以下、図面を参照して本発明に係る誘導システムの好適な実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、トンネルなどの坑道を走行する搬送車両を模式的に示す図である。また、図2は搬送車両の斜視図である。図1または図2に示されるように、トンネル工事に伴うセグメントSeなどの搬送や検査、その他の作業を迅速に行うために、坑道Tに規定された所定の走行ルートRに沿って搬送車両3Aを自動運転させる必要がある。本実施形態に係る誘導システム1Aは、坑道T内の走行ルートRに沿った絶対誘導によって搬送車両3Aを誘導し、搬送車両3Aの自律運転を実現するシステムである。搬送車両3Aは、移動体に相当する。
図3または図4に示されるように、搬送車両3Aは、転動する車輪5aが設けられた車体部5と、車体部5の上部に設けられた荷台7と、車体部5の前部に設けられた障害物センサ・バンパースイッチ9と、操向側の車輪5aの舵取り、車輪5aの駆動及び停止を行う駆動装置11(図4参照)と、バッテリ(図示せず)とを備えている。荷台7には、セグメントSeなどの積荷が積載され、駆動装置11によって車輪5aの回転や操舵角の変更が実行される。
また、搬送車両3Aには、進行方向Dmの前部に取り付けられたレーザースキャナ(走査手段)13と、車輪5aの回転数から移動距離を検出する内界センサ14と、レーザースキャナ13から入力されたデータに基づいて搬送車両3Aの走行を制御する制御装置15Aとが搭載されている。なお、本実施形態に係る誘導システム1Aは、レーザースキャナ13,内界センサ14及び制御装置15Aを備えて構成される。
レーザースキャナ13は、搬送車両3Aの進行方向Dmの前方側に向けて円軌道を描くようにレーザービームを照射し、坑道Tの内壁Taに反射して戻ってきたレーザービーム(以下、「反射光」という)を受信するセンサ部を有する。レーザースキャナ13は、レーザービームを照射してから反射光を受信するまでの往復時間から測位対象物までの距離を計測し、さらに、その距離とレーザービームの照射方向とから測位対象物の座標データを取得して制御装置15Aに入力する。この座標データは、坑道Tを横断する断面形状としてのデータであり、搬送車両3Aの周囲環境に関する形状情報に相当する。以下、この断面形状としてのデータを観測形状データという。
制御装置15Aは、CPU、RAM及びROMなどが実装された制御基板、入出力装置及び外部記憶装置などを備えている。制御装置15Aは、CPUやRAMなどのハードウェア上に所定のソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで入出力装置などが動作して、所定の機能が実現される。制御装置15Aで実行される機能について説明する。
図4に示されるように、制御装置15Aは、マップ記憶部(マップ記憶手段)15a、演算部(演算手段)15b、絶対誘導制御部(絶対誘導制御手段)15c、誘導部位捕捉部(誘導部位捕捉手段)15d、相対誘導制御部(相対誘導制御手段)15e、切替部(切替手段)15f及び誘導部位記憶部(誘導部位記憶手段)15gとして機能する。
マップ記憶部15aは、走行ルートRに沿った形状データ(形状情報)を含む3次元マップを記憶している。走行ルートRに沿った形状データとは、搬送車両3Aの周囲環境に関する形状データであり、より詳しくは、坑道Tを横断する断面形状としてのデータである。なお、マップ記憶部15aには、後述の手法フラグやエラーフラグなども記憶されている。
演算部15bは、マップ記憶部15aに記憶された3次元マップを読み出し、この3次元マップとレーザースキャナ13で取得された観測形状データとに基づいて搬送車両3Aの位置姿勢情報を割り出す。本実施形態では、マルコフ位置推定手法を利用して搬送車両3Aの位置姿勢情報を割り出す。以下、マルコフ位置推定手法について簡単に説明する。
図5は、マルコフ位置推定手法の流れを説明するために、坑道T内に設置された3つの構造物と搬送車両との位置関係及び存在確率を示す図であり、(a)〜(d)は、時系列に並んでいる。図5(a)は、初期状態を示している。走行ルートRには、搬送車両3Aの進行方向に沿って左から順番に3つの構造物Arが設置されており、各構造物Arは同一の形状である。初期状態の搬送車両3Aは、未だ構造物Arを捕捉していない。図5(b)は、搬送車両3Aが最初の構造物Arを捕捉した初期センシング時を示す図であり、(c)は、搬送車両3Aが最初の構造物Arを通過した後の移動状態を示し、未だ次の構造物Arを捕捉していない状態を示す図である。また、図5(d)は、搬送車両3Aが次の構造物Arを捕捉して位置が特定された状態を示す図である。
図5(a)に示されるように、初期状態では、存在確率は走行ルートRの全範囲に亘って一様である。搬送車両3Aが移動を開始し、レーザースキャナ13がいずれか一つの構造物Arを捕捉したとする(図5(b)参照)。走行ルートR上に並ぶ3つの構造物Arは形状が同一であるため、3次元マップを参照しても搬送車両3Aの位置情報を特定することはできない。そこで、演算部15bは、レーザースキャナ13で取得された観測形状データから推定される存在確率を各構造物Arの近傍に割り振る。例えば、各構造物Arの近傍での「存在予測値」をそれぞれ“1/3”に設定し、近傍以外での「存在予測値」を、1/3よりも低くなるように設定する。各地点での存在確率は、その地点の存在予測値を存在予測値の総和で割った値として与えられる。
搬送車両3Aは、最初の構造物Arを通過して移動を続ける(図5(c)参照)。演算部15bは、内界センサ14の誤差を考慮した過去から現在までの第1の存在確率とレーザースキャナ13から推定される第2の存在確率とを割り出し、さらに、第1の存在確率と第2の存在確率とを合成した第3の存在確率を割り出す。
図5(d)に示されるように、搬送車両3Aが次の構造物Arを捕捉すると、演算部15bは、新たに取得された観測形状データに基づいて第2の存在確率を割り出す。そして、演算部15bは、第1の存在確率と第2の存在確率とを合成して第3の存在確率を割り出す。ここで、最初の構造物Arの観測形状データのみでは、第3の存在確率において突出した部分(位置)を特定できなかったが、次の構造物Arの観測形状データを捕捉できれば、第3の存在確率において突出した部分(位置)が生じる。演算部15bは、第3の存在確率の最も高い位置を搬送車両3Aの位置情報として特定する。同様にして、演算部15bは、搬送車両3Aの姿勢角情報も特定する。
図4に示されるように、絶対誘導制御部15cは、演算部15bで割り出された位置姿勢情報に基づく絶対誘導によって搬送車両3Aを走行制御する。すなわち、絶対誘導制御部15cは、位置姿勢情報に基づいて搬送車両3Aを目的地まで誘導し、また、姿勢角がトンネル軸に平行になるように搬送車両3Aの姿勢を変更したりして搬送車両3Aを走行制御する。
絶対誘導は相対誘導に対比される概念である。相対誘導は、坑道Tの内壁Taや後述の誘導部位との相対的な位置関係から割り出された位置姿勢情報(相対位置や姿勢角)に基づいて誘導することを意図し、例えば、誘導部位から一定の距離を開けて進行するように搬送車両3Aを誘導する。対して、絶対誘導は、坑道T内の絶対的な情報として割り出された位置情報や姿勢角情報に基づいて搬送車両3Aを誘導することを意図する。
続いて、坑道T内の環境について説明した後に、誘導部位捕捉部15d、相対誘導制御部15e及び切替部15fについて説明する。トンネル工事の現場では、例えば、対向車両V(図7参照)が存在したり、一時的に設置または仮置きされた設備などが存在したりする場合がある。対向車両V(図7参照)などの動的な要素は予め3次元マップに形状データとして反映させておくのは困難であり、一時的に仮置きされたような設備の場合、その都度、3次元マップを更新するのでは更新に伴う処理負担が大きくなる場合もある。一方で、坑道Tでは、相対誘導の基準となる壁面や設備などが少なからず存在する。そこで、相対誘導の基準となる誘導部位に関する情報を予め取得しておき、動的、あるいは一時的な障害物によって絶対誘導を阻害される場合には、絶対誘導による搬送車両3Aの走行制御ではなく、相対誘導による搬送車両3Aの走行制御を実現する。誘導部位記憶部15g、誘導部位捕捉部15d、相対誘導制御部15e及び切替部15fは、相対誘導による搬送車両3Aの走行制御を行うために機能する。
図6は、坑道内で誘導部位及び各誘導部位候補が存在する区間を模式的に示す図であり、図7は、搬送車両が対向車両とすれ違う状態を模式的に示す斜視図である。また、図8は、誘導部位記憶部に記憶されたテーブルの一例を示す図である。
図8に示されるように、誘導部位記憶部15gには、坑道Tの区間情報、誘導部位を特定するための誘導部位情報及び各区間における誘導部位の優先順位を対応付ける誘導部位・順位テーブルTa1が記憶されている。図6及び図8に示されるように、誘導部位・順位テーブルTa1には、例えば、第1の区間情報に対応付けて単一の誘導部位G1aが記憶されている。また、第2の区間情報に対応付けて優先順位の高い方から順番に誘導部位G2a,G2b,G2cが記憶されている。また、第3の区間情報に対応付けて優先順位の高い方から順番に誘導部位G3a,G3bが記憶されている。各誘導部位G1a,G2a,G2b,G2c,G3a,G3bを特定するための誘導部位特定情報は、例えば、各誘導部位G1a,G2a,G2b,G2c,G3a,G3bのレイアウトや高さ、形状などに関するデータである。
誘導部位捕捉部15dは、誘導部位記憶部15gに記憶されている誘導部位・順位テーブルTa1を読み出し、搬送車両3Aが存在する区間情報に対応する誘導部位情報とレーザースキャナ13によって取得された観測形状データとに基づいて誘導部位G1a,G2a,G2b,G2c,G3a,G3bを捕捉する。誘導部位捕捉部15dは、観測形状データを3次元マップに照らすと共に、誘導部位記憶部15gに記憶されている誘導部位特定情報から搬送車両3Aが走行している区間に対応する誘導部位G1a,G2a,G2b,G2c,G3a,G3bを捕捉する。
また、誘導部位捕捉部15dは、誘導部位情報と観測形状データとの一致度が遮蔽判定のための所定の閾値以上か否かの判定も行い、所定の閾値以上と判定される誘導部位情報に基づいて誘導部位G1a,G2a,G2b,G2c,G3a,G3bを捕捉する。さらに、第2の区間の様に、複数の誘導部位G2a,G2b,G2cが存在する場合には、優先順位が最も高い誘導部位情報を優先して選択して誘導部位G2aを捕捉する。特に、誘導部位捕捉部15dは、複数の誘導部位情報と観測形状データとの一致度が遮蔽判定のための所定の閾値以上の場合には、優先順位が、他よりも上位の誘導部位情報に基づいて誘導部位G2a,G2b,G2cを捕捉する。
切替部15fは、演算部15bで割り出された位置姿勢情報の信頼度が所定の基準値未満と判定する場合には、絶対誘導から相対誘導にモードを切り替える。マップ記憶部15aには手法フラグが記憶されており、切替部15fは、演算部15bで割り出された位置姿勢情報の信頼度が所定の基準値以上と判定すると、絶対誘導のモードを示すデータを手法フラグにセットし、基準値未満と判定する場合には、絶対誘導から相対誘導に切り替えるために、相対誘導のモードを示すデータを手法フラグにセットする。
相対誘導制御部15eは、切替部15fによって相対誘導のモードに切り替えられると、複数の誘導部位G1a,G2a,G2b,G2c,G3a,G3bのうち、いずれか一つの誘導部位(例えば、誘導部位G2b)に基づく相対誘導によって搬送車両3Aを走行制御する。相対誘導制御部15eは、例えば、レーザースキャナ13から照射されたレーザー光が誘導部位G2bで反射して戻ってくるまでの時間を割り出し、割り出した時間から誘導部位G2bまでの距離を取得し、その距離が一定になるように搬送車両3Aを誘導する。なお、誘導部位G2bからの距離は、必ずしも相対誘導する区間内で一定でなくてもよく、相対誘導モードに切り替わった場所によって適宜変化するようにしてもよい。相対誘導制御部15eは、誘導部位G2bからの距離が所定の距離になるように搬送車両3Aを走行制御するので、搬送車両3Aは、走行ルートRに沿って安定して走行する。
なお、上記の相対誘導では誘導部位G2bからの距離が所定の距離となるようにして走行制御するが、坑道Tを横断する基準断面形状を予め規定しておき、演算部15bがレーザースキャナ13で取得された観測形状データから割り出される観測断面形状と基準断面形状との幾何学的関係から、走行ルートRに直交する断面上での搬送車両3Aの姿勢角(姿勢)及び相対位置(位置)を推定値として求め、相対誘導制御部15eが、その推定値に基づいて搬送車両3Aの相対誘導を実現するようにしてもよい。
次に、上記の誘導システム1Aを利用した誘導方法について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、本実施形態に係る誘導方法のメイン処理の動作手順を示すフローチャートであり、図10は、誘導制御処理の動作手順を示すフローチャートである。
図9に示されるように、搬送車両3Aの誘導を開始すると、制御装置15Aの演算部15bは、搬送車両3Aの位置がスタート位置にあることを示す初期設定を行い、駆動装置11は搬送車両3Aの移動を開始する(ステップS1)。次に、制御装置15Aは、絶対誘導または相対誘導による誘導制御処理(ステップS2)を行いながら搬送車両3Aの自律運転を続け、停止位置まで到達すると、誘導制御処理を終了し、搬送車両3Aの移動を停止(ステップS3)させて搬送車両3Aの誘導を終了する。
上述の誘導制御処理(ステップS2)の動作手順について、図10を参照して詳しく説明する。誘導システム1Aでは、坑道T内での絶対誘導を基本として搬送車両3Aの走行制御を実行している。しかしながら、絶対誘導のために取得された搬送車両3Aの位置姿勢情報の信頼度が所定の基準値未満になり、且つ誘導部位G1a,G2a,G2b,G2c,G3a,G3bが存在する区間では、誘導部位G1a,G2a,G2b,G2c,G3a,G3bを利用した相対誘導によって搬送車両3Aの走行制御を実行する。以下、詳細に説明する。
誘導制御処理を開始すると、レーザースキャナ13は走査処理を行って観測形状データを取得する(ステップS11)。ステップS11は、走査ステップに相当する。次に、演算部15bは、マルコフ位置推定手法による位置・姿勢推定計算を実行し、搬送車両3Aの位置姿勢情報を割り出す(ステップS12)。ステップS12は、演算ステップに相当する。次に、切替部15fは、位置・姿勢推定計算によって割り出された位置姿勢情報(位置情報及び姿勢角情報)の存在確率が所定の下限値(閾値、基準値)以上か否かを判定し(ステップS13)、下限値以上と判定する場合には、手法フラグに絶対誘導のモードを示すデータをセットし、下限値未満と判定する場合には手法フラグに相対誘導のモードを示すデータをセットする。ステップS13は切替ステップに相当する。
絶対誘導のモードを示すデータがセットされている場合には、絶対誘導制御部15cは、3次元形状地図(3次元マップ)に基づく絶対誘導によって搬送車両3Aの走行制御を行う(ステップS22)。ここで、搬送車両3Aが走行ルートRからずれていると、絶対誘導制御部15cによる軌道修正が行われる。ステップS22は、絶対誘導ステップに相当する。
また、相対誘導のモードを示すデータがセットされている場合には、誘導部位捕捉部15dは、誘導部位選択処理(ステップS14)を実行する。ステップS14は誘導部位捕捉ステップに相当する。誘導部位選択処理について、図11を参照して説明する。図11は、誘導部位選択処理の動作手順を示すフローチャートである。
誘導部位選択処理を開始すると、誘導部位捕捉部15dは、現在、搬送車両3Aが存在する区間情報を取得する(ステップS31)。誘導部位捕捉部15dは、例えば、信頼度が所定の下限値(基準値)以上の直近の位置姿勢情報から特定される位置や内界センサ14での計測データに基づいて搬送車両3Aが現在存在する区間情報を割り出す。
次に、誘導部位捕捉部15dは、誘導部位記憶部15gに記憶されている誘導部位・順位テーブルTa1を参照し、搬送車両3Aが現在存在する区間の区間情報に対応する一または複数の誘導部位情報を取得する(ステップS32)。例えば、図6及び図8に示されるように、第2の区間内には、三つの誘導部位G2a〜G2cが存在する。誘導部位捕捉部15dは、搬送車両3Aが存在する区間として第2の区間情報を取得した場合には、選択候補誘導部位として三つの誘導部位G2a〜G2cの誘導部位情報及び各誘導部位G2a〜G2cの優先順位を取得する。なお、このステップで参照される誘導部位・順位テーブルTa1は、オフラインにおいて作業者などの入力によって設定、更新処理が適宜に行われる。
次に、誘導部位捕捉部15dは、ステップS32で取得した誘導部位情報のうち、優先順位の最も高い誘導部位情報(最上位部位の誘導部位情報)に対応する誘導部位を当該部位として設定する。例えば、第2の区間の場合には、三つの誘導部位G2a〜G2cのち、優先順位が第1位の誘導部位G2aが当該部位として設定される。なお、当該部位の設定については、例えば、誘導部位それぞれに対応するフラグをメモリに規定しておき、当該部位として選択された誘導部位に対応するフラグに、当該部位であることを示すデータをセットする。
次に、誘導部位捕捉部15dは、当該部位周辺の遮蔽物の有無を判定する(ステップS34)。例えば、誘導部位捕捉部15dは、当該部位の誘導部位情報とレーザースキャナ13で取得された観測形状データとの一致度が遮蔽判定のための所定の閾値以上であるか否かを判定する。例えば、オフラインにおいて所定の閾値を予め50%と入力しておき、一致度が50%以上の場合には遮蔽物は無いと判定し、50%未満の場合には遮蔽物有りと判定する。
ステップS34において当該部位周辺の遮蔽物が無いと判定された場合には、当該部位を誘導部位として決定(捕捉)し(ステップS35)、誘導部位選択処理を終了する。一方で、当該部位周辺に遮蔽物が有ると判定された場合には、未確認の部位の有無を判定し(ステップS37)、未確認の部位がある場合には、当該部位を棄却し、優先順位が一つ下の次候補を当該部位に設定して(ステップS39)、遮蔽物の有無を判定する(ステップS34)。また、未確認の部位が無い場合には、有効な部位は無いと判定し、例えば、エラーフラグにエラーを示すデータをセットして誘導部位選択処理を終了する。
ステップ34〜ステップS39の処理について図7を参照して具体的に説明する。図7に示されるように、搬送車両3Aは、第2の区間において対向車両Vとすれ違おうとしており、絶対誘導のために割り出された位置姿勢情報の信頼度は所定の基準値未満になっている。最初に、誘導部位捕捉部15dは、三つの誘導部位G2a,G2b,G2cのうち、優先順位の最も高い誘導部位G2aを当該部位として設定する。この場合、搬送車両3Aと誘導部位G2aとの間には、対向車両Vが存在するため、誘導部位捕捉部15dは、誘導部位G2aの周辺に遮蔽物が有ると判定し(ステップS34)、当該部位として誘導部位G2aを棄却し、優先順位が二番目の誘導部位G2bを当該部位として設定する。誘導部位G2bの周辺には、遮蔽物は存在しないため、誘導部位捕捉部15dは、誘導部位G2bを誘導部位に決定(捕捉)する(ステップS35)。
図10に戻り、誘導部位選択処理が終了すると、誘導部位捕捉部15dは、選択可能な部位があるか否かを判定する(ステップS15)。誘導部位選択処理において、有効な誘導部位は無い(ステップS38)と判定されてエラーフラグのエラーを示すデータがセットされている場合には、選択可能な部位は無いと判定され、非常停止が行われる(ステップS20)。
ステップS15において、選択可能な部位があると判定された場合には、演算部15bは、相対誘導のために、選択部位による位置・姿勢計算を実行する(ステップS16)。次に、相対誘導制御部15eは、選択部位による位置・姿勢計算によって割り出された位置姿勢情報の変動量が基準値以下か否かを判定する(ステップS17)。変動量とは、例えば、直前に正規に取得された位置姿勢情報との差分を示し、変動量が基準値以下の場合には適正と判定して選択部位に対する相対誘導を行う(ステップS18)。ここで、搬送車両3Aが選択部位に対する所定の距離から外れていると、相対誘導制御部15eによる軌道修正が行われる。ステップS18は、相対誘導ステップに相当する。
また、ステップS17において、変動量が基準値よりも高いと判定された場合には、誘導部位捕捉部15dは、他に選択可能な部位があるか否かについて判定する(ステップS19)。ここで、誘導部位捕捉部15dは、搬送車両3Aの現在の区間に対応する複数の誘導部位を取得している場合には、優先順位が一つ低い誘導部位周辺の遮蔽物の有無を判定し、遮蔽物が無い場合には、その誘導部位を選択部位に決定(捕捉)する。すると、演算部15bは、決定された選択部位による位置・姿勢計算を実行し(ステップS16)、その計算結果の変動量が基準値以下であれば(ステップS17)、相対誘導制御部15eは、選択部位に対する相対誘導を実行する。なお、ステップS19において、誘導部位捕捉部15dが他の選択可能な部位が無いと判定する場合には、非常停止が行われる(ステップS20)。
ステップS11〜ステップS20の処理は、停止位置(ステップS21)に到達するまで適宜に実行され、停止位置に達すると誘導制御処理は終了する。
上述の3次元マップ及び誘導部位情報は、既に存在している設備や物体などの配置を利用している。従って、誘導のための新たなガイド設備を設置しなくても移動体の誘導が可能である。また、3次元マップを利用した絶対誘導制御部15cによる走行制御では、進行方向前方における周囲環境を想定した制御が可能であり、例えば、走行中、カーブや徐行区間が近づいていることなどを事前に判断しながら制御でき、相対誘導制御部15eによる走行制御に比べて高速での安定した走行制御が可能になる。
誘導システム1Aでは、絶対誘導制御部15cによる走行制御を主として行い、絶対誘導のために割り出された位置姿勢情報の信頼度が低い場合には補助的に相対誘導制御を行っている。そして、対向車Vなどの動的な障害物による位置姿勢情報の信頼度低下は短時間で解消されるものであり、誘導システム1Aでは、このような突発的な動的障害にも柔軟に対応できる。その結果として、搬送車両3Aの誘導に要する設備負担を抑え、且つ、動的な障害物が発生した場合であっても信頼度を低下させることなく、搬送車両3Aを安定して誘導できる。
さらに、制御装置15Aの演算部15bは、マップ記憶部15aに記憶された3次元マップと、レーザースキャナ13で取得された形状情報とに基づいて、走行ルートR上における搬送車両3Aの存在確率を求め、存在確率が最も高い場所及び姿勢から搬送車両3Aの位置姿勢情報を割り出している。この構成によれば、走行ルートRに沿った空間自体を基準としているので、より確からしい位置姿勢情報を割り出すことができ、精度が高くなる。
さらに、誘導システム1Aでは、演算部15bで割り出された位置姿勢情報の存在確率から位置姿勢情報の信頼度を判定できるので、信頼度の低下を精度良く確実に判定できる。
さらに、誘導部位捕捉部15dは、誘導部位記憶部15gに記憶された誘導部位情報とレーザースキャナ13で取得された観測形状データとの一致度が遮蔽判定のための所定の閾値以上の誘導部位情報に基づいて誘導部位を捕捉する。従って、遮蔽されていないと判断される誘導部位に基づいて相対誘導されるため、相対誘導での、より安定した誘導が可能になる。
さらに、誘導部位記憶部15gに記憶されている誘導部位・順位テーブルTa1には、複数の誘導部位情報が優先順位を付けて記憶されている。誘導部位捕捉部15dは、誘導部位記憶部15gに記憶された複数の誘導部位情報のうち、一致度が遮蔽判定のための所定の閾値以上と判定される一または複数の誘導部位情報のうち、優先順位が最も高い誘導部位情報に基づいて誘導部位を捕捉する。従って、動的な障害物によって一の誘導部位が遮蔽された場合であっても、優先順位の高い他の誘導部位に沿った相対誘導が可能になるため、搬送車両3Aを安定して相対誘導できる。
さらに、誘導部位捕捉部15dは、誘導部位・順位テーブルTa1を参照し、搬送車両3Aが存在する区間情報に対応する誘導部位情報に基づいて誘導部位を捕捉する。誘導部位は、坑道T内の区間に応じて設定されているため、搬送車両3Aが存在する区間での誘導部位の捕捉を、効率的且つ精度良く実施できる。
(第2実施形態)
次に、図12を参照して本発明の第2実施形態に係る誘導システムを説明する。図12は、本実施形態に係る誘導システムのブロック図である。なお、本実施形態に係る誘導システム1Bについて、第1実施形態に係る誘導システム1Aと同様の要素については、第1実施形態と同一の符号を付して詳細説明を省略する。
図12に示されるように、誘導システム1Bは、坑道Tでの搬送車両3Bの自律運転のために搬送車両3Bを走行ルートRに沿って誘導するシステムである。誘導システム1Bは、搬送車両3Bに搭載されたレーザースキャナ1(走査手段)3、内界センサ14及び制御装置15Bを備えている。制御装置15Bは、第1実施形態に係る制御装置15Aと同様に、マップ記憶部(マップ記憶手段)15a、演算部(演算手段)15b、絶対誘導制御部(絶対誘導制御手段)15c、誘導部位捕捉部(捕捉判定手段)15d、相対誘導制御部(相対誘導制御手段)15e、切替部(切替手段)15f、誘導部位記憶部(誘導部位記憶手段)15gを備え、さらに、誘導部位候補記憶部(誘導部位候補記憶手段)15h及び誘導部位管理部(誘導部位管理手段)15iを備えている。
誘導システム1Bは、誘導部位・順位テーブルTa1に記憶された誘導部位についての信頼度マップTa2,Ta3を生成、更新し、相対誘導を行う際には、信頼度マップTa2,Ta3から信頼度が高いと判定される誘導部位に対して搬送車両3Bの相対誘導を実行するシステムである。
誘導部位候補記憶部(誘導部位候補記憶手段)15hは、信頼度マップTa2,Ta3を記憶している。図18は信頼度マップを例示する図であり、(a)は新たに生成した信頼度マップTa2の一例を示し、(b)は更新後の信頼度マップTa3の一例を示す。図18に示されるように、信頼度マップTa2,Ta3は、坑道T内の所定の区間を特定するための区間情報、その区間内での誘導部位の候補となる誘導部位候補を特定するための誘導部位候補情報、各区間での誘導部位候補情報の優先順位及び信頼度を示す“1”または“0”のデータを対応付けて記憶する。信頼度が“1”の場合には、誘導部位候補を誘導部位として利用して支障が無いことを示し、信頼度が“0”の場合には、何らかの問題を含んでいるため誘導部位候補を誘導部位として利用できないことを示している。
誘導部位管理部(誘導部位管理手段)15iは、信頼度マップTa2,Ta3を生成、更新するための処理を実行する。具体的には、搬送車両3Aが坑道T内の所定の区間を走行している最中に、その所定の区間内で、誘導部位候補記憶部15hを参照して誘導部位候補情報を取得し、取得した誘導部位候補情報とレーザースキャナ13で取得された観測形状データとの一致度が相対誘導判定のための所定の閾値以上の場合には、その誘導部位候補情報を所定の区間の区間情報に対応付けるように信頼度“1”を設定し、所定の閾値未満の場合には、信頼度“0”を設定する。
次に、図13及び図14を参照して信頼度マップ生成処理の動作手順について説明する。図13は、信頼度マップ生成処理におけるメイン処理の動作手順を示すフローチャートであり、図14は、区間内信頼度更新処理の動作手順を示すフローチャートである。
信頼度マップ生成処理を開始する場合には、オフラインにおける人為的な入力作業によって、初期設定が行われる。ここで、誘導部位候補記憶部15hには、全区間の全部位の信頼度には“0”が設定される(ステップS51)。次に、制御装置15Bは、駆動装置11に指示して搬送車両3Bの移動を開始させる(ステップS52)。
次に、制御装置15Bの誘導部位管理部15iは、最初の区間に入ると区間内信頼度更新処理を行い(ステップS53)、区間内信頼度更新処理が終了すると次の区間に移動する(ステップ54)。誘導部位管理部15iは、搬送車両3Bが停止位置に到達するまで区間内信頼度更新処理を繰り返し実行し、停止位置(ステップS55)に達すると信頼度マップ生成処理を終了する。
図14を参照して区間内信頼度更新処理について説明する。区間内信頼度更新処理では、誘導部位管理部15iは、例えば、信頼度が所定の下限値(基準値)以上の直近の位置姿勢情報から特定される位置や内界センサ14での計測データに基づいて搬送車両3Aが現在存在する区間情報を割り出す。さらに、誘導部位管理部15iは、信頼度マップTa2,Ta3を参照し、搬送車両3Bが現在存在する区間に、相対誘導のための候補となる誘導部位があるか否かを判定する(ステップS201)。なお、この区間に相対誘導のための候補となる誘導部位が無い場合には、後続の処理を実行することなく、区間内信頼度更新処理を終了する。誘導部位管理部15iは、この区間に誘導部位があると判定する場合には、この区間の全ての信頼度設定フラグに“1”を設定して初期化する(ステップS202)。
次に、上述の誘導制御処理(図9参照)と同様に、レーザースキャナ13による観測形状データの取得を行う(ステップS203)。次に、演算部(演算手段)15bは、マルコフ位置推定手法による絶対誘導計算を行って位置姿勢情報を割り出す(ステップS204)。絶対誘導計算とは、上述の誘導制御処理において実行したマルコフ位置推定手法による位置・姿勢推定計算と同様の計算処理である。
次に、誘導部位管理部15iは、この位置、すなわち演算部(演算手段)15bで割り出された位置姿勢情報に基づいて特定される搬送車両3Bの現在位置で捕捉される誘導部位があるか否かを判定し(ステップS205)、誘導部位が無いと判定する場合には上述のステップS203に戻る。誘導部位管理部15iは、搬送車両3Bの現在位置で捕捉される誘導部位があると判定する場合には、ステップS204で割り出された位置姿勢情報が設定値以上、例えば、上述の誘導制御処理において位置姿勢情報の信頼度判定で用いた所定の下限値以上であるか否かを判定する。誘導部位管理部15iは、位置姿勢情報が設定値以上と判定する場合には、後続の処理を実行するが、設定値未満の場合には、その位置にあるすべての部位、すなわち、ステップS205で取得された全ての誘導部位の信頼度設定フラグに“0”を設定して後述の信頼度更新処理(ステップS216)を実行する。なお、ステップS204で基準となる設定値は、上述の下限値よりも高い値、または低い値であってもよい。
誘導部位管理部15iは、絶対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報が、設定値以上と判定する場合には、最初に、1番目の誘導部位を当該部位として設定する(ステップS208)。誘導部位の選択順序は、例えば、予め規定されている番号の順番によって決まる。
次に、誘導部位管理部15iは、当該部位の信頼度フラグに“1”が設定されているか否かを判定し、“1”が設定されていると判定すると、誘導部位管理部15iは、その誘導部位(当該部位)による相対誘導計算を行って位置姿勢情報を割り出す(ステップS210)。誘導部位(当該部位)による相対誘導計算とは、上述の誘導制御処理において実行した誘導部位による位置・姿勢推定計算と同様の計算処理である。
誘導部位管理部15iは、絶対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報を基準にして相対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報の信頼度(評価値)を求める。ここで、誘導部位管理部15iは、相対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報と絶対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報とを対比し、双方の一致度から信頼度を導出する。さらに、誘導部位管理部15iは、導出された信頼度が設定値(相対誘導判定のための所定の閾値)よりも高い場合には、当該部位の信頼度は高いと判定し(ステップS211)、信頼度マップTa2における、この区間の当該部位の信頼度を“1”に維持し、信頼度が設定値(相対誘導判定のための所定の閾値)よりも低い場合には、当該部位の信頼度設定フラグに“0”を設定する(ステップS212)。ここで、相対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報と絶対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報との一致度から導出される信頼度とは、例えば、双方の位置姿勢情報の誤差から導かれ、誤差が小さい場合に信頼度は高くなり、誤差が大きな場合には信頼度は低くなるようなパラメータである。
当該部位の信頼度設定フラグが“1”または“0”に設定された場合(ステップS211,S212)、またはステップS209において当該部位の信頼度として“1”が設定されていないと判定された場合、誘導部位管理部15iは、この位置にまだ誘導部位があるか否かの判定を行い(ステップS213)、誘導部位がある場合には最初の誘導部位を当該部位から解除し、次の誘導部位を当該部位に設定する(ステップS214)。
誘導部位管理部15iは、ステップS213において、この位置に誘導部位が無いと判定すると、区間終了か否かを判定し、区間終了では無いと判定する場合には、上述のステップS203の処理に戻り、区間終了と判定する場合には後続の信頼度更新処理を実行する(ステップS216)。なお、区間終了か否かの判定は、例えば、区間を座標データとして管理しておき、演算部15bによって割り出された位置姿勢情報を、その区間の座標データと対比し、区間から外れたと判定される場合には、区間終了と判定することができる。
ステップS203〜ステップS215までの処理が、一つの区間内で繰り返し実行される。この間、一つの誘導部位に対して複数回の信頼度判定が行われることになり、1回でも信頼度(評価値)が設定値よりも低いと判定されてしまうと、その誘導部位の信頼度設定フラグには“0”が設定される。後続の信頼度更新処理(ステップS216)では、区間内の全ての誘導部位のうち、信頼度設定フラグに“0”が設定されることなく“1”が設定されているものを抽出し、信頼度マップTa2に信頼度“1”を設定し、区間内信頼度更新処理を終了する。なお、区間走行中に一度でも絶対誘導計算の信頼度が低下した場合には(ステップS207)、その区間の「信頼度更新処理」は行われず、信頼度設定フラグには“0”が設定されたままである。
次に、図15及び図16を参照して信頼度マップ更新処理の動作手順について説明する。図15は、信頼度マップ更新処理におけるメイン処理の動作手順を示すフローチャートであり、図16は、区間内信頼度更新処理の動作手順を示すフローチャートである。
信頼度マップ更新処理を開始する場合には、オフラインにおける人為的な入力作業による初期設定が行われてもよいし、前回までの信頼度データを利用してもよい。ここで、誘導部位候補記憶部15hには、前回までの信頼度データ、すなわち、上述の信頼度マップ生成処理で登録された信頼度マップTa2が設定される(ステップS71)。次に、制御装置15Bは、駆動装置11に指示して搬送車両3Bの移動を開始させる(ステップS72)。
次に、制御装置15Bの誘導部位管理部15iは、最初の区間に入ると区間内信頼度更新処理を行い(ステップS73)、区間内信頼度更新処理が終了すると次の区間に移動する(ステップ74)。誘導部位管理部15iは、搬送車両3Bが停止位置に到達するまで区間内信頼度更新処理を繰り返し実行し、停止位置(ステップS75)に達すると信頼度マップ更新処理を終了する。
図16を参照して区間内信頼度更新処理について説明する。区間内信頼度更新処理では、誘導部位管理部15iは、誘導部位候補記憶部15hに記憶されている信頼度マップTa2を参照し、搬送車両3Bが現在存在する区間に、相対誘導のための候補となる誘導部位があるか否かを判定する(ステップS221)。なお、この区間に相対誘導のための候補となる誘導部位が無い場合には、後続の処理を実行することなく、区間内信頼度更新処理を終了する。誘導部位管理部15iは、この区間に誘導部位があると判定する場合には、この区間の全ての信頼度設定フラグに“1”を設定して初期化する(ステップS222)。次に、上述の誘導制御処理(図9参照)と同様に、レーザースキャナ13による観測形状データの取得を行う(ステップS223)。次に、演算部(演算手段)15bは、マルコフ位置推定手法による絶対誘導計算を行って位置姿勢情報を割り出す(ステップS224)。絶対誘導計算とは、上述の誘導制御処理において実行したマルコフ位置推定手法による位置・姿勢推定計算と同様の計算処理である。
次に、誘導部位管理部15iは、この位置、すなわち演算部(演算手段)15bで割り出された位置姿勢情報に基づいて特定される搬送車両3Bの現在位置で捕捉される誘導部位があるか否かを判定し(ステップS225)、誘導部位が無いと判定する場合には上述のステップS223に戻る。誘導部位管理部15iは、搬送車両3Bの現在位置で捕捉される誘導部位があると判定する場合には、ステップS224で割り出された位置姿勢情報が設定値以上、例えば、上述の誘導制御処理において位置姿勢情報の信頼度判定で用いた所定の下限値以上であるか否かを判定する。誘導部位管理部15iは、位置姿勢情報が設定値以上と判定する場合には、後続の処理を実行するが、設定値未満の場合には、その位置にあるすべての部位、すなわち、ステップS225で取得された全ての誘導部位の信頼度設定フラグに“0”を設定して後述の信頼度更新処理(ステップS236)を実行する。なお、ステップS224で基準となる設定値は、上述の下限値よりも高い値、または低い値であってもよい。
誘導部位管理部15iは、絶対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報が、設定値以上と判定する場合には、最初に、1番目の誘導部位を当該部位として設定する(ステップS228)。誘導部位の選択順序は、例えば、予め規定されている番号の順番によって決まる。
次に、誘導部位管理部15iは、当該部位の信頼度フラグに“1”が設定されているか否かを判定し、“1”が設定されていると判定すると、誘導部位管理部15iは、その誘導部位(当該部位)による相対誘導計算を行って位置姿勢情報を割り出す(ステップS230)。誘導部位(当該部位)による相対誘導計算とは、上述の誘導制御処理において実行した誘導部位による位置・姿勢推定計算と同様の計算処理である。
誘導部位管理部15iは、絶対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報を基準にして相対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報の信頼度(評価値)を求める。ここで、誘導部位管理部15iは、相対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報と絶対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報とを対比し、双方の一致度から信頼度を導出する。さらに、誘導部位管理部15iは、導出された信頼度が設定値(相対誘導判定のための所定の閾値)よりも高い場合には、当該部位の信頼度は高いと判定し(ステップS231)、信頼度マップTa2における、この区間の当該部位の信頼度を“1”に維持し、信頼度が設定値(相対誘導判定のための所定の閾値)よりも低い場合には、当該部位の信頼度設定フラグに“0”を設定する(ステップS232)。ここで、相対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報と絶対誘導計算によって割り出された位置姿勢情報との一致度から導出される信頼度とは、例えば、双方の位置姿勢情報の誤差から導かれ、誤差が小さい場合に信頼度は高くなり、誤差が大きな場合には信頼度は低くなるようなパラメータである。
当該部位の信頼度設定フラグが“1”に維持された場合または“0”に設定された場合(ステップS232)、またはステップS229において当該部位の信頼度として“1”が設定されていないと判定された場合、誘導部位管理部15iは、この位置にまだ誘導部位があるか否かの判定を行い(ステップS233)、誘導部位がある場合には最初の誘導部位を当該部位から解除し、次の誘導部位を当該部位に設定する(ステップS234)。
誘導部位管理部15iは、ステップS233において、この位置に誘導部位が無いと判定すると、区間終了か否かを判定し(ステップS235)、区間終了では無いと判定する場合には、上述のステップS223の処理に戻り、区間終了と判定する場合には後続の信頼度更新処理を実行する(ステップS236)。なお、区間終了か否かの判定は、例えば、区間を座標データとして管理しておき、演算部15bによって割り出された位置姿勢情報を、その区間の座標データと対比し、区間から外れたと判定される場合には、区間終了と判定することができる。
ステップS223〜ステップS235までの処理が、一つの区間内で繰り返し実行される。この間、一つの誘導部位に対して複数回の信頼度判定が行われることになり、1回でも信頼度(評価値)が設定値よりも低いと判定されてしまうと、その誘導部位の信頼度設定フラグには“0”が設定される。後続の信頼度更新処理(ステップS236)では、区間内の全ての誘導部位のうち、信頼度設定フラグに“0”が設定されているものについては信頼度マップTa2に信頼度“0”を設定し、信頼度設定フラグに“0”が設定されることなく“1”が設定されているものについては、信頼度マップTa2に信頼度“1”を設定し、区間内信頼度更新処理を終了する。なお、図18(b)に示す信頼度マップTa3は、区間内信頼度更新処理が終了した後、すなわち更新後の信頼度マップである。
次に、誘導システム1Bを利用した誘導方法について、図17を参照して説明する。図17は、誘導制御処理の動作手順を示すフローチャートである。なお、誘導システム1Bを利用した誘導方法は、誘導制御処理を除いて誘導システム1Aを利用した誘導方法と同様の処理が実行される。そこで、誘導制御処理を中心に説明する。
誘導制御処理を開始すると、レーザースキャナ13は走査処理を行って観測形状データを取得する(ステップS91)。ステップS91は、走査ステップに相当する。次に、演算部15bは、マルコフ位置推定手法による位置・姿勢推定計算を実行して位置姿勢情報を割り出す(ステップS92)。ステップS92は、演算ステップに相当する。次に、切替部15fは、位置・姿勢推定計算によって割り出された位置姿勢情報(位置情報及び姿勢角情報)の存在確率が所定の下限値(閾値、基準値)以上か否かを判定し(ステップS93)、下限値以上と判定する場合には、手法フラグに絶対誘導のモードを示すデータをセットし、下限値未満と判定する場合には手法フラグに相対誘導のモードを示すデータをセットする。ステップS93は切替ステップに相当する。
絶対誘導のモードを示すデータがセットされている場合には、絶対誘導制御部15cは、3次元形状地図(3次元マップ)に基づく絶対誘導によって搬送車両3Aの走行制御を行う(ステップS100)。ここで、搬送車両3Aが走行ルートRからずれていると、絶対誘導制御部15cによる軌道修正が行われる。ステップS100は、絶対誘導ステップに相当する。
また、相対誘導のモードを示すデータがセットされている場合には、誘導部位捕捉部15dは、現在、搬送車両3Aが存在する区間情報を取得する。次に、誘導部位捕捉部15dは、誘導部位候補記憶部15hの信頼度マップTa2,Ta3を読み出し、当該区間で信頼度が“1”の誘導部位があるか否かを判定する(ステップS94)。誘導部位捕捉部15dは、当該区間で信頼度が“1”の誘導部位がある場合には、信頼度が“1”の誘導部位を選択部位として捕捉する。選択部位が誘導部位捕捉部15dによって捕捉された場合には、後続の処理が実行されるが、捕捉されなかった場合には後続の処理が実行されることなく非常停止される。ステップS94は、誘導部位捕捉ステップに相当する。
選択部位が誘導部位捕捉部15dによって捕捉された場合には、演算部15bは、選択部位による位置・姿勢計算を実行して搬送車両3Bに位置姿勢情報を割り出す(ステップS95)。次に、相対誘導制御部15eは、選択部位による位置・姿勢計算によって割り出された位置姿勢情報の変動量が基準値以下か否かを判定する(ステップS96)。変動量が基準値以下の場合には適正と判定して選択部位に対する相対誘導を行う(ステップS97)。ここで、搬送車両3Aが選択部位に対する所定の距離から外れていると、相対誘導制御部15eによる軌道修正が行われる。ステップS97は、相対誘導ステップに相当する。
また、ステップS96において、変動量が基準値よりも高いと判定された場合には、誘導部位捕捉部15dは、当該区間で、他にも信頼度が“1”の誘導部位があるか否かについて判定する(ステップS98)。他にも信頼度が“1”の誘導部位がある場合、他の誘導部位を選択部位として捕捉し、演算部15bは、選択部位による位置・姿勢計算を実行し(ステップS95)、その計算結果の変動量が基準値以下であれば(ステップS96)、相対誘導制御部15eは、選択部位に対する相対誘導を実行する。なお、ステップS98において、誘導部位捕捉部15dが、信頼度が“1”の他の誘導部位は無いと判定する場合には、非常停止が行われる(ステップS99)。
ステップS91〜ステップS100の処理が停止位置(ステップS101)に到達するまで適宜に実行され、停止位置に達すると誘導制御処理は終了する。
上述の誘導システム1B及び誘導方法によれば、上述の誘導システム1A及び誘導方法と同様に、搬送車両3Bの誘導に要する設備負担を抑え、且つ、動的な障害物が発生した場合であっても信頼度を低下させることなく、搬送車両3Bを安定して誘導できる。
さらに、誘導システム1Bでは、相対誘導の候補となる誘導部位を区間に対応付け、さらに、各誘導部位の信頼度の高低を記憶する信頼度マップTa2,Ta3が誘導部位候補情報記憶部15hに記憶されており、誘導部位管理部15iは信頼度マップTa2,Ta3を適宜に生成または更新する。相対誘導制御部15eは、所定の区間内で、誘導部位候補記憶部15hを参照し、所定の区間の区間情報に対応する誘導部位のうち、信頼度が高い誘導部位に沿った相対誘導によって移動体を走行制御する。従って、信頼度の高い誘導部位を予め設定しておくことが可能になり、その信頼度の評価も自動的に生成、更新が可能になるため、信頼度の高い相対誘導を継続的に安定して実現することができる。
以上、本発明を各実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されない。例えば、上記の各実施形態を適宜に組み合わせた態様であってもよい。また、走査手段としてのレーザースキャナを複数台設置するようにしてもよい。
1A,1B,1C…誘導システム、3A,3B,3C…搬送車両(移動体)、13,24…レーザースキャナ(走査手段)、15a…マップ記憶部(マップ記憶手段)、15b…演算部(演算手段)、15c…絶対誘導制御部(絶対誘導制御手段)、15d…誘導部位捕捉部(捕捉判定手段)、15e…相対誘導制御部(相対誘導制御手段)、15f…切替部(切替手段)、15g…誘導部位記憶部(誘導部位記憶手段)、15h…誘導部位候補記憶部(誘導部位候補記憶手段)、15i…誘導部位管理部(誘導部位管理手段)、T…坑道、R…走行ルート、G1a、G2a,G2b,G2c,G3a,G3b…誘導部位。