JP2010088343A - 微生物細胞からのプラスミドdna抽出法 - Google Patents

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Abstract

【課題】プラスミドDNAの抽出操作を簡略化し、試薬の使用量を削減し、操作にかかる時間を短縮する方法を提供する。
【解決手段】アルカリ金属水酸化物塩と陰イオン界面活性剤とを含む細胞溶解液によって微生物細胞を溶解し、ライセートを調製する。次に、このライセートをアルカリ土類金属を交換性陽イオンとして保持する陽イオン交換体、および水素イオンを交換性陽イオンとして保持する陽イオン交換体と接触させる。次に、固液分離を行ってプラスミドDNAを含有する溶液を回収する。
【選択図】図2

Description

本発明は、プラスミドDNAを保持する微生物細胞からの、プラスミドDNAの抽出方法に関するものである。
プラスミドDNAは、遺伝子工学実験において、遺伝子のクローニング、遺伝子の増幅、遺伝子にコードされたタンパク質の発現、DNA塩基配列の読みとり、特定のDNA塩基配列に結合する因子の探索、遺伝子導入による細胞の薬剤耐性獲得等の形質転換、遺伝子のノックアウト等、様々な目的に用いられる。
プラスミドDNAは、一般的には大腸菌、枯草菌等の微生物細胞内で複製される。従って、プラスミドDNAを遺伝子工学実験に用いるためには、目的とするプラスミドDNAを微生物に導入したのち培養し、増殖した微生物細胞を回収してプラスミドDNAを抽出する必要がある。そこで、そのための方法が数多く提案されている。
プラスミドDNAの導入対象として大腸菌を用いる場合、代表的な大腸菌からのプラスミドDNA抽出法として、アルカリ−mini prep法が挙げられる。非特許文献1によれば、アルカリ−mini prep法の概略は、次の通りである。
(1)プラスミドDNAを保持する大腸菌培養液を1.5mLのチューブに移して遠心操作を行い、菌体をペレットとして回収する。(2)菌体ペレットに100μLのsolution I[25mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM EDTA、0.9%グルコース]を加えて懸濁する。(3)200μLのsolution II[0.2M NaOH、1% SDS]を加えて菌体を溶解し、タンパク質、核酸を変性状態とする。(4)150μLのsolution III[3M 酢酸カリウム、11.5%酢酸]を加えて溶液の中和とSDSの除去を行う。この操作により、染色体DNA、タンパク質は凝集沈殿物となるが、プラスミドDNAは溶液部分に留まる。(5)凝集沈殿物を遠心分離により溶液から除去し、プラスミドDNAを含む溶液を回収する。(6)得られたプラスミドDNAを含む溶液に対して、フェノール・クロロホルム抽出を行ってタンパク質を除去する。(7)プラスミド溶液の2倍量のエタノールを加えてドライアイス上に5分静置する。(8)遠心操作によってプラスミドDNAの沈殿を得る。(9)得られたプラスミドDNAの沈殿をTE[10mM Tris−HCl pH8.0、1mM EDTA]に溶解して試料とする。
上記のように、アルカリ−mini prep法は操作段階が多く煩雑であり、また有害物質であるフェノール、クロロホルムを使用する必要がある。そこで、操作の簡略化や有害物質の使用量削減を目的として、核酸結合担体を用いたプラスミドDNA抽出法が開示されている。以下に、核酸結合担体を用いたプラスミドDNA抽出法の例を示す。
特許文献1には、「プラスミドDNAを保持する微生物あるいは細胞に、カオトロピック物質を含むpH3〜6の溶解液、有機溶媒からなる抽出液および核酸結合性固相担体を接触させることにより、プラスミドDNAを固相担体上に吸着させ、この固相担体を洗浄し、洗浄した固相担体から溶出液によりプラスミドDNAを溶出させる方法」が開示されている。この方法を前記アルカリ−mini prep法における操作(2)〜(9)に置き換えることにより、操作の簡略化を図るとしている。しかしこの方法で使用されるカオトロピック塩は、多くの場合強力な変性剤であり、人体に有害である。また、同じく有害性のある有機溶媒を使用しなければならない。
特許文献2には、有害物質であるフェノール、クロロホルムを使用することなくプラスミドDNAを抽出する方法が開示されている。すなわち、前記アルカリ−mini prep法における操作(5)を、「A細胞破片および他の粒子を流れの方向に、または試料が流れる方向に見てポア径が小さくなるフィルター層によって除く」工程とし、(6)から(9)を「B該溶出液をその後、低イオン強度または高イオン強度のバッファー溶液中で陰イオン交換体により処理する」工程とすることで、有害物質の使用を避け、操作時間の短縮化を図るとしている。しかしこの方法は、工程中にフィルター層を有する器具を新たに導入する必要があり、コストの上昇を招く。また、アルカリ−mini prep法と比較した場合、操作段階は実質的に減少していない。
上記2つの方法以外にも、核酸結合担体を使用するプラスミド抽出法は数多く開示されているが、核酸結合担体を使用するという原理上、(i)微生物細胞の溶解(ii)プラスミドDNAの担体への結合、(iii)担体の洗浄、(iiii)担体からのプラスミドDNAの溶出、の4操作は必須であり、この操作を省略することはできない。
山本雅編、「実験医学別冊 バイオマニュアルシリーズ1 遺伝子工学の基礎実験」、羊土社、1993、p.19−76 特開平9−327290 特開2001−95572
本発明の目的は、従来の核酸結合担体を用いる方法とは異なるプラスミドDNA抽出法を開発することにより、抽出操作を簡略化し、試薬の使用量を削減し、操作時間を短縮することである。
本発明者は、従来のプラスミドDNA抽出工程を詳細に検討し、これに陽イオン交換体による陽イオン交換作用を応用することで、上記課題を解決するに至った。すなわち、本発明は、下記の構成からなるプラスミドDNAの抽出法である。
第1に、微生物細胞からプラスミドDNAを抽出する方法であって、
工程(1):以下の細胞溶解液Aにより微生物細胞を溶解してライセートを調製する工程。
工程(2):工程(1)において調製したライセートに、以下の陽イオン交換体Bおよび陽イオン交換体Cを接触させる工程。
工程(3):不溶性画分と水層を分離する工程。
細胞溶解液A:アルカリ金属水酸化物塩と、アルキル硫酸塩を除く陰イオン界面活性剤とを含む液。
陽イオン交換体B:交換性陽イオンとしてアルカリ土類金属陽イオンを保持する陽イオン交換体。
陽イオン交換体C:交換性陽イオンとして水素イオンを保持する陽イオン交換体。
以上の工程(1)から工程(3)を含むことを特徴とする微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
第2に、微生物細胞からプラスミドDNAを抽出する方法であって、
工程(1):以下の細胞溶解液Aにより微生物細胞を溶解してライセートを調製する工程。
工程(2):工程(1)において調製したライセートに、以下の陽イオン交換体Bおよび陽イオン交換体Cを接触させる工程。
工程(3):不溶性画分と水層を分離する工程。
細胞溶解液A:水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムからなる群より選択される、1つまたは複数のアルカリ金属水酸化物塩と、アルキル硫酸塩とを含む液。
陽イオン交換体B:カリウム、ルビジウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群より選択される、1つまたは複数の陽イオンを交換性陽イオンとして保持する陽イオン交換体。
陽イオン交換体C:交換性陽イオンとして水素イオンを保持する陽イオン交換体。
以上の工程(1)から工程(3)を含むことを特徴とする微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
第3に、前記第1項または第2項に記載の工程(2)において、ライセートが陽イオン交換体Bへの接触の後に陽イオン交換体Cへ接触することを特徴とする前記第1項または第2項に記載の微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
第4に、前記第1項または第2項に記載の工程(2)において、ライセートが陽イオン交換体Bと陽イオン交換体Cとに同時に接触することを特徴とする前記第1項または第2項に記載の微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
第5に、前記第1項または第2項に記載の工程(2)において、ライセートと陽イオン交換体Bまたは陽イオン交換体Cあるいはその両方との接触が、陽イオン交換体を充填したカラムにより行われることを特徴とする前記第1項乃至第4項のいずれかに記載の微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
第6に、前記第1項から第5項に記載の陽イオン交換体Bまたは陽イオン交換体Cあるいはその両方が、ゼオライトであることを特徴とする前記第1項乃至第5項のいずれかに記載の微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
本発明のプラスミドDNA抽出法は、上記のように(1)微生物細胞を溶解してライセートを調製する工程、(2)ライセートに陽イオン交換体を接触させる工程、(3)不溶性画分と水層を分離する工程、からなる3操作によって微生物材料からプラスミドDNAを取得することができる。本発明によるプラスミドDNA抽出工程を、特許文献1および特許文献2に記載の方法に基づく核酸結合担体を用いたプラスミドDNA抽出法と比較し、図1に示した。本発明のプラスミドDNA抽出法は、プラスミドDNAを含む微生物細胞を溶解しライセートを調製する工程までは、従来法と類似である。しかし、次の工程であるライセートと陽イオン交換体との接触工程において、界面活性剤の除去、タンパク質と染色体DNAの凝集不溶化による除去、脱塩が同時に進行するため、この工程を経るのみでプラスミドDNAを取得することができる。また使用する試薬類は、微生物細胞溶解液および2種の陽イオン交換体のみである。従って、従来の核酸結合担体を用いたプラスミドDNA抽出法と比較した場合、操作の簡略化、試薬使用量の削減が可能となる。また、本発明の方法をプラスミドDNA自動抽出装置に適用すれば、装置の簡略化、運転時間の短縮に貢献することは明らかである。
本発明のプラスミド抽出法は、(1)微生物細胞を溶解してライセートを調製する工程、(2)ライセートに陽イオン交換体を接触させる工程、(3)不溶性画分と水層を分離する工程、を含む。以下に、本発明のプラスミドDNA抽出法を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の方法が対象とするプラスミドDNAは、遺伝子工学に用いるために改良されたプラスミドDNA、および天然に存在するプラスミドDNAを含む。特に遺伝子工学に用いられるプラスミドDNAは、その機能的性格からベクターと称することもある。またその由来からコスミド、バクミドと称することもある。
本発明の方法において、プラスミドDNA抽出の出発材料となる微生物細胞としては、例えばプラスミドDNAを保持する大腸菌が挙げられる。特に、遺伝子工学実験において日常的に用いられる大腸菌K12株およびその誘導体を、プラスミドDNAの導入によって形質転換したものが代表的である。
本発明の方法では、プラスミドDNAを保持する微生物細胞を、既知の培地、例えばSOB、SOC、LB等で8−24時間培養したものを出発材料とする。培養した微生物細胞は、遠心操作等によりペレットとして回収してもよい。回収したペレットは、そのまま工程(1)のライセート調製に供してもよいが、前処理として、ペレットを純水あるいは緩衝液に分散する工程を設けてもよい。この工程は、微生物細胞の破壊反応が速やかかつ均等に進行することを助ける。緩衝液としては、例えば、TE[10mM Tris−HCl pH8.0、1mM ETDA]、非特許文献1に記載のsolution I[25mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM EDTA、0.9%グルコース]が挙げられる。さらに、この工程においてRNase、プロテアーゼの添加を行ってもよい。
工程(1)微生物細胞を溶解し、ライセートを調製する工程
工程(1)では、ペレットまたは分散させた微生物細胞を、細胞溶解液Aを用いて溶解し、ライセートを調製する。この工程で用いる細胞溶解液Aは、アルカリ金属水酸化物塩と、陰イオン界面活性剤とを含む。アルカリ金属水酸化物塩は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムから一つ、または複数選択して使用することができる。細胞溶解液は、DNAを1本鎖に変性させうるpH10〜14の範囲であることが好ましく、これはアルカリ金属水酸化物塩の濃度によって調整することができる。例えば濃度200mMの水酸化ナトリウムを用いる場合、pHは約12.5である。細胞溶解液に含まれる陰イオン界面活性剤は、アルキル硫酸塩を除いた陰イオン界面活性剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、N−ラウロイルサルコシン塩、コール酸塩、デオキシコール酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等から1つ、または複数選択して用いることができる。陰イオン界面活性剤は、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩であることが好ましい。陰イオン界面活性剤の濃度は、0.1〜3%が好適である。
工程(1)の細胞溶解液に、陰イオン界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムに代表されるアルキル硫酸塩が含まれる場合は、前記水酸化物塩は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムから1つ、または複数選択することができる。水酸化カリウム、水酸化ルビジウムは、アルキル硫酸塩と反応して不溶性の沈殿を形成するため、好ましくない。アルキル硫酸塩の濃度は、0.1〜3%が好適である。
工程(2)ライセートを陽イオン交換体と接触させる工程
工程(2)では、工程(1)で調製したライセートを、陽イオン交換体Bおよび、陽イオン交換体Cと接触させる。陽イオン交換体Bが保持する交換性陽イオンは、工程(1)の細胞溶解液Aに含まれる陰イオン界面活性剤の種類によって選択される。すなわち、陰イオン界面活性剤がアルキル硫酸塩を含まない場合は、アルカリ土類金属陽イオンから1つ、または複数選択することができる。陰イオン界面活性剤がアルキル硫酸塩を含む場合は、カリウム、ルビジウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群より1つ、または複数選択することができる。この群から少なくとも1つが選択されている場合、二つめ以降の陽イオンとしてマグネシウムを選択していてもよい。陽イオン交換体Cが保持する交換性陽イオンは水素イオンである。陽イオン交換体は、陽イオン交換樹脂またはゼオライトが好適である。
工程(2)−1 ライセートと陽イオン交換体Bとの接触工程
以下、ライセート中に含まれる陽イオンを陽イオンD、陽イオン交換体Bが保持する交換性陽イオンを陽イオンEと称す。
工程(2)−1では、ライセートと陽イオン交換体Bとの接触により、ライセート中に含まれる陽イオンDが、陽イオン交換体Bが保持する陽イオンEと交換し、ライセートから除去される。同時に、ライセート中に遊離した陽イオンEは、ライセート中の陰イオン界面活性剤と反応し、沈殿を形成する。
この反応のために必要な陽イオン交換体Bの量は、少なくとも工程(1)で用いられる細胞溶解液Aの陰イオン界面活性剤の等量数と等しい量の陽イオンEを供給する必要がある。陽イオン交換体Bが単位量当たり保持する陽イオンEの量、陰イオン界面活性剤の種類、細胞溶解液Aの使用量によって陽イオン交換体Bの必要量は異なるが、例えば陽イオンEを1meq/g保持する陽イオン交換体Bを使用する場合、工程(1)の細胞溶解液Aに含まれる陰イオン界面活性剤が1%デオキシコール酸ナトリウム(分子量414.55)であり、この液1mLを細胞の溶解に用いる場合、数1により、必要量は、少なくとも0.024gであると計算できる。
工程(2)−2 ライセートと陽イオン交換体Cとの接触工程
工程(2)−2では、ライセートと陽イオン交換体Cとの接触により、陽イオンEと交換しきれなかったライセート中に残存する陽イオンD、および陰イオン界面活性剤と反応しなかった陽イオンEが、陽イオン交換体Cが保持する水素イオンと交換し、ライセート中から除去される。同時に、ライセート中に遊離した水素イオンは、ライセート中の水酸化物イオンと反応し、中和が起こる。
この反応のために必要な陽イオン交換体Cの量は、少なくとも工程(1)で用いられる細胞溶解液Aのアルカリ金属水酸化物塩のモル数と等しい量の水素イオンを供給する必要がある。陽イオン交換体Cが単位量当たり保持する水素イオンの量、細胞溶解液Aの使用量、細胞溶解液Aに含まれるアルカリ金属水酸化物塩の濃度によって陽イオン交換体Cの必要量は異なるが、例えば水素イオンを1meq/g保持する陽イオン交換体Cを使用する場合、工程(1)の細胞溶解液Aに含まれるアルカリ金属水酸化物塩が200mMの水酸化ナトリウムであり、この液1mLを細胞の溶解に用いる場合、数2により、必要量は、少なくとも0.2gであると計算できる。
以上の工程により、ライセートからの陰イオン界面活性剤の除去と中和が完了し、変性状態にあった染色体DNAおよびタンパク質は不溶性の凝集物となる。またタンパク質は、陽イオン交換体への吸着反応によっても除去される。この時、プラスミドDNAは溶液中に残存する。
工程(2)において、ライセートを陽イオン交換体Bおよび陽イオン交換体Cと接触させる操作は、同時に行われてもよい。これは、陽イオン交換体Bと陽イオン交換体Cを混合したものを調製し、ライセートに接触させることにより可能である。
さらに、ライセートを陽イオン交換体Bおよび陽イオン交換体Cに同時に接触させる操作は、陽イオンEと水素イオンを同時に保持する陽イオン交換体粒子あるいは陽イオン交換体固体によっても可能である。このような陽イオン交換体は、陽イオンEでイオン交換した陽イオン交換体の交換性陽イオンを、さらに水素イオンで一部のみをイオン交換することにより、またはその逆の順序によるイオン交換により調製することができる。
工程(2)におけるライセートと陽イオン交換体を接触状態におく方法の例として(a)直接添加法、(b)カラム充填法、を挙げることができる。以下、両方法について、工程(3)不溶性画分と水層を分離する工程を含めて説明する。
(a)直接添加法
陽イオン交換体Bと、陽イオン交換体Cとを、工程(1)のライセートが入った容器に添加する方法である。陽イオン交換体Bと、陽イオン交換体Cが別個の陽イオン交換体である場合、前記陽イオン交換体を混合したものを添加してもよい。個別に添加する場合は、まず陽イオン交換体Bを添加し、続いて陽イオン交換体Cを添加することが好ましい。
直接添加法の場合、ライセートと陽イオン交換体との接触後は、工程(3)不溶性画分と水層の分離を、既知の方法、例えば遠心分離法、フィルターによるろ過法により行うことができる。フィルターによるろ過法を適用する場合、核酸を吸着しない、あるいは吸着性の低いものであれば使用可能である。フィルターの材質は、セルロース、コーティングを施したガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン等から選択できる。
(b)カラム充填法
陽イオン交換体Bと、陽イオン交換体Cとを充填したカラムを用いる方法である。陽イオン交換体を充填したカラムは、ライセートを通液する前にあらかじめ超純水で洗浄して平衡化しておくことが好ましい。
陽イオン交換体Bと陽イオン交換体Cが別個の陽イオン交換体である場合、前記陽イオン交換体を混合したものをカラムに充填してもよい。また、陽イオンEと水素イオンを同時に保持する陽イオン交換体粒子あるいは陽イオン交換体固体をカラムに充填してもよい。
陽イオン交換体Bと陽イオン交換体Cが別個の陽イオン交換体であり、これらを混合せずにカラムに充填する場合は、陽イオン交換体Bが、陽イオン交換体Cよりもカラムの通水方向に対して上流に配置されていることが好ましい。これら陽イオン交換体の配置は、連続的であってもよいし、不連続的であってもよい。
陽イオン交換体Bを充填したカラムと、陽イオン交換体Cを充填したカラムを個別に調製し、これらを連結して使用することもできる。この場合、陽イオン交換体Bを充填したカラムが、陽イオン交換体Cを充填したカラムよりも通水方向に対して上流に配置されていることが好ましい。
調製された陽イオン交換体充填カラムに対してライセートを通液すると、カラムを通過する過程でライセート中の陽イオンDと陽イオン交換体中の陽イオンEが交換し、陰イオン界面活性剤の除去とライセートの中和が進行する。この反応に伴い凝集したタンパク質および染色体DNAは陽イオン交換体に捕捉され、プラスミドDNAが非吸着画分として溶出される。通液は、自然落下式、加圧押し出し式、減圧吸引式、遠心機を用いたスピンカラム式等により実施できる。
カラム充填法の場合、工程(3)の不溶性画分と水層の分離は、カラム通過によって行われる。すなわち、不溶性画分はカラム中の陽イオン交換体に捕捉され、またカラムの最終フィルターに捕捉されることにより除去される。
以上の工程(1)から工程(3)を含む方法で回収されたプラスミドDNAは、フェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿、ゲルろ過等の精製、濃縮、脱塩操作を追加することなしに、制限酵素処理、PCR等の各種酵素処理に使用可能である。
以下、調製例および実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(定義1)
陽イオンの量を示す等量とは、陽イオンのモル数にその陽イオンの価数を乗じた値を指し、eqで表す。
(定義2)
カリウム型ゼオライトとは、交換性陽イオンとしてカリウムイオンを保持しているゼオライトを指す。同様に、マグネシウム型ゼオライト、カルシウム型ゼオライト、ストロンチウム型ゼオライト、バリウム型ゼオライト、水素イオン型ゼオライトは、それぞれ、交換性陽イオンとしてマグネシウムイオンを保持しているゼオライト、交換性陽イオンとしてカルシウムイオンを保持しているゼオライト、交換性陽イオンとしてストロンチウムイオンを保持しているゼオライト、交換性陽イオンとしてバリウムイオンを保持しているゼオライト、交換性陽イオンとして水素イオンを保持しているゼオライト、を指す。
陰イオン界面活性剤を除去可能な陽イオンの検討
陰イオン界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムについて、陽イオンとの反応による沈殿除去が可能かを、次の方法により検討した。1%の上記陰イオン界面活性剤1mLに対して、濃度1Mのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩の溶液0.1mLを添加混合し、沈殿生成を目視により確認した。表1に塩溶液の種類、および沈殿生成の有無を示す。なお、実験は室温(20℃)で行った。表1に示されるように、ドデシル硫酸ナトリウムと反応して沈殿を生じる陽イオンはカリウム、ルビジウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムであった。また、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムと反応して沈殿を生じる陽イオンはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムであった。
(調製例1) 交換性陽イオンとしてカリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを保持するゼオライトの調製
交換性陽イオンとしてカリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを保持するゼオライトを、次の方法により調製した。本調製例に用いたゼオライト試料を、表2に示す。天然ゼオライトは粒径が45μm以下となるよう原石を遊星ボールミルにて粉砕し、超純水で十分に洗浄した後乾燥させた。合成ゼオライトは、ナトリウム型のものを入手した。これらのゼオライト50gを、0.1Mの塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム各水溶液1Lに浸漬し、80℃にて16時間放置した。その後、各水溶液を新しく調製したものと交換し、再度80℃にて16時間放置した。この操作を12〜15回繰り返すことにより、イオン交換を行った。イオン交換終了後、各ゼオライトを超純水で十分洗浄した後、乾燥させた。
以上の方法で調製したゼオライトについて、保持する交換性陽イオンの量を、以下の方法により測定した。各ゼオライト試料を約0.5g秤り取り、これを50mLの1M硝酸アンモニウム水溶液に浸漬して80℃にて約16時間保持したのち、遠心操作によってゼオライトと硝酸アンモニウム水溶液を分離した。この操作により、ゼオライト中に保持されていた各陽イオンを硝酸アンモニウムに溶出させた。その後、硝酸アンモニウム水溶液中に含まれる各陽イオンの濃度を、カリウム、マグネシウム、カルシウムは偏光ゼーマン原子吸光分光光度計(日立製作所製Z−6000)にて、ストロンチウム、バリウムは誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所製ICP−7500)にて測定し、元々のゼオライト中の各陽イオンの保持量を算出した。結果を表2に示す。
(調製例2) 水素イオンを保持するゼオライトの調製
水素イオンを保持するゼオライトは、次の方法により調製した。本調製例に用いたゼオライト試料を、表3に示す。天然ゼオライトは粒径が45μm以下となるよう原石を遊星ボールミルにて粉砕し、超純水で十分に洗浄した後乾燥させた。これらのゼオライト50gを、0.1MのHCl水溶液1Lに浸漬して80℃にて16時間放置した。その後、HCl水溶液を新しく調製したものと交換し、再度80℃にて16時間放置した。この操作を13回繰り返すことにより、イオン交換を行った。イオン交換終了後、各ゼオライトを超純水で十分洗浄した後、乾燥させた。
以上の方法で調製したゼオライトが保持する水素イオンの量を、以下の方法により測定した。各ゼオライト試料を約0.5g秤り取り、これに100mLの1M塩化ナトリウム水溶液を加えてスターラーにて撹拌した。これにより、水素イオンを完全に塩化ナトリウム水溶液中に溶出した。この溶液をオートビュレット(メトラートレド製719S Titrino)を用いて0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpH7を終点として滴定し、ゼオライト中の水素イオンの保持量を算出した。結果を表3に示す。
(調製例3) 大腸菌DH5αのpBluescript II SK+による形質転換
大腸菌DH5αのコンピテントセル(TOYOBO製Competent high E.coli DH5α)100μLに対してプラスミドDNA pBluescript II SK+(STRATAGENE製) 1pgを加え、添付の取り扱い説明書に従って形質転換を行い、LB/Ampプレートにて培養した。37℃にて16時間の培養後、単一のコロニーをLB培地25mLに植菌し、37℃にて16時間震とう培養した。培養後、培養液を1.5mLポリプロピレン製チューブに1mLづつ分注し、マイクロ冷却遠心機(KUBOTA製3700)にて12000rpm、1分の遠心を行い、菌体ペレットと培地とに分離した。培地を除去し、得られたポリプロピレン製チューブ入り菌体ペレットを出発材料とし、プラスミドDNA抽出操作を行った。
プラスミドDNAの抽出(カリウム型、ストロンチウム型、バリウム型天然ゼオライト+ドデシル硫酸ナトリウム)
調製例3のポリプロピレン製チューブ入り菌体ペレットを6本用意した。それぞれのチューブに100μLの菌体縣濁液[25mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM EDTA、0.9%グルコース]を加え、ボルテックスミキサーを用いて撹拌した。次に、200μLの細胞溶解液[0.2M NaOH、1%ドデシル硫酸ナトリウム]をそれぞれのチューブに加え、転倒混和して菌体を溶解させ、ライセートを調製した。このライセート入りチューブに、表2に記載のカリウム型島根県産天然ゼオライトW、ストロンチウム型島根県産天然ゼオライトW、バリウム型島根県産天然ゼオライトW、カリウム型島根県産天然ゼオライトO、ストロンチウム型島根県産天然ゼオライトO、バリウム型島根県産天然ゼオライトOをそれぞれ0.2g加えて転倒混和した。次に、表3に記載の水素イオン型島根県産天然ゼオライトIを0.2g加えて転倒混和した。次に、上記混合物をマイクロ冷却遠心機(KUBOTA製3700)にて12000rpm、5分の遠心操作による固液分離を行い、上清を新しい1.5mLポリプロピレン製チューブに回収した。回収した上清10μLを1%アガロースによる電気泳動に供した。泳動終了後、臭化エチジウムで染色し、紫外線照射下で写真撮影を行った。結果を図2に示す。図2から明らかなように、カリウム型、ストロンチウム型、バリウム型のいずれのゼオライトを用いても、プラスミドDNAが抽出された。
プラスミドDNAの抽出(マグネシウム型、カルシウム型、ストロンチウム型、バリウム型天然ゼオライト+デオキシコール酸ナトリウム)
調製例3のポリプロピレン製チューブ入り菌体ペレットを4本用意した。それぞれのチューブに100μLの菌体縣濁液[25mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM EDTA、0.9%グルコース]を加え、ボルテックスミキサーを用いて撹拌した。次に、200μLの細胞溶解液[0.2M NaOH、1%デオキシコール酸ナトリウム]をそれぞれのチューブに加え、転倒混和して菌体を溶解させ、ライセートを調製した。このライセート入りチューブに、表2に記載のマグネシウム型島根県産天然ゼオライトW、カルシウム型島根県産天然ゼオライトW、ストロンチウム型島根県産天然ゼオライトW、バリウム型島根県産天然ゼオライトWを各0.2g加えて転倒混和した。次に、表3に記載の水素イオン型島根県産天然ゼオライトIを各0.2g加えて転倒混和した。次に、上記混合物をマイクロ冷却遠心機にて12000rpm、5分の遠心操作による固液分離を行い、上清部分を新しい1.5mLポリプロピレン製チューブに回収した。回収した上清10μLを1%アガロースによる電気泳動に供した。泳動終了後、臭化エチジウムで染色し、紫外線照射下で写真撮影を行った。結果を図3に示す。図3から明らかなように、マグネシウム型、カルシウム型、ストロンチウム型、バリウム型のいずれのゼオライトを用いても、プラスミドDNAが抽出された。
水素イオン型天然ゼオライトの種類の影響
調製例2のポリプロピレン製チューブ入り菌体ペレットを3本用意した。それぞれのチューブに100μLの菌体縣濁液[25mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM EDTA、0.9%グルコース]を加え、ボルテックスミキサーを用いて撹拌した。この溶液に200μLの細胞溶解液[0.2M NaOH、1%ドデシル硫酸ナトリウム]を加え、転倒混和して菌体を溶解させ、ライセートを調製した。この細胞溶解液に、表2に記載のバリウム型島根県産天然ゼオライトW 0.2gを加えて転倒混和した。次に、表3に記載の水素イオン型島根県産天然ゼオライトW、水素イオン型島根県産天然ゼオライトO、水素イオン型島根県産天然ゼオライトIを各0.2g加えて転倒混和した。次に、上記混合物をマイクロ冷却遠心機にて12000rpm、5分の遠心操作による固液分離を行い、上清部分を新しい1.5mLポリプロピレン製チューブに回収した。回収した上清10μLを1%アガロースによる電気泳動に供した。泳動終了後、臭化エチジウムで染色し、紫外線照射下で写真撮影を行った。結果を図4に示す。図4から明らかなように、水素イオン型島根県産天然ゼオライトW、水素イオン型島根県産天然ゼオライトO、水素イオン型島根県産天然ゼオライトIのいずれのゼオライトを用いても、プラスミドDNAが抽出された。
プラスミドDNAの抽出(カリウム型、ストロンチウム型、バリウム型合成ゼオライトA−4+ドデシル硫酸ナトリウム)
調製例3のポリプロピレン製チューブ入り菌体ペレットを3本用意した。それぞれのチューブに100μLの菌体縣濁液[25mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM EDTA、0.9%グルコース]を加え、ボルテックスミキサーを用いて撹拌した。次に、200μLの細胞溶解液[0.2M NaOH、1%ドデシル硫酸ナトリウム]をそれぞれのチューブに加え、転倒混和して菌体を溶解させ、ライセートを調製した。このライセート入りチューブに、表2に記載のカリウム型合成ゼオライトA−4、ストロンチウム型合成ゼオライトA−4、バリウム型合成ゼオライトA−4をそれぞれ0.2g加えて転倒混和した。次に、表3に記載の水素イオン型島根県産天然ゼオライトIを0.2g加えて転倒混和した。次に、上記混合物をマイクロ冷却遠心機(KUBOTA製3700)にて12000rpm、5分の遠心操作による固液分離を行い、上清を新しい1.5mLポリプロピレン製チューブに回収した。回収した上清10μLを1%アガロースによる電気泳動に供した。泳動終了後、臭化エチジウムで染色し、紫外線照射下で写真撮影を行った。結果を図5に示す。図5から明らかなように、カリウム型、ストロンチウム型、バリウム型のいずれのゼオライトを用いても、プラスミドDNAが抽出された。
プラスミドDNAの抽出(ライセートへのゼオライト添加法の比較)
(1)調製例3のポリプロピレン製チューブ入り菌体ペレットを4本用意し、1〜4の番号を付した。それぞれのチューブに100μLの菌体縣濁液[25mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM EDTA、0.9%グルコース]を加え、ボルテックスミキサーを用いて撹拌した。次に、200μLの細胞溶解液[0.2M NaOH、1%ドデシル硫酸ナトリウム]をそれぞれのチューブに加え、転倒混和して菌体を溶解させ、ライセートを調製した。このライセート入りチューブ1〜4に、表4に記載のゼオライト1およびゼオライト2をあらかじめ等量混合したものをそれぞれ0.4g加えて転倒混和した。次に、上記1〜4のチューブをマイクロ冷却遠心機にて12000rpm、5分の遠心操作による固液分離を行い、上清部分を新しい1.5mLポリプロピレン製チューブに回収した。
(2)調製例3のポリプロピレン製チューブ入り菌体ペレットを4本用意し、5〜8の番号を付した。それぞれのチューブに100μLの菌体縣濁液[25mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM EDTA、0.9%グルコース]を加え、ボルテックスミキサーを用いて撹拌した。次に、200μLの細胞溶解液[0.2M NaOH、1%ドデシル硫酸ナトリウム]をそれぞれのチューブに加え、転倒混和することにより菌体を溶解させ、ライセートを調製した。このライセート入りチューブ5〜8に、表4に記載のゼオライト1をそれぞれ0.2g加えて転倒混和した。次に、表4に記載のゼオライト2を各0.2g加えて転倒混和した。次に、上記5〜8のチューブをマイクロ冷却遠心機にて12000rpm、5分の遠心操作による固液分離を行い、上清部分を新しい1.5mLポリプロピレン製チューブに回収した。
(3)前記(1)(2)で回収した上清10μLを1%アガロースによる電気泳動に供した。泳動終了後、臭化エチジウムで染色し、紫外線照射下で写真撮影を行った。結果を図6に示す。図6から明らかなように、いずれのゼオライトの組み合わせにおいてもプラスミドDNAが抽出された。また、ゼオライト1とゼオライト2を混合したものを添加した場合と、ゼオライト1添加後にゼオライト2を添加した場合の双方においてプラスミドDNAが抽出された。
プラスミドDNAの制限酵素処理
本発明の方法で抽出したプラスミドDNAが制限酵素による消化処理に適用できるかを、次の方法により確認した。消化処理に使用した制限酵素および反応溶液組成を表5に示す。消化処理は、取り扱い説明書に記載の条件に従い行った。実施例4のバリウム型島根県産天然ゼオライトWと水素イオン型島根県産天然ゼオライトWの組み合わせによって抽出されたプラスミドDNA、およびバリウム型島根県産天然ゼオライトWと水素イオン型島根県産天然ゼオライトOの組み合わせによって抽出されたプラスミドDNAを基質とし、これらプラスミドDNA溶液15μLに制限酵素2〜10U、反応バッファー、超純水を添加して合計を20μLとした。この反応液を、37℃1時間で反応させた。反応終了後、全量を1%アガロースによる電気泳動に供した。泳動終了後、臭化エチジウムで染色し、紫外線照射下で写真撮影を行った。結果を図7に示す。図中のAがバリウム型島根県産天然ゼオライトWと水素イオン型島根県産天然ゼオライトWの組み合わせによって抽出されたプラスミドDNA、Bがバリウム型島根県産天然ゼオライトWと水素イオン型島根県産天然ゼオライトOの組み合わせによって抽出されたプラスミドDNAの処理結果である。レーン7に示す未処理プラスミドDNAは、スーパーコイル構造をとるために早く泳動される。一方、レーン1〜6の制限酵素によって消化されたプラスミドDNAはリニア型となるため、遅く泳動されていることが分かる。このように、全ての制限酵素において消化が確認され、本発明による方法で分離したプラスミドDNAは、直ちに制限酵素消化処理に適用可能であることが示された。
プラスミドDNAを鋳型としたPCR反応
本発明の方法で抽出したプラスミドDNAがPCR反応に適用できるかを、次の方法により確認した。PCR反応液は、HybriPol DNAポリメラーゼ(BIOLINE製)1U、DNAポリメラーゼに添付の10×リアクションバッファー2μL、2.5mM MgCl、10mM dNTP Mix、M13プライマー(tgtaaaacgacggccagt)10pmol、Reverseプライマー(ggaaacagctatgaccatg)10pmol、鋳型プラスミドDNA 100pgとし、超純水で計20μLとした。鋳型プラスミドDNAは、実施例4においてバリウム型島根県産天然ゼオライトWと水素イオン型島根県産天然ゼオライトWの組み合わせによって抽出されたプラスミドDNA、バリウム型島根県産天然ゼオライトWと水素イオン型島根県産天然ゼオライトOの組み合わせによって抽出されたプラスミドDNA、バリウム型島根県産天然ゼオライトWと水素イオン型島根県産天然ゼオライトIの組み合わせによって抽出されたプラスミドDNAとした。この反応溶液をサーマルサイクラー(アステック製プログラムテンプコントロールシステムPC−812)にセットし、温度プログラム94℃15秒、55℃10秒、72℃60秒を1サイクルとして35サイクルの増幅を行った。増幅後、反応液10μLを1%アガロースによる電気泳動に供した。泳動終了後、臭化エチジウムで染色し、紫外線照射下で写真撮影を行った。結果を図8に示す。図8から明らかなように、本発明の方法で分離したプラスミドDNAを鋳型とした場合も従来法と同様にPCR産物の増幅が見られ、直ちにPCR反応に適用可能であることが示された。
核酸結合担体を用いるプラスミドDNA抽出法(従来法)と本発明のプラスミドDNA抽出法の工程の比較。 実施例2において抽出されたプラスミドDNAのアガロース電気泳動結果。 実施例3において抽出されたプラスミドDNAのアガロース電気泳動結果。 実施例4において抽出されたプラスミドDNAのアガロース電気泳動結果。 実施例5において抽出されたプラスミドDNAのアガロース電気泳動結果。 実施例6において抽出されたプラスミドDNAのアガロース電気泳動結果。 実施例7において得られた、プラスミドDNAの制限酵素処理結果。 実施例8において得られた、プラスミドDNAのPCR反応結果。

Claims (6)

  1. 微生物細胞からプラスミドDNAを抽出する方法であって、
    工程(1):以下の細胞溶解液Aにより微生物細胞を溶解してライセートを調製する工程。
    工程(2):工程(1)において調製したライセートに、以下の陽イオン交換体Bおよび陽イオン交換体Cを接触させる工程。
    工程(3):不溶性画分と水層を分離する工程。
    細胞溶解液A:アルカリ金属水酸化物塩と、アルキル硫酸塩を除く陰イオン界面活性剤とを含む液。
    陽イオン交換体B:交換性陽イオンとしてアルカリ土類金属陽イオンを保持する陽イオン交換体。
    陽イオン交換体C:交換性陽イオンとして水素イオンを保持する陽イオン交換体。
    以上の工程(1)から工程(3)を含むことを特徴とする微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
  2. 微生物細胞からプラスミドDNAを抽出する方法であって、
    工程(1):以下の細胞溶解液Aにより微生物細胞を溶解してライセートを調製する工程。
    工程(2):工程(1)において調製したライセートに、以下の陽イオン交換体Bおよび陽イオン交換体Cを接触させる工程。
    工程(3):不溶性画分と水層を分離する工程。
    細胞溶解液A:水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムからなる群より選択される、1つまたは複数のアルカリ金属水酸化物塩と、アルキル硫酸塩とを含む液。
    陽イオン交換体B:カリウム、ルビジウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群より選択される、1つまたは複数の陽イオンを交換性陽イオンとして保持する陽イオン交換体。
    陽イオン交換体C:交換性陽イオンとして水素イオンを保持する陽イオン交換体。
    以上の工程(1)から工程(3)を含むことを特徴とする微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の工程(2)において、ライセートが陽イオン交換体Bへの接触の後に陽イオン交換体Cへ接触することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
  4. 請求項1または請求項2に記載の工程(2)において、ライセートが陽イオン交換体Bと陽イオン交換体Cとに同時に接触することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
  5. 請求項1または請求項2に記載の工程(2)において、ライセートと陽イオン交換体Bまたは陽イオン交換体Cあるいはその両方との接触が、陽イオン交換体を充填したカラムにより行われることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
  6. 請求項1乃至請求項5に記載の陽イオン交換体Bまたは陽イオン交換体Cあるいはその両方が、ゼオライトであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の微生物細胞からのプラスミドDNA抽出法。
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