以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明の無線タグ通信装置を物品の持ち出し状況又は返却状況を管理する物品管理システムに適用した例である。
図1は、本実施形態の物品管理システム1において、利用者Mが物品Bを持ち出すときの様子を示す図である。
この図1に示すように、本実施形態の物品管理システム1においては、物品Bを持ち出す又は返却する利用者M(人物)が、無線タグTMを所持(又は付随)する。この例では、無線タグTMは、利用者Mに所持又は付随される名札(あるいはIDカード等でもよい)NCに設けられている。この無線タグTMには、利用者固有のタグID(タグ識別情報)が書き込まれた無線タグ回路素子To−M(詳細は後述)が備えられている。
また、持ち出し対象の物品Bには、無線タグTBが設けられている。この無線タグTBには、当該物品B固有のタグIDが書き込まれた無線タグ回路素子To−B(詳細は後述)が備えられている。
そして、利用者Mが物品Bを持ち出す(又は返却する)ときには、例えば出入口付近の壁WAに備え付けられたリーダ200(無線タグ通信装置)の装置アンテナ10(装置アンテナ手段)を介して、無線タグTBに備えられる無線タグ回路素子To−B(後述の図2参照)の情報の読み取りが行われる。このとき、リーダ200により、装置アンテナ10を介して、無線タグTMに備えられる無線タグ回路素子To−M(後述の図2参照)の情報の読み取りも行われる(詳細は後述)。このリーダ200で読み込まれた情報は、通信回路(ネットワーク)208を経て、サーバ207のデータベースDBに送られる。
図2は、物品管理システム1の全体構成を表すシステム構成図である。
図2において、物品管理システム1は、前述したように、上記リーダ200と、上記データベースDBを備えた上記サーバ207(管理装置)とを有している。
リーダ200は、上記無線タグTM(以下適宜、「名札タグTM」という)に備えられた無線タグ回路素子To−M(第1無線タグ回路素子、第3無線タグ回路素子)、及び、上記無線タグTB(以下適宜、「物品タグTB」という)に備えられた無線タグ回路素子To−B(第2無線タグ回路素子、第4無線タグ回路素子)との間で無線通信により信号の授受を行う上記装置アンテナ10と、この装置アンテナ10を介し上記無線タグ回路素子To−M,To−BのIC回路部150へ例えばUHF帯、マイクロ波、短波帯等の高周波を用いた無線通信によりアクセスし、かつその無線タグ回路素子To−M,To−Bから読み出された信号を処理する高周波回路201と、高周波回路201と接続され、この高周波回路201の制御を行う制御回路202とを有する。
無線タグTM,TBはそれぞれ、情報を記憶するIC回路部150と、このIC回路部150にそれぞれ接続され情報を送受信可能なタグアンテナ151とを備えた上記無線タグ回路素子To−M,To−Bを有している。上記IC回路部150は、後述のメモリ部155に、対応する情報取得対象物(ここでは物品B、または利用者M)を特定可能な固有の(但し書き換え可能でもよい)タグ識別情報としてのタグIDを記憶保持している。そして、上記制御回路202がこのタグIDによって上記サーバ207に問い合わせを行うことで、サーバ207のデータベースDBに格納保持された、当該対象物に関する種々の情報(ここでは物品名、人物名等)を上記サーバ207から読み込めるようになっている。なお、上記メモリ部155に、タグIDでなく物品情報や人物情報を直接記憶させるようにしてもよい。このとき、各物品Bのデータや各利用者Mの人物情報については、予め適宜の端末等を用いて入力され、サーバ207のデータベースDBに格納保持されている。
またデータベースDBは、リーダ200によって関連付け処理(詳細は後述)された、上記名札タグTMに備えられる無線タグ回路素子To−MのタグIDと、物品タグTBに備えられる無線タグ回路素子To−BのタグIDとを対応付けて格納している。そして、サーバ207は、データベースDBにおける、上記無線タグ回路素子To−BのタグIDと、上記無線タグ回路素子To−MのタグIDとの対応付けに基づき、対応する上記物品Bの持ち出し状況又は返却状況を識別し管理するようになっている(詳細は後述)。
図3は、上記名札タグTM及び物品タグTBに備えられた無線タグ回路素子To−M,To−Bの機能的構成の一例を表すブロック図である。なお、図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
この図3において、無線タグ回路素子To−M,To−Bは、上述したようにリーダ200の装置アンテナ10と無線通信により非接触で信号の送受信を行うタグアンテナ151と、このタグアンテナ151に接続されたIC回路部150とを有している。
IC回路部150は、タグアンテナ151により受信された質問波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された質問波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、上記タグアンテナ151により受信された質問波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、所定の情報信号を記憶し得るメモリ部155と、上記タグアンテナ151に接続された変復調部156と、上記メモリ部155、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介して上記無線タグ回路素子To−M,To−Bの作動を制御するための上記制御部157とを備えている。
変復調部156は、タグアンテナ151により受信された上記リーダ200の装置アンテナ10からの通信信号の復調を行い、また、上記制御部157からの返信信号を変調し、タグアンテナ151より応答波(タグIDを含む信号)として送信する。
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出し当該クロック成分の周波数に対応したクロックを制御部157に供給する。
制御部157は、上記変復調部156により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、この返信信号を上記変復調部156により上記タグアンテナ151から返信する制御等の基本的な制御を実行する。
図4は、上記高周波回路201の詳細構成を表す機能ブロック図である。なお、図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
この図4において、高周波回路201は、上記装置アンテナ10を介し上記無線タグ回路素子To−M,To−BのIC回路部150の情報へアクセスするものであり、またリーダ200の制御回路202は無線タグ回路素子To−M,To−BのIC回路部150から読み出された信号を処理して情報を読み出すとともに無線タグ回路素子To−M,To−BのIC回路部150へアクセスするための各種コマンドを生成するものである。
高周波回路201は、装置アンテナ10を介し無線タグ回路素子To−M,To−Bに対して信号を送信する送信部212と、装置アンテナ10により受信された無線タグ回路素子To−M,To−Bからの応答波を入力する受信部213と、送受分離器214とから構成される。
送信部212は、無線タグ回路素子To−M,To−BのIC回路部150の無線タグ情報にアクセスするための質問波を生成するブロックである。すなわち、送信部212は、周波数の基準信号を出力する水晶振動子230と、制御回路202の制御により水晶振動子230の出力を分周/逓倍して所定周波数の搬送波を発生させるPLL(Phase Locked Loop)231及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)232と、上記制御回路202から供給される信号に基づいて上記発生させられた搬送波を変調(この例では制御回路202からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調)する送信乗算回路216(但し振幅変調の場合は増幅率可変アンプ等を用いてもよい)と、その送信乗算回路216により変調された変調波を増幅(この例では制御回路202からの「TX_PWR」信号によって増幅率が決定される増幅)して所望の質問波を生成するゲイン制御送信アンプ217とを備えている。そして、上記発生される搬送波は、例えばUHF帯、マイクロ波帯、あるいは短波帯の周波数を用いており、上記ゲイン制御送信アンプ217の出力は、送受分離器214を介し装置アンテナ10に伝達されて無線タグ回路素子To−M,To−BのIC回路部150に供給される。なお、質問波は上記のように変調した信号(変調波)に限られず、単なる搬送波のみの場合もある。
受信部213は、装置アンテナ10で受信された無線タグ回路素子To−M,To−Bからの応答波と上記発生させられた搬送波とを乗算して復調するI相受信乗算回路218と、そのI相受信乗算回路218の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すためのI相バンドパスフィルタ219と、このI相バンドパスフィルタ219の出力を増幅するI相受信アンプ221と、このI相受信アンプ221の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換するI相リミッタ220と、上記リーダ200で受信された無線タグ回路素子To−M,To−Bからの応答波と上記発生された後に移相器227により位相を90°遅らせた搬送波とを乗算するQ相受信乗算回路222と、そのQ相受信乗算回路222の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すためのQ相バンドパスフィルタ223と、このQ相バンドパスフィルタ223の出力を増幅するQ相受信アンプ225と、このQ相受信アンプ225の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換するQ相リミッタ224とを備えている。そして、上記I相リミッタ220から出力される信号「RXS−I」及びQ相リミッタ224から出力される信号「RXS−Q」は、上記制御回路202に入力されて処理される。
また、I相受信アンプ221及びQ相受信アンプ225の出力は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)回路226にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」が制御回路202に入力されるようになっている。このようにして、リーダ200では、I−Q直交復調によって無線タグ回路素子To−M,To−Bからの応答波の復調が行われる。
図5は、上記制御回路202の詳細機能を表す機能ブロック図である。
図5において、制御回路202は、いわゆるマイクロコンピュータであり、中央演算処理装置であるCPU202A、ROM202B、複数の無線タグ回路素子To−M,To−Bから取得したタグIDをそれぞれに対応する送信出力値と対応付けて記憶する不揮発性メモリ(Flash ROM)202E、RAM202C、高周波回路201との信号送受を行う回路制御部202D等から構成され、RAM202Cの一時記憶機能を利用しつつROM202Bに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。またこの制御回路202は、通信回線208(前述の図1等参照)に接続されており、この通信回線208に接続された前述のサーバ207や、さらに他の端末、コンピュータ、及びサーバ等との間で情報のやりとりが可能となっている。なお、前述のサーバ207についてもCPU、ROM、及びRAM等から構成されている。
以上において、本実施形態の特徴は、リーダ200が物品タグTBの無線タグ回路素子To−BからタグIDを取得したときの送信出力と、名札タグTMの無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得したときの送信出力とを比較し、それら無線タグ回路素子To−B,To−MのタグID同士を関連付けることである。以下、その詳細を説明する。
まず最初に、装置アンテナ10からの送信出力値Pと、物品タグTB又は名札タグTMに備えられる無線タグ回路素子To−M,To−BのタグIDとの対応付けについて、図6〜図8を用いて順次説明する。
まずリーダ200は、装置アンテナ10から最初に送信する信号の送信出力値P(=初期送信出力値Po)の設定を行い、この設定した送信出力値P=Poで装置アンテナ10から信号(詳細には対象を特定しない情報読み取り信号。後述する)を送信する。その後、上記送信出力値P=Poの送信出力を変化(この例では、△Pだけ増大)させ、この新たに設定した送信出力値P=Po+△Pで装置アンテナ10から信号を送信する。これらの際、各送信出力値Pで送信した送信信号に応じた応答信号により無線タグ回路素子To−M,To−BからタグIDを取得した場合には、この取得したタグIDを、対応する送信出力値Pと対応付けて不揮発性メモリ202Eに記憶する。
図6(a)は、利用者Mが、物品タグTBが設けられた物品Bを手に取り持ち出すときに、上記装置アンテナ10から送信出力値P=P1−2△Pで信号を送信している状態を模式的に表す図である。この例では、利用者Mの近傍(リーダ200の通信可能範囲内)に、利用者Mが手に取った物品B(物品タグTBが設けられている)の他にも、利用者Mが手に取っていない、物品タグTB′が設けられた物品B′(利用者Mの前方側)及び物品タグTB″が設けられた物品B″(利用者Mの後方側)が存在している。
図示の状態では、リーダ200が、前述のようにして送信出力値PをPoから△Pずつ増大させつつ上記情報読み取り信号を送信していき、物品タグTB′に備えられる無線タグ回路素子To−Bから初めてタグIDを取得した状態を表している。このときの送信出力値Pは、P=P1−2△P(「P1」は名札タグTMに備えられる無線タグ回路素子To−MからタグIDの取得を行えた最小の送信出力値。後述)である。この結果、前述したように、取得した物品タグTB′の無線タグ回路素子To−BのタグIDは、対応する最小の送信出力値P=P1−2△Pと対応付けて不揮発性メモリ202Eに記憶される(後述の図9(a)参照)。
図6(b)は、図6(a)の状態からさらにリーダ200が送信出力値Pを△Pずつ増大させて上記情報読み取り信号を送信している状態を模式的に表す図である。図6(b)において、リーダ200は、送信出力値Pを前述のP=P1−2△PからさらにΔPずつ増大させつつ上記情報読み取り信号を送信していき、物品タグTBに備えられる無線タグ回路素子To−Bから初めてタグIDを取得した状態を表している。このときの送信出力値Pは、P=P1−△Pである。この結果、前述したように、取得した物品タグTBの無線タグ回路素子To−BのタグIDは、対応する最小の送信出力値P=P1−△Pと対応付けて不揮発性メモリ202Eに記憶される(後述の図9(b)参照)。なおこのとき、物品B′に設けた前述の物品タグTB′も引き続き通信可能範囲に入っていることから、物品タグTB′に備えられる無線タグ回路素子To−Bからも引き続きタグIDを取得できている。
図7(a)は、図6(a)の状態からさらにリーダ200が送信出力値Pを△Pずつ増大させて上記情報読み取り信号を送信している状態を模式的に表す図である。図7(a)において、リーダ200は、送信出力値Pを前述のP=P1−△PからさらにΔPずつ増大させつつ上記情報読み取り信号を送信していき、名札タグTMに備えられる無線タグ回路素子To−Mから初めてタグIDを取得した状態を表している。このときの送信出力値Pは、P=P1である。この結果、前述したように、取得した名札タグTMの無線タグ回路素子To−MのタグIDは、対応する最小の送信出力値P=P1と対応付けて不揮発性メモリ202Eに記憶される(後述の図10(a)参照)。なおこのとき、物品B′,Bに設けた前述の物品タグTB′,TBも引き続き通信可能範囲に入っていることから、物品タグTB′,TBに備えられる無線タグ回路素子To−B,To−Bからも引き続きタグIDを取得できている。
図7(b)は、図7(a)の送信出力値P=P1の状態から、さらにリーダ200が送信出力値Pを増大させて上記情報読み取り信号を送信している状態を模式的に表す図である(この時点ではP=P1+△Pである)。前述と同様、この状態では、物品B′,Bに設けた前述の物品タグTB′,TBと、名札NCに設けられた名札タグTMとが引き続き通信可能範囲に入っており、これら物品タグTB′,TBに備えられる無線タグ回路素子To−B,To−Bと、名札タグTMに備えられた無線タグ回路素子To−Mとから、引き続きタグIDを取得できている。
図8は、図7(b)の状態からさらにリーダ200が送信出力値Pを△Pずつ増大させて上記情報読み取り信号を送信している状態を模式的に表す図である。図8(a)において、リーダ200は、送信出力値Pを前述のP=P1+△PからさらにΔPずつ増大させて物品B″に設けた物品タグTB″の無線タグ回路素子To−Bから初めてタグIDを取得し(前述同様、取得した物品タグTB″の無線タグ回路素子To−BのタグIDは、対応する最小の送信出力値と対応付けて不揮発性メモリ202Eに記憶される。後述の図11参照)、その後さらに送信出力値を△Pずつ増大させて最大送信出力値Pmaxとなった状態を表している。この状態では、物品B′,B,B″に設けた上記物品タグTB′,TB,TB″と、名札NCに設けた上記名札タグTMが通信可能範囲に入っており、物品タグTB′,TB,TB″に備えられる3つの無線タグ回路素子To−Bと名札タグTMに備えられる無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得できている。
以上のように、本実施形態では、リーダ200が、送信出力値PをPoから△Pずつ増大させつつ上記情報読み取り信号を送信していく。そして、無線タグ回路素子ToからタグIDを取得できたら、そのときの送信出力値と取得できたタグIDとを対応付けて不揮発性メモリ202Eに記憶させる。この処理を、送信出力値PがPmax(最大送信出力値)となるまで繰り返し行う。
図9(a)、図9(b)、図10(a)、図10(b)、及び図11は、上記図6(a)、図6(b)、図7(a)、図7(b)、及び図8において順を追って説明した動作挙動において、リーダ200の不揮発性メモリ202Eに記憶されたデータ内容を表す説明図である。各図には、リーダ200の不揮発性メモリ202Eには、初めて無線タグ回路素子To−M,To−BからタグIDが取得されたときの装置アンテナ10の送信出力値P(最小の送信出力値)と、当該タグIDとが対応付けられる形で、蓄積される。
すなわちまず、図9(a)は、上記図6(a)に示した状態に対応した図である。前述したように、リーダ200は、送信出力値Pを初期値Poから△Pずつ増大させ、Po→Po+△P→Po+2△P…と増大させつつ上記情報読み取り信号を送信していく。そして、前述したように送信出力値P=P1−2△Pとなったときに、初めて物品タグTB′に備えられる無線タグ回路素子To−BからタグIDが取得されている。この結果、不揮発性メモリ202Eには、図9(a)に示すように、当該最小送信出力値P1−2△Pと、対応するタグID(図中では便宜的に「00001」と記載。以下同様)とが対応付けられて記憶される。
図9(b)は、上記図6(b)に示した状態に対応した図である。前述したように、リーダ200は、上記送信出力値P=Po+2△Pの後、さらに送信出力値Pを△Pずつ増大させつつ上記情報読み取り信号を送信していく。そして、前述したように送信出力値P=P1−△Pとなったときに、初めて物品タグTBに備えられる無線タグ回路素子To−BからタグIDが取得されている。この結果、不揮発性メモリ202Eには、図9(b)に示すように、当該最小送信出力値P=P1−△Pと、対応するタグID(図中では「00002」と記載)とが対応付けられて新たに記憶(図中の矢印参照)され、蓄積される。言い換えれば、この図9(b)は、送信出力値P=P1−△Pでは、上記物品タグTB′の無線タグ回路素子To−Bと、上記物品タグTBの無線タグ回路素子To−Bとから、それぞれタグIDが取得できたことを表している。
図10(a)は、上記図7(a)に示した状態に対応した図である。前述したように、リーダ200は、上記送信出力値P=P1−△Pの後、さらに送信出力値Pを△Pずつ増大させつつ上記情報読み取り信号を送信していく。そして、前述したように送信出力値P=P1となったときに、初めて名札タグTMに備えられる無線タグ回路素子To−MからタグIDが取得されている。この結果、不揮発性メモリ202Eには、図10(a)に示すように、当該最小送信出力値P=P1と、対応するタグID(図中では「10001」と記載)とが対応付けられて新たに記憶(図中の矢印参照)され、蓄積される。言い換えれば、この図10(a)は、送信出力値P=P1では、上記物品タグTB′,TBの無線タグ回路素子To−B,To−Bと、上記名札タグTMの無線タグ回路素子To−Mとから、それぞれタグIDが取得できたことを表している。
図10(b)は、上記図7(b)に示した状態に対応した図である。前述したように、リーダ200は、上記送信出力値P=P1の後、さらに送信出力値Pを△Pずつ増大させつつ上記情報読み取り信号を送信していく。図示の状態では、送信出力値P=P1+△Pとなったときの状態である。前述したように、この送信出力で初めて取得したタグIDはない。この結果、送信出力値P=P1+△Pと対応付けられて記憶されるタグIDはない。この図10(b)でも、上記同様、送信出力値P=P1+△Pでは、上記物品タグTB′,TBの無線タグ回路素子To−B,To−Bと、上記名札タグTMの無線タグ回路素子To−Mとから、それぞれタグIDが取得できたことを表している。
図11は、上記図11に示した状態に対応した図である。前述したように、リーダ200は、上記送信出力値P=P1+△Pの後、さらに送信出力値Pを△Pずつ増大させつつ上記情報読み取り信号を送信していく。そして、前述したように送信出力値P=P1+2△Pとなったときに、初めて物品タグTB″に備えられる無線タグ回路素子To−MからタグIDが取得されている。この結果、不揮発性メモリ202Eには、図11に示すように、当該最小送信出力値P=P1+2△Pと、対応するタグID(図中では「00003」と記載)とが対応付けられて新たに記憶(図中の矢印参照)され、蓄積される。その後、前述したようにリーダ200は上記送信出力値P=P1+2△Pからさらに送信出力値Pを△PずつPmaxまで増大させているが、上記以降、初めて取得したタグIDはなく、P1+2△Pより大きな最小送信出力値と対応付けられて記憶されるタグIDはない。言い換えれば、図11は、送信出力値P=P1+2△P(P=Pmaxでも同じ)では、上記物品タグTB′,TB,TB″の3つの無線タグ回路素子To−Bと、上記名札タグTMの無線タグ回路素子To−Mとから、それぞれタグIDが取得できたことを表している。
次に、本実施形態の要部である、上記のようにして送信出力値Pとそれぞれ対応付けて不揮発性メモリ202Eに記憶された、物品タグTBの無線タグ回路素子To−Bから取得したタグIDと、名札タグTMの無線タグ回路素子To−Mから取得したタグIDとを、リーダ200が互いに関連付ける方法について説明する。
図12は、上記物品タグTBの無線タグ回路素子To−Bから取得したタグIDと、上記名札タグTMの無線タグ回路素子To−Mから取得したタグIDとの、関連付けを説明するための説明図であり、上記図11とほぼ同等の図である。
図12において、リーダ200では、上記不揮発性メモリ202Eに記憶された、名札NCに設けた名札タグTMの無線タグ回路素子To−Mから取得したタグID(前述の例では「10001」)と、これに対応する上記最小送信出力値P=P1(第1送信出力値)とが取得される。
そして、上記不揮発性メモリ202Eに記憶されたすべての無線タグ回路素子To−M,To−BのタグIDの中から、対応する最小送信出力値Pが、上記P1を含む所定の範囲に存在する無線タグ回路素子ToのタグIDを、抽出する。上記所定の範囲としては、例えば、P1−△P(第2送信出力値)以上でP1+△P(第3送信出力値)以下までの範囲(図中の破線で示すP1−△P≦P≦P1+△Pの範囲)に存在する、タグIDを抽出する。
この結果、図12に示す例では、P=P1−△Pであった、物品Mに設けた物品タグTBの無線タグ回路素子To−BのタグID(前述の例では「00002」)が抽出される。そして、上記抽出された物品タグTBの無線タグ回路素子To−BのタグID(「00002」)を、上記名札タグTMの無線タグ回路素子To−MのタグID(「10001」)へ関連付ける。
そして、リーダ200は、上記の関連付け情報を、通信回線208を介してサーバ207に出力する。これにより、上記名札タグTMに備えられる無線タグ回路素子To−MのタグIDと、物品タグTBに備えられた無線タグ回路素子To−BのタグIDとが、互いに関連付けられた状態でデータベースDBに登録(格納)される。
図13は、以上のようにしてサーバ207のデータベースDBに登録された上記関連付け情報の一例を、模式的に表す概念図である。
この図13に示すように、サーバ207のデータベースDBには、利用者、物品、持ち出し日、返却日からなる物品管理テーブルが登録されている。
図13において、「利用者」欄には、物品Bに対し持ち出し(又は返却)を行った利用者Mの識別情報(氏名等)が記録され、「物品」欄には当該持ち出し(又は返却)の対象となった物品Bの識別情報(名称、型番、備品番号等)が記録され、「持ち出し日」「返却日」欄には、それら持ち出し(又は返却)が行われた日付が記録される。
ここで、一般に、人物が物品を手に持って取り扱う場合で、そのいずれにも無線タグが設けられている場合には、それら2つの無線タグは位置的に比較的近接した状態となる。本実施形態ではこのことを利用してサーバ207で物品管理を行い、データベースDBに自動登録を行うものである。すなわち、利用者Mが物品Bを持ち出したり返却したりしようとするときに生じる、名札NCに係わる無線タグ回路素子To−Mと物品Bに係わる無線タグ回路素子To−Bとの接近を、リーダ200が上述の手法で検出し、タグID同士を互いに関連付け、関連付け情報としてサーバ207へ送る。そして、サーバ207は、ある物品Bに関して上記関連付け情報が最初にリーダ200から送られてきたときは当該物品Bの持ち出しとして記録し、その後同じ物品Bに関して上記関連付け情報がリーダ200から送られてきたときは当該物品Bの返却であるとして記録し、以降同様の手順を繰り返す。これにより、すべての物品Bに関し、すべての利用者Mによる持ち出し又は返却を自動的に管理することができる。
なお、既に述べたように、データベースDBには、各物品Bに設けた物品タグTBの無線タグ回路素子To−BのタグIDと、当該物品B自体の識別情報(名称、型番、備品番号等)とは、予め対応付けて記憶されている。同様に、各名札NCに設けた名札タグNCの無線タグ回路素子To−MのタグIDと、当該名札NCに対応する利用者M自体の識別情報(氏名等)とは、データベースDBに予め対応付けて記憶されている。したがって、サーバ207は、上記のようにしてリーダ200から関連付け情報を入力したとき、その関連付け情報に含まれるタグIDをキーにしてデータベースDBにアクセスすることで、上記利用者Mの氏名等や上記物品Bの名称等を取得し、これらを用いて図13に示すような登録を行う(なお、タグID自体を登録するようにしてもよい)。
図13に示す例では、利用者M1は2008年9月1日に物品B1を持ち出してまだ返却しておらず、利用者M2は2008年9月2日に物品B9を持ち出した後、2008年9月5日に返却していることを表している。この物品管理テーブルは、サーバ207の管理者が適宜の操作を行うことにより、サーバ207の図示しない表示部で表示される。なお、適宜の操作を行うことによりリーダ200の表示部で表示可能としてもよい。また、利用者M側からも(例えば適宜の操作端末等を介し)見られるようにしてもよい。
図14は、以上の内容を実行するために、リーダ200の制御回路202が実行する制御手順を表すフローチャートである。
図14において、例えばリーダ200の電源が投入されることによって、このフローが開始される(「START」位置)。
まずステップS10では、装置アンテナ10からの送信出力値Pを予め定められた初期送信出力値Poに設定する。
その後、ステップS20において、高周波回路201の送信部212に制御信号を出力し、水晶振動子230、PLL231、及びVCO232から適宜のUHF帯(例えば915MHz)の搬送波を発生させ、制御信号に基づいて発生した搬送波を変調・増幅させる。そして、この時点で設定された(上記ステップS10又は後述のステップS60において設定)送信出力値Pに基づき、送受分離器214及び装置アンテナ10を介し、上記無線タグ回路素子To(詳細には、上記利用者Mに係わる無線タグ回路素子To−M及び上記物品に係わる無線タグ回路素子To−B。以下適宜、これらを総称して単に「無線タグ回路素子To」という)に対する読み取り信号を送信させる。なお、この読み取り信号は、読み取り対象を特定しない不特定読み取り信号である(以下、同様)。そして、通信可能範囲内に位置する上記無線タグ回路素子Toから上記読み取り信号に対応して送信された応答信号(タグIDを含む)を、装置アンテナ10及び高周波回路201を介して受信する(情報取得手段として機能する)。
そして、ステップS30に移り、上記ステップS20において取得したタグIDのうち、上記ステップS20で初めて取得したタグIDが存在するか否かを判定する。この判定は、例えばタグID取得後にそのタグIDをキーにして不揮発性メモリ202Eにアクセスし、不揮発性メモリ202Eに当該タグIDが記憶されているか否かに基づき判定すればよい。初めて取得したタグIDが存在した場合には、ステップS30の判定が満たされてステップS40に移る。
ステップS40では、上記ステップS20で初めて取得したタグIDと、対応する(上記ステップS20での)送信出力値Pとを対応付ける。そして、不揮発性メモリ202Eにアクセスし、上記対応付けたタグID及び送信出力値Pを記憶させる(記憶処理手段として機能する。上記図9等参照)。その後、次のステップS50に移る。
一方、上記ステップS30において、上記初めて取得したタグIDが存在しなかった場合には判定が満たされず、直接ステップS50に移る。
ステップS50では、この時点での装置アンテナ10からの送信出力値Pが予め定められた最大送信出力値Pmaxに達しているかどうか否かを判定する。P=Pmaxでない場合(P<Pmaxの場合)は、判定が満たされず、ステップS60に移り、送信出力値Pの値に△Pを加えて送信出力値Pを増大させ、ステップS20に戻り、同様の手順を繰り返す。
以上のようにして、P<Pmaxである間は、送信出力値PをPoから△Pずつ順次増大させつつ読み取り信号を送信し、無線タグ回路素子Toからの応答があったらそのタグIDをそのときの送信出力値とともに不揮発性メモリ202Eに記憶、蓄積していく(前述の図9(a)、図9(b)、図10(a)、図10(b)、及び図11参照)。そして、増大していく送信出力値PがP=Pmaxに達したら、ステップS50の判定が満たされ、ステップS70に移る。
ステップS70では、不揮発性メモリ202Eにアクセスし、上記繰り返しの中でステップS40において順次記憶された、無線タグ回路素子ToのタグIDと送信出力値Pとが対応付けられた全データを参照する。そして、名札タグTMに設けられた無線タグ回路素子To−MのタグIDが初めて取得されたときのデータ(上記最小送信出力値と対応するタグIDとが対応付けられたデータ。以下適宜、「名札タグ出力値データ」という)を取得する(検出手段として機能する)。なお、前述の例ではこの名札タグ出力値データにおける前述の最小送信出力値Pは、P=P1である。
その後、ステップS100において不揮発性メモリ202Eにアクセスし、再度、上記繰り返しの中でステップS40において順次記憶された、無線タグ回路素子ToのタグIDと送信出力値Pとが対応付けられた全データを参照する。そして、上記ステップS70で取得した名札タグ出力値データに基づき、対応する送信出力値Pが、上記P1を含む所定範囲(この例では、前述したようにP1−△P≦P≦P1+△Pとなる範囲)に存在する、物品Bに係わる無線タグ回路素子To−BのタグIDを抽出する(抽出手段としての機能)。
そして、ステップS110に移り、上記ステップS100で抽出された物品Bに係わるタグIDを、上記名札タグTMに係わるタグIDへ関連付ける(=関連付け情報とする。関連付け処理手段としての機能)。
その後、ステップS120において、上記ステップS110での関連付け情報を、通信回路208を介してサーバ207に出力する。これにより、上記関連付けられた、名札タグTMの無線タグ回路素子To−MのタグIDと、物品タグTBの無線タグ回路素子To−BのタグIDとが、互いに関連付けられてデータベースDBに登録(格納)される。また、サーバ207によって、前述した手法により上記データベースDB内の物品管理テーブルにおいて、対応する記録が作成(更新)される。そして、このフローを終了する。
以上において、リーダ200の制御回路202が実行する図14のステップS10及びステップS60は、各請求項記載の出力制御手段として機能する。
なお、上記フローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
以上説明したように、本実施形態においては、装置アンテナ10の送信出力を適宜変更しつつタグIDの取得を行い、無線タグ回路素子To−BのタグIDを取得したときの送信出力と、無線タグ回路素子To−MのタグIDを取得したときの送信出力と比較し、この比較結果(2つの送信出力がほぼ同じ大きさであるかどうか等)に応じて、それら2つのタグIDを関連付ける(ステップS110)。これにより、利用者Mが物品Bを手に持って持ち出し(又は返却)を行う場合に生じる、無線タグ回路素子To−Bと無線タグ回路素子To−Mとの近接を検出し、持ち出す(又は返却する)利用者Mと持ち出される(又は返却される)物品Bとを簡単な制御で精度よく対応付けて管理することができる。
また、本実施形態では特に、装置アンテナ10の送信出力を順次増加(前述の例では△Pだけ増加)させつつ、無線タグ回路素子To−M,To−BからタグIDの取得を行うだけで足り、タグIDの取得結果に応じて送信出力を小刻みに変化させたり、タグIDの読み取りの停止や再試行等を行うような複雑な動作を行う必要がない。この結果、比較的簡易な手法で確実に容易に物品管理を行うことができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
(1)先に名札タグを検出した後、その近傍の物品タグを捜す場合
上記実施形態では、装置アンテナ10の送信出力値Pが最大出力値Pmaxに至るまで、送信出力を順次変化させつつ、名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−M及び物品Bに係わる無線タグ回路素子To−BからタグIDを取得していたが、これに限られない。すなわち、装置アンテナ10の送信出力値Pを順次変化させて先に名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得し、その後、送信出力をさらに変化させて、名札タグTMの近傍範囲にある物品Bの無線タグ回路素子To−BからタグIDを取得するようにしてもよい。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
本変形例では、装置アンテナ10の送信出力を順次変化させ、無線タグ回路素子To−MからのタグIDの取得を図る「第1出力モード」と、この第1出力モードで無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得した後、送信出力をさらに変化させ、無線タグ回路素子To−BからのタグIDの取得を図る「第2出力モード」とを設けている。この場合、無線タグ回路素子To−BからタグIDを取得できたときの送信出力値Pから比較的近い送信出力で、無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得した場合には、無線タグ回路素子To−Bの位置は無線タグ回路素子To−Mの位置から近接する範囲に位置しているとみなすことができる。
図15(a)は、利用者Mが、物品タグTBが設けられた物品Bを手に取り持ち出すときに、上記装置アンテナ10から読み取り信号を送信している状態を模式的に表す図であり、前述の実施形態の上記図7(a)に相当する図である。リーダ200は、まず上記「第1出力モード」で、上記実施形態と同様、装置アンテナ10から最初に設定した送信出力値P(=初期送信出力値Po)で(対象を特定しない)情報読み取り信号を送信した後、上記送信出力値P=Poの送信出力を△Pずつ増大させていく。なお、本変形例では、この時点では、物品タグTB′及び物品タグTBに備えられる無線タグ回路素子To−BからタグIDを取得しても、上記実施形態のような不揮発性メモリ202Eへの記憶は行わない。そして、この図15(a)に示すように、P=P1(第4送信出力値)となるまで送信出力値Pを増加させたときに、名札タグTMに備えられる無線タグ回路素子To−Mから初めてタグIDを取得している。この結果、前述したように、取得した名札タグTMの無線タグ回路素子To−MのタグIDは、対応する送信出力値P=P1と対応付けて不揮発性メモリ202Eに記憶される。またこのとき、上記図7(a)と同様、物品B′,Bに設けた前述の物品タグTB′,TBも既に通信可能範囲に入っており、物品タグTB′,TBに備えられる無線タグ回路素子To−B,To−BからもタグIDを取得できている。リーダ200は、上記のように名札タグTMに備えられる無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得した後、「第2出力モード」に移行する。
図15(b)は、上記実施形態の図7(b)に対応する図であり、リーダ200が、図15(a)の送信出力値P=P1の状態から上記「第2出力モード」に移行し、送信出力値Pをさらに増大させて上記情報読み取り信号を送信している状態を模式的に表す図である(この時点ではP=P1+△P;第5送信出力値。なお第2出力モードに移行後、第1出力モードから増大させず同一値のP1で送信してもよい)。前述と同様、この状態では、物品B′,Bに設けた前述の物品タグTB′,TBと、名札NCに設けられた名札タグTMとが引き続き通信可能範囲に入っており、これら無線タグ回路素子To−B,To−Bと、無線タグ回路素子To−Mとから引き続きタグIDを取得できている。
本変形例では、上記図15(a)のように名札タグTMの無線タグ回路素子To−Mから出力P1で初めてタグIDを取得後、第2出力モードに移行して図15(b)のように出力P1以上の送信出力値(上記の例ではP=P1+△P)で読み取り信号の送信を行ったら、今度は逆に、出力P1より小さい送信出力値(この例ではP=P1−2△P)で読み取り信号の送信を行う。図16はこの送信出力値P=P1−2△Pで上記情報読み取り信号を送信している状態を模式的に表す図であり、上記実施形態の図6(a)に相当する図である。
図16において、リーダ200は、上記送信出力値P=P1−2△P(第6送信出力値)で読み取り信号を送信することで、物品B′に設けた物品タグTB′の無線タグ回路素子To−Bのみが通信可能範囲に入り(これまで通信可能範囲に入っていた名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−Mと物品B′に係わる無線タグ回路素子To−B′は通信可能範囲外となり)、この物品タグTB′の無線タグ回路素子To−BのみからタグIDを取得している。
本変形例では、リーダ200は、上記第2出力モードに移行後に、上記実施形態と同様、情報読み取り信号に応じ無線タグ回路素子Toから取得されたタグIDと、そのときの送信出力値とを対応付けて不揮発性メモリ202Eに記憶させる。この処理は、第2出力モードに移行後は繰り返し行う。図17(a)及び図17(b)は、上記図15(b)及び図16において順に説明した上記の動作挙動において、リーダ200の不揮発性メモリ202Eに記憶されたデータ内容を表す説明図である。
図17(a)においては、上記図15(b)で示したように、上記「第2出力モード」に移行後に、送信出力値P=P1+△Pで読み取り信号を送信したときに、物品タグTB′の無線タグ回路素子To−BのタグID(「00001」)、物品タグTBの無線タグ回路素子To−BのタグID(「00002」)、及び、名札タグTMの無線タグ回路素子To−MのタグID(「10001」)の3つのタグIDが取得される。この結果、不揮発性メモリ202Eには、図17(a)に示すように、当該送信出力値P1+△Pで取得されたものとして、(名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MのタグIDは除外し)、物品タグTB′の無線タグ回路素子To−BのタグIDと、物品タグTBの無線タグ回路素子To−BのタグIDとの2つを記憶する。なお、上記除外を行わず、名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MのタグIDも含めて3つを記憶してもよい。
図17(b)においては、上記図16で示したように、上記図15(b)の状態から送信出力を減少させて送信出力値P=P1−2△Pで読み取り信号を送信したときに、物品タグTB′の無線タグ回路素子To−BのタグID(「00001」)が取得される。この結果、不揮発性メモリ202Eには、図示のように、当該送信出力値P1−2△Pで取得されたものとして、この物品タグTB′の無線タグ回路素子To−BのタグIDのみが記憶される。
そして、本変形例では、その要部として、送信出力値P=P1+△Pでの上記図17(a)に示した記憶結果(名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MのタグIDは除外)から、送信出力値P=P1−2△Pでの上記図17(b)に示した記憶結果との重複分を差し引くことで、タグIDの関連付けを行う。すなわち、上記図17(a)に示した物品タグTB′,TBに係る無線タグ回路素子To−B,To−Bの2つのタグID(「00001」、「00002」)から、上記図17(b)に示した物品タグTB′に係る無線タグ回路素子To−BのタグID(「00001」)を差し引く。
この差し引きにより、物品タグTBに係わる無線タグ回路素子To−BのタグID「00002」が、名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MのタグIDに対して関連付けを行うべきタグIDとして決定される。そして、この決定された無線タグ回路素子To−BのタグID「00002」を、上記無線タグ回路素子To−MのタグID「10001」に対して関連付ける。
図18は、本変形例においてリーダ200の制御回路202が実行する制御手順を表すフローチャートであり、上記実施形態の図14に対応する図である。図14と同等の手順には同符号を付し説明を省略する。
ステップS10及びステップS20は、前述の図14に示すフローと同様であり、送信出力値Pを予め定められた初期送信出力値Poに設定し、上記「第1出力モード」で、無線タグ回路素子To−M,To−Bと無線通信を行い、タグIDの読み取りを行う。その後、上記ステップS30に対応して新たに設けたステップS30′に移る。
ステップS30′では、上記ステップS20において、上記読み取り信号に対応して、名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得したか否かを判定する。無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得しなかった場合には、判定が満たされず、ステップS31′に移り、この時点での装置アンテナ10からの送信出力値Pが予め定められた最大送信出力値Pmaxに達しているかどうか否かを判定する。P=Pmaxでない場合(P<Pmaxの場合)は、判定が満たされず、ステップS60に移り、送信出力値Pの値に△Pを加えて送信出力値Pを増大させ、ステップS20に戻り、同様の手順を繰り返す。P=Pmaxの場合は、S10に戻り送信出力値Pを初期送信出力値Poに設定して再度S20以降の処理を行う。
以上のようにして、無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得するまでは、送信出力値PをPoから△Pずつ順次増大させつつ読み取り信号を送信し、無線タグ回路素子Toからの応答があったらそのタグIDが名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MのタグIDであるかどうかを判定する。そして、名札タグTMに係る無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得した場合には、ステップS30′の判定が満たされ、ステップS65に移る。
ステップS65では、この時点での送信出力値(上記ステップS20において名札タグTMの無線タグ回路素子To−MからタグIDの取得を行えた最小の送信出力値P)をP1とする。
その後、ステップS75では、上記「第2出力モード」に移行する。そして、装置アンテナ10からの送信出力を上記送信出力値P1より大きい(又は前述したようにP1と同じでもよい)送信出力値P(この例ではP=P1+△P)に設定する。
そして、ステップS80において、上記ステップS20と同様、上記高周波回路201の送信部212に制御信号を出力し、上記ステップS75で設定した送信出力値P=P1+△Pに基づき、送受分離器214及び装置アンテナ10を介し、上記無線タグ回路素子Toに対する読み取り信号を送信させる。そして、通信可能範囲内に位置する上記無線タグ回路素子Toから上記読み取り信号に対応して送信された応答信号(タグIDを含む)を、装置アンテナ10及び高周波回路201を介して受信する。
その後、ステップS85において、装置アンテナ10からの送信出力を上記送信出力値P1より小さい送信出力値P(この例ではP=P1−2△P)に設定する。
そして、ステップS90において、上記ステップS85で設定した送信出力値P=P1−2△Pに基づき、上記ステップS80と同様、送受分離器214及び装置アンテナ10を介し、上記無線タグ回路素子Toに対する読み取り信号を送信させる。そして、通信可能範囲内に位置する上記無線タグ回路素子Toから上記読み取り信号に対応して送信された応答信号(タグIDを含む)を、装置アンテナ10及び高周波回路201を介して受信する。
そして、ステップS105に移り、先に図17(a)及び図17(b)を用いて説明したように、上記ステップS80で取得した無線タグ回路素子To−Bに係わるタグIDから、上記ステップS90で取得した無線タグ回路素子To−Bに係わるタグIDを差し引き(重複分を削除して)、ステップS20において取得された名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MのタグIDに関連付けるべき、無線タグ回路素子To−BのタグIDを決定する(決定手段としての機能)。
その後、上記ステップS110に対応して新たに設けたステップS110′において、上記ステップS105で決定された、物品Bに係わる無線タグ回路素子To−BのタグIDを、上記ステップS20における「第1出力モード」で取得した、名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MのタグIDへ関連付ける(関連付け処理手段としての機能。上記図17(a)参照)。
そして、前述と同様のステップS120に移り、上記ステップS110′の関連付け情報を、通信回路208を介してサーバ207に出力する。これにより、上記関連付けられた、名札タグTMの無線タグ回路素子To−MのタグIDと、物品タグTBの無線タグ回路素子To−BのタグIDとが、互いに関連付けられてデータベースDBに登録(格納)される。また、サーバ207によって、前述した手法により上記データベースDB内の物品管理テーブルにおいて、対応する記録が作成(更新)される。そして、このフローを終了する。
なお、図18のフローにおいて、ステップS20は、各請求項記載の第1取得手段として機能し、ステップS80は第2取得手段として機能し、ステップS90は第3取得手段として機能し、これら3つのステップが本変形例における情報取得手段として機能する。
また、ステップS60、ステップS75、及びステップS85は、出力制御手段として機能する。
なお、上記フローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
以上説明した変形例においては、上記「第2出力モード」において取得した無線タグ回路素子To−BのタグIDを、上記「第1出力モード」において取得した無線タグ回路素子To−MのタグIDに関連付け処理することで(ステップS110′)、上記実施形態と同様、利用者Mが物品Bを手に持って持ち出し(又は返却)を行う場合に生じる、無線タグ回路素子To−Bと無線タグ回路素子To−Mとの近接を検出し、持ち出す(又は返却する)利用者Mと持ち出される(又は返却される)物品Bとを簡単な制御で精度よく対応付けて管理することができる。
またこのとき、先に「第1出力モード」で名札タグTMの位置を検出した後、「第2出力モード」に切り替えてその前後範囲にある物品タグTBを検出し、その無線タグ回路素子To−BのタグIDを名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MのタグIDに関連付ける。これにより、装置アンテナ10の送信出力値Pを単調に増加させながらタグIDの読み取りを順次行っていく上記実施形態の手法のように、無線タグ回路素子To−Mから比較的遠い位置にある無線タグ回路素子To−Bに対して無駄なタグIDの読み取りを行うことがなくなるので、省エネルギ化や関連付け処理の迅速化を図ることができる。
(2)上下可動式の装置アンテナを用いる場合
以上においては、装置アンテナ10は、位置固定式のアンテナとしていたが、これに限られず、位置変更可能な可動式のアンテナにしてもよい。以下、そのような変形例を説明する。なお、上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図19は、本変形例において、利用者Mが物品Bを持ち出すときの様子を示す図であり、上記実施形態の図1に対応する図である。また図20は、本変形例において、リーダ200′を有する本変形例の物品管理システム1の全体構成を表すシステム構成図であり、前述の図2に対応する図である。
図19に示すように、例えば、無線タグ回路素子To−Mを備えた名札NCを胸元に所持した利用者Mが、無線タグ回路素子To−Bを備えた物品Bを手に抱えている場合、無線タグ回路素子To−Mの高さ方向位置と無線タグ回路素子To−Bの高さ方向位置とは異なる場合がある。このように2つの無線タグ回路素子To−M,To−Bの高さ方向位置が異なるときに、高さ方向位置が1箇所に固定的である上記実施形態のような装置アンテナ10により無線通信を行った場合、前述した、装置アンテナ10の送信出力と、リーダ200から無線タグ回路素子Toまでの距離との対応関係の精度が低下する可能性がある。
本変形例のリーダ200′は、このような点に対応し、前述の「第1出力モード」と「第2出力モード」とで、例えばモータ等により位置変更可能な可動式(この例では、上下可動式)の装置アンテナ10Aを設けている。すなわち、リーダ200′は、無線タグ回路素子To−MからタグIDの取得を図る前述の「第1出力モード」のときには、装置アンテナ10Aを名札タグTMとほぼ同じ、比較的高い高さ方向位置(図19中の実線参照)にして通信を行う。これに対し、無線タグ回路素子To−BからタグIDの取得を図る「第2出力モード」のときには、装置アンテナ10Aを物品タグTBとほぼ同じ、比較的低い高さ方向位置(図19中の破線参照)にして通信を行うようになっている。
リーダ200′は、上記以外の点については、上記実施形態のリーダ200とほぼ同等の機能を備えている。すなわち、リーダ200′は、無線通信機能を実行する主たる構成要素で上記実施形態のリーダ200の装置アンテナ10以外の部分と同一機能(但し後述のモータ駆動回路203を除く)を備えたリーダモジュール250と、上記リーダの装置アンテナ10に代えて設けた装置アンテナ10Aと、後述のモータ駆動回路203の制御により動力を発生させるモータ204と、動力を伝えるベルト206と、ベルト206に回転を伝えるプーリー205とを有している。上記リーダモジュール250は、上記実施形態のリーダ200に備えられたものと同等の機能の高周波回路201及び制御回路202と、上記モータ204を駆動するためのモータ駆動回路203とを有している。
図21は、本変形例においてリーダ200′の制御回路202が実行する制御手順を表すフローチャートであり、前述の図14及び図18に対応する図である。図14及び図18と同等の手順には同符号を付し説明を省略する。
まず、新たに設けたステップS5において、モータ駆動回路203に制御信号を出力し、モータ204、プーリー205、及びベルト206を介して、装置アンテナ10Aを無線タグ回路素子To−Mとほぼ同じ高さ方向位置に駆動する(上記図19の実線で示した位置)。
その後、ステップS10、ステップS20、ステップS30′、ステップS31′、ステップS60、及びステップS65は、前述の図18と同様である。すなわち、送信出力値Pを予め定められた初期送信出力値Poに設定し、上記「第1出力モード」で、無線タグ回路素子Toと無線通信を行い、タグIDの読み取りを行う。無線タグ回路素子To−Mの応答信号からタグIDが取得されるまで、送信出力値Pの値に△Pを加えつつ読み取り信号の送信を繰り返し、無線タグ回路素子To−MからタグIDが取得されると、そのときの送信出力値PをP1とし、新たに設けたステップS72に移る。
ステップS72では、モータ駆動回路203に制御信号を出力し、モータ204、プーリー205、及びベルト206を介して、装置アンテナ10Aを無線タグ回路素子To−Bとほぼ同じ高さ方向位置に駆動する(上記図19の破線で示した位置)。
その後のステップS75以降の手順は、前述の図18と同様であるので説明を省略する。
なお、上記フローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
本変形例によれば、「第1出力モード」のときには装置アンテナ10Aを無線タグ回路素子To−Mとほぼ同じ高さ方向位置にして(通信距離を水平距離と等しくして)通信を行い、「第2出力モード」のときには装置アンテナ10Aを下げて無線タグ回路素子To−Bとほぼ同じ高さ方向位置にして(通信距離を水平距離と等しくして)通信を行うことができる。これにより、前述したような高周波回路201及び装置アンテナ10の送信出力とリーダ200から無線タグ回路素子To−M,To−Bまでの距離との対応関係を精度よく維持することができる。
なお、上記のように1つの装置アンテナ10Aの位置を駆動し高さ方向位置を変更したが、これに限られず、互いに設置位置が異なる2つのアンテナ(第1アンテナ、第2アンテナ)を切り替えて使用するようにしてもよい。
この場合、例えば、上記「第1出力モード」のときには無線タグ回路素子To−Mとほぼ同じ高さ方向位置にある(通信距離が水平距離と等しくなる)第1アンテナを用いて通信を行うとともに、「第2出力モード」のときにはアンテナ位置が若干下がった無線タグ回路素子To−Bとほぼ同じ高さ方向位置にある(通信距離が水平距離と等しくなる)第2アンテナを用いて通信を行うことで、上記と同様の効果を得ることができる。
(3)第2出力モードでの送信出力増減幅を、取得タグID数に応じて調整する場合
すなわち、例えば、上記「第1出力モード」で無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得した後、「第2出力モード」に移行し、当該送信出力P1より大きい送信出力値(前述の例ではP1+△P)で取得したタグIDの数が多すぎる場合は、目的とする(本来関連付けたい)無線タグ回路素子To−B以外の無線タグ回路素子To−BのタグIDを取得している可能性、すなわち出力増大幅が大きすぎる可能性がある。この場合には本変形例ではこの時点での上記送信出力値Pよりやや小さい送信出力(この例では、Pから△P/nを差し引く。nは適宜の数。以下同様)に変更し、通信範囲を名札タグTM側に少し絞って、タグIDの再取得を行う。
逆に、前述の送信出力値P1+△Pで取得したタグIDの数が少なすぎる場合は、目的とする(本来関連付けたい)無線タグ回路素子To−BのタグIDを取得できていない可能性がある。この場合には本変形例ではこの時点での上記送信出力値Pよりやや大きい送信出力(この例では、Pに△P/nを加える)に変更し、通信範囲を名札タグTMと反対側に少し拡大して、タグIDの再取得を行う。
さらに、上記同様に、「第2出力モード」に移行し、当該送信出力P1より大きい送信出力値でタグIDの取得を行った後、当該送信出力P1より小さい送信出力値(前述の例ではP1−2△P)で取得したタグIDの数が多すぎる場合は、目的とする(本来関連付けたい)無線タグ回路素子To−B以外の無線タグ回路素子To−BのタグIDを取得している可能性がある。この場合には本変形例ではこの時点での上記送信出力値Pよりやや大きい送信出力(この例では、Pに△P/mを加える。mは適宜の数。以下同様)に変更し、通信範囲を名札タグTM側に少し絞って、タグIDの再取得を行う。
逆に、前述の送信出力値P1−2△Pで取得したタグIDの数が少なすぎる場合は、目的とする(本来関連付けたい)無線タグ回路素子To−BのタグIDを取得できていない可能性がある。この場合には本変形例ではこの時点での上記送信出力値Pよりやや小さい送信出力(この例では、Pから△P/mを差し引く)に変更し、通信範囲を名札タグTM側と反対側に少し拡大して、タグIDの再取得を行う。
図22は、本変形例においてリーダ200の制御回路202が実行する制御手順を表すフローチャートであり、前述の図14、図18及び図21に対応する図である。上記図18と同等の手順には同符号を付し説明を省略する。
ステップS10、ステップS20、ステップS30′、ステップS31′、ステップS60、ステップS65、及びステップS75は、前述の図18に示すフローと同様である。すなわち、送信出力値Pを予め定められた初期送信出力値Poに設定し、上記「第1出力モード」で、無線タグ回路素子Toと無線通信を行い、タグIDの読み取りを行う。無線タグ回路素子To−Mから応答信号が受信されまで、送信出力値Pの値に△Pを加えつつ読み取り信号の送信を繰り返し、無線タグ回路素子To−MからタグIDが取得されると、そのときの送信出力値PをP1としつつ上記「第2出力モード」に移行して送信出力をP1+△Pに設定し、上記ステップS80に対応して新たに設けたステップS80′に移る。
ステップS80′では、上記ステップS20と同様、上記高周波回路201の送信部212に制御信号を出力し、上記ステップS75(又は後述のステップS82又は後述のステップS84)で設定した送信出力値Pに基づき、送受分離器214及び装置アンテナ10を介し、上記無線タグ回路素子Toに対する読み取り信号を送信させる。そして、通信可能範囲内に位置する上記無線タグ回路素子Toから上記読み取り信号に対応して送信された応答信号(タグIDを含む)を、装置アンテナ10及び高周波回路201を介して受信する。
その後、ステップS81において、上記ステップS80′で無線タグ回路素子Toから取得したタグIDの数が、予め定めた所定のしきい値M1より大きいか否かを判定する。取得したタグIDの数が所定のしきい値M1以下の場合には判定が満たされずにステップS82に移り、送信出力値Pの(設定)値から△P/nを減じてステップS80′に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、ステップS80′で取得したタグIDの数が所定のしきい値M1よりも大きい場合には、ステップS81の判定が満たされ、ステップS83に移る。
ステップS83では、上記ステップS80′で無線タグ回路素子Toから取得したタグIDの数が、予め定めた所定のしきい値L1より小さいか否かを判定する。取得したタグIDの数が所定のしきい値L1以上の場合には判定が満たされずにステップS84に移り、送信出力値Pの(設定)値に△P/nを加えステップS80′に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、ステップS80′で取得したタグIDの数が所定のしきい値L1よりも小さい場合には、ステップS83の判定が満たされ、ステップS85に移る。
ステップS85は、前述の図18と同様、装置アンテナ10の送信出力をP=P1−2△Pに設定し、上記ステップS90に対応して新たに設けたステップS90′に移る。
ステップS90′では、上記ステップS20と同様、高周波回路201の送信部212に制御信号を出力し、上記ステップS85(又は後述のステップS92又は後述のステップS94)で設定した送信出力値Pに基づき、送受分離器214及び装置アンテナ10を介し、上記無線タグ回路素子Toに対する読み取り信号を送信させる。そして、通信可能範囲内に位置する上記無線タグ回路素子Toから上記読み取り信号に対応して送信された応答信号(タグIDを含む)を、装置アンテナ10及び高周波回路201を介して受信する。
その後、ステップS91において、上記ステップS90′で無線タグ回路素子Toから取得したタグIDの数が、予め定めた所定のしきい値M2より大きいか否かを判定する。取得したタグIDの数が所定のしきい値M2以下の場合には、判定が満たされずにステップS92に移り、送信出力値Pの(設定)値に△P/mを加えてステップS90′に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、ステップS90′で取得したタグIDの数が所定のしきい値M2よりも大きい場合には、ステップS91の判定が満たされ、ステップS93に移る。
ステップS93では、上記ステップS90′で無線タグ回路素子Toから取得したタグIDの数が、予め定めた所定のしきい値L2より小さいか否かを判定する。取得したタグIDの数が所定のしきい値L2以上の場合には、判定が満たされずにステップS94に移り、送信出力値Pの(設定)値から△P/mを差し引きステップS90′に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、ステップS90′で取得したタグIDの数が所定のしきい値L2よりも小さい場合には、ステップS93の判定が満たされ、上記ステップS105に対応して設けたステップS105′に移る。
ステップS105′では、上記ステップS83の判定が満たされたときの(言い換えれば直前のステップS80において取得された)タグIDから、上記ステップS93の判定が満たされたときの(言い換えれば直前のステップS90において取得された)タグIDを差し引き(重複分を削除し)、ステップS20において取得された名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MのタグIDに関連付けるべき、無線タグ回路素子To−BのタグIDを決定する(決定手段としての機能)。
その後のステップS110′以降の手順は、前述の図18と同様であるので説明を省略する。
以上において、ステップS80′が、各請求項記載の第2取得手段として機能し、ステップS90′が、第3取得手段として機能し、これらとステップS20とが、情報取得手段として機能する。また、ステップS60、ステップS82、ステップS84、ステップS92、及びステップS94が、出力制御手段として機能する。
なお、上記フローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
本変形例によれば、上述したように「第2出力モード」において無線タグ回路素子Toから取得されたタグIDの数の多少に基づき(詳細にはしきい値M1,L1,M2,L2との比較により)、改めて送信出力を増減調整し、上記タグIDの再取得を行う。これにより、利用者Mが持ち出し(又は返却)しようとしている物品Bに設けられた無線タグ回路素子To−Bをさらに確実に見つけることができる。
(4)別の名札タグが近くに存在した場合
すなわち、1つの名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得した後に、別の名札タグTMが近傍に存在しないかどうかを念のために探索し、存在した場合には報知を行うようにしてもよい。
図23は、このような変形例において、リーダ200を有する物品管理システムの全体構成を表すシステム構成図であり、前述の図2及び図20に対応する図である。図2と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図23において、本変形例のリーダ200″は、上記のようにして、他の無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得したときに報知(例えば、音声、点灯、振動等)を行うために、高周波回路201、制御回路202、及び装置アンテナ10に加え、報知部210(報知手段)を新たに備えている。この報知部210は、制御回路202からの制御信号が入力されると、図示しない操作者に対して音声等により報知する。
また、本変形例のリーダ200″では、上記のように他の名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MからタグIDの取得を行った場合、送信出力を再設定して、再び物品Bに係わる無線タグ回路素子To−BからのタグIDの取得を行う。図24は、この内容を含む、リーダ200″の制御回路202が実行する制御手順を表すフローチャートであり、前述の図18等に対応する図である。図18と同等の手順には同符号を付し説明を省略する。
ステップS10、ステップS20、ステップS30′、ステップS60、及びステップS65は、前述の図18に示すフローと同様であり、説明を省略する。ステップS65で最小送信出力値P=P1に設定したら、新たに設けたステップS71に移る。
ステップS71では、上記ステップS75と同様、物品タグTBに係わる無線タグ回路素子To−BからタグIDの取得を図るために、装置アンテナ10からの送信出力を(1つの名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得できた)上記送信出力値P=P1よりも大きい送信出力値P(第7送信出力値。この例では前述と異なりP=P1+3△P)に設定する。
そして、ステップS73において、上記ステップS20と同様、上記高周波回路131の送信部212に制御信号を出力し、上記ステップS73で設定した送信出力値P=P1+3△Pに基づき、送受分離器214及び装置アンテナ10を介し、上記無線タグ回路素子Toに対する読み取り信号を送信させる。そして、通信可能範囲内に位置する上記無線タグ回路素子Toから上記読み取り信号に対応して送信された応答信号(タグIDを含む)を、装置アンテナ10及び高周波回路201を介して受信する。
その後、ステップS74に移り、上記ステップS73において取得したタグIDの中に、(上記ステップS20ではタグIDを取得した無線タグ回路素子To−Mとは別の)他の無線タグ回路素子To−MのタグIDが含まれているか否かを判定する。他の無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得しなかった場合には、判定が満たされず、上記送信出力値P=P1+3△Pのままで第2出力モードに移行し、上記ステップS80に対応して新たに設けたステップS80″に移る。
一方、上記ステップS74において、他の無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得していた場合には、ステップS74の判定が満たされて、ステップS76に移る。
ステップS76では、報知部210に制御信号を出力し、対応する報知(例えば、音声等)を操作者に対して行わせる。その後、ステップS78に移る。
ステップS78では、上記第2出力モードに移行し、送信出力値Pの(設定)値から適宜の値を差し引き、上記ステップS71で設定した送信出力値P=P1+3△Pよりも小さな値に変更する。この例では、(3/2)△Pを差し引くことで、上記ステップS71において送信出力値P1に3△Pを加えて名札タグTMから離れる方向に拡大した通信可能範囲のうち、その拡大部分の半分を元に戻す(半分に縮小する)ようにする。言い換えれば、これ以降の通信可能範囲(=物品タグTBの検出可能範囲)を、上記他の無線タグ回路素子To−Mの存在位置(送信出力値P1+3△Pに相当)を含まないように狭く限定するようにする。その後、ステップS80″に移る。
ステップS80″では、上記ステップS80′と同様、上記高周波回路201の送信部212に制御信号を出力し、上記ステップS71(又はステップS78)で設定した送信出力値Pに基づき、送受分離器214及び装置アンテナ10を介し、上記無線タグ回路素子Toに対する読み取り信号を送信させる。そして、通信可能範囲内に位置する上記無線タグ回路素子Toから上記読み取り信号に対応して送信された応答信号(タグIDを含む)を、装置アンテナ10及び高周波回路201を介して受信する(第2取得手段として機能する)。
その後のステップS85及びステップS90は、前述の図18と同様であり、装置アンテナ10からの送信出力をP1−2△Pに設定し、無線タグ回路素子Toと無線通信を行いタグIDの読み取りを行ったら、新たに設けたステップS107に移る。
ステップS107では、上記ステップS105と同様、上記ステップS80″で取得した無線タグ回路素子To−Bに係わるタグIDから、上記ステップS90で取得した無線タグ回路素子To−Bに係わるタグIDを差し引き(重複分を削除して)、ステップS20において取得された名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MのタグIDに関連付けるべき、無線タグ回路素子To−BのタグIDを決定する(決定手段としての機能)。
その後のステップS110′以降の手順は、前述の図18と同様であるので説明を省略する。
以上において、ステップS60、ステップS71、ステップS78、及びステップS85は、各請求項記載の出力制御手段として機能する。
なお、上記フローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
以上説明したように、本変形例では、1つの無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得した後、さらに他の無線タグ回路素子To−MからのタグIDの取得を図るために、装置アンテナ10の送信出力を上記1つ目の無線タグ回路素子To−MからタグIDの取得を行えた最小の送信出力よりも大きくなるように再設定する(ステップS71)。これにより、関連付け処理の基準となる1つの無線タグ回路素子To−Mを見つけ出し(タグIDを取得し)、これに対して対応する無線タグ回路素子To−Bを関連付け処理しようとする前に、さらに別の無線タグ回路素子To−Mが装置アンテナ10の通信範囲内に存在しないかどうかを確認することができる。
そして、他の無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得した場合、報知部210で対応する報知(例えば、音声、点灯、振動等)を操作者に対して行う(ステップS76)。これにより、物品タグTBに係わる無線タグ回路素子To−Bを関連付けるための基準となる名札タグTMが、装置アンテナ10の通信範囲内に複数存在していることを、操作者に対して確実に認識させることができる。この結果、関連付けを正しく行うために、一方の名札タグTMを装置アンテナ10の通信範囲外へ退出させる(所持している利用者Mに遠くへ退去するよう依頼する)等の対策をとることもできる。
また特に、上記再設定した送信出力において他の無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得した場合、関連付け対象の無線タグ回路素子To−Bの存在範囲を他の無線タグ回路素子To−Mより装置アンテナ10側に限定してタグIDの検出を行う(ステップS78→ステップS80″)。これにより、上記限定した範囲に存在する無線タグ回路素子To−Bを、関連付け処理の基準となる1つの無線タグ回路素子To−Mに、確実に関連付けることができる。
なお、上記のように(ステップS74、ステップS76、ステップS78等により)説明した、「別の名札タグTMの存在を念のために確認し、もし見つかったら、その後の物品タグTBの探索範囲を限定する」手法は、上記図1〜図14を用いて説明した、上記実施形態に対し適用することも可能である。この場合は、図14におけるステップS70(又はその後の手順)において、ステップS70で検出した1つの(関連付け基準となる)名札タグTMに係る無線タグ回路素子To−M以外に、別の名札タグTMに係る無線タグ回路素子To−MのタグIDが取得され不揮発性メモリ202Eに記憶されていないかどうかを、チェックすればよい。別の無線タグ回路素子To−Mの存在が検出されていたら、上記同様、上記関連付け基準の名札タグTMに関連付けようとする物品タグTBの存在範囲を、上記別の名札タグTMを含まないように限定し、前述の関連付けを行うようにすればよい。
(5)装置アンテナを足元に設置する場合
以上においては、リーダ200,200′,200″の装置アンテナ10,10Aが壁WAに設けられていたが、これに限られず、利用者Mの足元になるように設置してもよい。
図25は、本変形例において、利用者Mが物品Bを持ち出すときの様子を示す図であり、前述の図1に対応する図である。図1と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
この図25に示すように、一般に、利用者Mが物品Bを持ち出す(返却する)ときには、利用者Mは腰の高さから胸の高さまでの間になるように、物品Bを手に取り持ち出す傾向にある。そこで、本変形例では、上記利用者Mの腰の高さにほぼ相当する送信出力値P(例えば、P=P1−△P)から、上記利用者Mの胸の高さにほぼ相当する送信出力値P(例えば、P=P1)までの所定の範囲の送信出力値Pにおいて検出された無線タグ回路素子To−Bを抽出する。
利用者Mが物品Bを持ち出す(又は返却する)ときに例えば床下等に備え付けられたリーダ200の装置アンテナ10の上方を通過すると、この装置アンテナ10を介し、物品Bの物品タグTBに備えられた無線タグ回路素子To−Bと、名札NCの名札タグTMに備えられた無線タグ回路素子To−Mの情報の読み取りが行われる。図26は、この読み取りを含む、本変形例のリーダ200の制御回路202が実行する制御手順を表すフローチャートであり、前述の実施形態で用いた図14等に対応する図である。図14と同等の手順には同符号を付し説明を省略する。
図26において、前述の図14と異なる点は図12のステップS100に代えてステップS102を行う点である。すなわち、ステップS70で、不揮発性メモリ202Eにアクセスし、名札タグTMに設けられた無線タグ回路素子To−MのタグIDが初めて取得されたときの、上記名札タグ出力値データを取得したら、新たに設けたステップS102に移る。
ステップS102では、不揮発性メモリ202Eにアクセスし、上記ステップS70と同様、再度、ステップS40において順次記憶された、無線タグ回路素子ToのタグIDと送信出力値Pとが対応付けられた全データを参照する。そして、ステップS70で取得した上記名札タグ出力値データに基づき、対応する送信出力値Pが、上記送信出力値P1を含みそのP1よりも小さい側の所定範囲(この例では前述したようにP1−△P≦P≦P1となる範囲)に存在する、物品Bに係わる無線タグ回路素子To−BのタグIDを抽出する(抽出手段としての機能)。
その後のステップS110以降の手順は、前述の図14と同様であるので説明を省略する。
なお、上記フローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
本変形例によれば、利用者Mの足元になるように装置アンテナ10を設置した場合において、前述と同様、利用者Mが物品Bを手に持って持ち出し(又は返却)を行う場合に生じる、無線タグ回路素子To−Bと無線タグ回路素子To−Mとの近接を検出し、持ち出す(又は返却する)利用者Mと持ち出される(又は返却される)物品Bとを簡単な制御で精度よく対応付けて管理することができる。
また、以上は、利用者Mの足元に装置アンテナ10を設置した構成を用いて、装置アンテナ10の送信出力値Pが最大出力値Pmaxに至るまで送信出力を順次変化させ、名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−M及び物品Bに係わる無線タグ回路素子To−BからタグIDを取得する、上記実施形態の手法を実行した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、上記(1)の変形例と同様、装置アンテナ10の送信出力値Pを順次変化させて先に名札タグTMに係わる無線タグ回路素子To−MからタグIDを取得し、その後、送信出力をさらに変化(例えば減少)させて、名札タグTMの近傍範囲にある物品Bの無線タグ回路素子To−BからタグIDを取得するようにしてもよい。上記(2)〜(4)の手法を実行するようにしてもよい。
(6)その他
例えば、無線タグ回路素子To−Mが名札NCやIDカード等に設けられる場合、個人情報保護の観点から、もともと通信距離が短く(通信感度が低く)設定される場合がある。逆に、物品Bに設けられる無線タグ回路素子To−Bは、上記のような懸念がない分、上記無線タグ回路素子To−Mより通信距離が長く(通信感度が高く)設定される場合がある。このように通信感度の違いがあると、装置アンテナ10からの同一の送信出力値に対しても、通信可能な距離が異なってくる。このため、前述した装置アンテナ10の送信出力と、リーダ200から無線タグ回路素子To−M,To−Bまでの通信可能範囲(最大通信距離)との対応関係に影響を与えうる。
これに対応するために、上記実施形態や(1)〜(4)の変形例で用いる送信出力値Pとして、装置アンテナで無線タグ回路素子To−Mと通信するときの通信感度と、装置アンテナで無線タグ回路素子To−Bと通信するときの通信感度の違いを反映した、感度係数Cで補正した(感度係数Cを乗じた)送信出力値P′(P′=C×P)を用いるようにしてもよい。
これにより、上記のような無線タグ回路素子To−M,To−Bの種類、機能、用途等の違いによる通信感度の違いがある場合であっても、その影響を排除し、無線タグ回路素子To−Mの所定の近接範囲内にある無線タグ回路素子To−BのタグIDを精度よく得ることができる。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。