繊維集合体から微細繊維が毛羽立ち、毛羽立った微細繊維が気体や液体中の物質を微細繊維集合体の孔に取り込むため目詰まりが起こり、通気度や液体透過速度が低下するという問題もあった。
日本化学繊維協会、合繊長繊維不織布ハンドブック、7−20(1994) 特開2007−291567号公報
特開2008−74647号公報
T. Grafe, et al., InternatinalNonwovens Technical Conference (Joint INDA TAPPI Conference), Atlanta, Georgia, September 24-26, 2002
T. Matsuda, et al., Biomaterials, Vol. 26, 37-46 (2005)
H.-J. Jin, et al., Biomaterials, Vol. 25, 1039-1047 (2004)
矢野浩之、木材工業、Vol.63、No.10、450−455(2008)
磯貝明、国際ナノファイバーシンポジウム予稿集、165−173(2007)
特開2006−35647
日本化学繊維協会、合繊長繊維不織布ハンドブック、7−20(1994)
本発明の目的は、多孔性支持体と微細繊維集合体からなる積層体で、気体あるいは液体の分離操作に十分耐えうる機械的強度を持ちながら流体透過速度が低下することのない積層体及びその製造方法と、該積層体からなる分離膜と、該分離膜を用いた水処理方法とその水処理装置を提供することにある。
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、多孔性支持体と微細繊維集合体とを積層体にし、望ましくは、微細繊維集合体の微細繊維同士を固定することによって、上記の課題が解決されることを見出し、本発見に到達した。
すなわち、本発明の第一は、多孔性支持体と微細繊維集合体からなることを特徴とする積層体を要旨とするものであり、好ましくは、多孔性支持体が、織布、不織布、綿、抄紙及び多孔体からなる群から選ばれる少なくとも1つのものであり、また、好ましくは、微細繊維集合体が、平均直径1〜1000nmの微細繊維よりなるものであり、また、好ましくは、微細繊維集合体が、微細繊維同士が固定されている微細繊維集合体であるものである。
本発明の第二は、微細繊維集合体が、電界紡糸法、溶融紡糸法、化学気相成長法及びバイオ微細繊維製造法からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により作製することを特徴とする前記した積層体の製造方法を要旨とするものであり、好ましくは、溶媒、溶媒を含んだ繊維及び溶媒を含んだ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1つを微細繊維と積層することで微細繊維同士を固定することを特徴とする前記した積層体の製造方法であり、また、好ましくは、微細繊維同士を、熱による微細繊維同士の融着、溶剤による微細繊維同士の融着、微細繊維同士の交絡の少なくとも1つにより固定して微細繊維集合体を作製する方法であり、また、好ましくは、微細繊維同士を、接着剤の固化により固定して微細繊維集合体を作製する方法である。
本発明の第三は、前記した積層体を構成要素として備えていることを特徴とする分離膜を要旨とするものであり、好ましくは、液体中の物質を効率的に分離するものであり、また好ましくは、水中の物質を効率的に分離するものである。
本発明の第四は、前記した分離膜を用いて液体中の物質を分離することを特徴とする水処理方法を要旨とするものである。
本発明の第五は、前記した分離膜を備えることを特徴とする水処理装置を要旨とするものである。
本発明によれば、多孔性支持体と微細繊維集合体を積層体としているために機械的強度に優れた積層体を得ることができる。また、多孔性支持体と平均直径1〜1000nmの微細繊維からなる微細繊維集合体とからなる積層体のため、小さな孔径を持ち、空隙率も高く、気体や液体の通気度や液体透過速度が高い分離膜が得られる。さらに、微細繊維集合体の微細繊維間を固定することにより、上記分離膜を用いて気体や流体の分離操作を行う際に毛羽立った微細繊維が気体や流体中の物質を取り込むことで生じる目詰まりを防止できるために、気体や液体の通気度や流体透過速度が高く、効率的に分離できる分離膜を得ることができる。特に、気体に比べて粘性の高い液体においても毛羽立ちが無いために、効率的に分離できる液体分離膜を得ることができる。また、液体が汎用的な水の場合にも効率的に水を分離できるため水分離膜が得られ、該水分離膜を用いた水処理方法およびその水処理装置が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における、積層体とは、図1に示すように多孔性支持体1と微細繊維集合体2が積層され、両者の少なくとも一部が融着しているものをさす。
本発明において用いられる多孔性支持体とは、加圧または吸引による圧力をかけて気体または液体が透過しても十分の強度を持つものであれば特に制限は無い。多孔性支持体の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ナイロン、アラミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフルオロアルコキシフッ素、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体、セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、セルロース誘導体、キチン、キチン誘導体、キトサン、キトサン誘導体、ガラス、シリカ、アルミナ、ゼオライト、カーボン、金属などが例示でき、これらより選ばれる少なくとも1種類が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、多孔性支持体の形態としては、織物、不織布、綿、抄紙、多孔体の少なくとも1種類を選択すればよく、秤量は、5〜100g/m2、膜厚0.05〜5mmのものが好ましいがこの限りではない。
また、多孔性支持体の孔径としては、1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、10〜100μmが最も好ましい。
本発明における微細繊維集合体とは、後述する方法により微細繊維から成形される構造体のことであり、その形態は織物状、不織布状、シート状、紙状、綿状等の少なくとも1種類であればよい。
微細繊維の材質としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ナイロン、アラミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフルオロアルコキシフッ素、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体、セセルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、セルロース誘導体、キチン、キチン誘導体、キトサン、キトサン誘導体、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)、ポリパラフェニレンビニレン、ガラス、シリカ、アルミナ、ゼオライト、カーボン、金属などがあげられ、これらより選ばれた少なくとも1種類が選ばれるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、微細繊維の長さに特に制限はないがアスペクト比(縦横比)が100以上であることが好ましく、微細繊維の形態としては、繊維形態、芯鞘繊維形態、中空繊維形態、サイドバイサイド複合繊維形態等から少なくとも1種類を選択すればよい。
微細繊維集合体の製造方法としては、電界紡糸法、溶融紡糸法、化学気相成長法、バイオ微細繊維製造法の少なくとも1種類の方法を用いて作製すればよい。以下、それぞれについて説明する。
電界紡糸法は、前記の微細繊維の材質から選ばれた少なくとも1つの材質を溶液または融液にしたのち、高電圧を印加して帯電させることで微細繊維を製造する方法である。具体的な製造方法の例としては、前記微細繊維材質の溶液を金属注射針がついた注射器に充填して、シリンジポンプなどを用いて溶液を注射針先端まで送りながら、金属注射針に高電圧を印加することで、帯電した微細繊維材質溶液が金属注射針と対向するように配置した接地あるいは金属針の帯電極性と反対極性を印加した体積部との間で生じた、静電的な引力と帯電による電気的な反発力により微細化、固化されることにより、体積板上に微細繊維集合体が製造される。堆積部の材質や形態は特に限定されるものではない。ここで、融液とは、微細繊維の材質を融点以上で加熱し、溶融した液体を称する。また溶液とは、上記の微細繊維の材質を溶解する溶媒を用いて得られる均一な液状物のことであり、ここで用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、2-メトキシエタノール、アセトン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ピリジン、N−メチルピロリドン、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸プロピル、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル―n―ヘキシルケトン、メチル―n―プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、水等、これらより選ばれる少なくとも1種類が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
電界紡糸法に用いられる溶液や融液は、用いる微細繊維の材質や溶媒にもよるが、その粘度が25℃において回転粘度計を用いて測定した絶対粘度として0.1〜100000センチポアズであることが好ましく、より好ましくは1〜10000センチポアズ、さらには1〜5000センチポアズであるのが好ましい。
また微細繊維材質の溶液や融液の帯電の極性は、正極性、負極性のいずれの極性であっても良く、電圧印加に用いる高圧電源は直流ないし交流のいずれでもよく、溶液または融液が1〜100KVに帯電しているのが好ましく、さらには、2〜80kVに帯電しているのが好ましく、さらに好ましくは、3〜50kVに帯電しているのが好ましい。
溶融紡糸法は、前記の微細繊維の材質から選ばれた少なくとも2種類の材質を用いて海島繊維を製造したのち、海成分を除去することで微細繊維を得る方法である。前記海島繊維とは、繊維断面において1種類の材質が連続している海成分と、もう1種類の材質が部分的に存在している島成分が製造される繊維のことである。
化学気相成長法は、金属触媒存在下に原料ガスを流すことにより微細繊維を得る方法である。原料ガスとしては、ニッケル、鉄、クロム、コバルト、銅、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウムなどが例示でき、これらから少なくとも1種類が選ばれる。原料ガスとしては、メタン、エチレン、アセチレンなどの炭化水素系ガスが挙げられ、これらより選ばれる少なくとも1種類が用いられる。
バイオ微細繊維製造法は、植物、生物、細菌の少なくとも1種類を用いてバイオ微細繊維を製造する方法である。バイオ微細繊維の材質としては、セルロース、セルロース誘導体、キチン、キチン誘導体、キトサン、キトサン誘導体等の少なくとも1種類が選択できる。植物あるいは生物からのバイオ微細繊維の製造方法としては、植物あるいは生物を機械的に開繊することでバイオ微細繊維が得られる。植物としては、木材パルプ、竹、麦ワラ、ビート、ポテトパルプ、ウチワサボテン、サイザル麻等から少なくとも1種類が選択できる。生物としては、甲殻類、貝類等の少なくとも1種類が選択できる。機械的に開繊する方法としては、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、水中カウンターコリジョン法、凍結乾燥法、超音波開繊法、ニーダー法、多軸混練押し出し法等の少なくとも1種類が選ばれる。また、前記の植物あるいは生物等の少なくとも1種類から化学的に開繊することでバイオ微細繊維を製造することもできる。化学的に開繊する方法としては、TEMPO触媒酸化法等の少なくとも1種類が選択できる。細菌からバイオ微細繊維を製造する方法としては、酢酸菌などのバクテリアを用いる方法があげられる。
本発明における微細繊維の平均直径は、1〜1000nmが好ましく、さらには10〜800nmが好ましく、さらに好ましくは50〜500nmである。
本発明における微細繊維集合体の秤量としては、0.1〜20g/m2が好ましく、更には0.3〜115g/m2が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10g/m2が好ましい。
本発明における微細繊維集合体は、バブルポイント法で測定した平均孔径が0.1〜30μmが好ましく、さらには0.2〜10μm が好ましく、さらに好ましくは0.3〜8μmが好ましい。
本発明において用いられる微細繊維集合体は、構成している微細繊維同士が固定されていることが好ましく、そのために、微細繊維集合体中の隣り合った微細繊維が融着あるいは交絡している状態の少なくとも1種類の状態であれば良い。具体的な方法としては、溶媒、溶媒を含んだ繊維、溶媒を含んだ粒子の少なくとも1つを、上記微細繊維集合体の製造方法で微細繊維集合体を製造しながら微細繊維集合体に堆積させることで、微細繊維の一部が溶解したあとに溶媒が乾燥することで微細繊維同士を固定した微細繊維集合体を製造でき、繊維および粒子に含まれる溶媒の組成は特に限定されるものではなく、微細繊維集合体作製の条件によって適宜選択すればよい。
本発明において、熱による微細繊維同士の融着とは、作製した微細繊維集合体に微細繊維の材質の軟化温度あるいは融点以上の熱を加えて、微細繊維集合体を部分的に融液にした後、微細繊維集合体を微細繊維の材料の融点以下の温度にして固化することであり、微細繊維同士を固定した微細繊維集合体を製造できる。そのような方法としては、微細繊維集合体に熱を加えることができれば特に限定されるものではなく、シーラー機、熱プレス機、加熱ロール機、熱風発生機、加熱蒸気、超音波ウェルダー、高周波ウェルダー、レーザー等の少なくとも1種類を用いることができる。
本発明の溶剤による微細繊維同士の融着とは、作製した微細繊維集合体と溶剤を接触させることで、微細繊維集合体を部分的に溶解または膨潤したあとに、溶解または膨潤した部分を乾燥させることで固化した状態である。ここで用いられる溶剤とは、少なくとも1種類の微細繊維の材質を溶解する溶媒を含み、微細繊維を溶解あるいは膨潤させる液体のことであり、溶剤の種類や組成は、特に限定するものではなく微細繊維の材質によって適宜に設定することが可能である。溶剤との接触方法としては、浸漬法、コーティング法、泡含浸法、スプレー法等から少なくとも1種類を用いればよい。
本発明の微細繊維同士の交絡とは、作製した微細繊維集合体に機械的な加工を施して微細繊維同士を絡みあわせることを称する。本発明の微細繊維同士の交絡方法としては、ニードルパンチ法、ウォーターパンチ法、ステッチボンド法等から少なくとも1種類を用いればよい。ここで用いられる接着剤としては、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、レゾルシノール系接着剤、水性高分子―イソシアネート系接着剤、α‐オレフィン接着剤、酢酸ビニルエマルジョン接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン、エポキシ系接着剤、ジアノアクリレート樹脂系接着剤、ポリウレタン樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、塩化ビニル系接着剤、セルロース系接着剤、デンプン系接着剤等の少なくとも1種類を用いればよい。
本発明における微細繊維間の接着剤の固化による固定とは、微細繊維集合体に上記接着剤を付着させ、乾燥あるいは架橋硬化させることによる微細繊維間を固定することである。接着剤の付着方法としては、浸漬法、コーティング法、泡含浸法、スプレー法等より選ばれる少なくとも1種類を用いればよい。
次に、本発明の分離膜について説明する。本発明における分離膜とは、少なくとも1種類の物質を含む気体あるいは液体を積層体に透過させることで、気体あるいは液体中の物質の濃度を変化させることができる積層体のことをいう。ここで、物質としては、その形態や材質は特に限定されるものではない。本発明における気体としては、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、水素等の少なくとも1種類を選択すればよい。本発明における流体としては、水、アルコール、有機溶媒、重油、ガソリン、オイル等から少なくとも1種類を用いればよい。したがって、液体の分離膜とは、分離膜を透過させるのが少なくとも1種類の物質を含む前記液体である場合に用いた分離膜を称する。また、水の分離膜とは、分離膜を通過させるのが少なくとも1種類の物質を含む水である場合に用いた分離膜を称する。
次に、本発明の水処理方法について説明する。上記した分離膜を水処理に用いることを特徴とする方法であり、少なくとも1種類の物質を含む水を水の分離膜に透過させることで、分離膜を透過後に水に含まれる少なくとも1種類の物質の濃度を変化させる方法であり、水が分離膜を透過すればその方法は特に限定されない。
実施例1
多孔性支持体としては、ポリエステルが芯成分、ポリエチレンが鞘成分の芯鞘繊維からなる秤量30g/m2の不織布を用いた。微細繊維集合体の製造法としては電界紡糸法を用いた。微細繊維の材質としては20質量パーセントのポリスルホンを用いて、溶媒としては72質量パーセントのN,N−ジメチルホルムアミドと8質量パーセントのアセトンを用いた。
多孔性支持体としては、ポリエステルが芯成分、ポリエチレンが鞘成分の芯鞘繊維からなる秤量30g/m2の不織布を用いた。微細繊維集合体の製造法としては電界紡糸法を用いた。微細繊維の材質としては20質量パーセントのポリスルホンを用いて、溶媒としては72質量パーセントのN,N−ジメチルホルムアミドと8質量パーセントのアセトンを用いた。
金属注射針をつけた注射器に微細繊維材質溶液を充填し、金属中注射針に7kVを印加して多孔性支持体上に微細繊維集合体を堆積させた後、多孔性支持体と微細繊維集合体を熱プレス機を用いて接着することで積層体を得た。得られた積層体は電界放射形走査電子顕微鏡((株)日立製作所S-4000)を用いて形状観察した。結果を図1に示した。得られた積層体は不織布と微細繊維集合体が接着しており、微細繊維集合体の秤量は11.6g/m2、平均直径は452nmであった。
実施例2
多孔性支持体としては、実施例1と同様の不織布を用いた。微細繊維集合体の製造法としては電界紡糸法を用いた。微細繊維の材質としては20質量パーセントのポリフッ化ビニリデンを用いて、溶媒としては80重量パーセントのN,N−ジメチルホルムアミドを用いた。金属注射針をつけた注射器に微細繊維材質溶液を充填し、金属注射針と体積部の多孔性支持体との距離を8cmとして、金属注射針に6.6kVを印加することでポリフッ化ビニリデン微細繊維集合体の製造と同時に溶媒を含むポリフッ化ビニリデン粒子を積層して微細繊維の固定を行った。得られた積層体の電界放射形走査電子顕微鏡((株)日立製作所S-4000)観察より微細繊維同士は固定されていた(図2)。さらに微細繊維同士の固定の確認方法として、積層体を長さ20cm、幅10cmに切り出した積層体の微細繊維集合体面を15Nの荷重を載せた直径2cmのセルロース製濾紙を用いて10往復摩擦する摩擦試験方法を用いて、50μm以上の毛玉の発生の有無から判断した。
多孔性支持体としては、実施例1と同様の不織布を用いた。微細繊維集合体の製造法としては電界紡糸法を用いた。微細繊維の材質としては20質量パーセントのポリフッ化ビニリデンを用いて、溶媒としては80重量パーセントのN,N−ジメチルホルムアミドを用いた。金属注射針をつけた注射器に微細繊維材質溶液を充填し、金属注射針と体積部の多孔性支持体との距離を8cmとして、金属注射針に6.6kVを印加することでポリフッ化ビニリデン微細繊維集合体の製造と同時に溶媒を含むポリフッ化ビニリデン粒子を積層して微細繊維の固定を行った。得られた積層体の電界放射形走査電子顕微鏡((株)日立製作所S-4000)観察より微細繊維同士は固定されていた(図2)。さらに微細繊維同士の固定の確認方法として、積層体を長さ20cm、幅10cmに切り出した積層体の微細繊維集合体面を15Nの荷重を載せた直径2cmのセルロース製濾紙を用いて10往復摩擦する摩擦試験方法を用いて、50μm以上の毛玉の発生の有無から判断した。
50μm以上の毛玉が発生しない場合には微細繊維が固定されており○を表記し、50μm以上の毛玉が発生する場合には微細繊維が固定されておらず×を表記した結果を表1に示す。ポリフッ化ビニリデン微細繊維を製造しながら、溶媒を含むポリフッ化ビニリデン粒子を積層して微細繊維同士が固定されている場合には、50μm以上の毛玉が発生しなかった。
実施例3
実施例2記載の条件のうち、金属注射針と不織布間の距離を18cm、金属注射針に印加する電圧を10.5kVとして、完全に脱溶媒したポリフッ化ビニリデン微細繊維集合体の積層体を作製した。実施例2と同様の摩擦試験の結果を表1に示す。電界放射形走査電子顕微鏡((株)日立製作所S-4000)観察をより微細繊維同士が固定されておらず50μm以上の毛玉が発生した。
実施例2記載の条件のうち、金属注射針と不織布間の距離を18cm、金属注射針に印加する電圧を10.5kVとして、完全に脱溶媒したポリフッ化ビニリデン微細繊維集合体の積層体を作製した。実施例2と同様の摩擦試験の結果を表1に示す。電界放射形走査電子顕微鏡((株)日立製作所S-4000)観察をより微細繊維同士が固定されておらず50μm以上の毛玉が発生した。
実施例4
また、実施例3と同様の条件で積層体を作製する際、ポリフッ化ビニリデンよりも融点が10℃低いフッ素樹脂微細繊維を同時に電界紡糸したあと、熱プレスを行いフッ素樹脂繊維を融解したのち、冷却して固化することで微細繊維同士を固定した。実施例2と同様の摩擦試験の結果を表1に示す。電界放射形走査電子顕微鏡((株)日立製作所S-4000)観察をよりフッ素樹脂微細繊維とポリフッ化ビニリデン微細繊維同士が熱により融着して、微細繊維同士が固定されており、摩擦試験で50μm以上の毛玉が発生しなかった。
また、実施例3と同様の条件で積層体を作製する際、ポリフッ化ビニリデンよりも融点が10℃低いフッ素樹脂微細繊維を同時に電界紡糸したあと、熱プレスを行いフッ素樹脂繊維を融解したのち、冷却して固化することで微細繊維同士を固定した。実施例2と同様の摩擦試験の結果を表1に示す。電界放射形走査電子顕微鏡((株)日立製作所S-4000)観察をよりフッ素樹脂微細繊維とポリフッ化ビニリデン微細繊維同士が熱により融着して、微細繊維同士が固定されており、摩擦試験で50μm以上の毛玉が発生しなかった。
実施例3で作製したポリフッ化ビニリデン微細繊維集合体をフェノール樹脂溶液に含浸し、加熱によりフェノール樹脂を架橋硬化させて微細繊維を固定した。実施例2と同様の摩擦試験の結果を表1に示す。電界放射形走査電子顕微鏡((株)日立製作所S-4000)観察でポリフッ化ビニリデン微細繊維同士がフェノール樹脂の架橋硬化によって固定されており、摩擦試験において50μm以上の毛玉が発生しなかった。
実施例6
実施例2と同様に作製した積層体を64mmΦの円形に切り抜いて水分離膜3とし、エタノールで湿潤後、図3に示すろ過器具4に取り付け、カオリンクレー5Mの50mg/L懸濁液(濁度48NTU)200mLを加えて密封した。水分離膜3から2mm上方を吊り下げ式のマグネティックスターラー6により500rpmの回転速度で撹拌した状態で、コンプレッサー7により内圧を1kPaとして透過水弁10を開き、透過水量が25mLに達するまでの時間から平均透過流束を求め、また透過水の濁度を測定した。上記測定後に水分離膜を取り出し、表面を十分水洗いしたのち、再度上記の方法でカオリンクレー懸濁液の分離操作を繰り返し行い、5回のデータを収集して結果を表2に示した。本発明の水分離膜は、水中のカオリンを精密ろ過膜とほぼ同等に分離しつつ、精密ろ過膜の数倍の透過流束で透過した。
実施例2と同様に作製した積層体を64mmΦの円形に切り抜いて水分離膜3とし、エタノールで湿潤後、図3に示すろ過器具4に取り付け、カオリンクレー5Mの50mg/L懸濁液(濁度48NTU)200mLを加えて密封した。水分離膜3から2mm上方を吊り下げ式のマグネティックスターラー6により500rpmの回転速度で撹拌した状態で、コンプレッサー7により内圧を1kPaとして透過水弁10を開き、透過水量が25mLに達するまでの時間から平均透過流束を求め、また透過水の濁度を測定した。上記測定後に水分離膜を取り出し、表面を十分水洗いしたのち、再度上記の方法でカオリンクレー懸濁液の分離操作を繰り返し行い、5回のデータを収集して結果を表2に示した。本発明の水分離膜は、水中のカオリンを精密ろ過膜とほぼ同等に分離しつつ、精密ろ過膜の数倍の透過流束で透過した。
実施例6で水分離膜の支持体として用いたものと同様、ポリエステル芯/ポリエチレン鞘の糸から作成した目付30g/m2の不織布のみを水分離膜3として用い、実施例6と同様の実験に供し、結果を表2に示した。
比較例2
公称孔径0.45μmの酢酸セルロース膜のみを水分離膜3として用い、実施例6と同様の実験に供し、結果を表2に示した。
公称孔径0.45μmの酢酸セルロース膜のみを水分離膜3として用い、実施例6と同様の実験に供し、結果を表2に示した。
実施例7
実施例6と同じ積層体の未使用品を水分離膜3として用い、実施例6と同様のろ過器具にセットした後、カオリンクレー懸濁液の代わりに浄化槽から採取した活性汚泥を汚泥濃度10,000mg/Lに調整して加え、内圧を1kPaとし、透過水量が25mLとなるまでの時間から平均透過流束と透過水の浮遊物質濃度の測定を行った。上記測定後に積層体を取り出し、表面を十分水洗いしたのち、再度上記の方法で活性汚泥をろ過する操作を繰り返し行い、5回のデータを収集して結果を表3に示した。本発明の分離膜は、水中の活性汚泥を精密ろ過膜とほぼ同等に分離しつつ、精密ろ過膜の数倍の透過流束で透過した。また、簡便な水洗いによって繰り返し使用することが可能であった。
実施例6と同じ積層体の未使用品を水分離膜3として用い、実施例6と同様のろ過器具にセットした後、カオリンクレー懸濁液の代わりに浄化槽から採取した活性汚泥を汚泥濃度10,000mg/Lに調整して加え、内圧を1kPaとし、透過水量が25mLとなるまでの時間から平均透過流束と透過水の浮遊物質濃度の測定を行った。上記測定後に積層体を取り出し、表面を十分水洗いしたのち、再度上記の方法で活性汚泥をろ過する操作を繰り返し行い、5回のデータを収集して結果を表3に示した。本発明の分離膜は、水中の活性汚泥を精密ろ過膜とほぼ同等に分離しつつ、精密ろ過膜の数倍の透過流束で透過した。また、簡便な水洗いによって繰り返し使用することが可能であった。
比較例3
実施例6と同じ不織布の未使用品のみを水分離膜3として用い、実施例5と同様の実験に供し、結果を表3に示した。
実施例6と同じ不織布の未使用品のみを水分離膜3として用い、実施例5と同様の実験に供し、結果を表3に示した。
比較例4
比較例2と同様の酢酸セルロース膜の未使用品のみを水分離膜3として用い、実施例7と同様の実験に供し、結果を表3に示した。
比較例2と同様の酢酸セルロース膜の未使用品のみを水分離膜3として用い、実施例7と同様の実験に供し、結果を表3に示した。
1 多孔性支持体
2 微細繊維集合体
3 水分離膜
4 ろ過器具
5 カオリンクレー懸濁液または活性汚泥
6 マグネティックスターラー
7 コンプレッサー
8 圧力計
9 調圧弁
10 透過水弁
2 微細繊維集合体
3 水分離膜
4 ろ過器具
5 カオリンクレー懸濁液または活性汚泥
6 マグネティックスターラー
7 コンプレッサー
8 圧力計
9 調圧弁
10 透過水弁
Claims (13)
- 多孔性支持体と微細繊維集合体からなることを特徴とする積層体。
- 多孔性支持体が、織布、不織布、綿、抄紙及び多孔体からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1記載の積層体。
- 微細繊維集合体が、平均直径1〜1000nmの微細繊維よりなる請求項1又は2記載の積層体。
- 微細繊維集合体が、微細繊維同士が固定されている微細繊維集合体である請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
- 微細繊維集合体が、電界紡糸法、溶融紡糸法、化学気相成長法及びバイオ微細繊維製造法からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により作製することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体の製造方法。
- 溶媒、溶媒を含んだ繊維及び溶媒を含んだ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1つを微細繊維と積層することで微細繊維同士を固定することを特徴とする請求項4記載の積層体の製造方法。
- 微細繊維同士を、熱による微細繊維同士の融着、溶剤による微細繊維同士の融着、微細繊維同士の交絡の少なくとも1つにより固定して微細繊維集合体を作製することを特徴とする請求項4記載の積層体の製造方法。
- 微細繊維同士を、接着剤の固化により固定して微細繊維集合体を作製することを特徴とする請求項4記載の積層体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の積層体を構成要素として備えていることを特徴とする分離膜。
- 液体中の物質を効率的に分離するものである請求項9記載の分離膜。
- 水中の物質を効率的に分離するものである請求項9記載の分離膜。
- 請求項11記載の分離膜を用いて液体中の物質を分離することを特徴とする水処理方法。
- 請求項11記載の分離膜を備えることを特徴とする水処理装置。
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