半導体デバイスのシリコン基板中キャリア分布を測定する技術としては、種々の技術が用いられているが、その一つに走査型容量顕微鏡(SCM:ScaningCapacitance Microscope)がある。
この走査型容量顕微鏡(以下、SCM装置ともいう。)は、半導体デバイス表面、主に半導体デバイスの断面に絶縁膜を介して探針を接触させ、この探針により半導体デバイス表面を走査しつつ、半導体デバイス表面と探針との間の容量を検出し、この容量に基づいて半導体デバイスのキャリア分布を測定するものである(例えば、特許文献1)。
図10は、従来の不純物分布測定方法を説明する図であり、図10(a)は、測定方法に用いるSCM装置を模式的に示し、図10(b)は、その測定結果である不純物キャリア濃度の基板深さ方向での変化を示している。
この不純物分布測定方法で用いるSCM装置56は、測定対象サンプルの測定面に接触させる導電性探針(プローブともいう。)56aと、該探針56aと測定対象サンプルとの間に交流電圧を印加した状態で、探針56aと測定対象サンプルとの間の静電容量を測定する容量センサー56bとを有している。
次に測定方法について図10を用いて説明する。
通常、SCM装置(走査型プローブ顕微鏡)のプローブ(探針)56aと、測定対象サンプルである半導体デバイス基板58との間には、該基板を構成するシリコンの自然酸化膜であるシリコン酸化膜57が形成されている。大気中に測定対象サンプルを置くかぎりは、このような自然酸化膜が形成される。
このため、プローブ56aを半導体デバイス基板の表面に接触させた状態では、導電性プローブ56a、シリコン酸化膜57、及び半導体デバイス基板58が、MOS構造を形成することとなる。つまり、SCM装置56は、このMOS構造における印加電圧に対する容量の変化である電圧対容量特性(C−V特性)を用いて、シリコン基板(半導体基板)のキャリア濃度を測定するものである。
具体的には、探針56aを半導体デバイス基板58の不純物キャリア領域に対して、これらがシリコン酸化膜57を介して対向するよう配置して容量Cを形成し、探針56aと不純物キャリア領域(半導体デバイス基板)58との間にキャリア変調用の交流電圧Vcを印加して、該容量Cを測定する。
このときの容量Cの変化は、該半導体デバイス基板58の不純物キャリア濃度に依存するので、このキャリア変調用の交流電圧Vcの変化に対する容量Cの変化の特性(dC/dV)を測定し、この特性に基づいて、不純物キャリア濃度を求めることができる。
図11はキャリア変調用交流電圧Vcに対する容量Cの変化をグラフで示す図であり、図11(a)は、シリコン基板のP型不純物層におけるC−V特性を示し、図11(b)は、シリコン基板のN型不純物層におけるC−V特性を示している。
一般に、不純物層のキャリア濃度が少なくなる程、上記電圧Vcの変化に対する容量Cの変化は大きくなる。またP型不純物層とN型不純物層とでは、電圧Vcの変化方向に対する、容量Cの変化方向が逆傾向となるため、容量変化の測定結果からキャリア濃度を求める場合には、その不純物層がN型であるのか、P型であるのかを区別することが可能となる。
SCM装置56は、このように測定対象サンプル(半導体デバイス)の表面、つまり半導体基板における不純物キャリア領域の表面をプローブ(探針)56aでXY方向に順次走査しつつ、不純物キャリア濃度を繰り返し求めることにより、測定対象サンプルである半導体デバイスの不純物キャリア濃度分布を求めるものである。
図10(b)には、交流電圧Vcの変化に対する容量Cの変化(dC/dV)、すなわち不純物キャリア濃度の基板深さ方向に対するプロファイルを示している。このプロファイルでは、基板深さ方向に対する1次元のキャリア分布を示しているが、同様の測定を、測定対象サンプルの測定面内で基板深さ方向と直交する方向における位置を変えて行うことで、容量Cの変化の向きとその大小をコントラスト化して、2次元の濃度プロファイルを2次元の画像として得ることができる。
次に、半導体デバイスの基板断面キャリア分布を走査型容量顕微鏡(SCM装置)で測定する場合に用いる、測定対象サンプルを含む被測定サンプル組立体(SCM測定サンプルともいう。)を作成する方法、さらに、作成したSCM測定サンプルを用いて、測定対象サンプルのキャリア濃度分布を測定する方法を、図12〜15を用いて説明する。
図12は、該SCM測定サンプルの構造(図(a))及びその作成方法(図(b))を説明する図である。
半導体基板断面のキャリア濃度分布を走査型容量顕微鏡で測定する場合には、その測定面、すなわちサンプル断面を鏡面仕上げ行う必要があるが、通常の半導体デバイスの場合そのサンプル厚みは100um〜700umしかなく、最も厚い700umの場合であっても鏡面研磨加工に耐えられるサンプル厚みではないこと、さらに鏡面研磨加工時には測定サンプル表面は保護しておく必要があることから、通常は、測定対象となるシリコンウエハ(測定対象ウエハ)に、1枚もしくは2枚のシリコンダミーウェハー(ダミーウエハ)や透明ガラス基板等を貼り合わせて被測定サンプル組立体を作製している。
図12(a)は、シリコンダミーウェハー(ダミーサンプル)2枚の間に測定対象ウエハー(測定対象サンプル)を挟み込んでなる被測定サンプル組立体の構造を示している。なお、この被測定サンプル組立体の構造は、一例であってダミーサンプルに透明ガラス基板を用いる場合や、ダミーサンプルが測定対象サンプルの表面側に1枚のみである場合もある。
以下、具体的にサンプル作製手順を図12〜14を用いて説明する。
図13は、上記被測定サンプル体をその固定台(測定ステージ)に取り付ける方法を説明する図であり、図14は、該被測定サンプル組立体の測定面を研磨する方法を説明する側面図及び斜視図である。
まず、シリコンダミーウェハーの一部(ダミーサンプル)と測定対象ウエハーの一部(測定対象サンプル)とを張り合わせるために、それぞれを同サイズになるように該両ウエハからの切り出しを行う。ここでは、張り合わせたサンプルの鏡面研磨加工を後に行うので、それぞれの切り出しサイズはできるだけ同じサイズになるように、2000番〜3000番のダイヤモンド粒子を埋め込んだダイシングソーを用いて切断処理を行うのが望ましい。
例えば、この切断処理は、それぞれのサンプルが2mm×4mmになるように行う。また厚みは、シリコンダミーウェハーの厚みや測定対象ウエハの厚み、そのままの厚みとする。
そして、図12(b)に示すように、このようにして切り出した2枚のダミーサンプル51a及び51bと測定サンプル52との間に、熱処理により硬化する有機系樹脂55を塗り、樹脂が硬化するよう熱処理を行って、2枚のダミーサンプル51a及び51bを測定サンプル52の両面に張り合わせて、図12(a)に示す被測定サンプル組立体50を得る。ここでは、該熱処理の温度は、150℃〜200℃で、処理時間は2〜4時間としている。
次に、この被測定サンプル組立体50を、鏡面研磨処理/SCM測定処理兼用(共用)の測定ステージ63へステージ固定用ペースト62で接着固定する。この場合、後に、測定ステージ63から被測定サンプル組立体50を介して走査プローブ(探針)56aに至る経路に交流電圧を印加し、容量を測定することになるので、測定ステージ63と被測定サンプル組立体50との間では導電性を保つように、導電性のペーストを用いる必要がある。
次に、研磨装置の研磨板72に研磨シート73を貼り、測定ステージ63に固定した被測定サンプル組立体の測定面を、研磨用供給水74を供給しながら研磨シート73で研磨することにより、該被測定サンプル組立体の測定面の鏡面研磨加工を行う。このような研磨シート73を用いた研磨加工は、研磨シート73としてダイヤモンドラッピングペーパーを、その砥粒径が10um〜0.1umのものまで順次用いて行う。鏡面研磨加工の最終段階では、砥粒径が0.05um程度のコロイダルシリカを含んだ研磨剤を用いて、被測定サンプル組立体の測定面の仕上げ研磨加工を行う。
次に、この被測定サンプル組立体におけるシリコン基板(測定対象サンプル)中のキャリア分布を、SCM装置を用いたシステムにより測定する。このようなシステムは例えば特許文献2に開示されている。
図15は、このような従来のシステムである半導体評価装置を説明する模式図である。
この半導体評価装置900は、走査容量顕微鏡システム(走査プローブ顕微鏡システム)900aを有し、該システムを用いて測定対象サンプルのシリコン基板中のキャリア分布を測定するものである。
従来の半導体評価装置システム900は、被測定サンプル組立体を貼り付けたステージ(測定サンプルステージ)63を搭載し、測定サンプルステージ63をXYZ方向に移動させる3軸ピエゾスキャナ90と、3軸ピエゾスキャナ90を駆動制御するピエゾ駆動信号発生回路91とを有している。また、このシステム900は、測定探針(プローブ)81の位置検出を行うためのレーザー光82の、探針での反射レーザー光を受光するフォトセンサ83と、このフォトセンサ83の受光出力に基づいて被測定サンプル組立体の測定面の凹凸情報を検出するAFM処理部84とを有している。
さらに、上記システム900を構成する走査容量顕微鏡(走査プローブ顕微鏡)900aは、探針81と被測定サンプル組立体50との間の容量に印加されるキャリア変調用の交流電圧Vcを発生する交流電源85と、キャリア変調用の交流電圧Vcにバイアス電圧を重畳させるDCバイアス電源86と、キャリア変調用の交流電圧Vcに対する容量の特性を探針81を通じて検出するキャパシターセンサ87とを有している。また、上記システム900における走査容量顕微鏡900aは、キャパシタセンサ87の検出出力のノイズ除去及び増幅を行うロックインアンプ88と、キャパシタセンサ87の検出出力に基づいて不純物キャリア濃度を示すSCM信号を生成するSCM処理部89とを有している。なお、図示していないが、このシステム900は、システム全体を制御するコントローラーや入力装置や表示装置を備えている。
言い換えると、図15において探針(カンチレバーともいう。)81から左側に示される構成は、サンプルの凹凸情報取得とステージ制御を行うためのAFM制御部900bであり、3軸ピエゾスキャナ90により被測定サンプル組立体50を、その所望のエリア内を探針81が走査するよう移動させる移動機構(3軸ピエゾスキャナ90及びピエゾ駆動信号発生回路91)と、探針81からのレーザー光82の反射光を元にサンプル表面の凹凸情報を得るAFM処理部84とを含んでいる。一方、図15において探針81から右側に示される構成は、探針とサンプルとの間の容量からキャリア分布測定を行う測定処理部(走査容量顕微鏡)900aである。なお、探針81は、AFM制御部900bと測定処理部900aとで共用している。
図16は、このような半導体評価装置900でキャリア濃度分布の測定を行って得られたSCM測定結果を2次元画像で示す図であり、この2次元画像は半導体デバイス断面でのキャリア濃度分布を示す画像の一例である。
この例の場合では、画像中の相対的に白い部分は、シリコン基板中の不純物キャリアがN型であることを示し、その明るさが明るい程不純物キャリア濃度が高い(濃い)ことを示している。逆に画像中の相対的に黒い部分はシリコン基板中の不純物キャリアがP型であることを示し、その色が濃く(暗く)なる程不純物キャリア濃度が高い(濃い)ことを示している。
例えば、半導体シリコン基板中のキャリア濃度分布を測定する必要が生じる例として、製造した半導体製品が正常に動作せず、正常動作品との比較解析を行いたい場合や、過去に測定したデータとの比較、プロセスシミュレーションによるキャリア濃度分布との比較を行うような場合に必要が生じることが多かった。
このような場合、全く別の時期に測定を行ったそれぞれのキャリア濃度分布のデータを比較する必要があることや、シミュレーションによるキャリア濃度分布との比較を行うため、定量的にキャリア濃度データを取得する必要が生じてくる。
ところが、従来の半導体測定方法を行うための測定システム、さらにこのシステムで用いるサンプルの構造では、まず、比較する測定サンプルの測定時期が違うということから、サンプルの研磨状態や自然酸化膜のできかたの違いにより測定時の表面状態が違ってくる。
また、測定探針はある程度の期間使用したときには交換することから、比較する測定サンプルの間では、そのキャリア濃度分布の測定は同じ探針を用いて行われているとは限らない。たとえ、同じ探針であったとしても、走査容量顕微鏡の原理からすると、サンプルに対する測定は、サンプルと探針との接触により行われるものである以上、使用する期間や測定回数によって探針(プローブ)先の形状や状態が異なってくる。このようなことから、同じサンプルの測定を同じ探針を用いて行っても、測定時期が異なる場合には、全く同じキャリア濃度分布の画像(データ)を得ることはできなかった。
また、これら測定データのバラツキがある場合、同じサンプル内でのキャリア濃度分布の濃いあるいは薄いは知ることはできても、定量的なキャリア濃度データを取得することはできなかった。
これら測定の不安定要素を取り除くために、従来から、図17に示す走査型容量顕微鏡システムを用いる測定方法が考えられており、従来は、この方法で、測定データを取得している(例えば、特許文献1)。
図17に示す走査型容量顕微鏡システム100aは、真空チャンバー104と、該真空チャンバー104内に配置され、測定サンプル103を載置するステージとしての3軸ピエゾスキャナ102と、該真空チャンバー104内に配置され、該測定サンプル103に接触させるSCMカンチレバー(探針)101とを有している。また、このシステム100aは、探針とサンプルとの間の容量からキャリア濃度分布の測定を行うSCM測定処理部110aと、サンプルの凹凸情報取得とステージ制御を行うためのAFM処理部110bとを有している。
つまり、この走査型容量顕微鏡システム100aは、3軸ピエゾスキャナ(ステージ)102、測定サンプル103、及びSCMカンチレバー101を真空チャンバー104内に収めたものであり、サンプル測定中においては、真空チャンバー104内は、真空排気系により接続されたターボ分子ポンプ106及びロータリーポンプ107を用いて、超高真空雰囲気(1.33×10−7Pa程度)に保たれるようになっている。なお、サンプル交換時は、チャンバー内の雰囲気が大気圧状態にするパージが行われ、交換口105を用いて資料交換や測定探針交換が行われる。
このシステムにおいては、測定サンプル上に成長した自然酸化膜を用いて容量測定を行うのではなく、つまり自然酸化膜を介して対向するプローブとシリコン基板との間の容量を測定するのではなく、不安定要素を招く自然酸化膜に代えて、プローブ表面に初期から安定した酸化膜を用いることで、プローブ表面の酸化膜を介して対向するプローブとシリコン基板との間の容量により、安定した測定を実現するものである。
特開2004−184323号公報
特開2004−71708号公報
しかしながら、このような従来の測定システムで、半導体基板のキャリア分布の測定を行う場合、以下のように、測定装置などのコストアップを招き、また、探針の交換に起因する測定データの誤差は依然として排除できないといった問題があった。
(1)測定システム自体が大掛かりになること、探針(プローブ)の表面に酸化膜を形成したプローブを用いるため、プローブの価格が高価になること、さらに、測定システムが真空系等を持つことによりそのランニングコストが増加することなどが原因で、サンプル測定にかかるコストが増加してしまうという問題がある。
(2)プローブ表面の安定した酸化膜を用いるといっても、測定はやはり接触測定であるため、プローブの劣化による測定データのばらつきや、プローブ交換によるデータのばらつきなどは排除できないという問題がある。
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたもので、半導体基板などの測定サンプルのキャリア濃度を定量的に正確に測定することができ、しかもこのようなキャリア濃度の測定を、測定システムの規模の増大やコストアップを招くことなく低コストで行うことができる半導体測定装置及び半導体測定方法、この半導体測定方法に用いる被測定サンプルを作製するサンプル作製方法、並びにこのような半導体測定装置及び半導体測定方法に用いる走査型容量顕微鏡を得ることを目的とする。
本発明に係る半導体測定装置は、導電性の探針を有し、該探針と半導体デバイスとの間に容量が形成されるよう、該探針を絶縁膜を介して該半導体デバイスに接触させた状態で、該容量に交流電圧を印加したときの交流電圧の変化に対する容量の変化に基づいて、測定対象サンプルである半導体デバイスにおけるキャリア分布を測定する半導体測定装置であって、該探針と該測定対象サンプルとの間に形成される容量が変化するよう、該探針と該測定対象サンプルの間に交流電圧を印加する電圧印加部と、該容量に該交流電圧を印加したときの交流電圧の変化に対する容量の変化の比率である容量変化率を検出する容量変化率検出部と、該容量変化率に基づいて該測定対象サンプルのキャリア濃度分布を導出する濃度分布導出部とを備え、該濃度分布導出部は、既知のキャリア濃度を有する測定比較サンプルにおける、その容量変化率とキャリア濃度との関係に基づいて、該容量変化率検出部により検出された該測定対象サンプルの容量変化率から、該測定対象サンプルのキャリア濃度の分布を導出するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明は、上記半導体測定装置において、外部から入力された、前記測定比較サンプルにおけるキャリア濃度分布を示すキャリア濃度分布データを記憶するデータ記憶部を備え、前記濃度分布導出部は、前記容量変化検出部により得られた該測定比較サンプルの容量変化率の特性と、該キャリア濃度分布データが示すキャリア濃度分布とに基づいて、該容量変化率に対してキャリア濃度を関連付ける関連付け部を有し、該関連付けられた容量変化率とキャリア濃度との関係に基づいて、該測定対象サンプルに対する容量変化率の特性からそのキャリア濃度分布を導出することが好ましい。
本発明は、上記半導体測定装置において、前記外部から入力された、前記測定比較サンプルにおけるキャリア濃度分布を示すキャリア濃度分布データは、該測定比較サンプルを2次イオン質量分析法により分析して得られたデータであることが好ましい。
本発明は、上記半導体測定装置において、前記既知のキャリア濃度を有する測定比較サンプルにおける、その容量変化率とキャリア濃度との関係は、既知のP型不純物のキャリア濃度を有するP型測定比較サンプルにおける、その容量変化率とキャリア濃度との第1の関係、及び、既知のN型不純物のキャリア濃度を有するN型測定比較サンプルにおける、その容量変化率とキャリア濃度との第2の関係を含み、前記濃度分布導出部は、該第1の関係に基づいて、前記容量変化率検出部により検出された前記測定対象サンプルの容量変化率から、該測定対象サンプルのP型不純物のキャリア濃度分布を導出し、かつ該第2の関係に基づいて、該測定対象サンプルの容量変化率から、該測定対象サンプルのN型不純物のキャリア濃度分布を導出することが好ましい。
本発明は、上記半導体測定装置において、前記測定対象サンプルと前記測定比較サンプルとは、対向する一対のダミーサンプルの間に該両ダミーサンプルに挟持されるよう配置されて、1つの被測定サンプル組立体を形成していることが好ましい。
本発明は、上記半導体測定装置において、前記被測定サンプル組立体は、前記測定比較サンプルとして、既知のP型不純物のキャリア濃度を有するP型測定比較サンプルと、既知のP型不純物のキャリア濃度を有するP型測定比較サンプルとを含むことが好ましい。
本発明は、上記半導体測定装置において、前記測定対象サンプルは、前記半導体デバイスを構成する半導体基板を提供する半導体ウエハから切り出されたものであり、前記P型測定比較サンプルは、P型不純物濃度校正用の半導体ウエハから切り出されたものであり、前記N型測定比較サンプルは、N型不純物濃度校正用の半導体ウエハから切り出されたものであることが好ましい。
本発明は、上記半導体測定装置において、前記濃度分布導出部は、前記P型測定比較サンプル及び前記N型測定比較サンプルにおける半導体ウエハ厚さ方向のキャリア濃度分布に基づいて、前記測定対象サンプルにおける半導体ウエハ厚さ方向におけるキャリア濃度分布を導出するものであることが好ましい。
本発明は、上記半導体測定装置において、前記被測定サンプル組立体は、前記測定対象サンプルの測定面と前記測定比較サンプルの測定面とを、これらが前記ダミーサンプルの端面と同時に研磨されるよう同一平面内に配置したものであることが好ましい。
本発明は、上記半導体測定装置において、前記測定対象サンプルは、対向する一対のダミーサンプルの間に該両ダミーサンプルに挟持されるよう配置されて、1つの被測定サンプル組立体を形成していることが好ましい。
本発明に係る半導体測定方法は、導電性の探針を半導体デバイスに絶縁膜を介して接触させて該探針と該半導体デバイスとの間の容量を形成した状態で、該容量に交流電圧を印加したときの交流電圧の変化に対する容量の変化に基づいて、測定対象サンプルである半導体デバイスにおけるキャリア濃度分布を測定する半導体測定方法であって、該探針と該測定対象サンプルとの間に形成される容量に該交流電圧を印加したときの、該交流電圧の変化に対する容量の変化の比率である容量変化率を検出するステップと、該探針と既知のキャリア濃度を有する測定比較サンプルとの間に形成される容量に該交流電圧を印加したときの、該交流電圧の変化に対する容量の変化の比率である容量変化率に基づいて、該測定比較サンプルにおける、その容量変化率とキャリア濃度との関係を導出するステップと、該測定比較サンプルにおける、その容量変化率とキャリア濃度との関係に基づいて、該検出された該測定対象サンプルの容量変化率から、該測定対象サンプルのキャリア濃度分布を導出するステップとを含むものであり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明は、上記半導体測定方法において、前記測定対象サンプルと前記測定比較サンプルとは、対向する一対のダミーサンプルの間に該両ダミーサンプルに挟持されるよう配置されて、1つの被測定サンプル組立体を形成しており、該被測定サンプル組立体における測定対象サンプルの測定面と該測定比較サンプルの測定面とは、該測定対象サンプルと該測定比較サンプルとを同一サンプルとして研磨加工されることが好ましい。
本発明は、上記半導体測定方法において、前記被測定サンプル組立体は、前記測定比較サンプルとして、既知のP型不純物のキャリア濃度を有するP型測定比較サンプル、及び既知のP型不純物のキャリア濃度を有するP型測定比較サンプルの少なくとも1つを含み、該P型測定比較サンプルは、P型の不純物の導入及び熱処理を行ったシリコン基板から得られたものであり、該N型測定比較サンプルは、N型の不純物の導入及び熱処理を行ったシリコン基板から得られたものであることが好ましい。
本発明は、上記半導体測定方法において、前記測定比較サンプルとして、シリコン基板にP型不純物の導入及び熱処理を行って得られたP型測定比較サンプルと、シリコン基板にN型不純物の導入及び熱処理を行って得られたN型測定比較サンプルとを用い、これらのP型測定比較サンプル及びN型測定比較サンプルは、あらかじめ2次イオン質量分析法により、その基板深さ方向におけるキャリア濃度分布の測定を行ったものであることが好ましい。
本発明は、上記半導体測定方法において、前記P型測定比較サンプルは、シリコン基板への硼素(ボロン)のイオン注入により、不純物の濃度が、0.5〜1.5umの深さで、1E17〜1E19cm3のピーク濃度になるように不純物層を形成したものであることが好ましい。
本発明は、上記半導体測定方法において、前記N型測定比較サンプルは、シリコン基板への燐(リン)のイオン注入により、不純物濃度が、0.5〜1.5umの深さで、1E17〜1E19cm3のピーク濃度になるように不純物層を形成したものであることが好ましい。
本発明に係るサンプル作成方法は、上記半導体測定方法で用いる被測定サンプル組立体を作製するサンプル作製方法であって、半導体基板として適当な不純物濃度を有する第1のシリコンウェハーに対して、N型不純物を打ち込んで該第1のシリコンウエハーの表面に不純物層を形成するステップと、半導体基板として適当な不純物濃度を有する第2のシリコンウェハーに対して、P型不純物を打ち込んで該第2のシリコンウエハーの表面に不純物層を形成するステップと、該不純物層を形成した第1のシリコンウエハーを所定サイズのN型測定比較サンプルに切り出すステップと、該不純物層を形成した第2のシリコンウエハーを所定サイズのP型測定比較サンプルに切り出すステップと、測定対象となる半導体デバイスを提供する第3のシリコンウエハーを所定サイズの測定対象サンプルに切り出すステップと、2枚のダミーサンプルの間に、該測定対象サンプルを、P型測定比較サンプル及びN型測定比較サンプルとともに挟み込み、熱硬化樹脂によりこれらを固着して該被測定サンプル組立体を作製するステップとを含むものであり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明に係る走査型容量顕微鏡は、半導体デバイスである測定サンプルを載置するサンプル載置台と、該サンプル載置台上に載置された測定サンプルの測定面に接触させる導電性の探針と、該サンプル載置台上の測定サンプルと該探針との間に交流電圧を印加する電圧印加部とを備え、該探針と該測定サンプルとの間に容量が形成されるよう、該探針を絶縁膜を介して該測定サンプルに接触させた状態で、該容量に交流電圧を印加し、該交流電圧の変化に対する該容量の変化の割合である容量変化率に基づいて、該測定サンプルにおけるキャリア濃度分布を測定する走査型容量顕微鏡であって、測定対象となる測定対象サンプルと対比される測定比較サンプルのキャリア濃度分布を記憶するとともに、該測定比較サンプルに対する容量変化率の特性を記憶する記憶部と、該測定比較サンプルのキャリア濃度分布とその容量変化率の特性とに基づいて、該測定比較サンプルのキャリア濃度とその容量変化率とを、該測定比較サンプルの測定面での個々の位置に対して関連付けて関連付けデータを生成する関連付け部と、該関連付けデータに基づいて、該測定対象サンプルの容量変化率の特性から、該測定対象サンプルのキャリア濃度分布を導出する濃度分布導出部とを備えたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
以下、本発明の作用について説明する。
本発明においては、探針と測定対象サンプルとの間に形成される容量に交流電圧を印加したときの、該交流電圧の変化に対する容量の変化の比率である容量変化率を検出し、既知のキャリア濃度を有する測定比較サンプルにおける、その容量変化率とキャリア濃度との関係に基づいて、測定対象サンプルの容量変化率から、該測定対象サンプルのキャリア濃度の分布を導出するので、半導体基板などの測定対象サンプルのキャリア濃度を定量的に正確に測定することができる。しかも、このようなキャリア濃度の測定は、既知のキャリア濃度を有する測定比較サンプルにおける、その容量変化率とキャリア濃度との関係をソフトウエアによる演算処理により求めるだけで実現でき、測定システムの規模の増大やこれによるコストアップを招くことがない。
また、本発明においては、測定対象サンプルと測定比較サンプルとは、対向する一対のダミーサンプルの間に該両ダミーサンプルに挟持されるよう配置されて、1つの被測定サンプル組立体を形成しているので、測定対象サンプルと測定比較サンプル(濃度校正サンプル)とに対して、同じ被測定サンプルとしてそれぞれの測定面の研磨処理を行い、それぞれのサンプルに対して、できるだけ時間を置かずにSCM測定を行うことが可能となる。このため、濃度校正サンプルの測定時と実際の測定対象サンプルの測定時とで、サンプル表面状態及び探針(プローブ)状態をできるだけ揃えることも可能となる。これにより測定対象サンプルの定量的なキャリア濃度分布データを、測定条件の違いによるばらつきを抑えて安定して得ることができる。
以上のように、本発明によれば、半導体基板などの測定サンプルのキャリア濃度を定量的に正確に測定することができ、しかもこのようなキャリア濃度の測定を、測定システムの規模の増大やコストアップを招くことなく低コストで行うことができる効果がある。
まず、本発明の基本原理について簡単に説明する。
(1)本発明は、N型キャリア濃度及びP型キャリア濃度の分かっている半導体サンプルをそれぞれ濃度校正用サンプル(測定比較サンプル)として用意しておき、これらの濃度校正用サンプルに対してSCM測定を行って、それぞれの濃度校正用サンプルにおけるdC/dV値とキャリア濃度値との関係を導出し、実際の測定対象サンプルのSCM測定により得られるdC/dV値から、実際の測定対象サンプルのキャリア濃度分布を求めるようにしたものであり、これにより、測定対象サンプルの定量的なキャリア濃度分布を示すデータを得ることができるものである。
(2)本発明は、さらに、濃度校正サンプルの測定時と実際の測定対象サンプルの測定時とで、サンプル表面状態及び探針(プローブ)状態をできるだけ揃えるために、測定対象サンプルと濃度校正サンプルとに対して、これらを同じ被測定サンプルとしてそれぞれの測定面の研磨処理を行い、それぞれのサンプルに対して、できるだけ時間を置かずにSCM測定を行うものであり、これにより、測定対象サンプルの定量的なキャリア濃度分布データを安定して得ることができるものである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1、図2A、図2B、図3〜図8は、本発明の実施形態1を説明する図である。
図1は、本実施形態1による不純物分布測定方法を説明する図であり、図1(a)は、該不純物分布測定方法で用いるSCM測定サンプル(被測定サンプル組立体)の構造を示し、図1(b)は、該測定方法に用いる走査型容量顕微鏡を模式的に示し、図1(c)は、測定結果として得られる基板深さ方向におけるキャリア濃度分布をグラフで示している。
図1に示すSCM測定サンプル(被測定サンプル組立体)1は、ダミーサンプル2a、測定対象サンプル3a、及びダミーサンプル2bを3枚貼り合わせて、測定対象サンプル3aを該2つのダミーサンプルにより挟み込んだ構造となっている点は、従来の不純物分布測定方法で用いているSCM測定サンプル5と同一であるが、この実施形態1では、測定対象サンプル3aの幅(Wa)を従来のSCM測定サンプル5におけるものと比べて短くしており、これにより空いたスペースに、P型キャリア濃度校正サンプル(P型測定比較サンプル)3b及びN型キャリア濃度校正サンプル(P型測定比較サンプル)3cを挟み込んだ構造としている。
具体的には、従来の測定方法におけるサンプルは、ダミーサンプル及び測定サンプルともに、2mm×4mmのサイズで統一していたが、本実施形態においては、ダミーサンプル2a及び2b、測定サンプル3a、P型濃度校正サンプル3b、及びN型濃度校正サンプル3cは、以下のサイズとなるよう切り出している。
つまり、ダミーサンプル2a及び2bについては、高さ(H)×幅(Wd)を2mm×4mmとし、測定対象サンプル3aについては、高さ(H)×幅(Wa)を2mm×2mm、P型濃度校正サンプル3bについては、高さ(H)×幅(Wb)を1mm×2mmとし、N型濃度校正サンプル3cについては、高さ(H)×幅(Wc)を1mm×2mmとしている。
この実施形態1の不純物分布測定方法で用いるSCM装置6は、測定対象サンプル1の測定面に接触させる導電性探針(プローブともいう。)6aと、該探針6aと測定対象サンプル1との間に交流電圧を印加した状態で、探針6aと測定対象サンプルとの間の静電容量の変化を測定してSCM出力(dC/dV信号)を出力する容量センサー6bとを有している。
次に測定方法について図2A及び図2Bを用いて説明する。
図2Aは、N型濃度校正サンプル(N型測定比較サンプル)及びP型濃度校正サンプル(P型測定比較サンプル)についてそれぞれ、SIMS測定及びSCM測定を行って、それぞれの測定結果を得る手順を示している。
図2Bは、SIMS測定結果を用いて、SCM測定結果であるdC/dV信号値をキャリア濃度値に変換して、実際の測定対象サンプルのSCM測定値からキャリア濃度を求める手順を示している。
本実施形態の測定方法における実際の作業と測定処理の流れは、図2A及び図2Bに示されているとおりある。
まず、実際の測定対象サンプル(例えば半導体デバイス)を測定する必要が生じる以前に、N型濃度校正用サンプル(N型測定比較サンプル)3c及びP型濃度校正用サンプル(P型測定比較サンプル)3bを準備しておく。
具体的には、半導体基板として適当な不純物濃度を有するシリコンウェハーに対して、N型濃度校正用サンプルの作成用としては、リン(P)もしくはヒ素(As)の不純物打ち込み、P型濃度校正用サンプルの作成用としては、ボロン(B)の不純物打ち込みを行い、その後、900℃〜1000℃程度の熱処理を行うことにより、0.5〜1.5umの基板深さ部分に、1E17〜1E19/cm3のピーク濃度を持つ不純物層を形成する。
この場合、半導体基板としてのシリコンウエハーの不純物濃度はそれ程重要ではないが、あまり高濃度基板は用いない方が望ましい。なお、図中、WpはP型濃度校正用サンプルの作成用のウエハーであり、WnはN型濃度校正用サンプルの作成用のウエハーである。
そして、これらのシリコンウェハーWp及びWnの切断処理により、SIMS測定用サンプルとして、N型SIMSサンプルCn及びP型SIMSサンプルCpをそれぞれ1サンプルづつ切り出す。これらのSIMSサンプルは、10mm×10mm程度のサイズとし、また、切断処理は前述のダイシングソーによる切断処理が望ましい。
次に、これらのSIMSサンプルCn及びCpについて、それぞれSIMS(2次イオン質量分析法)により基板深さ方向に対するキャリア濃度分布データDcn及びDcpを採取しておく(図2A参照)。
上記濃度校正用サンプルの作成用のウェハーについては、SIMSサンプルを切り出した後の残りの部分を、実際のデバイス測定の必要が生じた時に校正用サンプルとして用いるために、一対のダミーサンプルに挟み込むのに適したサイズ(本実施形態では、1mm×2mmのサイズ)に切断処理しておく。なお、上記各ウェハーWn及びWpの、SIMSサンプルを切り出した残りの部分は、全てこのサイズ(1mm×2mm)に切り出して、濃度校正サンプル(測定比較サンプル)として保管しておく。
次に、測定対象となる半導体デバイスを前述のように切断処理により、2mm×2mmサイズの測定対象サンプル3aに切り出し、また、ダミーウエハーやガラス基板などから2mm×4mmサイズのダミーサンプル2a及び2bを切り出す。なおダミーサンプルについては、予め大量に作成しておいてもよい。そして、図3に示すように、2枚のダミーサンプル2a及び2bの間に熱硬化有機系樹脂5を塗り、測定対象サンプル3aを、P型濃度校正サンプル3b及びN型濃度校正サンプル3cとともに挟み込み、樹脂硬化熱処理を行うことで、これらのサンプルを一体化して、1つのSCM測定用サンプル(被測定サンプル組立体)1を作成する。
この後、従来の不純物測定方法と同様に、図4に示すように、研磨(SCM測定)ステージ13にSCM測定用サンプル1を固定し、図5(a)及び(b)に示すように、該SCM測定用サンプル1に対する鏡面研磨処理を行う。
つまり、このSCM測定用サンプル1を、鏡面研磨処理/SCM測定処理兼用(共用)の測定ステージ13へステージ固定用の導電性ペースト12で接着固定する(図4参照)。
次に、研磨装置の研磨板22に研磨シート23を貼り、測定ステージ13に固定したSCM測定用サンプルの測定面を、研磨用水24をその供給ノズルから供給しながら研磨シート13で研磨することにより、該SCM測定用サンプル1の測定面の鏡面研磨加工を行う(図5参照)。
このような研磨シート13を用いた研磨加工は、研磨シート13としてダイヤモンドラッピングペーパーを、その砥粒径が10um〜0.1umのものまで順次用いて行う。鏡面研磨加工の最終段階では、砥粒径が0.05um程度のコロイダルシリカを含んだ研磨剤を用いて、SCM測定用サンプル1の測定面の仕上げ研磨加工を行う。
図6は、この実施形態1の不純物測定方法で用いるSCM測定システムである半導体評価装置を説明する図であり、図6(a)は、その全体構成を示す模式図、図6(b)は、そのSCM処理部の構成を示すブロック図である。
この図6に示すSCM測定システムは、図15に示す従来の不純物測定方法で用いているSCM測定システムとは、SCM処理部39の構成が異なっている。
簡単に説明すると、この半導体評価装置400は、走査容量顕微鏡(走査プローブ顕微鏡)400aを有し、該システムを用いて測定対象サンプルのシリコン基板中のキャリア濃度分布を測定するものである。
また、この半導体評価装置400は、SCM測定サンプル1を貼り付けたステージ(測定サンプルステージ)13を搭載し、測定サンプルステージ13をXYZ方向に移動させる3軸ピエゾスキャナ40と、3軸ピエゾスキャナ40を駆動制御するピエゾ駆動信号発生回路41とを有している。また、この半導体評価装置400は、測定探針(プローブ)31の位置検出を行うためのレーザー光32の、探針での反射レーザー光を受光するフォトセンサ33と、このフォトセンサ33の受光出力に基づいて測定サンプルの凹凸情報を検出するAFM処理部34とを有している。
さらに、上記半導体評価装置400を構成する走査容量顕微鏡400aは、探針31とSCM測定サンプル1との間の容量に印加されるキャリア変調用の交流電圧Vcを発生する交流電源35と、キャリア変調用の交流電圧Vcにバイアス電圧を重畳させるDCバイアス電源36と、キャリア変調用の交流電圧Vcに対する容量の特性を探針31を通じて検出するキャパシターセンサ37とを有している。また、上記半導体評価装置400における走査容量顕微鏡400aは、キャパシタセンサ37の検出出力のノイズ除去及び増幅を行うロックインアンプ38と、キャパシタセンサ37の検出出力に基づいて不純物キャリア濃度を示す濃度データを生成するSCM処理部39とを有している。なお、図示していないが、この半導体評価装置400は、システム全体を制御するコントローラーや入力装置や表示装置を備えている。
言い換えると、図6において探針(カンチレバーともいう。)31から左側に示される構成は、サンプルの凹凸情報取得とステージ制御を行うAFM処理装置400bであり、3軸ピエゾスキャナ40によりサンプル1を、その所望のエリア内を探針31が走査するよう移動させる移動機構と、探針31からのレーザー光32の反射光を元にサンプル表面の凹凸情報を得るAFM処理部34とからなっている。一方、図6において探針31から右側に示される構成は、探針とサンプルとの間の容量からキャリア分布測定を行う測定処理装置400aである。なお、探針31は、AFM処理部と測定処理部とで共用している。
また、この実施形態1では、上記SCM処理部39は、外部から入力された、測定比較サンプル3b及び3cにおけるキャリア濃度分布を示すキャリア濃度分布データなどを記憶するデータ記憶部39bと、上記容量に交流電圧を印加したときの交流電圧の変化に対する容量の変化の比率である容量変化率を検出する容量変化率検出部(dC/dV検出部)39aと、該容量変化率に基づいて該測定対象サンプルのキャリア濃度分布を導出する濃度分布導出部39cとを備えている。ここで、該濃度分布導出部39cは、既知のキャリア濃度を有する測定比較サンプルにおける、その容量変化率とキャリア濃度との関係に基づいて、該容量変化率検出部39aにより検出された該測定対象サンプル3aの容量変化率から、該測定対象サンプル3aのキャリア濃度の分布を導出するものである。具体的には、該濃度分布導出部39cは、容量変化検出部39aにより得られた該測定比較サンプル3b、3cの容量変化率の特性と、該キャリア濃度分布データが示すキャリア濃度分布とに基づいて、該容量変化率に対してキャリア濃度を関連付ける関連付け部を有し、該関連付けられた容量変化率とキャリア濃度との関係に基づいて、該測定対象サンプル3aに対する容量変化率の特性からそのキャリア濃度分布Dts1を導出するものである。
なお、ここで、濃度測定用サンプル3aのSCM測定を行う前に、先のN型濃度校正サンプルCn及びP型濃度校正サンプルCpそれぞれのSIMS測定データを、測定比較サンプル3b、3cのキャリア濃度分布データとしてSCM処理部39のデータ記憶部39bに入力しておく。
例えば、基板の深さ方向に0.1umきざみでキャリア濃度値を表形式で入力する等により、基準となる校正サンプル(測定比較サンプル)の深さに対するキャリア濃度のデータDcn及びDcp(図2A参照)をSCM処理部内に記憶させておく。このデータの入力は、濃度校正サンプルウェハーWn及びWpが別のものに変わらない限りは1度のみとする。
そして、SCM測定サンプル1におけるN型濃度校正サンプル3c及びP型濃度校正サンプル3bに対するSCM測定をそれぞれ実施し、基板深さ方向に対する、dC/dVデータDsn及びDspを測定する。
ここで、この測定したdC/dV値と、先ほど入力したSIMSでのキャリア濃度データDcn及びDcpとを、例えば濃度ピーク位置を合わせて、上記濃度分布導出部39cにおける関連付け部で関連付ける。つまりdC/dV値と濃度値とが関連付けられる。ここでは、それぞれSIMS測定データとSCM測定データとを深さ方向で合わせることが重要となってくる。
例えば、図7は、N型不純物濃度校正用サンプル(N型測定比較サンプル)3cのSCM測定例を示す。SCM測定においては、測定探針の位置についてもサンプリングしていることから、SCMデータを取得すると同時に、AFM処理部34での凹凸情報も出力されてくる。
測定サンプルの表面側には貼りあわせ樹脂(熱硬化樹脂)が存在し、研磨レートの違いから測定サンプル表面と貼りあわせ樹脂境界部には凹凸が発生する(図7(a))。この凹凸から測定サンプルの基板表面位置をまずSCM処理部39のデータ記憶部39bに記憶させる。更に関連付け部は、SCM測定データの濃度ピーク位置を指定する。これは、dC/dV値のmax値あるいはmin値から自動判断で指定しても良い。深さ方向の測定幅とデータ分割数は測定時に任意に指定する値であるので、例えば、幅5.0um測定、データ分割数256の場合、基板深さ方向におけるSCM及びAFM測定データの各データは、5.0÷(256−1)=0.0196umの間隔のデータになる。
従って、AFM処理部からの情報に基づいて指定された先ほどのサンプル表面位置と、SCM出力に基づいて指定されたピーク濃度位置とから、濃度ピークが基板表面からどれくらいの深さにあるのかを知ることができる。このようにしてピーク位置同士を合わせて、そこからの距離でSCM測定データ(dC/dV値)とSIMS測定データ(キャリア濃度値)の相関を取る、もしくは単純に基板表面側から合わせて、dC/dV値とキャリア濃度値との相関をとる。図8に示すようなdC/dVデータ(SCM)とキャリア濃度データ(SIMS)の相関を取る。なお、図8(a)は、N型不純物層構成サンプルにおけるdC/dV値とキャリア濃度値との相関をグラフLnで示し、図8(b)は、P型不純物層構成サンプルにおけるdC/dV値とキャリア濃度値との相関をグラフLpで示している。
以上のようにして、SCM測定データであるdC/dV値と実際のキャリア濃度の相関関係を走査型容量顕微鏡(SCM装置)内に記憶させてから、実際の測定対象サンプルのSCM測定を行うことで、SCM装置は、測定対象サンプルのSCM測定結果として、図1(c)に示すような、縦軸のdC/dV信号値が定量的なキャリア濃度に変換されたキャリア濃度プロファイルを示すデータを出力することができる。また、もちろん、この実施形態1のSCM装置400aは、従来のSCM装置900aと同様、測定対象サンプルのSCM測定結果として、基板深さに応じたdC/dV値を出力することも可能である。
このように本実施形態1では、探針6aと測定対象サンプル(濃度校正サンプル)3b、3cとの間に形成される容量に交流電圧を印加したときの、該交流電圧の変化に対する容量の変化の比率である容量変化率を検出し、既知のキャリア濃度を有する測定比較サンプル3b、3cにおける、その容量変化率とキャリア濃度との関係に基づいて、測定対象サンプル3aの容量変化率から、該測定対象サンプル3aのキャリア濃度の分布を導出するので、半導体基板などの測定対象サンプル3aのキャリア濃度を定量的に正確に測定することができる。しかも、このようなキャリア濃度の測定は、既知のキャリア濃度を有する測定比較サンプル3b、3cにおける、その容量変化率とキャリア濃度との関係をソフトウエアによる演算処理により求めるだけで実現でき、測定システムの規模の増大やこれによるコストアップを招くことがない。
また、測定対象サンプル3aと測定比較サンプル3b、3cとは、対向する一対のダミーサンプル2a及び2bの間に該両ダミーサンプルに挟持されるよう配置されて、1つの被測定サンプル組立体1を形成しているので、測定対象サンプル3aと測定比較サンプル(濃度校正サンプル)3b、3cとに対して、同じ被測定サンプルとしてそれぞれの測定面の研磨処理を行い、それぞれのサンプルに対して、できるだけ時間を置かずにSCM測定を行うことが可能となる。このため、濃度校正サンプル3b、3cの測定時と実際の測定対象サンプル3aの測定時とで、サンプル表面状態及び探針(プローブ)状態をできるだけ揃えることも可能となる。これにより測定対象サンプルの定量的なキャリア濃度分布データを、測定条件の違いによるばらつきを抑えて安定して得ることができる。
要するに本実施形態1では、上記のような測定サンプルの構成、走査型容量顕微鏡、さらに測定手順を採用することで、測定対象サンプルの表面状態や測定探針(プローブ)の状態が変わっても、ほぼ定量的なキャリア濃度分布を測定できるようになり、また測定システム(半導体測定装置)400は、その構成変更がSCMシステム(走査型容量顕微鏡)内での演算ソフトウエアの変更だけであるので、コストの増大を招くこともなく実現できる。
(実施形態2)
図9A及び図9Bは、本発明の実施形態2による半導体測定方法を説明する図であり、図9Aは、N型濃度校正サンプル(N型測定比較サンプル)及びP型濃度校正サンプル(P型測定比較サンプル)についてそれぞれ、SIMS測定及びSCM測定を行って、それぞれの測定結果を得る手順を示している。図9Bは、SIMS測定結果を用いてSCM測定結果であるdC/dV信号値をキャリア濃度値に変換して、実際の測定対象サンプルのSCM測定値からキャリア濃度分布Dts2を求める手順を示している。
この実施形態2の半導体測定方法は、実施形態1の半導体測定方法で、N型濃度校正用サンプル及びP型濃度校正用サンプルの測定と、実際の半導体デバイスである測定対象サンプルの測定とを、N型濃度校正用サンプル、P型濃度校正用サンプル、及び測定対象サンプルを一体化した被測定サンプル組立体を用いてほぼ同時に行っていたものを、これらの測定を別々行うようにした点で異なっており、その他の点は実施形態1のものと同一である。
つまり、この実施形態2では、SCM測定サンプル50としては、従来のものと同様、ダミーサンプル51、測定対象サンプル52、及びダミーサンプル51を3枚貼り合わせて、測定対象サンプル52を該2つのダミーサンプルにより挟み込んだ構造のサンプル50を用いる。
次に作用効果について説明する。
本実施形態の測定方法における実際の作業と測定処理の流れは、図9A及び図9Bに示されているとおりある。
まず、実際の測定対象サンプルを測定する必要が生じる以前に、N型濃度校正用サンプル(N型測定比較サンプル)30c及びP型濃度校正用サンプル(P型測定比較サンプル)30bを準備しておく。
具体的には、半導体基板として適当な不純物濃度を有するシリコンウェハーに対して、N型濃度校正用サンプルの作成用としては、リン(P)もしくはヒ素(As)の不純物打ち込み、P型濃度校正用サンプルの作成用としては、ボロン(B)の不純物打ち込みを行い、その後、900℃〜1000℃程度の熱処理を行うことにより、0.5〜1.5umの基板深さ部分に、1E17〜1E19/cm3のピーク濃度を持つ不純物層を形成する。
この場合、半導体基板としてのシリコンウエハーの不純物濃度はそれ程重要ではないが、あまり高濃度基板は用いない方が望ましい。なお、図9A及び図9B中、WpはP型濃度校正用サンプルの作成用のウエハーであり、WnはN型濃度校正用サンプルの作成用のウエハーである。
そして、これらのシリコンウェハーWp及びWnの切断処理により、SIMS測定用サンプルとして、N型SIMSサンプルCn及びP型SIMSサンプルCpをそれぞれ1サンプルづつ切り出す。これらのSIMSサンプルは、10mm×10mm程度のサイズとし、また、切断処理は前述のダイシングソーによる切断処理が望ましい。
次に、これらのSIMSサンプルCn及びCpについて、それぞれSIMS(2次イオン質量分析法)により基板深さ方向に対するキャリア濃度分布データDcn及びDcpを採取しておく。
上記濃度校正用サンプルの作成用のウェハーについては、実際のデバイス測定の必要が生じた時に校正用サンプルとして用いるために、ダミーサンプルに挟み込むサイズ(本実施形態では、2mm×4mmのサイズ)に切断処理しておく。なお、上記各ウェハーWn及びWpの、SIMSサンプルを切り出した残りの部分は、全てこのサイズ(2mm×4mm)に切り出して、濃度校正サンプル30b、30cとして保管しておく。
なお、P型濃度校正サンプル30bとN型濃度校正サンプル30cとを一対のダミーサンプル(2mm×4mm)に挟み込んで、そのキャリア濃度を測定する場合には、濃度校正用サンプルの作成用のウェハーについては、ダミーサンプルに挟み込むのに適したサイズ(例えば、2mm×2mmのサイズ)に切断処理しておく。
次に、測定対象となる半導体デバイスを前述のように切断処理により、2mm×4mmサイズの測定対象サンプル52に切り出し、また、ダミーウエハーやガラス基板などから2mm×4mmサイズのダミーサンプル51a及び51bを切り出す(図12参照)。なおダミーサンプルについては、予め大量に作成しておいてもよい。そして、図12に示すように、2枚のダミーサンプル51a及び51bの間に熱硬化有機系樹脂55を塗り、測定対象サンプル52を挟み込み、樹脂硬化熱処理を行うことで、これらのサンプルを一体化して、1つのSCM測定用サンプル50を作成する。
この後、従来の不純物測定方法と同様に、図13に示すように、研磨(SCM測定)ステージ63にSCM測定用サンプル50を固定し、図14に示すように、該SCM測定用サンプル50に対する鏡面研磨処理を行う。
つまり、このSCM測定用サンプル50を、鏡面研磨処理/SCM測定処理兼用(共用)の測定ステージ63へステージ固定用の導電性ペースト62で接着固定する。
次に、研磨装置の研磨板72に研磨シート73を貼り、測定ステージ63に固定したSCM測定用サンプルの測定面を、研磨用水をその供給ノズル24から供給しながら研磨シート73で研磨することにより、該被測定貼合せサンプルの測定面の鏡面研磨加工を行う。
このような研磨シート73を用いた研磨加工は、研磨シート63としてダイヤモンドラッピングペーパーを、その砥粒径が10um〜0.1umのものまで順次用いて行う。鏡面研磨加工の最終段階では、砥粒径が0.05um程度のコロイダルシリカを含んだ研磨剤を用いて、被測定貼合せサンプルの測定面の仕上げ研磨加工を行う。
そして、この実施形態2においても、図6に示す半導体評価装置400を用いて、測定対象サンプルの基板厚さ方向のキャリア濃度プロファイルを導出する。
つまり、この実施形態2においても、実施形態1と同様に、SCM測定用サンプル50のSCM測定を行う前に、先のN型濃度校正サンプルCn及びP型濃度校正サンプルCpそれぞれのSIMS測定データDcn及びDcpをSCM処理部39に入力しておく。
そして、測定対象サンプルに対するSCM測定をそれぞれ実施し、基板深さ方向に対する、dC/dVデータを測定する。
また、測定対象サンプルとは別に、N型濃度校正サンプル3c及びP型濃度校正サンプル3bに対するSCM測定をそれぞれ実施し、基板深さ方向に対する、dC/dVデータDsn及びDspを測定する。
ここで、SCM処理部39では、この測定したdC/dV値Dsn及びDspと、先ほど入力したSIMSでのキャリア濃度データDcn及びDcpとを、実施形態1と同様に、例えば濃度ピーク位置を合わせて関連付ける。つまりdC/dV値と濃度値とを関連付ける。ここでは、それぞれSIMS測定データとSCM測定データとを深さ方向で合わせることが重要となってくる。このため、濃度のピーク位置同士を合わせて、そこからの距離でSCM測定データとSIMS測定データの相関を取る、もしくは単純に基板表面側から合わせて濃度の相関をとる。
その結果、図8に示すようなdC/dVデータ(SCM)とキャリア濃度データ(SIMS)の相関、つまりN型不純物層構成サンプルにおける相関(図8(a)のグラフLn参照)、及びP型不純物層構成サンプルにおける相関(図8(b)のグラフLp参照)が得られる。
以上のようにして、SCM測定データであるdC/dV値と実際のキャリア濃度の相関関係をSCM装置400a(図6参照)内に記憶させてから、実際の測定対象サンプルのSCM測定を行うことで、測定対象サンプルのSCM測定結果として、縦軸が定量的なキャリア濃度に変換された値を得ることができ、また、もちろん、従来のdC/dV値出力も得ることができる。
この実施形態2では、N型濃度校正用サンプル及びP型濃度校正用サンプルのSCM測定と、実際の半導体デバイスである測定対象サンプルのSCM測定とを別々に行うので、やはりサンプル表面状態の差、つまり測定対象サンプルの測定面と測定比較サンプルの測定面との間での表面状態の差が測定結果に影響してくることとなり、どうしても、測定対象サンプルのキャリア濃度分布を示すデータはバラツキのあるデータとなってくるが、測定結果を工場内での使用する等の理由により、一定期間中はSCM測定装置の測定探針の交換を行わない場合などには、簡易的に、本実施形態2の測定対象サンプルのSCM測定方法を用いることもできる。
このような本実施形態2においても、ほぼ定量的なキャリア濃度分布を測定できるようになり、また測定システム(半導体測定装置)は、その構成変更がSCMシステム(走査型容量顕微鏡)内での演算ソフトウエアの変更だけであるので、コストの増大を招くこともなく実現できるという効果が得られる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。