JP2010094666A - エレクトレット濾材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エアフィルター用途特にキャビンフィルター用途に好適な濾材を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系ストレート繊維を少なくとも有し、且つ前記ポリオレフィン系ストレート繊維がエレクトレット加工を施され、さらに密度が0.10g/cc〜0.20g/ccの範囲であることを特徴とするエレクトレット濾材。
【選択図】なし

Description

本発明は、エアフィルター用途に好適に使用されるエレクトレット濾材およびその製造方法に関するものである。
従来、高い性能を持ったエアフィルター用濾材を得る方法として、エレクトレットメルトブロー不織布と、繊維径の異なる繊維の組み合わせにてなる他の不織布を積層することにより、目詰まりを防止し、エアフィルターの寿命を向上させる方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、捕集効率を向上する手段としてエレクトレットメルトブロー不織布を活用する一方、メルトブロー不織布ではフィルターとしての剛性を満足する不織布にならないためフィルター用濾材にするためにもう一層不織布が必要であった。
また、捲縮を有する繊維を用いることにより、嵩高な濾材が得られ、ダスト捕集量を向上させる方法が提案されている。(特許文献2および3参照)。
しかし、これらの従来技術においては、現在エアフィルターに要求される次の高い特性を全て満足することは出来ていない。高い特性とは具体的には、(A)ダスト寿命が長いこと、(B)圧力損失が低いこと、(C)剛性が高く高風量下での変形が少ないこと、(D)高効率であることである。
上記問題を解決するため、特許文献4ではクリンプを有しない短繊維を用いたシートとエレクトレットメルトブロー不織布を積層することで剛性が高い濾材を提供しているが、この方法でも特許文献1と同様必ず2枚のシートを何らかの形で積層接着する必要があるため、積層箇所で圧力損失の上昇を招くこと、シートが2枚になるため濾材厚みが厚くなりコンパクト化には適さないこと、さらに加工プロセスが多いことなど、全ての特性を兼備した濾材とは言い難い。
特公昭56−33511号公報 特開2001−137630号公報 特開平5−49825号公報 特開2007−307516号公報
本発明は、かかる従来技術の欠点を解消し、(A)ダスト寿命が長いこと、(B)圧力損失が低いこと、(C)剛性が高く高風量下での変形が少ないこと、(D)高効率であること、などの特性を備えたエアフィルターに好適な濾材およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、下記の手段を採用する。
すなわち、エレクトレット加工を施されたポリオレフィン系ストレート繊維を少なくとも有し、且つ密度が0.10g/cc〜0.20g/ccの範囲であることを特徴とするエレクトレット濾材である。
本発明の濾材は、湿式抄造法で製造された不織布でありながら密度が0.10g/cc〜0.20g/ccの範囲である嵩高な不織布であり、そのためダスト寿命が格段に向上し、かつエレクトレット処理によるサブミクロンサイズやナノサイズといった微細塵の捕集性能も発揮でき、かつ十分な寿命と低圧力損失を備えたものである。
本発明のエレクトレット濾材は、ポリオレフィン系ストレート繊維を少なくとも有することが必要である。
本発明の濾材形態は、織布、不織布、フィルム割線、ネットまたは紙などが上げられ特に限定されるものではないが、濾材自体にダスト保持量やプリーツ加工性を持たせるために不織布の形態が望ましい。
ポリオレフィン系ストレート繊維の材質としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体などのポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなるストレート繊維が入手の容易さ、取り扱いの容易さから好ましい。この中でも、ポリプロピレンは耐熱性が優れているためより好ましい。また、これらを主成分とした変性体や共重合体、複合繊維であっても良い。
なお、本発明におけるストレート繊維とは、捲縮のかかっていない繊維を意味する。
ポリオレフィン系ストレート繊維を複合繊維にした場合は、エレクトレットの発現性からポリオレフィン系の熱可塑性樹脂が少なくとも繊維表面の一部に出ていることが好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いても2種以上の混合体として用いてもいずれでもよい。複合繊維の形態は、ストレート繊維であれば特に限定されるものではないが芯/鞘構造、サイドバイサイド構造等が考えられ、特に芯/鞘構造が好ましく、例えば芯をポリプロピン(融点165℃)、鞘を変成ポリプロピレン(融点140℃)とした繊維や、芯をポリプロピレン(融点165℃)、鞘をポリエチレン(130℃)、とした繊維等の熱融着性繊維が特に好ましく使用でき、芯と鞘の融点の差が好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上である。芯と鞘の融点に十分な差が無いと十分な熱融着を得る前に、不織布が収縮してしまうため、十分な強度と剛性を得られない。
本発明の濾材は、このポリオレフィン系のストレート繊維にエレクトレット性を発現させることが特徴である。ポリオレフィン系繊維にエレクトレット処理を施す場合、繊維間の結合は、エレクトレット性能を阻害しないようアクリルやウレタンのエマルジョン樹脂のようなバインダー樹脂で接着処理するのでは無く、構成繊維自身の熱接着で行わなければならない。前述の芯鞘構造複合繊維が好ましいのは、熱接着性と繊維の強度、形態の保持性を両立できるためである。
ポリオレフィン系ストレート繊維にエレクトレット性を発現させることで、この不織布(濾材)そのものにエレクトレットがかかるため、従来の濾材のように剛性を持つ不織布とエレクトレット不織布を積層する必要がない。もしくは、従来より低効率なメルトブロー不織布を積層することでも従来同等の効率をもつ濾材を提供することが可能になる。
ポリオレフィン系ストレート繊維の繊維長は、1.0〜30mmの範囲の短繊維を用いることが好ましい。繊維長が1.0mm未満であるとシート状に形成することが困難であり、30mmを超えると均一な繊維シートが得られなくなるからである。そして、この繊維は、ストレートであることが必要である。ストレート繊維を使用することにより、捲縮繊維を用いた場合に対し濾材の剛性が向上する。
ポリオレフィン系ストレート繊維の繊度は特に限定されないが、0.5〜30dtexの範囲であることが好ましい。繊度が0.5dtex未満であると、構造が緻密になり捕集効率が向上するが圧力損失も増大するため、高風量のエアー処理には不向きとなる。逆に繊度が30dtexを超えると今度は圧力損失が低下するが捕集効率も低下してしまい、特に微細塵の集塵性能が著しく低下するため好ましくない。
次に本発明のエレクトレット濾材は、密度が0.10g/cc〜0.20g/ccの範囲であることが好ましい。更に好ましくは、0.12g/cc〜0.18g/ccである。密度を0.10g/cc以上とすることで濾材の剛性を保持できプリーツなど後加工性がよくなる。且つ、エレクトレットの効果により0.3ミクロン粒子レベルの捕集効率も保持できる。また、0.20g/cc以下とすることで、十分な空隙を濾材内に持つことが出来、ダスト寿命が向上する。
密度コントロールは、繊維の繊度と繊維長を選択することで実現できる。特に繊度は、不織布の流れ方向の仕切りに効果があり、繊維長は、不織布の厚み方向の仕切りに効果がある。
例えば、繊度10dtex以上の繊維は、不織布の骨格形成に用いることが出来る。しかし、このような繊維のみでは、不織布間の仕切りが大きく細かなダストが捕集できないので、5dtex以下の繊維を混合することで、仕切りを増やしていく。太い繊維と細い繊維を混合することによって、仕切り間隔を調整する。
また、繊維長を5mm以下とすると繊維が厚み方向に「立つ」ことが出来厚み方向の空隙を持たせることが出来る。逆に繊維を10mm以上にすると繊維が「寝る」ため濾材を薄く仕上げることが出来る。
繊維の繊度と繊維長を選択することで、流れ方向および厚み方向の仕切りを調節でき密度を制御する。
また、本発明エレクトレット濾材を構成する繊維が熱融着性繊維かどうかも密度に影響する。すなわち、繊維どうしの接触点が熱融着により強固に拘束されると、不織布が厚み方向に復元できなくなるためと考えられる。例えばオレフィン系ストレート繊維として、前述の芯鞘構造の熱融着繊維を採用する場合は、その配合比率を上げると濾材は薄く仕上がり、非熱融着性の単一繊維の配合比率を上げると厚く仕上がる。つまり熱融着繊維と非熱融着繊維の配合比率を調整することで、不織布の密度と接着強度のバランスを適正化できる。ただし十分な接着点を有し、本発明の目的とする強度と剛性を得るためには少なくとも濾材全体の40%以上は熱融着繊維とするのが好ましい。
このように密度を制御することで、ダストを不織布表面での表層濾過ではなく不織布内で保持することが出来るようになり、ダスト保持量が大幅に向上する。
次に、本発明の濾材を構成する繊維として、少なくとも一種類以上、ヤング率が100cN/dtex以上で繊維長3〜30mmのストレート繊維が濾材を構成する全繊維重量の20%以上の割合で含まれることが好ましい。係る態様をとることにより、剛性の高い濾材となり高風量下での変形が少ない濾材を提供できる。つまり、剛性の高い濾材を得るという点では本発明の好ましい態様は2種に大別でき、第1の好ましい態様は、ポリオレフィン系ストレート繊維を有し、さらにヤング率が100cN/dtex以上で繊維長3〜30mmのストレート繊維を繊維重量の20%以上有する濾材であり、第2の好ましい態様は、ヤング率が100cN/dtex以上で繊維長3〜30mmのポリオレフィン系ストレート繊維を繊維重量の20%以上有する濾材である。
次に、本発明において使用される繊維のヤング率は3000cN/dtex以下であることが好ましい。これは、ヤング率が3000cN/dtexを超える単繊維、具体的にはアラミド繊維(4400cN/dtex以上)、ガラス繊維(326000cN/dtex以上)など、を用いた場合、使用量や繊度にもよるが、引き裂き強力低下や、プリーツ加工した山部分での屈曲伸びに耐えられず不織布破断の発生、また飛び出した繊維が皮膚に突き刺さるなどの悪影響が発生するので、ヤング率が3000cN/dtexを超える繊維を使用するのは余り好ましくない。
上記の理由から、使用する単繊維の好適ヤング率範囲は、100〜3000cN/dtexである。このようにするとプリーツ加工での不織布切断や剛軟度低下が少なく、風圧で濾材変形の少ない濾材となる。なお、本発明で言う剛軟度はJIS1096に記載のガーレ剛軟度意味する。濾材のガーレ剛軟度の指針値としては、100mgを下回ると風圧による濾材変形がおおきくなり好ましくない。
次に、上記第1の好ましい態様及び第2の好ましい態様からわかるとおり、本発明においてヤング率が100cN/dtex以上で繊維長3〜30mmの繊維はストレート繊維であることが好ましい。ストレート繊維の場合は、濾材における繊維集積が平面的となるため、1本1本の単繊維の配向性が1次元的であり、ルーズ性のない状態となる。そのため、濾材に外力が加わった時、ルーズ性に伴う伸びが少ないため、すぐに単繊維物性に応じた引っ張り抵抗力が発生し易く、剛性(ガーレ剛軟度)が出やすい。
また上記第1の好ましい態様の場合、ヤング率が100cN/dtex以上で繊維長3〜30mmのストレート繊維の繊維長は、8mm〜30mmの範囲であることが望ましい。第1の好ましい態様の場合、ヤング率が100cN/dtex以上で繊維長3〜30mmのストレート繊維が濾材の骨格となるが、骨格となる繊維の繊維長が8mmより短いと、樹脂で繊維間固定しても十分な引っ張り強さが得られない。従来から抄紙法で使用される繊維の長さは、数ミリ〜10mm程度であった。この理由は、抄紙法の特徴である、繊維の絡まりを少なくして繊維目付の均一性を得るためであった。しかし、ヤング率100cN/dtex以上かつ10dtexを上回る太くて曲がりにくい短い繊維を、接着して濾材剛性を高めることは難しい。このため、本発明の第1の好ましい態様では、特に単繊維繊度が10dtexを越える太い繊維を用いる場合には、繊維長を8〜30mm、好ましくは13〜20mmにして、含有率も10%以上、好ましくは20%以上にすることが好ましい。こうすることで剛性をさらに高めることができる。なお、30mmを超えると均一な繊維シートが得られなくなる。
第2の好ましい態様の場合は、ポリオレフィン系ストレート繊維としてヤング率が100cN/dtex以上で繊維長3〜30mmのポリオレフィン系ストレート繊維を用い、該繊維を濾材の繊維重量の20%以上含有させればよい。この第2の好ましい態様では、ポリオレフィン系ストレート繊維が骨格となる繊維を兼ねるため、工程の簡略化、コスト削減などを達成できる。
次に、本発明のエレクトレットについて説明する。
本発明において、ポリオレフィン系ストレート繊維はエレクトレット加工を施す。エレクトレット化方法は特に限定されるものでないが、コロナ荷電法、または不織布シートに水を付与した後に乾燥させることによりエレクトレット化する方法(例えば、特表平9−501604号公報、特開2002−249978号公報等に記載されている方法)が好適に用いられる。コロナ荷電法の場合は15kV/cm以上、好ましくは20kV/cm以上の電界強度が適している。
本発明の濾材にはポリオレフィン系ストレート繊維の他に、さらに別の繊維を配合しても良いが、エレクトレットをより発現させるためには、非導電性繊維の中から選定することが好ましい。
ここでいう非導電性は、体積抵抗率が1012・Ω・cm以上であることが好ましく、1014・Ω・cm以上であることがより好ましい。体積抵抗率はASTM D257に従い測定される。このような繊維シートをエレクトレット化した場合、電荷量を多く保持することができ、結果として捕集性能が優れ、圧力損失を小さくすることができる。
このような非導電性の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系樹脂、およびこれらの共重合体または混合物などを挙げることができる。これらの材料の中でも、ポリオレフィン系はエレクトレット性能を発揮する点から好ましい。
また、ポリ乳酸を用いる場合、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体が好ましい。ポリ乳酸の重量平均分子量は、紡糸性を良くする観点からは5万以上であることが好ましく、7万以上であることがより好ましい。また、繊維の細径化を容易にする観点からは20万以下であることが好ましく、15万以下であることがより好ましい。
なお、非導電性繊維は全てストレートである必要はなく、捲縮等がかかっているものを複合してもよい。
非導電性繊維の繊維長は、ストレート繊維の場合は、1.0〜30mmの範囲の繊維を用いることが好ましい。繊維長が1.0mm未満であるとシート状に形成することが困難であり、30mmを超えると均一な繊維シートが得られなくなるからである。
非導電性繊維が捲縮繊維である場合は、15mm〜100mmの範囲の繊維を用いることが好ましい。15mm以下では、繊維が絡まなく捲縮の効果が得られず、100mm以上にすると加工性が低下する。
非導電性繊維の繊度は特に限定されないが、0.5〜30dtexの範囲であることが好ましい。繊度が0.5dtex未満であると、構造が緻密になり捕集効率が向上するが圧力損失も増大するため、高風量のエアー処理には不向きとなる。逆に繊度が30dtexを超えると今度は圧力損失が低下するが捕集効率も低下してしまい、特に微細塵の集塵性能が著しく低下するため好ましくない。
また、摩擦帯電で不織布シートにエレクトレットをかける場合は、プラスチャージとマイナスチャージが同等発現できるようにするのが理想的な状態であるため、非導電繊維はポリオレフィンから帯電列の離れた樹脂種を選定し、ポリオレフィン系の繊維と同率混合させることが好ましい。
コロナ放電法などで不織布シートにエレクトレットをかける場合は、ポリオレフィン系繊維以外の繊維を出来るだけ非導電繊維にすればそれだけエレクトレット性能が向上するため好ましい。
また、耐候性を向上させ、エレクトレット性能をよくする観点から、ポリオレフィン系ストレート繊維にヒンダードアミン系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれていることが好ましい。本発明の濾材が非導電性繊維をも含む場合は、該非導電性繊維にもヒンダードアミン系化合物もしくはトリアジン系化合物が含まれていることが好ましい。
ヒンダードアミン系化合物としては、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)](チバガイギー製、キマソープ(登録商標)944LD)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、チヌビン(登録商標)622LD)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、チヌビン(登録商標)144)、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチルー4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(チバガイギー製、キマソープ(登録商標)2020 FDL)などが挙げられる。
また、トリアジン系添加剤としては、前述のポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、キマソープ(登録商標)944LD)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)−フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、チヌビン(登録商標)1577FF)などを挙げることができる。これらのなかでも特にヒンダードアミン系化合物が好ましい。
ヒンダードアミン系化合物又はトリアジン系化合物の含有量は、特に限定されないが、濾材重量に対して好ましくは0.5〜5重量%の範囲にするとよく、更に好ましくは0.7〜3重量%の範囲にするとよい。添加量が0.5重量%未満では、目的とする高レベルのエレクトレット性能を得ることが難しくなる。また、5重量%を超えるほど多く配合すると製糸性を悪くし、かつコスト的にも不利になるので好ましくない。
ヒンダードアミン系化合物又はトリアジン系化合物の含有量は、次の方法で求める。
繊維シート2gをクロロホルムでソックスレー抽出後、該抽出物についてHPLC分取を繰り返し、各分取物についてH−NMR測定で構造を確認する。該化合物の含まれる分取物の重量を合計し、濾材全体に対する割合を求め、これを化合物含有量とする。
本発明の濾材の目付は特に限定されないが、10〜300g/mの範囲が好ましい。10g/m以上になることで不織布として生産がしやすくなり、濾材ムラが少なくなる。また、300g/m以下にすることにより、濾材の厚みを抑えることができ、後加工でプリーツ加工などが可能になる。より好ましくは、30〜150g/mである。30g/m以上にすることでダスト保持量が十分得られる。また、150g/m以下にすることで濾材の圧力損失を抑制できる。
本発明の濾材の厚みは特に限定されないが、0.2〜1.5mmの範囲が好ましい。0.2mm以上とすることでプリーツ加工等の後加工や濾材に機能剤などをディップ加工させる際の強度を得ることができる。また、1.5mm以下とすることでプリーツ加工を実施し、フィルターとしたときに濾材厚みによって濾材同士が接触する部分を軽減でき濾過面積を確保できるため、圧力損失の上昇を軽減できる。
また、ダスト保持量を向上させる目的等のために上流側を粗に下流側を密になるように、本発明の濾材自体に厚み方向に密度勾配を有する構成を持たせることも好ましい。もちろん、本発明の濾材の上流側に粗の不織布をまたは、下流側に密な不織布を積層することで粗密構造を得ても構わない。
また、本発明の濾材には、エレクトレット性能の著しい低下を招かない範囲で顔料、染料、着色剤、撥水剤、吸水剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属粒子、無機化合物粒子、結晶核剤、滑剤、可塑剤、香料、脱臭剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、忌避剤、ガス吸着剤、ガス吸着多孔質体等を付与することで付加機能を付けることが可能である。
例えば本発明の濾材、または積層濾材中に脱臭剤粒子として活性炭、多孔質シリカ、ゼオライト等のガス吸着多孔質体や、イオン交換樹脂、触媒担持粒子等が好ましく複合できる。脱臭剤粒子として適切な数平均粒子径としては50〜1000μmが好ましく、より好ましくは100〜600μm、最も好ましくは、100〜400μmである。1000μm未満とすることで、脱臭剤粒子を不織布と複合する際に不織布層を粒子が突き破りにくくなり、50μm以上とすることで飛散が抑えられ脱臭剤粒子としての取り扱いが容易となり、脱臭剤粒子を繊維間に分散させたり、不織布シート間に挟持させて脱臭性繊維構造物とすることができる。さらに、脱臭剤粒子を600μm以下とすることにより、脱臭性繊維構造物の折り曲げ加工等の後加工が容易となり、また100μm以上とすることにより、脱臭性繊維構造物の空隙から脱臭剤が脱落しないようにすることができる。さらに100〜400μmに調整した脱臭剤粒子は、機能粒子を本発明のエレクトレット不織布に近接させると、機能粒子の一部が繊維間に入り込むことにより、その一体性が高まり、積層不織布としての強度が高く、また厚みを小さく抑えることができるため、プリーツ加工性、および加工後の形態保持性が増し、フィルター性能が向上するため好ましい。さらには、脱臭剤粒子の少なくとも50%以上が100〜300μmの範囲に分布するように粒径を調整することにより、その一体化による効果がより顕著になる。
脱臭剤粒子は、エアフィルター用濾材の繊維間に分散させたり、積層不織布間に挟持させることにより、本発明の微細塵捕集効率と集塵寿命を維持したまま、脱臭性能を付加することができる。具体的な製造方法としては、例えば上記脱臭剤粒子と熱接着性繊維を混合分散させたものを捕集ネット上の基材不織布の上に吸引積層した後、加熱炉で融着一体化させ、加熱炉出口で本発明のエレクトレット不織布を貼り合わせる、所謂エアレイド法を採用してもよいし、それ以外の方法として、例えば基材不織布上に上記脱臭剤粒子と粉末状の熱接着樹脂粒子を定量均一散布し、ヒーターで加熱した後、本発明のエレクトレット不織布を積層圧着することにより一体化してもよい。
脱臭剤粒子の好ましい担持量としては、30〜400g/mが好ましく、さらに好ましくは50〜300g/mである。30g/m未満では、脱臭性能が実用に満たず、400g/m以上となると積層不織布の厚みと剛性が過剰となり、エアフィルター用濾材としての取り扱い性が困難となる。
脱臭剤粒子と熱接着パウダーを混ぜて加熱貼り合わせする場合、熱接着パウダーとしては、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系等が使用できるが、本発明のエレクトレット不織布との接着性として、特にポリオレフィン系が好ましく、エレクトレット性能の低下を最小限に抑えることが可能である。
また、本発明の濾材にナノ繊維を含有させたり、ナノ繊維からなる不織布を積層してもよい。ナノ繊維主体に構成された不織布は、特にその製法が限定されるものではないが、静電紡糸法(例えば、米国特許第6106913号明細書や特開2002−249966号公報等に記載されている方法)や、易溶解性ポリマーが海成分、非導電性ポリマーが島成分の海島構造を形成する繊維から構成される不織布を得た後、該不織布の易溶解性ポリマー成分を溶剤により溶出する方法(例えば、特願2005−202560に記載されている方法)等により得ることができる。
ここで、本発明において、ナノ繊維とは、繊維径が1μmに満たないレベルの極細の繊維のことをいい、本発明においては、通常、平均繊維径が50〜800nmである繊維を指すものである。また、ナノ繊維の平均繊維径は次の方法で求めた値をいう。すなわち、ナノ繊維を主体に構成された不織布の任意の場所から、1cm×1cmの測定サンプルを30個採取し、走査型電子顕微鏡で倍率を80000倍に調節して、採取したサンプルから繊維表面写真を各1枚ずつ、計30枚を撮影する。写真の中の繊維直径がはっきり確認できるものについてすべて測定して、平均した値を平均繊維径とする。
また、本発明の濾材の繊維上に活性炭などの脱臭剤を添着させたり、本発明の濾材と他の不織布間に脱臭剤を挟み込んだりすることで脱臭濾材を得ることも本発明の濾材の好ましい形態の一つである。
次に、本発明における濾材の製造方法について実施の形態を各工程別に詳細に説明する。
1.仕込み工程
少なくともポリオレフィン系のストレート短繊維を含む各繊維を水中に投入し、離解機で撹拌して均一になるように分散させる。
仕込み工程では、繊維仕込み量や白水量、分散時間(撹拌時間)などを管理することによって分散性を調整することができるが、なるべく均一に分散することが好ましい。なお、水への分散剤の添加は必要最小限とすることが好ましい。
2.抄紙工程
水中に分散させた繊維を一定濃度に希釈して調整し、傾斜ワイヤー、円網上等で脱水して不織布を形成する。すなわち、湿式法により不織布を形成する工程である。
不織布を形成させる方法としては、円網抄紙機、長網抄紙機、または傾斜短網抄紙機、あるいはそれらを組み合わせたコンビネーション抄紙機などで抄造する方法がある。
抄紙工程では、抄紙機の速度や繊維量、白水量を管理することによって均一な不織布を得ることが出来、抄紙速度を変えることによって必要な目付の不織布を製造出来る。
密度コントロールは、使用繊維の繊度と繊維長を選択することで実施する。流れ方向の仕切りを繊度で、厚み方向の仕切りを繊維長で制御させる。
すなわち、太い繊維で不織布の骨格を形成させ、細い繊維で仕切り間隔を狭め、短い繊維で厚み方向の空隙を増やし、長い繊維で厚みを薄くさせることで密度を所望の範囲に制御させる。
また、抄造するためにパルプや合成パルプなど絡みやすい細繊維を加えると製造しやすいため好ましい。このような繊維がないと、繊維同士が絡まなく不織布形成が非常に難しく生産性が著しく低下する。合成パルプとしては、ポリオレフィン系の合成パルプである“SWP”(三井化学(株)製)が好ましく使用できる。SWPは後述の乾燥工程で溶融するが、ポリオレフィン系のストレート繊維との熱接着性が良好で、不織布としての強度が向上するうえ、自身にエレクトレットがかかるため、エレクトレット性能を低下させないどころかさらに向上させるという優れた特徴がある。ポリオレフィン系ストレート繊維とSWPを用いた場合、ポリオレフィンのみで本発明のエレクトレット不織布を製造することが可能となり、最も高いエレクトレット性能が得られる。
3.乾燥工程
形成した不織布を熱風通気方式にて110℃〜200℃の温度で乾燥させる。更に好ましくは、130〜160℃である。熱風通気方式での乾燥にはエアースルードライヤーを用いることが好ましい。
エアスルーの場合、エアーは不織布に対し垂直方向であることが好ましい。エアーを垂直方向であてることにより、効率的に乾燥が出来る。また、熱融着繊維などを用いた場合は、不織布内にも均一に熱が伝わる。乾燥は、過乾燥になると繊維の収縮が起こるため好ましくない。熱融着繊維の表面や、合成パルプ(SWP)が溶ける程度で乾燥を止めることが好ましい。一般的に、乾式法の不織布を嵩高に製造するために熱風通気(エアスルー)方式の乾燥が良く知られているが、乾式不織布ではカード工程において静電気の発生を抑制することが必要であり、そのため、通常静電気防止能を有する界面活性剤などの油剤が原綿上に付着されている。しかしながら、このような油剤が、不織布のエレクトレット化の妨げとなる上、たとえエレクトレット化されたとしても、比較的短時間で粉塵ろ過効率などの性能を低下させる原因となるため、エレクトレット加工が必要な本発明においては乾式不織布は適さない。本発明の湿式不織布においても、短繊維を水中に分散させるために必要最小限の表面処理剤は用られているが、抄紙工程中で完全に洗い落とされるため、経時低下の無いエレクトレット加工が可能となる。
4.エレクトレット加工
不織布を熱風通気方式で110℃〜200℃の温度で乾燥後、同工程もしくは別工程でエレクトレット加工を実施する。エレクトレット加工方法は、特に限定されるものではないが、不織布に高電圧で電化を与えるコロナ放電法や、ニードルパンチなどで異なる繊維に摩擦をかけ帯電させる摩擦帯電、純水を不織布に付与させ乾燥させることでエレクトレット化させる方法などがある。純水を不織布に付与させる方法としては、不織布に純水を噴霧したり、純水に浸した不織布をサクションで水をひいたり、超音波にかけたりする方法などがある。このことにより、湿式法ならではの目付の均一性と湿式法が苦手としていた不織布の嵩高性を両立し、且つエレクトレット加工が施された不織布を製造できる。
すなわち、本発明者らは、目付の均一性と嵩高性とエレクトレット性能の3つを同時に満足する製造方法として、湿式抄紙法で且つその乾燥には熱風通気(エアスルー)方式での乾燥を用い、繊維原料としてポリオレフィン系のストレート繊維を含めることが重要であることを見出した。
また、繊維間の接着方法としては、バインダー樹脂を使用しないことが好ましい。バインダー樹脂を使用すると、ポリオレフィン系のストレート繊維表面がバインダーで覆われてしまいエレクトレットの発現性が低下する。そのため、繊維間の接着方法としては熱接着性の繊維を用いる。さらに、接着繊維の少なくとも表層の一部がポリオレフィン系である接着繊維を用いるとその繊維にもエレクトレット加工が施されるので、好ましい。
本発明における不織布は重量のばらつきが15%以下であることが好ましい。これによって濾材としたときの通気性、接着性の位置によるばらつきを抑え良好な性能を得ることができる。より好ましくは10%以下である。
なお、ここでいう不織布の重量のばらつきとは、不織布から任意に取り出した縦(MD)15cm×横(CD)15cmの試験片を均等に9分割(試験片は一辺が50mm±0.5mm以内とする。)した後、それぞれの試験片の重量を0.1mgの精度で測定し、重量のばらつきを以下の式で算出したものである。
(測定重量の最大値(mg)−測定重量の最小値(mg))/9点の測定重量の平均値(mg)×100(%)
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。なお、本実施例における濾材の各特性の評価方法を下記する。
<単繊維の繊度、繊維長および構成割合>
熱処理前の湿式不織布シート、あるいは抄紙前の短繊維分散液から単繊維を抜き取り、繊維長をノギスで測定し、長さ毎に分類した。また繊維長が異なる群毎に電子顕微鏡で繊維幅を測定する。この際、繊維本数は少なくとも100本以上を測定し、単繊維構成を群毎に分類した。次いで四塩化炭素と水を混合して作成した密度勾配液に、構成繊維を入れて、浮きも沈みしない液密度を求め、これを繊維密度とする。なお、繊維が密度勾配液に溶ける場合は、溶けない比重の重い適当な有機溶剤を選定した。
単繊維の繊度は、求めた単繊維の密度と繊維長さの関係から、1万mの長さで1g質量あるものを1dtexとして求めた。
次いで、単繊維の構成割合は、先に求めた単繊維の群毎の構成割合を繊度と繊維長の構成割合に変換して、全繊維質量に占める割合を算出した。
<ヤング率>
JIS−L1013(1999)に準じて評価する。初期引張抵抗度から見かけヤング率を求め、この数値をヤング率とする。また繊維長が数mmから数10mmと短いため、1分間の引っ張り速度は繊維長の100%とする。また評価N数は少なくとも10本とし、算術平均を本発明におけるヤング率とした。
<厚み>
テクロック(株)製SM114を用いて測定頻度100cm当たり3箇所、合計21箇所の厚みを求めその算術平均値を用いた。
<目付>
24℃60%RHの室温に8時間以上放置して、評価試料(不織布、耐電加工不織布または濾材)の質量を求め、その面積から1m当たりの質量に直して、それぞれの評価試料の目付として求める。サンプルング最小面積は0.01m2以上とした。
<濾材の密度>
上記のとおり測定した厚み及び目付から算出した。
<通気度>
JIS L1096(1999)に記載のフラジール形法の評価方法に従って実施。また評価N数は少なくとも5とし、算術平均を本発明における通気度とした。
<ガーレ式剛難度>
剛軟度の測定は、JIS−L1085(1998年版)の6.10.3(a)に記載のガーレ試験機(株式会社東洋精機製作所製ガーレ・柔軟度試験機)にて実施した。ガーレ試験機での剛軟度は以下の方法により求めた。すなわち、試料から長さL38.1mm(有効試料長25.4mm)、幅d25.4mmの試験片を試料の任意の5点から採取する。ここで長繊維不織布においては、不織布の長手方向を試料の長さ方向とする。採取した試験片をそれぞれチャックに取り付け、可動アームA上の目盛り1−1/2”(1.5インチ=38.1mm)に合わせてチャックを固定する。この場合、試料長の1/2”(0.5インチ=12.7mm)はチャックに1/4”(0.25インチ=6.35mm)、試料の自由端にて振子の先端に1/4”(0.25インチ=6.35mm)、がかかるため測定にかかる有効試料長は試験片長さLから1/2”(0.5インチ=12.7mm)差し引いたものとなる。次に振り子Bの支点から下部のおもり取付孔a,b,c(mm)に適当なおもりWa,Wb,Wc(g)を取り付けて可動アームAを定速回転させ、試験片が振り子Bから離れるときの目盛りRG(mgf)を読む。目盛りは小数点以下第一位の桁で読む。ここでおもり取付孔に取り付けるおもりは、目盛りRGが4〜6になるよう設定した。測定は試験片5点につき表裏各5回、合計50回実施した。得られた目盛りRGの値から下記式を用いて剛軟度の値を小数点以下第二位を四捨五入してそれぞれ求めた。試料の剛軟度(mN)は、50回の測定の平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して算出したものである。
Br=RG×(a×Wa+b×Wb+c×Wc)
×(((L−12.7))/d)×3.375×10-5
<捕集性能、圧力損失>
濾材の縦方向10カ所で15cm×15cmの測定用サンプルを採取し、それぞれのサンプルについて、図1に示す捕集性能測定装置で測定した。この捕集性能測定装置は、測定サンプルMをセットするサンプルホルダー1の上流側にダスト収納箱2を連結し、下流側に流量計3、流量調整バルブ4、ブロワ5を連結している。また、サンプルホルダー1にパーティクルカウンター6を使用し、切替コック7を介して、測定サンプルMの上流側のダスト個数と下流側のダスト個数をそれぞれ測定することができる。さらにサンプルホルダー1は圧力計8を備え、サンプルM上流と下流での静圧差を読み取ることができる。捕集性能の測定にあたっては、ポリスチレン0.309U 10%溶液(メーカー:ナカライテック)を蒸留水で200倍まで希釈し、ダスト収納箱2に充填する。次にサンプルMをホルダー1にセットし、風量をフィルター通過速度が6.5m/minになるように流量調整バルブ4で調整し、ダスト濃度を1万〜4万個/2.83×10−4(0.01ft)の範囲で安定させ、サンプルMの上流のダスト個数Dおよび下流のダスト個数dをパーティクルカウンター6(リオン社製、KC−01B)で1サンプル当り10回測定し、JIS K−0901に基づいて下記計算式にて0.3〜0.5μm粒子の捕集性能(%)を求めた。10サンプルの平均値を最終的な捕集性能とした。
捕集性能(%)=〔1−(d/D)〕×100
ただし、
d:下流ダストの10回測定トータル個数
D:上流のダストの10回測定トータル個数
高捕集の繊維シートほど、下流のダスト個数が少なくなるため、捕集性能の値は高くなる。
また、圧力損失は捕集性能測定時のサンプルM上流、下流の静圧差を圧力計8で読み取り求めた。10サンプルの平均値を最終的な圧力損失とした。
<JIS15種供給量・JIS15種効率>
試験用ダストとして、JIS Z 8901に15種として規定される混合ダストを使用して、濾材測定面積0.1m、風量3m/min、粉塵濃度100mg/mにより、圧力損失が初期圧損+150Paアップ時までの供給したダスト量をg/mで求めた。また、濾材が保持したダスト量を供給したダスト量で割り返すことによりJIS15種効率を求めた。
JIS15種効率(%)
=(ダスト保持量(g)/ダスト供給量(g))×100
実施例1
添加剤として、キマソーブ(登録商標)944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1wt%含有した17dtex×10mm の芯鞘構造(芯部:ポリプロピレン、鞘部:ポリエチレン)の熱融着性ストレート繊維(ヤング率20cN/dtex)を繊維重量の40%と、6dtex×10mm のポリエステルのストレート繊維(ヤング率130cN/dtex)を繊維重量の25%と、2.2dtex×5mm の芯鞘構造(芯部:ポリエステル、鞘部:変性ポリエステル)の熱融着性ストレート繊維(ヤング率80cN/dtex)を繊維重量の25%と、SWP UL410(三井化学(株)製)を繊維重量の10%を標準離解機にて水に均一に混合分散した後、セミオートマチック角型自動シートマシン(熊谷理機工業(株)製)で抄紙を行い、引き続き多目的不織布製造装置(川之江造機(株)製)のエアースルードライヤーを用いて乾燥を行い、不織布を得た。
この不織布をコロナ放電法によりエレクトレット加工を行うことによりエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表1の通りであった。
実施例2
17dtex×10mm のポリプロピレンのストレート繊維に含まれる添加剤をキマソーブ(登録商標)2020LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)にしたことを除いて、実施例1と同様にエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表1の通りであった。
実施例3
17dtex×10mm のポリプロピレンのストレート繊維に含まれる添加剤をチヌビン(登録商標)622LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)にしたことを除いて、実施例1と同様にエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表1の通りであった。
実施例4
17dtex×10mm のポリプロピレンのストレート繊維に含まれる添加剤を入れなかったことを除いて、実施例1と同様にエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表1の通りであった。
実施例5
添加剤として、キマソーブ(登録商標)944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1wt%含有した1.3dtex×10mm の高強度ポリプロピレンのストレート繊維(ヤング率110cN/dtex)を繊維重量の25%と6dtex×10mm のポリエステルのストレート繊維(ヤング率130cN/dtex)を繊維重量の25%と2.2dtex×5mm のポリエステルの芯鞘構造(芯部:ポリエステル、鞘部:変性ポリエステル)の熱融着性ストレート繊維(ヤング率80cN/dtex)を繊維重量の40%とSWP UL410(三井化学(株)製)を繊維重量の10%を標準離解機にて水に均一に混合分散した以外は実施例1と同様にエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表1の通りであった。
実施例6
添加剤として、キマソーブ(登録商標)944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1wt%含有した17dtex×10mm の芯鞘構造(芯部:ポリプロピレン、鞘部:ポリエチレン)の熱融着性ストレート繊維(ヤング率20cN/dtex)を繊維重量の40%と、6dtex×10mm のポリエステルのストレート繊維(ヤング率130cN/dtex)を繊維重量の10%と、6dtex×15mmポリエステルの捲縮繊維(ヤング率45cN/dtex)を繊維重量の40%と、SWP UL410(三井化学(株)製)を繊維重量の10%を用いた以外は、実施例1と同様にエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表1の通りであった。
実施例7
添加剤として、キマソーブ(登録商標)944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1wt%含有した17dtex×10mm の芯鞘構造(芯部:ポリプロピレン、鞘部:ポリエチレン)の熱融着性ストレート繊維(ヤング率20cN/dtex)を繊維重量の40%と、添加剤として、キマソーブ(登録商標)944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1wt%含有した6dtex×10mm のポリプロピレンのストレート繊維(ヤング率60cN/dtex)を繊維重量の25%と、添加剤として、キマソーブ(登録商標)944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1wt%含有した2.2dtex×5mmの芯鞘構造(芯部:ポリプロピレン、鞘部:ポリエチレン)の熱融着性ストレート繊維(ヤング率20cN/dtex)を繊維重量の25%と、SWP UL410(三井化学(株)製)を繊維重量の10%を用いた以外は、実施例1と同様にエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表1の通りであった。
実施例8
実施例7で得られた不織布をハイドロチャージ法によりエレクトレット加工を行うことによりエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表2の通りであった。
実施例9
実施例7と同じ繊維構成で第1層目の未乾燥ウエブを抄紙し、次に添加剤として、キマソーブ(登録商標)944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1wt%含有した6dtex×10mm のポリプロピレンのストレート繊維(ヤング率60cN/dtex)を繊維重量の20%と、944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1wt%含有した2.2dtex×5mm の芯鞘構造(芯部:ポリプロピレン、鞘部:変性ポリプロピレン)の熱融着性ストレート繊維(ヤング率20cN/dtex)を繊維重量の50%と、添加剤として、キマソーブ(登録商標)944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1wt%含有した1.3dtex×10mm の高強度ポリプロピレンのストレート繊維(ヤング率110cN/dtex)を繊維重量の20%と、SWP UL410(三井化学(株)製)を繊維重量の10%を用いて第2層目の未乾燥ウエブを抄紙し、この2層の未乾燥ウエブを積層した後、引き続きエアースルードライヤーを用いて乾燥を行い、積層構造の不織布を得た。
この積層構造不織布をハイドロチャージ法によりエレクトレット加工を行うことによりエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表2の通りであった。
比較例1
実施例1で得られた不織布をエレクトレット加工しなかった。得られた濾材の物性と性能は、表2の通りであった。
比較例2
実施例1の乾燥をヤンキードラム方式に変更した以外は、実施例1と同様にエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表2の通りであった。
比較例3
1.3dtex×10mm の高強度ポリプロピレンのストレート繊維(ヤング率110cN/dtex)を繊維重量の5%と、6dtex×10mm のポリエステルのストレート繊維(ヤング率130cN/dtex)を繊維重量の10%と、20dtex×4015mmの芯鞘構造(芯部:ポリエステル、鞘部:変性ポリエステル)ポリエステルの捲縮繊維(ヤング率45cN/dtex)を繊維重量の40%と、6dtex×2415mmポリエステルの捲縮繊維(ヤング率45cN/dtex)を繊維重量の45%と、SWP UL410(三井化学(株)製)合成パルプを繊維重量の10%を用いた以外は、実施例1と同様にエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表2の通りであった。
比較例4
実施例7のSWP UL410(三井化学(株)製)をPVA繊維に変更した以外は、実施例7と同様にエレクトレット濾材を作製した。得られた濾材の物性と性能は、表2の通りであった。
Figure 2010094666
Figure 2010094666
表1〜2に示したとおり、実施例はポリオレフィン系ストレート繊維を用い、密度を特定の範囲内とすることにより優れた濾材を得ることができた、さらに実施例1〜3は特定の添加剤が繊維に添加されていることにより実施例4に比べ0.3ミクロンの捕集効率が向上している。特に、実施例1または2のヒンダードアミンの添加剤を用いると性能が向上することが分かる。
また、実施例5は細い繊維を用いたことにより、さらに0.3ミクロンの捕集効率が向上している。また、JIS15種供給量(寿命)が実施例1〜4に比べ低下した。この原因は、実施例5の密度が実施例1〜4に比べ高いため、濾材空隙が減ったためと考えられる。
実施例6は、空隙を更に高め密度を下げたことによりJIS15種供給量が向上した。また、JIS15種効率と0.3ミクロンの捕集効率が実施例1〜4に比べ低下した。この原因は、実施例6の密度が実施例1〜4に比べ低いため、濾材空隙が増えたためと考えられる。
実施例7〜9は、構成繊維を全てポリオレフィン系の繊維としたことにより、実施例1〜6に比べ、0.3ミクロンの捕集効率が大きく向上している。その中でもエレクトレット加工としてハイドロチャージ法を採用した実施例8,9はさらにその向上効果が大きかった。また、実施例9については粗密二層構造としたことにより、最大の0.3ミクロンの捕集効率を得ながら、JIS15種供給量も良好であり、バランスの優れた濾材が得られた。
また、比較例1からエレクトレット加工をしないと0.3ミクロンの捕集効率は上がらず、エレクトレット加工をすることが0.3ミクロンの捕集効率が向上に非常に重要であることが分かる。次に、比較例2をみると大幅にJIS15種供給量が低下していることが分かる。これは、実施例5以上に密度が0.214g/ccと高くなったためダストを保持できる濾材空隙が減ったためと考えられる。この原因は、厚みが減っていることから乾燥にドラム式を用いたことによることが大きいと考えられる。
比較例3は、密度が極端に低いためJIS15種効率が著しく低下した。この密度まで下がるとダスト保持性が損なわれてしまうことが分かる。
比較例4は、SWPをPVA繊維に変更したため、0.3ミクロンの捕集効率が大幅に低下した。PVA繊維が湿熱で溶解し、オレフィン系繊維の表面を被覆したことにより、エレクトレット加工を行ってもその効果が十分に得られなかったためと考えられる。
本発明によるエレクトレット濾材は、自動車や鉄道車両等の車室内の空気を清浄化するためのエアフィルター、健康住宅、ペット対応マンション、高齢者入所施設、病院、オフィス等で使用される空気清浄機用フィルター、エアコン用フィルター、OA機器の吸気・排気フィルター、ビル空調用フィルター、産業用クリーンルーム用フィルター等のエアフィルター濾材として好ましく使用される。
エアスルー乾燥した不織布表面写真

Claims (7)

  1. エレクトレット加工を施されたポリオレフィン系ストレート繊維を少なくとも有し、且つ密度が0.10g/cc〜0.20g/ccの範囲であることを特徴とするエレクトレット濾材。
  2. ヤング率が100cN/dtex以上で繊維長3〜30mmのストレート繊維が繊維重量の20%以上含まれることを特徴とする請求項1に記載のエレクトレット濾材。
  3. 2成分からなる芯鞘構造の熱融着繊維の配合比率が40%以上であることを特徴とする請求項1,2に記載のエレクトレット濾材。
  4. 全てオレフィン系繊維で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトレット濾材。
  5. ポリオレフィン系ストレート繊維に、ヒンダードアミン系添加剤又はトリアジン系添加剤を0.5〜5重量%配合していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエレクトレット濾材。
  6. 前記ヒンダードアミン又はトリアジン系添加剤が、ポリ〔((6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)〕、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物のいずれかを少なくとも1種以上含むことを特徴とする請求項5に記載のエレクトレット濾材。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のエレクトレット濾材を製造する方法であって少なくとも次の工程を経てなることを特徴としたエレクトレット濾材の製造方法。
    仕込み工程:繊維を水中で分散させる工程。
    抄紙工程:分散した繊維を一定濃度に希釈し湿式法により不織布を形成する工程。
    乾燥工程:熱風通気方式で110℃〜200℃の温度で乾燥する工程。
    エレクトレット工程:不織布にエレクトレット処理を行う工程。
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