JP2010089219A - 被覆切削インサート及び切削工具 - Google Patents

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宏平 虻川
Fumihiro Yoshikawa
文博 吉川
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Abstract

【課題】難切削性のステンレス鋼や合金鋼等からなる部品の高速かつ高精度の加工を可能にする。
【解決手段】硬質材料からなる基体10と、前記基体10上に形成された層厚0.5〜2.0μmのセラミック層20とを有し、前記セラミック層20は、第1の窒化物からなる層厚0.1〜0.5μmの外側表面層21と、第2の窒化物からなる層厚0.1〜0.3μmの内側表面層22と、これらの間に設けられた炭窒化物からなる層厚0.3〜1.2μmの中間層23とを備える被覆切削インサート、及びそのような被覆切削インサートを具備する被覆工具である。
【選択図】図1

Description

本発明は、難切削性のステンレス鋼等からなる部品の加工に有用な被覆切削インサート、及びそのような被覆切削インサートを備えた切削工具に関する。
従来より、金属や合金からなる部品の加工に用いる切削工具の切削インサートとして、超硬合金やサーメット等の硬質材料からなる基体の表面に、耐磨耗性や靭性等の諸特性の向上等を目的として単層又は多層のセラミックからなる被覆層を設けたものが知られている。
例えば、特許文献1には、サーメット等からなる基体に、圧縮応力が付与された所定の硬度及び厚みを有するセラミック層を被覆した被覆切削インサートが記載されている。特許文献2には、サーメット等からなる基体の表面に、CVD法(化学蒸着法)により窒化チタン等からなるセラミック層を設けた被覆切削インサートが記載されている。特許文献3には、超硬合金からなる基体の表面に、窒化チタン等の化合物からなる0.05〜3μmのセラミック層を設けた被覆切削インサートが記載されている。特許文献4には、基体表面に、CVD(化学蒸着法)による炭窒化チタンからなる内層と、PVD(物理蒸着法)によりアルミニウム化合物からなる最外層とからなる被覆層を設けた被覆切削インサートが記載されている。特許文献5には、基体の表面に、窒化チタン等からなる内層と、アルミナを含み、逃げ面側の厚みを掬い面側より薄くした外層とからなる被覆層を設けた被覆切削インサートが記載されている。
一方、近時、難切削性のステンレス鋼や合金鋼等からなる部品を高速かつ高精度で加工することができる被覆切削インサートのニーズがある。このような被覆切削インサートにおいては、一段と厳しい耐磨耗性が要求されるうえ、ステンレス鋼等の被覆層への溶着を抑え、被覆層を基体からより剥離し難くすることが重要となる。しかしながら、上述したような従来の被覆切削インサートでは、耐磨耗性が不十分であったり、ステンレス鋼等の被削材が被覆層に溶着しやすく、そのため被覆層が剥がれやすい等の問題があり、未だそのような要求特性を十分に備えたものは得られていないのが実状である。
特開平9−234606号公報 特表平11−511078号公報 特開2003−251503号公報 特開2005−297143号公報 特開2007−181896号公報
本発明は、上記従来技術の課題に対処してなされたものであり、難切削性のステンレス鋼や合金鋼等からなる部品であっても高速かつ高精度で加工することができる被覆切削インサート、及びそのような被覆切削インサートを備えた切削工具を提供することを目的とする。
(1)請求項1に記載の発明(被覆切削インサート)は、硬質材料からなる基体と、前記基体上に形成された層厚0.5〜2.0μmのセラミック層とを有し、前記セラミック層は、第1の窒化物からなる層厚0.1〜0.5μmの外側表面層と、第2の窒化物からなる層厚0.1〜0.3μmの内側表面層と、これらの間に設けられた炭窒化物からなる層厚0.3〜1.2μmの中間層とを備えることを特徴とする。
本発明では、基体上に、層厚0.5〜2.0μmで、かつ第1の窒化物からなる層厚0.1〜0.5μmの外側表面層と、第2の窒化物からなる層厚0.1〜0.3μmの内側表面層と、これらの間に設けられた炭窒化物からなる層厚0.3〜1.2μmの中間層とを備えるセラミック層が設けられているので、ステンレス鋼や合金鋼等の難切削性の被削材の被覆切削インサートとして要求される十分な耐摩耗性を有することができる。また、被削材の溶着が抑制され、セラミック層の基体に対する密着性(耐剥離性)を高めることができる。したがって、難切削性のステンレス鋼や合金鋼等からなる部品であっても高速かつ高精度で加工することが可能となる。
(2)請求項2に記載の発明は、前記基体の切刃部にホーニング加工が施されていない、請求項1に記載の被覆切削インサートである。「ホーニング加工」とは、掬い面と逃げ面が交わる稜線部を例えば面取り加工する角度ホーニングや、R加工するRホーニング加工のことである。
本発明の被覆切削インサートは、切刃部にホーニング加工が施されていないものであっても、セラミック膜が剥離し難く所望の耐摩耗性が発揮される為、難切削性のステンレス鋼や合金鋼等からなる部品に対し、高速かつ高精度の加工を行うことができる。
(3)請求項3に記載の発明は、前記セラミック層の自己破壊による最大剥離長(L)が、4μm未満である、請求項1又は2に記載の被覆切削インサートである。「自己破壊」とは、セラミック層を被覆した後、該セラミック層に機械的な負荷、例えば切削インサートとしての使用等が印加されなくても、セラミック層が剥離してしまう現象である。原因としてセラミック層に生じた残留応力等が挙げられる。
本発明では、セラミック層の自己破壊による最大剥離長(L)が4μm未満である。4μm未満の微小な自己破壊であれば耐摩耗性、耐剥離性を悪化させることはなく、難切削性のステンレス鋼や合金鋼等からなる部品に対し、より信頼性の高い加工が可能となる。
ここで、自己破壊による最大剥離長(L)とは、自己破壊によって生じた剥離箇所における剥離長(剥離箇所に外接する円の直径)のうち最大のものをいう。この最大剥離長(L)は、被覆切削インサートの切刃部の掬い面又は逃げ面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察することにより求められる。
(4)請求項4に記載の発明は、前記基体は、Al、Si、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWの化合物から選ばれる少なくとも1種の硬質成分を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被覆切削コンサートである。
本発明は、好ましい基体の含有成分を例示したものであり、セラミック層の基体に対する耐剥離性をさらに良好なものとすることができる。
(5)請求項5に記載の発明は、前記基体(1)は、超硬合金、サーメット、高速度鋼又はセラミックからなる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被覆切削コンサートである。
本発明は、好ましい基体の構成材料を例示したものであり、セラミック層の基体に対する耐剥離性をさらに良好なものとすることができる。
(6)請求項6に記載の発明は、前記外側表面層及び内側表面層は、それぞれTiの窒化物を含有し、前記中間層は、Tiの炭窒化物を含有している、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被覆切削インサートである。
本発明は、セラミック層を構成する外側表面層、内側表面層及び中間層の好ましい構成材料を例示したものである。外側表面層及び内側表面層にそれぞれTiの窒化物を含有させ、かつ中間層にTiの炭窒化物を含有させることによって、セラミック層の耐摩耗性及び基体に対する耐剥離性をより向上させることができ、また、被削材のセラミック層への溶着をより効果的に抑制することができる。
(7)請求項7に記載の発明は、前記基体の熱膨張係数(α)と前記セラミック層の熱膨張係数(β)との比(α)/(β)が1.0〜2.8である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の被覆切削インサートである。
本発明では、前記基体の熱膨張係数(α)と前記セラミック層の熱膨張係数(β)との比(α)/(β)が1.0〜2.8であるので、製造時にセラミック層と基体との界面に大きな熱応力が発生することがなくなり、かかる熱応力に起因するセラミック層の剥離を抑制することができる。
(8)請求項8に記載の発明は、前記基体表面の炭素量が12質量%以下で、鉄族金属量が3質量%以上である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の被覆切削インサートである。
本発明では、基体表面の炭素量が12質量%以下で、鉄族金属量が3質量%以上であるので、セラミック層の基体に対する耐剥離性をより向上させることができる。
(9)請求項9に記載の発明(切削工具)は、請求項1乃至8のいずれか1項記載の被覆切削インサートを具備することを特徴とする。
本発明の切削工具は、耐摩耗性、耐剥離性に優れ、かつ被削材の溶着し難いセラミック層を有する被覆切削インサートを具備することができる。したがって、難切削性のステンレス鋼や合金鋼等からなる部品に対し、高速かつ高精度の加工を行うことができる。
本発明の被覆切削インサート及び切削工具によれば、難切削性のステンレス鋼や合金鋼等からなる部品であっても、高速かつ高精度で加工することができる。
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。なお、説明は図面に基づいて行うが、それらの図面は単に図解のために提供されるものであって、本発明はそれらの図面により何ら限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なることに留意すべきである。さらに、以下の説明において、同一もしくは略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は本発明の一実施形態に係る被覆切削インサートの要部を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の被覆切削インサートは、基体10と、この基体10上に形成されたセラミック層20とを備えている。なお、この被覆切削インサートは、例えばドリル加工用、エンドミル加工用、フライス加工用、旋削加工用、メタルソー加工用、歯切工具加工用、リーマ加工用、タップ加工用、クランクシャフトのピンミーリング加工用等として使用される。また、図示は省略したが、この被覆切削インサートはホルダー等に取り付けられ、切削工具として使用される。
まず、基体10について説明する。基体10を構成する材料は、特に限定されることはなく、従来より被覆切削インサートの基体材料として知られているもののなかから任意に選択して使用することができる。具体的には、例えば、超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミック(炭化チタン(TiC)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、これらの混合体等)等が挙げられる。セラミック層20との密着性、化学的親和性及び基材の物理特性より、Al、Si、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWの化合物から選ばれる少なくとも1種の硬質成分を含有するものが基体材料として好適である。鉄族元素(Fe、CoおよびNi)の少なくとも1種を含む炭化タングステン(WC)基超硬合金、鉄族元素(Fe、CoおよびNi)の少なくとも1種を含むTiN等のチタン化合物基サーメット、アルミニウム化合物(AlN、Al等)及びシリコン化合物(SiC、Si等)から選ばれる少なくとも1種を主成分(好ましくは60質量%以上含有)とするセラミックは、基体材料として特に好適である。
また、セラミック層20との密着性を高め、セラミック層20が基体10から剥離し難くするためには、基体10は、表面の炭素量が12質量%以下であることが好ましく、また、表面の鉄族金属量が3質量%以上であることが好ましい。表面の炭素量が12質量%以下で、かつ鉄族金属量が3質量%以上であると、より好ましい。基体10表面の炭素量は10質量%以下であることがより好ましく、また、鉄族金属量は3〜10質量%であることがより好ましい。なお、基体10表面の炭素量および鉄族金属量は、SEMに付属のエネルギー分散型X線装置により測定することができる。
基体10は、その表面が改質されていてもよい。例えば超硬合金からなる場合、その表面に脱β層が形成されていてもよく、また、サーメットからなる場合、表面硬化層が形成されていてもよい。
また、基体10は、少なくとも1つの掬い面11と少なくとも1つの逃げ面12を有する切刃部14を備えている。この切刃部14にはホーニング加工が施されていてもよいが、ステンレス鋼等の被削材を高精度に切削加工するためにはホーニング加工は施されていないことが好ましい。通常、ホーニング加工が施されていないと、セラミック層20は基体10から自己破壊を含め剥離しやすいが、本実施形態ではセラミック層20と基体10との密着性が良好であるため、ホーニング加工が施されていなくても、セラミック層20が基体10から容易に剥離することはない。
次に、セラミック層20について説明する。セラミック層20は、外側表面層21と、内側表面層22と、これらの間に設けられた中間層23とを備えている。
セラミック層20は全体の厚みが0.5〜2.0μmであり、好ましくは0.8〜1.5μmである。セラミック層20の全体の厚みが0.5μm未満では、ステンレス鋼や合金鋼等の難切削性の被削材の被覆切削インサートに要求される耐摩耗性を有することができない。逆に2.0μmを超えると、耐摩耗性はさほど変わらず、基体からセラミック層が剥離しやすくなる。なお、セラミック層の厚み、および次述する外側表面層21、内側表面層22、中間層23等の厚みは、例えば切刃部14をセラミック層20の厚み方向に切断し、その断面をSEMを用いて観察することにより測定することができる。
セラミック層20は、切刃部14の掬い面11又は逃げ面12においてSEMで観察される自己破壊による最大剥離長(L)が、4μm未満であることが好ましく、2μm未満であることがより好ましい。最大剥離長(L)が4μm以上では、セラミック層20の基体10に対する密着性が不十分で、セラミック膜が剥離しやすく、ステンレス鋼や合金鋼等の難切削性の被削材を高速かつ高精度で加工することが困難になる。
外側表面層21は、セラミック層20の外側表面を構成する層であり、主として、被削材の溶着を抑制する作用を有する。また、内側表面層22は、セラミック層20の内側表面を構成する層であり、主として、セラミック層20の基体10に対する密着性を向上させる作用を有する。さらに、これらの外側表面層21と内側表面層22知との間に設けられる中間層23は、主として、セラミック層20に優れた耐摩耗性を付与する作用を有する。
外側表面層21および内側表面層22は、いずれも窒化物で構成される。窒化物の例としては、例えばTiN、HfN、CrN、VN、NbN,TaN、MoN、WN、AlN、ZrN等が 挙げられる。ここで、これらの化合物は、各元素の原子比が等比に限定されるものではなく、従来より知られる原子比を任意に選択することができる。外側表面層21を構成する窒化物(第1の窒化物)および内側表面層22を構成する窒化物(第2の窒化物)は、同じであっても異なっていてもよい。本発明においては、外側表面層21も内側表面層22もいずれも窒化物として少なくともTiNを含んでいることが好ましく、実質的にTiNのみで構成されることがより好ましい。
また、外側表面層21および内側表面層22の厚みは、外側表面層21が0.1〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmであり、内側表面層22が0.1〜0.3μm、好ましくは0.1〜0.2μmである。外側表面層21の層厚が0.1μm未満では、被削材の溶着を抑制する効果が小さく、逆に外側表面層21の層厚が0.5μmを超えると、被削材の溶着を抑制する効果はさほど変わらず、層剥離が生じやすくなる。
また、内側表面層22の層厚が0.1μmでは、セラミック層20の基体10に対する密着性を向上させることができず、逆に内側表面層22の層厚が0.3μmを超えても、基体に対する密着性改善効果はさほど変わらず、非経済的である。また、層形成に要する時間が長くなり、製造効率も低下する。
一方、中間層23は、炭窒化物で構成される。炭窒化物の例としては、例えばTiCN、TiSiCN、TiAlCN、HfCN、ZrCN、AlCN、NbCN、TaCN、MoCN、WCN等が挙げられる。ここで、これらの化合物は、各元素の原子比が等比に限定されるものではなく、従来より知られる原子比を任意に選択することができる。本発明においては、中間層23は炭窒化物として少なくともTiCNを含んでいることが好ましく、実質的にTiCNのみで構成されることがより好ましい。
また、中間層23は、厚みが0.3〜1.2μmであり、好ましくは0.5〜1.0μmである。中間層23の層厚が0.3μm未満では、所要の耐摩耗性が得られず、逆に1.2μmを超えても、耐摩耗性はさほど変わらず、非経済的であり、また、層形成に要する時間が長くなり、製造効率も低下する。さらに、層剥離も生じやすくなる。
なお、上記要件を満足する限り、外側表面層21と内側表面層22との間には、中間層23以外の、少なくとも1層の他の中間層が設けられていてもよい。
上記外側表面層21、内側表面層22、中間層23等は、CVD法、PVD法、スパッタリング法等の公知の成膜法により形成することができ、それぞれの層厚は、成膜時間等を調節することにより制御することができる。
本実施形態において、基体10の熱膨張係数(α)とセラミック層20の熱膨張係数(β)との比(α)/(β)が1.0〜2.8であることが好ましい。これにより、製造時にセラミック層20と基体10との界面に発生する熱応力を低減し、かかる熱応力に起因するセラミック層20の剥離を抑制することができる。
すなわち、基体10の熱膨張係数(α)とセラミック層20の熱膨張係数(β)が同じ、つまり、熱膨張係数比(α)/(β)が1.0であると、高温下でセラミック層20を成膜後、室温まで冷却しても、セラミック層20と基体10との界面に熱応力が発生することはない。しかし、基体10の熱膨張係数(α)がセラミック層20の熱膨張係数(β)より小さい、つまり熱膨張係数比(α)/(β)が1.0未満であると、製造時、セラミック層20の熱収縮が基体10の熱収縮より大きくなり、セラミック層20と基体10との界面に、引張りの熱応力が生じ、層剥離が生じやすくなる。一方、基体10の熱膨張係数(α)がセラミック層20の熱膨張係数(β)より大きい、つまり熱膨張係数比(α)/(β)が1.0を超えると、セラミック層20の熱収縮が基体10の熱収縮より小さくなり、セラミック層20と基体10との界面に、圧縮の熱応力が生じる。引張りの熱応力も圧縮の熱応力もいずれも層剥離の原因となるが、引張りの熱応力は圧縮の熱応力に比べ、より層剥離が生じやすい。但し、圧縮の熱応力であっても、あまり大きくなると層剥離が生じやすくなる。熱膨張係数比(α)/(β)を1.0〜2.8の範囲とすることにより、このような引張りの熱応力に起因する層剥離も圧縮の熱応力に起因する層剥離もいずれも十分に抑制することができる。
本実施形態の被覆切削インサートは、基体10上に、耐摩耗性、耐剥離性に優れ、かつ被削材の溶着性の低いセラミック層20が形成されているため、難切削性のステンレス鋼や合金鋼等からなる部品であっても、高速かつ高精度で加工することができる。
なお、本発明は以上説明した実施の形態の記載内容に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1
ISO規格DCGT11T304形状の日本特殊陶業(株)製の超硬チップKM3基体上に、PVD法により、0.1μm厚のTiN層、0.3μm厚のTiCN層及び0.1μm厚のTiN層を順に形成して、0.5μm厚のセラミック層が被覆された被覆切削インサートを作製した。具体的には、コーティングチャンバー内を1.3×10−3Paまで減圧した後、基体をヒータにて550℃まで昇温し、基体に800V、100Aの直流電流を30〜80秒間印加して、基体表面を水素エッチングでクリーニングした。次に、Tiターゲットに50〜100Aの直流電流を印加してアーク放電させ、次いで、基体に対するバイアス電圧を100Vに調整し、その状態で高純度窒素ガスおよび高純度アセチレンガスを導入し、TiN、TiCN及びTiNの順に成膜した。
実施例2〜14、比較例1〜10
基体の材質及び/又はセラミック層の成膜条件を種々変更した以外は実施例1と同様にして、表1および表2に示すような構成の被覆切削インサートを作製した。なお、実施例6、7、13では基体として日本特殊陶業(株)製のサーメットチップC7Xを、実施例8では基体として日本特殊陶業(株)製のアルミナセラミックチップHC1を、実施例9では基体として日本特殊陶業(株)製の炭化チタンアルミナチップHC2を、実施例10では基体として日本特殊陶業(株)製の窒化珪素セラミックチップSX2を、実施例11では基体として日本特殊陶業(株)製サイアロンセラミックチップSX9を、実施例12では基体としてJIS G 4403に基づく高速度鋼SKH51材をそれぞれ用い、それ以外の実施例及び比較例ではいずれも実施例と同じ超硬基体を用いた。
上記各実施例および各比較例で得られた被覆切削インサートの切刃部の掬い面をSEM(2000倍)で観察し、自己破壊によるセラミック層剥離の有無を調べるとともに、剥離が観察されたものについて、剥離箇所の剥離長を測定し、その最大値を求めた。
また、被覆切削インサートをセラミック層の厚さ方向に切断し、その断面をSEM(10000倍)で観察し、セラミック層及びセラミック層を構成する各層の厚みを測定した。
さらに、被覆切削インサートを切削工具に取り付け、合金鋼からなる被削材に対し下記の条件で切削加工を行い、逃げ面摩耗VBを評価した。
[切削条件]
被削材:JIS−SCM435、16mmφ
切削速度:80m/min
切り込み深さ:0.25mm
切削送り:0.01mm/rev
切削油使用
加工距離:4.2km
これらの結果を表1および表2に併せ示す。なお、表1および表2には、さらに、下記に示す方法で測定した、セラミック層の熱膨張係数(α)と基体(1)の熱膨張係数(β)との比(α)/(β)、並びに、基体表面の炭素量及び鉄族金属量も併せ示した。
[熱膨張係数比(α)/(β)]
切削チップとは別に5mm×5mm×10mmの焼結体からなる試料を作製し、この試料について、JIS R 1618に基づき、アルゴンガス中で室温から1000℃までの熱膨張係数を測定し、その平均値を算出し、基体の熱膨張係数(β)とした。また、セラミック層の熱膨張係数(α)は炭窒化チタンの理論物性値8.5×10-6/Kとした。これらの測定値から、熱膨張係数比(α)/(β)を算出した。
[基体表面の炭素量及び鉄族金属量]
セラミック層の形成に先だって、基体表面における炭素量及び鉄族金属量を、SEMに付属したエネルギー分散型X線装置により測定した。
Figure 2010089219
Figure 2010089219
表1及び表2から明らかなように、本発明に係る、第1の窒化物からなる層厚0.1〜0.5μmの外側表面層と、第2の窒化物からなる層厚0.1〜0.3μmの内側表面層と、これらの間に設けられた炭窒化物からなる層厚0.3〜1.2μmの中間層とを備え、全体の厚さが0.5〜2.0μmのセラミック層を有する被覆切削インサートでは、被削材の溶着が全く見られないうえ、逃げ面摩耗VBも小さく、良好な切削性能を有していた。特に、自己破壊による最大剥離長(L)が4μm未満で、熱膨張係数比(α)/(β)が1.0〜2.8で、基体表面の炭素量が12質量%以下で、かつ同鉄族金属量が3質量%以上である実施例1〜6では、逃げ面摩耗VBがより小さく、より良好な切削性能を有していた。これに対し、窒化物からなる外側表面層、同内側表面層及び炭窒化物からなる中間層のうち少なくとも一層が設けられていないセラミック層を備えた比較例1、2、4〜10では、被削材の溶着が認められたり、自己破壊による最大剥離長(L)が非常に大きい等、実用上の問題を有していた。また、セラミック層が窒化物からなる外側表面層、同内側表面層及び炭窒化物からなる中間層の全てを備えているものの各層の層厚及び総層厚が前記範囲に満たない比較例3においても、逃げ面摩耗VBがやや不十分であった。
本発明の一実施形態に係る被覆切削インサートの要部を示す断面図である。
符号の説明
10…基体、11…掬い面、12…逃げ面、14…切刃部、20…セラミック層、21…外側表面層、22…内側表面層、23…中間層。

Claims (9)

  1. 硬質材料からなる基体と、
    前記基体上に形成された層厚0.5〜2.0μmのセラミック層とを有し、
    前記セラミック層は、第1の窒化物からなる層厚0.1〜0.5μmの外側表面層と、第2の窒化物からなる層厚0.1〜0.3μmの内側表面層と、これらの間に設けられた炭窒化物からなる層厚0.3〜1.2μmの中間層とを備えることを特徴とする被覆切削インサート。
  2. 前記基体の切刃部にホーニング加工が施されていないことを特徴とする請求項1記載の被覆切削インサート。
  3. 前記セラミック層の自己破壊による最大剥離長(L)が、4μm未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の被覆切削コンサート。
  4. 前記基体は、Al、Si、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWの化合物から選ばれる少なくとも1種の硬質成分を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の被覆切削コンサート。
  5. 前記基体は、超硬合金、サーメット、高速度鋼又はセラミックからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の被覆切削インサート。
  6. 前記外側表面層及び内側表面層は、それぞれTiの窒化物を含有し、前記中間層は、Tiの炭窒化物を含有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の被覆切削インサート。
  7. 前記基体の熱膨張係数(α)と前記セラミック層の熱膨張係数(β)との比(α)/(β)が1.0〜2.8であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の被覆切削インサート。
  8. 前記基体表面の炭素量が12質量%以下で、鉄族金属量が3質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の被覆切削インサート。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項記載の被覆切削インサートを具備することを特徴とする切削工具。
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